『 奇々怪々 ― (1) ― 』
キキ ッ ・・・・!
ベンツのタクシーはほんの僅かな衝撃を伝えただけできっちりと 門の前でとまった。
「 ・・・ 旦那。 着きましたぜ 」
「 ダンケ。 」
アルベルトはひと言だけ答えると数枚の紙幣を運転手に押し付けた。
「 こりゃ・・・ 多すぎだ。 今 釣りを・・・ 」
「 いらん。 こんな辺鄙なトコまで運んでもらったんだ。 とっといてくれ。 」
「 いやあ〜 すまんですね〜 旦那? どうかお気をつけて・・・ 神のご加護を! 」
「 あ ? 」
降りかけていたが 彼はもう一度運転手の方を振り向いた。
およそ信仰には無縁、と思われるオトコの口から意外な言葉を聞いたのだ。
「 なぜかね。 」
「 ・・・ ここはね < 出る > って評判なんだ。 」
「 出る? は!? 幽霊の類か? おいおい・・・本気かい。 」
「 本気ですぜ。 ここは ・・・ この城はもともと呪われた城 だったから ・・・ 」
「 呪われた城? ここが? 」
「 そうなんだ。 ほら・・・北の方になんとかっつ〜狂っちまった皇帝が建てた城が
あるって〜いうじゃないスか。 」
「 ありゃ 建ててから狂ったのさ。 」
「 へええ〜〜〜?? ま 似たようなモンですさね。
ココはね ・・・ 風光明媚な場所に建った立派な城だけど ― 城主の一族は
・・・ 全滅するんでさ。 それも ・・・ 飛び降りたり堀にはまったり城壁の柵に刺さったり
みんな惨たらしい最後を遂げてるんですと。 」
「 ほう ・・・? 」
「 で 皆 嫌がって さ。 そんな訳で空家になってる期間の方がずっと長いんでさ。
今はね〜普段は観光用に 客に内部を見学させているらしいよ。 」
「 ふん ・・・? 」
「 お・・っと〜〜 喋り過ぎちまった。 ほんじゃ 旦那 ・・・ ども。 」
「 あ ああ ・・・ 」
去ってゆくベンツに アルベルトはちょいと手を上げて合図を送った。
そして ― 振り向けば。 ぬう ・・・っと巨漢、いや 古城が聳えたつ。
真昼間、うらうらとした春の日差しの中で どっしりとした城は ロマンチックにさえ見える。
「 ふん ・・・ 確かに。 気候の穏やかな地域だし ・・・ 城自体もかなりきちんと
修繕されているな。 見かけは古城でも内部は現代的な邸 ・・・ か。 」
じっと目を凝らし 城の周辺を探ってみたが ― 奥深い森を背後に抱え その地までは
なだらかな丘陵地帯が続きひろびろとした庭園が広がっている。
「 ・・・ これのど〜こが幽霊邸 なんだ? は〜〜ん ・・・? ソレもこの城を印象付けるための
フィクション ・ ネタ ・・・ か? 」
アルベルトは小型のトランクを持ち直すと 跳ね橋をわたって問題の古城に
脚を踏み入れていった。
− そもそもの発端は
1週間前の嵐の夜 だった。 この季節としては珍しいことではないが それでも
かなり激しい風雨がその街一帯を夜になる前から襲ってきた。
人々は 早目に帰宅ししっかりと戸締りをして 家 ( ホーム ) に閉じ篭っていた。
気侭な一人暮らしを続けているアルベルトも例外ではなく その日は早々に直帰する予定だった。
長距離トラックの運転手を務めているので 日頃から帰宅時間は不規則である。
しかし その日は南ドイツまでの仕事の<帰り> だけで 気楽に車を転がしていたので あるが。
目的地で荷主に荷物を届け 確認をすませた頃、 空模様が怪しくなった。
下り坂の天気はわかっていたので すこしスピードを増し帰宅を急いだ。
でも まあ・・・ 夕方までには着けるだろう。
雨の降り出しは 夜間 って予報屋が言ってたからな ・・・
早目に帰るにこしたことはない か。
アルベルトはカー・ラジオの音を絞ると 運転に集中した。
しばらくは順調に進んだが ― そろそろ日没、という時刻に 前方で赤色灯が揺れているのに
気がついた。
「 ・・・ ち。 なんだよ〜〜〜 事故ったのはどこのバカヤロウだ〜〜 」
悪態をつきつつ ブレーキを踏んだ。
「 事故処理中です〜〜 片側一車線通行で願います。 」
しっかり雨対策をした警官が拡声器でがなっている。
「 片側一車線 だと〜〜 マジかよ・・・ 」
順番待ち にた〜〜っぷり時間をとられ、 彼が渋滞を抜け出したときにはすでに太陽は
厚い雲の後に隠れ そろそろ夜の雰囲気が濃厚になってきていた。
「 拙いな。 急ごう・・・ 」
前後に車影は少なく、大型用のレーンにでるとぐっとアクセルを踏んだ。
ヴィ −−−−− ・・・・・ ヘッドライトに照らされた道をひたすら走る。
「 ふう ・・・ この分なら雨より先に帰りつく か・・・ 」
気がつけば隣を走る乗用車もなく、彼のトラックだけが暗くなってきた大気の中、進んでゆく。
ガクン ! どん、となにか衝撃を感じた。
「 ?! な なんだ? なにか ・・・ 小動物でも引っ掛けたか??? 」
慌てて停車すると 運転席から飛び降りた。
「 ・・・ なにも ・・・ぶつかってはいないぞ? ・・・ ア! これか!
チクショ〜〜〜 パンクしてやがる〜〜〜 」
道路工事のなにか工具の一部らしきものが落ちていて、 それに乗り上げ ― 前輪の一つに
空気漏れ だ。
「 クソ〜〜〜 これじゃ ベルリンまではキツいな。 ここいらに ・・・ 」
アルベルトはすう・・・っと目を凝らし 周囲を見回した。
フランソワーズほどではないが 彼もサイボーグ、闇夜でも数キロ先まで見える < 超視力 >
を備えていた。
「 ! ガソリンスタンド・・・ は あるわけねェか ・・・ ち。 日本ならすぐに業者を
呼べるが ・・・ ココじゃなあ〜 」
電話一本で迅速丁寧 ・・・な専門家が駆けつける ― はずもなく。
「 ・・・ ちぇ。 自分でやれってか〜〜〜 」
ぼすん! タイヤをヒト蹴りし、ジャンパーを脱ぐと車に工具を取りに行く。
「 ふ ・・・ こんなトコで役立つとはなあ 〜 ま 役にたつなら何だって使うべし、さ。 」
彼は工具を手に 左手の皮手袋を外すとトラックの下に潜った。
ヴィ −−−−−−−−− ・・・・・!
とっぷりと暮れた中、そしてばしゃばしゃおちてくる雨の下、アルベルトはむっつり不機嫌の骨頂
で トラックを転がしてゆく。
想定外の渋滞やら とんでもないパンクで時間を喰ってしまい、市内に入った時にはもう
しっかり夜の時間だった。
当然 ・・・というか、予報されていた風雨は激しくなっていて時々視界も遮られた。
「 ・・・ っクソ ! なんだってパンクなんかしたんだ? タイヤの点検は
出発前にきっちり済ませているぞ? 」
タイヤは 金属製の破片を巻き込んで破損していたのだが ―
「 しかし アレはナンだ? どこかの車が落として行ったか・・・事故車の破片か?
いや ・・・ 整備がちゃんと入っているはず ・・・ 」
解せぬ・・・と首をかしげつつも なんとか自宅のある区域にさしかかった。
キキキキ ・・・! 雨音を劈いて ブレーキの音が高く響いた。
古びたアパートの前に一台のトラックが止まった。
「 ・・・ ふう ・・・ やっと帰宅 か ・・・ あ〜〜 さすがに参ったゼ 」
トラックの運転台から銀髪のオトコが降りてきて 首を竦めジャンパーの襟をたてつつ
降りしきる雨の中 走り出した。
「 ひゃ ・・・ う〜〜〜 こんなに大雨が降るなんてなあ ・・・ 聞いてねェぞ〜〜 」
空にむかって 地を向いて さんざん悪態をつきつつ彼はなんとかアパートの入り口まで
辿りついた。
「 ・・・ ふ〜〜〜〜 ・・・ あ ああ なんて日なんだ ふん 生きてる ・・・か。 」
ポストを開け がさり、郵便物を取り出した時 ― 彼の < 耳 > が かすかな音を
捉えた。 一瞬身構えると ―
「 !? だれだっ!? こんな時間に ・・・ 」
彼は暗闇に向かってするどく誰何した。
ごとん。 今度は大きな音がしてのそり、と人影が現れた。
「 誰だ! ・・・ 俺になにか用か!? 」
「 ・・・ あ いや ・・・ 勝手に入ってきて ・・・ すまん! なにせこの雨でのう・・・ 」
聞き馴染んだ声がして 薄暗い電燈の下、これまた見慣れた姿が立っている。
ぐっしょり濡れた革靴のしたには 水溜りができていた。
「 !? は 博士〜〜〜 !? な なんだってまた ・・・ 」
「 ああ。 いやいや・・・遅くまで仕事、ご苦労さん。 この雨で難儀したじゃろうに・・・ 」
「 いや そんなには ・・・ それより博士こそ! さあさあ どうか中に入ってください〜
その濡れたままでは風邪を引きます。 」
「 あ ・・・そ そうか。 あ ・・・ 入っていいのかな? 」
「 勿論ですよ、 どうぞお入りください。 ああ 今 タオルを持ってきますよ。 」
「 ・・・ ああ すまんなあ・・・ 」
アルベルトは自室の鍵を明け 博士を招じ入れた。
「 なんにももてなせませんが ・・・ 外の雨や寒さよりはちょっとばかり安心でしょう。 」
「 いやいや ・・・助かったよ・・・ ふぁ ふぁ ふぁっくしょ 〜〜〜〜っ! 」
「 ともかく手を洗ってきてください。 はい タオル。 なにか温かい飲み物を作りますよ。
あ コーヒーでいいですかね? オレは紅茶とか飲まないので ・・ 」
「 すまん のう ・・・ 」
「 ヒーターがボロでね・・・すぐには温度があがらんですが ・・・
あ バス・ルームはそっちのドアです。 少し時間がかかりますが 湯はでます。 」
「 ああ ・・・ありがとうよ ・・・ 」
博士は 濡れた髪をガシガシ拭きつつバス・ルームに消えた。
「 ・・・まずはコーヒー ・・・ か。 え〜と・・・ あ 酒は 〜〜〜 ビールと
あとはウィスキーがある か。 おっとヒーターをいれて・・・と。 」
アルベルトは忙しく家の中をうろうろし始めた。
ふうう ・・・・ コーヒーと葉巻の香りに博士の溜息が混じり、部屋中にひろがってゆく。
「 ・・・あ〜〜 こんなモンしかなくて ・・・ 」
カチャン。 アルベルトがチーズとサラミを切りクラッカーに乗せてもってきた。
「 いやいや こっちこそすまん〜〜 いきなり訪ねてきて ・・・ 」
「 いや別に構わんですが ・・・ ご覧の通り 野郎の気侭な一人暮らしですから 」
「 いやいや ・・・ 君がいてくれて本当に助かったぞ。 」
「 もっと早い時間に帰れる予定だったんですがね。 渋滞とパンクってダブル・パンチに見舞われましてね。
もう 踏んだり蹴ったり ですよ。 その上 この雨だし・・・
で ・・・ 博士。 こっちは一人でいらしたのですか? 」
「 うむ ・・・ 急用でのう・・・ それにとても他人には頼めんし ・・・ 」
「 どうしたというのですか。 ジョーかグレートが着いてこなかったのですかね。 」
「 あ・・・ うむ ・・・ これは極秘の旅なのじゃ。 」
「 ?! またぞろヤツらが 」
「 いやいや そうではないのじゃ。 今回はことは完全にワシのミスでのう・・・ 」
ギルモア博士は 面目なさそうに俯いた。
「 ミス? 」
「 そうなのじゃ。 」
博士はゆっくりとコーヒーのカップをテーブルに戻した。
「 そもそも ・・・ この話にのったワシが軽率じゃったのだが ・・・
ある研究者のたっての頼みで ・・・ 君と同じ性能を備えたロボットを製作してな。 」
「 ・・・ロボット ・・・ ですか! 」
「 すまん すまん ・・・ その実証実験中に落雷があって ・・・ そのロボットに
落雷してのう ・・・ 」
「 へえ ・・・・ そりゃまた・・・残念 ・・・ 全壊ですか。 」
「 ところが じゃ。 破壊されるどころかこちらのコントロールを一切受け付けなくなっての。
いっそ壊れてしまったほうが始末がよいのじゃが ・・・ 」
「 な んですって!? 制御不能 ? 」
「 うむ。 遠隔操作は勿論、 接近するとだれかれ構わず 攻撃じゃ。 」
「 落雷後も とにかく起動はするってことですか。 」
「 ああ。 全壊しなかったのも不思議じゃが なぜ起動するか、そして攻撃してくるか・・・
そんなプログラムはインプットしておらんのだ、 全くワケが解らん。 」
博士は憮然としている。 純粋に科学者として 不可解な現象 に怒っているのだろう。
「 ― あ〜〜 ともかくこのままでは 一般に被害が広がる可能性があるのでな。
一刻も早く 撤収したいのじゃ。 ・・・ それで ・・・ その ・・・ 」
「 その 始末 を俺が・・・ってことですね。 」
「 ・・・ すまん。 ヤツと闘えるのは 君しかおらんのじゃよ・・・ 」
「 ソレは今 どこにいるのですか。 」
「 うむ ・・・ 実証実験は ベルリン郊外の実験施設で行っておったのじゃが ・・・
落雷後、 20キロあまりはなれた古城に立てこもっておっての。 」
「 周囲の人々に危害を加えているのですか。 」
「 いや。 幸い、今のところはなにも ・・・ だからこそ 今のうちにきちんと ・・・ その ・・・ 」
「 証拠隠滅ってことですね。 」
「 ・・・ アルベルト ・・・ 」
「 あは すいません、ちょっと言いすぎですね。 撤回します。 ともかく詳しい場所を教えてください。 」
「 ああ 勿論じゃ。 え〜〜・・・・っと ・・・・? 」
博士はごそごそポケットを探ったり 持っていたブリーフ・ケースを開けたりしている。
「 ・・・ みつかりませんか。 城の地名を教えてくれたら だいたいの見当はつきますが・・・
ま 一応 ココは俺の母国なんでね・・・・ 」
「 いや ・・・確かきちんと地図ももってきたはず・・・なのだが・・・ 」
「 ふん・・・? しかしいつからドイツに来てたのですか? ちっとも知りませんでしたよ。
ひと言教えてくだされば 運転手くらい引き受けますが。 」
「 あ ・・・ いやいや ・・・君の仕事のジャマはできんよ ・・・ それにしても・・・ 」
なんとなくケースの中に視線を向ければ 書類だのCD−ROMだのUSBだのの記憶媒体やら
果ては着替えか?と思われる衣類の端も見えた。
・・・ 相変わらずだなあ ・・・ と アルベルトは口の端をねじあげて笑う。
「 ・・・ ! おお あった あった〜〜コレじゃ! 」
歓声をあげ、博士は小さな手擦れのした冊子を取り出した。
「 あの ・・・ 009たちは 他のメンバーはどうしているんです? 」
「 ああ もちろん連絡はいれた。 全員こちらに向かっている最中じゃろう。 」
「 あ そりゃ また ・・・ 」
ご苦労さんなことだ ・・・ と 銀髪の独逸人は口の中で呟いた。
「 え〜〜〜っと ・・・ どこに書いたか ・・・おお! これじゃ〜 え〜・・・ 場所は ・・・・ 」
「 ・・・ ふむ・・・? 」
博士の声に アルベルトはじっと耳を傾けていた。
夜明けをまって アルベルトは出発することにした。
昨夜来の雨は未明にはどうやら峠を越し、雲間から少しだが日の出みることもできた。
万が一を考え防護服を着込み、上には地味なトレンチ ・ コートと帽子でカモフラージュをする。
「 ― それじゃ。 」
「 おお 頼んだぞ! アルベルト ・・・ 」
「 ・・・・・・ 」
低く肯定の意を告げ頷くと 004はまだ薄暗い大気の中、出発していった。
― そして。 始発列車とタクシーを乗り継ぎ辿り着いたのが ココ なのである。
「 ・・・ ふん。 随分とちがうイメージじゃねえか。 」
彼はもう一度 ちらり、とメモを確かめた。 ― 合っている。 確かに ココ だ。
目的の古城は朽ちかけていて無人・・・ と聞かされて来たが 実際は観光客用に改築され
明るい日の光の下ではどちらかと言えば女性好み・・・ ロマンチックにさえみえる。
ふん。 気に入らねェな ・・・
そもそも風雨吹き荒れ雷も響く空に聳える古城 ・・・ とイメージしてきたのだが。
・・・ こりゃ ・・・ テーマ・パークのナントカの城 とたいして替わりねぇぜ
立ち尽くしていても なにも始まらない。
アルベルトは腹を括り 城門に回った。 城のぐるりには堀がめぐらされているが
白鳥がのんびりと羽を休めていたり ぱしゃり、と魚影も見えたり ・・・ 多分に牧歌的 であった。
「 ・・・ と ・・・ 案内所 とかは ・・・? ああ ここか。 すいません? 」
跳ね橋を通りどっしりとした石垣の中の城をめざす。
重厚な石造りのアーチの下に いかにも安っぽいプレハブの小屋がみえた。
「 あ〜〜 中を見学したいのですが ・・・ 」
アルベルトは声をかけ 窓ガラスを叩いた。
「 ・・・ はい? あ〜〜 今日は貸切なんで〜 どうもすいませんね。 」
やっと顔を出した老人は あからさまに迷惑顔だ。
「 貸切?? そもそも・・・ここは無人の古城、と聞いてますが? 」
「 あ〜 ちょっと前までは な。 今じゃ < 観光資源 > なんだと。
な〜んかアメリカの気紛れな大金持ちが買い取ったんだと。 それで突如
大規模補修が入ってさ。 がらり、雰囲気が変わっちまった・・・
俺なんざ 以前のおどろおどろしい風のが 好きだがな〜 」
「 ほう・・・ 以前はもっとその・・・時代がかった雰囲気だったのですかね。 」
「 ああ。 ガキのころから近所に住んでるが ・・・ ここはず〜〜〜っと荒城で な ・・・
まあ 浮浪者やら犯罪者の巣窟になりかけたこともあったな〜〜 」
「 ほう ・・・ 」
「 んでもって ま 治安も悪いってんでお上が乗り出してよ〜 立ち入り禁止にしてた。
そこに大改築 さ。 そんでもって ・・・ 古城のろまん とかいうキャッチ・フレーズさ。 」
「 ふうん ・・・ 今は宿泊とかもできるんで? 」
「 あ〜 外側は以前からの古城だが 中はもう ・・・ 普通のホテルさ。
まあな そうしなければとても現代 ( いま ) のヒトは寄り付かんだろ。 」
「 そうですか。 それで ・・・ ああ 今日は貸切 ですか。 残念ですなあ〜 」
「 ナンかわからんが。 どっかの科学研究所 とかの学会 なんだと。
しっかし学者サンたちがこ〜〜んなとこに集まって楽しいのかねえ・・・ 」
「 ・・・学者? そんな風貌の客が多いのですかい。 」
「 あ? ・・・ うんにゃ・・・なんかいろんなヒトが、集まっているよ。
若いのも中年もいたなあ・・・ そうそう 目も醒めるみたいな金髪美女もいたよ。
しかしありゃあ・・・ フランス女 だな。 黒人もいたぜ。 年齢はさまざま・・・さ。 」
「 私はここに来るよう ・・・ 招待状を貰ったのですが。 やはり宿泊は無理ですか。 」
「 へ??? な〜〜んだよ〜〜 それを早く言ってっくんな〜
で ・・・ お客さん お名前さんは? 」
アルベルトのかけたカマに 老人は単純に引っ掛かり疑うこともしない。
「 ああ ・・・・・ 」
彼は ごく自然に本名を述べた。
「 ・・・ あ 〜〜え〜〜 ・・・ あ! コレか! ほい どうぞ〜〜 < 古城のろまん > を
お楽しみください。 」
管理人らしき老人は慌てて宿帳風な書類を繰って確認をし、 取って付けたみたいに紋切り型のセリフを吐いた。
「 ははは ・・・ じいさん、あとでココの昔話でも聞かせてくれよ。
寝酒でも持ってくるから さ。 」
「 へへへ ・・・ 待ってますぜ、 お客さん。 ああ そこのアーチを潜って・・・
大きな扉がありますんで 一応ノッカーを叩いてください。 」
「 ノッカー? そりゃまたえらく古風な・・・ 」
「 いやいや 格好だけ、ですさ。 それで中に ピピ・・・っと連絡が行くだと。 」
「 ダンケ。 じゃ・・・ 」
タバコを一本、 老人に差し出してから アルベルトは大きな扉へと向かった。
― ギ ・・・・・・・
「 アルベルト ・ ハインリヒ様 承っております。 こちらへ・・・ 」
ノッカーの操作にすぐに中から反応があり、大扉は耳障りな擬音のわりにはスムーズに開いた。
恭しく出迎えたのは えらく無表情な従僕だ。
「 ・・・ 招待主サンは おられるのかな。 」
「 手前どもにはわかりかねます。 ただ ・・・ 皆様お待ちです。 」
「 < 皆様 > ? 」
「 はい。 お客様がいらして ・・・ やっと全員お揃いになったことになります。 」
「 全員 ・・・? 」
「 手前どもはただ・・・ ここ3日間は貸切でお客様は全部で 9人 という事だけです。 」
「 ! ・・・ 9人 ・・・ 」
「 どうぞ ・・・ 」
「 うむ。 」
カツーーーン カツン ・・・ カツーーン カツン ・・・
古城の高い石の天井に アルベルトの足音がこだましてゆく。
・・・ 外側は昔どおりの古城 なんだな。
ってことは枠組みは堅牢で 中身だけは現代風ってことか。
ふ・・・ ポンコツになった俺と同じ、か ・・・
ふ・・・っと皮肉な想いが浮かんでしまうのは 彼の習性かもしれない。
「 こちらが大広間です。 のちほど個室に御案内しますので ひとまずこちらへ。
皆様がお待ちですので ・・・ お荷物はお預かりしますが? 」
「 そうか。 ありがとう。 しかし大した量でもないので 持ってゆくよ。」
「 左様で ・・・ では どうぞ。 」
トン トン ・・・ 従僕は 大きく扉を叩いた。
「 アルベルト ・ ハインリヒ様の ご到着です。 」
ギ ・・・・・ ・・・・ 凝った彫刻を施した扉が左右に開いた。
「 ・・・ ・・・・・・ 」
アルベルトはゆっくりと入った。 そこは大広間の名に相応しい豪奢な部屋だった。
ペルシャ絨毯を敷き詰め、壁にはゴブラン織りのタピストリーが壁を覆っている。
天井から下がるのはクリスタルのシャンデリア。 至るところに飾ってある絵画は おそらく
すべてがホンモノの名画・・・ 灯もフット・ライトが巧みに調節してあり、彩なす光と影を醸し出す。
その趣のある光の下に ― 彼らは いた。
「 おお ・・・ やっと9人目の到着ですな。 役者は全員揃った という訳か。 」
ソファに寛いでいたスキン・ヘッド氏が グラスを持ち上げ ・・・ ウィンクをした。
上等なツウィードのスーツに 輝石のカフス・ボタンが見え隠れするが ― かなりきこしめしているとみえ、
顔が赤い。 テーブルの上には 半分以上空のボトルが並んでいる。
しかし その割りには明瞭な発声と発音で彼の仕事が伺える。
・・・ ふん ・・・ 役者か放送関係か・・・?
「 貴方がこの集会の主催者ですか。 それとも僕たちのような参加者なのですかね。 」
こちらに背を向けていた黒人の青年が 顔だけねじ向けて尋ねる。
固いが正確な発音だ。 彼はおそらくかなり明晰な頭脳の持ち主なのだろう。
コロンが少々キツい。 タキシードのカラーが気になるのか、しきりと襟元を弄くっている。
「 あ いや ・・・ 俺も参加者の一人です。 」
「 ほう ・・・? 」
スキン ・ ヘッド氏はいささかとろん・・・とした目付きだが こちらへ・・・と身振りで彼をソファに呼んだ。
「 あ・・・ こっちの方が温かいですよ どうぞ。 」
端っこに居心地悪そうに座っていた青年が ぱっと立ちあがった。
長めの栗色の髪の間からのぞくのは 白皙・・・ 同じ色の瞳がおずおずと笑いかけてきた。
「 ・・・ いや ここで結構。 」
アルベルトは 戸口に近いところに腰をかけた。
― カチャ ・・・ 茶器を乗せたワゴンが押されてきた。
「 どうぞ ・・・ 」
先ほどの従僕が 彼の前にカップを置き湯気のたつ紅茶を注ぎ ・・・ ティー・ポットを側に置いた。
「 ・・・ 失礼いたします。 」
従僕は慇懃に頭をさげると すり足でしずしずと部屋を横切ってゆく。
「 あ ちょっと? わたくし、明日の朝一番で発ちたいの。 リムジンの手配、してちょうだい。 」
暖炉の前の肘掛け椅子から 高い女声が従僕を呼び止めた。
「 ― は? 」
「 だから! 明日の朝、帰ります。 こんなところで無駄にする時間、 わたくしには
ありませんわ! 」
甲高い声と共に 銀色の毛皮を肩に掛けた美女が立ち上がった。
「 ほう ・・・? 」
「 失礼ですが マダム。 ご希望は招待主様にお伝えください。 ではこれで失礼いたします。 」
従僕はきっぱりと言い切ると しずかにドアを閉めて行ってしまった。
「 あ お待ちなさいってば! ・・・ もう〜〜〜 ! 」
美女はハイヒールで地団駄ふんでいる。
「 マダム? 靴が傷みますぞ。 ・・・ スイス・バリィの特注品 ですな。 」
スキン ・ ヘッドがおどけた口調で言う。
「 あら ・・・ お判りになるの? いえ でもね! いきなり呼び出しておいて ・・・
一体なんなのよ?? わたくし、 明後日のリハはキャンセルできませんの! 」
女優かモデルか ・・・ 素晴しくスレンダーな脚をみせつつ、彼女はぼすん! とソファに座った。
「 こんなところで無駄にする時間なんかないわ! 」
「 ・・・ふん。 それは私もご同様。 ここに居る皆さん、同じではないかな。 」
窓辺から 妙に抑揚のない英語が飛んできた。
燃えるみたいな赤毛のノッポが 窓枠に脚を乗せてグラスを呷った。
タキシードを着込んでいるがはぜか上にラフなコートをひっかけひどく無表情だ。
ひっきりなしにタバコを吸い盛大に煙をまきちらしている。
「 しかし。 理由も説明もナシってのは 気にくわね〜な。 」
段々と彼の口調は砕けてきた。
prrrrrr ・・・・ prrrrr ・・・・ ごく小さな着信音が聞こえた。
「 ! ・・っと しまった ・・・ はい、 私です・・・ 」
窓の方を向き スマホに二言三言発言すると、彼は電話を切り そして ―
「 オレも明日 帰る 」
「 ・・・ ここから出る手段 車だけだ。 」
ぼそり、と一番奥の肘掛け椅子にかけていた巨躯の持ち主が言った。
・・・ めき ・・・っ! 彼が手にしていた木片が ぐしゃり、と潰れた。
ばき ・・・っ! 足下の置いてあった枝がまっぷたつになった。
皆 なとなく口をつぐんでしまった。 ・・・ 沈黙の力技には ぞっとする迫力があった。
「 ここ ・・・ 陸の孤島 ・・・ 」
がさり。 彼は木屑を掴むや、ぱっと暖炉の中に放り込んだ。
パア ・・・・ パチパチパチ ・・・・ 炎が目に見えて大きくなった。
「 それはわかっているけど。 でもこの城はホテルなんだし。 客へのサービス、は当然ですよ。
送迎用に車の手配をしてくれるはずだと思いますけどね。 」
黒人の青年が 少し性急に喋りだした。 彼はみかけによらず饒舌らしい。
「 僕だって ワケが判らないですよ。 スイスでの会議に出席する途中で いきなり・・・
ですからね。 僕も明日 発ちたいですよ。 こんなトコロに足止めはごめんだ! 」
沈鬱だった部屋の空気が ざわめき始めた。 皆の感情が激しく動いているからかもしれない。
・・・ ふぇ ・・・ふぇ〜〜〜 ふぇ〜〜〜〜ん !!
突然 赤ん坊の泣き声が始まった。
「 え?? ベビィがいるの? イヤねぇ ・・・赤ん坊の泣き声って苦手なのよ。
ああ うるさい・・・ 」
美女が眉を顰め 両手で耳を塞いだ。
「 こんな所に子供を連れてくるってどうかなあ〜 良識を疑うよ。 」
黒人青年も迷惑顔だ。
「 ! あ ・・・ す すみません〜〜〜 こ こら・・・ イワン、大人しくしなさい ・・・ 」
隅っこでこちん、と固まっていた栗毛の青年が ぴょこん! とたちあがった。
彼は ソファの後ろに駆けてゆき、置いてあったクーファンから赤ん坊を抱きあげた。
「 ・・・ ほらほら ・・・ どうした? うん? 泣くなよ・・・よしよし・・・・ 」
青年は慣れた手つきで赤ん坊をあやしている。
「 ・・・ は ・・・ こりゃまた ・・・ 」
「 まあ ・・・ ねえ アナタの ・・・ お子さんなの? 随分お若いのに ・・・ 」
「 お腹、いっぱいのはずだろう? ・・・ え? なんですか? 」
「 ! だから。 あなたのお子さんですかって聞きましたのよ。 」
「 あ ああ ・・・ え〜 まあ そんなトコです。 大丈夫 大人しい子ですから・・・ よしよし・・」
「 ふん シツケがなってないなあ〜〜 もう〜〜 」
「 すいません〜〜 普段はこんなに泣かないのになあ〜 よしよし・・・ 」
栗毛の青年は大汗で 赤ん坊を抱いて歩き回っている。
「 いい加減にしてほしいぜ。 ガキなんか連れてくるなよ〜〜 」
赤毛は容赦しない。
「 ほ。 これやから貧民は心まで貧しいん ちゃうか〜〜
赤子ォはんはな、 泣くのんが仕事やで。 よう泣いてはよ大きゅうなりぃ・・・・いうのんが
ほんまのオトナやで。 わあわあ文句言うのんはクソガキや。 」
「 な にぃ〜〜〜?! 」
赤毛ののっぽが びし!っとねめつけ ぴ〜ん・・・ 吸い指しのタバコを放る。
「 なんや? 兄チャン ・・・ あんさん、その服、 ち〜〜とも合ってまへんな!
借り着 か ヤスモノでっしゃろ〜〜 」
ちょろり〜とドジョウ髭をさげ金襴の中国服で身を包んだオッサンは口が減らない。
「 な な なんだとオ〜〜〜 」
いきり立った二人の間で まあまあ ・・・と スキン ・ ヘッド氏がとりなしはじめた。
ふ ・・・うん ・・・? なんなんだ、コイツら ・・・
アルベルトは黙ってソファから 先に到着していた人々 を観察していた。
全員が < 見覚え > あり、 いや よ〜〜く知っている顔、なのだが。
しかし ― キャラクターが違いすぎる。
・・・ 一丁、カマをかけてみる か・・・
アルベルトは徐に 顔をあげると口を開いた。
「 ― あ〜 ところで 」
「 ・・・ シ ッ ・・・! 」
金髪美女が ぱっと口に指を立てた。 空いた手を耳に当てている。
「 ・・・・あ ? 」
「 だまって! ・・・・・ 大丈夫。 従僕は行ったわ。 そして ・・・・誰も いない。
はい、 みんな 〜〜 オッケーよ。 」
はあ〜〜〜〜 ふう〜〜〜〜 へへ・・・ はああああ〜〜〜
一時に 方々から溜息が立ち登り、大広間の雰囲気は一変した。
「 !?!? な なんだ ??? 」
「 ひょ〜〜〜〜 ・・・・ あ〜〜〜 やっちゃらんね〜〜〜 」
赤毛が ぐい・・・っと襟元を緩めた。
「 やれやれ ・・・ あ〜〜〜 こんな酒で酔えるかって〜〜 水割りは性に合わんよ。 」
スキン ・ ヘッド氏は 乱暴にグラスをテーブルに戻す。
「 あ〜〜ん こんな靴〜〜 冗談じゃあないわ ・・・ それに寒い〜 」
金髪美女はハイ・ヒールを脱ぎ捨て 毛皮の襟元をかき合わせた。
「 あ〜〜 イワン、ありがとうね〜〜 あは・・・ 本当に寝ちゃったよ〜 」
「 どれ? あ ホントだねえ 〜 」
栗毛の青年と黒人青年は仲良くクーファンを覗き込んでいる。
「 オレに任せろ。 あとで空中散歩にでもつれってってやるぜ〜 なあ イワン? 」
赤毛ののっぽが 長い指でそっと赤ん坊の頬をなでる。
「 ここの空気 ・・・ 澱んでいる。 よくない。 」
巨躯の持ち主が全員を見回した。
「 そやそや〜〜 このスウィーツはなんやねん? た〜だ甘いだけやないか〜〜
見とってな〜〜 ワテが激ウマ・スウィーツ つくったるで〜〜 」
丸まっちい料理人は ふがふがとハナを鳴らした。
それが合図にでもなったのか・・・視線が一斉にアルベルトに集まった。
「 アルベルト〜〜〜 待っていたよ ( わ ) 」
8人 いや 7人の声が一斉に話しかけた。
「 ・・・ は ??? 」
アルベルトは 口を開けたまま ・・・ ぽかん、と部屋の真ん中に突っ立ている。
「 さあ ・・・ 皆 集まろう。 大人 ご苦労さまだけど お茶を。 大人スペシャルをお願いします。 」
栗毛の青年が 打って変わって てきぱきと采配をふるっている。
「 アイアイサー〜〜 激ウマ、用意しまっせ〜〜〜 」
「 わあ〜〜 お願い! わたし もうお腹ぺっこぺこ〜〜 」
美女は金髪を掻きあげ、 短いドレスの裾を引っ張った。
たった今まで てんでな場所でまったく視線のひとつもあわせようとはしなかった < 客 >たちは
にこにこ・・・笑みを交わしてソファに集まった。
「 ・・・ あ あ?? 」
「 博士から話は聞いたぞ。 勿論助っ人いたすよ うん。 」
「 ・・・ あ ・・・? 」
「 安心しろよ! 皆 飛んできたさ。 当然だよ、協力するさ。 」
「 え ・・・ いいのか。 」
「 いいも何も・・・緊急ミッション! って召集が掛かったんだよ? もう飛んできたよ。 」
「 へ。 コチトラはべつ〜〜に急ぐ仕事もねえしな〜〜 」
「 俺たち 9人で一人・・・ 」
「 さあさあ〜〜 それじゃ作戦会議と行こうではないか。 マドモアゼルによれば
ジャマモノは一応圏外に去ったようであるし。 」
「 ええ 大丈夫。 それとね この広間には怪しげな装置は ・・・ ない わ。 」
美女は手にしたスマホより小さなメカをじっと見ている。
「 よし。 では ジョー? 本題に入ろうではないか。 皆もいいな? 」
スキン ・ ヘッド氏はメンバーをぐるりと見回してから < ジョー > に 統率のバトンを渡した。
「 あ それじゃ・・・ 博士の話しだとなんでも ― 」
栗毛の青年 ・・・ いや ジョー は明快にただ今までの状況を述べた。
全員が熱心に耳を傾け 自身がもつ情報と照らし合わせているとみえる。
「 それじゃ やはり ― 敵は この城に潜んでいる、ということか・・・ 」
「 うん。 ここの本館はホテルになっているけれど ・・・ 中央にあの塔があるだろう?
あそこは昔のままなんだそうだ。 どうもそこに逃げ込んだらしいよ。 」
「 敵 ・・・ って つまり。 ニセの004 なのでしょう? 」
「 らしいね。 博士によるとホンモノ、つまり このアルベルトと寸分違わぬ機能を備えているとか 」
「 ああ ・・・ 俺も博士から聞いた。なんでも実証実験用に作ったロボット だと。 」
「 そりゃ ・・・ 難儀やなぁ〜〜 」
「 なんでだよ〜〜 オレら、9人いるんだぜ〜〜 」
へん! と赤毛が胸を張る。 借り着と思しきタキシードは とっくに上着は脱ぎ捨てていた。
「 あのなあ〜 ジェット? お主、天下の死神の能力を知らんわけじゃあるまい? 」
「 へ! 知ってるさ! けど 9 vs. 1 だぜ?? チョロい勝負じゃんか〜〜 」
「 う〜ん 数の問題じゃあないような気がするよ? ライオンはたった一頭で
ヌーの群れを倒すこともあるからね。 」
「 けど よ! 」
「 ロボットは 疲れない。 壊れるまで 動く。 」
寡黙な巨人が ぼそり、と言った。
「 ― あ ・・・ 」
「 そういうこと さ。 サイボーグとはいえ ・・・俺達は ロボットじゃない。 」
「 う〜〜〜〜 よ〜〜 オッサン〜〜 本人がそんな情けないこと、言うなって! 」
「 事実だ。 俺はカルい楽観主義者じゃないんだ。 」
「 ン だとォ〜〜〜 」
チリン ・・・ 陶器の触れ合う音がした。
「 まあまあ ・・・ 一息入れまほ。 張々湖飯店特製の肉饅・餡饅やでェ〜〜 」
「 あらあ〜〜 嬉しいわぁ〜〜 大人〜〜 え? キッチン、使えたの? 」
良い匂いを撒き散らしつつ 丸まっちい料理人がワゴンを押してきた。
金襴の中国服は姿を消し、 いつもの彼の制服 ― 白いシェフ服を着ている。
「 ほっほ〜〜 この広間にはなあ〜〜 水屋もあるんやでェ〜〜 まあ どえらい部屋や。 」
「 そうだね。 ちょっとブレイク・タイムにしよう。 」
「 うむ、 それがいい。 我輩は銘酒をな〜 提供するぞ〜〜 」
「 ははは 適量にしておいてくれよ、グレート。 この後、全員でともかく偵察にでよう。 」
「「 了解 」」
ジョーの言葉に 全員が頷いた。
「 さあ〜〜〜 ティー ・ タイム にしましょ♪ きゃあ〜〜 わたし あんまん、大好き♪ 」
「 おいおい ・・・ ダンサーが・・・いいのかね? 」
「 ・・・ 今日はお休みよ! 」
和気藹々の お茶タイム が始まった。
ファサ −−− 長いマフラーがゆれる。
一種独特の色合いに ああ また闘いの日々か・・・と皆が思っているのだろう。
全員が防護服になり大広間に再び集まった。
「 ― 圏内に人影 ナシ 」
003が報告をする。
「 よし。 それじゃ 例の塔に向かう。 本館の屋上伝いにも行けるし、裏手の堀からも
登れる。 庭からが正統なルートだが ・・・ 人目につくのでそれは外す。 」
009の指示に メンバー達は考えをめぐらせているらしい。
「 以後 二人一組で行動だ。 単独行動は避ける。 」
「 すまんが。 俺は ― 」
「 いや。 例外は認めない。 特にヤツは004、君を集中的に狙うと推測されるからね。 」
「 しかし 」
「 003、 一緒に行きたまえ。 」
「 ええ わかったわ。 ― ヨロシク。 」
003が すい・・・とアルベルトの横に立った。
「 ・・・ ふ ん ・・・ まあ いいが ・・・ 」
「 では 出発。 定時連絡は 〇〇時。 いいな。 」
「「 了解 ― 」」
赤い防護服たちは ペアを組んで散って行った。
ふ ・・・ ん ・・・? ジョーのヤツ、なかなか手際がいいじゃねェか ・・・
ま 今回は偵察ってことで ・・・
― ・・・ ?
うらうらとした早春の陽射しの下 ― 庭には稚い緑が芽吹き始めている。
南側の日向には タンポポが金貨を撒いたみたいに散り咲いていた。
そんな中 古城はまるで眠り続ける美姫のごとく ・・・ 悠然とそして優雅に佇んでいた。
Last updated : 04,02,2014. index / next
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『 機々械々 』 じゃありません〜〜 『 奇々怪々 』 です。
そして 4話 じゃないです〜〜 一応 93♪になる ・・・ はず??
はい あのオハナシとあのオハナシですよ〜ん でも このジョー君、
なんか 新ゼロ君 みたいですね?