『  おつかい  ― (2) ― 』

 

 

 

 

 

 

 わたし  この能力   ( ちから )  嫌い

 

彼女は 振り絞るみたいな声で ぼそっと言った。

「 ・・・ え ? 」

「 ・・・・・・ 」

振り向いたジョーは 彼女がそっと涙を抑えているのを見てしまった。

「 ・・・・ 」

彼は なにも言えず ―  そっと彼女の肩を抱き寄せた。

ほっそりとした身体が すとん ・・・と 彼の腕の中に落ちた。

「 あ  ごめ・・・  

彼はあわてて離そうとしたが。

「 ・・・ ううん  ごめん ちょっとだけこうしててくれる?  」

くぐもった彼女の声が 聞こえた。

「 あ ・・・ き きみがよければ ・・・・ 」

「 ごめん ・・・ 」

ジョーの胸で 金色のアタマが小さく震えていた ・・・

「 ・・・・ 」

彼は ただ ただそっと そのほっそりとした背中を撫でていた。

育った施設で 泣きじゃくる幼い子供をなぐさめていた時みたいに。

 

 

   そう なのだ。  

 

フランソワーズは 本当に自分に搭載されてしまった特殊能力を嫌っていた。

憎んでいた、と言ってもいい。

やっと脱出した後、なんとか平穏な日々を得てからは

頑なに その稼働を拒んでいた。

 

   そう なのだ  ―  が。

 

「 すぴか〜〜〜〜   どこ いったの〜〜 お返事はあ〜〜〜 

庭に出て フランソワーズは声を張り上げる。

「 ・・・・ おか〜さん 

脇では すばるがしっかりと彼女のスカートを握りしめている。

「 すばる。  すぴか、どこに行ったの? 」

「 ・・・ しらない ・・・ 」

「 だって一緒にオヤツ 食べていたでしょう? 

「 しらない〜〜  すぴか おやつもってった ・・・ 」

「 え〜〜 オヤツを?  もう〜〜  ちょっと目を離したら  ・・・

 すぴか〜〜〜 ( 感度 レンジともに アップ ! )

「 おか〜さ〜〜〜ん 」

「 ??  すぴかさん どこ 」

「 き のうえ〜〜〜 

「 え? ( ず〜〜む !  あ いた !  木の 上 ! ) 

 すぴか!  いま お母さんが助けにゆくからねっ  」

彼女は 裏庭の樫の樹の下にとんでいった。

「 すぴかさん そこにいて!  お母さん、今のぼって 」

「  え〜〜 いい〜〜  アタシ いくよぉ〜〜 

「 え??  あ きゃあ〜〜〜 だめぇ〜〜〜 」

「 ぽ〜〜ん  」

 

    ばさ。     ・・・・ すとん。

 

フランソワーズは 木の上から飛び降りてきた娘を 

無事に抱き留めることができた。

 

「 わ〜〜〜い 」

「 ふう〜  すぴか〜〜〜  わ〜い  じゃあありません〜〜 

 ( あ〜〜〜 003 でよかった〜〜〜 )

「 おか〜〜さん すぴか とんだよ〜〜 」

「 すぴかさん。  とばなくていいの。 それに オヤツ・・・

 ごちそうさま、してないでしょう? 」

「 した! アタシ ちゃ〜んと ごちそ〜さま してから

きのぼり、 したの。 」

「 あのね、お庭に出るときはお母さんに言ってから。 いい? 」

「 アタシ いったよ〜〜 

「 お母さんは聞いてません。 それから木登りはだめ。 

「 なんで〜〜〜〜  

「 だって・・・ 落ちたら危ないでしょう? 」

「 アタシ、おちないもん。 

「 ん〜〜〜  それじゃ 木登り、するときもお母さんに言うの いい? 」

「 おか〜さん いないときは 

「 お父さんかおじいちゃまに言うの。 いい? わかりましたか 」

「 ・・・ ウン ・・・ 」

「 でも・・・ 高いトコまでよく登ったわねえ 〜 怖くないの? 

「 こわくない〜〜 きのぼり だいすき〜〜〜 」

「 ・・・ ( こりゃ 庭への監視レベルは最高にしておかなくちゃ・・・ )」

お母さんは ちょっと困った顔をしたけど すぴかの金色のアタマを

優しく撫で撫で〜〜〜 してくれた。

 

    部分・サーチ、 開発しなくちゃ・・・

 

003はこそ・・・っと呟いていた。

 

 

「 すばる〜  行きますよ〜   」

玄関で待つフランソワーズは 少々イライラしてきた。

毎朝のことなのだが  ―  すばるは登校するための支度が 遅い。

同じ日に生まれた姉・すぴかは せっかちだし早く登校したいので

弟を待っていてはくれない。

「 アタシ 先 行くね イッテキマス〜〜 

「 すぴかさん。 ちょっと待っててあげてくれない? 

「 なんで??  アタシはちゃ〜〜〜んと用意してご飯もたべて

 歯磨きもしたんだよ?  いく!  」

「 ええ ええ そうね。 でもね ちょっとだけ ・・・ 」

「 ちょっと ってどのくらい? 一分? 二分? 」

「 え〜〜と もうちょっと・・・ 」

「 やだ。 すばるがのろくさしてるのがいけないんだもん。

 アタシ、 ゆみちゃん達となわとび するんだもん。  いく! 

「 ・・・ わかったわ。  いってらっしゃい 気をつけてね 

「 はあい♪ 」

ため息まじりの母に ほっぺに ちゅ してもらい

すぴかは 元気いっぱい坂道を駆け下りていった。

 

「 すばるっ  はやくしなさいっ 」

母の声音は またワン・トーン上がった。

「 う〜ん ・・・  おか〜さん  行けない〜 

ランドセルを背負ってはいるが 茶色アタマがのんびり玄関にやってきた。

「 なんで。    どこか痛いの?   」

「  ん〜んん   僕のこうぼうさん   いない  」

「  え!? 」

「   こうぼうさん たびにでたのかなあ〜  お〜い こうぼうさ〜ん 

「    すばる 昨日 どこに置いたの? 

 校帽をおくとこ 決まっているでしょう?   」

「 ・・・ う〜ん  わすれた〜  

「 もう〜 〜〜 早くしないと遅刻よ!   」

「 でも こうぼうさん   どこかなあ  」

 

    ぷつ。  のんびり息子に 母はキレた。

 

    家中 ず〜〜〜む アップ ・・・ !  

      ん〜〜    

 

「 すばる! お部屋のベッドの向こう側!   みていらっしゃい  早く! 」

「 お部屋? あ〜 そうかあ〜〜 

「 はやくっ!  ランドセルはここに置いてっ 」

「 わかった〜 」

ぱった ぱった ぱった。  彼は普通の足取りで二階に上っていった。

 

 そうなのだ。

この時期 ―   ちょこまかするチビどもの 監視! 彼女は 003の能力を

存分に駆使した。 

そして ついには部分的にズーム・アップできるまでになっていた。

 

余談だが ・・・

「 なに?  003のスーパー視覚?  ・・・ いや改造なんぞしておらんぞ。

 ああ 精度アップはしたが。  部分ズーム?? そんなことはやっとらん 

ギルモア博士は言下に言い切った。

 と  すれば。  彼女は彼女自身で < 能力 > を アップさせたわけだ。

「 ・・・ ひえ〜〜〜 すっげ〜〜〜 フラン〜〜〜〜 

ジョーは密かに 妻の特殊能力? に 畏敬の念を抱いた・・・

 

  そんなフランソワーズではあるが。

ただし  ダンサーとして生きる時には サイボーグ的な能力一切を使わない。

視聴覚はもちろん、体力やバランス感覚についても だ。

毎朝  レッスンのためにスタジオに入る時

彼女は すべての サイボーグ体 としてのスイッチを オフ にする。

   そして フランソワ−ズ・アルヌール  として活動する。

 

朝のクラス ―  ピアノの音がながれ ダンサーたちは粛々とレッスンを受ける。

声をあげるのは 主宰者として指導をするマダムだけだ。

 

「  ほら〜  そこ 上に抜いて〜   

センターでは アダージオ、 数名のダンサーが踊る。

後列の金髪が ぐらり、と揺れた。

「 ! ほら 足に頼ってるからよ 引き上げて〜   」

「     

金髪は 頷くと 途中からついてゆく。

 

    ああ〜〜〜  脚 〜〜 落ちた ・・・

    う〜〜ん ・・・ !

 

バランス センサー  オン すれば 難なくこなせるだろう。

 

    でも  ―   それは  わたし じゃないもの。

    ぐらぐら〜〜 してるのが 本当のわたし。

 

きゅ・・・っと唇を噛み 二度めには絶対揺れない! とすみっこで

自習する。

 

「 はい そうでしょ  脚だけでおどらない 」

二回目は なんとか踊りきった。

 

    ふう ・・・ まだまだ ね ・・・

 

「 あ ・・・ フランソワーズ?  ピルエット、首のつけ方、もうちょっと

 〜〜〜 待ってから返す! あと一回転 増えるわ 

「 は はい ・・・ 

朝のプロフェッショナル・クラスでは 皆 三回転くらい平気で回る。

フランソワーズも 回転技は得意なつもりだった。

でも ダブルがせいぜいでトリプルをトライするとどうしても

着地がズレてしまうのだ。

 

    ・・・ う〜〜〜ん ・・・

    ニホンジンって ほんと 腰が強いのねえ ・・・

 

ウラヤマシイ・・・と本当に思う。

 

    でも ここで踊ってゆくんだから

    ― 頑張らなくちゃ !

 

ブランクがあったし その後復帰した後も妊娠・出産で休まざるをえなかった。

勿論、 それはシアワセな理由なんだけれども。

 

    ついてゆくわっ ! 

    踊れるんだもの、最高に幸せよね フラン?

 

タオルで汗と一緒に滲んでくる涙を拭う。

 

「 Next !  アレグロね〜〜  右足前 から〜 」

ほっとするヒマもなく 彼女はマダムの指示に集中した。

 

     え? え?   ブリゼ・ボレ で バッチュいれて??

    う〜〜〜〜 マダムのアレグロって〜〜

 

    も〜〜〜 なんなのぉ〜〜〜

   

アレグロ は 昔から苦手だった。

それなのに この主宰者の老婦人は滅茶苦茶に凝った振りをつける。

そしてダンサーたちはごく当たり前の顔で踊るのだ。

 

    うそ〜〜〜 どっち 向いてるの  え?え?

 

「 フランソワーズ!  顔の向き、ちゃんと付けてごらん? 」

「 ・・・ 

「 そうね〜〜  ちゃんと覚えてね  」

「 ・・・ 」

こそっと後ろに下がり ぶつぶつ・・・自習をする。

 

  ― そして ラストは グラン・フェッテ。

 

「 はい 5人づつね〜〜  」

 

    う ・・・っ  やるっきゃないわ!

 

 

バランス・センサー や オート・リカバー を使えば 身体は自動的に

水平バランスをとってくれるだろう。

その上で踊れば どのパも安定してこなせる ― はずである。 

 

 

     でも。  それは わたし じゃないもの。

 

     本当のわたし は ぐらぐら〜 バランスを崩し

     アレグロを間違えちゃうし 

     グラン・フェッテ は落っこちる ・・・

 

     そう それが わたし。

 

     だから 努力してゆくのよ

     わたし が わたし であるために!

 

 

「 お疲れさまでしたあ〜〜〜 」

「 バイバイ〜〜  あ フランソワーズ〜〜  今度お茶しよ?

 ちょっとい〜感じなカフェ、みつけたの 」

「 みちよ〜〜 嬉しい♪  誘ってね〜 」

「 ウン。  アタシも今日はバイトだからさ〜  ママ がんばって 」

「 メルシ〜〜 じゃあね 」

「 じゃね〜〜 」

ひらひら 手を振り 大きなバッグを抱えて フランソワーズは

スタジオを飛び出した。

 

    ああ 今日はチビたち、 はやく帰ってくるのよね〜〜

    買い物は後回しで・・・ とにかく帰らなくちゃ!

 

出来る限り < お帰りなさい > をする。

学校からもどる子供たちを 笑顔で迎える ― これはフランソワーズが

自分自身に課している < やくそく > なのだ。

 

    もうちょっと大きくなれば ― 子供たちだけでもお留守番 できるでしょ

    でも ・・・ 今は。

 

    さあ〜〜〜 頑張れ わたし。

   

お母さん は 猛ダッシュだ。  

地元駅に降りれば  即 <  眼と耳 >   オンにする。

そして 子供たちの様子を確認  ― 学校にいる時間ならサーチは遠慮する。

「 よかった・・・ じゃ オヤツの準備ね〜〜 」

にっこり ・・・ 笑顔はなんとなく自分自身へのエネルギーにも

なるのかも しれない。   

 

この時期 ―  双子の乳幼児期 ―  どこかの敵が サイボーグ達に

ちょっかいをかけてこなかったのは 実に賢明な選択であった。

 いや  敵側にとって、賢明 なのである。

なにせ 全ての動物・鳥類 における 不動の真実 ―

 

          子連れのメスは最強 にして 危険 

 

 を 我らが003も遺憾無く発揮していたから。

 万が一 コドモらに害をなそうとしようものなら 誰であれ

彼女は一瞬の躊躇もなく即 撃破  瞬殺しただろう。

それがたとえ  ― ありえないが ―   ジョーであっても。

 

    ああ  本当に!  サイボーグ003 で よかったわ〜〜〜

 

彼女は日々 心から思い、自分に搭載された能力を駆使し そして

感謝しつつ 過ごしている。

 

 

               ******************

 

 

「 た だいまあ〜〜〜〜 」

「 ただいま 」

「 帰ったよ 

 

「 お帰りなさい〜〜 お使い ごくろうさま 

 

すぴかとすばるが お父さんと一緒にかえってくると

お母さんが にこにこ・・・玄関で待っていた。

「 お帰りなさい〜〜  ちゅ♪  ちゅ♪ 

二人ともほっぺにキスをもらって も〜〜 大ニコニコ・・・

「 ・・・ あ〜〜〜 いいな〜〜〜 二人とも〜〜〜 」

「 ジョーったら・・・ お父さんは あと。 」

「 ちぇ 」

お父さんとお母さんの間に 子供たちが割り込んでくる。

「 おか〜さん!  あのね あのね  やおやさん うりきれ〜〜 でね。

 すばると えきまえす〜ぱ〜 にいったの。 」

「 まあ ありがとう〜〜 すぴかさん  重かったでしょう? 」

「 えへへ・・・ すばると半分コでもってきた〜〜 」

「 じゃがいも! あるべるとおじさんのじゃがいも〜〜〜

 えきまえす〜ぱ〜 で かったんだ〜 」

「 ありがとう すばるも  二人でよく持てたわね 」

「「 えへへ〜〜  」」

あ そだ・・・って すぴかは ポッケの中身をお母さんに渡した。

「 おつり〜〜  と れし〜と 

「 はい ありがとう。  あら ・・・? 

 ねえ バスには乗らなかったの??  行きも帰りも? 」

「 ウン。 おかね ないもん 」

「 あ ・・・ そうだわねえ  商店街の八百屋さん 売り切れなんて

 思ってもみなかったから・・・ ごめんね〜〜  二人とも・・・

 いっぱい歩いちゃったわね 

 

    きゅう〜〜〜   お母さんは 子供たちを ぎゅ した。

 

「「 わっはは〜〜〜ん 」」

すぴかもすばるも 最高にご機嫌ちゃんだ。

 

「 うん ホントにさ ・・・ 国道で二人みつけて びっくりさ。

 早帰りの上に歩きで ホント よかったけど 」

「 まあ〜〜 そうなの〜〜 

 でも 売り切れだから駅前スーパーって よく考えたわね すぴか 」

「 えへへ〜〜  」

「 すばるも駅前スーパ―のこと、よく覚えてたわね 」

「 えっへっへ〜 」

「 お母さん 助かっちゃった。 美味しいじゃがいも料理 作るわね 」

「 ホントにすごいよ〜  さあ オヤツにしよ!

 ねえ フラン、 途中でね 団子とお煎餅、買ってきたんだ〜 」

「 え 商店街のお菓子屋さんで? きゃ〜〜〜 うれし〜〜 」

「 晩御飯前だけど ・・・ いいよね? いっぱい歩いたし 」

「 ええ ええ。 二人とも 手を洗ってウガイね〜〜 」

「 わあ〜〜〜い   」」

二人は お父さんにランドセルを預けたまま  バス・ルームに跳んでいった。

 

「 ふふふ ・・・ ああ 安心したわ 

「 うん ・・・ すごいねえ 子供の成長ってさ ・・・

 ついこの前 真っ赤な顔で生まれてきたと思ってたらさ 

「 ふふふ もう立派な 」

「 クソガキさ。  しっかしランドセルって重いのな〜〜〜 

「 そうねえ ふふふ ご苦労さま。  

 ねえ ・・・ お団子・・・ あんこのも買ってきてくれた? 」

「 はい。 きみの好きなこしあんと みたらしと。

 すぴかの好きな 海苔煎餅。  あ これはアルベルトも好きだから 

「 そうね そうね〜〜〜  うふふ〜〜〜 じゃあオイシイお茶と

 チビたちは ミルク・ティ かな 」

「 うへ・・・ ミルク・ティで みたらしだんご 喰うのかあ・・・ 」

「 ま いいんじゃない?  あ お父さんも手を洗って〜〜 」

「 はいはい ウガイしてきます。 」

「 あ その前に 」

「 うん?  あ ・・・ 」

ジョーとフランソワーズは にっこり・・・腕を絡めあいキスを交わした。

 

 

 ― 翌日。  

 

アルベルトは いつものようにごく当たり前のカンジでやってきた。

 

「 よう。 ― ただいま かな 

「 いらっしゃ〜〜〜い アルベルト〜〜〜 」

「 フラン・・・ 」

彼はごく普通に 彼女を抱き寄せ軽くキスをする。

 

    う ・・・ う〜〜

 

< 家族 > なんだし毎度お馴染みの光景なのだが

 今だに ジョーはどうも なんとも 妙〜〜〜な気分になってしまうのだ・・・

    

「 い いらっしゃい アルベルト 」

「 おう 世話になるよ  博士は元気かい 」

「 うん。 お待ちかねさ  それと ・・・ 」

「 ? 」

 

  わ〜〜〜〜〜〜  どどどどど ・・・!

 

歓声と一緒に つむじ風 が リビングから駆けだしてきた。

 

「「 あるべるとおじさ〜〜〜〜ん っ !!  」」

 

  どうん〜〜〜   色違いのアタマが飛び付いてきた。

 

「 おう〜〜〜 すぴか すばる〜〜  元気そうだな 

「 うん !  げんき! アタシね きのぼり じょうずになったよ〜〜 」

「 えへ 僕! よこすかせんの駅 ぜんぶ いえる〜〜 

「 そうか!  二人とも大きくなったんだな 」

「「 うん! 」」

すぴかもすばるも アルベルトおじさんに齧り付いていて離れない。

「 おいおい ・・・ ちょいと離れてくれないか?

 土産があるんだぞ 」

「 わはは〜〜〜い 」

「 え〜〜と ・・・ 」

アルベルトは玄関でスーツ・ケースを開け始めた。

「 あ あらら・・・ お荷物はお部屋にどうぞ?

 さあ あなた達〜〜  運ぶのお手伝いして?  それから

 お茶にしましょう  

「 ああ すまんね 」

「「 は〜〜〜い 」」

チビ達は てんでに伯父さんの荷物に取り付いた。

 

家族で テイー・テーブルを囲んだ。

双子はちゃんと行儀よくしていたから アルベルト伯父さんは

ちゃんとお土産をくれた。

「 わ あ〜い〜〜〜 」

「 すばる。 ひとつだけ よ。 いい? 」

「 う うん ・・・ どれにしよっかな〜〜〜 ♪ 」

すばる はお土産のチョコレートの箱を開け もう夢中だ。 

すぴか はドイツの街の写真集を熱心にめくっている。

「 どうだ? 興味 あるのかい 」

「 ・・・ キレイだね〜〜  いろんな髪のひと いっぱい 」

「 あ? そうだなあ  でもすぴかの髪が一番キレイだぞ 」

「 え へへへ♪ 」

「 これはね 俺の国さ。 すぴかの母さんの国の隣なんだ 」

「 ふうん ・・・ お母さんのくには ここじゃないの? 」

「 あ〜 そりゃニッポンもだが。

 すぴかの母さんの生まれ育った国は フランス だ。 」

「 うん しってる。  アタシ いってみたいな〜〜〜 」

「 おう もうちょっと大きくなったらいつでも来い。

 案内してやるぞ 」

「 ほんと??  あ でも アタシ えいご しらないよ? 」

「 ははは 母さんの国のコトバはフランス語さ。

 今はね、学校でしっかり勉強しておけよ 」

「 うん。 アタシ 『歩み』 は 全部 < よくがんばりました > だよ〜〜 」

「 そうか そうか。 うん 」

アルベルトは 相好を崩している。

 

   ・・・ ね〜  彼のあんな顔って ・・・

 

   ウン。 初めてみるね〜〜〜

 

双子の両親は こっそり・・・ 目と目で会話していた。

 

 

子供達が 遊びに出かけた後 ―

大人だけで 紅茶にブランディなどをいれて楽しんでいる。

近況報告の他には いろいろ・・・おしゃべりに花が咲く。

 

「 ねえ アルベルト。 聞いても いい 」

「 なんだ。 ・・・ あ〜〜 この海苔煎餅、 うまいなあ 

「 ふふふ ・・・ あ あのね。

 004であること ― どう思っている? 」

「 その・・普通の生活で なんだけど  

フランソワーズもジョーも ちょっと真剣な顔だ。

「 うん?   俺か。

 そうさな ―  拘りはひとつだけ だ 

「 ひとつ だけ? 」

「 ああ。  どんな時も  俺が主だ。  俺が機械の身体を使う。

 機械が俺を支配するのでは ない。 」

「 ・・・ そう そうだよね! 」

「 ええ そうね。  機械を使うのよ、わたし達。

 わたし、この便利な機械の身体を コキ使っているの。 うふふふ 」

 

三人は に〜んまり ・・・ 意味のある笑みを交わしていた。

 

 

 翌朝 ―  まだ アラームが鳴るずいぶん前の時間。

 

「 ・・・・ ん ・・・? 」

なにかの気配で フランソワーズは目を覚ませた。

「 ん ・・・ん ・・・? 」

習慣的に隣に手を伸ばしたが ― リネンはひんやりとしていた。

「 ・・・ え??  ジョー ・・・? 」

「 やあ 起こしちゃったかな  ごめん 

ベッドの外から 低い声が聞こえてきた。

「 !?  どうしたの、 ジョー 

びっくり、起き上がれば  

 

  ―  夫婦の寝室には 赤い防護服をまとい長いマフラーを流す 

       サイボーグ009 が立っていた。

 

「 !? なに ・・・か あったの?? アルベルトは ・・・ 」

「 し〜〜〜。  なにもないよ。 きみは眠っていたまえ 」

「 眠って・・・って  なんで?? 

 どうしてその恰好をしているの? 正直に教えて。

 わたしだって ! 」

「 はい きみは 003だよ。

 あの さ。 ちょいと加速装置のテスト稼働してくる。 

「 か 加速装置の ?  

「 うん。  昨夜のさ アルベルトとハナシじゃないけど ・・・

 いざって時に 動かない〜〜じゃ 困るだろ 」

「 それは そうだけど ・・・ 」

「 それに加速装置を使うなら この服じゃないと ― マズイだろ? 」

「 あ  ああ   そうねえ 

「 じゃ ちょっと海岸線を走ってくるね。  あ〜〜 窓、開けといてくれる?

 こっちから戻るから 

「 了解。  あ ちょっと待って。 五分。 」

「 いいけど・・・? 」

「 五分よ〜〜 ! 

ジョーの奥さんは パジャマのまま クローゼットに飛び込み・・

きっちり三分後に出てきた  ―  サイボーグ003 として。

「 はい お待たせ。 

「 ! え  き  きみも?? 」

「 そうよ。  003としての 超視覚と超聴覚、ばっちりチェックします。

 009の軌道をしっかり追跡するわ。 」

「 お〜 頼もしいな 」

「 だって わたしだって 003として錆び付いてちゃ 困るもの。

 はい 窓はちゃんと開けていますから。  こっち側ならチビ達は

 気がつかないわ 

「 うん。 それじゃ ― ちょっと走ってくる 」

「 了解。 」

 

   カチ。  シュ ッ −−− 

 

独特の空気の匂いを残し、 009の姿は消えた。

 

「 ・・・・ ん〜〜〜 ・・・ 感度良好〜〜〜 」

003は 009の軌道を追跡し確認した。

 

  10分後 ― 一陣のつむじ風が二階の窓に吹きこんだのだった。

 

 

「 おはよう 」

キッチンでお湯を沸かしていると アルベルトが降りてきた。

「 おはよう アルベルト。 今 熱々のコーヒー 淹れるわ 」

「 おう ダンケ。  ・・・ 今朝のウオーミング アップの調子は

 上々だな 

「 !  あら。  聞こえちゃった?? 」

「 ふふん ・・・ あの音がすると自動的に目が覚める。

 俺も しっかり アイツの足音を確認したぞ 

「 うふふ ・・・ そう?   はい コーヒー。 」

「 ダンケ。  〜〜〜〜 ん ・・・ 上手になったな 」

「 メルシ。  あら ? あなた達〜〜 もう起きたの? 

「 は? 」

 

  ぱたぱたぱた〜〜〜〜  とたたたたた〜〜〜

 

フランソワーズの言葉が終わらないうちに 

パジャマ姿がふたつ、キッチンに飛び込んできた。

 

「 おか〜さん ! おと〜さん、おつかいにいった ・・・? 」

「 え?? 」

「 おと〜さん じゃがいも かってきた? 」

「 え?? 」

 

「 おと〜さんも おつかい なんだあ〜〜 」

「 僕たちと いっしょだね〜〜 」

 

      ・・・ コドモは 何でもしっている ・・・?

 

 

 

***************************      Fin.    *************************

Last updated : 10,23,2018.                 back    /    index

 

*************   ひと言   *************

< 使っている > 限り ニンゲンだ と

思うのです。 

はい 双子ちゃんは 最強です〜〜♪♪