『 包丁と万年筆  ― (1) ― 』

 

 

 

 

 

 

 

町はずれの岬の突端に建つ ちょいと古びて みえる 洋館には

一組の家族が暮らしている。

日本人だ、という茶髪の若いご主人と 金髪碧眼美人の若奥さん、そのどちらかの

親御さんとおぼしき白髪の好々爺なご隠居さん ― そして。

双子の姉・弟  すぴかさん と すばるクン が わいわい・がやがや〜〜

笑ったり怒ったり泣いたりして・・・ 元気に暮らしている。

 

地元の商店街でも人気のこの一家 ・・・ 少子化とかいる田舎だけど

しっくり地域に溶け込んでいる。

 

  ― さて。

 

 

島村すばるクンの趣味は ― 料理である。

彼はな〜〜んと愛用の < まい包丁 > をもっている。 これは小学一年のクリスマス・プレゼント。

彼がそれはそれは熱心にサンタさんにお願いをし、お手伝いに精をだし苦手なお野菜も一所懸命食べた結果

 ― その年のクリスマスの朝、すばるクンの枕元には ホンモノの  ( 子供用とか

ではなく! )  包丁が ―  刀身に すばる と名前まで入っている! ― 

 静かに新しい持ち主を待っていた のであった。

 

「 ・・・ う わ・・・・!  これ ほんもの? 

すばるは着替えるのも忘れ そ〜〜〜〜っと開いた包みの中でじんわり青く光っている

刃物を 瞬きも忘れて見つめていた。

「 おはよう すばる?  あれ まだパジャマなのかな〜 

とんとん・・・と子供部屋のドアをノックしてお父さんが顔をだした。

「 おと〜〜さん!!!  あのさ あのさ〜〜〜〜 サンタさんがさ〜〜〜

 僕に ほうちょう!!!  ねえ 僕のほうちょう !! 」

「 あ すごいなあ〜〜〜 お父さんにもよ〜〜く見せてくれるかな? 」

「 うん! みて みて〜〜〜 ココに 僕のなまえ・・・ 」

ぷっくりした指が 刃に刻まれた銘をそう・・・っと撫でる。

「 ほう〜〜 スゴイなあ。 すばる、これは一生モノだね。 」

「 いっしょうもの? 」

「 そうだよ。 すばるが大きくなって お嫁さんをもらってお父さんになっても

 ず〜〜〜〜っと使うんだ。  

「 うわわ・・・  僕ね! お母さんをお嫁さんにするんだ〜〜 

「 え。 」

「 もう決めてるから。  」

「 えっと・・・ お母さんは〜〜〜 もうお父さんのオクサンで〜 」

「 ウン、 お母さんは僕とすぴかのお母さんさ。 で もって僕がいっちば〜ん

 すきな女の子だから。 お嫁さんにするよ。 き〜まりっと。 」

「 あ〜〜〜 それは〜〜 

「 ね! お父さん。 僕 これ・・・・つかっていい? 」

「 あ〜 えっと まずはちゃんと着替えて顔を洗ってからだ。

 いつまでもパジャマのままだと風邪をひくよ 」

「 うん!  うわ〜〜〜〜い♪ 

すばるは 勢いよくベッドから飛び降りた。

のんびり屋の彼は 毎朝起きるのが苦手で母の手を焼かせているのだが

 

( ほんとうに!  誰かさん そっくりなんだから・・・ とは この家の

 女主人の発言 )

 

その日は とっと着替えたたた・・・っと顔を洗いに飛んでいった。

 

 

う〜〜んとチビの頃から すばる はキッチンが好きだった。

いや 彼はお母さんのくっつき虫だったので < くっついて > キッチンに

いることが多かったのでもあるが。

食事時でなくても 母と一緒にキッチンに入り浸りだ。

同じ日に生まれた < 姉 > すぴか は 一応お母さんを追ってくるが

「 おか〜さん ・・・ うめぼし ちょうだい。 」

「 おっきいの? カリカリ梅干し? 」

「 かりかり〜〜 」

「 待ってね〜 ・・・っと〜〜  はい あ〜ん? 」

「 あ〜〜〜ん 」

ぽい、と小粒の梅干しを放り込んでもらいご機嫌ちゃんだ。

「 んん〜〜〜〜 おいし〜〜 アタシ、 こうえん でえみちゃんたちとあそぶ〜 

「 はい いってらっしゃい。 タタン・タ・タン〜♪ 聞いたら帰ること。 いい?  

「 うん! 

 タタン・タ・タン とは この近辺で5時に流れる < お家に帰ろう音楽 > なのだ。

すぴかは 梅干しを口にいれ外に飛び出していった。

 

「 すばるクン? すばるクンはお外に遊びにゆかないの? 

 すぴかさんとえみちゃんたちと公園で遊びましょう? 」

「 僕  いい。 

「 どうして? ヒロクンたちもいるわよ きっと。 」

「 僕 いい。 僕 おかあさんのおてつだいする。 

「 ありがと。 でもね 今すばるクンができることはないわ。

 お母さんだけで大丈夫。 だから 

「 おか〜さん おりょうり おしまい? 」

「 え? ううん これから人参やじゃがいもやタマネギを切ってお鍋で煮るのよ。 」

「 僕 みててもいい 

「 いいけど ・・・ 面白くないと思うわ? 」

「 僕 みてる。 」

「 そう? それじゃね 約束。 お母さんが包丁でとんとん・・・・って

 お野菜を切っているときに すばるクンは手をださないでね?

 包丁で すばるクンの指が切れちゃったらたいへん!  わかった? 」

「 うん、 わかった。 僕・・・ みてる。 」

すばるは背中に手を回し じ〜〜〜〜っと母の手元 ― というか包丁の動きを

見ていた。

 

    へえ・・・? ナイフとかに興味があるのかしら

    あ そういえば ジャン兄さんも缶切りとかいろいろくっついたナイフ・・・

    もってたっけ・・・

    ふふふ ・・・ すばるも男の子なのねえ

 

母は時々ちら・・・っと息子に視線を送ったが すばるはポトフの材料が

無事にお鍋に収まるまで それはそれは熱心に眺めていた。

「 〜〜〜っと これでおしまい。 」

火加減を調節すると フランソワーズはぱん、と手を打った。

「 もうできたの??? 」

すばるの目はまん丸だ。

「 え? ううん これからね お鍋の中でぼこぼこぼこ〜〜って煮るのよ。 」

「 ふうん・・・ もう ほうちょうとんとん・・・おしまい? 」

「 そうね、切るのはおしまい かな。 」

「 ふうん。  あ 僕〜〜 JRみてくる〜〜 」

「 あら一人で? 」

「 ウウン。 わたなべクンといっしょ。 4じにやくそくしてるんだ〜 

「 あら そうだったの? えっと・・・・丁度好い時間ね。

 じゃ  気をつけてね。 踏切では遊びません、よ。

「 あそばな〜いも〜ん。 二人でJRのあてっこするんだ 〜 」

「 あてっこ?? 

「 ウン! こんどのしゃたいが 何型か? って 」

「 へえ ・・・ お母さんには全然わからないわ。  気をつけてね。 」

「 ウン。 いってきま〜〜す〜〜〜 

すばるはにこにこ・・・出かけていった。

 

    ふう ・・ やれやれ・・・

    オトコノコだものね やっぱり電車とかに興味があるのね〜

 

    いいことだわ  キッチンにいるよりずっといいわ

 

フランソワーズはほっとして サラダのドレッシングを作りはじめた。

 

 

その翌朝のこと・・・

( 昨夜は勿論! 美味しい〜〜 ポトフとサラダを家族で堪能した )

「 ね〜ね〜〜 おか〜さん・・・ と〜すとにじゃむ〜〜 

すばるは食卓でゴネていた。

「 ちゃんと塗ってありますよ? ほら〜〜 はやく食べてちょうだい すばる。

 すぴかはもうとっくにお玄関で待ってますよ  

「 すばる〜〜〜〜〜 まだ〜〜〜〜〜 

玄関から 多分いらいらしているらしきすぴかの声が飛んできた。

「 すぴかさ〜ん もうちょっと待っててね〜〜

 ほら すばるクン、食べて。  

「 じゃむ ぬって。 

「 塗ってあります。 ほら〜〜 すばるクンの好きな苺ジャムよ? 

「 もっとぬって 」

「 え〜〜 これでいいでしょう? 

「 じゃ はちみつ ぬって 」

「 ジャムじゃ嫌なの? 」

「 ウウン。 じゃむに〜〜 はちみつ。 」

「 ! ・・・ 今日だけよ! 」

「 わい〜〜〜♪ 」

母は たら〜り・・・ハチミツをトーストに垂らすと、ぱたぱた玄関に出ていった。

「 すぴかさ〜ん ごめんね もうちょっとだけ待ってて・・・ 」

「 も〜〜〜 アタシ 先にいくよ〜〜〜〜 」

ジレジレしている姉娘を宥め 急いでキッチンに戻ってくると ― 

すばるは 蟻さんでも眩暈がしそ〜な激甘・トーストをむぐむぐ・・・美味しそう〜に

一切れ平らげていた。 お皿にはもう一切れ 残っている。

「 こっちも〜 」

「 これはね オヤツにとっておくから。  ね? 」

「 う〜ん ・・・ たべないでね〜〜 おか〜さん 」

「 食べませんっ 」

「 すばる〜〜〜 アタシ さきにがっこういくっ 

玄関の声はもうクライマックス? に達している。

「 すぴかさ〜〜ん あと3分! ほら すばる〜〜 ミルク 飲んで! 

「 おか〜さん おさとう いれた? 」

「 ・・・ ミルクにもお砂糖いれるの??? だってこんなに甘いトースト食べて 」

「 おさとう〜〜 いれて 」

「 今日が最後よっ!  ・・・ ほら 飲んでっ 

「 ・・・・ん〜〜〜〜〜〜  ごちそうさま〜  あぶくぶくしてくる〜 

「 ううう・・・ ほら 行きましょっ ! 」

ついに 母はのんびり息子を抱えてバス・ルーム経由で玄関に届けた。

「 すぴかさん〜〜 ごめんね〜〜〜 さあ 行ってらっしゃい。  」

「 すばる おそい〜〜〜〜っ 」

「 あは いってきま〜す おか〜さん。  ね〜〜 こんどね〜〜

 とーすとに〜 じゃむ と ちーず と はちみつ と〜 」

「 ほらほら 行ってらっしゃい! 」

母は 子供たちのランドセルを押して玄関から出した。

門の前で 手を振りつつ 子供たちを見送る。

カタカタ・・・ ランドセルを揺らし小さい影は無事に家の前の坂を下りて

登校していった。

 

   ・・・ やれやれ ・・・ 

 

フランソワーズはため息をつき ついでに う〜〜〜ん ・・・ と伸び〜〜をしてから

玄関にもどった。

「 !  うわ 〜〜〜  な なんだ?? 今朝のトーストは??? 」

キッチンから ジョーの叫び?が聞こえる。

 

   ?  あ! すばるの ジャム+はちみつ・トースト、お皿にのせたまま・・・

 

「 ・・・・! ジョー〜〜〜〜 食べちゃだめ〜〜〜〜 

フランソワーズは絶叫しつつ 家に駆けこんだ。

 

  ダダダダダ ・・・ !  バンっ!

 

当家の女主人が 髪を振り乱しキッチンに飛び込んできた。

「 ジョー っ!!  た 食べちゃ った ・・・? 」

「 ??  え。  ど 毒でも入っているの?? 」

テーブルの前では 当家の若主人が口を微妙〜〜に歪めかなり努力をして

口の中のモノを呑みこもうとしていた。

「 う ううん ・・・ でも それ やっぱり・・・ 毒 かも 」

「 え???  だってすばるのお皿に乗っていたよ? 」

「 ええ すばるが食べた残り よ。 」

「 ?? ぼくが食べたら毒なのかい? 〜〜〜〜 う〜〜〜〜 む ・・・ !  」

ジョーはなんとか ソレ を飲み下した。

「 ・・・ うっは〜〜〜 ・・・ なんかものすごい衝撃だったんだけど・・・ 

 このトーストって なに?? なにが着いてるんだ? 」

彼は 一口齧ったパンをしげしげと見つめる。

「 べつに ・・・普通のモノよ。 苺ジャムと ハチミツ。 」

「 い 苺ジャムとハチミツ??  う〜〜〜 どうりで劇的に甘かったわけだ〜

 うん? しかしもうちょっと他の甘さもあったような・・・? 」

「 え! ・・・ あ〜〜〜 マーマレードも塗ったんだわ! すばるってば! 

フランソワーズはテーブルに出してあったマーマレードの瓶をさした。

「 げへ・・・ すばるってば滅茶苦茶甘党なんだなあ チョコとか好きだよね。 

 しかしまあちょいと その 甘すぎだよね? これ・・・

 フラン、きみ よく塗りたくっていいって言ったね。 」

「 だめって言ったんだけど ・・・ 玄関ではすぴかがジレジレしてたし ・・・

 ともかく朝ご飯食べさせなくちゃ・・・って思ってしょうがなく。

 けど どうしてあんなに甘党なのかしらね?? 」

「 う〜〜ん・・・? 生まれつき かなあ。 すぴかは全然違うよねえ 」

「 ええ すぴかはしょっぱいモノのが好きなのよ。 辛いのも平気だわね 」

「 へえ ・・・ オトナの味覚なのかなあ。 

 ま 双子っても全然違って面白いじゃないか 」

「 ― でもね ホント すばるの甘いモノ好きはちょっと行きすぎかも 」

「 チビの頃は皆甘いモノ好きだよ。 ぼくだってそうだったもの。 」

「 あらァ〜 ジョーは今でも、でしょう? 」

「 え あ〜〜〜 うん まあね〜 」

ジョーは今でもコーヒーや紅茶に砂糖を3コ入れる。

「 朝のトーストは バターだけでいいと思うわ わたし。

 すぴかなんてバターにマヨネーズぬってトマトとかのっけてばりばり食べるわよ。

 過度の糖分摂取はいくらジョーでも健康によくないと思います わたし。 」

「 すぴかは ・・・ 野生児だ 」

「 え なに? 」

「 いや なんでもないデス。 う〜〜ん しかし肥満児になってもなあ・・・

 うん、今度一緒にごく一般的なトースト、作ってみるか すばると さ。 」

「 あら そう? それじゃ 普通のトーストの美味しさを教えてやってね 」

「 うん。 そういえばアイツ、キッチン好きだよなあ? 

「 そう?  そうかしら・・・ わたしにくっついてくるだけよ きっと。 」

「 う〜ん?  ぼくが焼きそばとか作るとき すげ〜〜熱心に見てるぜ?

 野菜を洗う とか手伝えるし 

「 ふうん? ま ともかく 宜しくご指導願いますね 」

「 へいへい  あ ほら きみ 出かけないと 

「  !  きゃ〜〜 大変〜〜〜〜  」

「 キッチンは片しておくからさ。 あ 駅まで送ろうか? 

 今日 ぼく 在宅仕事だからさ 」

「 大丈夫! 急げば 30分のバスに間に合うから ・・・ じゃ イッテキマス〜

 加速そ〜〜〜〜ち!!!! 」

 かち! っと音声表示までして フランソワーズはばたばたと二階に駆けあがっていった。

「 ・・・ ふふ  カチ、か。  えへへ・・・

 実はさ結構これ・・・ 美味しいな〜と思ったんだよな 一口目はびっくりしたけど 

ジョーは食卓の前に座りなおすと息子が残した ジャム はちみつ マーマレード ・

トースト をのんびり平らげた。

 

 

赤みがかった茶色の瞳に じわ〜〜〜っと涙が盛り上がってきた。

「 ぼ 僕の オヤツ ・・・ 」

「 なあ ・・・すばる〜〜 ごめんって言っただろう? 」

「 ・・・ 僕のオヤツ・・・ お父さんってば食べちゃった  ・・・ 」

「 だから ごめんって。 お父さんさ〜 朝ご飯食べようと思って降りてきたら 

 と〜〜ってもおいしそうだったんで ―  それで その 」

「 僕 ・・・ 学校からかえってきたらたべるって お母さんにいっといたのに。

 僕 すごく〜〜たのしみにしてたのに  

ジョーの小さなムスコは 半分涙目になっている。

「 ごめん! な 今から一緒に トースト作ろうよ? な? 」

「 いっしょに? お父さんと? 」

「 そ! ほら〜〜 今からトーストするからさ 塗るもの、考えて すばる。 」

「 わ♪ それじゃね〜〜 え〜〜と ・ じゃむ と〜〜 はちみつ と〜〜

 おさとう と〜〜 め〜ぷるしろっぷ と〜〜 」

「 すと〜〜っぷ。 甘いものばっかだよ? 」

「 あまいの すき〜〜 」

「 う〜ん・・・ じゃ さ。 いちご のっけようよ? 生の苺をさ。

 庭の温室から摘んでこよう!  すぴか〜〜 すぴかも行かないかい  

ジョーは お煎餅をばりばり齧っている彼の娘に声をかけた。

「 ばり ばり ばり 〜〜〜  むぐ? なに〜〜〜 お父さん 

「 あのさ、 苺トースト 作ろうとおもって 一緒に苺 摘みにゆこうよ。 

「 いちごとーすとぉ? ・・・ 甘いの やだもん アタシ。  」

「 あ・・・じゃあさ プチ・トマト とか バジル とか摘んできて

 マヨネーズ・トースト するかい? 」

「 うわ♪ やるやる〜〜〜 ねえ ねえ お父さん、からしまよね〜ず って

 めっちゃオイシイよ〜〜 知ってる? 」

「 からし・・・って あの辛いやつ?? すぴか 食べれられるのかい? 」

「 ウン! だ〜〜いすき〜〜〜 しゅうまい とか ぎょ〜ざ のときに

 カラシ、たべるもん。 」

「 へえ ・・・ ま とにかく一緒に温室に行こうよ 

「 うん ! 」

親子はわらわら裏庭の温室に飛んでいった。

 

 

ザルの中には いちご。 ― 大小さまざま ・・・ ついでに熟れ具合もさまざま。

まん丸なプチ・トマト ― こちらも青味が勝っているものも混じっている。

葉っぱ いろいろ ― 多分 全部食用 のはず。温室の中にな毒になるものは植えていない。

キッチン・テーブルの上は 賑やか だ。 大収穫かもしれない。

「 わ〜〜〜 いっぱい〜〜〜 」

「 いちご たべたい〜〜 

「 まて まて。  今日は一緒に料理、だろ? 」

「 うん !  アタシね〜〜〜 カラシまよね〜ず に おしょうゆ! 」

「 僕 おさとう と はちみつ〜〜〜 

「 ( うげ ・・・ ) さあ どれにしようかな?  まずはトースト、

 作ろうよ。  手を洗って〜 」

「「 わい〜〜 」」

「 お父さんが パンを切るから。 二人でトースターにいれてくれ。 」

「 ウン 」

「 あ 包丁を使っているときに 手をださない。 あぶないからね 」

「 うん ・・・ すご〜〜 」

ジョーは パン切りナイフで結構上手にスライスをした。

子供たちは じ〜〜っと眺めて ふ〜〜〜っと息を吐いた。

「 おとうさん ・・・ ほうちょうってすごい〜〜〜〜 」

「 あ〜 これはねえ パンを切るせんもんの包丁でね そんなに切れるモノじゃないんだよ 」

「 え〜〜 パンさん、きれ〜〜うすくなってく〜〜 」

「 うおっほん。 それはお父さんの腕がいいからさ 

「 うで? お父さんの手が いいこなの? 」

「 あ〜 そういう意味じゃなくて ・・・ 

「 お父さんがじょうずってこと! 」

すぴかも側にきて口を挟む。

「 ね〜 ね〜〜〜 お父さん、 アタシもぱん、きってみたい〜 

「 お やってみるかい? ちょっとくらい厚く切ってもいいよ 

「 わ〜〜 えっとお? 」

「 そうそう 反対の手でパンを押さえて 包丁でゴシゴシやらないんだ。

 す〜〜っとひっぱるみたいに ・・・ あ 上手いぞ〜〜 すぴか〜〜〜 」

「 えへ♪ いちまい き〜れたっ♪ これ アタシ食べていい? 」

「 いいよ〜  何を乗せるか考えておくれ。 」

「 うん! アタシね〜〜 バター にうめぼしと〜ノリのつくだに! 

「 へ ・・・え ・・・ 」

「 おと〜さん。 僕もほうちょう つかってみたい。 」

「 お いいよ。 パン 切ってみるかい。 」

「 僕。 おやさい、きりたい。 」

「 やさい??  う〜〜ん ・・・ あ それじゃポテト・サラダ つくろうか? 

 晩ご飯用にさ。 お母さんのお手伝いだ。 」

「 ウン!  僕 だいすき〜〜〜〜 

「 あ アタシもすき! ねえねえ たまねぎさんとニンジンさん いれて! 」

「 おっけ〜 じゃあさ。 すばる、きゅうり、切ってみようか。 」

「 キュウリ? ・・・ すきくないけどきる! 

「 自分で切ったキュウリならオイシイさ。 え〜〜と これ、切ろう。

 お父さんの隣においで。 

「 うん。 」

すばるは ものすご〜〜〜く真剣な顔でまな板の前に立った。

 

 ― その日。 すばるは初めて包丁を使い キュウリを薄切りにした。

ちょびっと厚ぼったい < 薄切り > だったけれど、 彼はと〜〜〜っても満足し

晩御飯にゆっくり味わいつつ嬉しそうに食べていた。

 

そして その日から < ほうちょう > は 彼の憧れとなった。

キュウリやナスが上手に切れるようになると 次はジャガイモに挑戦した。

「 ジャガイモの方を動かしてゆくんだよ。 ナイフはあんまりゴシゴシしない。 」

「 こ  こう・・・? 」

ぷっくりした短い指が 懸命にナイフを握っている。

「 そうそう ずず〜〜っとジャガイモをまわしていってごらん。 」

「 う  うん ・・・ 」

小さな手に ジャガイモがやけに大きくみえる。

「 お〜〜〜 上手いぞ〜〜 その調子 ・・・ 

「 う うん ・・・ 

すばるは寄り目になりそうなくらいじ〜〜っとナイフとジャガイモを見つめている。

「 ほ〜ら〜〜〜 ちゃんと皮がむけてきたよ〜〜 」

「 う うん・・・・  はあ〜〜〜 」

やがて切れ切れの皮をそこいらへんにまき散らしつつ なんとか・・・ ジャガイモは

剥けた!

「 ・・・ や た・・・! 」

「 すごいぞ〜〜 すばる。  もう一個、チャレンジしてみるかい。 

「 ウン!  やる。 

すばるは再び 黙々とジャガイモに取り組み始めた。

 

「 ・・・ ジョー ・・・ 大丈夫かしら ・・・ 」

フランソワーズはガス台の前からチラチラ・・・心配そう〜に見ている。

「 大丈夫、上手いもんさ。 な すばる? 」

「 う うん ・・・ 」

今のすばるには ジャガイモとナイフしか目に入っていない。

「 ・・・ あ ・・・・ 指 切りそう〜〜 」

「 平気だよ、あれはペティ・ナイフだから切れ味もそんなに鋭くない。

 それに ちょっとくらい指 切っても、それも勉強さ。 」

「 え でも・・・・ 」

「 きみだってちょっとした怪我くらい、しただろう? 料理を教わったころにさ 」

「 え ええ ・・・ それは そうだったけど・・・ 」

「 なんでも練習だよ。 」

「 そう ねえ ・・・ でも ジョーって案外お料理するのね? 

 もしかして 料理少年だったの? 」

「 いやあ ・・・ ぼくはさ 出来ることはなんでもしなくちゃならなかったから・・・」

「 え? 

「 育った施設はさ、人手不足で・・・買い出し当番とか料理当番とかあったんだ。

 だから  ― まあ さんざん手を切ったりヤケドしたりしたけど ね 

「 ごめんなさい。  ― ありがとう ジョー ・・・・ 」

「 え?  」

「 あ〜〜〜 ジョーがすばるのお父さんでほっんと〜〜に よかったわ♪ 

「 あは?  ・・・お。 全部剥けたかい、すばる? 」

「 ・・・ ウン!  お父さん〜〜〜 

すばるは 剥き終えたジャガイモ ― 見た目はドガヒョガしてたけど ― を前に

得意満面に に・・・っと笑った。

 

 それから ― 指をちょいと切ったり 熱いフライパンに触っちゃったり 湯気で

思わぬヤケドをしたり − いろいろあったが すばるは < 料理少年 > に成長した。

 

 

「 お母さん? その人参、 面取りしないとダメだよ。 」

「 え〜〜〜 面倒くさ ・・・ 」

「 煮しめは手抜き厳禁。  あ 膾は僕がやるから。 手、ださないで。 」

「 ― わかりました。 

数年後には 島村さんちのお節料理はほぼ・・・すばるの手作りとなった。

 

    便利で助かるけど ― あの 上から目線 はなんなの〜〜〜〜

 

こと料理に限っては すばるが岬の家に君臨していた。

 

 

  さて。  島村すぴかさん は。

 

「 それ  なあに、おじいちゃま。 」

リビングで手紙を書いていた博士の手元に すぴかの視線はくぎ付けだった。

 

 

Last updated : 05,24,2016.                     index       /      next

 

 

*********  途中ですが

え〜〜 お馴染み 【 島村さんち 】 シリーズ? です〜〜

双子ちゃんの < こだわり > について ・・・