『 想い出 ほろほろ  ― (1) ―  』 

 

 

 

 

 

 

   バタバタバタ ・・・・  ゴゴゴゴ 〜〜〜

 

 

ぞうきん、まだあるか〜〜   あ アタシ おか〜さんに聞いてくる〜

おと〜さん 僕 もってきた〜

わあ ・・・ この納戸 最低★ なんで夏のマットが押し込めてあるのぉ

・・・ おか〜さん これ なに?

わ! 触っちゃだめよ すぴか。 それ 黴 だから!

かび?    これ ち〜ず につける?

しってる!  ぶる〜ち〜ず っていうんだよ!

へえ ・・・ かってみる?    うん!!! かう!

やめて やめて やめて頂戴〜〜〜

 

 

その日は 朝から大騒ぎ ・・・ いや 本人達はしごく大真面目に

< 大掃除 > に 取り組んでいる。

 

海辺に建つちょっと古めな洋館・ギルモア邸。

そこには 若夫婦とどちらかの親御さんと思われるご老体、

そして  元気な双子のコドモたちが わいわい・がやがや 暮らしている。

 

「 すぴか〜 すばる〜〜 このバケツの水、捨ててきてくれ 

「「 は〜〜い おと〜さん  」」

「 バケツも洗って 手 よ〜〜く洗って。 ウチに入りなさい。

 そろそろ昼ごはんだよ 

「「 うわ〜〜〜い  」」

「 すばる! もっとちゃんと持って ! 」

「 う うん・・・ おも ・・・ 」

「 いい? いっせ〜〜の〜〜 で 持つよ〜 」

「 う うん いっせ〜の〜〜〜 」

 「 せ!  いくよっ 」

「 う うん 」

チビ達は 汚れた水のバケツを うんこらうんこら運んでいった。

 

「 やれやれ・・・ まずは 一階、外側おっけ〜〜 かなあ 」

ジョーは深呼吸をして、ぴかぴかのフレンチ・ドアとか

冬の陽に輝くドアの取っ手を 満足そう〜〜に眺めた。

 

「 わあ 一階、外周り キレイになったわね〜〜 」

フランソワーズが 洗って絞り上げた雑巾を 山ほど運んできた。

「 うん なんとか・・ 」

「 ありがと、嬉しいわ〜〜 」

「 おか〜さん アタシ達もいっぱいそうじしたよ 」

「 僕ね 僕ね          ばけつ 運んだ〜〜 」

チビ達は 母に纏わりつく。

「 はいはい ありがとうね

 さ あなた達 手を洗ってらっしゃい お昼にしましょ 

「「 わあ〜〜〜い 」」

 

     ドタバタ   トトトト 〜〜

 

チビ達は 歓声をあげバス・ルームへ駆けていった。

「 ちゃんと石鹸使って洗うのよ〜  ウガイもね! 」

母の声が聞こえたかどうか ・・・ どうもアヤシイ。

 

「 ああ もう昼かあ 」

「 ええ あ わたし 雑巾乾しておくから・・・

 ジョー、二人にランチ、食べさせてね 」

「 おっけ〜〜 」

「 それと・・・  ねえ 屋根裏の掃除、頼める 」

「 え ・・・ あそこって物置だろう? 」

「 そうよ。 だから よ。 」

「 ?? 別に普段使う部屋じゃないから 掃除は 」

「 いつも使わないからこそ よ!

 年に一回は きっちり掃除して 必要ないものは捨てなくちゃ 」

「 あ まあ ・・・ ね 」

「 ジョー あなたが見て 要らないモノ、まとめておいてくださる。 」

「 いいけど・・・ あそこ、使わない家具とかもあったよね? 」

「 ええ 」

「 壊れてなければ 捨てるよかリサイクルだよ

 町のセンターに持ってゆくね 」

「 まあ ありがとう!  

 ふふふ〜〜 今晩は 皆の好きなポトフよ♪ 

「 わお♪  それじゃ 頑張って片してくるか!  」

「 ああ その前にランチ どうぞ? 

 ジョーの好きな パンケーキよ  スクランブル・エッグと

 ソーセージ を乗せてね。  

「 わは♪ やた〜〜〜〜 チビ達と一緒にいただくよ 」

「 ふふふ  今 オーブンに入っているから

 皆で 焼きたて熱々〜 を頂きましょうね 

 さささっと雑巾 乾してくるから 」  

 

     う わ〜〜〜〜い ♪♪ 手、洗ったよ〜〜

 

ドタバタ  だだだだだ  〜〜 あはははは〜〜〜 えへへへ

子供たちが 駆け戻ってきた。

「 綺麗に洗ったか? それじゃ キッチンに ご〜〜♪ 」

「「 わい〜〜 」」

「 はい〜〜 それじゃ 皆の分のカップと・・・

 お皿をだして 」

お母さんも 戻ってきた。

「 は〜〜い くんくんくん〜〜 いいにおい〜〜〜 

「 ・・・ くんくん ・・・ ホントだあ〜〜

 ねえ おか〜さん 僕 つくりたい ぱんけ〜き! 」

「 そうね こんど一緒に焼きましょうね。 

 ジョー 今日のはね クルミとレーズンが入っているの。

 如何かしら 」

「 ・・・ ん 〜〜〜  最高!

 午後からの作業へのエネルギー 十分 さ 」

「 アタシ おか〜さんの すくらんぶるえっぐ 大好き! 

「 むぐむぐむぐ〜〜 ぼ 僕もぉ〜〜 だいすき! 

「 ふふふ すぴかさんのには マヨネーズとお醤油がちょこっと。

 すばる君のには お砂糖がちょこっと 」

「 あ〜〜 おいし〜〜  おか〜さん お掃除、つぎはどこ? 」

「 すぴかさん お昼の後はね、お使い、頼んでいいかしら 」

「 ・・・ え  なに 」

「 商店街まで行って買い出し してきて?

 はいメモ と お金。 」

「 ・・・ ん ・・・・ わあった ・・・

 すばる〜〜〜〜〜  自転車で行かない? 」

「 いいよ〜〜〜  ねえ おと〜さん 僕 ちゃんとのれるんだ〜 」

「 そうか そうか スゴイね すばる〜〜 

「 おと〜さんもいっしょにいこ! おつかい〜〜 」

「 あ ごめん。 お父さんは 屋根裏の掃除 って任務があるんだ 」

「 え〜〜  やねうら って あの三階のへや? 」

「 そうだよ 」

「 あ〜 そうなんだ ・・・・ 」

「 ?  すぴかも手伝ってくれるかな〜〜 

お父さん子のすぴかだからな〜、 と ジョーは かな〜〜り期待して聞いたのだが。

「 ・・・ あ   う〜〜ん ・・・・? 

 すばる〜〜 おと〜さんとそうじ する? 」

「 へ? 」

「 あの 三階のへや だって 

「 ・・・ やねうら?  ・・・ う〜〜ん ・・・  

二人とも なにやら口の中でもごもご言っている。

「 どうした、二人とも? 」

「 ・・・ ねえ すぴかぁ・・・ 〜しょん ちゃん  いるかなあ 」

「 さあ ・・・ わかんない  けど 」

「 ・・・ けどぉ 

「 すばる。  おつかい 行こ!  おか〜さんのお使い 」

「 ん! すぴか。 自転車で行こ!  

「 おっけ〜〜〜  じゃね おと〜さん 

「 おと〜さん じゃねぇ〜〜 」

姉弟は ひらひら・・・手を振って出て行ってしまった。

 

「 ?? なんだあ〜〜 アイツら ・・・ 

 屋根裏部屋 気に入らないのかなあ ?  まあなあ ・・・

 埃だらけだろうから  コドモにはつまらないか 」

ジョ―は こそ・・・・っとため息をつき 雑巾と洗剤をバケツに入れた。

「 じゃあ 屋根裏、片してくる 」

「 お願いね  あ クリーナー 持っていった方がいいわ 」

「 あ そうだねえ わかった 」

あまり軽くない足取りで 彼は三階へと昇っていった。

 

    ・・・ なんなんだよ すぴかもすばるも。

    いきなり よそよそしくなっちまってさ

 

    ふん ・・・ いいさ とっとと済ませちまお

    午後はのんびり 映画でもみるか〜〜

 

彼は 子供たちの < 不思議なおともだち > を よく知らない。

出会ったこともあるのだが ジョーは彼女のことを すぴかの友達の一人・・と思い込んでいた。    

 

 

   トントン トン ・・・  ガチャ。  キ  ィ ・・・

 

カギなどかけてない、その部屋のドアは 少しだけ重く、軋りつつ

開いた。

 

「 ・・・ うわ ・・・ 」

 

天窓から差し込む冬の陽に ホコリが舞い踊っているのが見えた。

この部屋は もともと研究室の予備室であり 当初はそれなりの

設備を揃えていた。

しかし ほとんど使われずただの空き部屋となり・・・

ジョー達が新居を持ち そして チビッ子台風 が出現してからは ―

 

  う〜〜ん このカウチ、今は必要ないわね 三階に運んでくれる?

 

  なあ フロア・ランプ、倒れたら危ないだろ? 上にあげるね 

 

  あ〜〜 もうベビー・ベッドじゃ窮屈ね! 仕舞いましょう

 

  ベビー・バスってなんで二個もあるんだ? 

  それに もう普通の浴槽で大丈夫だよ、バケツにする?

  しないわ。 大きすぎ。 

  あ わんこ、飼ったらワンコ用とか?

  ・・・ 当分 無理です。 

  だ  な。  三階にしまってくる

 

  カーペット、新調しようなあ。 今までのは ・・・ 納戸じゃ。

 

などなどなど。  

空き部屋だった 屋根裏 には 次第に <荷物> が増えてゆき。

 ― そして 久々にドアを開け放ってみれば

 

「 だは ・・・ こりゃガラクタ置き場 だなあ 」

 

壁際には衣装箪笥やらクローゼットが並び 僅かに空間のある中央には

古びたソファが捏ねてある。 

勿論、というか 当然 どこもかしこも ホコリ ホコリ ホコリの山。

 

「 うえっぷ・・ あ〜〜 もう ささっと掃除だけ するかあ・・・ 」

ジョーは 何気にソファに座り周囲を見回した。

「 ん? あ〜〜 古い雑誌まで〜〜  資源ゴミに出せばいいのに・・・

 うん?  わあ〜〜〜 これ とってあるんだ !? 」

たまたま 見つけてしまった古雑誌に 彼は夢中になった。

どっかりソファに腰を落ちつけ読みふけるうちにいつしか

ジョーの頭は 前に垂れていった ・・・

 

  ― カックン   バサ。

 

身体が倒れ 膝から読み止しの雑誌が床に落ち ― その音に飛び起きた。

 

「 ・・・ わ?! ・・・あ やっべ〜〜〜 寝ちゃったんだ・・  」

 

一瞬 < ココは何処? ワタシはだあれ > 状態になったが

なんとか この世に戻ってきた。

 

「 え ・・・ 今 何時・・・ あ スマホ 置いてきちまった・・ 」

天井を見上げれば なんとなく周囲は暗くなってきている。

ここは天窓しかないので もともとあまり明るくはないのだが。

「 やべ〜〜〜  この光線の具合だと ・・・もう夕方か

 掃除! やってないよ〜〜  マジやべ!

 う〜〜〜 ・・・ 今晩 徹夜しても終わらせる! 」

いやいや この時間なら晩御飯の準備や 子供たちの相手もしなければ・・・と

彼は焦る気持ちのまま とにかく慌てて屋根裏から飛び出した。

 

  バタン ・・・     

 

「 フラン〜〜  ごめん〜〜 ・・・ あ  れ ・・・ 

 

目の前には 見慣れたはずの三階の廊下が ある。

日常的に使っている場所ではないが 自宅内の馴染んだ場所 のはずだ。

彼の細君は古風な綺麗好きなので 使わない場所もきちんと

掃除をしている。  それが ― 

 

      廊下の隅には ホコリが溜まっている。

      それも かなり分厚い。

 

     ・・・え?  

     いつもキレイに掃除されているのに・・・

 

     そうだよ、木曜にクリスマス グッズをしまったとき

     ついでに 廊下も掃除したじゃん  この ぼくが。

 

     ・・・ でも このホコリ・・・

     昨日 今日のって感じじゃない ぞ?

 

さらに目を凝らして見れば 廊下の絨毯は窓側の部分が色褪せている。

 

     この窓 ・・・ 確か紫外線避け してあったよなあ?

     なんだってこんなに色が変わってるんだ?

 

ジョーは 呆然と突っ立ったままだ。

たしかにここはウチなのだが ― 何というか空気が違う。

それにウチの中 が妙に し ・・・ んとしているのだ。

 

ジョーが暮らしている < ウチ > は 年がら年中

 

  これ も〜らった!  やだ〜 僕のぉ〜〜

  アタシのだも〜〜ん はやいもん勝ち♪

  僕のぉ〜〜〜  僕のぉ〜

  アタシの!  だめ。 

  わわ!  いった〜〜〜  すぴかがぶったア〜〜

  ぶってなんかないじゃん すばるがかってに転んだんじゃん!

 

  おか〜さん おか〜さん おか〜〜〜さ〜〜ん

 

  そんなに怒鳴らない。 ちゃんとお話 してごらんなさい?

 

  うっく うっく  え〜〜〜ん え〜〜〜・・・

 

  ただいまあ〜〜

 

  あ! おと〜さん おと〜〜さ〜〜〜ん  わあん 

 

  なんだ どうした すぴか?

 

  おと〜さん おと〜さ〜〜〜ん  ・・・

 

などなどなど わいわいがやがや・・・賑やか、というか ウルサイ はず。

チビ達が留守でも 家にいる誰かが ごそごそ・がたがた

活動している。

 

     ?  な  んか  ちがう?

     あ れ・・・ なんか すげ〜静か・・・

 

     音 ・・・ あ どこかで時計の音がするけど

     他は  外の音 だよ?

 

     樹々が揺れる音・・・ 北風の季節だものなあ

     ・・・ ああ 海鳥が鳴いてる ・・・

     波の音も  うん ちゃんと聞こえる。

 

 

     だけど。  ウチの中が  静かすぎる  

 

 

        ここ  ・・・ どこ だ?

 

― 確かに < ここ > は たったさっきまで彼がいた場所と

 なにかが違う。 

空気の肌触りが違う と言うカンジなのだろうか。

 

「 ・・・ ・・・ 」

 

     コツ コツ コツ ・・・

 

ジョーは 四方に細心の注意を払いつつ そろそろと階下に降りていった。

そして ―  全く人気のない邸内を巡り始めた。

 

リビング は もちろん人影はなくソファやカウチなどの家具には

覆いが掛けてある。

床は やはり埃をかぶっていた。

 

「 ・・・? 

 

壁伝いに そろそろと暖炉に近寄った。

かなり前に火を焚いたのだろう、という焦げ跡があるだけだ。

やはりホコリが溜まっていた。

 

「 使ってない それも 長期間ってこと か?

 ・・・ あ? 」

 

ふと 気づけば暖炉の上には たくさんの写真立てが並んでいた。

それに目をやった途端に ジョーの顔が綻んだ。

 

「 え あ これ、 皆の ウチの家族写真じゃないか〜〜

 ひゃあ〜〜 こんなの、撮ってたっけ??

 わ ・・・ かっわいい〜〜〜  なあ 」

 

ひとつひとつ にこにこ・・・ 彼は眺めていた。

「 あは なあんだ やっぱここはウチ だよな

 ・・・ あ。  れ ・・・ 」

不意に 彼の顔が強張った。

 

「 確かにこれ ぼく達の写真だけど。

 これ ・・・ 皆 デジタルとアルバムにしてあるはずだ ・・・

 一枚 一枚 写真立てになんていれてない ・・・! 

 

始めはにこにこしていたが ジョーの顔はどんどん曇ってゆく。

息を詰める思いで そろそろと見てゆけば ―

 

  ジョーとフランのツーショット。 柔らかく微笑あう二人。

 

  結婚式 カチコチのジョー そして 涙ぐむフランソワーズ

 

  両手に双子を抱いて 誇らし気なジョー

  フランソワーズの笑みは 最高だ

 

懐かしい想いと なにかすすす・・・っと背筋が寒い感覚に

彼の足取りは ますます重くなってゆく。

 

「 ・・・ あ。 」

 

暖炉の上、その中央には一際大きなフレームが あった。

それは比較的新しいと思われる写真で ―

 

    どこか見覚えのある老年の姉と弟が門の前に立っている。

 

写真の下の方には     さようなら 長い間ありがとう!  

 

                            と手書きの文字が見えた。

 

 

    え ・・・? 今は  いつ なんだ・・・?

 

 

Last updated : 12,29,2020.                 index     /    next

 

 

************  途中ですが

すみません すみません  短くてすみません〜〜 <m(__)m>

こんなハナシ 年内で終わらせるべきなのに・・・

年を跨ぎたくなかったよう (;O;)

・・・ チカラ尽きました ・・・  続きます すみません★