ひっそりと4人だけで形ばかりの祝い事をすませて。
ジョ−とフランソワ−ズの新しい日々がはじまった。
取り立てて華やかではないけれど しっとりと落ち着いた日々が流れてゆく。

秋がゆっくりとその裳裾を 野に 山に そして 町の街路樹にも ひろげはじめるころ、
フランソワ−ズは しばしば ひとりで外出するようなった。 

レッスンにも几帳面にかよい、この邸の主婦としても忙しいだろうに その合間を縫って、それも
なぜか 嬉しそうに ・・・
ある日は 百合の花束をかかえ、 また 次は小菊をブ−ケのように纏めて。

 
   − どこへゆくの。 

  何気なく訊けばいいんだろうね、 でも。 
  あんまり楽しげなきみの様子に  僕はなにか気後れしてしまって。
  目のはじっこで きみの姿を追いながら 無関心な振りをして
  でも 本当は。
  全身できみの後を 追っている。

  本当に<寝食を共にする>ようになってから。
  僕は なんか臆病になってしまった・・・。 
  そうなんだ、 やっと手にいれた宝物を失うのが怖くて。
  夢にまで見た日々が 現実になったのが時々信じられなくて。
  なんにも持っていなかったあの頃、 僕には怖いモノなんか
  何にもなかったのに。


   − どこへゆくの。

  今は そんな簡単な言葉を口のすることが できなくて。

  やっときみがいつも隣にいるのが当り前になったのに。
  身体の距離がこんなにも近く、ひとつになったら  そうしたら。
  こころが 気持ちが 
  見えなくなってしまった 見失ってしまったのかな。
「 きみ、 つぎに休暇が取れるのはいつ? なるべく早くがいいんだけど  」
「 ? 」
「 フランスは 遠いよ! でも。 きみの 御両親と ・・・お兄さん、のところにもゆかなくっちゃな。

   みなさんの 大事な人を どうぞ 僕にまかせてくださいって・・・・・。 
   そして、 僕を みなさんの家族の一員に加えてくださいって、ね。 」

「 ・・・・ ジョ− ・・・・・ 」


墓地の傍らに 赤い花が秋風にゆれている。
目に沁みるほどの その 赤 に
ふたりは  同じだけの想いを 重ねていた。 
これまでも そして これからも いつまでも。

『  彼岸花  』

   **** 管理人の嬉泣き ****

『 Eve Green 』 の めぼうき様から
当サイト一周年のお祝いとして 
拙作『 彼岸花 』 に素晴らしいイラストを
二枚も!!頂戴しました♪♪♪

これを書いた時はかなりめげていて、幸せな
二人からエネルギ−が貰いたくて・・・(^_^;)
素適絵で 100倍癒されました(感泣)

めぼうき様! ありがとうございました!!



Last updated: 04,27,2004.       
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( 抜粋  全編は <文章・一>へどうぞ )