『 おべんと おべんと 嬉しいな ― (1) ― 』
いってきまあ〜〜す ・・・まあすぅ〜〜〜
カッチャ カッチャ カッチャ
甲高い声とランドセルの音を盛大に響かせ チビ達は登校して行った。
「 はい〜〜 いってらっしゃ〜〜い 」
フランソワーズは 門の前で大きく手を振った。
「 おか〜さあ〜〜ん いってきまあ〜〜す 」
坂の下でチビ達は一際大きな声で叫び ぶんぶん手を振ると
角を曲がり、姿は見えなくなった。
「 あ〜 やれやれ ・・・ 今朝も無事に登校完了 と。
さ わたしも出掛ける支度しなくちゃ 」
カタカタカタ ・・・ サンダルを鳴らし、玄関に戻る。
「 ふんふんふ〜〜ん♪
さあ ジョーのお弁当も冷めたかな・・・
ご本人は ― 一人で起きてね〜 」
キッチンへ戻り 朝の仕事・後半戦 が始まった。
おべんとう。 この国に来て知った言葉。
ランチ じゃないのだ。 おべんとう ― それはトクベツの響きを持っていた。
彼女自身 学生時代にはランチを持って登校していた。
昼ごはんにお店や学食を利用することもあったが 節約の意味もあって
自宅からランチを持って出た。 ランチ を。
「 ・・・ う〜〜ん あの頃のランチって ・・・
バゲットにハムやらチーズはさんで・・・ ジャムもね〜
あとはリンゴかオレンジを一緒に紙袋に入れてってカンジかなあ
飲み物? ペットボトルなんてなかったもん・・・
あ えびあん水のボトルはあったけど ・・・
そもそも お茶 っていうモノは存在しなかったし?
オ・レ は お店で飲んだかなあ 」
どこの国でも ランチ とはそんなものだろう と思っていた。
― そして。
この極東の国で この邸に暮らすようになってから
彼女は 同居人 となった青年に ランチについて語ったものだ。
「 ふうん ・・・ フランのランチって サンドイッチってこと? 」
「 う〜〜ん ・・・それともちょっと違うけど ・・・
まあ パンの間に具が挟まってるってとこは 似てるかな 」
「 パンって食パン? 」
「 あ〜〜 ううん あの ココでは ふらんす・ぱん って
言ってる、あのパンの 」
「 あ〜 あの ぱりぱりしたヤツ?
ふうん そうなんだ? でも ・・・ 足りるの? 」
「 え? ああ ほら わたし達はず〜〜っとダイエットだから 」
「 あ そっかあ 」
「 そ。 セロリ齧ってトマト・ジュース なんてこともあったわ 」
「 ひえ〜〜〜〜〜〜 セロリ! 生で齧る! 」
ジョーは仰け反っている ・・・ 彼はセロリが苦手なのだ。
煮込んで煮込んだモノを やっと食べられる程度。
サラダに刻めば 彼は箸の先で器用に弾きだす。
「 あらあ 美味しいのよ?
・・・ ジョーって不思議よねえ セロリはダメなのに
ほら あの長っぽそい刺激臭のある野菜・・・ なんとかねぎ?
あれ 好きなのに 」
「 長ネギ だよ。 うん 好きだよぉ〜〜〜
ラーメンには必須だもん♪ ピザとかにもオイシイよぉ 」
「 ・・・ そう? わたし ・・・ 苦手。」
「 ま いろいろだよ。 」
「 そうよね〜〜〜 」
その時は 二人とも笑いつつ語っていたけれど。
やがて その彼と な〜〜んと結婚することになり
二人の間に生まれたチビ達は たちまち幼稚園に通う年頃となり ―
お弁当作り は 母の最大の任務となった。
「 え すぴか達のランチ? ふ〜〜ん お家からもってゆくのね・・・
いいわ バンとえ〜と チーズにハム、ミニトマトと あとは
ボイルド・エッグ か オムレツ・・・ そんなものでいいのしょ? 」
最初 このフランス人マダムは軽く考えていた。
が。 < そんなもの > じゃなかったのだ。
「 ・・・ うそぉ〜〜〜〜〜 」
ご参考になさってくださいね〜〜 と 園の先生が特別に見せてくれた
< おともだち の おべんとう > の写真には ―
ほとんど芸術品みたいな 作品 がならんでいた。
「 え・・ これ、 ほんとうにランチですか?
そのう〜〜 子供達がたべる? 」
「 はい。 まあ そんなに凝る必要はないと思いますが
お母様方皆さん 子供さんが喜ぶからって・・・ 」
「 ・・・ オモチャ じゃないんですね? たべもの?? 」
「 はい。 あのう ご参考になさるならネットにいろいろ・・
レシピが載っていますよ 」
「 ・・・ はあ ・・・ 」
こ〜んな掌にのっかるくらいのお弁当箱に
こ〜んなに 凝りまくる必要 あり?
ど〜してボイルド・エッグに顔を描いて
ウィンナーを デビル・フィッシュにする??
リンゴは ラパン ( うさぎ ) じゃないわよ
フランソワーズは その映像をじ〜〜〜〜っと見つめ立ち尽くしていた。
「 あのう すぴかちゃん・すばるクンのお母さん? 」
後ろから 柔らかい声が聞こえた。
「 ! は はい・・? ああ わたなべクンのお母さん 」
振り向けば小柄な丸顔の お母さん がにこにこしている。
「 お弁当 でしょう? 」
「 え あ はい ・・・ あのう・・・
こういうの、作らなくちゃいけないんですか ・・・? 」
「 そうですよねえ 私もちょっとなあ〜 って思うわ。
あのね 色違いのおむすびでも 喜ぶわよ 」
「 え そうなんですか 」
「 ええ。 それにね 手抜きグッズ いろいろあるの 」
「 ― 手抜きぐっず?? 」
「 そ。 例えばね〜〜 」
わたなべクンのお母さんは 手抜きグッズ を教えてくれた。
顔が切り抜いてある海苔。 クラウンが着いた串。
野菜を花型にできる抜き型 子供向けの一口冷凍食品 などなど ・・・
「 あらあ〜〜〜 すごい〜〜 です 〜〜 」
「 ふふふ こんなの、使ってもいいし。
でもねえ 見た目を凝るよりも子供がおいしい! って
食べてくれるものを入れてあげたいな〜って思うのね 」
「 あ! そうですよねえ ランチ、楽しみ〜〜って 」
「 でしょ? あ お国ではサンドイッチなのかしら 」
「 ・・・ そうですねえ 」
「 あのね 子供たちが好きなお弁当にね ・・・
ゴハンなんですけど 」
「 ええ ・・・ ふむふむ ・・・? 」
わたなべ君のお母さんは ご飯を小さく丸めていろいろなフリカケなどを
まぶすメニュウを教えてくれた。
「 すぐに出来ますし・・・ 色取りもいいでしょ?
これにすると ウチのだいちはお弁当箱を空にしてくれるの。 」
「 へえ・・・・ 美味しそうですねえ
ありがとうございます! 明日のお弁当が決まりました 」
「 よかった ・・・ あとね どの子にも 卵焼 は
鉄板よ〜〜 」
「 あのう・・・ わたしが作るとどうしても オムレツ風 に
なってしまうんですけど 」
「 いいじゃないですか〜〜 お母さんの味 で 」
「 そ そうですね! 」
・・・ チビ達の幼稚園時代 は お母さんのお弁当奮闘期 だった。
こんな母の奮闘努力を知ってか知らずか ―
チビ達は 毎日ちがった表情の おべんとうばこ を持って帰ってきた。
きょうりゅう の絵がついた青い弁当箱は ほぼいつも空。
すぴかは ( 注:すばる ではない )なんでもよく食べる。
あれだけ元気一杯に活躍していれば さぞかしお腹も空くだろう、と
母は 至極納得している。
歯ごたえのあるモノが好きで ミニ・トマトやセロリが好きなのだ。
ちなみに 家ではタクアンなど漬け物には目がない。
コズミ博士が 大笑いして差し入れてくださる。
「 おか〜さ〜ん すぴかね、ぷちっていう うぃんな〜 すき♪ 」
・・・どうも 幼児向けの柔らか食品はお気に召さない らしい。
オヤツでは 当然、昔ながらの固焼きせんべい がお気に入りだ。
すばるは 電車の写真がついた緑の弁当箱で お残し がわりにある。
野菜は苦手・・・ 母はマヨネーズやらケチャップや甘味噌まで駆使し
なんとか食べてもらっている。
「 おか〜さ〜〜ん 僕ね 僕ね あまあ〜〜い・おむれつ がいい♪ 」
「 今日のオムレツも甘かったでしょう? 」
「 ウン。 でもねでもね もっと〜〜〜 」
彼は 滅茶苦茶に甘党なのだ ・・・ チョコには目がない。
あんこも好きで これもコズミ博士の 差し入れ に目を輝かす。
いつもにこにこ・すばるクン の笑顔は 甘あ〜〜〜い のだ。
赤ちゃんの頃から すぴかはぴんぴん元気な細身、
すばるはぷっくり・金太郎タイプなのだ。
「 やれやれ ・・・ まあでも二人とも元気でごはんを食べてくれて。
もうそれだけで十分だわ ・・・
あ オヤツは ホット・ケーキ・ミックス でちょこっと作ろ。
すぴかには 溶けるチーズ かけて すばるは ハチミツとろ〜り ね 」
母は もう一日中 食べ物作り と格闘していた・・・
「 ・・・ 大変だね。 これはぼくがやるよ 」
ジョーは 多くを語らず、黙ってチビ達の弁当箱を洗い
重たい買い物をかって出てくれた。
「 ジョー ・・・ ありがとう! すごくうれしい・・ 」
「 えへ そ そう? 」
「 うん。 も〜〜 めちゃくちゃに嬉しい!
ああ ジョーってば最高の旦那さんでお父さんだわあ〜〜 」
「 え えへへ・・・そ そう・・・? うへへ・・・ 」
赤くなりつつも ジョーはそれこそ < めちゃくちゃに > 嬉しそう・・・
「 あ あの ・・・さ。 ちょこっとだけお願いがあるんだけど 」
「 ?? なあに 」
「 あ あのう〜〜 ぼく チビ達のお弁当、余り あったら
もらっても いいかな 」
「 え??? チビ達のお弁当の ・・・ あまり?? 」
「 ウン。 たこさん・うぃんなー の切れっぱし とか
フリカケごはん の余りで いいんだ 」
「 ・・・ いいけど ・・・ あの子達のお弁当の 余り だから
一食分もないわよ? オムレツの切れっ端とかきんぴらの余り とか
ちまちま残りがあるけど 」
「 あ それ! 食べたい〜〜 」
「 ・・・ どうぞ。 あ じゃあ 別にオムレツ 作る? 」
「 あ ううん ううん 手間だろう?
ぼく この あまり がいいんだ〜〜 やあ おいしそうだなあ 」
「 ・・・・ 」
ジョーは 嬉々として 子供たちのお弁当の < あまり > を
平らげるのだった。
一口か二口で ぺろり、よねえ?
なんか嬉しそう。
・・・ へ え ・・・?
かわった趣味ねえ・・・
ま 余分が片付いて嬉いけど
こんなの、美味しいのかしら
あら。 なんか幸せそうねえ〜
・・・ ジョーって 変わってる・・・
フランソワーズは お皿を洗いつつ彼の笑顔をチラ見していた。
― そして。
子供達が小学生になり < お弁当作り > からは解放される ・・・
と思っていたのだが。
「 あのう〜〜 さ。 お願いがあるんだけどぉ 」
ある日 彼女の夫が なんとな〜くおずおず申し出た。
「 ?? なあに 今さら・・・ 」
「 ウン ・・・ あのう さ。
チビ達 小学校で給食始まったんだろ? 」
「 ええ。 なんか美味しそうよ? 初日はカレーだった〜〜って
二人とも大喜びだったわ 」
「 ふうん ・・・ で さ。
もし よかったら ― ぼくの弁当、たのんでも いい? 」
「 へ?? 」
「 あの さ。 前の日の晩御飯の残り とかでいいんだ。
作ってくれる ・・・ かなあ ・・・ 」
「 あのう ・・・ チビ達のお弁当 みたいなの、を期待してもらったら
困るんだけど ・・・ 」
「 え そんなこと、ないよ。
ふつ〜にね ゴハンつめて昨夜のオカズをちょちょっと。
それでいいんだ。 ・・・ お願いできるかなあ 」
「 ええ いいわ。 だったら二段弁当箱にしましょうか 」
「 あ♪ それ いいなあ〜〜〜 ・・・ ごめんね 」
「 やだ なんで謝るのよぉ〜〜
ねえ 本当に晩御飯の残り でいいの? 」
「 うん♪ それがいいんだ〜〜 」
「 了解。 それじゃ 明日 お弁当箱、見てくるわ。
あ どんな絵がついてるのがいい? でんしゃ? きょうりゅう? 」
「 ― フラン〜〜〜〜 」
「 うふふ・・・ 冗談よ(^^♪ 」
こうして こんどは < お父さんのお弁当 > を作ることになった。
こーれは チビ達のおべんとう に比べれば めっちゃ楽だった。
だって ―
よ〜するに。
前の日、晩御飯のオカズを ちょっと多めに
作っておけばいい ってことだわね
わ〜〜〜 これは楽だわあ〜〜
オカズの残り ぜ〜〜んぶ詰め込んじゃえばいいんだし。
ふっふっふ〜〜 節約にもなるし?
これ いいわあ〜
主婦として フランソワーズはおおいに満足であった。
― で。 彼女のご亭主の 拘り とは ・・・
なにしろ 昨日の晩御飯の残り を入れてほしい のだ、彼は。
島村家の卵焼き は 一般日本人家庭からみれば < オムレツ > なのだが
ジョーにとっては < 卵焼き >。
なにしろ ジョーの お袋の味 は フランの料理なのだから・・・
そして 昨日の晩御飯の < 残り > のはずの ハンバーグとか
肉団子とか 生姜焼き 肉じゃが これは少し多めに作っておけばよい。
煮物 も必要。 これは 千切りに凝っているすばるが嬉々として
刻む きんぴらごぼう 細切れ肉入り が定番。
ほうれん草のお浸し を 味付け海苔で巻いたもの
ブロッコリーの中にカラシマヨネーズを仕込む
あとは ゴハン。 真ん中に梅干し そして フリカケ必須。
手順さえ決めてしまえば ― 超〜〜〜楽ちんだ。
成人男子用の大きな弁当箱を二つ重ね ―
一段目には 白いご飯にフリカケ・梅干し。
そして 二段目には 昨日の晩御飯の <残り> がぎっちり。
それを可愛いアップリケのしてある小風呂敷に包んで 出勤してゆく。
その風呂敷はランチョン・マットにもなるのだが ・・・
しまむら すぴか 又は しまむら すばる
と マジックで大書きしてある。
チビ達の 幼稚園時代の < お古 > を ジョーは嬉々として使っている。
彼は 家庭の味 を 色濃く引きずっていたいのだ。
いや それが彼のエネルギーの源 らしい。
どんなに 疲れていても 辛くても ― 家族のため ならなんでもできる。
ジョーは 心底そう信じ、また 実際その通りであった。
「 フラン〜〜 今日も美味しかったよぉ〜〜 」
ジョーは 満面の笑みで弁当箱を取りだす。
「 あ あら そう? よかったわあ〜
( オカズ ・・・え〜と なに入れたっけ?? ) 」
「 ねえ ねえ 煮込みハンバーグってさああ〜
どうして翌日の方がオイシイんだろうねえ 」
「 ( あ ハンバーグだったか・・・・ )
あ あら そう? あの味でいいのかしら 」
「 うん! さいこ〜〜だよぉ〜〜 特別ソースなのかな 」
「 え ・・・ う〜ん ・・・ そうねえ 営業秘密 かな〜 」
「 え? あは そうなんだ? じゃ ・・・ またあの味で
お願いします 」
「 はあい。 ( ソースとケチャップ まぜて 醤油ひとたらし、
なんだけどね ) 」
「 楽しみ〜〜 あ〜 なんかさ ぼく、この瞬間 楽しみでさ
明日はな〜にが入っているかな〜〜って思うと ・・・
もう ワクワク〜〜 ♪ 」
ジョーは 自分の弁当箱を洗いつつ にこにこしている。
へ??
お弁当箱洗い なんてどこが楽しいのかしらね〜
― このヒト ホントに変わってる・・・ と思うが
決して口に出したりは しない。 それが妻の情け?というものだ。
「 さっさっさ〜〜〜っと。
明日もオイシイ弁当、 お願いしまあす。 」
「 了解です。 ・・・ ねえ 本当に晩御飯のオカズと同じで
いいの? お弁当用のフライとか美味しそうなもの あるけど 」
「 今晩 フライじゃないだろ? 」
「 ええ。 今晩は白菜と人参とチキンのミートボール煮 」
「 うわお〜〜〜〜♪ ぼく アレ 大好きなんだあ〜〜
ね ね 明日の弁当もさ それで頼むね〜〜 」
「 ええ たくさん作ってあるから ・・・
ま 今晩は熱々〜〜のところを楽しんでね 」
「 ウン♪
へへ はふはふしつつ 食べるの、最高だよなあ〜〜
白菜が甘くてさ 人参の歯ごたえが効いててさ
ミート・ボールは生姜味でさ うわ〜〜 手 洗ってくる! 」
ジョーは どたどた・・・ バス・ルームに駆けて行った。
「 ・・・ 今 弁当箱 洗ってたのに また 手 洗うの?
ま いいけど。 白菜鍋 温めとこ ・・・ 」
フランソワーズはちょこっと肩を竦めると 鍋をレンジにかけた。
晩御飯、チビ達は たっくさん食べてくれた。
すぴかは 生姜味のミンチ・ボールが大好きだし
野菜苦手のすばるだが この白菜鍋だけは ばくばく食べる。
「 〜〜〜 おいし〜〜♪ おいし〜ね〜 おか〜さん 」
「 ふふふ すぴかさん、 大好物だものね 」
「 ん♪ ね〜 生姜味ってど〜してお醤油とぴったし なのかな〜
おいし〜よ〜〜 」
「 んぐんぐんぐ ・・・ はくさい、あまいね〜〜 おか〜さん 」
「 まあ すばるくん お野菜 いっぱい食べてくれたわね 」
「 これさ 甘あ〜いんだもん♪ あのね よ〜〜くむぐむぐするとさ
もっとあまくなるんだあ〜〜 おいし〜〜 」
二人のにこにこ顔と順当に減ってゆく食材に お母さんも笑顔笑顔。
「 あらあ 嬉しいわあ〜 」
「 ねえ おか〜さん。 おか〜さんも これ すき? 」
「 ええ 好きよ。 お母さんも生姜味 好きなの。
ほら ポーク・ジンジャー も好きでしょ すぴかさん 」
「 あ そだね〜〜〜 アタシ すき! また つくって〜 」
「 はいはい。 あのね お父さんもこの白菜鍋 好きよ 」
「 僕もだいすき〜〜〜〜 おいし〜〜〜〜 」
「 ふうん それじゃ ウチ中み〜んな好きなんだね 」
「 あら そうねえ。 じゃ こんど日曜日にまた作りましょ
あ 今度は 餃子入り にしましょうか ちっちゃいの、いっぱい 」
「 うわい〜〜〜 」
「 僕も 僕もすき〜〜〜 お砂糖いり? これ・・・ 」
「 すばるくん、 お砂糖もハチミツも入ってませんよ?
これはね 冬の白菜の甘味なのよ 」
「 ふうん?? 」
「 それでぇは 日曜日、 餃子つくり、手伝ってくれるヒト〜? 」
「「 はい はい はい!!! 」」
二人は同時に競いあうみたに手をあげた。
「 うわ〜〜〜〜 ありがとう〜〜〜
張伯父さんにならったおいしい〜〜の、作りましょうね 」
「「 うん!!! 」」
「 あ ・・・ おと〜さん も! 」
「 そうね〜 みんなでつくりましょうね 」
「「 うわあ〜〜〜〜い ♪ 」」
ふふふ 〜〜 やた〜〜〜
これで 日曜のイベントとメニュウは 決まり(^^♪
あとは 食材の準備だけね。
当日は キッチン・テーブルに
おっきな紙、ひろげておけば おっけ〜〜
ふふふ 〜〜〜
舵取りは ジョーに任せて・・・
わたしは のんびりデザートでも作ろっかな〜〜
う〜〜〜ん やっぱり 杏仁豆腐 で決まりかな
そうだわ こんど 肉饅・餡饅 に挑戦してみよっかな〜
フランソワーズも ココロ密かに に〜〜んまりしていた。
「 へえ いいね!!! ぼくもやる。
っていうか〜 ねえ ぼくが仕切ってもいい? 」
案の定、彼女の御亭主はこの提案にノリノリ〜〜で
自ら < 船長 > を買って出てくれた。
「 お願いしまあす。 具材はちゃんと買っておくわ。
餃子の皮は 大人のお店のがあるし。 野菜は〜 」
「 あ ニラと長ネギ、必須だよ〜 餃子に入れればきみも食べられるだろ? 」
「 ええ。 あと・・・キクラゲとかキャベツとか 」
「 ウン。 あ タケノコも。 水煮とか売ってるだろ あれ頼む。 」
「 了解。 では当日の指揮命令をお願いします 」
「 了解。 刻み隊はすばる で まぜまぜ隊はすぴか だな 」
「 そうね それが一番無難だわね。 ジョー 包む?
今回は なるべく小型にして数たくさんお願い 」
「 わかった〜 あ それで 鍋? 」
「 そ。 白菜鍋 に 餃子入り 」
「 わお〜〜〜♪ もう芯からあったまるなあ 」
「 ぽかぽか ね、きっと。 」
「 ウン♪ わ〜あお〜〜〜 日曜日が楽しみ〜〜 」
「 ふふふ ・・・ すぴか達と変わらないわね〜〜 」
「 え なに? 」
「 いいえ なんでもありませ〜ん 」
ま いっか。
ウチは み〜〜んな笑顔です♪
さて ― 彼らの住居、ギルモア邸は温暖な土地に建っている。
海に近いが巧みな設計で 住人達はかなり快適に暮らすことができる。
そんな環境でも 年末を目前にすると気温の低い日々がやってくる。
ビュウ −−−−− ヒュウ −−−−−
裏山から乾いた寒風が海に向かって吹き流れてゆく。
お日様はかなり頑張っているのだが 風がその温か味を簡単に
吹き飛ばしてしまう。
その週末は 土曜授業の日。 お昼すぎにチビ達が帰ってきた。
「 たっだいまあ〜〜〜〜 」
「 ・・・ただい ま 〜〜 」
すぴかとすばるは マフラーぐるぐる巻き、そして ほっぺを
真っ赤にして 玄関に駆けこんできた。
「 おお お帰り すぴか すばる。
寒かっただろう〜〜 はやくお入り 」
玄関で 博士が迎えてくれた。
「 あ おじ〜ちゃま〜〜 ただいまぁ です♪ 」
「 おじ〜ちゃま ただいまあ〜〜 」
チビ達は ぴょんぴょん博士に飛び付いた。
「 ねえ おか〜さんは? 」
「 お母さんは〜〜 」
「 おお 重くなったなあ 二人とも・・・
お母さんはレッスンの帰りに、買い物じゃ。 二人に伝言があるぞ 」
「 なあにぃ 」
「 なに〜〜 」
「 いいかな しっかり聞いておくれ 」
「「 はあい 」」
「 えっへん ― お昼ごはんは 焼きそば です。
二人で準備をしておくこと。
すぴかさん お肉を冷凍室から出してシンクに置いて。
モヤシを一袋、 髭根を取って洗っておくこと。 」
「 はいっ お肉 とぉ〜〜 もやし! 」
「 そして すばるくん 人参 ピーマン シイタケ を
千切りにしておくこと。 ― いいかな? 」
「 はいっ!!! せんぎり〜〜 まかせて! 」
チビ達は はきはきお返事ができた。
「 おお 二人とも偉いのう〜〜 では まず ― 」
「 手 あらって〜〜 うがい! そんで 」
「 お昼ごはん つくるぅ〜〜 」
ドタドタドタ トトトト −−−
双子はえらい勢いで子供部屋に飛んでいった。
「 やれやれ ・・・ 元気でなにより、ということか。
では 母さんが戻るまで監督しておくか 」
博士は にこにこ・・・腰をぽんぽん叩きつつ
キッチンに向かった。
「 すばる〜〜〜 アタシ ここで もやし していい? 」
「 あ? うん いいよ〜〜 僕 こっちで切るから 」
「 サンキュ。 えっと ・・・ まず ザルに もやし だして・・・ 」
「 あ すぴか。 お肉、 だした? 」
「 え あ 出したよ〜〜 シンクにおいてある 」
「 おっけ〜〜〜 トントントン トントントン ・・・と 」
すばるは かなり軽快なリズムで人参を千切りしている。
小学生男子にしては か〜〜なりこなれた手捌きで ニンジンも
しっかり正確に 千六本 になってゆく。
「 すぴか すばる。 お仕事ははかどっておるかい 」
博士がキッチンに顔をだした。
「「 うん おじいちゃま〜〜 」」
「 そうか そうか。 お母さんはもうすぐ帰ってくるからな。
今 ・・・ 駅についた頃じゃ 」
「 わあお ・・・ 急がなくちゃ。
もやし〜〜 っと。 あとは お水でざ〜〜〜 ・・・ 」
「 にんじん おっけ〜 ぴーまん おっけ〜
しいたけ おっけ〜 ・・・と。
う〜〜ん やきそば だよなあ・・・ じゃあ うんと細かいのがいいなあ 」
すばるはしばらく千切りの山を眺めていたが
やがて マイ包丁をにぎりなおした。
「 せんぎり あげいん! ゆくぞ〜〜 」
タタタタタ タタタタ −−−−
彼の包丁はハイ・スピードで動き始め たちまち 千、いや 万切りの山が
出来始めた。
「 ほう・・・ すばるはすごいなあ 」
「 し。 おじいちゃま。 ほうちょう やってるときはね
じゃましちゃ だめ。 」
すぴかが大真面目な顔で 博士の袖をひっぱる。
「 お そうなのかい? これは 失敬〜〜〜 」
「 すばるね すご〜〜く しゅうちゅう してるから。 」
「 うむ うむ そうじゃな では ワシたちは皿でも並べおくかい 」
「 うん! あ おっきなお皿がいいかあ 」
「 そうじゃなあ ・・・ これにするかい 」
「 うん! あ やきそば どこにあるの? 冷蔵庫かなあ 」
「 ああ それはお母さんが駅前の 麺亭 で買ってくるそうじゃ 」
「 わあ〜〜 アタシ あれ だいすき ! 」
「 ワシも好きじゃよ、あそこの麺は うまい。 」
「 ねえねえ おじいちゃま。 今日のおひるごはんも
み〜んなすき だね ! 」
「 ああ そうじゃなあ 明日は餃子作りだろ 」
「 うん! い〜〜っぱい作って はくさいなべ だって 」
「 ほうほう それはいいなあ
では 今日の昼は 日曜イベントの 予行演習ということか 」
「 よこうえんしゅう? 」
「 練習しとけば 本番は楽々、だろ 」
「 あ そうだね〜 今日はやきそば 明日はぎょうざ〜〜♪
たらったらたら〜〜♪ 」
「 すぴか〜〜〜 せんぎり 完了〜〜 みてみて〜〜 」
すぴかは キッチンに飛んで行った。
「 お〜〜 すばる すご〜い ・・・ 」
「 えへ♪ がんばってみました♪ 」
「 すご〜〜〜〜 やきそば 美味しいよぉ〜〜 」
「 ウン♪ 」
ただいまあ〜〜 玄関で お母さんの声が聞こえた。
「「 わ! おか〜さ〜〜ん 」」
「 焼きそば用の麺 買ってきたわよぉ〜〜〜 」
「 「 うわ〜〜い 」」
Last updated : 12.21.2021.
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******** 途中ですが
例によって な〜〜んにも事件は起きません、
のんびり・愉快な 【島村さんち】 でございます <m(__)m>