『 いらかの波と ― (2) ― 』
わっせ わっせ わっせ・・・・
ジョーは 文字通り 大荷物を抱えて海岸通り商店街のメイン・ストリートに出てきた。
「 お客さ~~~ん 持てますぅ?? それもあとで一緒に届けるよ? 」
店の親父さんは心配してくれたが・・・
「 あ 大丈夫です~~~ あの ミカンと梅の木、届けてくだされば~~
あ ! あと肥料も ・・・ すいません~~ 」
「 いや すまないのはこっちだよ その苗・・・ 持てるかい? 」
ジョーは両手のビニール袋の中に 花の苗を苺の苗をぎっちり・・・詰め込んでいるのだ。
「 はい! えへ・・・ 早く帰ってウチの庭に植えたいんです 」
「 ふ~~~ん 若いのに、兄ちゃん、なかなかシブい趣味なんだね~~
ま ウチの苗は皆丈夫だからね~~ 苺は路地植えかい 」
「 あ・・・ 一応 ちっこい温室があるので そこで 」
「 あ~ そりゃ安心だ。 潮風には当てないほうがいいよ 」
「 はい。 あ これからもいろいろ・・・相談に来ていいですか? 」
「 もっちろんだよ。 あの梅はなあ いい色の花が咲くよ。 大事に育ててくれや 」
「 はい! ・・・ えへへ フランと一緒に~~~♪ 」
「 あ カノジョと一緒かい そりゃいいや・・・ そんなら ほい これはオマケ♪
カノジョにプレゼントしたげな~ 」
植木屋の親父は細い苗木をぽん、とジョーの荷物に追加した。
「 え・・・ いいですか~ これは? 」
「 柿の木さ。 桃栗三年 柿八年って言ってね~ ま、あんたらの子供が登って実をもぐよ~~ 」
「 え! ・・・ あ あは ・・・ そ そうなれば いいなあ~ 」
「 がんばんな、兄ちゃん! いつでもまたおいで 」
「 はい ありがとうございます~~ 」
― ってことで ジョーは荷物と一緒に国道沿いに歩き始めた。
「 うっひゃ・・・ う~~ 歩きにくい ・・・ 」
重量的にはサイボーグにとっては へ でもないのだが ともかく嵩張る。
それに・・・
「 う~~ん ・・・ 乱暴に持ったら つぼみが潰れちゃうし・・
いっけね~~ これじゃ苺がひっくり返っちゃうよぉ ・・・
うおっとぉ~~~ あ 土がこぼれちゃう~~~ いっけね~~ 」
よろよろ よれよれ・・・ ジョーの足取りは蛇行してゆく。
「 よいしょ よいしょ。 あとはこの坂をがんばればっと ・・・ 」
フランソワーズは 野菜と干物と 鯉のぼり~ を担いでここまでやってきた。
「 ふふふ~~~ いい買い物、できちゃった♪
今晩は 鯵の干物 に 大根おろし。 トマトとぶろっこり、で サラダね。
そうそうマヨネーズ、作って美味しくいただきましょ。
あとは ・・・ そうだわ < まぜごはんのもと > を買ったから・・・
炊飯器で美味しく仕上げましょ♪ きゃ~~~ たのしみ~~~ 」
こちらは嵩張る荷物もへっちゃら・・・ ハナウタ混じりである。
「 ふんふんふ~~~ん♪ ・・・ あ ら? 」
ちょいと道の反対側を眺めれば ― よれよれ歩いてくる < 荷物 > がある。
「 なあに アレ・・・ え??? ジョー?? 」
荷物の間から見慣れた茶髪がゆらゆら~~している。
「 え・・・ なにを持ってるのかしら。 あら 木???
え~~ どうしてよろよろ・・・しているの?? 」
彼女自身も沢山の荷物を抱えつつ 駆けだした。
「 ジョー~~~~ !! 大丈夫? 」
「 ふえ ・・・ え? あ~~~ フラン~~~ おっとぉ~~ 」
思わず荷物から手を離しそうになり 慌てて抱えなおした。
「 うわっち ! いっけね~~~ あ いちご! だ 大丈夫か?? 」
彼はそのまま道端に座りこんだ。
「 ジョー!! ど どうしたの??? 」
「 ・・・ あ フラン~~ きみも買い物、たくさんだね 」
「 え? ええ ・・・ ねえ どうしたの? いきなり座り込んじゃうんだもの 」
「 あ ・・・ あは ・・・ あの さ。 これ・・
潰しそうになっちゃったんで さ 」
ジョーは 抱えていた袋をそ~~っと開いてみた。
「 ・・・ あ 無事だあ~~ 思わずぎゅっともっちゃったからさ 」
「 なあに? 見てもいい 」
「 あ うん いいよ。 ・・・ えへ きみ 好きかな~~
」
「 あら? ・・・ これ なにかの ・・・ 苗? 」
「 ウン。 こっちの袋は花なんだけど これは ・・・ あ よ~く見て 」
「 ? 白い可愛い花ね ・・・ あ!! ちっちゃい実、み~つけた♪
これ い ち ご ね??? 」
「 ぴんぽ~~~ん。 テラスでも栽培できるんだって。
でもさ せっかく裏庭に温室あるから・・・あそこに植えようかな~~って 」
「 きゃ♪ いいわあ~~ わたしね、お庭のあるお家って憧れだったの~~
ね ジェロニモの温室に植えさせてもらいましょ 」
「 ウン。 こっちの花は ・・・ 花壇にうえようっかな ・・・って。
あの~~~ ・・・ きみ 庭いじりとか す 好き? 」
「 大好きよ~~~ すてき♪ ジョーのお買いもの、素敵すぎ~~ 」
「 えへへ・・・ ありがと。 あ きみの荷物、持つよ 」
「 あら 大丈夫よ。 こっちはね食糧。 今日の晩御飯は・・・うふふふ~~
お楽しみに。 」
「 わ なんだろう?? これ オマケ? 」
ジョーは 袋から飛び出していた ミニチュア鯉のぼり を指した。
「 え??? オマケじゃないわよ~~ これ、飾るの。
ジョー はつぜっく でしょう? 」
「 ・・・え?? 」
「 教わったの。 五月五日は たんごのせっく で 男の子の日で・・・
え~~と 初めてお祝いするおせっく は はつぜっく っていうのでしょ? 」
「 あ ・・・ は~~ 確かにそうだけど ・・・ 」
「 ね♪ ジョーもここに来て 初めてのおせっくですものね~~
だから こいのぼり 飾ってお祝いよ 」
「 あ そ そうだね~~ あは 可愛いじゃん、これ 」
「 でしょ。 でもね~~~ ホンバンの日にはもっとサプライズがある予定よ 」
「 ほ ほんばん?? 」
「 そ。 五月五日よ。 わたし、頑張るから。
さ ウチに帰りましょ。 晩ご飯ね~~ あ ちょっと手伝ってね?
ウチに ひちりん ってある? 」
「 ひ ひちりん? ・・・ それって 七輪 じゃないかな 」
「 そう? その ~~りん、 あるかしら。 」
「 さあ~~~ そういうのってもうないと思うよ、今の二ホンには・・・
二ホン昔話 とかで見たけど ・・・ 」
「 ふ~~ん それじゃレンジでいいわ。 手伝ってね~~ 」
「 う うん ・・・ それにこの苗・・ 早く植えてあげないと 」
「 あ そうね。 お水がご馳走ですもんね 」
「 うん。 あのぅ・・・ い 一緒に 植えないかな・・・ 」
「 なにと? 」
「 へ? 」
「 苺の苗と一緒になにを植えるの? 」
「 あ ・・ そのう ~~ 」
「 ふ~~ん あ ! こっちは ミニ・トマト ね! これを一緒に植えるわけね?
わ~~~ ジェロニモの温室、すっごく素敵な野菜室 になるわね 」
「 あ そ そうだね 」
「 うふふ~~ 収穫が楽しみ♪ ね お茶にね ケーク・サレ 焼くからね。 」
「 ケークサレ? けーきかあ~~ ウチでけーきが作れるってすごいよねえ~~
きみのけーき、皆美味しいし。 ぼく 大好き~~~ け~くされ、食べたい♪ 」
「 まあ そう? よかった♪ わたしのお得意なの~~~
楽しみにしててね~~~ 」
「 うん! あ きみは・・・? 」
「 うふふ~~ わたし、これからちょっと秘密の作業があるの うふふ 」
「 ひみつ?? なになに~~~ 」
「 な~いしょ♪ 待っててね、 こっちも楽しみにしててね~~ じゃ お茶の時間にね 」
「 う うん ・・・ 一緒に植えたかったのになあ ・・・ 」
ジョーはちょっとしょんぼり・・・ 彼女の後ろから坂を上ってゆく。
ごそ ごそ ごそ ・・・・
ロフトの奥まで潜りこみ フランソワーズが ― ?
「 こっちかなあ~~~ えっと?? あっ あった!
えいっ~~~ でてこ~~い えいっ ! 」
ドンっ !! ガラガラ~~~ がっしゃん・・・・!
「 うわあ~~~ きゃ ・・・! 」
ロフトのドアを跳ねとばし 金髪美女が転げ出てきた。
「 ・・・ いった~~~~ ・・・・ ああ でもこれだけあれば ! 」
床に座り込んでもしっかり手に握っているのは なにやら白っぽい布だ。
ばふっ ・・・・ 両手で広げればかなりの大きさ。
「 ドルフィン号の部品を包んであったんですって ・・・・
丈夫そうな布ね~~ これを切って縫って・・ うふふふ♪
おっきなお魚を描くわ ♪ ま~ずは型紙をつくらないとね 」
手元のミニチュアをじっくりと観察した。
だだだだ だだだだだ ・・・・ だだだだ・・・
リビングの隅にちんまり置いてあった足踏みミシンが 軽快な音を立てている。
「 ん~~~~~~ ・・・ まっすぐに縫うんだから簡単だけど・・・
この前のカーテンよりも大きいかな~~~ 」
だだだ だだだだだ ― ひたすら白い布を縫ってゆく。
― ガチャ。 ドアが開いてジョーが遠慮がちに顔を覗かせた。
「 あ あのう~~~ ? 」
「 ん~~~ ? あら ジョー なあに。 」
「 うん あの・・・ お茶 ・・・ 」
「 ! あ そうだったわね~~ きゃ~~ ケーク・サレ~~~~ 」
フランソワーズはミシンの前から跳びあがった。
「 けーき♪ あの・・・ ぼくが作ろうか? 教えてくれれば・・・ 」
「 ううん 材料はね、もう用意してあるの。 あとは じゅわ~~~っと
焼くだけなの。 オーブンに入れればいいのよ、 今 作るわね 」
「 手伝うよ~~ どうやって焼くのか見たいんだ 」
「 あら 普通にオーブンで焼くだけだけど ・・・ じゃ 手伝ってね。 」
「 うん ♪ 」
ジョーはもうにこにこして一緒にキッチンに入った。
「 おいしい! これ オイシイねえ~~ 」
焼き上がった一見、パウンド・ケーキみたいな ピースをジョーは嬉々として頬張った。
「 あら そう? 気に入ってくれた? 」
「 うん♪ ボリュームあるし~~ ソーセージやハムの切れっぱしに
タマネギとかピーマンとか~~ ん~~~ オカズいりお焼きだね
ね~~~ 博士、オイシイですよねえ
」
「 うむ うむ ・・・ ホット・ケーキで甘くないというのもいいのう~~
しっかり食事になるな
」
「 ね~~ オカズパンだあ~~ あ~~ うま~~ 」
「 ・・・ あのね。 ケーク・サレ っていうの。 」
「 やっぱ け~き なんだ? へえ~~ きみの国じゃ甘くないオカズけーき
が あるんだね~~~ ん~~~~~ 焼きそばパン よか美味い♪ 」
「 ・・・ オカズけーき じゃないんだけど ・・・ 」
「 ん~~~ おいし♪ ぼく これ 大好き! ねえねえ また 作ってね 」
ジョーは大きく切り分けたピースを三個、ぺろりと平らげた。
「 いいわ。 あのね。 ケーク・サレ っていうの。 覚えて。 」
「 あ うん。 ~~~~ はあ~~~ 美味しかったあ~~
あ そうだ 苺とプチ・トマトね、ちゃんと植えたよ~~ あとで さ・・・
見に行こうよ・・・い 一緒に ・・・ 」
「 まあ そうなの? ありがと~~~ うふふ~~ 収穫が楽しみね 」
「 うん 苺はわりとはやく食べれるかもな~~ 」
「 ジェロニモの温室、素敵よね~~ ウチのサラダはいつでも超~フレッシュになるわ ね。
さあ わたし これからちょっと作業したいのね 」
「 あ お茶の後片づけ ぼくがするから。 ― なにか作っているのかい 」
「 ええ ちょっとね ミシンで 」
「 ふうん ・・・? 」
ジョーはリビングの隅のミシンの方を眺めた。
すこし生成りっぽい色の布が それも大きな布が広げられている。
「 カーテン? 」
「 ううん、 ちがうの。 あの布ね~ ドルフィン号の 掃除用の布、ロフトに余っているから・・・って
博士に頂いたの。 」
「 あ~~ なにか縫うのかい? 掃除にでも使うのかと思ったぞ 」
「 ええ ちょっと閃いたんです。 使わない布 もったいないし 」
「 へえ・・・ ドルフィンのねえ・・・ なに作るの? 」
「 うふふ~~~ ナイショ♪ もうすぐできるから・・・楽しみにしてて 」
「 え? 」
「 これ ね。 ジョーのものなの。 だから仕上がり 待ってて~~ 」
「 ぼ ぼくの?? カーテンじゃないし・・・ 服とも 違うよね? 」
「 ぶ~~~♪ うふふ・・・ あ そうだ!
あとでお願いが一つあるのよ。 楽しみにしててね 」
「 う うん?? ぼく 片づけしたら苺の水やりと・・・・ あと
庭で木 植えてるね。 柿と梅 買ってきたんだ 」
「 まあ ウメ? あのいい匂いの花の木でしょう?? すてき! 」
「 えへ・・・ きみ、あのにおい、好きって言ってたから・・・ 紅い花の、買ってきたんだ・・・
ちっこい木だけど ・・・ 次の春には花が咲くよ 」
「 いいわ いいわ~~ 大きくなるの、楽しみよ~~
かきって・・・ オイスター・・・? オイスターが獲れる木なの? 」
「 あは そっちの 牡蠣 じゃなくて。フルーツさ。 秋に生るんだ 美味しいよ 」
「 ほう~~ 柿か。 いいのう~~ 楽しみじゃな 」
「 ええ でもまだ今年は無理かな ・・・ 」
「 柿は接ぎ木をせんと すぐには実をつけんそうじゃよ。 コズミ君から聞いたよ」
「 そうなんですか ・・・ あ いそいで仕上げてなくちゃ ジョー 後片付け
お願いします~~ 」
ぺこん、とお辞儀して フランソワーズはミシンの前に座った。
ふんふ~~ん・・・ 残りのケーク・サレ を全部お腹に収めると
ジョーも上機嫌で洗いモノを始めた。
だだだだ・・・・ だだだだ・・・・
「 ・・・っと。 これでいっかな~~~ あとは 絵を描かなくちゃ。
え~~と・・・お魚、よね。 なにがいいかなあ~~ 強そうなシャーク?
それとも 大きなクジラ や イルカもいいわね~ う~~ん ・・?
あ! 鯵!! 鯵を描きましょ ! 鯵 がいいわ。
あのおいしい~~~ 鯵! ジョーが元気なオトコの子になりますようにってね
たんごのせっく に お庭に飾るの。 うふふ~~~ ステキ 」
ばっさ!
フランソワーズは縫いあげた細長い、でも巨大な袋状のものを広げた。
「 ちょっと大きすぎたかなあ・・・ ま いいわ。
どうぞジョーが ずっと元気でいますように。 絵の具も買ってきたのよね~~
水に強いっていうのを選んだわ。 」
リビングの床に新聞紙を敷くと フランソワーズは縫いあげた袋を置いた。
「 鯵・・・って あの干物みたいな顔で泳いでいるのかしら ・・・
あ あの干物屋さんのらっぴんぐ・ぺーぱーに 鯵の絵があったわ! 」
キッチンから もってきた紙にはちゃ~~んと鯵が描いてある。
「 よぉ~~し ・・・ 」
絵の具とマジックを並べ、彼女は豪快に描きはじめた。
ガタン。 キッチンの裏口が開いた。
「 ふう ・・・ 木 植えたよ~~ 苺にも水 やってきた~ 」
ジョーがぱたぱたジーンズを叩きつつ上がってきた。
「 フラン? 」
「 あ こっちよ~~ リビング。 」
「 あの ・・・ 入っていい 」
「 い~わよ~~ 今 完成したとこ。 見て見てぇ~~ 」
「 え なに なに~~~ 」
ぱたぱたぱた ・・・・
「 きみの作品って ― う わあ~~~ でっか~~~ 」
「 うふふ ・・・ あのね これ。 こいのぼり。
ジョーの はつぜっく用の こいのぼり よ 」
「 わ ぁ~~~ ぼくだけの鯉のぼり! ぼくのための 鯉のぼり!! 」
「 ホントはお店で買いたかったんだけど・・・ 大きいのって今はねえ
もう売ってないんですって。 注文すればいいのだけど、高いみたい・・・
だから わたしが作ったの。 」
「 ・・・ う わ ・・・ 」
「 あ あの ・・・ 気にいらない ・・・? 」
「 さ 最高だ~~~あ ~~~~~ 」
「 そ そう?? 」
ジョーの あまりの喜びように フランソワーズの方が驚いてしまった。
「 え ・・・ 今までも そのう・・・ ムカシももってたでしょう?
その・・・ こいのぼり。 二ホンのオトコノコは皆 もってるって・・・
商店街で おばあさんが教えてくれたわ 」
「 あ~ うん ぼくが育った施設にもあったよ 鯉のぼり。
どっかの篤志家の寄付でさ。 どでか~いのが教会の庭にひらひらしてた・・・ 」
「 あ それじゃ・・・ こんなの、いや ・・・? 」
「 ううん ううん ううん!!!
だって! たしかにすげ~でっかくて なんか高そう~~ なモンだったけど。
でも それは < みんなの鯉のぼり > だもの。 」
「 - え ・・・ 」
「 施設に、って。 孤児たち皆に って もらったんだ。
ぼくのためだけ のじゃあないんだ 」
「 ・・・ そ そう ・・・ あ これはね!
わたしが ジョーのために。 ジョーが丈夫に育ってりっぱなオトコノコに
なるよに~~ って 作ったのよ 」
「 ありがと~~~~ うわあ~~~~ 嬉しいなあ ・・・
あ ・・・ この魚 ・・・ もしかして 鯵? 」
「 ぴんぽ~~~ん♪ あのね ものすご~~~くオイシイ鯵の干物 を
買ってきたの。 だから の美味しい鯵みたくにジョーがなりますよに~って。 」
「 あは ・・・ うん 鯵の鯉のぼりを持ってるヤツなんて ぼく一人だよ!
わ~~~~ いいなあ~~ あ そうだ!
これ ・・・ 庭にポールを立てて泳がそう! 早速穴、掘ろう 」
「 ・・・ 気にってくれた? 」
「 もっちろん♪ ・・・ あ あのね。 はつぜっく ってさ。
生まれて初めてのお節句 って意味なんだ。 」
「 え!?!? そ そうなの? 」
「 ウン。 でも さ。ぼくにとっては やっぱり初節句かも。
だってここに住んで ・・・ 新しい人生だもの。 」
「 ごめんなさい ・・・ そんな意味だったのね 」
「 なんで ごめんなさい なんだい? ぼく ほっんとう~~にうれしいんだあ~
あ・・・ 名前 書いてもいいかなア
」
「 ええ ええ どうぞ。 ここに絵の具、あるから 」
「 よぉ~~し ・・・ 」
ジョーは 筆にたっぷり絵具を含ませると、美味しそう~~~な・巨大鯵の
腹の下に しまむら ジョー と くっきり書きこんだ。
「 あら いいわねえ~~~ 」
「 ほう? これは立派なモノを作ったなあ 」
博士も顔を覗かせた。
「 あら 博士 ・・・ うふ これ・・・ 鯉のぼり のつもりなんですけど 」
「 博士。 ぼくの ぼくだけの鯉のぼりです ! 」
「 うん うん いいもんだ。 五月の空に悠々~と泳がせておやり 」
「 はい! ふふふ~~ い~ら~か~のな~み~と~~~♪ 」
「 なあに その歌 」
「 鯉のぼりの歌 さ。 ムカシはね~~ 鯉のぼりは この家には
元気な男子がいるよって印だったんだって。 」
「 そうなの~~ あ じゃあ 今度 イワンの分も作ってあげようかしら。
今度 帰ってきたとき、喜んでくれるかも 」
「 あ いいねえ~~ そうだなあ 今度は赤い魚、 描いてよ 」
「 赤いの? いいわ・・・ 巨大金魚にしよっかな~~
」
「 いいかも いいかも~~~ 」
「 ね? さっきの こいのぼりの歌 教えて? 歌いなが絵を描くわ。 」
「 いいよ~ い~ら~か~の ♪ 」
二人は けたけた笑いつつ 巨大金魚・鯉のぼり を作り始めた。
そんな彼らを 博士はにこにこ・・・ 眺めている。
「 ふふふ ・・・ おまえたちのチビさんのために ここに鯉のぼりが
泳ぐのは いつかのう ~ 」
「 え? なんですか 」
「 いやなに ワシの独り言さ。 ・・・ い~ら~か~のな~み~♪ 」
博士も ふんふん・・・ こいのぼりのうた をハナウタ混じりの歌うのだった。
― 何年かの後 ・・・
梅は毎年こぼれんばかりにいい香の花をつけ 裏庭の柿もぽつぽつ実をつけ始めている。
~~ い~ら~~か~~の な~~~み~~~とぉ~~~
元気な歌声が聞こえてきた。
「 わっせ・・っと。 さあ~~ これでいいかな~~
すぴか すばる~~ 鯉のぼり、 上げるぞぉ~~
」
ジョーは 立て終わったポールの根本をしっかりと踏み固めた。
彼の脚の周りには 色違いの髪をしたチビちゃんが二人、纏わりついている。
「 わ~~~ こいのろび~~ こいのろび~~ 」
「 のろび~~ おと~さん~~ 」
「 そうだよ。 一番上のひらひらしたのは 吹き流し。 その次のが 」
「 アタシ、しってる! おっきな・まごい♪ 」
「 そうだね~ すぴか。 その下の赤いのが 」
「 ひごい~~~♪ 」
「 当たり。 すばる、 ほら すばるの鯉のぼりだよ。 」
「 わ~~~~ 」
「 ・・・ アタシのは 」
「 あ ごめん、 すぴか と すばる の鯉のぼりだね。 」
「 ウン。 あ ・・・ もういっこ、いる~ 」
金髪お下げのチビちゃんは 熱心に見上げている。
緋鯉の次には でっかい鯵 が泳いでいるのだ。
「 うん? あ~ あれは お父さんのさ。 」
「 お父さんの? アタシ、ほしい! 」
「 だ~め。 これは お父さんの! 」
「 アタシ ほしい~~~ 」
「 だ~め。 あれはお父さんの宝モノなのだ。 」
「 え~~~~ 」
「 すぴか~~ すばる~~ ジョー~~ 柏餅、頂きましょう~~ 」
テラスからお母さんの声が聞こえてきた。
「 わ~~~ かしわもち~~ 」
「 もち~~ 」
「 オヤツだね~~ さあ 手を洗ってこようね 」
「「 うん♪ 」」
やねよ~~り~~~♪ 岬の家に賑やかな歌声が響くのだった。
**************************** Fin.
****************************
Last updated : 05,02,2017.
back / index
***************** ひと言 ***************
なんてことない・季節話 ・・・
あの崖っぷちの家だったら でっかい鯉のぼりも大丈夫ですよね