『 冬来たりなば ― (1) ―  』

 

 

 

 

 

 

 

 

    ぴゅう〜〜〜〜〜〜  ・・・・  !

 

温暖なこの地域にも 木枯らしの前触れがやってきた。

「 きゃ ・・・ すごい風ねえ   ああ 落ち葉が ・・・ 」

フランソワーズは 庭箒で慌てて落ち葉を押さえた。

 

町外れの海に近い崖に建つちょっと古びた洋館 ―  そこには白髭のご隠居さんと

彼の娘夫婦と思われるカップル、そして彼らのチビっこ達が暮らしている。

皆 外見は日本人離れしているのだが ― 若奥サンは フランス人! ―

中身はしっかり日本人。

特に 双子のチビっ子達は < 生まれも育ちも > この町、

毎朝 ランドセルを鳴らし元気いっぱい地元の小学校に通っている。

 

洋館の周囲には裏山につながる広い庭があり 多くの庭木が植えてある。

春には新芽をみつけ 夏には濃い葉影で休み 秋は紅葉を愛で 冬は常緑樹に飾りをし

 家族たちは庭を楽しんでいる。

 

「 ふう〜〜〜 紅葉は綺麗だけれど ま〜〜すごい落ち葉ねえ ・・ 」

 

秋もたけなわなある朝、 フランソワーズは庭に出てきてため息をついた。

庭には 色とりどりの葉がモザイク模様を描いている。 なかなか美しいのだが・・

 

「 やっぱりお掃除しなくちゃ。  庭掃除は土日にぼくがする! な〜んてジョーは

 言ってるけど 週末まで放っておくわけにはゆかないわ  」

ちょっと時間もあるし・・・ と 彼女は庭箒を持ち出し、落ち葉かきを始めた。

「 ・・・ この国に落ち葉は 綺麗ねえ ・・・ パリのマロニエもキレイだったけど

 黄色が多かったわ ・・・  ほら 赤 に オレンジ に 黄色。

 茶色くなったのもいいわねえ ・・・ 」

落ち葉を集めつつ 彼女は秋の色彩をおおいに楽しんだ。

「 えっと・・・ これは・・・そうそう、堆肥にするといいんだったわ。

 とりあえず 袋に入れて ・・・  あ 〜〜〜 」

 

   ぴゅう〜〜〜〜〜〜〜〜〜   

 

一陣の風が 彼女の作業を ゼロ に帰してしまった。

 

「 〜〜〜 あ 〜〜〜〜  あ ・・・ また庭に戻っちゃったわ ・・・・ 」

やれやれ ・・・ 大きく吐息をつけば ―

 

    す  ぅ   ・・・・・   冷たい空気が 一筋流れてきた。

 

「 ・・・ ああ  寒い季節の前触れ なのねえ ・・・

 そういえば 朝晩はずいぶん冷え込むようになったもの  」

ほ・・・っと 指先に息をかけてみれば 随分を冷えているのに気づいた。

 

   あ !

 

「 いっけない! 毛糸! 毛糸 買ってこなくちゃ! 」

 

島村さんちの奥さんは 庭箒も落ち葉の山もほっぽりだし家に駆け込んだ。

「 すぴかと約束してたのに〜〜  < よやくだよ〜 > って

 すばるも言ってたのに〜〜 たいへん!  」

コートを羽織り お財布を買い物用トートバッグに放り込むと

フランソワーズは 玄関から飛び出した。

「 〜〜〜 っと今からなら 23分のバスに間に合うわ!

 駅の向こうのスーパーに行けば ― 毛糸 あるわよね〜〜 

 う〜〜〜 加速そ〜〜〜ちっ ! 

彼女は本気で 奥歯を噛むと全速力で急坂を駆け下りていった。

 

 

フランソワーズは 毎年冬を前に家族の冬支度に精をだす。

この地域は比較的温暖なので 分厚いセーターはほとんど必要がない。

でも 朝晩には マフラー と 手袋 は恋しくなるのだ。

裏山の木々が色とりどりになると 彼女は家族に尋ねるのだ。

 

    「 さあ 今年はどんな色がいいかしら。 」

 

「 ね〜ね〜〜〜 アタシ、 黒 黒の手袋! 

「 え 黒?  ピンクとかブルーが可愛いわよ すぴか 

「 くろ。 アタシのは黒で編んで〜〜〜 

「 ・・・ いいわ。 

「 りぼんとかつけないでね ?? お花のししゅうとかもだめ。 」

「 ・・・ ボンボンは? 」

「 ん〜〜〜〜 二つ なら いい。  」

「 わかったわよ ・・・ 」

「 おか〜〜さ〜〜ん 僕 きょうりゅういろ! 」

「 きょうりゅういろ?  ・・・ 恐竜の色 ってこと? 」

「 そ!  そんでね〜〜 がお〜〜〜ってかお、ししゅうして ! 」

「 はいはい じゃあ ・・・ 濃い黄緑 かな〜〜 」

「 きょうりゅういろ だよ お母さん。 」

「 わかったわよ。  」

「 ね〜〜 おじいちゃまにはァ〜 ちゃいろがいいよ〜 

「 どうして?  茶色、お好きかしら 」

「 だってね〜 おじいちゃま、 僕のかみ なでなで〜〜して

 いい色だのう〜〜〜 ってにこにこ〜〜するもん。 

「 あ そうねえ。 すばるの髪、 お気に入りですものね 」

博士はこの小さな孫息子を とても可愛がっている。

彼が いつもにこにこ・・・のんびりほんわかしている所も気に入っている・・・・らしい。

「 おか〜さん。 お父さんにはねえ 空色! 空色がいいよ ! 」

すぴかが金色のお下げを振り振り 声を上げる。

「 空色? 」

「 そ。 だってね〜〜 お父さんってば  すぴかの瞳はキレイだね〜〜

 お母さんと一緒だね〜 ってにこにこしてるもん。 」

ジョーは ― 彼の細君には相変わらずの首ったけな上に 彼女の容姿を

色濃く受け継いだ彼の娘には大甘で もうもう掌中の玉 なのだ。

「 ふふふ そうね それじゃ お父さんには水色、 おじいちゃまには

 茶色 にしましょ 

「 ・・・ でもでも〜〜 おとうさん、すばるの髪はお父さんといっしょ・・・って

 なでてくれる ・・・ 」

「 おじいちゃま ね。 すぴかの瞳は空より海よりキレイだ〜〜って 」

すばる も すぴか も なんだか目がうるうるしている。

「 はいはい わかったわ。 それじゃ ね、 こんなのはどう?

 おじいちゃま も おとうさん も 茶色と水色両方つかうの。

 模様いり よ。 」

「 わあ〜〜〜 」

「 どんな模様がいいかなあ 二人で考えてくれる? 」

「「 うん !! 」」

「 それじゃ そろそろ毛糸を買いにゆきましょうか 」

「 おか〜さん は? 

すばるが目をくりくりさせて聞いてきた。

「 え? 」

「 おか〜さんは 何いろにするの? 」

「 え ・・・ そう ねえ ・・・ ? 

「 おか〜さん ぴんく がいいよ 」

「 え ピンク? 

「 そ。 おか〜さん かわいいから。  ね〜〜 すぴか? 」

「 うん! おか〜さん かわいいもん。 ぴんく がいい。 

「 ピンク ねえ ・・・ 

「 き〜〜まり。  おかいもの、ゆこうよ〜〜  」

「 あら 毛糸はまだ買わないわよ 」

「 え〜〜  」

「 もう少しした方がね、いろんな色の毛糸がお店に並ぶの。

 そうしたら ・・・ すぴかの黒やすばるの黄緑色の 

「 きょうりゅう色! 

「 あ〜 その 恐竜色 の毛糸を買ってきましょうね。 

「 おじいちゃまの茶色におと〜さんのみずいろに〜〜  

「 おか〜さんの ぴんく も! 

「 そうね〜 楽しみにしててね。 」

「「 わあ〜い  」」

 

   ―  そんな会話をしたのだから 新しい手袋 は必須!なのだ。

 

 

「 よいしょ  よいしょ ・・・ ふう〜〜〜 」

一時間後  フランソワーズは両手に嵩張る袋を下げて坂道を登ってきた。

「 ふ〜〜〜  重くはないんだけど ・・・ 持ちにくいし〜〜〜 」

彼女だとて 003、普通の女性よりずっと重いモノでも平気で持てるし

坂道だってへっちゃらなのだ。

 事実 双子が赤ちゃんの頃 母は前と後ろに赤ん坊をくくりつけ 

両手に買い物袋を持ち 日々がしがし・・・坂道を登っていた・・・

 

「 でもね〜〜〜 妙に軽くてでもがさがさ持ちにくいのね〜〜 

わっせ わっえ ・・・ と 大汗かいて毛糸の包を持ち帰った。

 

 

  ガサ。  リビングのソファに色とりどりの毛糸が広がった。

 

透明な包みを開け、もふもふの玉を取りだす。

「 うふふ・・・ この手触り 好きだわあ〜〜  

 冬がくる! って感じ ・・・ ふふ ・・・ ママンも毛糸、好きだったわね 」

懐かしい手触りは 懐かしい日々の想いおこさせる。

「 そう よ ・・・ あの頃 ・・・ もっともっと寒かったわ。

 こんなに明るくて温かい秋の日 なんて知らなかったもの ・・・

 でも ― あの頃 ・・・ いつだってシアワセだったわ いつだって ・・・ 」

知らず知らずに 涙が滲んできてしまった。

もちろん 今、幸せだ。 愛する夫に愛する子供たち ・・・ 十分にシアワセだ。

 

  でも。  やっぱりあの頃が ―  懐かしい。

 

 

「 ほうら ファン お手々をおろさないでちょうだい 」

「 う  うん ・・・ ママン ・・・ 」

小さな女の子は 毛糸を掛けた腕がだんだん下がってきてしまっている。

母はセーターを解いた毛糸を洗い、それをまた編むために玉にしているのだ。

その作業を 小さな娘が手伝っている。

「 あとちょっとよ がんばって 

「 はあい ・・・ これ パパのせーたー? 」

「 そうよ。 パパの古くなってセーター。 お気に入りだったのよ〜〜

 これにね モヘアを足して ジャンとファンのセーターを編むわね 

「 わあ〜〜〜 パパのせーたーで?? すご・・・ 

「 うふふ・・・モヘアが入るからあたたかくなるわ〜〜 

 どんなデザインが好き? ファン  

「 え・・・っと ・・・ あ! えりのとこにぼんぼんつけて〜〜 

「 ボンボンね いいわ。 襟元にボンボンね 

「 うん!  わあ〜〜〜 たのしみ〜〜〜  

「 あ ほら。 お手々を動かさないで  

「 ・・・ はあい ・・・ 」

 

  くる くる くるり。  ふんわりした毛糸玉がたくさん出来上がった。

 

「 まあ まあ 綺麗にできたわ〜〜  ファン お手伝いありがとうね 」

「 うふふ・・・ ねえ お兄ちゃんのはどんなの? 」

「 ジャンの? そうねえ ・・ パパのセーターと同じデザインのが欲しいんじゃない? 」

「 うふふふ ・・・ お兄ちゃんってば お父さんのまねばっかり〜〜 」

「 そのうちね〜 自分だけの好みを見つけるわ 

「 アタシはぁ〜 ママンとかみのいろ おなじだしぃ〜 

 ママンといっしょの色とかもようのがいい〜〜 」

「 あら ファンはファン、 ママンはママンよ。

 ファンには ・・・ そうねえ ピンクとかよりも 空の色が似合うわ

 瞳の色と同じでしょう? 」

「 うん・・・ 」

「 だから ほら・・・ この毛糸でマフラーを編んであげる。

 セーターとも合うでしょう? 」

母は 毛糸玉をふたつ、合わせてみせた。

「 わあ〜〜 ほんとう〜  ママン すごい〜〜 」

「 ふふ ・・・ それじゃ もうちょっとお手伝い、お願いね 」

「 はあい 」

 

  コ −−−−−   あの頃のスト―ブの音さえ聞こえてくる。

 

「 ・・・ 毛糸の色合わせを教えてくれたのもママンだったわ ・・・

 毎年、 冬になるのが楽しみだったわ ・・・ 」

ソファに上に広がった色とりどりの毛糸にそっと触れる。

「 ねえ ママン? わたしもね ママンになって こうやって

 家族のために冬支度をしているのよ? ふふふ ブキッチョだったちっちゃな

 ファンが ねえ 〜って ママンってば笑っているんじゃない? 」

 

  ころころ ころり。  穏やかな秋の陽射しに 毛糸玉はこんなにも鮮やかだ。

 

ひとつ ふたつ ・・・ 手に取ってみればほんわり温かい。

「 ふふ ・・・ ねえ ママン?  毛糸ってどうしてこんなに温かいのかしら。

 こころまで ほわ〜〜んとしてくるわ・・・

 ねえ ママン? 手袋の編み方、ちゃんとならっておけばよかったなあ〜 」

コドモたちのリクエストに応えて たくさんの色を買ってきた。

彼女が今、家族と生きている時代、普通の毛糸玉はそんなに高価なものではない。

そして そんなに高くなくて既製品を買うこともできる。

「 でも わたしは編みたいの。  家族のために編み物をする・・・って

 ちっちゃい頃からの夢だったんだもの。 」

故郷から遥か遠いこの極東の地で 本来なら生きる時間の違う青年と結ばれ

愛しい子供たちにも恵まれた。

生まれ育った時代には二度と戻れないけれど 今は日々微笑んで暮らしている。

 

     これは  しあわせの色 ・・・ ね。

 

フランソワーズは ひとつひとつの毛糸玉にそっと口づけをした。

「 そうだわ。 アルベルトやジェットや ・・・ ええ、皆にも編むわ! 

皆に送るクリスマス・プレゼントに足しましょう 」

でも手袋はちょっとねえ ・・・ う〜〜ん?  と 彼女は考えこむ。

「 ジェットはすぐに無くしそう ・・・  アルベルトは 毛糸の手袋は

 ちょっとムズカシイわね。 雰囲気にも合わないし ・・・ 

 ピュンマは仕事用の専門手袋があるわね きっと。

 グレートは そうね きっと キッドの上等なのしかはめないわね。

 大人は  生がいちばんやで! って言うわ  ジェロニモ も・・・ 」

彼女はしばらく毛糸を手に取って眺めていたが ・・・

「 うん。 皆には マフラー にするわ! 

 

  さて 誰に何色を編むか??

 

う〜〜〜ん ・・・ これは超難問だわ!

さんざん迷った末 ― フランソワーズが選んだのは ・・・

 

アルベルトのマフラーは  グレーにピンクを混ぜる。 

そう 陰鬱な欧州の雪空に映える色だ。 ドイツの冬は空は暗く厳しいだろう。

 

今は大学で教鞭をとっているピュンマには 故郷を思い出す濃いグリーン。

 少し すばるの きょうりゅう色 を足す。 ワイルドでいいんじゃない?

 

ジェロニモには 大地の色。 そこに温かい太陽の赤を混ぜる。 彼の笑顔のように・・・  

それはこの巨躯の仲間の顔色にたいそう映えるだろう。

 

グレートは 白。 純白はオシャレなイギリス紳士にぴったりだ。

それはまた自在な色を演じるかの名優に相応しい。

 

大人には オレンジ。 温かいキッチンの色。 そして万能の炎の色だ。

焼き尽くすこともあるが 凍える身体と心を温めてくれるから。

 

そして 問題のジェットには。

う〜〜〜ん ・・・ もうよくわかんないわあ〜〜〜 と最後に決めた。

赤毛の飛行人?は パッチワーク風極彩色、今回用意したすべての色の毛糸を使う。

あら これはウチの裏山の紅葉みたいね と 彼女は笑う。

 

「 うふふ〜〜〜 これで決まり♪  さあ〜〜 頑張るわ! 」

 

まずは コドモたちの手袋から ・・・ と 彼女はすぴか と すばる の

手を思い浮かべ ざっとゲージを取った。

「 ふんふん ・・・ 今年からはミトンじゃないからね〜〜 

 ちゃんと五本指のを編みます。 すぴかのは 派手めなボンボンを二つづつ。

 すばるの 恐竜色 には おっきなおっかない口と がお〜〜って炎を刺繍しよ。 」

 

  カチ カチ カチ ・・ 編み棒がリズミカルに動いてゆく。

 

 

「 ただいま〜〜〜   ・・・ あ 冬の準備? 」

その夜、ジョーは リビングに入るなり目ざとくソファの隅に置いた毛糸を見つけた。

「 お帰りなさい 夜は冷えるわね 」

フランソワーズは飛んでいって彼女の夫からコートを受け取った。

「 ウン ・・・ ね〜〜 あれ 毛糸だろ? 

「 ええ そうよ。  皆の手袋、編もうと思って  

「 あ〜 もうそんな時期なんだなあ  今年はどんな色を編むの? 」

「 うふふ〜〜 ひ み つ☆ 出来上がったら見せるわね。 」

「 ふう〜〜ん 楽しみだなあ〜〜 チビ達にも編むんだろ? 」

「 ええ。 すぴかのリクエストはねぇ・・・黒なの 」

「 黒?? へえ〜〜〜〜 アイツも女子なんだねえ 」

「 え どうして? オンナノコなら ピンクとかクリーム色とか でしょう? 」

「 あれ 今時、女子は黒 だよ?  ウチの編集部の若いコたちなんて

 コートも手袋もクツも黒って多いぜ? 」

「 それは お仕事をしているような方たちでしょう? 」

「 うん お〜えるのひとたち 

「 すぴかは まだ小学生ですもん。 普通 赤! とか 濃いピンク じゃない? 」

「 そうかなあ〜 水色とかうすい紫とかの服、着てるコ みるよ? 」

「 あ  そうね〜〜 教えのチビちゃん達も 水色や青のレオタード 多いわ 」

「 だろ?  にしても 黒かあ〜〜〜 うん なかなかシックな好みだなあ すぴかは さ。 」

「 シックとかじゃないの。 ・・・ 黒なら強そうだから、ですって。 」

「 つ 強そう???  アイツ まさかケンカとかしてるんじゃ 」

「 それはさすがに ・・・ でも ドッジボール とか 縄跳びとか で

 男子と競っているらしいわ。 

「 へ え ・・・ 」

「 今日もね〜 裏庭で特訓されちゃったわ 」

「 特訓って 鉄棒の? 」

「 ううん 鉄棒は遠慮したわ。 そしたら 縄跳びが出てきたの 」

「 へえ〜〜〜 」

 

 

「 うん、てつぼうはね〜〜 アタシがクラスのちゃんぴおん! 」

すぴかは金色のお下げをぶんぶん振ってみせた。

「 チャンピオン?  」

「 そ! 足かけ前回り10れんぞく〜〜 とか エア逆上がり〜〜 できるの、

 アタシだけだも〜〜ん♪  たいいくの やまだ先生にもほめられたよん 」

「 そ うなの・・・ すごいわねえ〜〜 すぴか 」

「 うふふ〜〜〜 おかあさん、てつぼう とくいだった? 」

「 え? お母さんは 鉄棒、できません。 おかあさんの学校では

 鉄棒はならいませんでした。 

「 へえ〜〜〜 つまんなくなかった? 」

「 ・・・ べつに。  あ 縄跳び はやったわよ。 

「 そうなの? じゃ いっしょにやろ?? ね〜〜 アタシのとくべつなわとび、

 貸したげるからさ〜〜 」

「 そうね〜  じゃ 裏庭でやりましょうか 」

「 わ〜〜い♪ 」

 

自宅の裏庭で ― 003は 小学生の娘に完敗を喫した。

 

「 は〜 は〜〜〜 は〜〜〜〜 ・・・ 」

「 おか〜さん ちがうよぉ〜  はやぶさ はね〜 二重とびの間に

 交差とび、いれるんだよ〜〜 」

「 ・・・ く ・・・  むり かも 」

「 やってみるまえに むり〜 は やくそくいはん! 

「 は はい ・・・ 」

「 い〜い? 二重とび と 二重とびのあいだにね〜 さっとこうさとびする

 んだよ  ほら みてて! 」

「 ハイ ・・・ 」

「 〜〜〜 はっ! 」

すぴかは 実に身軽に二重跳びを10回ほど続けると〜〜〜

 ひょい  ひょい  ひょい  と 交差飛びを入れた。

「 う  わ ・・・ 宙に浮いてる ・・・ 」

フランソワーズは 心底感心して娘の < はやぶさ > を見つめていた。

「 〜〜っと 10!  わお〜〜 10回できたよ〜〜 はやぶさ!

ほっぺをピンクにして ちょぴっと息を弾ませ、 すぴかは に・・・っと笑った。

「 すご〜〜〜い すぴか〜〜〜  

「 えへへへ ・・・・ さ おか〜さん やってみて! 

「 え ・・・ 今の はやぶさ を ・・? 」

「 そ。 ほら アタシのお気に入りのなわとび、つかってい〜から 」

「 ・・・ ハイ ・・・ 」

フランソワーズは 娘のなわとびを受け取った。

「 ま〜ずは! にじゅうとび 10かい! 

「 〜〜〜〜〜 ん〜〜〜〜 」

 

    ひゅん ひゅん 〜〜〜  ほら〜 あきらめちゃだめっ!

 

すぴかの < とっくん > は 空が夕焼けになるまで続いた。

 

 

「 ぶはは ・・・ それで フラン、はやぶさ は出来るようになったのかい? 」

「 むり〜〜 でした。 ねえ 笑いごとじゃないわよ〜〜 」

ほら 見てよ? と ジョーの細君はスカートをたくし上げ形のよい脛を見せた。

「 ? ・・・ あれ  どうした、その赤いスジ? 」

「 縄跳びの縄が当たったの。 いった〜〜〜 って言ったら すぴかってば

  『 そんなの なめとけばなおるよっ 』 ですって。 」

「 あははは ・・・ そうそう そんなコト、言われたよ〜〜 小学生のころ 」

もうジョーはお腹を抱えて笑っている。

「 そりゃね すぴかは舐めとけば治るでしょ。 でも わたしの人工皮膚はね

 博士に修繕して頂かないと自然治癒しません。 

「 だよなあ ・・・ ごめん 笑って ・・・

 でもさ ウチのお嬢さんの運動神経の凄さってばハンパじゃないな〜

 ぼく達の頃だって はやぶさ を軽く10回も跳べるヤツってそうそういなかったよ?」

「 そうなの? ・・・ まあ 元気なのはいいことだけど ・・・ 」

「 よしよし 今度の日曜、ぼくがお相手するよ。 ま〜〜 縄跳びくらいなら

 負けないさ。 」

「 そう?  あ 鉄棒はダメよ? ジョーがぶんぶん回ったら・・・ 

 裏庭の鉄棒は曲がってしまうわ 」

「 りょ〜かい。 で そのお嬢さんのお好みは黒の手袋なんだ? 」

「 そ。 刺繍はだめ、リボンもいらない。 ボンボンも二つまで だそうです。 」

「 ふふふ すぴからしいや。 」

「 オンナノコなのに ・・・ フリルやレースで飾りたいのに〜〜〜 」

「 そりゃ 無理さ。 すぴかはそういう好みじゃないんだよ 

「 う〜〜〜ん ・・・ しょうがない わね ・・・ 」

「 ははは ・・・で すばるは? 」

「 ジョー あなたの息子さんは きょうりゅう色 がお好みですって 」

「 きょ きょうりゅう色?? なんだ そりゃ?? 」

「 プテラノドン とか プロントザウルス のことだって 」

「 ・・・あ〜〜恐竜かあ ・・・ その色?? 茶色とかじゃなのかい 」

「 ううん、 なぜか濃い黄緑。 そこにおっかない目とがば〜〜〜って開いた口に

 トゲトゲの歯 を刺繍してほしいんだって 」

「 へ〜〜〜〜〜  ・・・ ああ アイツ、ず〜っと恐竜のリュック、 

 背負ってるもんなあ 」

「 そ。 一年生の頃 縫ってやったでしょ、『 これがいいだもん 』 だって 」 

「 あ〜〜 わかるなあ〜〜〜 ぼくもさ〜 これがいいんだもん。 」

ジョーは にこにこ・・・鞄の中から < お弁当袋 > を取りだした。

結婚前、彼が今の編集部でバイトを始めたころにフランソワーズが縫ったものだ。

もう何年も彼は使っている。

「 ふふふ ・・・ 洗濯しますからね。 明日は違う袋、使ってね 

「 う〜ん  今 洗えば明日の朝までに乾くよね? 

「 多分 ・・・ 」

「 じゃ すぐに洗ってくる 

「 ついでに〜〜 手 洗って ウガイ! ご飯にしましょ 」

「 は〜い 」

彼は そそくさ〜〜 とバス・ルームに消えた。

 

 

「 おと〜さん!  きょうりゅうごっこ しよ〜 」

「 きょうりゅうごっこ?  お〜いいぞ、ここでやるかい 」

日曜の朝、すばるがにこにこ・・・ジョーの手を引っ張った。

父親によく似たセピアの瞳をきらきら〜〜させている。

「 え〜 ううん〜〜 外だよぉ〜〜 おと〜さん、 きょうりゅう は

 お家の中にはいないで〜〜す 

「 あ それもそうだな〜 それじゃ 裏庭でやるか? 

「 うん! いこ〜〜 」

「 よしよし ・・・ 」

 

数十分後 ・・・

「 !?  ちょっと ・・・ なに やってるの〜〜〜 」

洗濯モノを乾しに来たフランソワーズの眉が つつつ〜と吊り上がった。

 

   ―  ジョーは息子と一緒に まさに < きょうりゅう色 > となり 

つまり、本来の恐竜の色、泥だらけになり 裏庭で転げまわっていた・・・

 

 

Last updated : 11,28,2017.                  index       /      next

 

 

************  途中ですが  

お馴染み 【 島村さんち 】 シリーズ♪

なんてことない季節話 ・・・ 毛糸の手袋、い〜ですよねえ

< はやぶさ > 今はもうとてもできません ・・・