『 遠い子守り歌 − (2) − 』
目の前にずらりと並べられたベビ−用のミルク缶に ピュンマは目を見張った。
仔細にみればそれぞれにデザインを凝らし なにか特徴を謳っているのだが
こうして一挙に眺めると みな同じように見える。
・・・ってことは。 どれもたいして変わりはないってことか。
まあ、赤ん坊の好みなんてみんな同じようなものなんだろうし。
なにか温かい気持ちが湧き上がり、ピュンマは思わず頬を緩めた。
「 すごいね。 ミルクのコレクションでもしているのかい? 」
「 ・・・ ピュンマ・・・? 」
「 ははは・・・ごめん、ごめん。 ちょっとあんまり壮観なんでね、ジョ−クだってば。 」
ジョ−がちら・・・と投げてきた視線に 珍しく少々トゲを感じてピュンマはあわてて謝った。
・・・やれやれ。 ジョ−のヤツ・・・ かなり参っているのかな?
「 イワンのお気に入りはどれだい? 」
「 ・・・コレ、だったはずなんだけど。 」
一番端の缶を ず・・っと押して ジョ−はさらに深くため息をついた。
「 ・・・だった? 」
「 うん。 ずっとね。 今までイワンはどの銘柄でも飲んだけど、特に
コレがお気に入りだったんだ。 <この味が 口に合うんだ>ってさ。 」
「 ・・・ 口に合う〜〜 ?? 」
赤ん坊に不似合いな言い回しにピュンマはまたまた噴出しそうになってしまった。
《 ・・・うっく・・・ふ・・ふぇ〜ん えぇ〜〜〜 》
ジョ−の腕の中のちいさな身体が またぐちゅぐちゅとぐずり始めた。
「 ・・・あ〜・・・ ほら、やっぱりお腹空いてるんだろ? いつもの半分も飲んでないんだもの。 」
ジョ−は片手に抱いていたイワンの背を ぽんぽんと叩き、顔をのぞきこむ。
「 ああ、ミルクだね? 僕がつくってくるよ、え〜と・・・この<お気に入り>でいいのかな? 」
ひょい、とミルク缶を取り上げ、ピュンマはジョ−に聞いた。
「 う〜ん・・・ じゃあ、ぼくが一応<お気に入り>をつくってくるからイワンを頼むよ。 」
「 一応? 」
「 ねえ? こういうミルクに味の違いってあるのかなぁ・・・。 」
「 さ、さあ〜?? <お気に入り>じゃ・・・ダメなのかい? 」
「 今まではね、O.K.だったってか、たまに<お気に入り>を切らしてしまっても
< ウン、いいよ。 たまには違った味も新鮮でいい。 > なぁんて言ってくれたんだけど・・・ 」
「 ・・・けど? 」
「 どれもこれも。 今日はちょっと飲んでは あ〜〜ん・・・・って。
ちゃんと必要量飲まないからイワンもお腹空くんだろ、余計に機嫌が悪いし。 」
「 そりゃ・・・ 腹が減ればなぁ。 」
「 ぼくらいい加減でくたくたになって、フランは徹夜して気疲れで熱を出す寸前だよ。
そこに きみが帰ってきたんだ。 」
「 ・・・なんか、タイミング悪かったみたいだね。 」
「 あ、そんな意味じゃないよ、ごめん。 さ、ちょっとミルク、つくってくるから・・・ 」
「 あ・・・ うん。 」
むじむじ動くイワンを差し出され、ピュンマはあわてて抱き取った。
《 ・・・やあ。 お帰り、ピュンマ 》
「 ・・・え? 」
やけに落ち着いた<声>が ぱ・・・っと心に響いた。
ピュンマは 思わず声をあげ、渡されたばかりのイワンの顔をしげしげとのぞきこむ。
「 今の、キミだよね? 」
声にだし、そしてまた心のなかで問いかける。 が・・・
赤ん坊は 相変わらずぐずぐず言うだけである。
「 ・・・なあ? 本当は ちゃんと目が覚めているんだろ? 」
ね?と覗き込んだ顔は ちょっと笑っている・・・ようにも見えた。
ふふふ・・・ピュンマも微かな笑みを唇にうかべ、腕のなかのほわほわの銀髪を撫でた。
「 さあ・・・ こんどこそちゃんと飲んでくれよな〜 頼むよ・・・ 」
ジョ−が 哺乳瓶をかかえてもどってきた。
「 ・・・あ、ジョ−。 う〜んと。 それは・・・バスケットにでも入れてくれるかな。
あと・・・ バスタオルと。 そうだ、イワン用のバスロ−ブ、ある? 」
「 え。 どうするの、ピュンマ 」
「 うん。 ちょっと・・ね。 このねぼすけ王子さまとちょっと散歩に行ってくるよ。
彼、ベビ−服にもゴネたんだろ? 」
夏用のベビ−服を どんどん脱がせ出したピュンマにジョ−は目を丸くしている。
「 ・・・よくわかったね〜。 そうなんだ、なにを着せても・・・ふぇ〜〜ん! でさ。
散歩って・・・ この時間、暑すぎない? その、赤ん坊には・・・ 」
「 大丈夫。 あ〜 フランソワ−ズの日傘かなんかある? 借りていいかな? 」
「 あ・・・うん。 玄関にあると思うけど。 」
「 さ・・・これでオッケ−。 」
「 ・・・ へえ? 」
オムツにタオル地で出来た甚平仕様のバスロ−ブだけを纏わせて
ピュンマは ひょい、とイワンを縦に抱き上げた。
「 なに? 」
「 え、あ・・・ ううん。 」
まじまじと見つめているジョ−に ピュンマは笑って振り返る。
「 なにか可笑しい? 」
「 ううん・・・ 可笑しいなんて。 いや、すごく手馴れてるなって思って。
・・・ほら、イワン、大人しいよ? 」
「 僕はなれてるもの。 妹がいたし、国では小さな子の面倒は
同じ村の連中がだれでも気軽に手を貸すんだ。 」
「 そっか・・・。 ぼくと似たり寄ったりだね。 」
「 ふふふ。 さ、 ジョ−? きみもフランと一緒に少し休んだほうがいいよ?
鏡をみたかい、眉間に縦ジワなんて きみに似合わないし・・・。 」
「 え・・・ ぼく、そんな 顔してる? 」
「 フランソワ−ズもさ。 あんなにイライラした彼女をみたことなんて
僕は もしかしたら初めてかもしれない。 」
真剣な顔つきで 自分の眉間をこすっているジョ−に ピュンマはますます
笑いがこみ上げてきてしまった。
「 なあ・・・ 君たちって。 ほんとうに・・・ 」
「 な・・・なんだよ。 ぼくたちは・・・べつにそんな・・・ 」
くく・・・っと笑うピュンマに ジョ−は真っ赤になってひとりうろたえる。
「 べつにって・・・そうかな? まあ、一休みしなよ。
さあ・・・ イワン、僕らはちょっと散歩に行こう。 いい風が吹いているよ。 」
「 あ、ピュンマ! ほら、ミルクとタオル。 ミネラル・ウオ−タ−のボトルも入ってるから・・・ 」
イワンを担いでさっさと玄関にむかうピュンマを ジョ−がバスケットを手にあわてて付いてきた。
「 さんきゅ。 ・・・さあ、これでよしっと。 」
「 気をつけて! 松林の方ならすこしは日陰があるよ・・・ 」
「 大丈夫だって・・・。 お〜い、ジョ−、君こそすこし昼寝でもしろよな。 」
ジョ−の心配顔をあとに、 ピュンマはイワンとバスケットとを持って
おまけにフランソワ−ズのひらひら縁飾り付き日傘をさして ゆうゆうと坂道を降りていった。
邸から海岸へ出る最後の曲がり角で ピュンマはちらっと振り向き苦笑した。
ジョ−が。
まだ ギルモア邸の玄関に立ってこちらを眺めている。
− 心配ないって・・・!
ピュンマは白い歯をみせ、ジョ−に大きく手を振ってみせた。
まったく。 生真面目なところまでそっくりだよ、あの二人は・・・。
のんびりしているようでいてその実、ジョ−は仲間のことに関してはとても気を使う。
フランソワ−ズに対して<特別>なのは、当然だったけれど
イワンや博士にたいしても 彼は気配りを忘れてはいない。
一見、几帳面だけれども時々大ブレイクかますフランソワ−ズを さり気なくフォロ−していた。
・・・ま。 似たもの同士で結構なことかな・・・
よいしょ・・っとイワンを抱きなおす。
日差しは強いが 吹き抜ける海風は爽やかでさすがのイワンも大人しくなっていた。
「 ・・・フランソワ−ズ・・・? はいっても・・いい? 」
こつこつ・・・と形ばかりのノックをして、ジョ−はドアを細くあけた。
「 ・・・ フラン ・・・? 」
窓際ではレ−スのカ−テンが海風に心地よく揺れている。
穏やかな寝息といつもの波の音だけが 昼下がりの明るい室内に満ちていた。
「 ( あ、寝てるんだ。 よかった・・・。 じゃあ、そうっと・・・ ) 」
トレイの上のカップを押さえ、ジョ−はそうっと足を踏み入れた。
半分だけはがしたベッドカバ−の上で フランソワ−ズは突っ伏していた。
カットソ−に羽織ったサマ−カ−ディガンもそのまま、彼女は枕に亜麻色の髪をちらばせている。
「 ( 勝手に入ってゴメン。 あ〜あ、フラン、きみ相当疲れてたんだね。
ほら。・・・ここに、カフェ・オ・レ、置くから。 目が覚めたら・・・飲んで?
冷めても、美味しいと思うんだ・・・) 」
- かちん・・・
ソ−サ−の上でスプ−ンとカップが小さな音をたてた。
「 ・・・・ う ・・・ん? 」
「 あ・・・ ごめん! 」
「 ・・・ ? ・・・ あ・・・ ジョ− ・・・ 」
かさり、と亜麻色の頭が枕の上で動いた。
「 ごめ・・・ 起こしちゃったね。 」
「 ううん・・・ なにかいい匂いで目がさめたの・・・ああ、 コレね! 」
フランソワ−ズは身を起こし ナイト・テ-ブルの上のカップに手を伸ばした。
「 ジョ−、あなたが? 」
「 あ、うん・・・。 きみが目が覚めたら飲めるかなって思ったんだけど。 」
「 わあ、ありがとう! ・・・ああ、いい香り。 コ−ヒ−、新しい袋を開けたの? 」
「 ピュンマのお土産さ。 本場の香りだろ? 」
「 ええ。 ・・・ ああ、 美味しいわ! 」
「 よかった・・・。 さあ、それを飲んでもう少し休みなよ。 」
「 でも、イワンは? ・・・声、聞こえないわね。 」
フランソワ−ズはカップを手にしたまま 怪訝な面持ちで耳を澄ます。
「 大丈夫。 いま、ピュンマと散歩中なんだ。 」
「 あら。 」
「 僕もさ、そのう、ここの椅子で昼寝してもいい? 」
空になったカップを受け取り、ジョ−はなんだかすこしそっぽを向いて言った。
「 ええ、もちろん。 ・・・あ、でもちゃんと横になった方が楽じゃない? 」
「 ・・・ この部屋に、 ここにいちゃ、だめ? 」
「 ・・・ ううん ・・・。 ジョ−・・・ ここに、いて。 」
フランソワ−ズはそっとジョ−の腕に指を絡めた。
ジョ−の手が フランソワ−ズの肩を引き寄せる。
「 お休み、のキス・・・? 」
「 ・・・うん。 お早うのキスも・・・ 」
「 それは・・・ お目覚のお楽しみ、でしょ。 」
「 前払いってことで。 」
「 ・・・まぁ・・・ ぁ ・・・ 」
ふわり・・・と午後の海風がレ−スのカ−テンの裳裾を大きくひるがえした。
さくさくさく・・・・
白い砂浜に軽い足音が響く。
人気のない午後の海辺では 太陽と海風が華やかにデュエットを奏でている。
ピュンマは イワンを抱いてバスケットをさげ白い日傘まで差して、
それでも悠々と歩を進めていた。
「 ・・・なあ? 起きているんだろ。 」
《 ・・・・・ 》
腕の中の赤ん坊は 相変わらずだんまりである。
「 なにが そんなに気に入らないのかい? イワンらしくないなあ。 」
《 ・・・・・ べつに。 》
ぽつ・・・っと一言、ピュンマの脳裏に言葉が返ってきた。
「 べつにってカンジじゃないよね。 ジョ−もフランソワ−ズもくたくただよ。 」
もぞもぞっと動きだした小さなオシリを ピュンマは軽くぽんぽんと叩いた。
「 二人とも・・・あんなに君のこと、気にかけて・・・大事にしてくれてるのに。
なにが不満なのかな。 」
《 ・・・・ だって ・・・ 》
ぷくっとイワンの丸い頬がいっそう膨らんだ・・・ように見える。
「 ・・・うん? ふふふ・・・さすがの君も自分の感情を説明できないかい。
教えてやるよ、ソレはね。 単なる 焼きもち さ。 」
《 ・・・・・・・ 》
腕の中の体が一瞬硬直し、つぎにぐん!と手足を突っ張り反り返ろうとしたとき、
一瞬はやく、ピュンマの手がきゅ・・・っとその体をだきしめた。
ぷっくり膨らんだ頬に顔を近づけ つぶやきに近い声で話しかける。
「 いいんだって。 焼きもちやいても。 だって君はまだ赤ん坊なんだもの。 」
《 ・・・ ピュンマ・・・? 》
「 いつもいつも物分りがいい振りをしなくても、いいさ。
でも・・・ま、この辺で機嫌を直してごらんよ? あの二人が気の毒だし。」
《 ・・・・・ うん ・・・ 》
消え入りそうな ちっちゃな返事がこそっと返ってきた。
「 ふふふ・・・ それでこそ、僕らの寝ぼすけ王子サマさ。 」
《 ・・・・・ アリガト ・・・ ピュンマ。 》
「 ああ・・・ いい気持ちだね〜〜。 海は ・・・ ほんとうに・・・いい。 」
波打ち際から少し離れ 乾いた砂の上にピュンマは腰を下ろした。
足元にはときたま波のしぶきが飛んでくる。
バスケットを置き、日傘で上手にイワンの上に影をつくる。
ふう・・・
ひとつ、深呼吸をすると。
ピュンマは海に向かって歌いだした。
彼はちょっと低めの 伸びやかなたっぷりとした声をもっていた。
特に訓練されたわけではないが 張りのある歌声がやさしいメロデイ−を
つぎつぎに紡ぎだす。
寄せる波が 吹きぬける風が 彼の歌を惹きたてる。
《 ・・・ なんの歌? きみの故郷の歌だね。 》
「 ・・・うん? これはね。 いままで僕が歌ったのはみんな 子守り歌、さ。 」
《 子守り歌・・・ 》
「 そう。 僕の母さんが、おばあちゃんが。 そのまた母さんが。 ず〜っとず〜っと
歌い続け語り継いできた歌なんだ。 」
《 伝承の芸術だね。》
「 あは、そんなご大層なモノじゃなくて。
こう、さ。 聞いていて・・・なんとなく懐かしい気持ちになるだろ? 」
《 ・・・ 懐かしい って よく認識できないんだ。 》
「 ・・・ う〜〜ん ・・・ 」
ピュンマは首を捻ってしまった。
・・・ 無理もない、よなあ。
赤ん坊に <懐かしい> という感情が理解できるわけはない。
振り返り・思い出す記憶の蓄積がなければ そこに郷愁の念など存在しないのだ。
「 ・・・そうだな・・・、たとえば。 さっきの歌を聞いて気持ちイイって思ったろ? 」
《 うん。 なんかお腹のソコから・・・ふわっとしてきてぽ〜っとあたたかくなったよ。 》
「 それがね、懐かしいっていうキモチなのさ。 わかるだろ? 」
《 ふうん。 ・・・・ ねえ、君も歌ってもらったの? 君の・・・お母さんに。 その子守り歌・・ 》
「 ああ、もちろん。 母は僕にも妹にも、沢山の歌をうたってくれたよ。 」
《 ・・・ 羨ましいな。 ぼくは、ぼくの母はそんなコトしてくれなかった。 》
「 こら? 」
ピュンマは肩にもたれていたイワンの髪を くしゃり、と撫でた。
「 歌ってたさ。 」
《 そんな記憶は ないよ。 》
「 いいや。 君のお母さんは君のために・・・いっぱい歌ってくれたよ。
君の故郷の歌を たくさん、たくさん、ね。 」
《 ・・・ どうしてそんなコト、君にわかるのさ? 》
「 イワン、君だけじゃないよ? ジョ−だってフランソワ−ズだって。
みんなお母さんの歌をたくさん・たくさん聞いて・・・大きくなったんだよ。 」
《 ・・・だって、ジョ−は ・・・ 》
「 ジョ−も、さ。 短い間でもいっぱい歌ってもらってるよ。 」
《 それは何の根拠もないじゃないか、ピュンマ? 》
「 あるよ。 」
ピュンマは すぅっと大きく息を吸うと イワンを高く夏の空へと持ち上げた。
「 だってね。 だれでも。 誰も彼もみんな。 お母さんの大切なコドモなんだもの。 」
《 ・・・・・・ 》
きゅ・・・っとピュンマの指を握っていたちいさな手からだんだんと力がぬけてゆく。
ピュンマが小さな身体をぴったりとその肩に抱き戻したときには
くうくうとかわいらしい寝息が漏れ始めていた。
「 ・・・ 寝ちゃったのかい? 」
よいしょ、とピュンマは熱い砂地から立ち上がった。
午後の海は とろり、と凪いでその表面を青く染まりそうに風が撫でてゆく。
− 今は・・・ この波の音が僕の子守り歌、かもしれないな。
こんどは尚一層低く。 ピュンマはやさしいメロデイ−を口ずさみ歩き始めた。
「 ・・・ ただいま ・・・ 」
そうっと玄関に入ると、思いがけなく応えがあった。
「 お帰りなさい。 ご苦労様、ピュンマ 」
フランソワ−ズが 満面の笑みで彼を待っていた。
「 ねえ? わたしにも・・・ 歌って? 」
「 ・・・ 聞いてたの。 」
「 ふふふ・・・ 聞こえちゃったのよ? 波と風が教えてくれたの。 」
「 そうかぁ。 ・・・でも、ソレは。 ジョ−の役目だろ? 」
「 ・・・あら。 」
ぱっと頬を染めたフランソワ−ズの笑顔は いつもの輝きを取り戻していた。
ピュンマはちょっとの間、その微笑に見とれていた自分に 苦笑した。
「 イワン・・・。 今度から、ただきゅっと抱きしめて。 わたしも歌ってあげるわ。 」
「 うん、そうだね。 ・・・あは。 でもきっとジョ−が焼きもちを焼くよ? 」
「 ・・・もう! ピュンマったら〜 」
二人は声を潜めて笑いあった。
「 さあ・・・ 僕もイワンも汗かいちゃったから。 一緒にシャワ−をあびてくるね。 」
「 まあ、ありがとう。 ・・・あら? ぐっすり寝ちゃってる・・・ 」
フランソワ−ズは ピュンマの腕の中のイワンにそっと口付けをした。
「 ・・・ お休みなさい。 今度こそ・・・ いい夢を 」
「 あれ。 こちらも <お休みなさい>かあ・・・ 」
さっぱりシャワ−を使い、イワンを寝かせて。
ピュンマは もう一回<ピュンマ・スペシャルコ−ヒ−>を淹れた。
お茶をどう?と そっとフランソワ−ズの部屋をノックしたのだが。
もともと細めに開いていたドアは 音もなく内側に広がってしまった。
ピュンマの目に映ったのは
ベッドに寄りかかり 床に足を投げ出して。
しっかり寝息をたてて・・・寄り添う二人。
栗色と亜麻色の頭が くっ付いて時にゆらゆら揺れている。
さあ。 お休み・・・
僕も ちょっと昼寝をしようかな。
ピュンマは うん・・・っと大きく伸びをした。
ふわり・・・とカ−テンがゆれ 風が波音をつれてきた。
ねえ? イワン。 ほら ・・・ 。
誰のこころの底にも 響いてるよね
耳を澄ませば 聴こえてくるよ
− 遠い 子守り歌
***** Fin. *****
Last updated:
07,26,2005. back / index
*** ひと言 ***
<1に単純に翻弄される389> ・・・ 難しい めぼうき様のリクエストでした〜(^_^;)
なんだか訳知りの 8 になってしまってごめんなさい。
8って ちょっと3やら9やらよりお兄さんっぽいかな〜と思いまして。
平ゼロと原作がごたくたになったようなイメ−ジになってしまいました。(大汗)