『 きみと あなたと ― (2) ― 』
ごろん ごろんごろん。
シンクに本日の < 収穫 > を 並べ、水を流しだした。
「 ・・・ うわあ〜〜〜 」
ざっと泥は落としてきたのだけれど ― タワシでこすれば
芋たちは びっくりするほど鮮やかな濃いピンクの姿になった。
「 きれいな色 ・・・ 」
フランソワーズはしばし、大小の芋たちに一本づつ触れて
かっちりした感触と色を楽しんでいた。
「 どう? わ〜〜〜 美味しそうだねえ〜〜 」
ジョーも覗きこんでくる。
「 ね キレイな色ね。 野菜でこんな色、あるのねえ 」
「 あ〜 そうかも ・・・ でっかいの、美味そう〜〜 」
「 どうする? これ・・・全部 スウィート・ポテトにはできないでしょ 」
「 えっと 天ぷらとぉ〜 ちょっとネットでレシピ、探してみるね。
たぶん ラップで包んでレンチンでも美味いと思うけど 」
「 検索、任せるわ。 わたしは・・・ あ こっちの可愛いの使って
スウィート・ポテト を作るわ 」
「 わっほほ〜〜 楽しみ〜〜〜 」
「 わたしも作り方を調べておくわ。 詳しい分量とかね 」
「 頼みます〜〜 あ〜〜 収穫祭だね 」
「 ふふふ ・・・ 庭のハーブも摘んでくるわ。 」
「 いいね なんかファームみたいだあ 」
二人は なんとなくウキウキしていた。
「 あ ぼく、晩御飯の買い物、してくる。
なにかリクエスト ある? 」
「 え〜〜と ・・・ あ 卵。 それから ミルクね。
お野菜では キャベツ! 日本のキャベツ、美味しいわあ〜 」
「 わかった。 あ 鍋にしてもいいかな 今晩。 」
「 ええ ええ 鍋料理、美味しいわよね〜〜〜
ジョーの得意なレシピにしてください。 」
「 おっけ〜〜〜 ♪ じゃ スウィーツは頼むね〜 」
「 了解! 」
ガッツ。 二人は ぐ〜 でタッチし合った。
「 ・・・うん わかったわ。 これで行く! 」
フランソワーズは リビングの共有PCの前でこっくり頷いた。
レシピ検索で スウィート・ポテト の材料、分量を
しっかりチェックした。
「 美味しいスウィート・ポテト 作るわ !
あんなキレイなお芋さん、 しっかり活用しなくちゃ 」
きりり・・・とエプロンのヒモを結び、腕まくりして
キッチンに戻ってきた。
ごろごろ ごろん。 シンクのザルにはサツマイモの山。
「 え・・・っと。 さ つ ま い も。 ね〜〜 」
手頃な大きさの芋を選び さらに綺麗に洗いあげた。
「 ホント 綺麗な色ねえ 〜 皮も使うわ、もったいないもん。
そう ・・・ 初めて見たのって まだ小学生になる前だったかも ね 」
― 彼女は 懐かしい日々に想いを馳せる
遅い秋のある日。
母は外套とマフラーに包まりつつ にこにこ・・・買い物から帰ってきた。
「 ただいま ファン 」
「 ママン〜〜 おかえりなさい〜〜 寒かった? 」
「 ええ あのね イイコトがあるから あまり寒くなかったわ 」
「 イイコト? なあに ママン? 」
「 うふふ 今日はねえ 素敵なものがあるのよ 」
「 すてきなもの? 」
「 そうよ。 これで ・・・ 美味しいデザート つくるわ 」
「 でざーと? わあ〜〜い いちご? ばなな? 」
「 いいえ ほら これ。 」
ごとん。 母は買い物カゴから 硬そうなカタマリを取りだした。
「 ・・・ これ? ・・・ なあに 」
「 お芋よ patate というの 」
「 え? じゃがいも ?? 」
「 いいえ ちがう種類のお芋なの。 これでねえ
スウィート・ポテト、作るわね 」
「 わあ〜〜〜い ファン 大好き〜〜
え でも これ ・・・ で作るの? これもお芋なの ? 」
「 そうよ。 ファンも手伝ってね 」
「 うん! 」
「 これをまず ね ・・・ 」
母は 幼い娘を脇にシンクの前に立った。
・・・ ママン すご〜〜〜い ・・・
魔法みたいにどんどん出来上がってゆくスウィーツに
フランソワーズは目をまん丸にしっぱなし ・・・
< お手伝い > は ほとんどできなかった。
ガタン ― お楽しみ は レンジに入った。
「 さあ これであとはレンジにお任せ ね。 」
「 ふうん ・・・ あ いい匂い〜〜〜 」
「 ホントね! ファンが一緒に手伝ってくれたから
きっととっても美味しいわよ 」
「 ・・・ あ アタシ ・・・ ボウル 洗うね! 」
「 ありがとう 」
フランソワーズは背伸びしてシンクの中のボウルやら計量カップを
洗い始めた。
さて その晩は温かいトマト味のポトフ そして・・・
デザートには ―
「 おいし〜〜〜〜〜 !!! 」
「 マリー 君の料理の腕は最高だな 」
父も目を細めている。
「 メルシ ピエール。 あら ジャン? この味は苦手? 」
「 ・・・・ ウマすぎ〜〜 ! じ〜〜っと味わってるんだ〜 」
「 まあ 可笑しなジャン ・・・ 」
「 いや 実際それくらい美味いよ マリー 」
「 あ ママン、 これさ〜 薄切りにしてさっと揚げてほしいな 」
「 え このお芋を? 」
「 それはいいな。 仕上げに軽くぺっぱ― か ビネガー だな 」
「 パパ! それ 最高! 」
「 はいはい じゃあ残りでやってみるわね。 あら ファン?
どう・・・? お芋さんは美味しいかしら
」
「 ・・・ ん ・・・ ! 」
「 おやおや どうやらファンも ママンのスウィート・ポテトに
夢中らしいね。 」
「 ファン ・・・ 美味しいか? 」
「 ・・・ ん! お兄ちゃん! 」
「 じゃ ・・・ ちょびっと兄ちゃんの分、やる。 」
「 きゃわ〜〜〜♪ お兄ちゃん 大好き〜〜〜 」
「 イモが、だろ〜 ほい。 」
「 めるし〜〜〜〜 」
「 ふふ ジャン、 いい兄貴になってきたな 」
「 本当ね。 じゃ、早速、フリッパー 作りましょうね 」
「 わお〜〜 ♪ 」
「 ・・・ おいし〜〜〜 」
「 楽しみにしているよ マリー 」
「 ふふふ・・・ あなた。 お芋って本当に美味しいわね。
これはどこの国から来たのかしら 」
「 う〜ん ・・・ たしかアジアとか南米じゃないかな 」
「 そうなの アジアって魅惑的よねえ ・・・
冬でも暖かいのでしょう? 」
「 ママン。 それは国によるんだよ。
アジアの国でも冬は パリと同じくらい雪が降ったりするって。
地理の時間にならった 」
「 そうなの? ああ 美味しかったわね 」
「 うん! ママン! またつくって〜〜 」
空のお皿を前に 家族四人は皆 ほんわか・・・した気分に浸っていた。
あの頃も それからも。 < ウチ > はいつだって
温かく微笑がどこにも あふれていたわ。
そりゃ たまにはお兄ちゃんとケンカしたり
ママンに叱られたりしたけど ・・・ そんなの
翌日にはすっかり忘れて 皆 普通の顔 してた
皆 家族が大好きだったわ ・・・
そう よ ・・・ それが < ウチ > よね
どんなコトがあっても ウチに帰ってくれば ― 安心できた・・・
パパやママンが天国に召された後も
それは変わらなかったわ ・・・
けど。 だけど。
彼は ジョーは それを 知らない のだ。
彼女が当たり前 と思っていた < ウチ > の雰囲気、温もり。
家族の 温かさ 笑い そして 懐かしさ ・・・そして 思い出
なにより 父の大らかな温かさ、 母の無条件の温もり
兄の一番身近な温さ ・・・ 彼は 経験したことが ない のだ。
それなのに わたし ったら。
きゅ・・・っと唇を噛んだ。
自分自身の感情に振り回され 一番身近かなヒトのことが見えていない。
フランソワーズは 自分自身が情けなかった。
「 もう会えないけど ・・・ わたしには 温かい家族との思い出があるわ。
わたしの宝モノ わたしのココロの中の温かさの源 ・・・
パパの ママンの そして お兄ちゃんの思い出がわたしを
支えてくれてる ・・・ 」
でも。 ジョーには なにもないのだ。
「 それなのに ― ジョー。 いつも笑っているわ。 穏やかに・・・
どうして?? わたしだったら ・・・ 笑うことなんかできない。
ジョーは ・・・ ジョーってヒトは ・・・ !
」
ずきん。 心臓が痛む。
彼女の知っている ジョー は 戦闘中以外はいつだって優しく穏やかな
表情なのだ。 いつだって 微笑むことができる口元なのだ。
「 わたし ・・・ それなのに わたしったら。
自分の感情を押し付けて。 勝手に不機嫌になって ・・・
そんなわたしに ごめんね なんて言ってくれるの よ
ジョー ってひとは ・・・ ! 」
フランソワーズは 自分自身の張り飛ばしたい気分だ。
「 さ・・・っいていね わたしって! 情けない ・・・ 」
悔し涙、というか 口惜し涙が滲んできた。
「 ・・・ くっ。 泣いてる場合じゃないわよ フランソワーズ!
泣いたってなんの解決にもなりゃしないの。 」
きゅ。 エプロンの端っこで涙を拭う。
そう ― 泣いてみても 何にもならないのだ。
やるべきことは これからの新しい展開、を見つけることだ。
「 う〜〜〜ん ・・・? 」
わたしが できること って なに??
ゴシゴシゴシ。 手元のサツマイモをやたら力を込めて洗う。
洗えば 洗うほど 紡錘形の芋の 牡丹色が鮮やかになる。
「 きれい ・・・ ふふふ〜〜 美味しいスウィート・ポテトに
なってね〜〜 」
カタチのいいモノを選んで スチーム鍋に並べた。
「 え・・・っと。 これで ・・・ 」
手元に控えたレシピを見つつガス台に乗せた。
「 火が通ったら 中身を掻き出して〜〜
お砂糖 ミルク 卵 はあるわね。 バター、 バターを
忘れちゃダメですよ? あ・・・シナモンとか 振ったら美味しそうね 」
手早く 材料を計量した。
「 ・・・ ふ〜ん これでいいわ。
あら なんかいい匂いね〜〜〜 」
スチーム鍋から 芋の蒸ける香がキッチンに漂いはじめた。
「 くんくん ・・・ なんか いい感じ♪
あ。 これ ・・・ ウチのキッチンの匂いに似てる ・・・
寒くなると キッチンは最高にいい匂いでいっぱいになってたっけ・・ 」
あ。
そうだわ! そう よ。
ここのキッチンを ウチ にすればいい!
な〜〜んだ 簡単なことじゃない。
そして・・・
「 できるだけ 暖かい思い出を ウチの思い出を
これからだっていいのよ 作ること! ジョーと一緒に! 」
あっちっち。 最高にいい色に蒸し上がったサツマイモを取りだす。
「 きゃ〜〜〜 素敵! 中は うわ・・・ この黄色・・・ってか
これは そうね、金色よ〜〜 いい匂い〜〜〜 」
サツマイモの中身を スプーンで掻き出した。
「 えっと・・・ 裏ごし? ああ マッシュみたいにするのね?
こう・・・? えい えいっ 」
蒸かしたサツマイモを 裏ごししつつ思わず力がはいる。
「 こ〜〜れは美味しそうよ〜〜〜
えっと熱いうちにお砂糖、 バター ミルクちょびっと・・・ 足して
練ります!!! 」
ボウルの中で混ぜあげたフィリング ( 中身 )は それはそれは
魅惑的な色と香りを漂わせる。
「 ん〜〜〜〜 ・・・ ちょこっとお味見 ・・・ いいわよね?
・・・ ん。 きゃ〜〜〜〜〜♪ この味! この味だわ〜〜
ママンが作ってくれた スウィート・ポテトの味よ!! さっいこ〜〜 」
サツマイモの皮の中に フィリングを詰め込む。
「 これにささ・・・っと卵黄を塗ってシナモン振ってレンジ ね。
うん それは食べる前にしましょ。 」
完成させて冷やしておく、というレシピもあったが
今晩は ジョーや博士にどうしても熱々〜〜を 食べて欲しい。
「 うふふ〜〜〜 大成功♪
あとは ジョーの鍋料理、ね。 あ・・・っと炊飯器 onにして
おかなくちゃ ・・・ 」
フランソワーズも もうすっかり < ごはん > に馴染んでいる。
ふんふんふ〜〜〜ん♪ ハナウタ混じりに洗いモノを済ませた。
「 そうだ・・・ アレも作ろうっと。 もしかしたら アレは
お兄ちゃんの創作かも? ウチの最高レシピの一つよね〜〜
きっとジョーも好きなはず☆ 」
彼女は 残りのサツマイモを薄切りにし始めた。
「 カナッペ ・・・というか おつまみ ね。
あ! そうだわ〜〜 ワイン! ジョーにワインも買ってきてもらお 」
急いで手を拭くと、スマホを手に取った。
コトコト コト ・・・
いい匂いの湯気がリビングに漂ってきた。
「 ふ〜ん いい匂い〜〜〜 ジョー〜〜〜
もう晩御飯ですかあ〜〜〜 」
フランソワーズは リビングから声をかける。
「 う〜〜ん もうちょっとかな〜〜 」
「 お腹 空いたわあ〜〜〜〜 」
「 お待ちください。 」
「 ふふふ・・・ フランソワーズ、 ワインを開けようかの 」
博士も にこにこ・・・ 読み止しの本を脇に置いた。
「 あ いいですね〜〜 あのね、じつは おつまみ、作ってあるんです。 」
「 お? そうか?
それでは 食前酒 といくか。 ジョー は 赤を買ってきたのかい 」
「 あのね それが ・・・ よくわからないからって
中間のピンク色のにしたんだ〜って
」
「 ピンク色? ああ ロゼにしたのじゃな。 どれどれ・・・
お これか 」
博士は ワインのラベルを読んでいる。
「 じゃ グラスを出しておきますね。
ジョー〜〜〜 そろそろ いいですかあ〜〜〜 」
「 う ん ・・・ スタンバイしてもらってもいいかも です 」
「 じゃあ ね〜 ではサプライズで〜す 」
「 え なに?? 」
博士とフランソワーズは ワインを持って食卓に現れた。
「 じゃ〜〜ん☆ さっき買ってきてくれたワインよ。 」
「 ジョー いいのを買ってきたなあ 」
「 え・・・ そ そうですか?? ぼく よくわからなくて・・・
なんか ラベルが可愛いなあ〜って思って。 」
「 御飯の前に乾杯しましょ。 ふふふ〜〜 おつまみも作ってあるの 」
「 オツマミ ? 」
「 そうよ なんと サツマイモ で〜〜す 」
ガサリ。 テーブルの上にサツマイモのチップが置かれた。
「 おお ・・・ 美味しそうだなあ 」
「 わ〜〜〜 これも サツマイモ? 」
「 はい♪ 」
カチン。 グラスを合わせ ピンク色のワイン を味わう。
パリ ポリ サツマイモ・チップに手を伸ばす。
「 ・・・ ね! すごく・・・合う ね これ! 」
「 うむ・・・ 絶妙じゃな 」
「 ん〜〜 美味しい〜〜〜 」
「 ねえ ねえ 御飯は まあだ? 」
「 あ どぞ! いい感じだよ〜 」
ジョーの鍋料理は キャベツや人参、春菊なんかの野菜と豆腐、豚肉の鍋 だった。
「 え〜〜〜 本日の鍋は豆乳ベースで〜す 」
「 ほう〜 どれどれ・・・ 」
「 とうにゅう? ミルクみたいね 」
「 ウン。 マイルドな味になるんだ。 トマト味のタレもあるよ〜
」
三人でほかほかの鍋を囲んだ。
「 はふはふ・・・ おいし〜〜わあ〜〜 キャベツ 最高♪ 」
「 うむ うむ・・・このタレもいいなあ〜 」
「 えへ ・・・ ウマ〜〜〜 」
「 ジョー〜〜 お料理、上手ね〜 すご〜い 」
「 あはは 鍋ってさ 切ってつっこんで煮込むだけだもん、あんまし
料理 とはいえないよ〜 」
「 いやいや 味の取り合わせも料理だと思うぞ。
うん・・ これは豚肉によく合うなあ 」
「 ええ 美味しい♪ 」
「 ・・・ ぼくも美味いと思いま〜〜す 」
その日の食卓は いつもに増して賑やかで温かい雰囲気でいっぱいになった。
「 あ〜〜 美味しかった♪ えへ・・ワイン 美味しいね〜 」
「 うむ うむ ・・・ ジョー、このロゼはいいな 」
「 ん〜〜 ジョーってワインに詳しいの? 」
「 え ぜ〜んぜん。 赤と白があるくらいしか知らないんだ。
ピンクのって初めてみて・・・ キレイだな〜〜って思って買ったんだ 」
「 まあ そうなの? このラベル、覚えておくわ。
また飲みたいもの。 」
「 そうじゃな。 うむ・・・地下にワイン・セラー を作るかの。
皆が集まった時などにも便利じゃろ 」
「 あ いいですわね〜〜 この国のワインも美味しいですもの。 」
「 ね・・・ フラン〜〜 ぼく ・・・ あれ、食べたいんだけど・・・ 」
ジョーが つんつん〜〜 彼女のセーターを引っ張った。
「 え? あ はい〜 今 持ってくるわね。
えっと デザートをお持ちしま〜〜す 」
フランソワーズは ぱたぱた・・・ キッチンに行き
直に戻ってきた。
ふわ〜〜〜ん ・・・ 甘い香りが一緒にやってきた。
「 じゃ〜〜ん♪ 収穫の結果で〜す♪ 」
テーブルに デザートのお皿が並んだ。
「 ・・・ うわ〜〜〜 ・・・ 」
「 おお スウィート・ポテト かい 」
「 はい。 里山の途中にある 芋ほり農園 で掘ってきたんです
食前の チップス もそのお芋からつくりました。 どうぞ 」
「 ん〜〜〜〜〜 ま〜〜〜〜〜〜 」
「 うむ・・・ これは優しい味じゃなあ ・・・
スウィーツだが しっかり野菜の味も残っているな 」
「 うふふ・・・ わたし、大好きなんです。 」
「 んま〜〜〜 ぼ ぼくも大好き!! ん〜〜 」
「 なんじゃな 懐かしい味というか うむ 美味い! 」
「 次は ラム酒とか利かせてみます。 少しオトナの味になるかも 」
「 おお それもいいな。 この味も好きじゃよ 」
「 皆 好きだよ あ〜〜〜 これ 好きだあ〜〜 」
「 お鍋も デザートも ほっんと美味しかったわね♪ 」
「 ウン! ああ ウチのご飯、さっいこ〜〜 」
ジョーは ぽんぽん・・・・とお腹を叩いて笑う。
「 ああ ワシもついつい・・・食べ過ぎてしまいそうじゃよ 」
博士も腹を揺すり笑っている。
うふふ ・・・ いいわね ・・・
ウチのご飯 よね〜〜
あ。
そうよ! これから ウチの味 を作ればいいの。
・・・ ジョーと一緒に ・・・ !
「 ええ ウチの味 最高よね 」
フランソワーズも 満面の笑顔で応えるのだった。
そして 数年後 ―
「 わ〜〜〜〜 ここ お芋のおうち? 」
「 ・・・ おか〜さん おいも どこ? 」
チビ達は 農園に入ると自然に駆け出そうとした。
「 こらこら 走るんじゃないよ。 さ お父さんと手をつないで 」
「「 はあい 」」
ジョーは 左右にチビ達を連れて 農園の中を歩いてゆく。
「 ジョー。 どこの畝 ( うね ) なの? 」
先を行くフランソワ―ズが 地図を眺めつつ振り返った。
「 えっと ね・・・ ウチが予約したのは ・・・・39番 だって。
あ そこだあ 」
ジョーは畝に立つ立て札を読んだ。
「 あ そうね。 さあ すぴか すばる ここでお芋さんを
掘るのよ〜〜 」
「「 ここ ? 」」
一家は 黒々とした土を盛り上げた畝の前で 立ち止まった。
「 そうよ〜 このね 土の中にお芋さんがいます。
皆で ほってみつけましょ 」
「 さあ〜〜〜 この茎の先に お芋さんが いるかな〜〜 」
ジョーは イモの地上に出ている部分を引っ張った。
「 ほらほら お父さんのお手伝い して? 」
「 うん! あ〜〜〜 うわあ〜〜 」
「 ・・・ な なんか いる 〜 」
「 え なに〜〜 どこ?? すばる
」
「 あそこ。 つちのなかに なんか いる ・・・ こわい〜〜 」
「 へいきだよっ アタシがたいじする! えいっ 」
「 あ なにしてるんだ すぴか〜 」
「 おと〜さん なんかいる! むし かなあ〜
アタシ、やっつける〜〜 えいっ」
「 あ すぴか 〜〜 お芋さんがいる所を踏んじゃだめだよ 」
ジョーは慌てて娘を抱き上げた。
「 え ・・・ おいもさん ・・・? 」
「 そうだよ〜〜 ほら 土の中にいるんだよ。
そう〜っと掘りだして見ようよ 」
「 うんっ おと〜さん おろして〜〜 すばる、ほるよ! 」
「 う うん ・・・ 」
すばるは 真っ黒な土を前に もじもじしている。
「 ほら すばる。 掘ってみようよ 」
「 ・・・ う うん ・・・ 」
父に促され 一緒にしゃがみ込んだが 手を出さない。
「 すばる〜〜 アタシがほるから ! すばる あつめて 」
「 う うん 」
「 う〜〜〜んしょ えいっ 」
すぴかが力任せに茎をひっぱると
ずるずる〜〜〜 ぼこぼこぼこ ・・・
「 うわあ〜〜〜 すっご〜〜〜い これおいもさん? 」
「 そうだよ すぴか〜 いっぱいだねえ 」
「 アタシ もっとほる! すばる、もってって 」
「 うん。 うんしょ うんしょ
」
すばるも笑顔になって泥だらけの芋を持ち上げた。
「 あらあ〜 今年は豊作ねえ 」
ずっとチビ達を見ていたお母さんも にこにこ・・・芋を眺めている。
「 うん 美味しそうだよ。 しかし 泥の中からこんなに
美味しそうなものが出てくるって すごいよね 」
「 ホントね〜〜 うふふ〜〜 さて このお芋さん、なににしましょうか? 」
「 そりゃ・・・ きみ特製の アレ。 」
「 お任せください。 じゃ 晩ご飯は お願いシマス。 」
「 お〜〜 了解。 豆乳鍋 ならチビ達も食べられるね 」
「 ええ。 なによりわたしが食べたいです。 」
「 あはは ・・・ ぼくはきみの アレ が食べたいです。 」
「「 お芋さん でね 」」
二人は に〜〜んまり、顔を見合わせた。
「 おか〜〜さ〜〜ん おいもさん いっぱい〜〜 」
「 おと〜さ〜ん ごろごろ おいもさん 」
すぴかもすばるも 畝の間で転げまわっている。
「 はいはい いっぱい探してくださいな 」
「 お〜〜 たくさんだなあ 幾つ あるか、数えてごらん 」
「 うん ! 」
ジョーは にこにこ・・・子供達を眺めていたが。
「 なあ ― こんなこと 聞いたら怒るかもしれないけど 」
「 ?? なあに あらたまって・・・? 」
「 あの さ。 きみは ・・・ そのう サイボーグにされて
今の状態になって ・・・ 不幸せかい 」
「 どうして。 」
「 え どうして・・って。 いつか さ・・・ きみ ・・・」
「 ? どうしてそんなこと、聞くの? 」
「 いえ あ〜〜 そのう〜〜 」
「 わたし ジョーに会えたわ。 ジョーに会えなかったら
このコ達とも会えないわ。 どうして不幸せなのよ? 」
「 え ・・・っと まあ結果的にはそうなんだけど ・・・
でも そのう 根本的に、は きみは そのう 不幸かい 」
「 ?? なに 言ってるの ジョー ??
あなたの言ってること、 よくわからないわ 」
「 あ う〜〜ん ・・・ それじゃ 平たく言って
きみ 今 幸せ かな 」
「 当たり前でしょ?
あ こら〜〜〜 すばる、かじっちゃだめよ〜う
生じゃ 食べられませんっ
すぴか! どろんこ遊びしにきたのじゃありませんよ 」
「 おか〜さ〜〜ん おいも〜〜〜 」
「 おいも〜〜〜 うん しょっ ! 」
「 はいはい それじゃ 二人とも・・・ お芋さんをこの袋に
入れてください。 」
「 さあ 〜 すぴか すばる、できるかな〜〜 」
「「 できるっ !! 」」
「 じゃ いっぱいにしたら お父さんと運んでね 」
「 うん! そっち もって すばる。 」
「 うん すぴか。 おと〜さ〜〜ん こっち もって〜〜 」
子供たちが呼んでいる。
「 今 ゆくよ〜
フラン ・・・ よかった、きみ 幸せなんだね。 」
「 ええ。 わたし 最大の最高のお芋を手にいれました。
わたし 今 幸せ。すごく。 」
「 おと〜さ〜〜ん 」
「 はいはい 今 ゆくよ えへへ ああ ぼくもシアワセ だ
あは ・・・ 女性って すっげ〜現実的 なんだなあ・・・ 」
ジョー君。 君だって最高の収穫を手にしているでしょう・・・ ?
************************** Fin.
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Last updated : 11,26,2019.
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************ ひと言 *********
なんか タイトルは 芋 にすればよかった???
ま〜〜 芋掘り は 日本の遠足の定番 ☆
島村ファミリーも 楽しんだことでしょうね (#^.^#)