『 隣人 ― 近くの他人 ― (1) ― 』
一緒に暮らしはじめて ― もうこれは驚きの連続だった。
へ ・・え 〜〜〜〜 ?? そういうヒトだったのぉ?
ふうん・・・? そんな風に考えるのかあ ・・・
彼も彼女も 気が付かないフリ〜〜をしつつも 目の隅っこでお互いをしっかり見ていた。
お兄ちゃんと随分違うわ ・・・ ニホンジンだから?
オンナノコってミステリアス〜〜〜
過ぎてゆくごく普通の日々、ごく普通の顔をし ごく普通の会話を交わしつつも
ココロの中では へえ〜〜〜 ふうん・・・ はあ〜?? が満載だった。
島村ジョー君 と フランソワーズ・アルヌール嬢が一つ屋根の下で生活を始めたのは つい最近だ。
いや 別に二人は結婚した とか 同棲している とかいうわけじゃない。
ただ単に 同じ家で生活を始めた ということだ。
それまでもず〜〜〜っと < 一緒 > というか 全員での潜水艦暮らしってことで
寝起きを共にする、ということは体験済みだった。
しかし ― そもそも 脱出し逃避行、そして 追撃してくるヤツらを殲滅させることが
目的の日々に < 普通の生活 > は 存在しない。
そりゃそうだろう、 逃げる、つまり生き延びること が最優先なのだから
食事やら睡眠は 生きてゆくための最低限 であり 仲間の振舞いやら性癖などを
気にする余裕はなかった。
だから 共同生活 とはいえ ただ単に 同じ空間に生存していた というだけだった。
今 やっと解放された。
仲間たちは あるものは祖国に戻り、あるものはこの国で仕事を始めた。
そして
「 あの ・・・ 博士。 ぼくも一緒に住まわせてくれませんか 」
この国出身だという茶髪の青年は おずおずと申し出た。
「 おお〜〜 そうしてくれるかい? わしらも心強いよ ありがとう、009。 」
「 えへ・・・ 一応 ここはぼくの出身地ですから なんとか ・・・
あ ? わしら ・・・って博士と え〜と 001 の他にも? 」
「 わ た し。 わたしも博士とご一緒させてくださいってお願いしたの。 」
「 え!? わ〜〜〜〜〜〜 き きみも?? 003〜〜〜 」
「 じゃなくて。 」
「 へ? 」
「 003 じゃなくて。 フランソワーズよ。 フランソワーズ・アルヌールです、
ムッシュウ・じょー しまむら 」
「 あ は〜〜 ムッシュウ じゃなくて。 ただの ジョー です 」
「 わかったわ ジョー。 」
「 ありがと フランソワーズさん あ フランソワーズ。 」
「 うふふ ・・ ヨロシク〜〜
」
「 ぼくこそ〜〜 」
彼と彼女は 爽やかに笑みを交わし < 共同生活 > が始まった。
極東の島国での生活、 寄せ集めに近い・家族 だったけれど、それぞれが
それぞれに ほっとしていた。
だ け ど。 心の中では ―
**** ジョー君のつぶやき
オンナノコって! いや フランって! ど〜いう生物なんだよ 〜〜
ジョーはもう心の中で叫び通しだ。
カノジョのことは ― 気になる存在、 はっきりいって魅かれている。
なんとかして もっともっとお近づきになりたい ・・・ のだが。
・・・ どうやって近づいたらいいのさあ〜〜〜
とりあえず 何気なくただの<仲間>として接している のだが。
「 あの ね ・・・ レッスンに通えることになったの! 」
ある日 彼女は頬を染めて報告した。
「 れっすん ・・? あ ! バレエの練習?? 」
「 そうなの! 明日からなんだけど ・・・ 行っても いい? 」
「 いいって どうして?? きみの夢だったんだろ??
よかったね〜〜〜 頑張れよお〜〜 」
「 ありがとう・・・! 」
「 ぼく 出来る限り応援するからさ〜 」
「 ジョー ・・・ う 嬉しいわ・・・ 」
ちょびっと涙ぐんでいる彼女を ほとんど抱きしめたい衝動に駆られたけれど
ジョーは 爽やかに笑って手を握ることで ガマンした。
そして。 翌日から彼女は < 仰天生活 > ( ← ジョーにとって ) を
始めたのだった。
まず 彼が起き出してくる頃には もう彼女の姿はなかった。
今までだって彼女は早起きで、 朝ご飯の頃には洗濯を終えてにこにこしていた。
早起き、といえば ギルモア博士も相当な早起き、朝食前に担当の庭掃除を
すませ 時には散歩にまで行ってから朝刊を広げているのだ。
「 ・・・ おはよ〜う ・・・ フラン〜〜〜 ・・・あれ? 」
明るいリビングにもキッチンにも彼女の笑顔は見えなかった。
「 ?? 庭 かなあ ・・・ うん? 」
気が付けば 冷蔵庫にメモが貼ってある。
おはよう ジョー レッスンに行ってきます。
サンドイッチとオレンジは 冷蔵庫です☆
「 ・・・ あ そっか ・・・ ひえ〜〜〜 もうでかけちゃったのかあ 」
ちょっとがっかりしつつ 彼は冷蔵庫を開けた。
「 おう お早う ジョー。 」
彼がのんびりおいしいサンドイッチを齧っていると 博士がリビングに顔をだした。
「 あ お早うございます〜〜 博士。 朝食は冷蔵庫に 」
「 ああ もうワシは頂いたよ。 オレンジが冷えていて美味しかったぞ 」
「 へ??? 」
「 フランソワーズはレッスンに行ったぞ。 頬を染めてなあ・・・
ああ いい笑顔じゃった ・・・ 」
博士自身も嬉しそうに笑みを浮かべている。
「 そ そうですか ・・・ 」
「 うん うん。 ああ ジョー お前もなにかやりたいことがあったら
遠慮なく言っておくれ。 いつでも相談に乗るぞ 」
「 あ ・・・ ありがとうございます 」
「 ワシは書斎におるでの〜〜 ああ いい運動じゃった 」
「 運動・・・って? 」
「 うむ 食後にな〜 下の商店街までちょいと脚を伸ばしてきた。
あの角の煙草屋は 朝から開けておるのでな〜〜 なかなか便利さ。 」
博士はパイプ煙草を愛用している。
「 え ・・・ あの海岸通りまで ? 」
「 ああ 思索するには丁度よい距離じゃな え〜〜と?? お茶をもらってゆくぞ 」
「 はあ 」
特大湯呑みに器用にお茶を淹れ、博士もご機嫌で自室に消えた。
「 ・・・ な なんか … 皆 リア充…ッてヤツ? ちょっち違うか・・ ま いっか。 」
彼は残りの朝食を 楽しんだ。
ギルモア邸の朝は そんな風に始まることとなったのだが。
ジョーの < 気になるあのコ > は ますます不思議な生活を始めた!
毎朝はりきってレッスンにでかけて ジョーがバイトから帰ってくるころには
ちゃ〜〜んともう帰宅している。
「 ジョー おかえりなさい。 晩ご飯 ハンバーグよ〜〜 」
なんて にこにこ・・・ キッチンから顔をだす。
「 ただいま〜〜 わい〜 嬉しいなあ〜〜 」
ジョーは疲れなんかふっとんで もう に〜〜んまりする。
博士と三人で楽しい晩御飯の食卓を囲む。
TVなんか つけない。
つけなくても 三人でのおしゃべりが賑やかで楽しいのだ。
えへへへ ・・・ < 家族 > ってこんな気分なのかなあ〜〜
えへ ・・・ このままカノジョとホンチャンの かぞく〜〜〜
なあ〜んちゃってぇ〜〜〜〜 うっひゃ〜〜〜〜
「 ? ジョー ? どうしたの 顔 真っ赤よ? 」
「 え!! い いや な なんでも ・・・ 」
「 そう? 暑い?? 窓 開けましょうか? 」
「 え い いいです ・・・ あ ご馳走さま 」
食後 ― 皆でリビングでのんびりする。
それぞれが 自分の仕事 を持ち込んでてんでに集中しているが 一緒に同じ空間に
いるってだけで なんとなくほっとするものだ。
ジョーは バイト先で必要な事項を 覚えたり、ヘッドホンで音楽を聞いたり雑誌を
ぱらぱらめくったり・・・・ 一人でいるけど 一人じゃない 微妙な感触を楽しむのだった。
へへへ ・・・ あ フランは 〜〜
はへ???
ふっと 気になるあのコ の方を向けば ― 彼女はソファでなにやら裁縫をしていた
― が。
・・・ ??? 脚 ・・・ どっから出てるんだ??
彼女の足、パンツに包まれたすんなりと細い脚は 信じられない位置に伸びていた。
はっきり言えば かっぱ〜〜〜ん・・・と拡げられている。
え??? ぼく ・・・ 目がオカシイのかな・・・?
( ゴシゴシ 目を拭う ) え 〜〜〜〜 っと ・・・
何処から脚がついてるんだ???
??? だってど〜してえ〜〜〜 そこに脚が行くんだ??
・・ 003って トクベツ仕様 なんだっけ??
「 ふうん ・・・ やっぱり下の方がいいわあ〜 」
ぶつぶつ独り言をいうと ― すとん。
彼女はソファからすべり降り、 絨毯の上に直接座った。
「 うん ・・・ こっちの方がいいわ 」
そして 脚は といえば。 かっぱ〜〜〜〜ん ・・・ 見事に左右に拡がり
その間の空間に 針仕事の道具などを置いている。
「 ??? ニンゲンの脚って。 あ〜ゆ〜ふうには ならないよ ね?
あ〜〜 やっぱ彼女 ・・・ トクベツに改造されちゃってるのかなあ ・・・ 」
ジョーは ちょっとばかりしんみりし、目を逸らせて ― たかったのだが
彼の視線はますますくぎ付けだ。
そういえば このところ毎晩、彼女はあの縫い物をしているのだ。
・・・ だいたいさ 何 縫ってるんだ??
ひらひら〜〜 しているのは リボン だよね??
ジョーは彼女の手元に目を凝らす。
彼だって 009、 003ほどじゃないけれど常人よりも遥かに
精度の高い視力をもっている。
けど ・・・ いくら見えてたって 知らないモノ、初めて見るモノ については
なにがなんだかさっぱり〜 なのだ。
靴 ・・・ みたいだな〜〜 布の靴???
それにリボンを縫い付けているんだ ・・・・
え〜〜〜 あんな靴 履いてたこと、あるかなあ〜
室内用の靴なのかな? でもそれにしちゃ固そうだし・・・??
彼は首をひねりっぱなしだ。
あ またなんか出してきた・・・!
・・・ 薄べったい ・・・ ゴムかあ???
どこに 填めるんだ??
え?? そ それも縫い付けるのか??
― カカトに??
カカトってば ヒールがないなあ あの靴〜〜
やっぱり室内靴なのか ・・・
ジョーは 雑誌を眺めつつ音楽をきいている〜〜といった恰好で
その実、 興味深々〜〜〜 全身が目になっているみたいだ。
フランソワーズはそんな彼の視線などまった〜〜く気にも留めず ずっと
なにやら縫い付けたりしていたが やがてその靴を手に取ると床に置いた。
そして ― がし。 靴の甲の部分を がっしり踏みつけた。
うお?? ・・・ 靴、潰れないか〜〜〜
踏み踏みしたり 手にとってぐにゃぐにゃ弄ったりしてから
彼女はやっと靴を履き始めた。
・・・ なんか 足を靴の中に突っ込むって感じ・・・
ありゃ?
どん どん どん ! 彼女は件の靴を履いた足を 床に打ち付ける。
「 ・・・ あ ? フラン ・・・? 」
想わず言葉が口から飛び出してしまった。
「 ・・・ ? ジョー なあに? お茶? 」
「 あ ! う ううん ううん ・・・ そのぅ 靴 ・・・ 」
彼は おずおずと床を指さした。
「 あ〜 音、煩かった?? ここのフロアなら傷はつかないと思うけど 」
「 あ そ そういう意味じゃなくて ・・・ 音がした からびっくりして 」
「 ごめんなさい〜 ちょっと試着してみたかったの。 」
「 そっか ・・・ あの〜〜 その靴 ・・・ ? 」
「 ? ああ これ? 靴っていうか わたしの商売道具♪ 」
「 しょうばいどうぐ?? 」
「 そ。 毎日のクラスで履く分だからたくさん作っておかないとね〜〜 」
「 毎日・・・って あ! レッスンで履くのかあ〜〜 」
「 そうよ〜〜 ほら ポアント・・・ あ トウ・シューズ って
言ったほうがいいかしら 」
彼女は 両足をその硬そう〜〜な靴に突っ込むとフロアに立った。
「 あ〜〜 それなら ぼくも見たこと あるよ! へえ ・・・
こんな感じなのかあ〜〜 」
ますます興味深々〜〜で 彼は 彼女の足元ににじり寄りしげしげと眺める。
不思議なクツは つるつるの布で被われていて艶々ひかっていた。
ヒモ、 いや リボンでがっちり足首に結びつけられている。
ふうん ・・・ なんだか硬そうだな ・・・
こんなの履いて よく跳んだりはねたりできるなあ
「 そうなのよ あ ちょっと足慣らしするから離れてくれる? 」
「 あ ごめん ! あっち 行こうか 」
「 見ててちっとも構わないわ でも 蹴飛ばしちゃったらアブナイから ・・・ 」
「 う うん 」
彼は大人しくソファの上に避難した。
「 ちょっとうるさいかも・・・ あ 音楽聞いていたでしょう? いい? 」
「 うん 勿論! 」
「 じゃ ちょっと失礼します〜〜 」
きゅ。 彼女の足元であの靴が 撓み音をだした。
「 !?! 」
きゅ きゅ きゅ。 片方の足の甲で反対の靴の裏をぐいぐい押したり撓めたりしりしてから
とん。 その靴は爪先だけで立ち上がった!
うわあ ・・・ ! そんなことって 可能な わけ??
目を丸くした彼の真ん前で あの固そうな靴はさらにさらに信じられない動きをはじめた。
きゅ とん。 きゅ とん。 とととと・・・・・
立ち上がったり 降りたり。 立ち上がったり降りたり数回繰り返した後
爪先だけで立ったまま 彼女は とととと ・・っと動きだした。
うっそ〜〜〜 なんで?? どうして??
あの靴 ・・・ 魔法の靴なのか??
いや やっぱり 003の足って特別仕様・・なのか??
「 ふうん・・・? ちょっと固いなあ・・・ でもしょうがないわね〜〜
あ ジョー ちょっとゴメンね? 」
「 ? え う うん?? 」
独り言か? と聞こえる発言の後、 彼女はリビングの空いている場所に立つと
ふわ・・・ くるり。 くるり くるり
なんと回転をするのだ。 それも ふわ〜〜〜・・・っと宙に浮くような・・!
うっぴゃ〜〜〜〜〜〜 ・・・・ !
ふ フランも 飛べるのか??? ジェットみたくに
で でもエンジンの音なんかしないよ?
やっぱ 特殊な能力が仕込まれている とか ・・?
あ! もしかして イワンみたく超能力で宙に浮かんでるのかも?
ともかく すっげ〜〜〜〜〜〜
「 う〜〜ん?? まあまあ ね。 でも次は違うのにしてみるわ
」
すとん。 彼女は突然動きを止めると くるくるリボンを解いて
件の靴を脱いだ。
「 ・・・ そ その靴 ・・・って 」
「 え? うん ・・・ ちょっと合わなくなってきたから変えようかな〜って思って 」
「 かえる? 」
「 そ。 メーカーとか サイズとか 」
「 ・・・ 足 って。 そんなに変わるのかい ・・・ ぼくなんて
ず〜〜っと同じメーカ― で 同じサイズのすにーかーだもんな 」
「 あ〜 そうねえ 普通の靴とはちょっと違うのよ。 足の状態とかテクニックの
程度とかでも 靴を変えるの。 」
「 へ〜〜え〜〜 あ だから 商売道具 なのかあ・・・ 」
「 そうかも ・・・ あと3足くらい用意しておかないとね 」
「 え??? そんなに? 足って 二つしかない よね?? 」
「 あ ・・・ だいたいね〜 一週間に一足か二足は履き潰すのよ〜
舞台とかあれば 何足も用意しておくの 」
「 へ え・・・ はきつぶす?? 」
「 そうなの。 ほら 触ってみて? この靴は布でできてるのよ。 芯には硬いモノが
入っているけど。 爪先は布を特殊なノリで固めているの。
だから布が破けて先が柔らか くなったら もう履けないの。 」
「 へ〜〜〜〜 え〜〜〜〜 うわ! カチカチだああ 」
彼は こそ・・・っと そのピンク色の艶々した靴に触れてみた。
「 へえ ・・・ ふうん〜〜 すごいなあ〜〜 こんなの 履くんだ?
もしかして ・・・ 防護服のブーツよか硬い かも ・・・ 」
「 あは そうねえ・・・ 新品のポアントで ぶん殴られたら ジョーだって
くら〜〜〜っとなるかもよ〜〜 」
「 うわ〜〜〜 おっかね〜〜〜 でもさ 痛くない?? そんな硬い靴で さ 」
「 う〜ん・・・ そりゃ 最初は痛いけど・・・もう慣れちゃったわ。
足になじめばね 痛くはないわ。 」
「 すっげ〜〜〜 ・・ すっげ〜〜〜 そんでもってさっきみたくくるくる回っちゃうんだ もんな〜 」
「 ムカシね〜 聞いたことがあるんだけど・・・
ポアントで立つことで 重力からの解放 を表現したのですって 最初はね 」
「 へ〜〜〜 ・・・ ジェットみたいだなあ 」
「 え?? ああ そうねえ 彼も < 重力からの開放 > かもね 」
「 全然優雅じゃないけど さ
」
あはは うふふふ 〜〜 二人は声を上げて笑った。
あ かっわいい〜〜〜 ♪
彼女の笑顔って ほっんと〜〜に ・・・ 好きだな〜
「 あ〜 だからねえ わたし、縫い物してること、多いと思うわ。 」
「 そうなんだ? ふうん ・・・ ぼく 全然知らない世界だから ・・・
も〜〜 びっくり さ。 」
「 そう? あ ・・・ お茶でも淹れる? 」
「 うん! 博士にももってゆくよ。 」
「 お願いね〜 それじゃ ロシアン・ティ にしましょうか 」
「 ジャム入りのだね? うん! あ ぼくさ〜〜 マーマレードがいいな 」
「 了解〜〜 」
「 ふふふ〜〜〜ん♪ 」
え へへへ ・・・
こんなカワイイ笑顔と一緒に 一つ屋根の下って♪
な〜〜んかいいよなあ〜〜
「 じゃ ちょっと片づけてっと・・・ 」
ひょい。 彼女は床に落ちていたリボンの端っこを足の指でつまむと・・・
いとも簡単に拾いあげ 手にとった。
?? うっそ ・・・???
ど どこまで脚があがるんだ〜〜〜〜???
「 ジョー? この雑誌 まだ読む? 」
「 ・・・ え??? 」
「 この雑誌 ・・ ラックに片してもいいかしら 」
「 あ はい どうぞ ・・・ すいません ・・・ 出しっぱで ・・・ 」
「 やだ 謝らないでよ 部屋にもってゆくのかな〜って思ったから 」
「 う ううん ・・・ ここに置いとく。 皆も読めるように 」
「 ありがとう〜〜 じゃ お茶 淹れくるわね 」
「 うん。 あ カーテン 閉めてなかったな〜 」
彼は テラスに寄りちょっと夜空を眺めてから カーテンを引こうとした。
はへ???
窓ガラスには 片脚をひょい、と耳の横まで持ち上げ きゅ きゅ …と
手で引き寄せている彼女の姿が 映っていた ・・・!
うっそ〜〜〜〜〜〜 ・・・!!!
やっぱ やっぱ 003 って トクベツ仕様 なんだあ〜〜
― その夜 ジョーの部屋からは ・・・
ぐぎぎぎ ・・・・ う〜〜〜〜
奇怪 かつ 尋常ならざる音が漏れている。
「 う〜〜〜〜 ( ぐき。 ) いてててて・・・ 」
ジョーは 脚をひっぱり上げ・・・ ようとして ベッドに倒れこんだ。
「 って〜〜〜〜 ! 無理だよぉ〜〜 とってもじゃないけど ぼくの脚は
あんな風には上がらない〜〜 あ〜〜〜 いって〜〜〜〜 」
彼は しばらく涙目になって脚をさすっていた。
「 ・・・ ううう ・・・ 昔っから身体、硬かったもんなあ〜 」
ふう ・・・ ぼ〜っと天井を眺めた。
「 うん ・・・ よくなにか針と糸でちくちくやってるな〜ってのは
気が付いていたけど ・・・ あんな変わった靴、縫ってたんだ・・・
防護服着てるときとは 全然違うよな〜 えへ ・・・ でもあの脚〜〜
すっごくキレイだなあ〜って思ったけど さ 」
えへ ・・・ タイプ だよ〜〜〜〜
なんとかして うん! こっち向いてほしいな〜〜
生き残るために必死の < 逃避行 > という闘いの時には ほとんど意識しなかった
いや ジョーにはそんな余裕はなかったが ― 意識の底では < あのコ > を
し〜〜っかりチェックしていたのだ。
闘い終わって 普通の日々が巡ってきて ― 彼女も そして ジョー自身も
< ごく普通のヒト > として暮らせるようになり ・・・
ばっち〜〜ん♪ 彼女に彼の目はもうくぎ付けだ。
一つ屋根の下に な〜んとあの美少女が暮らしているのだ。
ジョーは 自然ににまにま〜〜 口元が緩みそうだった。
彼女は買い物などには 可愛いスカートなんか穿いてくれてウレシイのだけれど
ウチでは ほとんどすっきりパンツ姿だった。
う〜〜ん ・・・ ぼくとしては〜〜 すか〜とふわふわ〜が
好きなんだけどなあ〜〜
まあ ヒトの好みなんだから仕方ないか・・・ と思っていたが。
そっか ・・・ あ〜ゆ〜風に過ごすためには パンツ姿 が
便利だよな ・・・ う〜〜ん ちょっとがっかり・・・かも ・・・
自分の知らなかった世界を垣間見させてもらい ジョーはひたすら感心していた。
ジョーの < 気になるあのコ > は 普段は いつもふんふん〜〜〜♪
なにかハナウタを口ずさみ、軽い足取りで家事をこなしている。
えへ ・・・ おかあさん って。 こんな感じなのかな〜〜
母を知らないジョーは 彼女がキッチンにいるだけでもなんとなく嬉しいのだ。
< お帰りなさい > なんて言ってもらって ふわ〜〜ん …と 夕食の香なんかが
漂ってくると それだけでもうもう感激してしまう。
「 ・・・?? ジョー どうしたの?? 具合 悪い?? 」
しばしばリビングやらキッチンの入口で 立ち尽くす彼に 彼女の方が驚いていた。
「 あ ・・・ う ううん ううん ・・・あは ただいま〜〜 」
「 ? お帰りなさい。 晩御飯、ジョーの好きなハンバーグよ〜〜 」
「 う わ〜〜〜〜♪ あ ぼく、風呂場の掃除! やるね! 」
「 お願いします〜 あ 洗濯もの、邪魔だったら外してね 」
「 おっけ〜〜 テラスに掛けておこうか?
」
「 いい? 」
「 勿論〜〜 」
勇んでバス・ルームに行けば タオルやらタイツやら色とりどりのレオタードやらが
乾してある。
え〜と ?? 風に当てるかあ ・・・
物慣れた手つきで ジョーは風呂場に下げてあった洗濯モノを集めた。
レオタード という 水着みたいなモノに 最初はドキドキしたけれど・・・
稽古着 って言ってるもんな〜
練習用のユニフォーム ってことだよね
サッカーや 野球とかと同じだよな〜
えへ・・・でも キレイだよね〜〜
フランが着てるとこ、みたいな・・・ えへ・・・
島村ジョー君にとって楽しい < 共同生活 > の日々である。
**** フランソワーズ嬢のつぶやき。
「 ・・・ ほっんと 変わったオトコノコねえ ・・・ お兄ちゃんや
ムカシの友達とは全然違うわ ・・ ニホンジンだから???
・・・ うふふ ・・・ でも イヤじゃないのよ、なんとなく 好き かも♪ 」
フランソワーズ・アルヌール嬢は最近、ず〜っとそんな風に思っている。
Last updated : 07,05,2016.
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********** 途中ですが
え〜〜 ・・・ 平ゼロ でも 原作 でも ・・・
まだ一緒に住み始めた頃の 二人 かな〜
あ ポアント ( トウ・シューズ ) ってね
消耗品なんですよ〜〜