『  おつかい ― (1) ―  』

 

 

 

 

 

 

 

  き〜〜〜んこん  か〜〜〜〜んこ〜〜〜〜ん

 

チャイムの音と一緒に ランドセル軍団がわらわら・・・・ 門に出てきた。

「 は〜〜い 車に気をつけて〜〜〜 まっすぐお家に帰りましょ〜〜 」

「 忘れもの しないようにね〜  はい さよ〜なら めぐみさん

 ばいばい 賢人クン  」

学校の門の前では センセイ方が声を張り上げ 手を振り 注意し

・・・ いやあ もう大変である。

 

   カッチャ カッチャ カッチャ。

 

ランドセルをならしつつ 金色のお下げが出てきた。

「 たなかせんせ〜〜 さよ〜なら 」

「 はい すぴかさん さよ〜なら 

「 せんせ〜 アタシ 帰りに 〜 」

「 ああ お使いするのね、 お母さんから 連絡帳、きてますよ〜

 忘れないでお使いしてね 」

「 はいっ アタシ 忘れない〜〜  

「 そうね。  あ すぴかさん、 < お使い > は 

寄り道にはならないから 連絡帳での報告はいりませんってお母さんに

 伝えてね。 

「 はあい たなかせんせ〜。  さよ〜なら〜〜 」

「 はい さようなら  

金色おさげ は ぺこり、とお辞儀をすると たったった ・・・と

校門から離れていった。

「 ふう・・・ 保護者がみんな あのコのお母さんみたいだったら 

 本当に楽なんだけど・・・ 

 あ ! ヒロシ君! まっすぐにお家、かえるのよっ 

 あ〜〜 聞いてない ・・・ もう〜〜 」

タナカ先生は 校門の前でふか〜〜〜いため息をついた。

 

 そのころ 金色お下げ、 いや 島村すぴかさん は もう < 三本柏 > 

の交差点を渡り たったか海岸通り商店街に向かっていた。

 

「 じゃ が〜〜も♪ っとぉ〜〜〜 じゃが じゃが じゃがいも〜〜〜

 ばたーつけたのがいいな〜〜 めんたいこのせ もいいな〜〜

 ふんふんふ〜〜ん♪ 

 

すぴかはご機嫌ちゃんで歩いてゆく。

道すがらのお家の花壇をちら・・・っとみたり、 庭先にいるわんこに手を振ったり・・

ウチから学校までは 子供の脚にはかなりの道のりなのだが

通い慣れているのでへっちゃらだ。

 

お使い には 慣れていた。  幼稚園に入る前から  すばると手を繋ぎ二人だけで

地元商店街の 八百屋さん やら お米やさん にいった。

海岸通り商店街 では  岬の双子    アイドルなので  

 「 コンニチワ  くださいな〜   」  二人で店先に立つと

どこでも大歓迎してもらえた。

 「    ありがと〜でした  」 お使いを終え ぺこり お辞儀をするチビたちに

店の オジサン オバサンたちは 目尻を下げっぱなし  

中には 涙を拭いてるおばちゃん もいた。 

そして 必ずなにか小さなご褒美をもらえた♪

   だから  お使い 一番好きなお手伝い なのだ。

 

昨夜も ・・・

 

「 え  お使い?  いいよ〜 なに〜 

歯磨きにゆく前に お母さんが呼び止めた。

「 あのね 商店街の八百屋さんで じゃがいも  おねがい。 

「  じゃがいも?  おっけ〜 」

すぴかは ぐ〜〜 の〇印を指で示した。

「 ありがと すぴか   あのね 2キロおねがいできる  持てる?  

「 それ  おもい?  」 

「 そうねえ 軽くはない わね〜 

「 う〜    」

ごめん  じゃあ 一キロでいいわ それなら平気でしょ? 」

「 ほんと おか〜さん 一キロで いいの  」

「 うん。  あのね  実は明日ね アルベルト伯父さんが くるのね

 それでじゃがいもをいっぱい・・って 」

「 アタシ!  ニキロ かう!  すばると半分コで もってくる! 」

すぴかも すばるも 時々やってくる銀髪の伯父さんが大好きなのだ。

「 あ そうね、 すばると一緒なら二キロ 持てるわね 

「 ん!  校門で待ってて・・・ 一緒にいく ! 」

「 ありがと〜〜 すぴかさん。  八百屋さんのじゃがいもは 

 この土地のだから本当に美味しいの。 アルベルト伯父さんもお気に入りよ 

「 アタシもすき!  ねえ ほくほく〜にして バター がいいな〜 」

「 そうね それも作りましょ。 じゃ これ。 ポッケにいれておいて。

 あと・・・学校の連絡帳に < 寄り道します > って 先生に

 お手紙かいておいたからね  」

お母さんは 五百円玉と連絡帳を 渡してくれた。

「 おっけ〜〜〜 じゃがじゃがじゃがいも〜〜〜 」

すぴかは 五百円玉 を しっかりファスナーの付いたポッケにいれた。

 

小学生になり  帰りにお使い 頼まれることも多い。

お母さん 今日 お仕事 なので 帰りにお買いものに寄る時間がない。

   じゃがいも  いつもの八百屋さんで買うのだ。

 

「 ふんふんふ〜〜ん ・・・ あ いっけね。 すばる、おいてきちゃった〜

 ま いっか。 アタシはチカラもちだもんね〜〜  二キロもへ〜き♪

 あるべるとおじさ〜〜ん また ピアノ 弾いてくれるかな〜〜 」

すぴかは元気に 八百屋の店先に到着した。

 

「 こ〜んにちは〜〜〜  くださ〜〜いな〜〜〜〜 」

 

「 え? 」

「 ごめんよ〜〜 すぴかちゃん。 新ジャガが入ってさ〜〜 もう人気で 

 今日に限って じゃがいも は品切れなんだ 」

「 ・・・ しなぎれ?  ・・・ うりきれ ってこと? 」

「 そ〜なんだよ〜〜 明日の朝イチで仕入れるからさ〜〜  

ごめんね と 八百屋の大将は何回も言いつつ すっからかんの箱を

見せた。

「 ・・・ そ〜なの 」

「 うん だから 明日買いにきてくれるかい 」

「 はあい。  さよ〜なら 」

すぴかは ぺこん、とお辞儀して店先を離れた。

「 ごめんな〜〜〜 明日 オマケするから〜〜〜 」

大将はとてもとてもすまなそう〜〜に 言ってくれた  けど。

 

     じゃがいも  どうしよ ・・・・

 

アルベルト伯父さん は 明日ウチにくる。

その時に 熱々のじゃがいも料理がまっていたら 伯父さんはとっても嬉しいだろう。

けど それには 今日中に下ごしらえ が必要だ。

 お料理好きのすばるを見てるから すぴかもよくわかっている。

 

「 う〜〜ん ・・・   あ!  駅前のすーぱー で買えばいいじゃん! 」

 

そうだよ〜〜〜 と すぴかは一人で うんうん・・・頷く。

「 それじゃ ・・・ すばるといこ。  ここでまってれば〜〜 」

国道に ( バスが通っている ) でる角で すばるを待つことにした。

 

「 ・・・ う〜〜〜 おそ〜〜〜い〜〜〜〜 まだこない〜〜〜 」

クラスは違うけど同じ学年 ・・・ ほぼ同じ時間に < さよ〜なら > した

はずなのに  のんびり弟 の姿はまだ見えない。

「 あ きっと わたなべクンと ぶ〜らぶ〜〜ら歩いてるんだ〜〜

 も〜〜〜 おそい〜〜〜 すばる〜〜〜 」

足元の地面が ヒマつぶしに描いてた絵でいっぱいになったころ。

 

   かっちゃ  かっちゃ かっちゃ ・・・

 

「 あ〜〜  すぴかぁ? 」

の〜〜んびり茶色アタマが やってきた。

「 どしたの〜〜〜 あ〜〜〜 よりみち?? 」

「 すばるっ!!  いこっ 」

「 へ??? 

すぴかは 弟の手をむんず! と握って 国道の方にどんどん歩いてゆく。

「 すぴか・・・ こっちちがうよ〜〜 よりみち だめだよぉ 

「 い〜の!  お母さん、せんせいにおてがみ してるもん。 いこっ ! 」

「 ?? どこへ?? 」

「 だから〜〜〜 じゃがいも! 」

「 へ??  じゃがいも ・・・? 」

「 そ!  うりきれ だから えきまえのスーパー! 」

「 これから ? 」

「 そ! 明日〜〜 あるべるとおじさん くるって!  」

「 あるべるとおじさん? わあ〜〜い〜〜♪  ちょこのおみやげ〜〜 」

「 わかんないよ! だから じゃがいも! 」

「 ??  ・・・ あ〜〜 でも 八百屋さんのがいいよ 

「 八百屋さん うりきれ なの。 」

「 ふうん ・・・ えきまえすーぱー かあ 」

「 そ。 いこ。 じゃがいも 二キロ。 」

「 ふうん ・・・ ね〜〜 バス のってこ〜よ〜〜 」

すばるは やっと一緒に歩き始めた が。

「 バス のれない 」

「 なんで。 」

「 おか〜さんから これ ・・・ もらってるだけだもん。

 すばる お金 もってる? 」

すぴかは ポッケから五百円玉を出して すぐにしまった。

 ・・・ 失くしたら大変だから。

「 ひつようのないお金はもってきてはいけません 」

「 でしょ。 なら バス のれない。 二人でのったら いくらですか 

「 ・・・ わかった〜〜 バス むり〜〜

「 いこ! 」

「 ウン。 」

すぴかとすばるは ならんでてくてく・・・ 国道を歩き始めた。

駅までは一本道だし 何回もバスで通っているから 知っている道だ。

「 そ〜らは あ〜〜おぞら い〜〜てんき〜〜〜 ♪ 」

すぴかが 突然歌いはじめた。

「 ?? 青そらじゃないじゃん 

「 えんそく の歌 しらないの? 」

「 えんそく じゃないじゃん 

「 い〜じゃん 歌ったほうがたのしいもん 

「 ・・・ み〜んなげんきに〜〜 」

すばるも歌いだした。

二人は ランドセルを背負って  ―  駅前まで辿りついた!

 

「 スーパー!!!  スーパーはどこ? すばる〜〜 」

「 あっち。  やさいうりば は ちかだよ 」

何回かお母さんのお供をしているすばるは スーパ―に詳しい。

「 ふ〜〜ん あんた 先 いって 」

「 うん。 えっと・・・こっちだ〜 」

「 おっけ。 」

すばるが先になって 双子は買い物客の中に入っていった。

 

「 むん ・・・ おも〜〜〜 

レジ袋を持って すぴかは思わずよろめいてしまった。

「 二人で持てばい〜んだ  そっちのわっか かして 」

「 うん ・・・ ほい 

「 うん ・・・ おも〜〜 」

「 でしょ? 

「 いこ。 アルベルトおじさん よろこぶよ 

「 だ ね。 」

 

  えっほ えっほ えっほ  一つの袋を左右から二人で運んでゆく。

 

スーパーで 無事にジャガイモを買えた。 あとは  ― 帰るだけだ!

「 ね〜〜 すぴか。 おつり いっぱいもらったじゃん 帰り バスに 」

「 ん〜? だめ、二人でのったらたりないもん 

すぴかのぽっけは 小銭でみっちり盛り上がっている。

「 う〜〜〜 そっか〜〜〜 

「 うん。 あ ひとりなら バス、乗れるかも・・・

 すばる あんた、この袋もってバスで帰りなよ 」

「 え ・・・ すぴかは 

「 アタシは歩いてかえる 」

「 ・・・ 二人でもってこ。 

「 ん 」 

双子は 再びじゃがいも入りの袋を真ん中に よれよれ歩き始めた。

 

 ―  秋の夕方は 陽が落ちればあっという間に暗くなるのだ。

 

 

  

                **************************

 

 

 

島村ジョー君は   最近 つくづく思うことがある。

 

 ―   戦闘用サイボーグ なんて 家庭生活においては 無能無力な存在である と。

 

 加速装置?    町中で マッハは必要か?   それもあの特殊な服を着用していなければ

ワイセツ物陳列罪  である。 あの服は ・・・ めちゃくちゃに目立つ。

たちまちネットなんかに晒されるのは必須である。

こすぷれ? ・・・ やっていい場所じゃなければ やっぱ変人扱いだろう。

  

スーパーガン?   この国じゃ必要ないし  みつかったら 銃刀法違反 でヤバいことになる。 

それは絶対に避けなければならない。

あのカタチなら 水鉄砲です〜〜〜 と言い逃れできるのかもしれないけど・・・

それも夏場以外では むずかしい。

 

     でも  生きてゆかなくちゃ ならないのだ。

 

岬の家で 仲間だけでひっそり暮らしているのなら、まだなんとかなる・・・かも

しれない。 買い出しとかは必要だけど それも大型スーパーで済ませれば

顔を覚えられたりするリスクはかなり 減る。

 

 ― だけど。  今 ジョーは仕事に就き結婚しさらに子供も生まれた。

 

< 戦闘用さいぼーぐ > は もはやまったくの役立たず なのである。

まあ・・・せいぜい できるのは 腕力 を発揮するくらい かな。

 

「 あ  風呂場掃除は任せて。 ねえ ○○って洗剤 買っていいかな〜

 あと ・・・ かび・きら〜 も必要だな 

「 うん 買い出しも行くから 必要なもの、メモしといてくれる?

 海岸通り商店街、特売日だろ?  チラシ みといて・・・

 すぴか〜〜 すばる〜〜〜 おと〜さんと一緒に 買い物 いこ〜〜〜 」

「 トイレ掃除 おわったよ〜  あ 明日 燃えないゴミの日だよね

 まとめといてくれる?  うん、ぼくがもってゆくから 」

   

風呂場とトイレをぴかぴかにし買い出しゴミだしチビ達の相手…

彼は  一生懸命 そして 嬉々としてお父さん業  に邁進している。

 

  ― 仕事場でも。  今 セクションのまとめ役に抜擢されている。

 

「 報告 絶対な〜〜  あ 夕方 ミーテイングだからね

 遠出以外は 帰社して。 

「 タカハシ君  ※※せんせ〜んとこ、原稿取り たのむ〜

 え? ファックス? いや 挨拶もあるから直接会ってきてくれ  

「  タナカチーフ〜〜  新人クンと 印刷部 いってきます〜 」

 

若手と管理職の間で けっこう大変な位置であるが、 彼は機動力を生かし

くるくると動きまわっている。

 

「 島村さ〜〜ん ちょっと電話、代わっていただけません〜 」

「 なに、 アサダさん 」

「 あのね・・・ オダ君がねえ ・・・ ××先生のご機嫌を

 損ねちゃったみたいで〜〜  」

「 ! 」

 加速そ〜〜ち!!!  ジョーは心の中で唱え電話口に跳んでいった。

「 モシモシ ・・・ あ〜〜 お電話代りました

編集部のシマムラと申します〜〜〜  先生 申し訳ございません 」

ジョーは 電話を持ったまま最敬礼しつつしゃべっている。

「 ・・・・ 」

他の編集部員たちは 息をひそめていた・・・ 

「 ・・・ はい   はい  よ〜〜く指導いたしますので ・・

 はい   はい  大変申し訳ありませんでした  はい   はい

 今後とも どうぞよろしくお願い申し上げます  はい   はい  

 

  カチ。  彼は静かに電話を置くと ふか〜〜〜いため息を吐く。

 

「 あ  あの ・・・? 」

先ほどの女子社員が 心配そ〜〜にジョーの顔を覗きこむ。

「 ん?  ああ なんとか・・・ 」

「 よかったぁ〜〜〜〜 ありがとうございます 島村さん〜〜 」

「 いや ・・・ 」

「 も〜〜〜〜 オダ君ってば〜〜〜  帰ってきたら〜〜

 給湯室掃除 一週間! だわ〜〜〜  

「 ははは そりゃちょっと気の毒かもなあ 彼 まだ新人だし 

「 い〜え! 新人だからこそ です! 

アサダ女子は 激オコ・・ の模様だ。

他の社員たちも 明るい顔になってそれぞれの仕事に戻った。

「 ・・・・ 」

ジョーは 冷えたお茶を飲み干し ・・・ 気分を落ちつけた。

 

   〜〜〜 ああ ・・・  なんとか・・・

 

   いや しかし。   ・・・ ははは・・・ 最近さ

   アルベルトや皆の苦労がよ〜〜〜くわかってきた・・・!

 

   ごめん〜〜〜 あの頃のぼくってば・・・

   あ〜あ マジ 顔が赤くなるよ

 

 

あの頃 ― 最新・最強のサイボーグ戦士 として仲間に加わった 009 は。

 

「 わ?  わ〜〜〜  ぼく 飛行機なんか運転できない〜〜〜 」

「 簡単だ。 これは俺達の意志と直結している。 自分の身体だと思え 

 ちなみに、だ。 飛行機は < 操縦する > だ。 」

「 え?え??  なに?  ウソ〜〜〜 わ〜〜〜 マジ〜〜 

脱出のための超小型飛行機は 彼の機だけがやたらと宙返りを繰り返していた・・・

「 おちつけっ! 」

「 ・・・! あ  あ    ああ ・・・ 」

最後尾の飛行機は やっと水平飛行を始めた。

 

「 ! それはD13号ロボットよ!  加速装置で逃げて 」

「 か  か  かそくそ〜ち???   なに それ・・・ わ〜〜〜〜 

「 はやく!  マヒ光線をいつまでも浴びていては危険だわ! 」

「 か  かそくそ〜ちって  どこ〜〜〜 

「 !!!!  奥歯よ  奥歯の横に スイッチ、あるでしょう?? 」

「 え? え?  どっち? 上? 下?  わ〜〜〜〜 」

「 自分で探しなさいよっ あなたの口の中 でしょう?? 」

「 あ ・・・ あった〜〜〜  ぎゅ。 いてっ!!! 」

「 ? どうしたの? 稼働しない?? 

「 ・・・ いや 舌 噛んじゃった・・・ 」

「 も〜〜〜〜〜!!  落ち着いてよっ 」

彼は さんざん苦労して 加速装置の使い方 を習得した・・・

 

「 こ  こ    これ ? 」

「 スーパーガンだ。 ロボット部隊を撃破して来よう 」

「 じゅ 銃???  これ ・・・ 」

「 そうだよ。  軽いからすぐに慣れるさ  行くよっ 」

「 え?? えっと〜〜  ぜろぜろ・・・え〜と? 」

「 なに? 」

黒い肌の青年は精悍な笑顔で振り返ってくれた。

「 あ ・・・ あの これ・・・ 撃っていいのかな 」

「 ! 当たり前だろ?? 撃たなきゃ やられるよっ 」

「 ・・・ け 警察に通報されない? 」

「 はあ???  ・・・ じゃあ 僕の後ろで 見てろっ! 」

スーパーガンを駆使する008の後ろで 彼はひたすら感心していた・・・

 

     ひゃあ ・・・ ゲームかアニメみたいだ〜〜

 

つまり ジョーは < 新人時代 >、 仲間たちに迷惑をかけまくり

カバーされ 尻拭いをしてもらい ・・・ なんとか一人前のサイボーグ戦士 に

なれた のである。

 

    あ は。  あの頃のぼくに比べれば ― 

    新人クンのミスのカバーは 先輩の仕事 だよなあ

 

湯呑みを置くと、彼は次の特集の資料を調べはじめた。

 

「 島ちゃん  それ アタシがやるよ? 今さっき 帰ったばっかじゃん 」

いつの間にか セクション・チーフの タナカ女史が側に立っている。

「 あは タナカさん。 大丈夫。 ぼく 体力だけは自信あるんで〜〜 」

「 そうかもしないけど。  ここんとこずっと遅いじゃん、帰り・・・・

 早帰りできる日は チビちゃんたちと一緒にすごしなさいよ 

「 え・・ でも 

「 さ〜〜 帰った帰った。 島ちゃんが帰れば みんなもとっとと

 仕事して定時あがりだよ 

「 あ ・・・ それじゃ  すんません〜〜 」

「 すまなくないよ じゃ ね 

「 お先 失礼しま〜す〜〜 」

 

島村クン は 手早く片づけると嬉々として帰宅していった。

 

 ―  地元の のんびりした駅に着いた頃は やはり夕闇が迫りだしていた。

 

「 ふ〜〜ん ・・・ 秋は暮れるのが早いなあ ・・・

 秋の日は釣瓶落とし・・・・ か。 ? ツルベ ってなんだ?

 ・・・ ま いっか。  え〜〜と 買い物は ・・・ 」

しばらく立ち止まり 冷蔵庫や食糧庫の中身を思い浮かべていた。

「 ・・・ んっと。 あ 明日 アルベルトが来るんだったな〜

 その準備は・・・ フランが引き受けるって言ってたな

 そうだ!  商店街の和菓子屋さん、 お団子 まだあるかな〜〜

 みたらし と あんこの 買ってこっと。 」

それじゃ・・・と 駅前のバス停に並ぶ。

「 ・・・ あちゃ〜〜 行ったばっかか・・・・ 岬巡回は・・・

 うっへ 次のは30分待ちかあ ・・・ 歩いた方が早いな 

 途中から 商店街に曲がればいいし  うん。 

ジョーは荷物を持ち直すと ぽかぽか歩きはじめた。

 

 駅前から国道に出ると さすがに風が冷たい。

 

「 うへ ・・・ あ〜 そろそろマフラーの季節だなあ・・・

 あ 今年の冬は ど〜んな手袋とマフラーかな〜〜 えっへっへ〜〜

 フランの手編みなんだぜ? うっひっひ〜〜〜 」

多少アヤシイ・ヒト になりつつ歩く彼の足取りは軽い。

「 ふんふんふ〜〜〜ん(^^♪  ウチに帰るってさいこ〜〜〜だよなあ・・・

 チビ達の笑顔と あったかいご飯と へっへっへ〜〜〜

 フランが♪ ぼくの愛する・大好きフランが〜〜〜 居るんだもん♪ 」

彼は シアワセ感を満喫している。

 

 家族を背負い 仕事も忙しい ・ どこにでもいるさらりーまんだけど。

 

    ふふふ〜〜 今って人生でさいこ〜〜に し あ わ せ ♪

 

ジョーは心底そう思っている。 口元が自然に緩むのも まあ無理もないことだろう。

 

「 今晩のメニュウ なにかな〜〜 あ 秋刀魚がそろそろオイシイもんな 

 うん アレはぼくが焼いたほうがいいな〜〜 サカナ屋さんに相談だ 

 

ぽくぽくぽく・・・ 国道を歩いてゆくと  ―   あ   あれ??

 

前方に なにか見慣れた・雰囲気が 漂っている。

というか 見慣れた姿 ― ちっこい二人だ、背中に四角いモノが・・・ あ!

「 !?  もしかして ・・・ すぴか? すばる?? 」

彼は 走って追い付いた。

 

「 「  おと〜〜さん???  」 

 

勿論 すぴかとすばるはびっくりだ。  

「 わ〜〜〜 おと〜〜さんだあ〜〜〜 

茶色アタマが ぴと・・・っとくっついてきた。

「 おと〜さん! どしたの?? 」

金色お下げ が まじまじと彼をみあげる。

「 今日はお仕事が早く終わったのさ。 お前たちこそ どうしたんだ? 

 こんな時間に ・・・ 」

「 「 おつかい  」

姉と弟が声を揃えて応えた。

「 へ?  」

「 おか〜さんのおつかい。 アルベルトおじさんのじゃがいも。

 やおやさんがうりきれ だったから 」

「 す〜ぱ〜 でかったんだ〜 」

「 じゃがいも?  これ か・・・ 」

「 そ。 ふたりでもってる 

「 そりゃすごいなあ ・・・ でもバスに乗れば 」

「 おかね ないもん 」

「 ないもん。 ね〜〜〜 」

「 ウン。 ほら ・・・ 

すぴかは ポッケから小銭を出してみせた。

「 あ ・・・ そ〜うだねえ・・ タイヘンだったね、二人とも。

 えらいなあ〜〜〜 じゃがいも 重いだろ?? お父さんが持つよ 」

ジョーは子供たちがもっているレジ袋に手を伸ばした。

「 だめ。 おか〜さんから たのまれたおつかい だもん。

 アタシ 持つの。  

「 ウン  あるべるとおじさん のじゃがいも だもん、 

 僕 もつ 」

チビたちは きっぱりと断った。

「 そっか〜〜 それじゃ 二人に任せよう。 よろしく頼むな。

 そのかわり ・・・ 

ジョーは 二人の背中をぽん、と叩いた。

「 二人のランドセルはお父さんがもってゆく。 それでいいかな 」

「「 うん!! 

「 それでね。 え〜〜と ちょっと寄り道 してほしいんだけどなあ 」

「「 え ・・・ 」」

「 商店街のお菓子屋さんでね、オヤツ、買いたいんだ。

 ほら アルベルトおじさんいらっしゃ〜〜い って準備するだろ。

 ついでに今日のオヤツも買おうよ 」

「 「 わ〜〜〜〜〜〜い 」

三人で商店街のお菓子屋さんに寄り お団子と海苔のついたお煎餅を買った。

「 わ〜〜〜 わ〜〜〜 」

「 わ〜〜〜 」

すぴかもすばるも 大喜びだ。

「 あ! 岬の双子ちゃんとこの おと〜さんっ! 」

八百屋の店先から オバサンが飛んできた。

「 あ ど〜も こんばんは〜〜 」

ランドセルを二つ持ったまま、ジョーは挨拶をした。

「 あのね! おと〜さん! さっき お母さんが心配してこっちまできたよ! 」

八百屋のオバサンは 息せききって呼び止めてくれたのだ。

「 あ そうですか 

「 うん ウチのじゃがいも が売り切れでね〜〜 ごめんね〜

 あれ 駅前スーパー まで行ったのかい? 」

オバサンは双子がさげているレジ袋に気が付いた。

「 ウン。 

「 えらいね〜〜〜  ね 次はちゃんととっておくから!

 ウチの美味しいの、もってってね 

「 ありがとうございます。 

ジョーは丁寧にお辞儀をすると 子供たちを引き連れ歩きだした。

「 さあ 帰ろう!  お母さんが待ってるからね 」

「 うん。 あと オヤツも〜〜〜 」

「 おだんご〜〜〜 」

「 おせんべい〜〜〜 」

「 そうだね  美味しい晩御飯も待ってるよ 

「「 うん♪ 」」

 

 お父さんと双子は ぽくぽく・・・ 坂道を登っていった。

 

もちろん その前にこそっと脳波通信が飛んだ。

≪ フラン? チビ達とじゃがいも、帰路についてるよ〜〜 ≫

≪ 了解。 見ました。 ≫

 

   ―  あ〜〜 サイボーグでよかったぁ・・・

 

 

 

             *******************************

  

フランソワ−ズ・アルヌールさんは  自分の能力 つくづく感謝している。

・・・ 間違いじゃないよ、 感謝している のだ。

 

 ― 索敵型サイボーグは 日常生活でも利用価値莫大だ、と心底思っている。

 

 

Last updated : 10,16,2018.                    index      /    next

 

 

*************  途中ですが

え〜と フランちゃんは どう思っているのでしょう?

【島村さんち】 では ジョー君は

出版社勤めのサラリーマン なのです☆