『 貸し借り不可能  <2> 』

 

 新品(さら)のポアントを触ってみるとわかるのですが。 かっちかちです。 落としたらカツ−ンと音がしますし、思いっきりポアントで打ったたかれたら (そんなコト、しませんけどさ) ジョ−君でもクラクラくるでしょう!

この、布と革と厚紙 (ものによってはファイバ− カ−ボン) から出来ている特殊靴はあの先っぽが特別な糊で固めてあるので、はじめはかちんこちんなのです。

 買ってきてスグ履けるわけじゃありません。 まずヒモ(リボン。はじめから付いている靴もありますが)を縫いつけます。 一応標準的な位置はありますが皆自分に合った場所は微妙に違いますね。

このヒモ付けが、メンドクサイ!! 左右合計四箇所をちくちく手縫いするのですが・・・小学生のころは母がやってくれましたがそれ以降は しょ-がない、皆ぶつくさ言いながら自分でやります。 

あと、踵のゴムをつけ拘る人はトウ部分をかがったり幅を狭めるために刺繍糸でブリッジを渡したり・・・ホント、手間がかかるんですよ〜 (泣)

「 え〜ん、もうコレくたくたなんだけどさ〜 昨夜寝ちゃったから・・・ 」ってことはよくありますね〜

フランちゃんも 暇があればギルモア邸のリビングでちくちく縫っているでしょう。 初めは物珍しいでしょうが、いっつも傍にいるジョ−君なんかには 見慣れた光景になっているはずです。

 

 で、このかちかちの新品をクラスやリハ−サルで自分にとってベストな状態にまで慣らして行きます。

硬めが好きな人もいれば くたくた寸前がいい人もいます。 足の強さとか条件は千差万別ですから。

また、踊りの種類によって靴を変える人もいます。 なが〜〜〜いアダ−ジオ(ゆっくりした踊り)の時と

ぶっとびそうなアレグロ(早くてジャンプとかが多い)の時、 ピルエットが多いもの、 組む部分が多いもの、いろいろです。 

全幕モノ( 白鳥とかジゼルとか眠りとか )で 何役も踊る時も複数足用意します。

 ポアントのベスト状態はほっんとに短いです。 履く頻度にもよりますが、激しい時は 「 あ〜もうダメだ、3回くらいしか履いてないのにぃ・・・しくしく・・・・ 」 っていうカンジ。 専用のニスを入れたり プラモ用の

ボンドを入れたり ( ばちるどが子供の頃、お姉さま方はアロン〇ルファをいれてました ) なんとかかんとか 長持ちする様工夫するのですけれどね〜。・・・・だって。 安価なモノじゃないのですから。

お値段はピン・キリで。 手元にある輸入モノのバ−ゲン・カタログから拾ってみれば・・・

セ−ル価格で ¥3,200 から ¥6,300 くらい、もっと高価なものもあります。

国産モノも似たり寄ったりです。 でも! 高価だからイイとか、輸入モノだから上手く踊れる、なんてコトはありません。 要は、 自分の足に合っているか否か、ということです。

「 挫折したお友達の分もがんばるわ! 彼女のコノ靴をわたしが履いて! 」 

「 憧れの〇〇さんのトウ・シュ−ズ。 この靴でわたしはコンク−ルに出ます 」

よ〜〜〜く、ありますよね〜漫画とかに。 オハナシとしては感動的ですが。 現実には 有り得ません。

コレだけは 貸し借り・譲渡は(新品で無い限り)不可能なんです。

 

 かちかちで思い出しましたけれど、こんなカンジに慣らしてゆきまして、はじめてキレイにポアントで立てます。

<ばれり-な>の絵(漫画?)などで あの固いまんま爪先立っているのをみかけますが、実際は力学上、無理です。

足の甲が出て靴の底が土踏まずのア−チに沿う様、しなるカンジになって( 写真 を見てください) はじめてポアントでおどれま〜す。 

・・・だから、足も変形してゆくワケですよね。

 

 *** おまけ ***

 

 いつもなにかと賑やかな、ここギルモア邸のリビング・ル−ムなのだが 今日は珍しくも人少なである。

所在なさげに ジョ−が眺めているTVの音が 妙に耳につく。

ぎこちない雰囲気を紛らわそうと フランソワ−ズは手仕事を持ち出したのだが。

「 なあに・・・? 」

ふと視線を感じ彼女は顔を上げた。

「 う、ううん・・・・べつに、その。 あ・・・あのさ、ただ、なんてゆうか・・・女のヒトが縫い物をしてるのって

 いいなあって思って、さ・・・・ 」

思いのほか近くにいたジョ−は 彼自身のほうがびっくりした様に顔を赤らめた。

「 ? ヘンなジョ−ねえ・・・・ 縫い物って、ほら、昼間買ってきたポアントよ。 ヒモをつけてるの。 」

「 ふうん・・・ わ、硬いんだね・・・ 」

「 初めはね。 また、このマ−クの靴が履けて・・・嬉しいわ。 わたしの大事なパ−トナ−・・・ 」

大切に胸に抱えたポアントに 彼女はそっと頬をよせた。

「 ・・・・ だから・・・! 」

「 ・・・ちょっ・・ジョ−・・なっ・・・ 針があるのよ!  あ・・・ん・・・ 」

急に肩を抱き寄せてきた ジョ−にフランソワ−ズは小さく悲鳴を上げたが・・・

すぐに 彼の唇でその声はふさがれてしまった。  

 ♪♪♪ 二人の らぶり-・ないと は始まったばかり ♪♪♪

    あひる・こらむ /  <1>