『 明日もいい天気 ― (1) ― 』
かちゃかちゃ じゃ〜〜〜 がさごそ
そんなどこの家庭からでも聞こえてくる < 朝の音 > が
ここ ― ギルモア邸でも盛大に響く。
「 すばる〜〜〜 歯磨き 終わりましたか〜〜 」
「 ・・・ む〜む〜〜〜〜 」
「 え?? まあだ? 」
「 まだ! おか〜さん すばるってば〜〜
はみがき なめてるんだもん。 いちごあじ おいし〜って 」
「 もう! すばる、はみがき 食べない!
すぴかさんは? もう終わった? 」
「 うん! ほら みて〜〜〜 」
「 どおれ・・・ わあ〜 ぴかぴかだあ〜
じゃ 幼稚園の制服に お着替えしましょう ? 」
「 うん え〜と せいふく どこ〜 」
「 ほら ソファのとこに制服 おいてあるから。
一人でできる かな〜〜〜? 」
「 できる! 」
「 そう? じゃ すばる、見てくるから お着替えしててね〜 」
「 うん! アタシ ひとりで できるも〜〜ん 」
「 そうね 」
フランソワーズは エプロンで手を拭いつつ バス・ルームに
駆けてゆく。
「 すばる?? はみがき ・・・ うわ?? 」
「 ・・・ おか〜さん ・・・ おみず だしたら じゃ〜〜って 」
洗面台の周りを びたくたにして ― 本人もびたくた になって
すばるば 半ベソになっている。
「 あ〜〜〜 びしゃびしゃねえ 」
「 ぼ 僕ぅ〜〜〜〜 ・・・ ひっく! 」
「 あ 泣かない!! ほら これで拭いて 」
バサ〜〜〜 母は バスタオルを息子のアタマからかぶせた。
「 むに?? 」
「 はい くしゃくしゃくしゃ〜〜〜 して 」
「 む むにゅ〜〜 」
彼女の息子は バスタオルの中でもごもごしている。
「 ほ〜〜ら すっかり拭けたかなあ〜〜〜 」
「 えへ えへへへ〜〜 ごしごし〜〜〜 」
「 おか〜さんッ アタシ せいふく きれた〜〜〜 」
バタンッ すぴかが飛び込んできた。
「 ああ すぴか・・・ ちゃんと着られたかな〜 」
「 うん! あれえ?? すばるは? 」
「 む〜〜〜〜 ここ ! 」
「 うわ?? たおるおばけ?? 」
「 そ〜だよ〜〜ん♪ 」
「 あはは〜〜〜 くしゃくしゃ〜〜〜 」
「 うふふ くしゃくしゃ〜〜 」
コドモ達は バスタオルの中と外で互いにもみくちゃになっている。
「 あ〜らら・・・・ すばる? ちゃんと拭けた? 」
「 え へへへ〜〜 」
「 じゃ 制服に着替えよっか 」
「 あ〜〜 うん 〜 」
「 アタシ いっしょするよ〜ん 」
「 すぴかさん お願いね〜〜 」
「 わはははは〜〜〜〜 」
「 うふふふふ〜〜〜 」
双子たちは 団子になりつつリビングに駆けていった。
ふう ・・・ やれやれ・・・
なんとか なる か・・・
洗面台の周りは びたくただけど そこは目を瞑ることにした。
防水コーテイングがしてあるし ― なんとかなるだろう。
さて 急がなくちゃ〜〜
フランソワーズはエプロンと外しつつ リビングに戻った。
「 じゃあね ママン、レッスンに行ってくるから ・・・
二人とも いいコで幼稚園 行くのよ〜〜
」
チビ達は なんとか制服を着て帽子も被り 準備おっけ〜 の様子だ。
「「 はああ〜〜い 」」
「 博士 お願いします 」
「 おうおう これはワシの役目じゃから 任せておくれ。
ちゃんと園バスに乗せるよ 」
「 おじ〜ちゃまといっしょ〜〜♪ 」
「 いっしょ〜〜♪ 」
「 すみません ・・・ 」
「 ほらほら お母さんや。
はやく行きなさい、30分のバスに遅れるぞ
」
「 はい イッテキマス 」
「 いってらっしゃ〜〜い おか〜さ〜〜ん〜〜
あ アタシ〜〜〜 おと〜さん おきて〜っていってくる 」
「 僕も 僕も〜〜〜 」
「 ほう それじゃ 二人に頼むかな? 」
「「 うん !! 」」
おと〜さ〜〜ん と 叫びつつ子供たちは二階へ
駆け上がってゆく。
「 ふふ ・・・ ジョーよ? すぐに台風がゆくぞ?
寝坊大王 も起きざるをえんだろう ・・・ 」
博士は 苦笑しつつ チビっこ台風 を見送った。
― 十分後
寝ぼけマナコのお父さんに < いってらっしゃい > を
してもらい、 双子たちは機嫌よく出かけていった。
「 おと〜〜さ〜〜ん いってきま〜〜〜す 」
「 ま〜〜〜す 」
「 おう 〜〜〜 」
チビたちのキンキン声は 晴れた空に吸いこまれてゆく。
「 やれやれ ・・・ 」
ジョーは スウェットの裾をひっぱりつつ 庭用サンダルをつっかけ
ぽてぽて・・・ 玄関に戻ってきた。
「 う〜〜・・・ いくらぼくでもなあ〜〜〜 二人いっぺんに
のっかられると ・・・ ううう・・・どっか破損してないかなあ
あとでちょこっと加速してみるか ・・・ う〜〜 」
お腹をさすり さすり 009は 玄関からバスルームへ。
「 はあ〜 顔も洗ってなかった な・・・ 」
びちゃん。 彼のスリッパは見事に水没した。
「 おわ?? なんだ びしゃびしゃじゃん ・・・?
あれえ・・・ 洗面台からか? 」
気がつけば 隅っこにバスタオルが捏ねてある。
「 ・・・ ははあ〜〜 チビ達 水飛ばしたなあ?
やれやれ よっと〜〜 」
ジョー は ハナウタ混じりにバスタオルを洗濯カゴに放り込み
雑巾を持ってくると丁寧に周りを拭いた。
「 ふんふ〜〜ん♪ これでさっぱり〜〜
あ そだ〜〜 ついでにやっとくかあ〜〜 」
彼は ズボンの裾をまくりあげると 洗面台と
さらに 風呂場までちゃちゃ〜〜っと掃除し始めた。
「 おっけ〜〜っと。 さあ 朝メシ〜〜〜 ♪ 」
さらにさらに上機嫌で ジョーはタオルを首に キッチンに降りていった。
「 朝メシ〜〜〜 おお オムレツ〜〜〜 ♪
フランのオムレツ〜〜 冷めても美味しいんだぜ?
ああ シアワセだなあ〜〜〜 」
ジョーは たちまち朝食を平らげた。
「 あ〜〜 ウマかった♪ これが家庭の幸せさ ・・・
あ 洗濯モノ! 出勤前に乾しておかなくちゃな 」
彼は ささ〜〜〜っと食器を洗い ( シンクに置きっぱなし
だったすばるのカップも洗った! )
バスルームに駆けていった。
「 ほい ただいま ・・・ ジョー? 」
博士が コドモ達を園バスに乗せ、戻ってきた。
「 ?? もう出勤したのかな 」
「 あ 博士〜〜〜 お疲れ様です〜〜 」
外からジョーの声が 飛んできた。
「 ジョー? どこだい 」
「 裏庭で〜〜す 洗濯モノ干し場 〜〜 」
「 おお 頼むなあ 」
「 はい〜〜〜 」
彼は ご機嫌ちゃん なのだ。
「 ・・・ ふうむ ・・・ ほんに変わったヤツじゃなあ 」
ぱたぱたぱた サンダルを鳴らしジョーが戻ってきた。
「 乾し作業 完了〜〜 ぼく 出勤しますから
博士〜〜 午後に取りこんでくれますか 」
「 ああ 任せておくれ 」
「 お願いしま〜す じゃあ イッテキマス 」
「 おいおい ちゃんと着替えろよ? 」
「 あ いっけね〜 ははは ジャージで出勤するとこでしたよ〜
ちゃちゃ・・・っと着替えてきます〜〜 」
彼は くすくす笑いつつ 二階に上がって行った。
「 ・・・ アイツ ・・・ ほっんとに
100% 天然 なんだなあ 」
どうして 彼が009なのか?? 博士はしばし
アタマを抱えて考え込んでいた。
「 あ いってきま〜〜〜す 」
ジョーは 日本晴れ?の笑顔で 悠々と出勤して行った。
― さて 時計の針はぐる〜〜っと巡り 午後となり・・・
「 ただいま戻りましたッ ! 」
バタン。 ぼん。 ごとん。
玄関のドアが開き フランソワーズの声がする。
「 コドモたち お迎えに行ってきます〜〜 」
「 ああ お帰り。 頼むよ
ああ 洗濯モノは取り込んでおいたから 安心をし 」
「 ありがとうございま〜〜す いってきます! 」
博士の声に返事をしてすぐに玄関から また飛び出してゆく。
シャ −−−−− ・・・・ !
ほどなくして銀色の 一見・ママちゃり が
邸の前の急坂を おっそろしいスピードで降りて行った。
「 ふんふ〜ん・・・ ああ いい気持ち♪
もうすぐ春〜〜〜 あ チビ達の春服、用意しなくちゃね〜
あっという間に 大きくなるから た〜いへん 」
シャ −−− 自転車は軽快に商店街通り目指し走っていった。
園バスの停留所?まで飛ばすと 待つほどもなく園バスがやってきた。
「 はい しまむら すぴかちゃん すばるクン
さよ〜なら〜〜〜 」
「 「 さよ〜ならあ〜〜〜 めぐみせんせい 」」
若いお姉さんみたいな幼稚園の先生が 双子をバスから
降ろしてくれた。
「 しまむらさ〜ん 失礼しま〜す 」
「 やまだ先生〜〜 ありがとうございました〜 」
フランソワーズは 丁寧にお辞儀をする。
「 ただいま〜〜〜 おか〜さ〜〜ん 」
「 おか〜さ〜〜ん 」
ど 〜〜〜 ん ・・・ !
色違いのアタマが 左右から抱き付いてきた。
「 は〜〜い お帰りなさい すぴか すばる。
元気でお友達と遊びましたか 」
「 うん! アタシね〜〜〜 てつぼう やった! 」
「 ・・・ 僕 でんしゃでね〜〜 ご〜〜って 」
「 そうなの? さあ お家にかえりましょうね〜
すぴかさん すばるくん 自転車にのって 」
「 うん! アタシ まえ! 」
すぴかは 一人でさっさか自転車の前座席によじ登る。
「 僕 ぅ ・・・ おか〜さんのうしろがいい〜 」
「 いいわよ、ほら すばるクン 乗ってください。 」
「 う〜〜〜 」
「 おか〜さん アタシ じゅんびかんりょう〜 」
「 はい。 お母さんも乗りました。 すばるクン? 」
「 ・・・ おか〜さん のせて 」
「 自分で乗れるでしょう? お母さんのコートに掴まっていいから
えいっ! て 登ってごらん? 」
「 ・・・ 僕 ぅ ・・・ 」
「 ! すばるってば〜〜 」
すとんっ!
「 あ すぴか 」
すぴかは 身軽に前座席から飛び降りると たたた〜〜〜っと
弟の脇に駆け寄った。
「 すばる〜 いっ せ〜〜の〜〜せっ ! で じゃんぷ 」
「 ・・・ すぴか 」
「 い? いっ せ〜の〜せっ ! 」
「 ・・・せ・・・! 」
同じ日に生まれた姉に オシリを押してもらい
すばるは なんとか後ろ座席に転げこんだ。
「 ぼ 僕 のれた ・・・ 」
「 さあ お母さんのコートに掴まって すばるクン 」
「 う うん
」
「 ぱぴゅっ! ・・・ のったよ〜〜 アタシ! 」
すぴかは 自転車の前までダッシュし 即行で それこそ
飛び上がるみたいにして 前座席に座った。
「 おか〜さん いこ! 」
「 ― すぴかさん すごいわねえ〜〜〜 」
「 えへへ〜〜 」
このコ、 確かにジョーの子だわねぇ
すばるのビビリは 誰に似たのかなあ・・・
同じ日に 二人ともこのわたしから生まれたのよねえ
― どうしてこんなに違うの?
フランソワーズは 最近つくづく思うのだ。
同じ両親から生まれ 最も長く < 一緒 > にいるはずなのに
二人のこの違いはなんなのだろう と。
すぴかは 見た目 は 母に似ている。
すばるは 見た目 は 父の小型版だ。
だけど。
中身 は 母とも父とも ぜ〜〜〜〜〜んぜん違う。
そして お互いも ま〜〜〜〜〜ったく違う性格なのだ。
「 ふう ・・・ 子育てとは まったく未知との遭遇だわ 」
「 おか〜さん! みち が なに?? 」
耳がいいすぴかが 母の呟きをすぐに拾いあげる。
「 え? 」
「 みち いつものみち だよね? 」
「 あ? え ええ そうよ。 いつもの道を通って
ぱぴゅ〜〜〜っとお家に帰りましょう 」
「 うん! びゅう〜〜〜ん って いこ! 」
「 そうね? よ〜〜〜し お母さん はりきっちゃう〜〜
すぴか すばる? しっかり掴まってるのよ〜 」
「 きゃい〜〜♪ 」
「 ・・・ ぼ 僕 やだ! おか〜さん びゅう〜んって やだ 」
後ろから 半ベソの声が聞こえてきた。
きゅう〜〜〜。
母の背中に生暖かい存在が 張り付いてきた。
「 すばる? 大丈夫 怖くないから 」
「 やだ! びゅう〜〜んって やだ! 」
「 そんなに飛ばさないわよ 大丈夫。 でもね しっかり
捕まっていてね 」
「 ・・・ やだ ・・・ ひっく ・・・ 」
「 すぴかさ〜〜ん すぴかさんも しっかり掴まって 」
「 りょ〜〜かい! 」
え〜〜い ここは ホンキだそっかな〜〜
ぐい。 フランソワーズは 自転車のペダルを力強く踏み込んだ。
ばびゅ〜〜〜ん!
前と後ろにチビを積みこんだままちゃりは 信じられない速さで
急な坂道を 駆け上がっていった。
「 ただいまあ〜〜〜 おじ〜ちゃまあ〜〜〜 」
「 ・・・ただいま ・・・ 」
「 戻りました〜〜 さあ 二人とも 手を洗ってウガイして
」
「 はあい。 あ せいふく おきがえするね 」
「 そうね すぴかさん、すばるクン お着替え してきましょう 」
「 はあい。 すばる いこ! 」
「 あ うん ・・・ 僕のおくつ ・・? 」
「 え?? あら 片っぽ どこ? 」
「 僕のおくつ ・・・ 僕のおくつ ない〜〜〜 」
「 あらら 自転車に乗ってる間に 落としちゃったかしら 」
「 あ〜〜 そうかも〜〜 すばるってば 」
「 うう・・・ 僕のおくつ ・・・ 」
すばるは またもじわ〜〜〜〜っと涙目だ。
「 泣かない! 大丈夫 お母さんが探してくるから。
さ すばるクン、すぴかさんと一緒にお着替えしていらっしゃい 」
「 すばる〜〜〜 いこ! 」
「 う うん ・・・ 僕のおくつ ・・・ 」
「 いこ! 」
すぴかは 弟の手を握り ずずずず〜〜〜っと引っ張っていった。
「 すぴかさ〜〜ん お願いね〜〜
えっと すばるの靴は ・・・? ちょっとルール違反だけど 」
彼女は じ〜〜〜っと宙を睨む。
ん〜〜〜〜〜〜 ・・・・ あった!
すばるの片っぽの靴は 坂の途中に転がっていた。
「 み〜〜つけた♪ うふふ〜〜 003でよ〜かった♪ 」
玄関をそっと開けると 彼女は身軽に駆けていった。
「「 ごちそ〜〜さま でした 」」
オヤツを食べ終わり 食卓の前で双子はきっちり手を合わせた。
「 はい。 じゃあ 二人とも手を洗ってきてから
< おしごと > お願いします。 」
「「 はあい 」」
すぴかは 子供椅子から飛び降り すばるはずりずり〜〜にじり降り
バス・ルームに駆けていった。
「 ・・・ やれやれ ・・・ 」
母は 溜息をつきつつ、散らばったビスケットのカケラとか
お煎餅の粉を拾い、テーブルにこぼれたミルク・ティの雫を拭きとる。
「 ・・・ ま 元気でなにより か・・・ 」
ドタドタドタ ・・・・ チビ達が戻ってきた。
「 おか〜さん! おしごと するね 」
「 おしごと 〜〜〜 」
「 はい お願いします。 エプロン しましょうね 」
「「 うん♪ 」」
お揃いのエプロンを着せてもらい 双子はご機嫌ちゃんで
玄関に向かう。
双子には < お仕事 > がある。
すぴか は 玄関の掃除。
すばる は 玄関前の小路の 門までの掃除。
博士が作ってくれた チビ・箒を二人とも結構上手に使うのだ。
この < お仕事 >、一度は 取り替えっこ をしたけれど
すぐに 撤回された。
なぜって ―
すぴかは 玄関の外にでれば 庭中、箒を持って走りまわり
すばるは 靴箱の中身を、家族全員の靴をひっぱりだしていたから。
「 二人とも〜〜 お仕事、終わったかな〜 」
しばらくすると お母さんが買い物カートをひっぱり
玄関に現れる。
「 アタシ おわった〜 きれいにしたよ 」
「 あらあ〜〜 すぴかさん すご〜〜い お玄関 ぴかぴか♪
と〜〜ってもキレイになったわあ 」
「 えへへ ・・・ おぞうきん でね ごしごしした!
」
「 すごい! お雑巾、使ったの? 」
「 ウン。 おと〜さんに きいた 」
「 まあ すごい! ありがとう すぴかさん 」
「 えへへ ね おつかい ゆく? 」
「 ええ 行きますよ。 すばるクンは お仕事 終わったかな 」
「 すばる〜〜〜 ? 」
すぴかは もう玄関から飛び出している。
「 おか〜さん すばる おわったって! 」
「 そう? すばるクン? 」
母も 外に出てみれば 彼女の息子は 枯葉や落ちた枝を
丹念に箒で集めていた。
「 あ おか〜さん すぴか〜 」
「 すばるクン お掃除は終わりましたか 」
「 ウン。 あのね〜 はっぱのしたに 虫さん がいた! 」
「 まあ そうなの? 」
「 うん。 虫さん とうみん してたのかな〜 」
「 そうかもね そうっとしておいてあげたら? 」
「 うん! 僕 またはっぱ、おいてあげたの 」
「 すばるクン ありがと〜〜って 虫さんが 」
「 えへ〜〜〜 」
どうりで 門までの通路にはあちこちに枯葉が寄せてあった。
・・・ ま いっか。
掃除したことには変わりないし・・
フランソワーズは いろいろ細かい点には悩まない。
というか 目を瞑る。
だって! そんなヒマ ないんですもの!
うだうだ・くよくよしてたら 御飯を作れなくなっちゃうのだ。
「 さあ〜〜 二人とも? お仕事 終わったかな〜 」
「「 うん !! 」」
「 はい ありがとう。 じゃ エプロン、外して お手々洗って。
そしたら コートを着ていらっしゃい。
お買い物に行きますよ〜 」
「「 わい〜〜〜 ♪ 」」
チビ達は 先を争ってバス・ルームにいった。
オヤツとお仕事が終われば お母さんと一緒にお使いに出かける。
下の商店街まで晩ご飯の材料を買いにゆく。
駅向こうの大型スーパーの方が安いし必要なものは
たいてい揃うので便利なのだが ―
商店街の方が いいわ。
いろいろなお店があって 楽しいし・・・
皆 優しいのよ、お店のヒトも町のヒトも。
チビ達も 買い物や荷物持ちの練習になるわ。
ここは 本当に暮らしやすい町よねえ
フランソワーズは 子育てをしつつローカル・ライフを
上手に楽しんでいた。
「 おか〜〜さ〜〜〜ん はやく いこ〜〜〜 」
「 いこ〜〜〜〜 」
チビ達が 門の側で待っている。
「 はいはい 今 行きますよ〜 ちゃんとコート、着たかな〜 」
「「 きた!!! 」」
「 では しゅっぱ〜〜つ ! 」
「「 しゅっぱ〜〜つ〜〜〜 」」
そ〜らは あおぞら い〜てんき〜〜♪
三人は 手を繋いで坂道をとんとんと〜ん ・・・と降りて行った。
― さて。 その夜のこと ・・・
賑やかな晩御飯が終わり 歯磨きをし おやすみなさい をして。
お父さんはまだ帰ってこないけれど すぴかもすばるも
パジャマで 子供部屋に駆けてゆく。
しばらくして フランソワーズが静かにリビングに戻ってきた。
「 ふう ・・・ 」
「 チビさん達は 寝たかい? 」
「 はい。 すぴかなんか ベッドに潜ったまま すぐにことん。 」
「 あはは すぴからしいのう〜〜 すばるは? 」
「 お話 二つして やっと寝ましたわ 」
「 そうか そうか ・・・ 母さん、お疲れ様じゃったな 」
「 いいえぇ ・・・ まだ もう一人。 」
「 おお そうじゃなあ そろそろ帰ってくる かな 」
「 そうですねえ ・・・ 」
「 ・・・ お前も大変じゃなあ 」
「 ふふ もう慣れました ・・・ あ お茶、淹れなおします? 」
「 いいよ いいよ。 ワシももう寝るとしよう。
おやすみ フランソワ―ズ 」
「 お休みなさい 」
博士は 湯呑みと 英字新聞を持って寝室に引き上げていった。
ふう ・・・ そろそろ 帰ってくる かな〜〜〜
フランソワーズは テーブルの前で熱々のお茶を ゆっくり楽しむ。
今日もあれこれ忙しかったけど なんとか皆笑顔で終わった と思う。
あ〜〜〜 ・・・ いいわぁ〜〜
彼女はこのひと時が お気に入りタイム なのだ。
― やがて ・・・
カチャリ。 玄関のドアが静かに開いた。
「 ただいま 」
「 ジョー! お帰りなさ〜〜〜い ! 」
フランソワーズは 全てを放りだし玄関に駆けてゆく。
「 お帰りなさい! お疲れさま〜〜 」
「 フラン ただいま 」
大きな手、暖かい手が 彼女を抱き寄せる。
しなやかな腕が 彼の首に絡みつく。
うふ・・・ お帰りなさい
ただいま ・・・
< お帰りなさいのキス > は 二人が結婚した日からの
習慣なのだ。
「 夜はまだ冷えるね 」
「 そうね 熱々のけんちん汁よ 」
「 うわお♪ いいねえ〜〜〜 」
「 手 洗ってウガイしてきてね 」
「 ウン。 あ ちょっとさ チビ達 見てくるね 」
「 ええ。 布団からはみ出てたら 掛けてやってね 」
「 了解♪ 」
ジョーは バス・ルーム経由で子供部屋に上がってゆく。
「 ・・・ とんとん? もう寝てるよなあ 」
彼は 足音を忍ばせチビ達のベッドの側に寄る。
すぴかは ぐ〜ぐ〜眠っている。
ベッドからころがり落ちても そのままで寝てる子なのだ。
すばるは タオルケットを抱きしめ 眠っている。
眠っていても ほんのり笑顔 な子である。
「 すぴか すばる ・・・ ぼく達のとこに
生まれてきてくれて ありがとう ・・・ 」
ジョーは いつになくじ〜〜〜っと我が子達の寝顔を眺めていた。
「 ― あ〜〜〜 美味しかった ・・・ ! 」
ジョーは 満足気に箸を置いた。
「 よかったわ あ デザート、召しあがる?
イチゴがあるのよ 」
「 あ う〜〜ん ・・・ 今晩は いいや 」
「 そう? ― ねえ なにか あった? 」
「 ― え。 どうして 」
Last updated : 03,31,2020.
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*********** 途中ですが
お馴染み 【 島村さんち 】シリーズです。
中途半端なトコロで終わっていて すみませぬ〜〜〜
もう一回 お付き合いくださいませ <m(__)m>