『 きみの住む街で 』
「 ・・・ ここよっ! 」
耳慣れた声が 雑踏のなかから響いてきたとき、ぼくは本当に、滅茶苦茶にほっとした。
・・・ああ、よかった・・・
こっそりとため息をもらして、ぼくは初めての海外旅行をスタ−トした。
じつは成田で機内に入ったときも、出迎えてくれたスチュワ−デスさんがなんだか強そうな
金髪のお姉さんだったんで ぼくはとてもビビってしまったのだけど、日本人のヒトもいたし。
なにより乗客の半分以上は日本人だったから 安心したんだ。
シックな色合いの座席にすぽん・・と座って。
う〜ん・・・ きみがエール・フランスのチケットを送ってくれた時には ちょっと参ったけど。
うん、こういうのって・・・案外、いいね。
これで黙ってればパリだし。 空港にはきみが迎えに来てくれるって言ってたし。
それに、それに、さ。
コレはズルっこだけど いざとなれば自動翻訳機がありし、ね。
なんとか、なるさ。 ・・・ああ、きみに会うの、久し振りだね。
なんか・・・嬉しいのにどうしてこんなにどきどきするのかな・・・
ぼくは機内食をぺろりと平らげ、先月ちょうど見損ねていた映画の上映を楽しんだ。
もっとも映画は吹き替えじゃなかったけど。
こっそり自動翻訳機のスイッチを入れて、ぼくはイヤホン代を節約した。
なかなか いいもんだね♪ コレさえあればなんとかなる、よな?
おのぼりさんよろしくまわりをきょろきょろ見回し、ぼくはにんまりと空の旅に嵌っていた。
が。
そんなぼくの太平楽な気分は空港に一歩降り立った瞬間に きれいに消えうせた。
・・・な、何?? なに、なんなんだ・・・??
機内から出てなんとなく特撮モノにでてくる<基地>みたいな空港の建物に移ったとき
ぼくは おもわず棒立ちになってしまった。
四方八方、いたるところ・・・小鳥の囀りみたいな・・・テュルルル〜っていう言葉の氾濫だった。
おまけに・・・・ ほら〜 そこでもここでも、ロビ−のど真ん中でも。
・・・その・・・堂々とカップルが抱き合って ・・・ 濃厚なキスしてるし。
それも、若者だけじゃない、銀髪のおじいちゃん・おばあちゃんとか。
太っちょのお父さん・お母さんとか。
・・・え ・・・?! なかには ・・・ 金髪の美少年と口髭を蓄えた渋い中年とか・・・も!
それでさ。
周りの人々も全然平気ってか 平然としてるんだもの。
ぼくみたく固まって赤面するわけでもなく、ことさらジロジロみつめるわけでもなく
・・うん、そうだね、ごく当たり前って顔してみんな行き来してるんだ。
・・・ ぼくも ・・・ きみを だきしめなくちゃ・・・いけないんだろうか????
ぎくしゃく・ごとごと。
ぼくは フリ−ズしたまま無理やりに脚を前に出した。
と、とにかく。 きみをみつけなくちゃ。
入国審査はあって無きがごとし、でいろいろと密かに気にしていたコトなんかはまったくのフリ−パス。
もっとも金属探知のゲ−トは 博士とイワンが開発してくれたシ−ルド装置を作動させたけど。
でも 一番焦ったのは ・・・ ぼくの外見( みかけ )では仕方ないのだろうけど、
ぺらぺらと英語で捲くし立てられたコト。
慌てて翻訳機のスイッチを入れたんだけど よくわからなかった・・・
( フランソワ−ズ曰く。 「 フランス人の英語は ちょっと発音が違うから。 」 だって。
・・・それじゃ、ぼくの英語は ・・・ どうなるのさ?? )
「 ・・・ ジョ〜〜ォ !! 」
綺麗な声がぼくを呼び 亜麻色の髪を靡かせてきみが駆け寄ってくる。
こんな出会いに慣れっこのはずのフランスの人々も ・・・ 振り返る。
だって。 当たり前だよね。
素敵に綺麗な女の子が 宙に舞うみたいにひらひら跳んでくるんだもの。
薄い羽みたいに、ハチドリの翼みたいに きみの髪が煌いているよ。
「 ・・・や、やあ。 フランソワ−ズ ・・・ 」
ぼくは 貼り付けたみたいな笑顔で相変わらずぎくしゃくと手を振った。
「 いらっしゃい! パリへ ・・・ ようこそ! 」
「 ・・・ ぼ、ぼんじゅうる・・・・ 」
きゅ・・・っときみが その白い両手でぼくの片手を握り締める。
( ・・・あああ、よかった! 抱きついて・・・キスしてきたら どうしようかと思ってた )
「 元気そうね! コレはパリ式のご挨拶よ。 」
ちゃんと断ってから きみはぼくの頬に掠めるみたいな軽いキスを落として、笑った。
( わ! わっわわわわ・・・ 落ち着け〜 コレは<おはよう>のキスと同じだ・・・! )
ぼくは必死で うん、ありがとう・・って顔したつもりだけど。
やっぱりなんかヘンだったのかな。
きみの青い瞳が瞬いて 肩が小刻みに震えてるんだもの。
・・・ まあ、いいや。 所詮、ぼくはココでは ガイジン なんだからね。
「 さ! 行きましょう。 荷物は ・・・ ウチに送ればいいわ。
ね? 一緒に散歩して、それで すごく素敵で美味しいカフェに案内するわね! 」
「 う、うん・・・。 ウチって・・・いいのかな、本当にきみのところに泊まっても・・・ 」
「 やあねえ、なにを遠慮しているの? ジョ−ったら。 」
「 う・・・うん。 その・・・ 」
だって。
女の子のアパ−トに野郎が転がり込んでもいいのかな。
「 ヘンなジョ−。 」
「 ・・・ うん・・・ 」
くすくす笑うきみの背中で 波打つ髪が初夏の陽にきらきら煌いて。
・・・ きれいだな。 なんか・・・きみってずっと綺麗になった・・・
「 あのね、ジョ−。 ・・・ お願いがあるの。 」
「 え・・? 」
ぴたっと止まって振り向いて。 きみはぼくの顔をじっとのぞきこんだ。
「 お兄ちゃんと会って。 今日は非番だから・・・ ウチにいるわ。 」
「 ・・・ え ・・・・ ? 」
「 お願い。 兄にね、ジョ−をちゃんと紹介したいの。 わたしの一番大事なお友達ですって。」
・・・そ、そんな、急に! ひどいよ、フランソワ−ズ!
ぼくは彼女と見つめあってるままのカタチで固まってしまった。
彼女にお兄さんがいるのは知ってたし、ってか いろんな思い出話を何回も聞いていた。
ぼくのアタマの中では ちゃんと彼女のお兄さんと知り合いになってはいたけど。
でも。 それはぼくの勝手な想像で・・・。
「 ・・・仕事じゃないの? 確か・・・空軍、なんだろ。 」
「 ええ、そうよ。 でも今日はお休みなの。」
ね?と熱心に覗き込むきみの大きな瞳に ぼくは吸い込まれそうだよ・・・
「 ・・・う、うん。 ・・・でも ・・・ 」
「 でも? 」
「 こんな・・・格好でいいのかな。 こんな・・・ 」
ぼくはちょっとヨレったトレ−ナ−を 一生懸命に引っ張った。
「 勿論よ、兄もきっと大歓迎よ? ね、決まり! 」
「 ・・・う、うん ・・・・ 」
さあ、どこから案内しようかしら、とスキップしそうなきみの後姿に
ぼくはちょっぴり<恨み>をこめて呟いてみる。
一番って。 ・・・でも、大事な<お友達>、なのかな、ぼくは・・・。
「 ジョ−? 」
「 いまいくよ! 」
くるりと振り返ったきみの笑顔にぼくは大きく手を振って・・・・
パリの街へ、きみの故郷へ、足を踏み入れた。
・・・ きみと一緒に。 腕を組んで!
カツカツカツ。 コッコッコッ・・・。 カタカタカタ。
この街の舗道は賑やかな音をたてるね。
微妙なでこぼこに はじめは突っかかりそうになったけど
すぐにぼくは そんな石畳の路が楽しくなった。
いろんなヒトが 通ってゆく。
急いでいるヒトもたまにいるけど、たいていの人はマイ・ペ−スってのかな、
じっくり・余裕たっぷり・・・ってカンジに歩いてゆく・・・ように見える。
「 ・・・なにか、面白いモノでもあるの? 」
「 え・・・あ? ううん。 この・・・足音の響きがいろいろだなあって。 」
「 そう? ジョ−って・・・ 」
「 な、なに? 」
くす・・・っときみの大きな瞳がぼくを飲み込むみたいに瞬くよ。
「 ジョ−って・・・ 楽しいひと、ね。」
そうかなあ・・・。 ま、ヘンな人って言われるより全然いいけど。
きみのご推薦のカフェに行って。 外の樹の陰のテ−ブルに向かい合って座った。
アウト・ドアの席って日本だと 通行人がじろじろ見たり廃ガスをもろに被りそうで
あまり好きじゃないんだけど、ここは ちがってた。
「 なんかさ、こう・・・のんびりってのとは違うんだけど、のびのびっていうか・・・
う〜ん・・・余裕があるっていうのかなあ。 」
ぼくは舗道に広がるカフェのテーブルを見渡した。
みんな・・・ゆったりと座って寛いで、それでやっぱりティルルル〜〜っていう話し声がして・・・
なんだか 流れる時間まで違うみたいだ。
「 そう? こっちは舗道とか広いから・・・ 」
きみは遠慮がちに言葉を切った。 ・・・わかってるよ。
「 日本がせせこまし過ぎるんだよ。 あ〜あ・・・ いい気分! 」
風にさわさわ梢が揺れて ぼくはなんだか眠くなりそうだ。
「 ・・・ほ〜ら、カスクル−ト( casse-croute )が来たわ。
この時間だとちょうど焼きたてのバゲットを使うから ラッキ−ね、ジョ−。 」
これなら絶対に気に入るわ、ってきみのイチオチのメニュ−とカフェ・オ・レが運ばれてきた。
とん・・・、と鮮やかな手つきでぼくの前に皿を置くと ギャルソンはばちん、とフランソワ−ズに
ウィンクをした!
「 Mademoiselle, Bon appetit!」
「 Merci ・・・ 」
フランソワ−ズもにっこりしちゃってさ!
なんだか ぼくは妙に不機嫌になって目の前の皿をじっと睨んだ。
・・・ なんだ、コレ。
カスクル−トって彼女は言ってたけど。
これってサンドイッチ?? それにしちゃ、やけにパンが厚いんだよね。
ハムとチ−ズ・・・が挟まってるのかな。
なんだか・・・パンばっかりみたい。
「 さあ、どうぞ。 バゲットもぱりぱりだし 最高に美味しい時よ。 」
「 う、うん・・・ 」
ぼくは その厚ぼったいサンドイッチを取り上げるとえい、と大口開けてぱく・・っと噛み付いた。
・・・・ うそっ!
う〜ん・・・ ぼくは口中に広がるバタ−の香ばしい風味に圧倒されてしまった。
パンって こんなに美味しかった?
ソレは日本でよく食べるバタ−がギトギトしてるデニッシュや やたらとぱさぱさ・ごわごわする
<フランスパン>とは全然違ってた。
ハムにクリ−ミ−なチ−ズが絡まって パンの味をひきたてているよ。
「 ・・・どう ? 」
「 ・・・・ う ・・・ あ ・・・・ 」
黙って( そりゃそうだよ。口一杯に頬張ってるんだもの! ) 食べかけのパンを
じ〜っと睨んでいるぼくに きみはなんだか泣きそうな顔で聞いてくる。
・・・ちょっと待って。 そんな顔、しないで、フランソワ−ズ。
「 ・・・はあ。 すごく・・・・ 」
「 すごく ? 」
「 いや。 滅茶苦茶に・・・ 美味しいね! 」
「 よかったっ! 」
ぱあっときみの笑顔が広がって、ぼくはもう眼も口もすごいご馳走に大満足さ。
「 パンって、フランス・パンって こんなに美味しかったんだ・・・! 」
「 うふふ。 気に入ってくれて嬉しいわ。 ココのバゲットは最高よ。 」
きみの笑顔がカフェ・オ・レの湯気のむこうで揺れているよ。
あんまりあんまり眩しくて、ぼくは手元のシュガ−・ポットからやたらと砂糖を掬い出した。
「 ・・・あら、ジョ−? あなた、お砂糖、入れるヒトだった? 」
「 う・・ウン。 ・・・なんか甘いモノが欲しいから。 」
まったりとした熱々のカフェ・オ・レに きみが笑うほど砂糖をいれて。
ずず・・・っと音たてないように一口啜れば。
う〜〜ん・・・
ぼくの身体の隅々まで パリ がとどくよ。
「 甘いものって、そうね。 今夜のデザートにはケ−キを焼いてあるわ。
人参ケ−キよ、お兄ちゃんも大好きなの。 」
「 ・・・ にんじん ・・・・ 」
「 あら、嫌い? 」
「 ・・・ う、ううん。 そんなコト、ないけど 」
そりゃ、もうチビじゃないんだから人参だってピ−マンだって ・・・ 食べるさ。
でも・・・ 人参ケ−キ???
ぼくはパウンドケ−キの中にごろごろと人参の輪切が入っている様子を思い浮かべ、
どうも しっくりこなかった。
味だってさ。 あの味ってケ−キ向きかなあ・・・?
「 そのケ−キはね、ママンからの直伝なんだけど。
お兄ちゃんだけじゃなくてお兄ちゃんと同じ部隊の人たちにもとっても評判がいいの。 」
・・・なんだって??
「 差し入れに行ったときなんかね、み〜んなが食べにきちゃって・・。 ほんの小さな欠片しか
配れなかったんだけど、みんな美味しい美味しいって。 」
・・・ふ〜〜ん。
それで そのお兄さんの同僚たちはヨダレを流しそうな顔できみのこと、見てたんだろ。
わかるさ。
お兄さんの同級生とかと一緒になるって、よくあるケ−スだもの。
・・・ 冗談じゃないよ!
ぼくはテーブルの下で片手をぐ・・っと握り締めた。
「 へえ・・・。 じゃあ、今晩のデザ−トが楽しみだな。
きみの手作りのケ−キを食べられるなんて すごくラッキ−♪ 」
「 うふふ。 お兄ちゃんと丸ごとを半分コしてもいいわよ。 」
「 ・・・・・ 」
ぼくのひきつった笑いを きみは面白そうに見つめているよ。
「 さ〜て。 次は・・・ そうだ、わたしのとっておきの場所に案内するわね。 」
「 とっておき? 」
カフェをでて、さわさわと梢が風にゆれるマロニエの樹々の下を通って
ぼくらは。 ぼくとフランソワ−ズは ごく自然に腕をくんで歩く。
きみのほっそりした腕がブラウス越しにも感じられて なんかぼくはこっそり汗をぬぐった。
「 ほら。 ここよ。 」
「 わあ・・・。 これはぼくでも知ってるよ〜 」
メトロの駅からとんとん・・と階段で地上にでれば 眼の前に大きな要塞みたいな建造ブツがあった。
「 凱旋門、だろ。 」
「 大当たり。 ねえ、昇れるのよ、行ってみない? 」
「 うん、いいよ 」
そこは屋上っていうにはあまりにも殺風景で、ベンチとかはおろか端に柵もなかった。
なんだか 倉庫の上みたいだったけど、へえ?って顔で歩き回っている人が何人かいた。
きみは 空を仰ぐとすう・・・って大きく息を吸い込んだ。
「 初めてココに登ったちっちゃい頃ね、パパとママンとお兄ちゃんと 家族で来たんだけど、
怖くて泣き出したわたしの手を お兄ちゃんがしっかり握ってくれたの。」
空をじっと見たままの きみの瞳はとても優しくて・・・。
「 ふふふ・・・でもね、お兄ちゃんも怖かったらしくて泣きそうな顔して・・・
それでも涙をこらえて脚を踏ん張ってたわ。 」
「 ・・・ 優しいお兄さんだね。 」
「 二人だけになって・・・ なにかイヤなこととかあると こっそり一人でココに来たわ。
お兄ちゃんが軍に入ってからは 寂しい時ココだとお兄ちゃんと一緒に空に居られるな〜って・・
空に近いな・・・って。 」
きみはぼくに腕を預けたまま、ちいさな声で続けた。
「 B.G.の基地でも。 ・・・空をみることだけが救いだった・・・。 」
ぼくは・・・。 全然言葉が出てこなくて。
一緒に 空を見上げているだけだった。
「 ・・・今日、思い出がひとつ、増えたわ。 素敵な思い出が。 」
黙りこんじゃったぼくにきみはまた、ぱぁ〜っと笑顔を見せてくれた。
「 ・・・ え ・・・ 」
次の瞬間、するり、と腕を外すと きみはすたすたと端っこまで行って下を見下ろした。
・・・ 危ないよ!
屋上の縁は 申し訳程度高くなっているだけで、本当に柵もフェンスもなにもないんだ。
おまけに、結構高さがあるから 巻き上がってくる風が強い。
いくら ぼくらだって・・・。
「 ミラボ−橋の下には セ−ヌが流れるけど 凱旋門の下は 車が流れてるわね。 」
きみは なにか素敵なメロデイ−を低く口ずさんだ。
どこかで・・・聞いたことがあるみたいな・・・ 懐かしくてでもちょっと物悲しい・・・
ぼくはきっと ちょっと妙な顔をしていたんだろうね、きみはすぐに止めてしまった。
「 ふふふ。 パパやママンがね、よく歌ったり口笛吹いてたりしたの。
小さかったけど、覚えてしまったわ。 」
もっと聞かせて・・・って言おうとしたんだけど、きみはそのまま澄ました顔で
すとん・・・とぎりぎりの処に座り込んだ。
「 あぶないよ! そんな端っこ。 」
「 あら、平気よ。 慣れてるし・・・それに。 ・・・あ ・・・ ! 」
彼女が肩に掛けていた大判のスカ−フがふわり、と宙に流れた。
あ、と手を伸ばしたはずみに彼女の身体がぐらり、とバランスを崩した。
フランソワ−ズ ・・・!
咄嗟にぼくはスカ−フごときみをこの腕に抱き込んでいた。
腕のなかに きみのほっそりした身体を確かめて ぼくは心底ほっとしたよ。
「 ・・・大丈夫? 」
「 ・・・え、ええ。 」
「 フランソワ−ズ ? 」
「 ・・・え? ・・・・え ・・・・ あ ・・・・ ジ、ジョ− ・・・・ 」
なんだか 自分でも良くわからなかったんだけど。
ぼくはそのまま きみの唇を奪った。
ぼくは そんな自分が自分でも不思議だったんだけど。 きっとこの街の雰囲気がそうさせたんだ。
遠くで エッフェル塔が笑ってたよ。
「 ・・・ あの。 ごめん・・・ 」
「 ・・・ ジョ−。 」
「 あ・・・ぼくもきみの思い出に 参加したくて・・・ 」
「 ふふふ・・・。 ありがと。 ・・・最高の思い出だわ。 」
「 フランソワ−ズ 」
今度は ちゃんと向かい合って。
ぼくはゆっくりときみに キスした。
さあ、これで。
自信を持って、胸を張って。 ぼくはきみのお兄さんと会えるよ。
・・・ねえ。 フランソワ−ズ。
ぼくのこと、 なんて紹介してくれるのかな。
ぼくの 海外旅行第一日は最高の幕開きで始まったんだ。
***** Fin. *****
Last updated:
06,14,2005. index
*** ひと言 ***
めぼうき様の素敵サイト 【 Eve Green 】 様方の素敵絵を拝見して浮かんだお話です。
<ジョ−君のおのぼりさん・パリ旅行>? 設定としては原作『 黄金のライオン 』 の
直前ってかんじで。 ミラボ−橋云々〜は 堀口大学氏の訳詩で著名なアポリネ−ルの詩です。
シャンソンにもなって第二次大戦後復興期のパリ市民の愛唱歌になったそうです。
< ミラボ−橋の下をセ−ヌ川が流れ われらの恋が流れる > で始まる素敵な詩です。
凱旋門の上が こんなカンジなのは本当。 ちょっと怖かったですね〜。
めぼうき様〜〜 素敵な妄想のモトをありがとうございました♪