『 お目覚めですか ― (1) ― 』
〜〜〜♪♪ ♪♪ ♪♪♪ 〜〜〜
イヤホンから流れる音を それこそ全身で聴きつつ
本人は 普通に歩いているつもりだが 手足は自然に ― 踊っている。
「 ふんふ〜〜ん・・・ で ここでピルエット〜〜〜っと 」
その金髪美女は 宙の一点に視線をとばしぶつぶつ・・・
なにか言っている。
べつにどんなコトを呟こうがそりゃ個人の勝手 であり
他人があれこれ言う資格は ない。 それが個人の敷地内であれば。
しかし ― ここは天下のトウキョウの公道。
一応 広い舗道があるが それは人々が歩くための場所であり
ふらふら踊るトコロではないのだ。
しかも! ここいら辺は トウキョウでも有名なオシャレ街 ・・・
ちょいと外れるが もうすこし進んで大きな道を曲がれば
こじゃれた店が連なる <あの>通りにでる・・・という場所なのである。
当然 人通りも結構、ある。
しかし。 通行人達は 慣れた様子で無関心、すいすい避けて
行ってしまう。
あ〜 また あそこのヒトたちかあ
ん? ・・・ああ 公演が近いのかしらね〜
<ご近所さん> と思われる人々は そんな視線をちらっと投げるだけだ。
眉間に縦じわを寄せ 真剣な表情なのは ― 当のご本人だけ である。
「 ・・・ん〜〜〜〜 って ここのリードがなあ・・・・
もうちょい早く〜〜 そしたら 余裕で踏み切れるんだけどぉ 」
タンっ 自然に片脚が舗道の敷石を 踏みつけていた。
「 ・・・ で あああ?? 」
突然 ふわり・・と身体が浮いた。
「 な??? 」
空中に持ち上がりつ? 首をよじってみれば ―
「 プリンセス・オーロラ? 道路で踊っては危ないよ〜〜 」
「 ! や〜〜だ〜〜〜 タクヤぁ〜〜〜 」
彼女は自分を持ち上げ自分を見上げている笑顔を 発見した。
もっちろん 周囲は (@_@) だ。
( 重ねていうけど ここは天下の公道 なのだ ! )
「 きゃあ〜〜ん 下ろしてぇ〜〜 」
「 リフトのタイミング ばっちり だろ? 」
「 ばっちり だけど〜〜 」
「 はいはい お姫様の仰せの通りにいたします 」
すとん。 彼は彼女を柔らかく着地させた。
「 ・・・ も〜〜〜 びっくりしたぁ タクヤってば〜〜 」
「 タクヤってば じゃないぜ
ここは 道路。 ふつ〜のヒトが歩くトコだぜ?
イヤホンで耳 塞いで ふらふら踊るトコじゃね〜よ 」
「 スイマセン ・・・ 」
な〜〜に言ってるのよぉ
わたしを誰だと思ってるの??
視覚聴覚強化のサイボーグ003 なのよっ
彼女は心の中で毒づいていたが ― 素直に謝った。
「 ま〜ったくさあ〜〜 なんとなく人通りが溜まってるなあ〜
って思えば〜〜〜 」
「 ごめんなさい・・・ 時間 足りなくて 」
「 え そう? 今日のリハでもまあまあだったじゃん 」
「 ・・・だめよ 全然。 っていうか ・・・
なんか上手く踊ってない って感じて 」
「 え〜〜〜〜 そうかあ? そりゃ パートナーとしちゃ
ヤバいんですけど?? 」
「 あ タクヤのせいじゃないのよ。
わたしのタイミングが悪い〜〜 」
「 お〜っと < わたしの > じゃね〜だろ?
GPなんだぜ? 俺ら 二人の問題じゃんか 」
「 え ええ それは まあそうだけど〜 」
「 だから いろいろ言ってくれよな 」
「 ・・うふふ 言ってるわよね? 自習の時とか 」
「 あ あ〜〜 ウン そうだなあ 」
「 ごめんなさいね いろいろうるさく言って・・・
オバサンは本当に嫌よねえ 」
「 フラン! 」
ちょいと自虐めいて苦笑している彼女に タクヤは本気の声を出した。
「 え 」
「 やめろって そういう言い方。
俺ら パートナーだぜ? 二人でチームで! 踊るんじゃん?
いろいろ言い合ってかないと〜〜 全然前進しないぜ 」
「 ・・・ チーム ・・・ 」
「 そりゃさ〜〜 二人だけだけど ・・・チームだと思うわん?
チーム・ワーク とれないとダメじゃんか 」
「 ・・・ そ そうね ・・・ チーム・ワーク よねえ 」
そうだわ!
チーム・ワーク!
なによりも大切なはず よね
003、 あんた いつも言ってるわよね?
フランソワーズのこころに ぐっと響く言葉なのだ。
「 そ! だから 俺も言う。 フランも言う。
そんで 検討してゆこうじゃん? 」
「 そ うね ・・・ 」
「 あは・・・偉そうなこと、いっちまったけど〜〜
今日もさ あの音取りの件 俺 自習しとくわな 」
「 ええ。 わたしも パンシェの角度、よく練習しておくわ 」
「 おっし。 ― 握手! 」
ぱ。 大きな手がフランソワーズの前に 飛び出した。
「 ん ・・・ あらためて 宜しく! 」
きゅ。 白い手が両手で包みこんだ。
「 ありがと タクヤ。 タクヤがわたしのパートナーで
本当に嬉しいわ 」
「 え あ ・・・ へへへへ・・・俺もさあ〜〜 」
「 じゃ また明日ね。 Merci A demain ! 」
ぱ・・っと笑顔が開き 彼女は身を翻してメトロの駅に向かった。
「 ・・・ うん ・・・ また 明日 ・・・ 」
タクヤは 舗道に突っ立ったまま ぼ〜〜と
そのすっきりした後ろ姿を 見つめていた。
「 ・・・ おか〜さんは大変だよなあ ・・・・
って な〜〜んか 俺ら いい感じじゃね??? 」
本心を言えば あのままお茶にも誘いたい。
二人でゆっくり ・・・ あれこれおしゃべりをしたい。
・・・ さ・・っいこうだよなあ・・・
あ〜〜〜〜 俺 なんだって
もうちょい早く生まれなかったんだろうなあ・・・
あ〜〜〜あ・・・
・・・ 神サマを恨みたくもなるぜ
「 でもよ! 舞台ではこの俺が ベスト・パートナーに
なれるんだ。 王子サマとお姫サマだぜ?
― やる。 俺は〜〜〜〜 やってやるぜ! 」
ぽ〜〜〜ん ・・・ ばすっ!
タクヤは自分のでかいバッグを放りなげ ジャンプして捕まえた。
「 ふふん ! 」
彼は 意気揚々と帰路を辿っていった。
わいわい がやがや どたどた・・・
バレエ・カンパニーといはいえ 休憩時間は賑やかだ。
特に 次の公演準備に入る時期は 全員が少し興奮している。
「 ね 出てるよ 」
「 わ もう? 」
「 ・・・ うひゃあ〜〜 」
「 が〜〜ん ・・・ 」
掲示板の前で 団員たちがわいわいざわざわ・・盛り上がっている。
貼りだされた配役リストに 全員の視線が張り付いているのだ。
「 うひゃ〜〜〜 『 パリ炎 』かあ〜〜〜 」
丸顔の女性が大きな目を まん丸にしている。
「 え みちよ なにが回ってきたの 」
「 え〜〜〜 今更〜〜 『 パリの炎
』 だってさあ
あれって ワカモノの踊りだと・・・ 」
「 あら みちよにぴったりじゃないの 」
「 だってもうオバサン・・・ あ フランは? 」
「 『 オーロラ〜 』 それも 結婚式のGP !
このオバサンが よ?? わたし おか〜さん ですけど? 」
金髪碧眼が 少々呆れ顔をしている。
「「 なんなのよぉ〜〜〜〜 」」
中堅どころのダンサー二人が 肩を竦め苦笑いしている。
「 ま ね〜 今回はお若いちゃん達ががんばる回だから 」
「 そうよね 公演のメインは マダムの創作でしょう?
芯は まゆみさん? 」
「 そ。 まゆみさんと新庄先生だよん。
そんで 若い子達があと全部・・・コールドっぽいこと やるんだ。
これ ウチの恒例なんだよ 」
「 ふうん・・・ あ じゃあ みちよもやった? 」
「 やったよ〜〜 研究生一年目でさあ まだマダムの振りとか
全然知らなかったから も〜〜〜 死ぬほど苦労した・・・ 」
「 へえ・・・ いいなあ 」
「 な〜にがさ〜〜 あんな苦労はしないほうが全然いいよ。
フランソワーズは 最初は? ウチに来て 」
「 え〜と・・・ ああ 『ジゼル』 のコールドかな〜
<そろえる> って死ぬほど大変だった わたしには 」
彼女は アラベスクで移動してゆくステップを 踏んでみせた。
「 あ〜〜〜 二幕のアタマね〜〜
そ〜だよね〜〜あそこで 皆 しごかれる〜〜
脚! 落ちてる とか 横 揃えろ〜〜 とかさ 」
「 そ・・・ もう そういう経験 なかったから
も〜〜〜〜 目がテンテンだったわ 」
「 ふふふ ・・・ あ〜〜〜 で 今回 我々オバサン達に
GPがぼろぼろ周ってきたってこと 」
「 はあ・・・ ちょっと冗談じゃなく大変だわ わたし。 」
「 ま〜たまたぁ〜 フランソワーズにぴったりじゃん?
タクヤくんと、でしょ? 」
「 そ〜なんですけど・・・ なんか悪いわあ・・・
年上のお姫サマで ・・・ 」
「 いいじゃん 100歳違い なんだからさ 」
「 ・・・・ 」
みちよの軽い冗談を ふくざつ〜〜な表情で受け流した。
・・・ ホントに 大変よ。
できるかなあ・・・
必死にならないと 無理 かも・・・
ふうう〜〜〜 金髪美女は低くため息を吐いていた。
『 眠りの森の美女 』 第三幕 オーロラの結婚 より GP
テクニックも勿論難しいけれど ・・・ なにせ お姫サマ なのだ。
それも 結婚式。
絶対的に? シアワセで気品に満ちた王子と王女の踊り なのだ!
「 ・・・ できる かなあ ・・・ 」
フランソワーズは珍しく 引き気味になっていた。
「 だめよ。 そんな弱気じゃあ・・・
タクヤにだって迷惑かけるし ― やるっきゃない! 」
― そして 彼女は全力で <幸せなお姫サマ> を踊るべく
集中し始めたのだ。
タタタン タタタン ・・・タタタン
電車の揺れは心地よく ちょっと気を緩めると眠気が襲ってくる。
「 〜〜〜 ・・・ ! だめ! 寝ないで〜〜 」
フランソワーズは隅の席で きゅっと背筋を伸ばした。
「 音 音・・・いつも聴いてなくちゃ ・・・ 」
もう隅々まで頭に入っている音楽を もう一度叩きこむ。
というか 身体中に滲み込ませる。
「 ウチに帰ったら時間ないし・・・
ああ 夜に自習しよっかな・・・ チビ達が寝ちゃえばいいわよね?
ジョーが帰ってくるの、遅いし ・・・ うん やるわ!
えっと 帰りの買い物のリストは〜〜〜 」
帰路の車内は いつもはのんびり読書をしたり
好きな音楽を聞くリラックスタイムなのだが ・・・
時間 ないのよ!
のんびりしていられないわ
ジョーと結婚し 双子の子供たちに恵まれ もうてんやわんやの日々だったけど
そのチビっこたちも小学生。
一応 一人で行動できるようにはなったけど。
でも。
帰宅すれば < おかあさん > としての忙しい時間が待っているのだ。
「 えっと ・・・ オヤツはゼリーが冷えているわね。
今晩のオカズ〜〜 どうしようかなあ・・・
あ 昨日買っておいたポークがあるから 生姜焼き しようかな。
すばるは けちゃっぷ焼き にすればいいし・・・ あ! そうだわ!
卵! 買うの、忘れてた〜〜〜 ・・・手に書いておこっと。
それから・・・ ジョーがなにか言ってたっけ・・・
なんだったっけ・・? スーツがどうとか・・・・?
う〜ん 忘れたァ〜〜 ま いっか たいしたことないわ
・・・ ふぁ〜〜〜 ねむ ・・・ 」
カタタン カタン ーーーーー
車輛の揺れは この忙しいオクサンの眠りを誘ってしまったようだ。
す〜〜〜〜 ・・・・
隅の座席で 彼女はぐっすり寝入ってしまった。
カサ・・・。 メモ用紙を花瓶で止めた。
「 ・・・ これで いいわね。 チビ達はしっかり寝てるし。
ジョーの晩御飯は チン すればおっけ〜。
えっと ・・・あと1時間くらい大丈夫・・・かしら 」
フランソワーズは リビングを見回し 残したメモを
もう一回確認した。
< 下にいます > それしか書いてないけど
ジョーには わかる はず。
博士と子供たちと 賑やかに晩御飯をすませた。
チビ達はベッドの中だし、 博士は書斎に閉じこもった。
「 よし・・・っと。 で〜〜は 行きます 」
カチン。 リビングの電気を常夜灯に変えた。
そして CDとタオル、ペットボトルを靴を持って
彼女は そっと地下のロフトへと降りていった。
地下室のドアを閉め 音を流しつつ軽くストレッチをする。
これは 踊りの世界に入るための プレリュード なのだ。
ふんふ〜〜ん ・・・
ストレッチしつつも手はなんとなく動き 振りの確認をしている。
「 ん〜〜〜 ここでプロムナード〜〜〜 っと。
タクヤってば ちょっと速いかなあ ・・・ 」
タクヤとは もう何回も組んでいる。
お互いのタイミングも かなりわかり合っていて安心感もある。
「 まあね〜 いろいろ言い合えるってもの 気が楽だわ
だからこそ 頑張らなくちゃあ ・・・ 」
タクヤの若さからのパワーに 負けるわけには行かない。
ここは 経験からくるテクニックと抒情性で太刀打ちする。
「 オーロラのV は昔も踊ったことあるし。
GPも そうねえ・・・ ジョーと結婚する前に踊ったわ。 」
ふんふんふん〜〜 よ・・・っと!
バーを相手にアチチュード・プロムナードのバランスを確かめる。
「 テクニックは それほど不安じゃないわ。
けど ね。 王子さま と お姫サマ なのよ!
オーロラは 16歳のまま眠ってたわけでしょう?
― わたしに 16歳の乙女を踊れっていうわけ ・・・?
わたし 奥さんでお母さんで 小学生の娘と息子がいるんですけど 」
ふう〜〜〜〜 どうもため息が漏れてしまう。
「 ! ぐちゃぐちゃ愚痴ってないで! 練習しなくちゃ。
うん ・・・ ちょっとヴァリエーション 躍ろ ! 」
CDを操作して ― たた・・・っと 上手奥にポーズをした。
わたしは オーロラ、 16歳のお姫さまよ〜〜〜
ひたすら明るく 華やかに。 そして 気品に満ちて。
フランソワーズは 若々しい乙女を踊る。
ん〜〜〜〜 いい感じ かも〜〜
気分も乗っているので 連続のエカルテ・デリエールのデヴェロッペも
きれいに 決まる。
指の先まで シアワセなお姫さま になって シアワセいっぱいの笑顔で
・・・・ ラストの回転きれいにきまった。
「 〜〜〜〜 ふう 〜〜 な なんかいい感じ♪ 」
ふ〜〜 ・・ タオルに顔を埋めつつ少しほっとする。
「 ヴァリエーションはしっかり決めとかないと ・・・
ふう ・・・ この調子だわ。
アダージオ は う〜〜ん タクヤとなら
もうちょっと冒険してみようかなあ 」
パートナーがいるつもりで ピルエットを正確に試してみる。
「 ・・・ ん〜〜 もう一回 回れるけど・・・
でもきっちり回って にこ♪ の方がいいかなあ 」
音源をオープンにして 最初から流し始めた。
ふ〜〜んふんふん・・・っと。
やっぱ コーダが問題 かな
これはもう タクヤと < 格闘 > だわね
「 ふうう〜〜〜〜 ・・・ やっぱりここは暑いわあ〜〜
換気はついてるけどクーラー ないもんね ・・・
こんど ジョーに頼んでいみよ・・・ ふぁ〜〜〜〜
・・・ねむ ・・・ちょっと休憩しよっかな ・・・ 」
バスタオルにくるまって 部屋の隅っこに座り込んだ。
「 ちょっと・・・ クール・ダウンの代わり ・・・ 」
すう〜〜〜〜 ・・・ そのまま 彼女はたちまち寝入ってしまった。
ゆらゆら ゆら〜〜〜
なにか 心地よい揺れが身体全体を覆っている・・・
フランソワーズは ぼ〜〜んやりと目を開いた。
「 ・・・? あ ? 世界が揺れてる・・・? 」
「 ・・・ やあ 目が覚めた? 」
目の前で 茶色の瞳が微笑んでいる。
「 ・・・ え ・・・? 」
「 あそこで寝ちゃうと 風邪ひくよ? いくらきみでも・・・
さあ 上に戻るよ 」
「 ・・・ ジョー ・・・ あ お帰りなさい ・・・ 」
「 ふふ ただいま〜〜 あ 晩ご飯 美味しかったよ 」
「 ・・・ あ〜 あ! 」
やっとはっきり目覚め、 フランソワーズはぱっと顔をあげた。
「 おわ?? おいおい いきなり危ないよう 」
「 え ええ ・・・ ごめんなさい ジョー!
晩ご飯〜〜 ちゃんと チンできた? 」
「 はい。 スコッチ・エッグに ニンジン・マリネさらだ、
美味しかったよ あ 冷蔵庫の糠漬け もらいました 」
「 ごめんなさい! ちょっと休憩 って座ったら・・・
そのまま 寝ちゃったの ・・・ 」
「 いいよ いいよ 次の舞台? 」
「 そうなのよ! 次の公演で・・・ GPが回ってきたのぉ〜〜 」
「 ・・・ それって・・・ オトコと組んで踊るヤツ? 」
「 ぴんぽん。 『 眠りの森の美女 』 のね〜〜 三幕で・・・
< オーロラの結婚 > っていって・・・ 」
「 ! け けっこん・・・ 」
「 そうよ 結婚式の踊り・・ 王子サマとお姫サマの踊りなの 」
「 ふ〜〜〜〜〜〜〜ん ・・・?
で その 王子サマ って ― また アイツ か? 」
「 またもや ぴんぽん☆ 最近、 タクヤと組むこと、
結構多いのよね 」
「 ふ〜〜〜〜〜〜〜ん ・・・ アイツと けっこんしき ね?
ふ〜〜〜ん ・・・ 」
「 そ。 華やかな踊りだから きっちり決めないとね〜〜 」
「 ふ〜〜〜ん ・・・ ふ〜〜〜〜ん 」
「 なに? 」
「 いや 別に。 さぞかし豪華な結婚式なのでしょうね 」
「 ?? そうよ だって 王子サマとお姫サマなんだもの 」
「 ・・・ あ〜 ぼくは平凡な一市民ですから 質素な挙式しか
出来ませんでした・・・・ すいません 」
「 ええ?? やあだあ〜〜 ジョーってばあ
なに言ってるのお?? きゃ〜〜〜 オカシイ〜〜〜 」
「 ・・・・ ふん 」
「 これはね わたしの < お仕事 > です?
おとぎ話のカップルを踊るのよ 」
「 ・・・ そうだけど さ 」
「 もう〜〜 ・・・ わたしは 最高に幸せでした あの日 」
ちゅ。 彼女のキスが彼の唇に落ちてきた。
「 ・・・ へ へへへ・・・ ぼくも さ♪ 」
「 ああ もうこんな時間・・・ ごめんなさいね ジョー 」
「 いえいえ・・・ 久々にきみをお姫サマ抱っこできて
シアワセでぇす♪ 」
「 ふふふ ・・・ じゃ リビングまでお願いできる? 」
「 もちろん〜〜♪ なんなら ベッドまででも〜〜 」
「 わたし 汗かいてそのままなの。 シャワーしたいの 」
「 はいはい ぼくのお姫さま 」
二人はリビングにもどり そのままなんとなく食卓に座った。
「 あ ・・・ コーヒー いれようか 」
「 わあ〜〜 お願い♪ 」
「 畏まりました、姫君。 ふんふんふ〜〜ん♪
あ スコッチ・エッグ 美味かったよん♪ 」
「 あら 嬉しい。 チビ達もねえ 夢中になって食べてたわ 」
「 そ〜だろうさ きみのスコッチ・エッグは最高だもんな 」
「 ふふふ ありがと 」
「 あ〜〜 明日の弁当にさあ 」
「 はい わかってマス、ちゃんとお弁当用のも作ったの。
メインのオカズです 」
「 サンキュ♪ へへ 明日の弁当、楽しみ〜〜〜 」
ジョーの拘り それは 「 弁当 」
彼はできれば 昨夜の残り をオカズに入れてくれ、という。
煮物などの作り置きのお惣菜も大歓迎・・・
それに 甘い卵焼き が加われば 最高〜〜 というスタンスなのだ。
「 前の晩のと同じで いいの? 」
「 ウン。 それがいいんだ。 」
「 今 お弁当用のシュウマイとか海老フライとか ・・・
美味しいの、あるけど・・・ 」
「 う〜ん ・・・できれば 残り がいいなあ 」
「 そうなの? そりゃ ・・・助かるけど 」
「 ウン。 あ〜〜 ウチの弁当だあ〜って気がするから 」
「 わかったわ。 あと ゴハンには梅干し と フリカケ でしょ 」
「 ぴんぽん。 お願いします、奥さん 」
― で 彼は毎日
でっかい二段弁当箱を嬉しそう〜〜〜に 持ってゆくのだ。
ほい、と いい香の湯気の上がるカップを テーブルに置いた。
「 ん〜〜〜 わたし ジョーのコーヒー、大好き♪ 」
「 ふふふ〜〜ん これはさあ アルベルトに特訓されたから 」
「 あ〜 そうね 彼、上手だもんね ジョー、すごく美味しいわあ 」
「 んま〜〜 ああ ほっとするよね 」
夜も更けたキッチンで ジョーとフランソワーズはまったり
コーヒーを啜っていた。
「 次の公演の練習してるんだろ? 」
「 そうよ〜 もう苦戦中 」
「 ビッグ・チャンスじゃないか がんばれよ 」
「 ありがと・・・・ いろいろ大変なんだけど ― やるわ! 」
「 ふふふ それでこそフランだよなあ
あ でも 下で居眠りするのはやめとけ。 マジ風邪ひくぜ 」
「 はあい ・・・ ジョーと晩御飯、食べたいし♪ 」
「 ぼくもさ ああ 家族皆でゴハン 食べたいよ 」
「 チビ達も待ってるわ。 」
「 ん〜〜〜 ぼくも待ってるぅ〜〜 」
「 ふふふ ・・・ さあ もう休みましょ 」
「 ん〜〜 そうだなあ 」
寝室では 二人で軽くキスを交わし、ベッドに入った。
「 ふぁ〜〜あ ・・・ なあ 『 眠りの森の〜 』ってさ
アレだろ? ず〜〜〜っと眠っていたお姫サマの話? 」
「 そうよ 王子サマが起こすのよ キスして
」
「 ふ〜〜〜〜ん・・・ キス ねえ・・・ 」
「 だから〜〜 御伽話だって言ったでしょう? 」
「 あ〜〜 まあ なあ 〜〜〜
・・・ ふぁあ〜〜〜 けど ・・・ そのお姫サマ さあ 」
ジョーは眠気に負けていて 声がぼわぼわしてきている。
「 100年 眠ってたんだよね〜〜 」
え。
― どきん。 不意に彼女の心臓がひっくり返った。
眠って いた・・・?
ずっと ・・・?
目覚めたら 100年後 ・・・
わたしも ・・・
眠っていた の よ
ずっと 眠っていた ・・・
Last updated : 06.08.2021.
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*********** 途中ですが
久々 あのカレシ、登場です〜〜
一応 【 島村さんち 】 設定ですが 双子は出てきません。
ダンサ― フランちゃん、 頑張れぇ〜〜〜 (*^^)v