『 おやすみの日 ― (1) ― 』
ズリズリ ズ −−− がっちゃ ごっと どん。 ズ〜〜〜リ ズリズリ・・・
盛大雑音と一緒に 盛大な荷物を抱えたチビっこが二人、坂道を上ってゆく。
「 う〜〜〜んしょ うんしょ う〜〜〜〜〜 」
「 ・・・ もてな〜〜い〜〜〜 僕 もてない〜〜〜 」
「 し〜らないってばし〜〜らない アタシのじゃないも〜〜ん 」
「 すぴかぁ〜〜 おもくないのぉ? 」
「 おもいよっ 」
「 僕 もうヤだあ〜〜〜 おか〜さ〜〜ん ・・・ 」
「 あ〜〜〜 あまったれぇ〜〜〜 や〜〜い すばるのあまえんぼ〜〜 」
「 あ あまえんぼ じゃないやい! 」
「 あまえんぼ〜〜 おか〜〜さ〜〜ん だってぇ〜〜〜 」
「 ・・・だってぇ〜〜 僕 もう あるけないぃ 〜〜 」
「 アタシだって て、いたいんだもん ・・・ 」
「 も〜〜 もてない〜〜〜 」
「 ・・・ きんようだからしょうがないじゃん。 たいいくぎ に〜〜
らんちょんまっと に〜〜 うわばき に〜〜〜 」
「 僕ぅ〜〜〜 きゅうしょくとうばん だったから かっぽうぎ も〜〜 」
「 アタシだって〜〜 しいくかかり だから うさこ達のタオル〜〜 」
ちびっこは二人でちょっと顔を見あわせていたが ―
「 いくよっ すばる〜〜 ごもんまであとちょっとお〜〜 」
「 あ〜〜〜 すぴかあ 〜〜〜 」
金色のお下げの女の子は えいやっと立ち上がり歩き始めた。
「 ま まって ・・・! 」
「 またないも〜〜〜ん 」
「 すぴかのいじわるぅ〜〜〜 」
「 すばるのあまえんぼ〜〜 」
ぴ〜ぴ〜 わ〜わ〜 一応私道だけれど道端は大騒ぎだ。
ふわり ・・・
突然 二人の身体がランドセルや両手の手提げといっしょに空中に浮かんだ。
「 んわわ?? あ〜〜〜 おとうさん〜〜〜 」
「 きゃわ〜〜〜 おと〜〜さ〜〜〜ん
」
茶髪の青年が両手で むんず! とチビっこ達のランドセルの掛けヒモを掴みあげている。
「 こぉらあ〜〜 道でケンカなんかするな 」
「 だってね だってね すばるってばね〜〜 」
「 ちがうもん ちがうも〜〜ん すぴかがね〜 」
父親に持ちあげられつつも 二人はまだモメている。
「 ストップ。 二人とも口、閉じなさい。 お家に入るまでしゃべらない。 」
「 だって ・・・ むぐ。 」
「 すぴかが〜 むぐ。 」
子供たちはやっと静かになった。
「 ま〜〜ったく。 ここは家の中じゃないんだぞ? ケンカの理由は後で聞くからね。 」
「「 !! 」」
二人は コクコク・・・頷いている。
「 よっしゃ。 ・・・ しっかし二人ともすごい荷物だなあ〜〜
毎日こんなにたくさん学校に持っていってるのかい。 」
「 え〜〜 ちがうよ〜〜 あ ・・・ むぐ。 」
金髪のお下げのチビが口を開き あ!っという顔であわてて手で押さえた。
「 いいよ いいよ もうしゃべっても・・・ ほら ご門の中に入ったからね〜 よい・・・っしょっと。 」
青年は よっこらせ・・・とチビっこ達を門の中に入れ、地面に下ろした。
「 ほ〜れ〜〜〜 くうちゅうさんぽ、おしま〜〜い 」
「 おしま〜〜い〜〜〜 」
「 おと〜〜さ〜〜〜ん♪ おかえりなさ〜いぃ〜〜〜 うわぉ♪ 」
「 おかえりなさい〜〜 」
子供たちはきゅわっと彼らの父親に張り付いた。
「 おっとぉ ・・・ あはは・・・ ただいま〜〜〜 」
「 ね〜〜〜 おと〜さん、 きょうね〜〜 たいいくのじかんにね〜 」
「 おと〜〜さ〜〜〜ん 僕ね 僕ね〜〜 きゅうしょくのときにね〜 」
二人は一斉に甲高い声でしゃべり始めた。
「 あは ・・・ わ〜かった わかった〜〜 玄関に入ってから教えてくれるかな〜 」
「 うん! それでね〜〜 おとうさん〜〜 」
「 おと〜〜さ〜〜ん 」
ともかくぴ〜ちく・ぱ〜ちくはとまらないのだ。
「 そっか そっか。 なあ お父さんから質問! いいかい? 」
「「 うん!! 」」
色違いの瞳が ― ジョーと彼の細君譲りの瞳が ― それはそれは熱心に見上げてくる。
「 しつもん そのいち! いつもこんなににもつがいっぱいなのですか?
答えられるひと〜〜 」
「 はい!!! それはぁ〜 きょうは きんようび だからです! 」
すぴかが手を上げてすぐに返事をした。
「 はい! 」
すばるも負けじと手をあげ、ぴょんぴょん背伸びをしている。
「 はい すばるくん? 」
「 きんようびはにもつがいっぱいです 」
「 ありがとう ふたりとも。 それじゃ しつもん その二。
ちょっとムズカシイかもな〜〜〜 いいかい? 」
「「 うん!! 」」
「 では〜〜 しつもん そのに。 ど〜して金曜だと荷物がおおいのですか? 」
「 はい!! 」
「 はい! 」
二人は同時に手をあげ ぴんころぴんころ跳ねはじめた。
「 あは ・・・ それじゃ〜 一緒に答えてください いいですか〜〜 」
「「 うん! 」」
「 では〜〜〜 いっせ〜の〜〜 せ! 」
「「 たいいくぎらんちょんまっともってにもつきんようおせんたく 〜〜 」」
「 ・・・ はい? 」
「 たいいくぎ ! ほら これ! おせんたく! 」
「 きゅうしょくのらんちょんまっと おせんたく。 それでね〜〜 僕ね〜〜
きゅうしょくとうばん の〜〜 かっぽうぎも〜〜 」
「 アタシ! しいくかかりだから〜〜 うさこたちのね〜〜〜 」
「 わかりました。 じゃあ あとちょっと、玄関までがんばって荷物を
運ぼうね〜 ほら しゅっぱ〜つ! ぴっぴ〜〜〜 」
ジョーは先頭に立って歩き始めた。
「 わ〜〜〜 ぴっぴ ぴっぴ〜〜〜 」
「 ぼ 僕も〜〜〜 」
「 は〜い みなさん 連結してくださ〜い 」
「 わお〜〜〜 はい がっちゃ〜〜ん !! 」
すぴかがすぐにジョーのシャツの裾を握った。
「 あ ・・・ ぼ 僕も〜〜〜 」
むにゅう〜〜〜 ― 小さな手が二つ ジョーのシャツをひっぱってる。
あは ・・・ フランが怒るかな〜〜あ
ま いっか〜〜
生暖かい、二組の手がきゅっと彼の背中にくっついた。
「 は〜〜い それでは出発しんこ〜〜〜 」
「 ドア かくにん よ〜〜し ! ぜんぽう よ〜〜し! はい ぷっぷ〜〜〜 」
コテツ ( 小鉄 ) のすばるが はりきってつけたした。
「 は〜〜い ほーむ・どあ しまりま〜す! しゅっぱつ〜〜 」
すぴかも負けずに付け足した。
「 おとうさん! 出発! 」
「 しゅっぱつ〜〜 っていったよ〜〜 」
「 ああ はいはい ぷっぷ〜〜 」
ジョーはいろいろ荷物をぶら下げた子供たちを < ぶらさげて > 玄関に向かって歩き始めた。
「 ただいま〜〜〜〜 」
「「 ただいまああ〜〜〜 おか〜〜さ〜〜〜ん 」」
三人が玄関ポーチに付くと ぴんぽ〜〜んする前にすぐにドアが開いた。
「 お帰りなさい、 ジョー すぴか すばる 」
フランソワーズが極上の笑顔で現れた。
「 わ〜〜〜 おかあさん ど〜してわかったの〜〜〜 」
「 あのね あのね 僕たち でんしゃ してきたの〜〜 」
「 ただいま フラン ・・・ 」
「 おかえりなさい ジョー 」
ぴやぴや騒ぐ子供たちの前で ジョーとフランソワーズはあつ〜〜〜〜い視線を交わし
するり、と腕を絡め合い ― あっつあつのキスをする。
― これはこの家の習慣になっているので子供たちは慣れっこ。
キス・タイムが終わるまで 大人しく待っている。
「 ね〜〜〜 おかあさん〜 」
「 おか〜さんってば〜〜 」
「 早かったのね ・・・ 嬉しいわ。 」
「 うん 早めに終わったから ・・・ すっとんで帰ってきたよ 」
「 今晩、ジョーの好きなミート・ローフよ 」
「 わい♪ あ 掃除とかやるよ〜〜 」
「 あら いいの? 」
「 もっちろ〜〜〜ん♪ 週末やることたっくさんリスト・アップしてたんだ〜〜
風呂場の掃除だろ、あと カーテンの洗濯もな〜 ガレージも掃除しなくちゃ 」
「 あらあら・・・ ゆっくりしてね せっかくの週末なんですもの 」
「 週末だから〜〜 ウチのこと、出来るんじゃないか。 さ〜〜 着替えてくるね
すぴか すばる〜〜 お前たちもランドセル置いておいで 」
「 「 は〜〜〜〜い !!! 」 」
最高にいいお返と一緒に ドドドド ―−− ! 子供達は階段を駆け上がっていった。
「 あ こぉらあ〜〜 お部屋までは静かに行かなくちゃ〜〜 」
わ〜〜〜 ・・・・ もうお父さんの声なんか聞こえてはいないらしい。
「 も〜〜〜 ! あ ぼくも着替えてくる。 アイツらと一緒に庭の掃除するよ。」
「 まあ ありがとう! ふふふ ・・・オヤツ、たっぷり用意しておきます。 」
「 お よろしく〜〜 さあ チビ達がもどってくる前に 〜〜 」
ジョーは ハナウタ混じりにガシガシ階段を上っていった。
「 ふふふ ・・・ 元気でいいわね〜 ? ん?
・・・ あちゃ ・・・ 今日下ろしたばっかりのYシャツなのに ・・・ 」
島村さんの奥さんは 夫の姿を眺めつつこっそりため息を吐いた。
― 島村氏の背中には 二つの手型がくっきり。
まあ それは ・・・ シアワセのしるし かもしれないけれど。
三人で転がりあってるみたいな大騒ぎの末に 庭掃除 はなんとか終わった。
一応 ちゃんと枯葉だのゴミだのを集め、堆肥になるものは裏庭の穴に埋めて ・・・
「 さ・・・ってと。 では〜〜 これで庭の掃除を終わります。
みなさん〜〜 ご苦労様でした。 」
「 ごくろ〜さまでしたっ 」
「 ・・・ さまでしたっ 」
ぴょこん、とアタマを下げ合うと ジョーと子供たちはま〜たまた団子状態になった。
「 さ〜〜〜 オヤツだよ〜〜 ウチに入って手を洗おうね 」
「「 うわ〜〜〜い♪ 」」
きゃわきゃわ大騒ぎの一行が 勝手口から入ってくる。
「 ね〜〜〜 おか〜さ〜〜〜ん おそうじしたの〜〜 はっぱいっぱいあったよ〜〜 」
「 いっぱい〜〜〜 」
「 まあ そうなの? お掃除、ありがとう〜〜
さ 手を洗ってらっしゃい。 オヤツにしましょうね。 」
「 わ〜〜〜〜い アタシ いっちば〜〜〜ん♪ 」
運動靴を跳ね飛ばして脱ぐと すぴかはどたばた・・・・バスルームに駆けていった。
「 ぼ 僕もぉ〜〜〜 う〜〜 おくつが〜〜 」
「 すばる? あらあ〜〜 泥だらけねぇ・・・ ちょっとここで靴下も脱いで 」
「 う うん ・・・ うん・・・っしょっ
」
すばるは勝手口に座り込んでドロドロの運動靴を脱ぎ、一緒に靴下もとった。
「 ( うわ ・・・ ) あ ちょっとまって。 その足 ・・・
お雑巾で拭いてから上がって〜〜 」
「 僕も オヤツ ・・・ 」
「 大丈夫 オヤツは逃げません、ちゃ〜んとすばるの分はありますよ ・・
ほら このお雑巾で拭いてちょうだい。 」
「 う ・・・ ん ・・・ 」
「 いやあ〜〜 随分枯葉が溜まっててさ〜〜 」
最後にジョーが戻ってきた。
「 そうなの? ご苦労様・・・ あ〜〜〜っと〜〜 ジョー あなたも!
ここで靴下を脱いで足を拭いてから上がって!! 」
「 え? 」
ほら! と細君が指す足を見れば・・
「 あちゃ・・・ 全然気がつかなかった〜 あは すばるもどろんこだねえ〜〜
よっしゃあ〜〜 ちょっと待ってろよ〜 」
ジョーは自分の足をささっと拭うと 小さなムスコをひょい、と抱えた。
「 さ〜 このままバス・ルーム直行便だあ〜〜 」
「 うわ? きゃわ〜〜〜 おと〜〜さ〜〜ん 」
「 ほらほら 二人ともちゃと洗ってきて頂戴ね〜〜 」
「 すばる〜〜〜? あ〜〜〜 ズル〜〜い〜〜〜 アタシも アタシも〜〜〜 」
すぴかがさっさと手を洗って戻ってきて < 直行便 > に遭遇してしまった。
「 ね〜〜 アタシも〜〜〜 」
「 え すぴかはもう手も洗ってきたんだろ? 」
「 でも〜〜〜 もいちど〜〜 アタシも〜〜〜 」
どん。 ちっちゃな娘がジョーの脚に齧り付く。
「 お〜〜〜っと〜〜 よし それじゃ〜 すぴかもも一度な〜〜
ほ〜〜ら 直行便〜〜〜 よ・・・いしょ ・・・ あ〜〜 二人とも重いな〜〜 」
重い なんて言いつつも ジョーは二人の子供たちを楽々横抱きにすると
悠々とバスルームへ運んでいった。
「 は〜い 手、洗いましたか? ウガイもした? 」
「「 うん !! 」」
「 それじゃ オヤツ ど〜ぞ〜 ミルク・ティ もね 」
魚模様のカップと 電車が着いたカップが テーブルに並ぶ。
「「 いただきま〜す 」 」
「 はい どうぞ。 」
「 わ〜〜い えびせん〜〜 あ おか〜さん アタシのみるく・てぃ さ〜 」
魚模様のカップをもって すぴかが母を見上げている。
「 大丈夫 お砂糖は入っていません。 」
「 わい♪ 」
「 僕 ・・・ おさとう いっぱいいれて〜〜 」
「 ちゃ〜〜んと入れてありますよ、すばるクン。 よ〜くかき混ぜてね〜 」
「 わい♪ 」
子供たちは熱心に小さなお皿に盛られたオヤツを食べ始めた。
「 わ〜 いいなあ〜 お父さんもお腹減ったなあ〜 」
ジョーが腕まくりを下ろしつつ 戻ってきた。
「 ついでにさ バス・ルームの掃除、しといた。 も〜〜 コイツらお蔭で
ドロドロになってたからさ 」
「 まあ ありがとう! ごめんなさいね、せっかく早く帰ってこれたのに・・・ 」
「 え? なんで? ウチのバス・ルームだもの、ぼくが掃除するよ?
バス・ルームの掃除ってさ〜 好きなんだ。 きゅっきゅって磨くとすぐにピカピカに
なるだろ? カンタンに達成感〜〜って♪ 」
「 あ・・・ そうなの? 」
「 ウン。 なんか気分そ〜かい さ。 」
どうも ― この青年は 世の男性諸氏とはちょいと違った感覚の持ち主なのかもしれない。
ふうん ・・・ ?
わたしのパパも バス・ルームの掃除なんてしてた記憶 ないわよ?
・・・ お兄ちゃんは ・・・ 二人暮らしになってからは
当番制にしたから しょ〜がなくてやってたけど・・・
フウン ・・・ わたしとしては楽ちんだけど ・・・
島村夫人は内心、首を傾げたがもちろんオクビにもださない。
「 あ〜〜 オヤツ いいなあ〜 」
「 おと〜さん! おと〜さんもたべようよ〜〜 」
「 おと〜さ〜〜んも〜〜 いっしょ〜〜〜 」
チビ達もわいわい言いだした。
「 あ ジョー、コーヒーがいい? それとも お茶? 」
「 う〜〜〜ん ・・・ すぴか、それ なに? 」
彼は彼の小さな娘のカップを覗きこむ。
「 アタシ〜〜 みるく・てぃ。 お父さん のむ? 」
「 あ いいよ いいよ。 あ〜 フラン〜 ぼくもミルク・ティ がいいな。 」
「 はい 了解。 お砂糖 たっぷり、でしょ? 」
「 ぴんぽ〜〜ん ・・・ 」
彼は娘のお皿も眺めている。
「 あ〜 すぴか。 お父さんにも えびせん くれ〜
」
「 うん いいよ〜 おと〜さん。
すぴかの、半分あげる〜〜 ほらあ 」
「 あら いいのよ すぴかさん お父さんにはちゃんとあげるから 」
母があわてて娘を止めた。
「 ううん〜 ハンブンコしよ!
ね〜 おとうさ〜ん♪ 」
「 お ありがとう〜〜 すぴか〜〜〜 」
「 ぼ! 僕もぉ〜〜 びっくりまんちょこ ハンブンコ〜 」
今度は息子が割り込んできた。
「 あは〜 すぴかもすばるもありがとう〜〜 嬉しいなあ〜〜〜 」
「「 えへへへ ・・・・ 」 」
ジョーの前には えびせん が 3コと びっくりまんちょこ が半分 転がっている。
「 それじゃね〜 お父さんはあ〜 ・・・っと。
このお煎餅
と このチョコ を 二人とハンブンコするよ〜 ほら! 」
ジョーは
ごそごそと 草加煎餅と ホワイトチョコ を取りだした。
「 「 わ〜〜〜お?? 」」
「 これは〜〜 今日のお土産 さ。 皆で食べようよ 」
「 あの〜〜〜 ・・・ お母さんも仲間入りしてもいい? 」
「「「 いい!! 」」」
― というわけで その日のオヤツ・タイムは家族全員でお煎餅やらチョコレートを
齧ったのだった。
翌日は 土曜日、子供たちの学校はお休みでお父さんも珍しくお仕事お休みだ。
お休みの日 ・・・ お父さんはお昼近くまで寝ている ― ことなど全然なく!
土曜日の朝御飯は … もう〜〜 大変なのだ。
「 う〜〜〜ん ・・・ いい気持ち♪ 」
フランソワーズはキッチンの窓を いっぱいに開けてすう〜〜っと深呼吸。
「 ・・・ あ〜〜 空気 オイシイわあ〜〜 ・・・
昨夜遅くに博士も帰っていらっしゃったし。 家族み〜んなそろったわね〜 」
「 やあ おはよう〜 」
ジョーがタオルでがしがし・・・髪を拭きつつ入ってきた。
「 お早う ジョー。 早朝マラソンは如何? 」
「 うん 最高〜〜〜 いい天気だし なんかすごく元気充電 さ。
」
「 うふふ ・・・ お腹の方も充電したいんじゃないの? 」
「 ご明察〜〜 そうだ テラス
で食べようか、 朝ご飯。 」
「
あら ステキ! いいわね〜〜 」
「 よぉし
テーブル と イス だすよ。
ああ 全部ぼくが運ぶからさ
」
「 まあ いいの?
」
「 御安い御用さ。 あ その代わりとびきりのオムレツ〜
」
「 はい 腕にヨリをかけて♪ 」
「 うわ〜〜〜 楽しみだなあ〜 あ チビ達を起こしてくる。 手伝わせようよ。 」
「 そうね、お皿をならべて ・・・ 庭の温室からプチトマト、採ってきてもらって〜 」
たちまち楽しい < 外ご飯 > の計画が出来上がった。
― さて その日の朝ご飯メニュウは・・・
ジョーとすばる は お砂糖たっぷり
すぴかはお醤油 博士にはチーズ
・・・
なのは フランソワーズの特製オムレツ。 彼女自身はプレーン・オムレツがお好み。
そして 焼きたてトーストには 裏庭の温室で採れたイチゴのジャム
と これも裏庭の夏みかんのマーマレード
カテージ・チーズにハムにレタスに・・・ そうそう、子供たちが採ってきたぷち・トマト山盛り。
あとは熱々のカフェ・オ・レ に ミルク。
そ〜んな食卓を
皆で笑ったり喋ったりして囲んだ。
「 ・・・ あ〜〜 はっぱがアタシのお皿にとんできたよ〜 」
「 ねえ おじいちゃま〜 この虫・・・ なに? 」
「 どぉれ? ・・・ ああ この葉はなあ、○○という木の葉でな・・
この虫が好むのさ。 」
博士がすぐに答えてくれる。
「 ふうん ・・・ どの木かなあ〜 」
「 庭にあるじゃろう? ほれ 玄関の脇の方じゃよ 」
「 え みにいってくる〜〜 」
すぴかはもうイスから下りてしまった。
「 あらら・・・ すぴかさん、 ごちそうさま をしてからですよ。 」
「 僕も〜〜〜 」
「 すばる君もね。 」
「「 は〜〜い 」」
ゴチソウサマ をすると子供達は庭に駆けだしていった。
「 ふう〜〜〜 ああ ぼくもお腹いっぱいだな ・・・ 」
ジョーは う〜〜〜ん ・・・と 風に向かって伸びをする。
「 こ〜ら ・・・ お行儀悪いわよ、ジョー。 ふふ でも本当にいい気持ちね
食後に昼寝でもなさる? 」
「 え?? 冗談じゃないよ〜〜 今日はね やりたい予定がいっぱいあるんだ。 」
「 あ おでかけ? 」
「 ??? なんで??? ぼくの予定は ・・・っと ・・・
まず 裏庭の垣根を直すだろ、 庭木の剪定して それから テラスとガレージ
えっと あと
バスルームの徹底掃除。 」
「 まあ そんなに? 」
「 ふっふっふ〜〜〜 楽しみにとっておいたモノもあるだ〜
よ〜〜し・・・ 行動開始! だ
」
ジョーは イスを鳴らして立ち上がった。
「 すぴか〜 すばる〜〜 手伝ってくれ〜〜 」
「 わお〜〜〜 お父さん〜〜〜 なに〜〜
」
「 なに〜〜〜 おとうさん〜〜
」
子供たちはすぐに駆け戻ってきた。
「 二人におねがいがありま〜す。 」
「 なに〜〜〜 おとうさん 」
「 お父さんと一緒に お皿やカップをキッチンに運ぶこと。 あ 気を付けて〜〜〜
落として壊しちゃうと〜〜 明日の朝ご飯 たべられないぞ〜〜 」
「 え !!! 」
すぴかはものすご〜〜〜く真剣な顔になると お皿に自分のマグカップを乗せて
そろそろ・・・ 摺り足でキッチンを目指し始めた。
「 お〜〜 いいぞ〜〜 すぴか。 すばる? すばるも食器を ・・・ あ? 」
「 僕 ・・・ おさらとかっぷ こわさないから! 」
彼の息子の声が 足元から聞こえる。
「 ・・・ すばる ・・・ お前 なにやってるんだ? 」
「 え こわさないように〜 おしてるんだ、僕。 うん・・・ しょ ・・・っと 」
「 すばる ・・・ お母さんが 」
フランソワーズが思わず手を差し伸べようとしたが ジョーはそっと抑えた。
すばるは床に皿をカップを置き そ・・・っと手で押して運んでいる。
「 ・・・ まあ がんばれ。 遅くなってもいいからちゃんとキッチンまで
もっておいで。 」
「 ウン ! 」
「 じゃ〜〜 お父さんはすぴかと一緒にお皿洗いをしているからね 」
「 ウン ・・・ 僕ぅ ・・・
」
「 すばるや ・・・ こういうモノを使ってみてはどうじゃな? 」
じっと眺めていた博士は にこにこしつつすばるの側にしゃがみ込んだ、
「 なあに おじいちゃま ? 」
「 ほら これじゃ。 この上に乗せて ・・・ すばるは押していったらよかろう? 」
「 あ うん ・・・ 」
フランソワーズが料理を運んできた小型のワゴンを 博士はすばるの側にもってきてやった。
「 ほら こうして ・・ そっちのお皿ものせてごらん? 」
「 うん! ・・・ これでいい おじいちゃま 」
「 ああ いいよ。 それでそう・・・っと押して行こうよ。 」
「 ウン ! ぷっぷ〜〜 出発しんこ〜〜〜 ♪ 」
コテツ ( 小鉄 ) なすばるは大喜びで食器運びを始めた。
「 まあ 博士 ・・・ さすが ・・・ 」
「 なあに ・・・ オトコノコは道具が好きじゃからなあ おっとワシも自分の皿を 」
「 やだ〜〜 わたしが運びますわ。 どうぞ食後の一服でもなさってくださいな。 」
「 おお それはありがとう ・・・ やれ どっこいしょ ・・・ 」
博士はテラスにある椅子に座ってパイプを燻らせ始めた。
大騒ぎの朝ご飯が終わると 子供たちはお父さんと一緒にあれこれ・・・お家の用事の
お手つだいをする。 といっても子供の手は邪魔になることも多いのだが。
「 う〜〜んと? それじゃ すぴかはこの雑巾を絞ってくれるかな〜 」
「 うん!! おとうさん〜〜
」
「 すばるは〜 ここを箒で掃いてくれるかい 」
「 うん!!! 」
ジョーはカンタンな仕事を子供達に割り振っている。
簡単なことでも すぴかもすばるも一生懸命にやる。 そして ・・・
「 わ〜〜 助かるなあ〜〜 二人ともお手伝い、ありがとう ! 」
「「 えへへへ ・・・ 」」
えっへん♪ いい気分になり、またおてつだいする〜〜〜 と言うのだ。
「 おと〜さ〜〜ん お父さん つぎはぁ? 」
「 こんどは なあに〜 」
「 え〜〜と? それじゃなあ ・・・ 」
午前中いっぱい 三人はとても熱心に所謂家庭の雑用に取り組んだ。
「 ジョー〜〜〜 すぴか〜〜 すばる! お昼ごはんよぉ〜〜〜 」
「「「 わ〜〜〜〜 い 〜〜〜 」」」
またしても泥だらけになった三人は 一緒になって駆け戻ってきた。
うわ ・・・ あ〜〜〜 またバス・ルームの掃除かしら ・・・
フランソワーズはこっそりため息を飲みこんだ。
そして ― お昼ご飯は お母さん特製のケーク・サレ。
「 ・・・ うわあ〜〜 美味しいよ〜〜 きみのケーク・サレ、もう最高♪ 」
「 そう? 嬉しいわぁ〜 」
「 んま〜〜〜♪ ほら すぴか すばる もっと食べなさい。 」
「 たべてる〜〜 」
「 ・・・ もぐもぐ 」
お母さんの料理をお父さんはとて〜〜もシアワセな顔で ばっくばく食べる。
「 ふう〜〜〜 ああ きみの側できみのランチを食べて ・・・
あ〜〜 もう最高だよぉ〜〜 」
「 ふふふ ・・・ 空腹は最上のソース、なんじゃないの? 」
「 きみの笑顔が最上のソース なのです♪ この唇が〜〜 」
「 きゃ ・・・ もう〜〜♪ 」
お父さんとお母さんはべたべたいちゃいちゃしてる、お休みの日はず〜〜〜っと。
いつものことだから 子供たちはべつに普通のことだと思っている。
たまにお父さんが出張でお留守な週末もある。
ちょっち淋しい ・・・けど 。
へへへ 〜〜〜 そんな時は ピザを取ってもらったりするし 夜はいつもより少し遅くまで
居間のソファで 子供達はお母さんのくっつき虫 になれる♪
お母さん が 舞台 や 地方公演なんかで お留守の時もある。
そりゃ寂しい ・・・ けど。
お父さん特製の やきそば とか てっぱんやき が食べられるし 夜はお父さんたちのベッドで
川の字 で 寝たりしちゃう♪
だけど。
ほんの時たま と〜ってもイヤな < しゅっちょう > がある。
Last updated : 06,30,2015.
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********** 途中ですが
え〜〜〜 お馴染み 【 島村さんち 】 シリーズです〜〜
そう・・・ いつもいつも笑って過ごせるワケじゃないよね