『 なつやすみ ― (2) ― 』
さて。 皆でわいわい・・・ 晩ご飯を食べたあと。
ジョーとフランソワーズは リビングのソファに陣取り、
子供たちを一人ずつ呼んで一緒に < あゆみ > を広げることになった。
「 え〜と どっちから・・・ 」
「 アタシ。 すばる まってて 」
「 ウン。 僕 おへやにいる 」
「 すばる、 リビングにいていいのよ? 」
「 ううん 僕 おへやにいる。 すぴか 次〜ってよんで 」
「 うん。 」
すばるは ごく普通の足取りで二階の子供部屋に行った。
ふうん ・・・?
姉貴に気をつかった・・・ のか?
いや そんなことは・・・
ジョーはそんな息子の背を見送り ソファに戻った。
「 さあ すぴか。 すぴかの < あゆみ > みせてくれ 」
「 うん お父さん。 これ・・・ 」
すぴかは 神棚から下ろしてきた < あゆみ > と 担任の先生の
手紙を 父の前に置いた。
「 ありがとう ・・・ どれ ・・・ 」
「 ・・・ ふうん? 」
ジョーとフランソワーズは一緒にアタマを寄せて 娘の成績表を読む。
「 すぴかさん。 先生 とっても褒めていらっしゃるわよ
いつも皆の先頭にたって がんばってますって 」
「 ・・・ うん ・・・・ 」
「 なんだ どうした すぴか。 」
「 ・・・ なんでもない 」
「 なんでもない・・・って顔じゃないよ? 」
「 ねえ 教えて すぴかさん。 」
「 ・・・ う ん ・・・ 」
「 気になってること、あるんじゃない? 」
「 あ お母さんには言えるかな? それならお父さん は 」
「 ううん ! ううん ・・・ おと〜さんも いて 」
「 ? 」
「 あの ね ・・・ 」
「 うん? 」
「 アタシ ・・・ やさしいね っていわれたいな ・・・・って 」
「 なんだ〜〜 すぴかはと〜〜っても優しい子だよ? 」
「 そうよ〜 今日も晩御飯の用意 手伝ってくれたし 」
「 ・・・ だってね いっつも アタシ ・・・
しっかりしてるね〜〜 とか つよいお姉ちゃんだね〜 とか ・・・ 」
「 あら それは皆 すぴかのこと、褒めてるのよ? 」
「 そうだよ〜〜 すぴかは頼りになるいいコだね〜〜ってことだよ 」
「 でも ・・・ アタシ やさしいね〜 って 」
すぴかは なんとなく涙目になってきた。
「 いらっしゃい。 」
フランソワーズは すぐに娘を両腕で抱いた。
「 ね すぴかはと〜〜ってもやさしい子なの。
本当のやさしさってね しってる? 」
「 ・・・ ほんとうの? 」
「 そうよ いつもにこにこしてる とか 親切する とかも
もちろん大事なやさしさ なんだけど 」
「 ? 」
「 あのな すぴか。 本当のやさしさってね 強さ なんだ。 」
お父さんは 静かに笑っている。
「 つよさ? ・・・って ケンカの ? 」
「 あは それはちょっと違うけどね。
今はよくわかんないかもしれないけど ― いつかきっとわかる。
すぴかは 優しくて頼りになる、お父さんとお母さんの
だ〜〜〜いじなカワイイ娘だよ 」
今度はお父さんが きゅ・・・ してくれた。
「 え ・・・ へへへ・・・ アタシ 強いもん! 」
「 そうだよ。 すぴかは本当に強い子だ。 そして 優しいのさ。
今に すぴかのやさしさが 皆にわかるようになる。 」
「 そ ・・・? 」
「 ああ。 お父さんが保証する。
だから 二学期からも 皆の先頭で張り切ってゆけ。 」
「 うん♪ えっへっへ〜〜〜
あ おか〜さん アタシ バレエきょうしつもがんばるからね〜〜 」
「 そうね < あゆみ > も 【よくできました】 ばかりだし。
すぴかは お母さんの自慢の娘よ〜〜 ふふふ 」
お母さんはもう一度 すぴか をきゅ・・・っしてほっぺに
ちゅ ・・・ とキスしてくれた。
「 えへへへ〜〜〜〜 ・・・ わい♪
アタシ〜〜〜 明日セミとりも が〜〜んば〜〜る〜〜〜 ね 」
「 あ すぴか。 すばる 呼んできて 」
「 わかった〜〜〜 」
すぴかは ぶんぶん手を振るとリビングを出ていった。
「 ・・・ セミ捕りはがんばらなくていいのに・・・ 」
フランソワーズが こそ・・・っと呟いた。
「 ははは ・・・ この辺りの蝉は豪快だからね〜〜
ま すぴかには捕まらないさ 安心したまえ 」
「 そ お・・・? 」
「 ああ。 地元民のぼくを信用してくれ。 」
「 なら いいけど ・・・ 」
おか〜〜さ〜〜ん 声と一緒にすばるが入ってきた。
「 お〜〜 すばる。 待たせちゃったかな 」
「 う う〜〜ん 」
「 さあ 一緒にすばるの < あゆみ > を 見ようね 」
「 うん。 あ おか〜さん ここにきて 」
すばるは自分のとなりを ぼふっとたたく。
「 はいはい ・・・ さあ 」
親子で < あゆみ > を開いた。
「 え〜〜と? いつも笑顔でやさしいすばる君は クラスの女子に
大人気です。 ・・・ さすが〜〜 お父さんの子ねえ 」
「 え えっへん・・・ いいことだと思うけど? 」
「 まあね まだ小二だし〜〜 」
「 おい なんだよ 」
「 なんでもないわ。 で なんでも丁寧で確実です ・・・
時々 時間に間に合わなくなります だって。 」
「 ははは ・・・ すばるらしいなあ〜 」
「 僕 ちこく なんかしたことないよ 」
珍しく すばるがほっぺたをふくらませている。
「 そうねえ ・・・ ぎりぎりでね〜 」
「 ちゃんと きんこん の前にきょうしつにいるもん 」
「 ま すぴかと一緒だから遅刻はしないだろ? 」
「 ジョー。 毎朝一緒にウチをでるけど 」
「 とちゅうから すぴかってば いっつも だ〜〜〜〜って
はしってさきにいっちゃう 」
「 へ ・・? 」
「 はやくこうていであそびたいんだって。
僕 わたなべクンといっしょに ゆっくりゆくんだ〜〜 」
「 ・・・ はあ なるほどねえ ・・・ ま ひとそれぞれってことか 」
「 すばる。 遅刻はダメよ 」
「 おか〜さん。 僕 ちこくしてない。 」
「 はい わかりました。 これからも ナシ です。 」
お母さんはすばるの のんびり に 赤ちゃんの頃から悩まされているので
少し大きく 溜息をついた。
「 えっと ・・・ ? なになに・・・・ 」
仲良し君もいて楽しそうです
二学期は 体育 がんばろう!
ケンカになると 必ず お姉さんが加勢にくるので
仕掛けた方は 逃げてゆくようです
担任の先生の字も なんだか楽しそうだ。
「 ほう・・・ すばる〜〜 学校は楽しいかい? 」
「 うん! たのしい 」
「 そりゃ よかった ・・・ うん すばるは本当にいいコだねえ 」
「 えへへ 〜〜〜 」
ジョーは 彼の息子をとん、と膝にのっけた。
「 うわお? えへへ・・・ わ〜〜い 」
「 すばる〜〜 すばる・・・ 」
ふんわりと腕を回し、ジョーは蕩けそうな笑顔なのだ。
ふうん ・・・ やっぱりねえ
フランソワーズも にこにこしつつ父子を眺めている。
最近 彼女は思うのだが ― 結婚生活10年近くになり納得したのだが・・・
ジョーが もしごく 普通の家庭に育ったなら
彼はすばる のような優しい少年になっただろうと確信している。
ふふふ
でもね どうしたって009にはなれないわね〜
「 うふふ ・・・ 」
くすくす一人笑いする妻に
ジョーは怪訝な顔を向ける。
「 ・・・ なに? 」
「 う う〜〜ん べつに〜〜 」
「 ? ヘンなお母さんだねえ・・・
あ そうだ、すばる。 体育 ・・・ キライかい? 」
「 ん〜〜 キライじゃないよ〜 」
すばるは目をくりくり〜〜 そして いつもにこにこしている。
「 でもね〜 すぴかみたくはやくはしれないし〜〜
すぴかみたく にじゅうとび できないし〜〜
ハヤテくんみたく さっか〜じょうずじゃないし〜 」
息子の答えに ジョーはちょっと考えていたが ・・・
「 なあ すばる。
夏休み 毎朝お父さんと一緒に走ろう! 」
「 え … 僕ぅ
…
」
「 アタシ!
アタシ はしる〜
おと〜さん
今年も りれ〜のせんしゅ になるんだ〜
」
突然 すぴかがリビングに飛び込んできた。
「 お
すぴかも走るかい? 」
「
うん! 」
「よしよし
お父さんが 速く走れる方法を 教えてやるぞ 」
「
ほんと? アタシ にねんで一番はやいんだ〜 」
「 お そうなんだ〜 さすがぼくの娘〜
」
ジョーは びろ〜ん と鼻の下を伸ばしている
「 ねぇ
ジョー 」
「
なに? 」
「 一度 聞きたかったんだけど
あなた 走るの速かった? 」
「 え?? そりゃと〜ぜん。 ぼくを誰だと 」
「
う う〜ん 子供の すぴかやすばるくらいの頃! 」
「 ・・・ え え〜〜〜と ・・・ 」
「 ふふふ やっぱりね〜〜 すばるクンのお父さん! 」
「 ・・・ あ は ・・・ そ〜です・・
で きみは? 」
「 わたし? わたしは すぴかのお母さん ですよ〜〜 」
「 そっか・・ そうだったのか・・・ ああ これも衝撃の真実だなあ 」
「 ね〜〜〜 おと〜さん! どこ はしるの? 」
とん。 すぴかもお父さんの膝に割り込んできた。
「 おっとぉ〜〜 そうだなあ ・・・ 海の方に行こうか。
海岸をず〜〜っと走ってみようよ 」
「 わ〜〜〜い〜〜〜〜 !! いくいく〜〜 」
「 ・・・・ 」
「 すばる、 きっと二学期は走るの、速くなるわよ? 」
「 う うん ・・・ おと〜さんといっしょなら ・・・ いく 」
「 さ それじゃ。 二人とも歯を磨いて お休みなさい しましょ 」
< あゆみ > を前にしての 親子面談 は めでたくお開きになった。
― さて 翌日からの夏休み。
バン ッ 寝室のドアが勢いよく開けられた。
「 おと〜さ〜〜〜ん 朝! あさ で〜す〜〜〜 」
すぴかが 声を張り上げて駆けこんできた。
お。 きたな〜〜 時間 ぴったし。
ふふふ さ〜〜すがぼくの娘〜〜〜
ジョーは ベッドの中でに〜〜んまりしつつ タヌキを決め込んでいた。
「 おと〜さん ってば。 起きるっ! ね〜〜 」
すぴかのきんきん声が ベッドに近寄ってきた。
… あ〜 ムスメに起こしてもらう
なんて〜
なんてシアワセなんだ〜〜
「 う〜〜ん ・・・? 」
わざと寝返りをして ジョーはますますタヌキと化していると。
「 おと〜さ〜ん はしろっ
ね〜〜〜
」
「 ・・・・ むにゃむにゃ ・・・ 」
ジョーがさらに ハナの下を伸ばしていると・・・
おと〜さんっ
どん!
すぴか が勢いをつけて 飛び乗ってきた。
う
… っ
さすがの009も
不意打ちは ショック … !
「 おと〜〜さん てば〜〜〜〜 もいちど どん していい〜? 」
「 あ ああ 起きる 起きます。 すぴか ・・・ どいてくれ〜 」
「 すばるも 起こしたよん 」
「 え! すばるにも飛び乗ったのかい?? 」
「 んん〜〜〜ん すばるはぁ こ〜しょこしょこしょこしょ 」
「 あはは〜〜 それじゃ飛び起きただろ? 」
「 んんん! アタシがベッドからひっぱりだした ! 」
「 そっか〜 じゃ〜〜 お父さん大急ぎで着替えるからね
玄関で待っててな 」
「 うん! 」
すぴかは手を振ると ぱたぱた駆けだしていった。
うひゃあ ・・・ ほっんとに元気なやつだなあ
ジョーは心底感心し あわててパジャマをぬぎすてた。
「 さ それじゃ ゆこうか 」
「「 うん! 」」
門の前で お父さんとチビ達はかるく準備運動をした。
「 おと〜さん どこゆくの 」
「 そ〜だねえ・・・ 海岸の方に降りてみよう 」
「 わ〜〜い すばる 海だって 」
「 ふ・・・ん? 」
すばるは 目をつぶって深呼吸をしている。
「 すばる? 気持ちわるいのかい 」
「 おと〜さん 空気のあじ ちがうな〜〜って 」
「 空気の あじ?? 」
「 ウン。 あじ〜〜 」
大口あけているすばるは 早朝の大気をしみじみ〜〜味わっている のかもしれない。
「 あじぃ?? 空気に あじ なんてあるぅ?? 」
「 あるもん 」
「 へ〜〜 ・・・・ わかんない〜〜 あまいの にがいの からいの?? 」
「 ・・・あさの味。 」
「 なにそれ〜〜 」
「 だから あさのあじ。 ふ〜〜ん 」
「 へんなの〜〜 ね〜 おと〜さん 」
「 いやいや すばるには味がわかるんだろうね。 」
「 ふ〜〜ん ・・・ 」
「 さあ それじゃ 出発するよ 」
「「 うん ! 」」
ジョーは すぴかとすばるを少し前に走らせ 後ろからゆっくりと着いてゆく。
三人は 歩き慣れた坂道を軽快な足取りで降りていった。
ザザザ −−−−− ザザザ −−−−−−
早朝の海は すこし波が立っていた。 朝の風が吹き始めたからかもしれない。
当然だが だれもいない。
「 ふ〜〜 ・・・ ああ いい気持ちだなあ 」
湿った砂を足の下に感じつつ ジョーは深呼吸をする。
海は いいな ・・・
とりわけ 朝の海は いい
どんな時でも 朝の海を見れば 明るい気持ちになれる
ジョーの隣で すぴかがじ〜〜〜っと空を見上げている。
「 うん? カモメでもいるかい? 」
「 ・・・ ・・・・ 」
すぴかは 答えない。 ただ ただ じっと上をみている。
「 どうした すぴか 」
「 ・・・ きれ〜だね ・・・ 」
「 ああ 空 綺麗だねえ 」
「 おと〜さん 今 朝? 」
「 うん 朝。 それもとびきり早い朝だよ 」
「 夜 はもうおしまい? 」
「 そうだねえ 」
「 夜 が ばいばい して 朝 が きた ・・・
くらいの と あかるいの が まぜこぜ
くろ って うすくなると しろ になるよ 」
すぴかの口からは 独り言みたいにぽろぽろ言葉がでてきている。
ふうん ・・・ コイツ やっぱ感性 ちがうな
文才があるっていうか ・・・
独特の感覚を 持っているんだ ・・・
すごい なあ
「 すぴか あとで日記にかけば 」
「 え? あ うん ・・・ 」
すぴかは 言葉すくなくひたすら空を眺めている。
ばしゃ・・・
水音に目を戻せば すばるが波打ち際に降りていた。
「 すばる・・・? 」
「 ね〜〜 おと〜さ〜〜ん 海の色 ちがうね〜 砂の色も〜 」
「 お すばるは海に気がついたかい 」
「 うん! いつもの海と ちがう 」
「 そうだねえ どうしてかなあ? 」
「 う〜〜ん・・・ ? 」
双子は はや〜〜い朝、いろいろなことを発見したらしい。
三人は すぴかを先頭に えっほ えっほ〜〜と坂道を登り
汗だくだく〜〜 で戻ってきた。
「「 ただいま〜〜〜 おか〜さん〜〜 」」
「 お帰りなさい。 ほら シャワーしてらっしゃい。 」
玄関でお母さんがタオルを渡してくれた。
「 わい〜〜〜 」
「 あ まって すぴか〜〜 」
子供たちばたばた駆けてゆく。
「 ジョー お願い。 」
「 おう。 昨夜の風呂の残り湯、あるだろ? 」
「 ええ 洗濯に使ったけど まだ全部落としてないわ。 」
「 じゃ それでいいよ。 お〜〜い 二人ともまてまて〜〜 」
お父さんもどたどた駆けて行った。
そして ― チビ達はびっくりするほど 朝ご飯を食べた。
ごちそうさま〜〜をした後 ・・・
「 さあ 涼しいうちに 宿題をやりましょ! 」
お母さんは
セミ取り に 飛び出しそ〜になる すぴか を捕まえ
としょかんでやる〜
と 出掛けよ〜とする すばるに
まだ 図書館は開いてません
先に
しゅくだい。 と 足止めし。
やっとのことで リビングのテーブルで 子供たちは宿題を広げた。
「 フランソワーズ。 レッスンに遅れるぞ 」
新聞を読んでいた博士が 声をかけてくれた。
「 は はい … 」
「 あとはワシが 監督するから 早くお行き
」
「 はい
ありがとうございます〜 」
「 今日は二人とも 学校の夏季水泳指導 だったな 」
「 はい プール、二回目に入ります。 」
「 わかった。 ちゃんと時間に間に合うように出すから。
安心して レッスンに行っておいで 」
「 ・・・ ありがとうございます〜〜〜 」
お母さんは 泣き笑いみたいな顔で 大きなバッグを抱え
飛び出していった。
「 おか〜〜さん いってらっしゃ〜〜い 」
「 さあ それじゃ二人共 宿題をやろうな。 」
「「 は〜〜〜い 」」
すぴかとすばるは ご機嫌ちゃんだ。
・・・ じつは 双子は おじいちゃまとしゅくだい するのが 大好き。
おじいちゃま は いっつもと〜〜っても面白いハナシで
宿題の説明をしてくれるからだ。
ちょうど一学期に 二人が習った 植木算 についても
夏休みの宿題のプリントから離れて お話しが始まる。
「 ほうら 手を出してごらん 」
「「 ? 」」
「 ぱ〜〜 にして・・・ 指は何本かな 」
「「 ごほん!! 」」
「 そうじゃな。 じゃ 指と指の間は いくつあるかな 」
「「 よんこ! 」」
「 そうじゃ。じゃ これはどうじゃ? 指は 」
「「 よんほん!! 」」
「 それじゃ 指と指の間は ・・・ 」
「「 さんこ! 」」
「 なにがわかったかな 」
双子は熱心に自分の手を見つめている。
「 ・・・ ゆび は すきまよかいっこ おおい・・? 」
すばるが ゆっくりと答えた。
「 うむ うむ いいぞ。 すぴかはどうじゃな 」
「 えっとぉ・・・ すきま たす いち が ゆび! 」
「 二人とも 大正解じゃな 」
博士は 二人の前でノートに
ゆび = すきま + 1
と書いた。
「 では 同じことをちがう式で書けるかな?
」
はいっ! すぴかが手をあげる。
「 あのね あのね すきま = ゆび − 1 ! 」
「 いいぞ。 よく考えたな。 足し算 は 引き算 でも書けるのさ 」
「 ふ〜〜〜ん ・・・」
「 あ そっかあ〜〜 」
二人は自分たちの手をみたり ノートの式をみたり している。
「 とれではな 指と指の間をはかってみよう 」
「 はかる? あ じょうぎで? 」
「 そうじゃよ 指と指の天辺の間じゃ。 」
「 う〜〜ん?? 」
「 まずな こうして・・・ ノートに押し付ければ計れるな 」
「 あ そだね〜〜 えっとぉ ひとさしゆび と なかゆび の間は
にせんち ! 」
「 なかゆび と くすりゆび の間 は あ やっぱにせんちだ〜 」
「 では 人差し指 から 小指までの長さは どうじゃ 」
「 はかるの? 」
「 それもいいが 式をつかってごらん すきま は 何センチだったかな 」
「 にせんち! 」
「 そうじゃな。 人差し指 から 小指 まで 指は何本かい 」
「「 よんほん!!! 」」
「 では すき間は? さっきの式を使ってごらん 」
「 あ そっか〜〜 」
こんな風に ― 二人は植木算の考え方を実地で理解する。
「 さあ 今 すぴかとすばるが発見した事を ちょっと使ってみよう 」
「 つかう? 」
「 そうじゃよ。 ほら このプリントの問題 にも使えるぞ 」
「「 え〜〜〜〜 」」
「 問い一 から やってみよう。 今 二人が見つけた式を
見ながらでいいぞ。 」
「「 うん ・・・ えっと 」」
すぴか も すばる も すらすら問題を解いてゆく。
「 で〜きた〜〜〜 」
「 僕もぉ〜〜 」
「 よしよし。 ワシが答え合わせしておくから・・・
二人はプールの準備をしなさい。 」
「「 は〜〜い 」」
― 数分後。
「「 ぷ〜る いってきまあ〜〜〜す 」」
「 プールカード 持ったかい。 」
「 もちましたっ 」
「 僕も 」
子供たちは たかたか坂道を下っていった。
― その夜 夫婦の寝室で・・・
「 ・・・ ねえ ジョー。 毎朝ジョギングって 疲れない?
お仕事 忙しいし、夜も遅いことが多いでしょう? 」
「 ふっふっふ〜〜 ぼくを誰だと〜〜 」
ジョーは に〜んまり・・・ Vサインをしている。
「 でも ・・・でもね! 」
「 相変わらず心配性なんだね〜 ぼくの奥さんは 」
「 だって ・・・ 」
「 大丈夫さ。 009を信じてくれたまえ。 」
ちゅ。 軽いキスが降ってきた。
「 ・・・ もう ・・・ 」
「 なあ フラン。 きみってどんな子供だった? 」
「 え わたし? そりゃおしとやかでおとなしいオンナノコ ・・・ 」
「 え・・・ 」
「 じゃ〜なくて! とんだお転婆さんだったのよ、わたし! 」
「 へ え … ? 」
「 うふ 意外だった? 」
「 うん 実に へえ〜〜〜
」
「 ふふふ〜
わたし チビの頃からの 跳ねっ返りでね〜〜
そんなにとんだりはねたりしたいなら … って パパが バレエスタジオ に
連れていった ってわけ 」
「 へ え〜〜〜 そりゃ
初耳だあ〜
」
「 うふふ 誰も知らないわたしの ひみつ よ 」
「 ふ〜ん〜
・・・ ほ〜〜〜 」
「 やだ そんなに意外? 」
「 うん ・・ え ぼく?
うん 勉強
好きだったんだ 」
「
まあ すご〜い〜 」
「 ・・・ ってかさ 神父様と
一対一
で しっかり話ができるのって
成績表を見せる時だけだったんだ だから
少しでも 誉められたくて
・・・
かなりガリガリやったわけさ ・・・ へへ
不純な動機だよね 」
「
そんなこと ない!
大事なヒトを喜ばせたくて 頑張ったって
すごくステキなことだわ
わたしはそう信じてる。
ジョー … あなたはやっぱりわたしのヒーローよ 」
「 フラン … 」
するり・・・ と白い腕が ジョーの首に絡まってきた。
彼は微笑すると 熱く彼女を抱き寄せた。
― そんな夏休みの日々が 一週間ほど過ぎたある夜のこと。
ゆさ ゆさ ゆさ ・・・
寝入りばな、ジョーはいきなり身体を揺す振られた。
「 ジョー ジョー 起きて すぴかがいないの。 」
「 ・・・ 〜〜 え?! 」
Last updated : 07,24,2018.
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********** 途中ですが
え〜〜 植木算 は 三年生 で学ぶらしいです
いろいろあります、夏休み〜〜〜 で 続きます☆