『 どんぐり ころころ ― (2) ― 』
その日 ― 三年生の遠足の日 は 絶好の芋ほり日和 だった。
島村さんちの双子は お弁当とオヤツをリュックに詰め込み 元気に出かけ
夕方 どご〜〜〜〜〜んと大荷物を担いで帰宅した。
「 うわあ ・・・ すごい〜〜〜 これ 全部もってきたの? 」
玄関中にころがるサツマイモの山を前に フランソワーズは目をまん丸にした。
「 おか〜さん! サツマイモは < もってくる > じゃなくて
< ほる > だよ。」
すばるがつんつん・・・と彼女のエプロンを引っ張る。
「 あ? ああ そうね ・・・ あなた達 二人で これ・・・
全部掘ってきたの? 」
「 そ。 これ アタシの畑 と すばるの畑 で ほったの。 」
「 うん、 僕の畑から出てきたんだ〜〜 」
「 ことしは おいも、ほうさく なんだって 」
「 まあ まあ 凄いわね 〜〜〜 ふふふ 早速お料理しましょうか・・・
え〜〜〜と なにがいいかな〜〜〜 」
フランソワーズも 目の前の収穫の山に気をとられチビたちの発言をうっかり
聞き逃していた。
さて。 その次の日、珍しく早く帰宅したジョーの協力もあり
山ほどのサツマイモは パンやらお菓子にヘンシンし
島村さんち の 胃袋に収まった。
皆 美味しいサツマイモを堪能し楽しんだ。
「 すごいね〜〜 二人でこんなに掘ってきたんだ? 」
「 うん! あのね おとうさん〜〜 こうやって土をほってね〜〜 」
すぴかは お父さんの前で芋ほりの様子を熱演した。
「 そ〜〜 土をほって〜〜 ぞろぞろぞろ〜〜〜ってでてきたんだよ
「 へへへ すばるってば おいもにまけてしりもちぺったんこ〜〜 」
「 あ! ち ちがうもん〜〜〜 すべっただけ〜〜 」
「 あはは アタシ ちゃんと見てたも〜〜ん 先生も言ったじゃん
サツマイモに負けたねって 」
「 ・・・ う うん ・・・・ 」
「 そっか そっか そんなに一生懸命掘ったんだね〜 」
「 そ〜〜だよ おとうさん ! こんどさ〜 ウチのにわにもうえようよ
さつまいも 」
「 裏庭の温室で育ててみようか 」
「 ウン♪ わ〜〜い アタシ じぇろにもおじさん にたのんでみる〜〜 」
「 あら いいわね、お手紙書いたらいいわ。 」
「 うん! アタシ 書くからおかあさん、だしてね〜〜
」
「 はいはい 」
「 い〜〜っぱいのおいも(^^♪ お芋さん い〜〜〜っぱい♪ 」
すばるはご機嫌ちゃんでハナウタを歌っている。
「 うんうん ・・・ 美味しいお芋さんだったよね〜 」
「 ホント! とってもとっても美味しかったわ 」
皆 にこにこ ・・・ ほっこり気分 ― お芋さん気分 なのだ。
― そのまた翌日。 ( うれし・たのしい 土曜日♪ )
「 で ね? これ・・・どうしようかな〜〜〜って 」
「 う〜〜〜ん ・・・ 」
出来上がったたくさんのお菓子を前に 夫婦は首をひねっていた。
余ったサツマイモは ジョーの腕力により? 大量のマッシュとなり
美味しいおいしいお菓子にヘンシンしたのだ。
だが ― ハンパない量なのだ〜〜〜〜
「 コズミ先生とこにお届けして ・・・ 大人のお店に差し入れして・・・
ああ それでも余るわねえ 」
「 冷凍しておけば日持ちはするけど 全部はなあ 」
「 そうよねえ ・・・ あ ! そうだわ わたなべ君のお家にも
お届けしましょう 」
「 ああ それはいいね ! 」
「 ね〜〜 いろいろお世話になってるし ・・・ ちょっと電話して
届けてくるわ 」
「 あ 車 出そうか?
」
「 いい? 」
「 もちろん。 あ〜〜〜 皆でゆくかい? チビたち ・・・
ちょっと呼んでくるな 」
「 ええ お願い。 わたしは電話して ・・・ あら? 」
りりりり ・・・・・ 居間の固定電話が鳴った。
「 車 出せるよ〜〜 あ 電話中 ? ごめ・・・ 」
ジョーが リビングに戻ってきたとき、 彼の細君は真面目な顔で
電話の最中だった。
「 はい ・・・ はい。 それじゃ 今から ・・・ はい では ・・・ 」
カチャ。
「 ・・・ わたなべ君ち でも サツマイモの山 ですって 」
静かに受話器を置いて ― 島村さんちの奥さんはふか〜〜いため息を吐いた。
「 え?? ― あ ・・・ そっか〜〜 」
「 そう なのよ ね 」
はあ 〜〜〜〜 夫婦は二人で大きく頷きあった。
そうなのだ。 遠足から帰ってきたすぴかが言ったではないか。
今年はお芋さん 豊作なんだって
ってことは。 三年生がいるおウチには どこもお芋さんがごろごろごろん・・・
と山になってるってことなのだ。
「 じゃ ・・・ お裾分け は中止かい 」
「 あ ううん ・・・ 交換しましょ ってことになったの。 」
「 ああ それはいいね! 違う味もいいもんだよ 」
「 そうね ・・・ コドモたちは? 」
「 ちょっち お芋でりばり〜のドライブに行こうって言ったら 」
とたとたとた〜〜〜〜 だだだだ ・・・ !
「 おと〜〜さん! アタシ じゅんび おっけ〜〜〜 」
「 ぼ 僕も〜〜 おと〜〜さん おか〜さんも! 」
お気に入りのキャップを被ったすぴか と おでかけバッグをたすき掛けにした
すばる が 駆けてきた。
「 はいはい ちょっと待ってね お母さん このお菓子を包むから 」
「 ぼくも手伝うよ。 あ 二人は洗いもの やってくれるかな? 」
「「 は〜〜〜い 」」
島村さんち では 洗いモノは子供たちの仕事なのだ。
サツマイモ・パイ と サツマイモ・シフォンケーキ の包が出来上がった。
「 では しゅっぱ〜〜〜つ 」
すぴかの号令で 島村さんち のクルマは サツマイモのお菓子を積みこんで
坂道を下っていった。
「 え〜〜と ? わたなべ君ち まで行けばいいのかな〜 」
ジョーは カーナビをちらりとみている。
「 あ ・・・ お家には行かないの。 手前のね、公園で交換しましょ・・って。
ふふふ わたなべ君とこでもおイモごろごろ〜〜〜で たっくさんお料理やら
お菓子作って ・・・ 」
「 ははは それで余って ・・・ 交換会 か 」
「 そ。 他所のお家の味って新鮮でいいでしょ 」
「 うん! わたなべ君ちのね〜〜〜 たまごやき おいしいよぉ〜〜〜 」
「 あら やだ すぴか。 わたなべ君のお弁当 、食べたの? 」
「 交換したんだも〜〜ん。 」
「 へえ・・ それで どんな味だった? 」
「 あのね〜 たまごやきの中にぃ〜 シャケふれ〜く がはいってて〜〜
しょっぱくておいしかった♪ 」
「 あらら・・・ ウチのにはなんにも入ってないのに ・・・ 」
「 おか〜さんのたまごやき あますぎ! 」
「 僕 おか〜さんのたまごやき だいすき〜〜〜〜〜〜 」
「 ぼくも。 」
「 あ〜〜 おと〜さんも〜? 」
この家の男性陣は どうも甘党らしい。
「 あらら ・・・ ごめんね すぴか。 すぴかのたまごやきは
ちゃんと お醤油入り にするから ・・・ 」
「 うん! でもね〜〜〜 アタシ、 おか〜さんのお弁当 だいすき♪ 」
「 僕も 僕もぉ〜〜 ! 」
「 ぼくも。
」
この件に関しては 全員一致 となる。
「 うふふ・・ ありがと。 そうだわ〜〜 皆 遠足のお弁当はどうだった? 」
「 ちょ〜〜〜〜 おいし〜〜〜 ! アタシィ おしょうゆたまごやき 大好き! 」
「 僕! 僕もたまごやき〜〜〜〜 あまくておいし〜〜〜
」
「 そう? よかったわ。 二人ともぜ〜〜んぶ食べてくれたものね 」
「「 うん!!!
」」
「 ぼくもぜ〜〜んぶ食べたんだけどな〜〜 」
ジョーが口を挟む。
「 あら お父さんはいっつもぺろり、でしょ。 」
「 そ〜なんですけど。 遠足弁当、美味しかった!
なんかね ぼくも遠足に行ったみたいでさ。 たのしかった。 」
「 よかった。 いつもとちょっと違うと楽しいわよね。
作る方も楽しかったのよ 」
「 お母さんのお弁当は最高だよ。 な〜〜〜 すぴか すばる 」
「「 うん!! 」」
「 さあ 次の角を曲がればご指定の公園なんだけどなあ 」
ジョーは スピードを緩めた。
ジョーは 毎日お弁当持ちで出勤する。
時間が不規則になりがちで 外食だと食べ損ねてしまったり いつもコンビニ弁当では
「 栄養が心配! 」 ・・・と これはオクサンの弁。
まあ経済的な問題もあるので ― 彼は ず〜〜〜っと愛妻弁当 なのだ。
― ある夜 帰宅して空の弁当箱をシンクに置いてから 彼はためらいがちに
切りだした。
「 あの 弁当なんだけど 」
「 あ ・・・ ごめんなさい 冷凍チン は不味いわよね 」
その朝 たまには違ったオカズを・・・と、フランソワ―ズは
冷凍食品のエビフライとコロッケを入れたのだ。
「 ちがうんだ あの ・・ 晩御飯のオカズの残り とか入れてほしいんだ 」
「 え?? の 残り物がいいの 」
「 ウン。 なんかさ〜 こう・・ ウチの弁当〜〜って気がするから 」
「 わかったわ 」
「 煮物とかさ、残り物の方がオイシイんだぜ しってる? 」
「 え そうなの ? 」
「 そうさ。 冷えてもね 味がこう・・・ご飯にしみてさ・・・ご飯の色が
変わってたりすると〜〜 たまんないね。
そこに甘い卵焼きがあると もう なんかこう〜〜 じわ〜〜〜〜っと さ 」
「 ふうん ・・・ それじゃなるべく残り物、詰めるわね。 」
「 うん 頼む。 ぼくさ〜 毎日弁当開くのが楽しみで楽しみで 」
「 ランチで会議 とかないの? 」
「 あ は。 ランチくらいフリーにすべきさ。 これ ウチの編集部の方針。
だからみんな 好き好きに食べてるよ 」
「 それはいいことよね。 わたし ランチって・・・ ウチからもってゆくのは
パンにチーズやハムを挟んだものと あとは・・・リンゴにヨーグルト。
そんなもんだったわ 」
「 へえ ・・・ フランスじゃ 弁当には凝らないのか 」
「 そうねえ ・・・ お弁当にいろいろ凝るのは日本が一番かも・・・
キャラ弁 なんて 初めて見た時にはび〜っくり 」
「 ははは アレはまあ〜 トクベツかもしれないけどね 」
― そんなやりとりをしていたので 遠足弁当 が お気に召したかどうか
オクサンはちょっぴり心配していたのであるが ・・・まあ 杞憂のようだった。
「「「 おか〜さんのお弁当は 世界一 ! 」」」
これは 島村さんち の 全員一致の意見なのである。
「 え〜と ・・・ わたなべ君のおうちの方は・・・ 」
「 あ! あそこ! ブランコのとこにわたなべくん と お母さん 」
ジョーが公園を見回す前に すばるが声をあげた。
「 え どこどこ・・・ あ ほんとだ じゃ ここで止めるね 」
「 うん ドア あけて〜〜 」
「 ちょい待ち・・・ あ お母さんもだろ? 」
「 アタシもっ ! 」
「 はいはい みなさん どうぞ。 ぼくはここで待ってるからね 」
「 ごめんなさい、ジョー。 すぐに戻ってくるから 」
「 いいよ ゆっくり話しておいで。 なんなら この辺 一周してくるから 」
「 ・・・ あ〜〜〜 アタシ ・・・ お父さんと一周したいな〜〜 」
「 お すぴか 一緒にドライブするかい 」
「 する〜〜〜〜!! 」
すぴかは ぽ〜〜〜ん と助手席に戻った。
「 じゃ ちょっといってくるね 」
ジョーは ちょんちょん・・・と自分のアタマを突いてみせた。
≪ こっちで連絡 たのむ ≫
≪ わかったわ ≫
009 と 003 は ひそ・・・っと脳波通信を交わす。
「 あ〜〜 ええ 了解。 それじゃ あ〜〜 すばる 待ってよ〜〜 」
フランソワーズは ぱっと駆けだした息子をあたふた追いかけ始めた。
「 こんにちは〜〜〜 」
「 すばるく〜〜〜ん 」
「 だいちくん〜〜〜 」
ブランコの前で わたなべ君とお母さんがにこにこ・・・立っていた。
「 すみません〜〜〜 わざわざ 」
「 いいえ こちらこそ・・・ あら すぴかちゃんは? 」
「 ジョー いえ 主人とその辺 周ってます 」
「 あ いいな〜〜〜 僕も〜〜〜 すばる君ちのおじさんのクルマ〜〜〜 」
「 こらこら だいち。 すばる君と会いたかったのでしょ? 」
「 う うん ・・・ すばるくん! うちのお菓子〜〜 おいしいよっ 」
「 え〜〜 あまい? 」
「 あまい!!! 」
「 ・・・ってことで。 これ・・・ どうぞ。
あのおイモで作った茶巾絞り と スウィート ポテト 」
ぱか。 わたなべ君のお母さんはでっかいタッパーの蓋をあけた。
「 ・・・ まあ〜〜〜 ・・・・ すごい ・・・・ 」
ぎっちりならんでいる和菓子 と 洋菓子 に フランソワーズは歓声をあげた。
「 お上手ですのねえ・・・ これ ・・・和菓子でしょう? 」
「 一応は ね。 でもね すっごく簡単にできるの。 味見用ももってきたから
どうぞ? はい すばる君も 」
「「 いただきます 」」
母子は わくわくして頂いた。
「 〜〜〜〜〜〜 おいし〜〜〜〜〜〜〜〜 ! すっご〜〜〜 」
すばるがすぐに声をあげた。
「 あら すばる君 気に入ってくれた? 」
「 おいし〜〜 だいち君のおばちゃん、 これ ちょ〜〜〜〜うま! 」
「 わあ 嬉しいなあ〜 ありがとう、すばる君。
あ ・・・ フランソワーズさん お口に合わなかったかしら 」
すばる君のおか〜さん は 口に含んだまま じ〜〜〜〜っとしている。
「 え? いいえ いいえ! もう ・・・ あんまりおいしくて・・・
これ ・・・ これもサツマイモですか? 」
「 そうよぉ 和菓子風にみえるけど材料はスウィート・ポテトの中身と
たいして変わらないわ。 最後にオーブンにいれるか蒸し器にいれるかのちがい。 」
「 そうなんですか ・・・ ほっんとうになんて美味しいでしょう ・・・
形もほんとうに可愛いし・・・ 」
ほ ぅ ・・・・ フランソワーズは感歎の吐息をついた。
「 まあ 嬉しいわあ〜〜 」
「 目も舌もシアワセです、ありがとうございます。 」
「 いいえ いいえ〜〜 ねえ ねえ フランソワーズさんのお菓子〜〜
見せてください〜〜 」
「 あ ごめんなさい! ・・・ え〜〜 なんか恥ずかしいですけど ・・・ 」
フランソワーズは箱にそうっと入れてきた おいも・シフォンケーキ と
おいも・パイ を取りだした。
「 わぁ〜〜〜 すごい〜〜〜 これ お家で焼いたのですか? 」
わたなべ君のお母さんは 丸い目をますますまん丸にしている。
「 はい、でもホントに自己流で ・・・ 母に教わったまんまなので 」
「 きゃ〜〜 パリの味ね♪ 」
「 あ これ 味見用です。 だいち君も食べてね 」
「「 いただきま〜〜〜す 」」
わたなべ君とお母さんは 大ニコニコでフランソワーズのケーキとパイを
摘まんだ。
「「 お いしい〜〜〜〜〜!!! 」」
「 わ ・・・ 気に入ってくださいました? 」
「 ええ ええ すごく美味しい! このパイ生地・・・ご自分で? 」
「 はい、これも母から教わって・・・ 」
「 是非! 教えてくださいな。 パリの味だわあ〜〜 すごく美味しい♪
だいち、ケーキはどう? 」
「 むむむ〜〜〜〜 」
わたなべ君はお口が満員御礼のようだ。
「 どれどれ ・・・ 〜〜〜〜〜〜〜 しっとりシフォン・ケーキ!
ねえ ねえ これも教えてくださいな 」
「 え ・・・ 自己流ってか母の自己流ですけど 」
「 すてき!!! あ ここよ〜〜〜 」
突然 わたなべ夫人は ブランコの向こうへわさわさ手を振った。
「 ??? 」
「 さぁちゃ〜〜ん こっち こっち! 」
「 ! わたなべ君のおばちゃん 」
フランソワーズたちの前に 長い金髪の女の子が走ってきた。
「 ? あ ・・・ この前 すぴかと遊んでいた・・・ えっと
さぁちゃん? 」
「 そうなのよ〜〜 あら お母様もいらしたわ 」
女の子の後ろから よく似た女性がゆっくり歩いてきた。
「 まあ 綺麗な方ですねえ 」
「 ふふふ 実はね さぁちゃんのお家でも おいも作品 が余って・・・
困ってたんですって。 それで皆で 」
「 交換会 ですね? 」
「 そうなの〜〜 だからね、ほら 空の入れ物と包丁ももってきたのよ 」
「 まあステキ! あ こんにちは〜〜〜 」
フランソワーズは さぁちゃんのお母様とご挨拶をした。
さぁちゃんちの < おいも作品 > は ―
サツマイモのチップが入ったクッキー と 細い短冊に切った大学芋 だった。
「 あら〜〜〜 きれい! 」
わたなべ君のお母さんが歓声をあげた。
「 ほんと。 ミモザの花みたいですね〜 」
フランソワーズも黄色いチップ入りのクッキーに感心した。
「 うふふ どうぞ? あ こちらもどうぞ? 」
さぁちゃんのお母様はにこにこ・・・お皿に取り分けてくれた。
「 これね〜 お父様から教わったの すご〜〜〜くオイシイのよ〜〜 」
金髪のさぁちゃんもにこにこ皆に大学芋を差し出した。
「「「「 おいしい 〜〜〜〜〜〜 !!! 」」」」
皆の歓声が公園に響いた。
公園の入口で ジョーのクルマが待っていた。
003はちゃんと脳波通信を送ったのだ。
「 わ〜〜〜〜い ここだよぉ〜〜〜 」
窓から すぴかがぶんぶん手を振っている。
「 すぴか〜〜〜 ねえ ねえ これ! すぴか すきだよぉ〜〜 」
すばるが さぁちゃんちから頂いた包みを振り回す。
「 あらら そんなに振り回したらだめよ 」
「 すぴか〜〜 おと〜さん、 あのね みんな おいし〜〜 」
「 へえ? どんなの? 」
「 これ! すぴか すきだよっ 」
すばるは大学芋を差し出した。
「 へえ・・・ あ あまい? 」
「 ううん でもオイシイよ! 」
「 あ お母さん 食べてもいい? 」
「 いいわよ。 あ お父さんもどうぞ。 みんなすごく美味しいの。
ね〜〜〜 すばる? 」
「 うん! 」
「 ふうん? それじゃ 「「 いただきま〜す 」」
「「 おいし 〜〜〜〜〜 !! 」」
またまた歓声が沸き上がった。
「 これ! アタシ すき〜〜〜〜〜 だいすき!! 」
すぴかは スパイスと塩の効いた大学芋に夢中になっている。
「 ふん ふん ・・・ こりゃあ〜 ビールがほしくなるなあ〜
お。 こっちは茶巾絞りかあ〜〜 懐かしい〜〜〜 うん うん ・・・
うま〜〜〜〜〜 ふうん クッキーも ・・・ あ うま〜〜〜 」
「 でしょう? どれも皆美味しいわねえ 」
「 んんんん〜〜〜〜 あ でもね おか〜さん!
アタシ おか〜〜さんの おいもぱん がいちばん好き! 」
「 僕も〜〜〜 おか〜〜さんのおいもむしぱん(^^♪
」
「 ぼくも さ 」
「 うふふ ・・・ ありがと♪ さあ 帰りましょ 」
ジョーのクルマは 家族とたくさんのお芋作品を積んで坂道の上へと帰って行った。
― でも まだ。 島村さんち には お芋が余っていた。
「 どうしましょ ・・・ これ 冷凍にもでもしておこうかしら ・・・ 」
さすがにフランソワーズは困り顔だ。
「 う〜〜ん ・・・? 冷凍はなあ ・・・
あ。 そうだ そうだ。 いいこと、思い付いたよ。
・・・ちょいと 町内会の会長サンと消防団に聞いたほうがいいかもな うん。」
「 ?? 」
「 明日の午後。 日曜だしちょうどいいな、 皆で おいも大会 しようよ 」
「 ?? 」
「 きみはさ、芋を洗ってホイルに包んでおいてくれ 」
「 いいけど ・・・? 」
「 さあ ちょいと電話で聞いてみよう 」
「 ?
」
ジョーは上機嫌で居間の固定電話を取り上げた。
― さて 日曜の午後 ・・・ 海岸に近い空き地で。
「 ほら みんな もっておいで 」
山ほど集めた落ち葉の前で ジョーが集まった子供たちに声をかけた。
「 フラン 芋は? 」
「 うふふ ・・・ ちゃんと入れてあります 」
「 ありがとう。 それじゃ〜 ― 火 点けるよ 〜 」
ぽ ・・・ ぽ〜〜 焚火が華やかに燃え始めた。
「 ほう〜〜 やっぱり火はいいねえ 」
「 ホント。 焚火なんて久しぶりねえ〜〜 」
「 秋はやっぱりたきびだよ 」
町内のオトナ達も ニコニコしている。
「 あったかい〜〜 僕、 たきびのうた うたうね 」
すばるはお父さんの側で にこにこしている。
どんぐり ころころ〜〜〜 おいけにはまって〜〜〜
「 あれぇ・・・ たき火の歌は違うだろ? 」
「 ははは いいよ いいよ。 どんぐり と ドジョウが仲良く遊んでるって
のも楽しい。 」
町内会のおじいちゃんが笑っている。
「 え そうですねえ
」
「 そうだとも。 そうそう 御宅のご隠居さん、また碁を打ちに
おいでなさい、と伝えてください。 」
「 はい。 昨日、旅行から帰ってきましたから また寄らせていただきますね 」
「 待っとりますヨ 」
秋の日は つ〜〜んと晴れた空に 落ち葉とお芋のいい香り
どんぐり も どじょう も み〜〜んな仲良く ね。
******************************* Fin.
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Last updated : 10,24,2017.
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***************** ひと言 ****************
例によって な〜〜んにも起きません。
芋ほりって でもさ ものすごく楽しいですよね〜!(^^)!