『  なつやすみ  ― (3) ―  』

 

 

 

 

 

 

 

 ぎらぎら太陽が やたらと頑張っているその年の夏 ―

 

岬の島村さん家の双子は 楽しい・楽しい 夏休みの日々を送っている。

お父さんとの超早朝のジョギングも どうやらなんとか続いているし

学校のプールにも 元気に通っている。

 

「 おか〜さん  僕ぅ お昼ご飯のあと、としょかん いくね。 わたなべクンと 」

出がけに すばるがとても熱心に申告する。

「 はい わかったわ。 < たたんた・たん > までには

 お家にもどっていること。 いい? 」

「 ウン 」

「 図書館には時計 あるから ちゃんと見るのよ 

「 は〜〜い 

「 おか〜さん アタシ 今日、バレエきょうしつ。 」

「 そうね、 忘れ物しないように。 シューズ 忘れないのよ 」

「 ウン 」

「 髪 お団子にしてね。 この前 教えたわね 」

「 う うん・・・ 」

「 出来なかったらね、 お下げのままでいいから。  」

「 うん♪ アタシ おけいこ がんばる〜〜〜 

「 今日は お母さんがお迎えにゆくからね 」

「 わい〜〜 ねえ じてんしゃ ご〜〜〜 やって〜〜〜 

「 ・・・ 考えときます。 」

早朝ジョギング から帰り た〜っぷり朝ごはんを食べ

すぴかとすばるは たったか学校の夏季水泳指導 に出かけていった。

 

「 ふふふ ・・・いつも元気じゃなあ  」

博士がにこにこ・・・ テラスで庭仕事に精をだす。

去年、 子供たちが持ち帰った朝顔は 零れ種が元気に芽をだした。

テラスの柱に絡みつき 今は毎朝色とりどりの花を咲かす。

その水やりやら ツルのためのつっかい棒 とか 咲き終わった花をつむ・・・

  とかは 博士の手を煩わせ  ―  さらに。

「 あ〜  ちびさん達のプチ・トマト かあ ・・・

 こりゃ 手を入れんとまずいなあ。  鉢植えごと温室にいれるか? 」

博士は如雨露片手に テラスで思案をしている。

 

すばる と わたなべクンは < うごくでんしゃ > 作り に熱中している。

二人して 図書館に通い せっけいず ― 単なる想像図 に

近かったけれど ― を書き コツコツ材料を集めている。

「 おか〜さん あきばこ ある? 」

「 あきばこ? なんの 

「 なんでもいい 」

「 なんでも・・・って なにに使うの すばる 」

「 あのね なつやすみのしゅくだい。 うごくでんしゃ つくる。 」

「 え〜〜〜 すばるが?? 」

「 ウン。 わたなべクンといっしょ。 ねえ あきばこ ある? 」

「 う〜〜ん それじゃしっかりした箱がいいんでしょ?

 すぐに潰れちゃうのじゃなくて 

「 ウン、 じょうぶなのある 」

「 う〜〜ん お菓子や食べ物の箱は あまり丈夫じゃないわねえ 

 あ おじいちゃまに聞いてみれば? お仕事で使う箱 あると思うわ。 」

「 うん!  おじ〜ちゃま〜〜〜〜 」

すばるは博士のもとに飛んでゆき ―

「 はこ? ・・・ うごくでんしゃ にする?

 ふ〜〜〜ん・・・ ちょっとお待ち。 」

 

 ガサ ゴソ ゴソ ―  なにやらアルファベットがいっぱいついた空き箱を

山ほど 出してもらった。

 

「 わ・・・ すご ・・・ これ えいご? 

「 いろんな国からのものだからなあ ・・・

 気に入ったのを持っておゆき。 どれでも いくつでも 

「 わ ・・・ あ わたなべクンとそうだんしていい、おじいちゃま? 」

「 おう 共同制作者 にも 見てもらえばいい。 」

「 わ〜〜 ありがと〜〜 おじいちゃま〜〜 」

両腕いっぱい空き箱かかえ すばるはもうご機嫌ちゃんだ。

「 二人でよく相談しなさい。  < うごく > ためにどうするのかね 

「 ウン あのね〜〜 わごむ でぐりぐり〜〜〜〜〜ってやるんだ〜

 学校のとしょしつ でね〜 『 うごくこうさく 』 ってほん、

 みつけたんだ〜〜   あ これヒミツだよ? 」

「 輪ゴムで?  おお そりゃ立派な動力だな 」

「 どうりょく? 」

「 動かすためのチカラ という意味じゃよ。

 輪ゴムを捻るのじゃったら 車輛もしっかりと作るといい。 」

「 しゃじく ってなあに 」

「 車体をささえる柱みたいなものさ。 大切なんじゃ。 」

「 ふうん・・・  かたいはこ つかうね 

「 おお おお さすがすばるじゃのう 

「 あは わたなべクンがおしえてくれたんだ〜〜 」

「 そうかそうか  お前たちはほんにいい友達だのう 」

「 えへへ〜〜 僕たち しんゆう だも〜〜ん 」

すばるは 茶色の瞳をくりくり〜〜させ 大喜びで箱をもっていった。

 

「 すばる? わたなべクンに来てもらって・・・ ウチで作業しても

 いいわよ〜〜  」

「 わお〜〜 

「 図書館じゃ 作業はできないでしょ? 

 おじいちゃまから頂いた箱で つくるのね? 」

「 うん! わたなべクンと〜〜 」

「 それじゃね〜 リビングに新聞紙を敷いておくから。

 その上で作業していいわ。 ノリとかテープとか鋏 いるわね〜 」

「 わ〜〜い 僕たちのこうじょうだ〜〜 」

「 お母さんから わたなべくんのお家に電話しておくから。

 プールの後、一緒に帰ってらっしゃい 」

「 うん!!! わ〜〜い わ〜〜い 」

 

 ― そして リビングの一画は < 車輛作成工場 > となり

のり だの はさみ だの せろてーぷ だの ・・・が

散乱するようになった。

 

「 う〜〜ん ・・・ くっつかない〜〜 」

「 どこ?  あ ねじねじゴムをくっつけるトコ かあ 」

「 ん〜〜  のり と テープ はったけど 」

「 えいっ!  ・・・ あ〜〜 とれちゃった・・・ 」

二人は 動力部分を車体にくっつけるのに苦心している。

「 ? どうしたね 

「 あ おじ〜ちゃま〜〜 」

博士が 如雨露に水を入れに通りかかった。

「 ふむ?  ここがくっつかない って ?

 ・・・ そうか。 それじゃなあ くっつけるのはやめて 

「「 え??  」」

「 こう して ・・・ な? 」

「 ・・・・ うわあ〜〜〜 」

「 すげ ・・・ 」

博士は ちょい ちょい と子供用の鋏を使い 彼らの問題を

いとも簡単にクリアしてみせた。

「 な?  はりつける 以外の方法を見つけてごらん 」

「 わ すっげ〜〜 すっげ〜〜〜  

 あ そしたら〜〜 ぱんたぐらふ も ・・・ 」

わたなべクンは 案外器用に鋏を動かしはじめた。

「 わお〜〜 わたなべクン すっげ〜〜 」

「 こっち 切って? 

「 うん ! 

チビでもさすが男の子、 手作りの車体は立派に < 電車 >

になってきた。

 

「 おか〜さん 明日 わたなべクンち にいくね 」

一週間くらい経った日 すばるが報告してきた。

「 え  約束したの? 」

「 うん。  でんしゃのいろ ぬるんだ〜 」

「 え・・・ ちょ ちょっと待ってよ 」

フランソワーズは慌てて リビングの固定電話にとんでいった。

 

「 はい あらあ〜〜  すばる君のおか〜さん 」

わたなべクンのお母さんはいつもの通り明るい声だ。

「 こんにちは  あの ・・・ 今 すばるが言うのですが・・

 明日 御宅様にお邪魔するとか 」

「 ええ ええ 大地がはりきってますの。

 色塗り? そ〜なんですよ  ウチにねえ 絵具がけっこう余っているので 

 それを使えれば〜〜 って思いましてね 」

「 え ・・・ でも お家、汚れません? 」

「 大丈夫。 レジャー・シートの上に だ〜〜〜〜っと

 新聞紙 広げますから。  二人の力作に期待ですわ 

わたなべくん・まま は ころころ〜〜 楽しそうに笑う。

「 ・・・ すみません・・・ 汚したらびしびし叱ってくださいね 

「 はいはい  すばるクンによろしく〜〜 」

「 ありがとうございます 

フランソワーズは丁寧に電話を切った。

 

「 ね? 

すぐ脇で すばるはにこにこしている。

「 ええ そうね。 すばる、わたなべクンのお家を汚したらダメよ?

 ウチはも〜〜 いろいろ汚れてるけど ヨソのお家は綺麗なんだから 」

「 僕たち よごしたりしな〜いも〜〜ん 

これ ぬるんだ〜〜  すばるは とて〜〜も大事そう〜に

< うごくでんしゃ > を抱えてきた。

「 あら ・・・ よくできてる 」

「 ふっふっふ〜〜〜  ちゃんとうごくんだよ〜〜 」

「 すごい ・・・・ すばる 

「 わたなべクンね とってもはさみつかうの じょうずだよ 」

「 そうねえ お母さんに似てわたなべクン、器用だものねえ 」

「 僕は 〜〜〜 」

「 すばるも 上手になったわよ。 ね 色塗りおわったら

 お母さんにも見せてね。 」

「 うん♪ いっとさいしょ は おじ〜ちゃま だけど 」

「 そうね そうね 」

 

すばるは 着々と、そしてものすご〜〜く楽しそうに 夏休みの

宿題を消化?している。

 

 

「 あら ?  カーテン 閉めたはずなのに ・・・ 」

晩御飯も終わって 鳩時計が九つ、鳴いたとき

フランソワーズはちょいと首をひねった。

リビングの隅っこ テラスへのサッシ側のカーテンが少しだけ 開いている。

「 やだわ わたし、きっちりしめなかったのかしら。 」

腕を伸ばした時  ―  しろっぽいパジャマの背中がちらり、と見えた。

 

     !  すぴか。 わざわざここから出たの?

 

 カラリ。 彼女は慌ててサッシを開いた。

「 すぴかさん?  ほら もうおやすみなさい の時間よ 」

「 え ・・・ うん 」

フランソワーズは テラスにいる娘に声をかけた。

すぴかは パジャマ姿で じ〜〜〜っと夜空を見上げているのだ。

「 ? ああ ・・・ お星さま、 きれいね 」

「 ・・・ うん ・・・ 」

「 お星さまの観察をしていたの? さあもう中にはいって

 お休みなさい、しましょ。 

「 ・・・ う  ん ・・・ 」

すぴかは 珍しく生返事、視線は空から離れない。

 

     あらら ・・・・ どうしたのかな

     なにかあったのかしら

 

「 すぴかさん。  ・・・ どうか した? 」

彼女はベランダにでて 幼い娘の肩を引き寄せた。

「 おか〜さん  どうもしないよ?

 アタシ 空 みてたの。 」

「 ああ そうなの?  でも もう中に入って寝ましょう?

 明日の朝も お日様より前 に起床 でしょ?  

「 あ  うん ・・・ 」

 

   ふぁ〜〜〜〜      すぴかは特大の欠伸をした。

 

「 ほうら おやすみなさい〜〜って。 お星さまに挨拶して ・・・

 明日も お天気ね〜〜〜  」

小さな肩を抱きかかえるみたいにして 彼女は彼女の娘と一緒に

室内に戻った。

 

 

そういえば このごろ  早朝ジョギングの時 すぴかはアクビを

ぼわぼわ〜〜 連発していた・・・

 

    ふうん ・・・ すぴかの < かんさつ日記 > は

    お星さま なのかしらね・・・

 

このちょっと変わった感性をもつ娘の宿題を フランソワ―ズはとても

楽しみにしていた。

 

 

   ―  その夜 ・・・・

 

         ゆさ ゆさ  ゆさ ゆさ  ―  

 

ジョーは身体全体をはげしく揺さぶられるのを感じた。

 

      ・・・ う?   な に ・・・

    

       !!!  緊急事態 か!?

 

熟睡していた彼は  009モード になって飛び起きた。

目の前には  ―  003の真顔があった。

 

       これ  は・・・?

 

「  すぴかが いないの !  ベッド 空なのよ 

 

       え???  

 

彼の中で 009  →  すぴかのおとうさん  へ 即行でモーチェンジ。

 

「 ・・・ トイレ とか 」

「 みたわ!  バス・ルームにも 下のキッチンやリビングも 」

「 すばるは 」

ジョーは パジャマを脱ぎ棄てつつ 妻に聞いた。

「 寝てるわ。 いつもの通り・・・ 」

「 ちょっと探してくる 」

「 家の中には いないの!  わたし全部 見た んだもの。 

「 わかった。 きみは子供部屋にいてくれ 

「 ええ ・・・ 」

 

足音を殺し、廊下を移動する。  

 

   カタン。   子供部屋は 小さな常夜灯が点っている。

 

       ふうん ・・・?  変わりは ないな。

       すばるは ―  ああ  よく寝てる・・・・

 

すぴかのベッドは 一旦は寝た形跡があった。

しかし パジャマはきっちりたたんである。

島村さんち では パジャマを脱いだらきちんと畳む、 がお約束なのだ。

それにいつも枕元に置いてある服は ない。

 

       ・・・ ということは。 

       アイツは自分の意志で ベッドから抜け出した??

 

       テラスへのサッシは  閉まってる、施錠済みだな

 

 

    ≪  いたわ!  ・・・ 裏庭の樫の木!  ≫

 

脳波通信が飛び込んできた。

≪ よかった!  ってか 樫の木 だって??? ≫

ジョーは 全速力で 裏口から庭に出た。

 

 

 

  ほ〜 ほ〜〜   ジジジ  ジジジ ―  

 

裏山からなにか鳥の声がする。  地虫の声もにぎやかだ。

勝手知ったる我が家の裏庭 ・・・・ なのだが

夜はどうも別世界に感じてしまうのは 気のせいだろうか。

ジョーは ゆっくり進んでゆく。

 

闇の中 白い温室がぼ〜〜〜っと浮き上がり その奥に黒い闇となった

樫の大木が どん、 と構えている。

 

  ≪  ここに ・・・? 登ってるのか?? ≫

 

ジョーは足音もたてずに 大木に近づき見上げる。

 

      ん ・・・・ どこにいる・・・・?

 

003ほどではないが 009も常人を遥かに超える視力をもっているし

偏光レンズ眼 を使えば夜間でもばっちりだ。

樫の木の梢を丹念に見てゆく。

 

      すぴか すぴか〜〜〜 どこだ?? 

      う〜〜〜  いない?  いや もっと上か??

 

       ・・・  あ !  いたっ!!!

 

≪ あ みつけたわ〜〜〜 ≫

ほぼ同時に 脳波通信が飛び込んできた。

≪ ぼくも見つけた!  ・・・・ しっかし〜〜〜

 アイツ なんでもってあんな天辺まで登ったたんだ? ≫

≪ いいから〜〜〜 はやく助けて!!!

 バランス崩したら ・・・ いや〜〜〜 考えたくないっ ≫

≪ こら 落ちつけって。  いやあ この木 でかいなあ ≫

≪ そんなこと 言ってる場合!? ねえ ジャンプしてすぴかを ≫

≪ 落ちつけって。  アイツ ・・・ なんかしてるんだ ≫

≪ え? ・・・・ あら ホント。 枝の間に座って・・・

 上を見てる・・・ ノートになにか書いてる・・・? 

≪  うん。  え・・・ 座布団みたいなの、敷いてるぜ? ≫

≪ やだ〜〜〜 持って登ったのかしら ≫

≪ ゆっくり声 かけてみる ≫

≪ お願い。  ≫

≪ 任せろ ≫

 

 ジョーは すぴかが座り込んでいる枝のほぼ真下に移動した。

 

「  ・・・ すぴか。  おい すぴか 」

 

彼は 低いけれどよく通る声で呼びかけた。

 

  ガサガサ  ガサ ・・・・  樫の木の小枝が揺れる。

「 すぴか。  お父さんだよ。 すぴか 返事しなさい。 」

「 え〜〜〜  おと〜〜さん ??? 」

いつもと同じ高さ いつもと同じ強さ いつもと同じトーンで

 ― つまり 甲高い元気な声 が 上から降ってきた。

「 そうだよ。 お父さんだよ。 今から助けにゆくから

 そこでじっとしていなさい 」

「 え なにかごよう?? 」

「 あ〜〜 ごようってこともないけど・・・ とにかくそこにいなさい。

 お父さんがいくから! 」

 

    ガサガサガサ ・・・・ 枝がまた揺れた。

 

「 ? 」

ジョーが一番下の枝に手を掛けると まもなく

 

「 なに〜〜〜 おと〜さん 

 

すぴかの顔が 枝の間から現れたと思ったら ― 低い枝から ぽん、 と飛び降りた。

「 お おいおい   すぴか〜〜〜 」

「 おと〜さん  ごよう なに? 

「 なに・・・って お前・・・ 」

「 う〜〜ん もっとかんさつ、したかったんだけどぉ〜〜 」

すぴかは TシャツをめくりGパンの背中からノートを取りだした。

「 ま きょうはこれでいっか。   ね〜 おと〜さん なに? 」

「 ・・・ すぴか。 かんさつ って。

 こんな時間に 木の上で観察してたのかい??  なにを??  」

「 うん。 この木、 すぴかのじんちだもん。 」

「 じんち??? 」

「 そ。  えへへ〜〜 すばるはここまでのぼれないし〜〜

 ここはね〜 アタシのひみつきち なんだ 」

「 は あ ・・・? 」

 

 そう・・・  樫の大木   すぴかの秘密基地。

木登り大得意な彼女は 入り組んだ枝の間に空間をみつけ

絵本や座布団をもち込んでいた。

 

「 そ その 秘密基地 でなにを観察していたんだい? 」

「 あのね < 夜がおわるのをかんさつ > 」

「 よ  夜が終わるのを?? 」

「 ウン。 なつやすみのしゅくだい。 かんさつ日記 」

「 へ・・え〜〜〜 夜が終わるのを かあ ・・・ 

「 うん。 いつかさ、 海のとこでさ〜 よるがあさになったじゃん 

「 ・・・ 夜が朝に?   あ〜〜 夜明けだったねえ 」

「 そんでさ〜 夜がおわるとこ、かんさつする! って思って。

 あのね〜〜 木の上だと ベランダでかんさつするよかず〜〜〜っと

 よくできるんだよ? おとうさん 知ってた? 」

「 知らないなあ〜  でもね すぴか。 

 真っ暗で危ないだろ?  もしおっこちたら 」

「 アタシ おちないもん。  あそこは 陣地だし 

「 う〜〜〜ん ・・・ でもなあ 危ないよ 」

「 あぶなくないもん。 おうちの木だし 〜〜 

「 そうなんだけど さ 」

すぴかは なんで??  という顔だし ジョーはほとほと困ってしまった。

確かに すぴかは木登り名人だし、この樫の木は裏庭にある。

 が しかし。  夜中に一人で木登りされては ― 大変困るのだ。

「 そうなんだけどもさ   え〜〜と 」

ジョーが言葉に詰まっていると ・・・

 

「 すぴか!! 」

 

パジャマ姿のお母さんが 裏口から駆けてきた。

「 あ〜  ・・・ おか〜さん ・・・ 」

「 すぴかがベッドにいない〜〜って お母さん ものすごく心配してるんだよ 

「 ・・・ う〜〜ん ・・・ 」

「 すぴか !!  よかった〜〜〜 」

 

    むぎゅう〜〜〜   パジャマ姿のお母さんはいきなりすぴかを抱きしめた。

 

「 あ ・・・ ちゃ〜〜 」

「 すぴか〜〜 すぴか ! 大丈夫? どこも 怪我 してない? 」

「 アタシ へいき 」

「 ああ そうなの  よかった よかった〜〜 」

「 え へ・・・・ 」

涙を流しつつ ほっぺにおでこにキスを落とすお母さんに 

すぴかは なんだかもじもじしていた。

 

 そして。 すぴかの申し開き? も聞いたのち 以下の約束が成立した。

 

 

    ひとりで夜 登るのはこれが最後。

    次からは お父さんに言うこと。

 

    何より お母さんに心配をかけない。

 

 

「 すぴか。 すぴかの観察のタイトルはなんていうんだい 」

「 たいとる? 」

「 あ〜〜 題 かな 」

「 あのね〜 『 夜 から 朝 へ  』 っていうかんさつ日記なんだ。

 しゃしん とれないから 絵 かくんだ  

「 ふう〜〜ん ・・・ すごいなあ すぴか 」

「 そうねえ  誰も思い付かないわ 」

「 えへへ〜〜〜 そ〜かな〜〜 」

「 そうよ〜〜  絵はなんでかくの 絵の具? 色鉛筆? 」

「 う〜〜 ん ・・・どうしようかな〜〜  

 あ おじいちゃまにそうだんする!  」

「 ああ それはいいね。 

 すばるたちもいろいろ・・おじいちゃまに教わっているからね 

「 うん。 」

 

  ふぁ〜〜〜〜〜 ・・・  すぴか が 特大のアクビをした。

 

「 あ ほらほら 〜 ちゃんと寝ないと〜〜

 明日の朝のジョギング 起きられらないわよ 」

「 う うん ・・・ 」

「 さあ ベッドに行こうね。 あ その前に手と顔 洗おう 

「 うん 」

すぴかは お父さんとお母さんの真ん中で手を繋いでご機嫌ちゃんで

お家の中に戻った。

 

 

  ― さて これは後日談 だが

 

すぴかは 『 夜から朝へ 』 というタイトルで < 観察日記 > を書いた。

空の色の変化は おじいちゃまに相談し いろいろな色のセロファンを

張り合わせ 時間による変化を表現してみた。

すぴかは 観察日記 のつもりで とて〜〜も満足していたが・・・

 

「 島村すぴかの、 読みました? 」

「 ええ ええ 上手ですね〜〜  エッセイですよね 」

「 そうですね 彼女独特の感性をもってるし

 それをとても的確に表現できるんですね  う〜〜ん すごいな 」

 

職員室でも 評判になっていたのは  ―  本人は全く知らなかった。

 

 

 

  えっほ えっほ  はっ はっ は〜〜〜

 

今朝も 島村さんち のお父さんとチビ達は お日様が顔を出す前に

海辺までジョギングで降りてくる。

 

「 ほら〜〜〜 すばる がんばれ〜〜〜 

「 ・・・ はっ は〜〜  は〜〜〜〜〜 

「 すばる すばる〜〜〜 あとちょっとぉ〜〜〜  」

誰もいないので 三人は賑やかに走ってきた。

 

  ところが  ― その朝は 海岸に人影があった。

 

「 ・・・ あれ? 」

「 やあ  おはようございま〜〜す しまむらさん。 」

「 あ!  わたなべく〜〜〜ん 」

「 すばるく〜〜ん 」

な〜〜んと わたなべクンが お父さんと一緒に海岸で体操をしていた。

 

「 わ〜〜 おはよ〜〜 僕ね はしってるんだよ〜 」

「 僕もね おと〜さんと一緒に走ってきた〜〜 」

「 いやあ ・・・ ちょいと腹を引っ込めなくちゃ・・・って思いまして・・・

 だいち も 体育が < がんばろう > なんで 

恰幅のいいわたなべクンのお父さんは ちょっぴり照れ臭そうに笑っている。

「 あは ウチも同じですよ!  二学期めざしがんばろう〜って 」

「 いやあ そこまで一緒なんですねえ 

 いや しかし この時間は気持ちいい・・・ 」

「 ええ そうですねえ。  まだ暑くないし。 」

「 ですねえ 」

「 おと〜さん らじおたいそう しようよ〜〜 」

わたなべクンが お父さんのジャージの裾をつんつん・・・引っ張る。

「 あれ この時間にやってます? 」

「 いや 録音してあるんで ・・・ ご一緒にどうですか 」

「 あ いいですね〜〜 すぴか すばる〜〜〜 

 わたなべクンのお父さんと一緒に ラジオ体操、やろうよ 」

「「 わ〜〜〜い いっしょだあ〜〜〜 」」

 

    た〜〜んたかたかたか   た〜〜んたかたかたか〜〜〜 ♪

 

波の音に混じって 例の音楽が流れ始めた。

 

 

最初 二家族でやっていた ラジオ体操だが ― 

しだいに地元のおじいちゃんやら 商店街のオジサンやらが 加わって

自然に 夏休みラジオ体操 になったとか・・・

 

 

         たのしい なつやすみ  ―  どうすごしている?

 

 

「 ね〜〜 むぎ茶 最後のヒトは! お水、足しておくこと!! 」

「 冷蔵庫、 ドア ばたばたしな〜〜い ! 

「 宿題!!  ちゃんと片して〜〜〜 なくなりますよっ 」

「 リビングに靴下とかTシャツ、 脱ぎっぱしない〜〜〜 」

 

          ・・・ お母さんのお小言は なつやすみ中 続く ・・・・

 

 

*******************************     Fin.      *****************************

Last updated : 07,31,2018.                       back      /     index

 

**************     ひと言    **************

夏休み ・・・・ やれやれ ・・・・

楽しいのは子供時代だけ  ・・・ かも ・・・・ ((+_+))