『 おやすみの日 ― (2) ― 』
「 しゅっちょう? お父さん ・・・ ? 」
「 ・・・ おとうさん おでかけ? 」
色違いの瞳が まっすぐにフランソワーズに注がれた。
疑いとか迷いとか余計なモノは微塵もなく、ただ ただ じっと見上げている。
・・・ ああ なんて ・・・ なんて真っ直ぐな視線 ・・・
いつでもこんな風にいられるって 素晴らしいわね
フランソワーズは ぐっと気持ちを引き締め子供たちの眼差しを受け止めた。
「 ええ そうなのよ。 ほら・・・ この前の週末も出張があったでしょ?
あの時と同じ。 」
「 ふ〜〜ん ・・・ おしゃしん、とりにゆくの? 」
「 あ〜〜 れーす?? えふ・わん のれーすのしゅざい ? 」
「 今度は車のレースではないけれど ・・・ そうね 同じようなお仕事なの。
お父さんしかできないとっても大切なお仕事ですって。 」
「 ふ〜〜ん 」
「 たいせつな おしごと? 」
「 だから いってらっしゃ〜い して。 いいコでお留守番していましょうね。 」
「 ・・・ つ〜〜まんないな〜〜〜 」
「 おじいちゃま は? おじいちゃまもおでかけ? 」
すぴかは もうすでに少しご機嫌がナナメだ、
「 おじいちゃまはちゃんとお家にいらっしゃいますよ。
おじいちゃまとお母さんと ・・・ お留守番してましょ。
お父さんが帰っていらしたら < ほうこく > 出来るコト、な〜にかなあ? 」
「 ・・・ アタシ ・・・ あ! かだんのひまわり! お水 ちゃんとあげる! 」
「 僕ぅ ・・・ う〜〜〜 ・・・ あ! せみのぬけがら あつめる! 」
「 わあ〜 二人ともスゴイなあ〜 お母さんも楽しみにしているわね。 」
「 お父さんも だぞ〜〜 」
二人の後ろから 楽しそう〜な声が聞こえた。
「 !? あ〜〜〜 おと〜さん♪ おっかえりなさ〜〜い 」
「 おかえりなさ〜〜〜い♪ 」
子供たちはたちまちご機嫌ちゃんになり父親に飛びついた。
「 わっほ〜〜〜 あはは 重い〜〜〜よ〜〜〜〜 そうれ〜〜〜 」
ジョーはぽ〜ん・・・・と娘を抱き上げると肩車をした。
「 わきゃ〜〜〜 えへへ〜〜 ♪ たか〜〜〜い〜〜〜 」
「 そうれ すばるも〜〜 」
「 ぼ 僕ぅ・・・ たかくなくていい ・・・ 」
「 ほい〜〜 よっと ! 」
「 わあ〜〜い♪ らくちんだ〜〜い 」
すばるはお父さんの腕に座ってにこにこしている。
「 な? お父さんも〜 すぴかとすばるの ほうこく を楽しみしているからね〜 」
「 ウン! おとうさんも〜〜 しゅっちょう、がんばって〜〜 」
「 がんばって〜〜 おと〜さ〜ん 」
「 うん。 必ずちゃんと戻ってくる。 必ず。」
「 ・・・ ジョー ・・・! そうよ、約束よ! 」
「 ああ 約束する。 」
「 あは? おとうさんってば〜 お母さんとゆびきり する? 」
すぴかが 父と母の会話の調子に なにか を感じ取ったのかもしれない。
! ・・・ いけないな。 子供たちに覚らせては ・・・
ああ このコは本当に敏感なのね
両親はさっと目と目で頷き合い、すぐにいつもの笑顔になった。
「 そ〜〜ね〜〜 お母さんは お土産 指切り、しようかしら。 」
「 あは じゃあ お父さんは 忘れません〜〜 指切りだな〜 」
「 ゆびきり ゆびきり〜〜 げんまん、だよ、お父さん! 」
「 ゆ〜びきりげんまん ・・・ はりせんぼんの〜ます! 」
あははは〜〜 うふふふ〜〜 子供たちはいつもの笑顔になった。
よかった ・・・!
ええ ・・・ 気をつけないと ね
ウン。 留守を頼む。
了解。 任せて。 ジョーは <おしごと> に集中して。
サンキュ。
目と目を合わせただけでも、そこは結婚生活ゆうに7年をこえる夫婦、
しっかり意志の疎通はできている。
その日の晩御飯は < いつもと同じ >。
いつもと同じに ― いつものお休みの日みたいに 家族みんなで食卓を囲んだ。
「「 いっただっきま〜〜す♪ 」」
子供たちは 父親が一緒なのでご機嫌ちゃんでにぎやかな晩御飯となった。
「 ね〜ね〜〜 おとうさん〜〜 アタシね がっこうでね〜〜 」
「 おとうさ〜〜ん 僕ね 僕ね 〜〜 」
「 うん? ほらほら・・・ すぴか。 ご飯粒がほっぺにくっついてるぞ〜
すばる。 お口の中にモノをいれたままおしゃべりしない〜〜 」
「 う ・・・ ん ・・・ あは ホントだあ〜 」
「 むぐ! ・・・ んん〜〜 たべた! 」
「 よ〜し。 じゃあ ご飯をちゃんと食べてからおしゃべりしようね 」
「 ほうら すぴかさんの好きな なっとうサラダ よ? 」
「 うん♪ お父さんもすきだよね〜〜〜 」
「 ああ 大好きさ。 これはなあ〜 ウチでしか食べられないからなあ〜 」
「 うふふ・・・たくさん食べてね、ジョー、すぴか。
あら? すばるクン? お豆さんが残ってますよ? 好きでしょ? 」
「 これ ! いっちばんさいごにたべるの ! 」
「 あはは ・・・ すばるは好きなモノは最後に食べるタイプか〜〜 」
「 ウン♪ たのしみにとっとくの〜〜 」
「 アタシは! いっちばんにたべるも〜〜ん むぐ・・ 」
「 そうか そうか ・・・ 煮豆、上手になったねえ フラン ? 」
「 ありがと、ジョー。 これってお菓子みたいよねえ〜 最初はびっくりしたけど・・・」
「 ぼく、チビのころから好きなんだよねえ なんか懐かしい味がするんだ。 」
「 そう ・・・たくさん煮たから・・・ 」
「 うん ・・・ 」
お父さんとお母さんは食卓越しにじ〜〜っと見つめあっていたが ― これもよくあること
っていうか〜 いつものコトなので子供たちはたいして気にしていなかった。
晩御飯は 賑やかに楽しく終わった。
その夜 ― 子供たちがいつもなら お休みなさい を言うころ ・・・
すぴかとすばるはお玄関に立っていた。
二人とも眠くてすこしぼ〜〜っとしている。
「 それじゃ いってくるから 」
お父さんは いつもの < しゅっちょう > の時と同じバッグをもって
お玄関に立っている。
「「 いってらっしゃ〜い おとうさん 」」
子供たちは いつもの < しゅっちょう > の時と同じにお見送りする。
お父さんはバイバイ・・・ って手を振って出かけてゆくのだ ― いつも は。
けど。 その日は ・・・
さっきからお母さんは じ〜っと じ〜っと お父さんを見つめてばかりいる。
すごく真剣な顔で。
そして
お父さんは すぴか と すばる を 順番にきゅうう〜って 抱っこした。
きゅうう〜 … って。
「「 ・・・ あは? 」」
それから お父さんはいつもと同じに バイバイ・・・って手を振って
お玄関を出ていった。
「 ・・・ さ。 二人とも、ベッドに入りましょうね。 」
お母さんはいつもと同じにすぴかとすばるの手を取った ― けど。
? おかあさん ・・・ わらってないよ?
おか〜さん にこ・・って して
なんかちがうな〜〜 いつもと同じじゃないな〜〜って思ったけれど
そんな風に言ったらいけない って気がして 二人とも黙って子供部屋に戻った。
― なんか いつもとちがうよね? なんとなく ・・・ でも なに??
すぴかもすばるも お腹の中にそんな言葉を飲みこんだまま眠ってしまった。
お父さんが < しゅっちょう > で お留守の間
お母さんはいつもと同じ … っぽくしてた
けど。
「 おか〜さ〜〜ん おはよ〜〜〜 」
休日でもいつでも すぴかが一番早くリビングに降りてくる。
「 はい おはよう、すぴかさん。 」
「 ね〜〜〜 おか〜さ〜ん アタシ〜〜〜 ぴざ たべたい〜〜〜
おひるご飯 ぴざ にしてえ 」
「 え? お昼ご飯にはサンドイッチ、作りますよ? 」
「 ・・・ アタシ〜〜 ぴざ〜 たべたいのぉ〜 お父さんがおるすだとさ〜
ぴざ たのんでくれるじゃ〜ん 」
「 ・・・ でも今日はサンドイッチにして? すぴかさんの好きなチキン・サンドに
するわ? マスタードも塗ってあげるから 」
「 ・・・ え ちきん ・ さんど? うわ♪ それならサンドイッチでいいや〜 」
どたどたどた・・・ すばるがはだしで駆けこんできた。
「 おか〜さん 僕ぅ〜〜 ますたーど ヤだあ〜〜 からいぃ〜〜〜 」
「 あら すばる、お早う 」
「 お おはよ・・・ ね〜〜 おか〜さん、ますたーどはぁ〜〜 」
「 すばるにはね、 いりたまごサンド。 どう? 」
「 おさとう いれて! 」
「 オッケー。 」
「 わぁ〜〜〜い♪ すぴか〜〜 さんどいっち だって〜〜〜 」
「 チキン・サンド だも〜〜〜ん 」
「 いりたまごサンド だも〜〜ん 」
わあ〜〜〜い〜〜 子供たちは朝から歓声を上げている。
「 ・・・ お昼ご飯、 楽しみにしててね。 あんまりお部屋の中で騒がないこと。」
「 ・・・ は〜〜い ・・・ 」
・・・ ヘンなの〜〜おかあさん さわいでないよね?
おかあさん ・・・ ちょっとコワい かも ・・・
ホントのことを言うと ―
いつもの お父さんがお泊まりでお留守 の時、お母さんはニコニコしている。
「 ふふふ・・・・ すぴか すばる〜〜 お昼はなにがいい? 」
「 え〜〜とぉ・・・ う〜〜ん ・・・ 」
「 えっと ・・・ 」
子供たちはワクワクしちゃってすぐには答えられない。
「 うふふふ ・・・ それじゃあね〜 お母さんからのていあん ね。
今日のお昼ご飯には 皆の大好きなピザを注文しよっかな〜〜って思うんだけど どう?」
「 え〜〜〜 ぴざ!!? 」
「 ぴざ〜〜〜 」
「 そ。 え〜と さんせいの人、手 あげてくださ〜〜〜い 」
「「 は〜〜〜い!! 」」
「 ありがとうございます。 それじゃ 〜〜っと どのピザにしよっかな〜
ほら 一緒に見てちょうだいな。 」
「 わ〜〜〜 アタシね アタシね〜〜〜 」
「 僕ぅ〜〜〜 ぱいなっぷる! 」
二人はお母さんが広げてくれたいろ〜んな写真が印刷してあるメニュウに顔をつっこんだ。
「 え〜〜とお〜〜 すばる〜〜 じゃま。 」
「 ( ごちん ) いった〜〜 すぴかこそ じゃま! 」
「 ほらほら ・・・ 仲良く一緒に見ましょう? お母さんも見たいわ 」
「 う ・・ん ・・・ 」
「 僕ね 僕ね〜〜〜〜 」
わいわい きゃわきゃわ〜〜〜騒いで やっと注文が決まったりする。
そして その日のお昼ご飯は皆でおいし〜〜くピザを食べる。
「 おいし〜〜〜〜 アタシ これ すき〜 」
「 まあ すぴか、 アンチョビってオトナの味なのよ? 」
「 むぐ むぐ むぐ〜〜 おいし〜〜もん♪ 」
「 僕も! おいし〜〜 」
「 ふふふ すばるはピザならコーンとかトマトとかたくさん食べるのね。 」
「 むぐ むぐ むぐ〜〜 おいし〜もん♪ 」
「 よかったわ。 お母さんはね〜 マルゲリータが好きなの。 」
「 うむ うむ ・・・久々にこういう味も美味いのう・・・ 」
博士もなかなかお気に入りな様子だ。
「 うふふ・・・ たまには楽しいし美味しいですよねえ ・・・
本当は楽ちんだからもっと利用したいんですけど・・・ ジョーがねえ ・・・ 」
「 ほう? アイツはピザは好かんのか?? あの年代にしては珍しいのう 」
「 いえ ・・・ ピザがどうの、じゃなくて。 休日のご飯はウチで手作りのものを
食べたいんですって。 お握りでもいいから って
」
少し困った顔のフランソワーズに 博士も苦笑で応えた。
「 な〜るほどのう・・・ アイツ、なかなか面倒くさいヤツじゃったのだな 」
「 ええ ・・・ ですから留守の時にはって思って。 」
「 うむ うむ 大いに利用してお前も自分の時間を楽しみなさい、フランソワーズ。
さあ〜〜 チビさんたち? 熱々のうちにたくさん食べようなあ 」
「 ( むぐ〜〜〜 ) 」
「 ウン! むぐむぐ 」
お父さんがいないのは淋しいし 一緒に遊べなくてツマンナイけど ― でも お母さんと
おじいちゃまがいるから 二人はいつもと同じに楽しくお休みの日 を過ごすのだ。
けど。 こんどの お父さんのお留守 は・・・
いつもとおんなじ なんかじゃ全然ない。
「 さあ お昼にしましょう。 すぴか すばる〜 手を洗ってきてね 」
お母さんはにこにこしてそう言った。
「「 は〜〜い 」」
子供たちは どたばた・・・一緒にバス・ルームへ駆けて行った。
「 おひる〜〜 ぴざ かなあ〜〜 」
石鹸を手にとってにゅるにゅる〜しつつ すばるはにこにこしている。
「 ぶっぶ〜〜! さんどいっちって 今朝おかあさん言ったじゃん? 」
「 え そう?? でも〜 おとうさんがおるすのおやすみの日ってさあ〜 」
「 だから〜 きょうはさんどいっちって。 お母さんが 」
「 ふ〜〜ん ・・・ 僕 ぴざ たべたいな〜 さんどいっちもすきだけど 」
「 アタシだって ぴざ たべたい! けど さ 」
「 おじいちゃまにおねがい してみる〜〜 僕! 」
「 あ そだね〜〜 アタシ 先にゆくね〜〜 」
「 あ〜〜 まって まって〜〜 」
水滴を跳ね飛ばしつつ 二人は戻ってきた。
「 ちゃんと洗えた ? 」
「「 うん! 」」
「 ・・・ あらら ・・・ すばる、ちゃんと拭いて来なくちゃ・・・ 」
「 う〜〜 おかあさん おじいちゃまは? 」
すばるは母に手を拭いてもらいつつ きょろきょろリビングを見回している。
「 おじいちゃま ごはんで〜すって よんでくるね、アタシ! 」
すぴかはもう駆けだそうとしている。
「 あ! いいの いいの、すぴか。 おじいちゃまはね お仕事が忙しくて
お部屋でお昼たべるって ・・・ 」
「 え〜〜〜〜 お部屋でぇ???? お部屋で ごはん?? 」
「 おしごと? おじいちゃまのおしごと? 」
「 そうなんですって。 それも難しいお仕事なの。 だからあなた達も
騒いだりしないで・・・ 静かに遊んでね。 」
「 う うん ・・・ おしごと かあ〜〜 」
「 じゃ アタシ! おひるごはん、もってく! おじいちゃまのお部屋に 」
「 ・・・ え っと それじゃ お母さんと一緒にもってゆきましょ?
ね それならいいでしょう? 」
「 う ・・・ うん 」
なんでも自分一人でやりたいすぴかは 不承不承それでもなんとかこっくり頷いた。
「 わ〜〜 僕も〜〜 僕もおじいちゃまのとこにもってく〜〜 」
なんでも一緒にやりたいすばるは 大喜びで母と姉の側にひっついた。
「 じゃ 皆で届けましょう。 すぴかさん、ちょっと重いけど ・・・ サンドイッチの
お皿 持てるかな? 」
「 もてる! 」
「 じゃ お願いね。 」
「 僕も 僕も〜〜〜 」
「 はい すばるクンはね デザートのオレンジのお皿。 まっすぐ平にもってゆけるかな? 」
「 できる〜〜〜 おかあさんは? 」
「 お母さんは お茶のポットとカップをもってゆきます。 二人ともいい? 」
「「 うん! 」」
そろそろ・・・摺り足で歩く子供たちを先に、< お届け隊 > は 博士の書斎の前まで
なんとか無事に到着した。
「 おじ〜〜ちゃ 」
「 あ し〜〜〜〜〜・・・! 静かに ね。 ムズカシイお仕事、していらっしゃるの。
だから ね ・・・ こういう風に ・・・ とんとん ・・・って? 」
「 はあい。 とんとん? 」
「 とんとん〜〜〜〜〜 」
なあにかなああ〜〜? お部屋の中からはすぐにおじいちゃまの声が聞こえて・・・
コト。 書斎のドアは静かに開いた。
「 おやあ??? これは これは。 皆一緒になんのご用かな? 」
博士が大仰に驚いてみせている。
ありがとうございます ・・・
追跡調査と 随時連絡で集中していらっしゃるのに ・・・
フランソワーズはそっと目礼した。
いやいや ・・・ 心が癒される・・・
ところで 安心をし。
ジョーは勿論、 全員無事にミッション遂行中じゃ
博士は大きくうなずき返してくれた。
「 おじいちゃま〜〜〜 おひるごはん! 」
「 おひるごはん! 」
子供たちは そ・・・っと抱えてきた皿を差し出す。
「 ?? おお〜〜〜 これはこれは ・・・ なんと美味しそうな〜〜〜
ありがとうよ、 すぴか すばる 〜 」
「 おじいちゃま〜〜〜 はやくおしごと、おわらせてね〜〜
そんでもって すぴかたちといっしょにごはん たべよ 」
「 そうじゃなあ ・・・ もうちょっと待っていておくれ・・・
うむ きっとお父さんもそろそろ帰ってくると思うしな。 」
「 え〜〜〜 ほんとう? お休みの後じゃないの? 」
「 うむ ・・・ はっきりとは言えんがな。 まあ 楽しみに待っておいで。 」
「 ウン ・・・ 」
「 おじ〜ちゃま〜〜 でんしゃのおはなし、して。 僕ね えきのじこくひょう、
よめるようになったんだ〜 」
「 お? それは凄いなあ すばる。 うん? ああ すまんね ちょっと 」
博士はぱっと真顔になって書斎の中に引っ込んでしまった。
「 さあ〜〜 二人とも。 お仕事のお邪魔をしないようにしましょうね。
おじいちゃまにお昼ご飯も届けたし ・・・ 皆もお昼にしましょ。 」
「 う ・・・ん ・・ 」
「 僕ぅ〜〜 おじいちゃまとお〜 」
「 あら お邪魔をしたらお仕事が終わるのがどんどん遅くなってしまうかも よ?
あなた達はちゃんとお昼ご飯を食べて・・・ あ 二人とも宿題は? 」
「「 もう 終わってるもん ! 」」
「 まあ〜〜 えらいわねえ・・・ それじゃ えっと・・・・
あ アニメ、見てもいいわよ? 」
「 ・・・ 日曜日って〜〜 アタシの見たいの、やってな〜いんだも〜ん 」
「 僕 ・・・ あ DVD、みたい! いい おかあさん 」
「 ・・・ いいわ。 今日は特別。 その代わりお昼ご飯をちゃんと食べて
二人で仲良く見ること。 大騒ぎはダメよ ? 」
「「 わ〜〜〜〜〜い !! 」」
「 あ ほらっ し〜ずかに〜〜〜 」
「 「 は〜〜〜い! 」」
お返事だけは いいおへんじ を残し、子供達はどたどた・・・リビングに駆けて行ってしまった。
もう! ・・・ ああ でもしょうがないわよねえ・・・
元気いっぱい はいいことですもの
フランソワーズはそっとため息をついた。
「 ・・・ フランソワーズ? 」
「 はい?? 」
後ろでほんの少し書斎のドアが開いた。
「 博士? あの ・・・?! 」
「 ああ 安心しなさい。 ・・・ 今晩にも帰ってこられそう だと。 」
「 え! 連絡が? 」
「 うむ。 」
「 ― それで ・・・? 」
「 大丈夫。 みんな 無事じゃ。 」
「 よかった ・・・・!!! 」
「 うむ うむ ・・・ さあ チビさん達のところへ行きなさい。 」
「 はい! 」
たたたた ・・・! 軽やかな足音が 遠ざかってゆく。
「 ふふふ ・・・ 踊っているようじゃな。 さっきまでとは別人・・・
まあ 当然じゃな。 う〜〜ん ・・ワシも少し休むとするか。 」
ぼわぼわ・・・ アクビをすると、博士もゆっくりと書斎の中に戻った。
その日のかなりもう遅い時間 ―
「 ― ただいま 〜〜 」
お玄関が ゆっくりと開いた。
「 すぴか すばる? 」
ソファでうとうとしていた子供たちに フランソワーズはそっと肩をゆすった。
「 ・・・ むにゃ ・・・? 」
「 く〜〜〜 」
「 ねえ すぴか すばる? ほら ・・・ 」
「 ・・・ もう あさ ・・・? 」
「 く〜〜〜 」
「 ううん でもね お玄関にでてみて? 」
「 ?? 」
「 く〜〜〜〜 」
すぴか〜〜 すばる〜〜〜 ただいま 〜〜〜
あ!?!? お父さんが かえってきた!
すぴかは がばっと跳ね起きた。
「 すばる〜〜 おきろ!! 」
「 く・・・ ううう??? 」
隣の弟をめちゃくちゃに揺さぶりあとはほっぽらかしにして
― だっ・・・! すぴかは玄関へダッシュした。
「 おと〜〜〜さんっ !!! おかえりなさ〜〜〜い〜〜〜 」
「 すぴか。 ただいま〜〜〜 すばるは? 」
「 おと〜さ ・・・ ? 」
すぴかは 父親に飛びつこうとしたが なぜかそのまま固まっている。
あれ ・・・? おとうさん ・・・だよね?
・・・ でも ・・・ ナンか ちがうヒト みたい ・・・?
「 ? なんだい すぴか。 すばるは寝てるのかな〜 」
「 あ・・・ う ん でもアタシが おきろ〜〜〜って言ったからおきてるかも・・」
「 そっか。 すぴか お留守番、ご苦労さま 」
お父さんは屈んで すぴかの顔を覗きこんだ。
すぴかも お父さんの顔をまっすぐにみつめた。
あは ・・・ やっぱお父さんだっ アタシたちのお父さんだあ〜〜い
「 おと〜〜さん お帰りなさ〜〜い〜〜 」
どん。 小さな娘はいきなりジョーの腕の中に飛び込んできた。
「 ! お〜〜〜っとぉ〜〜〜 ははは ただいま〜〜〜 すぴか 」
「 えへ えへ えへ・・・ おと〜〜さ〜〜〜ん♪ 」
「 お おと〜〜さんっ !! ぼ 僕もぉ〜〜 」
どうん〜〜 ! とてとて駆けてきすばるが 後ろからひっついてきた。
「 おわ 〜〜 すばる〜〜〜 すばる ただいま〜〜〜 」
「 おと〜〜さ〜〜〜ん おと〜〜さ〜〜ん ! 」
色違いの二つのアタマを抱えて ジョーは泣き笑いをしている。
「 まあ〜〜〜 お母さんも仲間にいれて!
おかえりなさ〜〜い ジョー ・・・・! 」
とん。 最後にフランソワーズが抱き付いてきて − 子供たちを挟んで二人は抱き合った。
「 わ〜〜い さんどいっち〜〜〜 」
「 おにぎり 〜〜 ぎゅ ぎゅ 〜〜 ♪ 」
「 ― ただいま フラン ・・・ 」
「 ジョー ・・・! 愛してるわ ・・・! 」
ジョーとフランソワーズは チビ達を間にいれてあつ〜〜いキスを交わした。
― その夜 ・・・ お父さんたちのお部屋のドアは ぴた!っと閉まっていた。
お母さんが < ちほうこうえん > で お出かけになったこともある。
舞台のお仕事が遠くであるの … と母は子供たちに説明をした。
お母さんは朝早く ・・・ まだ二人が眠っている間に出かけていった。
そして ちょうどおじいちゃまも急ぎのお仕事で 一足先にお出かけになった。
「 え〜〜〜 おかあさん、おしごとなのぉ〜 おじいちゃまも ・・・? 」
「 ・・・ おかあさん ・・・ おでかけ・・・? おとまりで・・・?
おじいちゃまも ・・・ おでかけなのにぃ ・・・ 」
すぴかもすばるも ちょいと涙声になってきている。
「 うん、そうなんだ。それでね、お父さんとお留守番、できるかな〜〜 すぴか すばる。 」
「 ・・・で できるもんっ ! 」
「 で できる ・・・ かも ・・・ 」
「 ほ〜ら なんて声してるんだ〜 二人とも。 」
「「 だってぇ ・・・ 」 」
「 お昼ごはんはなににしようか? 二人が好きなもの、つくるよ。 」
「 え ・・・ ホント? 」
「 ああ。 すぴかも手つだってくれるかなあ〜〜 」
「 ウン!! お父さん。 う〜〜とね・・ アタシ やきそば! 」
「 お いいねえ〜〜 やきそばはお父さんも大得意さ。
すばる? すばるはなにがいいのかなあ? 」
「 ・・・ 僕ぅ ・・・ おかあさん ・・・
」
「 え? なんだって? よく聞こえなかったけど ・・・ お昼ご飯に
すばるはなにが食べたいのかな? 」
「 ・・・ 僕ぅ ・・・ 」
「 え? なに ? 」
「 ・・・ う〜〜〜 ・・・ ちゃ〜〜はんっ !!! 」
「 オッケー♪ チャーハンも作ろう。 」
「「 え ほんとう?? 」」
「 ほんとうさ。 その代わり 二人ともてつだってくれるかい? 」
「「 うん!!! 」」
ジョーが巧みに子供たちの気分を盛り上げていった。
「 ・・・ おとうさん 〜〜〜 」
「 ・・・ 」
その夜、 子供たちはジョーの側に纏わりついて離れない。
「 ほ〜ら ・・・ そろそろおやすみなさい〜 な時間だろ? 歯みがきして 」
「 お父さんも〜〜 」
「 いっしょ〜〜 」
いつもはさっさと一人で歯磨きして さっさとパジャマに着替えるすぴかが
ぐずぐず・・・ 父親の側でゴネている。
普段からのんびりやのすばるは言わずもがな ・・・ もう完全なひっつき虫だ。
「 あ〜〜 二人とも・・・ 一年生になったのに可笑しいなあ〜〜
赤ちゃんに逆もどりかな〜〜 」
「 ・・・ あかちゃん でいいもん 」
「 いいもん ・・・ 」
きゅ。 きゅ。 小さな手が二つ、ジョーのシャツをしっかり掴んでいる。
「 なんだあ〜〜 二人とも。
じゃあ な ・・・ 今晩は三人で一緒に寝よう。 」
「「 わ〜〜〜〜〜〜 」」
そんなワケでその夜は お父さんたちのベッドで 川の字 になって寝た。
「 アタシ こっち〜〜〜 どん。 」
「 僕 こっち〜〜 」
二人は ジョーの両側にもぞもぞ潜りこんできた。
「 お〜〜〜 いいねえ〜〜 さ こっちおいで〜〜 ほら すぴかも すばるも 」
「「 わい 〜〜♪ 」」
さっきまでのぐずぐず・・・はどこへやら、すぴかもすばるもご機嫌ちゃんではしゃいでいる。
そして ・・・ ことん、 と寝てしまった。
― だから その後 ・・・ 夜中にそっとお父さんがベッドを抜け出して行ったのを
すぴかもすばるも 全然気が付かなかった。
そして。 月曜日の朝早くにお母さんは帰ってきた!
「 ・・・ おかえり ・・・ 」
「 ただいま ・・・ 」
ちょっと疲れたカンジのお母さんを お父さんはきゅう〜〜〜〜っと抱きしめた。
あ? おとうさん ・・・ なみだ ・・・?
? おかあさん〜〜 ないてる ・・・?
すぴかとすばるは でもやっぱりだまっていた。
― おやすみの日ってね ・・・
すぴかは 他のみんなのお家もそうなんだと思ってた。
でも ― そうでもなかったのだ。 お友達はね ・・・
「 お父さん? 日曜日は お昼まで寝てる〜 」
「 お母さん? おやすみの日はたいていピザとか取るんだ〜
お菓子? コンビニで買うけど? 」
「 お父さんがお留守のとき? お母さん、の〜〜んびりしてるよ 」
「 お母さんがいない日? お父さんとね〜 ふぁみれす いくんだ〜〜 」
ウチのお父さん と お母さんは ・・・ ヨソのお家とちがう??
すぴかはオデコにシワを寄せて 一生懸命考えてみた。
「 すばる〜〜 」
「 なに 」
「 あの さあ ・・・ 」
ついに すばるにも <そうだん> してみた。
そしたら ・・・
「 だあってさあ〜〜 お母さんってば いつも言うじゃん。
ヨソはヨソ。 ウチはウチですよ。 って。 」
あ そっか・・・
弟の ほけ〜〜っとした笑顔をみてすぴかは妙にふか〜く納得したのだった。
***************************
Fin.
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Last updated : 07,07,2015.
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*************** ひと言 **************
チビの頃って 自分ち が全て ・・・って思ってますよね〜
ミッションの時は大変だったと思います、ホントに・・・・