『 なつやすみ ― (1) ― 』
なつやすみの友 えにっき かんさつにっき
かんじドリル けいさんドリル じゆうけんきゅう
絵・なつやすみのおもいで さくぶん・なつやすみのおもいで
どどどど〜〜〜〜 っと山ができた。 それも 二つ。
「 ふう 〜〜〜〜 」
フランソワーズは 大きくため息をついた。
「 これ 全部 やるの? 夏のヴァカンスは 休むためでしょう??
もう・・・ 」
「 え〜〜 アタシたち じゅく いかないからさ〜 その分 すくないよ 」
「 あ 僕 そろばん 行ってるから そろばんのしゅくだい ある〜〜 」
「 アタシはぁ バレエきょうしつ の かきとくべつれっすん がある〜〜 」
彼女の双子の子供たちは べつに〜〜 って顔でおしゃべりをしている。
あ〜〜〜 ・・・・ もう なんなの??
二年生になったとたんに これ???
お母さんの方が 夏休み初日にうんざりしている。
カッチャ カッチャ ゴトン。 カッチャ ガツン ドシン
なにやら賑やかな音が聞こえてきた。
「 ふ〜ん? 我が家の台風たちのお帰りだわね〜〜
今日は一学期の終業式ですものね 荷物いっぱいみたい 」
フランソワーズは 洗濯モノを畳む手を止め玄関に立った。
「 おか〜〜さ〜〜〜ん ただいま〜〜 す ぴ か! 」
「 おか〜さ〜〜〜〜〜〜ん あけて〜〜〜 」
ドアの向こうはちっちゃな混声合唱だ。
「 はいはい おかえりなさい すぴか すばる 」
「「 おか〜さ〜ん ただいま〜〜〜〜 」 」
玄関のドアを開ければ 色違いのちっちゃな頭がどん・・・とくっついてくる。
「 あ〜らら 二人とも・・・ 二年生になったのに甘えん坊さんねえ〜〜
うふふ・・・ お帰りなさい すぴか お帰りなさい すばる 」
お母さんは笑いながら 二人を別々に ぎゅ・・・ して ほっぺに ちゅ。
「 わっはは〜〜ん♪ おか〜さん おやつ〜〜〜 」
「 おやつ〜〜 おか〜さん 」
「 まずはランドセルを置いて・・・ 手を洗ってウガイ でしょ? 」
「「 は〜〜い 」」
うんしょ・・・ すぴかはえらい大荷物であれもこれも・・・と両手に持っている。
「 すぴか 全部持てる? 」
「 へっちゃら〜〜 アタシさ〜〜 えのぐせっと も おどうぐばこ
も たいそうふく も・・・・え〜と あとぷちとまと もって帰って
きたんだも〜〜ん 」
「 あらら ・・・ プチトマトは ここに置いて。 あとでテラスに
置き場を作りましょ。 」
「 うん! ひあたりのいいとこにするね〜〜
さあ オヤツ オヤツ 〜〜〜 ♪ 」
すぴかは荷物を全部玄関に置くと とっとと手を洗いに行ってしまった。
「 あらら・・・ あ すばるは? 」
すばるの持ち物は ランドセルと靴袋、そして ぷちとまとの鉢だけだ。
「 これ。 」
「 すばる ・・・ 絵具セットとか・・・学校に置いて来ちゃったの? 」
「 う〜〜〜ううん。 僕 一日 いっこづつもって帰ってきたんだ〜〜
えのぐせっと と おどうぐばこ は お部屋にあるも〜ん 」
「 あ ああ そうなの。 ! 体操服は?? 」
「 それも おへや
」
「 ! すぐ洗濯機にいれて! 」
「 きのう もってかえってきたんだ〜 」
「 は や く!! すばるっ オヤツはそれからよ〜〜〜 」
「 はあ〜い 」
ぱったん ぱったん ・・・ すばるはのんびり階段を上がてゆく。
のんびり だけど 慎重?な 彼は数日に分けて < 荷物 > を持ち帰り
大胆せっかち? な 姉は イッキに全部もってかえってきたのだった。
「 昨日持って帰った ですって??? も〜〜〜〜 ・・・・
ああ 二人とも・・・ いったい誰に似たのかしらねえ 」
娘の大量の荷物を眺めつつ 母はため息 ひとつ、ふたつ。
― が。 本格的なため息をこぼすのは もうすこし後だった。
双子は お母さんに < あゆみ > を渡し ―
「 ありがとう。 これはあとでお父さんと一緒に見ましょうね。
それまでは ・・・ と、フランソワーズは子供たちの成績表を
神棚に供えた。
― 当家の人々はみなクリスチャンなのだが
なぜか居間には 神棚があり、若夫婦は毎朝きちんと新しい水をお供えしている。
「 わかった〜〜 おか〜さん オヤツ〜〜〜 」
「 ウン オヤツ〜〜〜 」
「 はいはい わかりました。 すぴかさん 玄関のお荷物は オヤツ食べたら
お部屋までもってゆくこと いい? 」
「 う〜〜ん ・・・ あ お父さんにたのむ! 」
「 ・・・ 僕 ぷちとまと しかない・・・・ 」
「 アタシの! おどうぐばこ。 すばるのにしよう!
そんでもって おとうさんにたのむ! 」
「 あ そだね〜〜〜 」
「 ね 」
「 ・・・・ 」
母はもう呆れはて なんにも言う気分じゃなくなっていた。
「 ともかく 手を洗ってうがい よ、すばる。 」
「 はあ〜い 」
「 すばる〜〜 はやくしてね〜〜 」
すばるは バス・ルームへ すぴかはキッチンへぱたぱた駆けて行った。
・・・ あ〜あ ・・・
今年も 地獄の日々 が はじまるわぁ・・・
あ〜〜あ ・・・・
朝から晩まで ぴ〜ちく ぱ〜ちく
冷蔵庫のドアは ばたん ばたん しっぱなし
もう〜 ・・・ 夏休み なんて 三日で結構!
島村さんちの奥さんは ふか〜〜〜い 溜息を吐いた。
「 んん〜〜〜〜 」
「 むぐむぐむぐ〜〜〜 」
チビ達は オヤツに夢中だ。
冷たい麦茶 ( ちゃんと煮出したもの ) に ミルク・ゼリー
そして おせんべい。
食べている間だけは 二人は大人しい。
「 ねえ。 リビングに積んであるの、 あれ なに? 」
「 むぐ〜〜 ・・・ ん?? なに〜〜 」
「 ちゅぱ〜〜〜 僕 ぎうにうぜり〜 だいすき〜〜 」
「 あれ ・・・ もしかして宿題? 」
「 〜〜 ん? なに〜〜 」
「 ・・・ ちゅるん♪ おいし〜〜 」
「 一年生の時は なつやすみのとも と 絵 と にっき だけだったわよね? 」
「 ばりんっ! うっほ〜〜 おせんべい おいし! 」
「 すぴか〜〜 くり〜む たべないの? 」
「 ばりん ぼりん ・・・ ん? あ〜 ・・・ いいよ〜〜 すばる
あげるね 」
「 わお〜〜 ちゅるん♪ おいし〜〜 あ このおせんべ あげる 」
「 わお さんきゅ ばりん ぼりん 」
「 ・・・ あ〜 もうオヤツにも負けてしまうのね、 お母さんは 」
お母さんは テーブルの前でふか〜〜〜くため息を吐いた。
「「 ?? なに〜〜 おかあさん ? 」」
お皿があらかた空になったとき コドモ達はや〜〜〜っと母に目を向けた。
「 あの ですね。 リビングに積んであるのは 夏休みの宿題 ですか? 」
「 ? あ〜〜? ・・・ あ そう かも 」
「 ・・・ あ〜 たぶん 」
「 ・・・ そう ・・・ 夏休み って 休むためのものでしょ? 」
「 うん 」
「 あ〜 」
「 あんなにいっぱい 宿題 ・・・ できるの? 二人とも 」
「 う〜〜ん わかんな〜〜い 」
「 僕〜〜 こうさく は わたなべクンと きょうどうさくひん にするんだ〜 」
「 ふ〜〜ん ・・・アタシは・・・・ まだきめてないや 」
「 ドリルもあるし 絵日記もあるし ― できるの? 」
「「おと〜さんにてつだってもらう〜 」」
「 だめです〜〜〜〜 自分でやりなさい〜〜〜 」
「 え〜〜〜 むりぃ〜〜〜 」
「 無理 じゃありません。 皆できるよね って 先生は宿題、出すのでしょう?」
「 ・・・ わかんな〜〜い 」
「 僕 わたなべくん といっしょにやるんだ〜〜〜 えへ♪ 」
「 あ〜〜 いっけないんだ〜〜 一人でやりましょう、って
先生 いったじゃん。 」
「 すぴかだって おと〜さんにやってもらう って 言ったじゃん 」
「 すばるだって〜〜 」
「 すとっぷ。 夏休みの始めにケンカしな〜〜い 」
お母さんは またまたうんざりした顔だ。
「 だあってすばるがさ〜〜〜 」
「 あ あ すぴかだって 」
「 ほら ストップって言ったでしょう?
オヤツ 食べ終わったら。 荷物を子供部屋にもっていって。
夏休みの宿題、やること。 今日の分よ ! 」
「 ぶっぶ〜〜 おか〜さん 今日はまだ夏休みじゃないで〜す 」
珍しくすばるが先に発言をした。
「 きんこ〜〜ん♪ 今日はまだ一学期 だもんね〜〜
なつやすみのしゅくだい は なつやすみ にやりましょ〜〜〜
アタシ せみとり に行くね! ハヤテ君たちとやくそくしたんだ〜〜 」
じゃね〜〜 と すぴかはとっとと自分のマグカップを洗うと
二階に駆けあがっていった。
「 あらら ・・・ もう・・・ こぼれてます! 」
「 おか〜さん 僕 」
すばるが ザラメ煎餅をのんびり齧りつつ言う。
「 はい? すばるも蝉取り ? 」
「 うう〜〜ん 僕 せみとり、ゆかない
」
「 そうですか。 そりゃよかったわね 」
「 僕ね〜〜 今日 そろばん の日なんだけどぉ 」
「 ええ そうね。 でもまだ時間 あるでしょ? 」
ぽりり ・・・ 彼は満足そう〜〜に煎餅を齧る。
「 うう〜ん 今日はね〜〜 いつもよりはやいんだ〜〜
小学生くらす はねえ 二じはん からなんだ〜〜〜 」
「 え!? 二時半 ・・・って もうすぐじゃない??
すばる〜〜〜 のんびりお煎餅齧っている場合じゃないでしょ〜〜〜
さっさと用意してゆきなさい ほら ! 」
「 ん〜〜 でも おせんべい まだあと一枚〜〜 」
「 とっておくから! ほら 支度して〜〜 」
「 う 〜〜ん 」
のんびり息子は 母に背を押され ようやっと腰をあげた。
「 ホントに〜〜 とっといてね〜〜 」
「 わかってます! ほら 気をつけて〜〜
」
「 うん わかってるよん 」
とこ とこ とこ。 彼はのんびり階段をのぼり ・・・そして
そろばんの道具をもって のんびりおりてきた。
「 すばる〜〜〜 はやく はやく〜〜 遅刻しちゃうわ〜〜
あ お母さん 自転車で送ってくわ! 」
「 え いい。 わたなべクン とまちあわせ してるんだ〜〜
」
「 !! それならっ! なおさらはやくしなくちゃっ
靴はいてお帽子 被ってて! 」
「 は〜〜い 」
すばるが きっちりスニーカーを履き終えた時 ―
「 ほら 乗る! 」
お母さんは 彼を持ち上げ自転車の後ろにのっけた。
「 わお? 」
「 しっかりつかまってるのよっ ( かそくそ〜〜〜ち!! )」
「 わお??? 」
ままちゃり は 全速力で坂を下っていった。
「 アタシも〜〜〜 おかあさんの自転車 のりたかったあ〜〜 」
「 あ あら 」
「 すぴか 今度 お父さんがのっけてやるよ 」
「 わあ〜〜い♪ 」
夕方 珍しくはやく帰ってきたお父さんに すぴかはもうぴた〜〜っとへばりついている。
本日の蝉取りは あまり成果があがらなかった ・・・ らしい。
「 それで すばるとわたなべ君は ソロバンに間に合ったのかい? 」
「 ええ わたなべ君はず〜〜っと待ち合わせ場所で待っていてくれたの。
だから ・・・ すばるをうしろ、彼を前にのっけて 」
「 うわ〜〜〜お ・・・ おい よく捕まらなかったなあ 」
「 ふふん この辺りのど田舎、 見張ってる交番もないわよ。
それで 余裕の五分前に到着したわけ。 」
「 ひえ〜〜〜 すご・・・ きみこそ ・・・
( 加速装置)ついてるんじゃないか 実は。 」
「 さあ〜ね〜〜 すばるは後ろで固まってたし わたなべクンは前で
わ〜〜〜〜〜〜 ・・・・って言いっぱなし だったわ・・・
あ あとで彼のお母さんにお詫びの電話 しておかなくちゃ・・ 」
「 あ〜 そうだねえ その方がいいかもなあ
で えっと? きみ達の通知表はどうだったのかな 」
「 つうちひょう ・・・って なに? 」
「 え。 あ〜〜 えっと〜〜ここいらではなんて言うんだ? 」
「 < あゆみ >。 去年だって三回 見たでしょう? 」
「 あ ・・・ そうだっけ??? 中身は覚えてるけど〜〜 外側とか
タイトル は 覚えてなくてさ 」
「 おと〜さん。 アタシ と すばる < あゆみ > は
ぱんぱん・・・するトコに上にあります。 」
すぴかが とても神妙な顔で言った。
「 そうか そうか 今は神さまがごらんになっているんだな 」
「 うん・・・・ 」
「 それじゃ 晩御飯の後 一緒に見ようね。
あ それとすぴかの意見も聞くからね 」
「 アタシのいけん? 」
「 そ。 なんで〜〜 さんすう は この成績なのか とか 」
「 せいせき? テストの点のこと? 」
「 < あゆみ > には よく頑張りました とかしか書いてないのよ ジョー 」
「 え そうだっけ? なんか別に先生からの紙 あったよね? 」
「 ええ。 すぴか達の小学校は熱心な先生が多くてね・・・
< あゆみ > に 詳しい報告がつくの。 」
「 そうそう それだよ。 」
「 ・・・ ふうん ・・・ 」
すぴかはなにやら浮かない顔をしている。
彼女は 宿題はちゃんとやるしテストの点数もほとんど満点。
体育も大好き 仲良しさんもたくさんいて ・・・
かなり充実した楽しい小学生ライフを送っているのだが・・・
「 それと。 ほら 夏休みの相談 しような。 」
「 え〜〜〜 どっか行くの?? わ〜〜い 」
「 それもあるけど ほら 宿題の相談さ 」
「 しゅくだい〜〜? 」
「 そうさ。 お母さんに聞いたけど どさ〜〜 と山になってるんだって? 」
「 あ うん ・・・ 」
「 ちゃんと 夏休み中にできるかい ひとりでさ 」
「 あ〜〜 あのね〜〜 さくぶん は アタシがかいて〜〜
さんすうドリル は すばるがやるんだ。 じゆけんきゅう は ね〜
すばる と わたなべクンがいっしょに うごくでんしゃ をつくって
アタシがせつめいをかく。 あとはえ〜〜と 」
すぴかは得意気に説明し始めた。
「 お おいおい〜〜 ぜんぶ ふたりで分担するのかい 」
「 だって アタシたち ふたご だもん。 なんでもいっしょ でしょ? 」
「 そりゃ・・・ けどな 勉強は別だよ 」
「 なんで? 」
「 う〜〜 なんで ・・・って う〜〜〜ん? 」
「 双子でもね 一人ひとりでやらなくちゃならないことがあるの。
お勉強は 皆 一人でやるの。 すぴかが九九を覚えても それは
すばるも覚えたことにはならないでしょ 」
「 う〜〜ん でもぉ〜〜 」
「 じゃ すばるがオヤツたべれば すぴかはお腹いっぱいになるの? 」
「 なんないっ 」
「 でしょ。 双子で一緒 のこともあるし 別々 のこともあるのよ。 」
「 ふ〜〜〜〜ん ・・・ 」
「 さ 晩御飯にしましょ。 すぴか テーブルの上を拭いてちょうだい。 」
「 はあい。 」
「 あれ すばるは? 」
「 ソロバン教室 ・・・ あれ それにしては 遅いわねえ 」
「 わたなべ君と一緒なんだろ? ちょっと見てこようか。 」
「 あ お願いできる? 」
「 うん。 えっとソロバン教室はどこだっけ ? 」
「 小学校の近くよ。 公民館の近くなの。 そろばん教室 って看板が
でているわ。 」
「 アタシ 知ってる! おと〜さん アタシがおしえて 」
「 だめよ すぴかさんは お母さんと晩御飯の用意、お手伝いしてちょうだい。 」
「 はあい ・・・ 」
すぴかはちょっと膨れてみせたが お母さんと一緒に居るのはやっぱり嬉しいので
すぐににこにこした。
「 じゃ いってくる。 」
「 ジョー 」
玄関で フランソワーズは つんつん・・・と自分のアタマを突いてみせた。
「 了解さ。 」
「 おと〜〜さん けいたい ! リビングのソファにおきっぱ! 」
すぴかが ばたばた駆けてきた。
「 あ ああ ありがと〜〜 」
「 ほら ちゃんともって! はい! 」
「 うん ありがとうな すぴか 」
「 えへ♪ 」
おとうさんは すぴかの金色のお下げをちょん、摘まんでくれた。
「 じゃ お願いね 多分 公園かどっかで遊んでいるはず 」
「 まあね。 じゃ 」
「 気をつけて 」
ジョーは 手を振って玄関を出た。
夏の夕方なので まだまだ辺りは暗くなってはいない。
ジョーは 商店街を抜け小学校の方に向かうことにした。
「 え〜と・・・ 学校の裏に公園があったな あそこか ・・・」
この距離ならば 003の眼 を使えばすぐに発見はできるだろう。
もちろん 本人もそれを重々承知の上で < お父さん > に頼んだ。
ウチは 普通の ごく当たり前の家庭
二人の意識の底には いつだってその気持ちが流れている。
「 あれ すぴかちゃんとこの〜〜 」
「 あ 魚勝さん こんにちは〜〜 」
商店街を通っている時に 店先から声がかかった。
魚屋さんの大将だ。 すぴかとすばるがとて〜も気に入っているお店で
お使いのたびに 新しい魚の名前を教わったりしている。
「 すいません ウチのちび、みませんでしたか 」
「 え どっち? あ〜 すばる君? ・・・ 少し前にお母さんが
すっごい勢いで自転車で運んでたけど? 」
「 え〜 ソロバンに遅刻しそうになって・・ 」
「 その後? いやあ〜〜 この通りは通ってないね 」
「 そうですか ありがとうございます。 」
「 まだ帰ってこないのかい? 」
「 ええ ・・・ 多分遊んでいるんでしょう、ちょっと探しに行きます 」
「 おう 気をつけてな〜 もし行き違いにでもなったら
すばる君にいっておくよ 」
「 ありがとうございます〜
」
ジョーは ぺこり、とお辞儀をすると道を急いだ。
商店街を抜け 大きな道を渡ると子供たちが通う小学校が見えてくる。
「 えっと・・・ 公園はあの先で ソロバン教室はその向こう、か ・・・ 」
ジョーは きょろきょろしつつ歩いてゆく。
もう五時をとっくに回っているので 子供たちの遊ぶ姿はない。
この地域では 五時に < 外で遊んでいる子供たちは お家にかえりましょ〜 >
の放送が流れる。 市の歌、がBGMになっているので通称 < たたんた・たん >
と呼ばれていたりする・・・
「 時計 持ってなくても公園には大時計もあるし・・・ わかるだろうに・・
いったいどこで遊んでいるんだ? 」
そろそろ 009の眼 を使うべきかな〜 と思い始めた時 ―
「 あ すばる君のお父さん〜〜 」
「 わたなべ君の〜〜 あ どうも 」
「 いやあ ウチの大地がまだかえってこなくて・・・・ 」
学校の正門近くで わたなべクンのお父さんとばったり出会った。
わたなべ氏は 仕事の帰りらしくスーツの上着を背にひっかけていた。
「 すばるもなんですよ 多分 大地くんと一緒のはずで・・・
今日はそろばん教室の日ですからね。 」
「 そうそう ウチの家内が そろばん教室は定刻に終わったって・・・
それでもまだ帰ってこない、ってメールしてきましてね。
駅から直接探しにきたんですが・・・
多分 そろばんが終わってから その後〜〜 」
「 ははあ〜〜 二人でどっかで遊んでるんですかね 」
「 ま 気持ちはわからんでもないですが 」
「 そうですねえ ・・・ 公園かな 」
お父さんズは 学校の塀を周って行った。
どこにでもある公園、ただし ここはかなり田舎なのでど〜〜っと広い。
奥の方には 結構大きな木が茂り夕方過ぎれば鬱蒼としている。
「 え〜〜と? ・・・奥には行ってないはず ・・・ 」
ちょいとルール違反? だが ジョーはさ〜〜〜っと奥まで サーチした。
「 ・・・ う〜〜ん・・・? 」
「 あ いた いた! ほら すべり台の頂上 ! 」
わたなべ氏が 声を上げた。
「 え? ( うわ〜〜 ) 」
急激に 普通の視力 に戻したので ジョーの足元がくらり、と揺れた。
「 こらあ〜〜 大地〜〜 今 何時だと思ってるんだあ〜 」
「 すばる〜〜〜 」
「 あ おと〜さん〜〜 」
「 おと〜さ〜〜ん 」
すべり台の天辺に座り込んでいた子供達は にこにこ手を振っている。
「「 おりてきなさいっ 」」
わ〜〜〜い♪ と 気楽にすべり降りてきた わたなべ君としまむら君は
お父さんズ からしこたま説教を喰らった。
今 何時だと思っているのか 公園に時計があるよ。
寄り道をしてはいけない約束 そろばんが終わったらまっすぐ帰る!
「 ・・・ 僕たち ・・ そうだんしてたんだ ・・・ 」
「 うん、ふたりでそうだん。 」
「 相談? なんの。 遊ぶ相談か 」
「 ううん ! なつやすみのしゅくだいのそうだん 」
「 でんしゃ つくるんだ、僕たち ・・・・ 」
息子たちは必死に言い立てる。
まあ ただ遊び呆けていたわけではないらしい・・・と 双方の父親は感じた。
「 つまり 二人で夏休みの宿題の計画をたてていた のかい 」
「「 うん !!
」」
「 そうか わかった。 だけど ― ルール違反はダメだよ。 」
「 る〜るいはん?? 」
「 そうだ。 すばる君のお父さんの言うとおりさ。
時間を守ること 寄り道はだめ。 だろ? 」
「 ・・・ あ ・・・ 」
「 ・・・ ごめんなさい ・・・ 」
すばるもわたなべクンも やっと気がついた ― という顔なのだ。
それほど 二人は < けいかく > に熱中していたのだろう。
お父さんズは まあ 仕方ないか・・・ とも思うが
そこはきっちりケジメをつけた。
「 さあ いいね 二人とも。
これから 相談はウチでやるか 図書館 でやること! 」
「「 はあい 」 」
「 そしてね だいち君もすばるも ウチに帰ったら
お母さんに ごめんなさい! をちゃんと言うこと! いいね 」
「「 ・・・ うん ・・・ 」」
「 いやあ ありがとうございました。 だいち君のお父さん 」
ジョーは きちんとお礼を言い、頭をさげた。
「 いやいや ! こちらこそ。 ま これからも仲良くしてやってください。
すばる君のお父さん 」
お父さん達は に・・・っと笑い合った。
学校の前で バイバイをした。
「 あ すばる君のおとうさん! じてんしゃ ちょう〜〜〜 かっこいかった!
って すばる君のおかあさんに伝えてねっ 」
「 あ? うん わかったよ、大地君 」
「 ばいば〜〜〜い わたなべく〜〜〜ん 」
「 ばいばい〜〜 すばるく〜〜ん 」
それぞれお父さんに手を引かれ チビ達は空いてる手をぶんぶん振っていた。
やれやれ ・・・ ま、 よかったな
おっと〜〜〜 報告 報告〜〜っと
ジョーは ぴぴ・・っと脳波通信を飛ばし ・・・
≪ 了解。 早急に帰宅せよ ≫ すぐに返信を受け取った。
ひえ・・・ 怒ってるなあ ・・・
ま 心配してたんだよな
「 さ すばる。 帰ろうな 」
「 うん おと〜さん♪ 」
お説教喰らったけど すばるはにこにこ〜〜 お父さんと手をつなぎ
暮れなずむ道を 歩いていった。
夏休み ― こうして お父さん・お母さんの受難の日々が 始まった。
Last updated : 07,17,2018.
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*********************** 途中ですが
お馴染み 【島村さんち】 シリーズ・・・・
夏休み話は いくつか書いてきましたが
今回は お父さん・お母さん視点 ・・・かな?