『 しっあわっせ わぁ〜♪ ― (1) ― 』
わっせ わっせ わっせ −−−−
ジョーは自分自身に声をかけ 勢いをつけて足を進めてゆく。
両手にはぱんぱんのレジ袋 背中のリュックには根菜類が詰め込まれ
長ネギやらセロリが顔を半分 見せている。
なおかつ 片手はコロコロも引き、そこにも荷物が限界まで括り付け
られている。
「 ・・・ う〜〜〜 あと半分〜 がんば! ぼく! 」
彼が家族と暮らす家の前には 例のなが〜〜くて急な坂が ある。
昭和の体育会系が 準備運動と称して駆け上る・・・ってヤツだ。
気弱なヒト は即 Uターンする類の坂だ。
しかし。 彼は 青年男子、若い ( はず )。
加えて 彼は 島村ジョー氏は ― さいぼーぐ である。
ふつ〜のヒト とは全然違う腕力・脚力の持ち主 のはず ― である が。
「 う〜〜〜 やっぱ ・・・ ちょいきっつい かなあ 」
はあ 〜〜〜 彼はとうとう足を止め 坂の途中でとりあえず
手に持っていた荷物を全部 道に置いた。
「 ひ え〜〜〜〜 ・・・ 重量っていうか 嵩張る〜〜〜
形状も重さも違うこまこましたモノを10コ持つよか
100トンのロボット ぶん投げる方が楽 だよなあ ・・・ 」
最新型・最強 ( のはず ) のサイボーグは 額の汗を拭いつつ
荷物の山の前でため息 吐息 ・・・
「 う〜〜〜 で〜も フランが チビ達が 待ってるから・・・
よおし ゆくぞぉ〜〜 」
ガシガシ ガシ ―
島村クンは すべての荷物を持ち直すと 大股で歩き始めた。
彼のココロを占めている < 想い > は ・・・
< ぼくがやらなければ! 進め 正義の味方〜〜〜 > の決意、
さ〜すが さいぼーぐ009〜♪ 勇気いっぱい すてき〜〜〜〜 ではなく。
はあ〜〜 ああ 紙おむつは配送にしてよかった
・・・ と しみじみ思いつつ 彼は坂道を上ってゆくのだった。
現在、買い出しはもっぱらジョーが担当している。
駐車場のある大型スーパーを利用する時は 当然、クルマをだす。
彼のクルマはスマートな乗用車から 軽ワゴン に替わっている。
― だって 普通の乗用車では < 間に合わない > から。
「 ・・・ ただいまあ〜〜〜 」
玄関はできるだけ そ〜〜〜〜っとドアを開け
できるだけ小声で ひそ・・・っと言う。
そして しばらく家の中に耳を欹てていた。
「 ・・・・ ん。 大丈夫 らしいな〜〜 よかったぁ〜〜 」
ごと・・・ 出来るだけ静かに荷物を置く。
「 えっと ・・・ こっちは冷蔵庫ゆき のモノばっかのはず。
あ たまご たまご〜〜〜 ・・・ 無事! よし。 」
彼は再び 荷物の山を持ち上げキッチンに入っていった。
カタ −−−。
キッチンはいつも清潔できっちり片付いていて 気持ちがいい。
ふうん ・・・ さすが フランだなあ〜〜
シンク ぴかぴかだし♪
ふふふ ちょっと二人でお茶でもしよっかな〜〜
「 フラン〜〜〜 いま 帰ったよぉ・・・? 」
・・・ あ ・・・?
「 くう 〜〜〜〜〜〜 ・・・・ 」
彼の耳に 小さな、でもはっきりとした イビキ が聞こえてきた。
「 ・・・ え ・・・ あ〜〜〜 」
くう〜〜 すう すう すう ・・・
キッチンのテーブルにエプロン姿のままで 彼の愛妻が突っ伏して
― ぐっすり眠っている。
「 あ は ・・・ やあ よ〜〜く寝てるなあ〜 」
ジョーは思わず 彼女の寝顔を覗きこみ微笑んでしまう。
「 うふふ ・・・ きみもこ〜〜んな顔で居眠り、するんだねえ
あは・・・ かわいい〜〜 」
彼は 飽かず 愛する人の顔を眺めている。
しっかり者 いつも笑顔の頑張り屋さん 気配りの人
若いのにきちんとした奥さん お若いママさん、いいね!
いつの間にか そんな言葉が彼女の代名詞みたいになってきていた。
「 ありがと ・・・ ごめんね・・・ ぼく もっともっと
チビ達の面倒、みなくちゃダメだよね ・・・ 」
― そうなのだ。 島村さんち は 子育て真っ最中♪
< おと〜さん > は 仕事も忙しくなってきた時期なのだが
二人の天使がこの家に飛来した時、一秒の躊躇いもなく 育休 を取って
育児戦線に参入した。
・・・ なんでもかんでも × ( かける )2 なのだ。
ひとり のほほ〜〜んとしている訳には とてもゆかない。
と いうか・・・
「 え? だってさ。 ウチ ・・・ 二人 なんだよ?
ミルクだってオムツだって風呂だって ― ひとりじゃ 無理 さ。
ぼくが やらなきゃ ウチは回らないよ 」
「 育児は母親の仕事? なんで?? 誰が決めたのかなあ そんな。
ぼくと分担しなくちゃ フランは潰れちゃうぜ?
え〜〜〜〜 だあってさ ぼく達の ぼくとフランのチビ達 だよ?
も〜 これは運命だと思って! 腹を括ったってわけさ 」
も〜大変なんだぁって顔で。 やっちゃんらんね〜よって 顔で。
― でも ね。
彼は なんだかとて〜〜〜も嬉しそうに言うのだ。
「 えっと・・・ 冷蔵庫に入れるものは ちゃんと入れたし。
根菜類は別にしてあるよ〜〜 あ 洗濯モノ、取り込んでくるからさ・・・
もうしばらく 眠っていなよね 」
彼は タオルケットをそう〜〜っと彼女の背中にかけた。
そして もっとそう〜〜〜っと ・・・ 足音 忍ばせリビングを覗く。
真ん中に どどん、 とベビーベッドが据えてあり・・・
広めなベッドの中には くうくうネンネしている姿が ふたつ。
ふふふ ・・・
こうやってる時は 天使 なんだけどなあ
・・・ えへ へ ・・・
ああ もう〜〜〜 なんて カワイイんだぁ〜〜
手強い〜〜〜テキ達 は 色違いの髪をくっつけ合い 眠っている。
・・・ う〜〜〜 かわいい〜〜〜
食べちゃいたいくらいだ・・・!
なあ これ ぼくの家族 ぼくのコドモ なんだよ?
ねえ 信じられるかい?
ぼくの ぼくだけの家族 なんだよ〜〜〜〜
ジョーの目尻は へな〜〜っと下がり 自然に涙まで滲んできてしまう。
「 ・・・ すぴか〜〜 すばる〜〜〜
いっぱいネンネしていっぱいミルク飲んで 大きくなれよ〜〜〜
おと〜さんですよぉ〜〜 えへへへ ・・・ 」
指で そうっとそうっと娘と息子のほっぺに触れてみる。
「 うっひゃあ〜〜 ぷっくぷく で あったかい・・・
ああ ああ かわいい ・・・ かわいいよう 〜〜〜 」
ジョーは 二人の顔のそばにこそ・・・っと自分の顔を寄せた。
― 護る。
なにがあっても ぼくが護る。
ああ どんな時でも。
命にかえても。
ううん。 どんなにボロボロになっても
生きてお前たちを護るから!
かつて感じたことのない、熱く強く逞しい意志が勇気が 彼を貫く。
「 ― ありがと ・・・ ぼくらのトコに来てくれて 」
温かい涙が ベビーベッドに水玉模様を描いていた。
・・・ う う〜〜ん・・・?
キッチンのテーブルの上では 金髪のアタマがゆっくりと動きだした。
「 ・・・ ! や だ ・・・ わたし 寝ちゃったのね・・・
あら これ・・・? 」
肩からタオルケットがすべりおちる。
フランソワーズは そっと拾いあげた。
子供たち用のものを日向に広げておいたのだ。
「 ・・・ ジョー ? ああ 掛けてくれたのね ・・・
ん? あ 冷蔵庫も食糧庫も 満杯ね オムツも・・・
ありがとう ・・・ ! あ らら。 」
リビングに入れば ―
ベビーベッドに上半身を突っ込んで ― 彼は寝ていた。
チビたちのあんよが 彼らの父の髪を蹴飛ばしていたが・・
なんとも嬉しそうな表情で ジョーは熟睡していた。
「 あらら ・・・ ふふふ なんて顔してるの?
ジョーのこ〜〜んなに シアワセそう〜〜な笑顔、初めてみるわ 」
白い指が 愛しい人の そして 愛しい子供たちの頬を そっと撫でる。
フランソワーズは 彼女の子供たちの父の寝顔を 飽かず眺めていた。
ふふふ ・・・
なんて顔してるのよ ジョー?
え? ぼくは幸せです って 言いたいの?
いいえ そうじゃありませ〜〜ん
シアワセ なのは わ た し よ。
ジョーの奥さんで ジョーのコドモ達を生んで
さっいこ〜〜〜〜に幸せなのは
わ た し ♪
ほんわか笑顔になった母も そう・・・っと父子の側に添い寝して。
島村さんちの人々はいつの間にか 団子になって
すやあ〜〜〜〜 ・・・・ と 眠ってしまいました とさ。
― そ〜〜んな 穏やかで 時には静かな時間が流れていたのは
ほんのひと時 だった ・・・
「 きゃ〜〜〜〜 とりさん とりさんよ〜〜〜〜〜 」
「 すぴか! ちょ ちょっと待って〜〜〜〜 」
「 おか〜さ〜〜ん とりさん〜〜〜〜〜 ぴ〜〜ちゃん〜 」
「 待ちなさい〜〜 とまって〜〜〜 すぴかぁ〜〜〜 」
「 ね〜〜 ね〜〜 アタシ とりさん〜〜 とりさんよぉ〜〜〜〜 」
タカタカタカタカタカ −−−−
赤い長靴は 信じられないほど素早く動き ・・・
母の叫びもむなしく すぴかはあっと言う間に坂道を駆け下りてゆく。
「 すぴか〜〜〜〜〜〜 !!! とまって! 」
小石を蹴散らし 母が本気で飛ぶ勢いで追いかけ ― やっと < 確捕 >。
ちいさな身体を 両腕で抑えることになんとか成功した。
抱き留めないと このチビっ子はするり、とすり抜けていってしまう。
「 あははは〜〜〜 おか〜さ〜〜ん だっこ?
」
「 す す すぴか ( はあ はあ はあ はあ・・・・ ) 」
「 ん? なに〜〜 おか〜さん はあはあ ってなあに 」
「 はあ はあ ・・・ おか〜さんは! すぴかさんみたいに
( はあはあ ) はやく走れません!
ねえ ひとりでご門から出ては だめ でしょう? 」
「 すぴか ひとりじゃないもん 」
「 え ? 」
「 すばると〜〜〜 いっしょだもん 」
「 ・・・え すばる ・・・? 」
「 ウン。 ごもんのとこにいるよ〜〜 すばる。 」
「 ! ・・・ いらっしゃいっ! 」
次の瞬間 母はちっこい娘を横抱きにして 猛然と坂道を
駆け上っていった。
く〜〜〜〜〜〜〜〜
な なんだって 003に加速装置が搭載されてないの??
それって〜〜〜 あんまりじゃない??
う〜〜〜〜〜〜
でもまあ あの急坂を三才の娘を < 持って > 駆け登れるのだから
やっぱり 003はちゃんと? サイボーグ なわけで・・・
「 す す すばる〜〜〜〜〜〜 どこ〜〜〜〜〜〜 」
門の前までくるなり 大声で息子を呼んだ。
「 すばる??? どこにいるの???
ああ ああ あのこ、 下に降りていったのかしら・・・・
え もしかして ここから・・・ 」
道の端は 草地になっていて ― その下は海岸までの超急斜面。
落ちたら ・・・ 考えたくは なかった。
「 だから! ガードレールを付けてって言ってるのに!
わかったよ〜〜って 返事ばっかで ・・・ 」
めちゃくちゃ上がったテンションで 目を眩ませつつ斜面を探そうと
すれば ・・・
もぞもぞもぞ。 脇に抱えた荷物が動きだす。
「 おか〜さ〜〜ん おりる〜〜〜 」
「・・・え?? あ ああ ごめんなさい、すぴかさん 」
フランソワーズは 横抱きにしていた娘を下ろした。
「 さ お手手つないで。 今 走ったらだめ。 」
駆けださないように 娘の小さな手をしっかりと握る。
足場を確かめてから 彼女は斜面にぐっと乗りだそうとした。
「 −−− すばる ・・・どこ?! 」
きゅ。 小さな手が握り返し手きた。
「 すぴか。 ちょっとじっとしてて・・・ 」
「 ― すばる 」
「 ええ すばるを探さないと ! 」
「 すばる あっち 」
娘は 小さな手の小さな指で 門のほうを差している。
「 ・・・へ?? 」
「 すばる〜〜〜 すばる〜〜〜 」
「 ・・・? 」
ひょこん。 門の内側から茶色のアタマが覗いている!
「 す すばる??? 」
「 おか〜さ〜〜ん うふふ〜〜〜 」
「 すばる! ここにいたの?? 」
「 ウン。 ・・・ あ すぴか〜〜〜 ねえ ありさん いるよ〜〜 」
「 ありさん? 」
「 そ! あっちいってちょん ちょん♪ だよ 〜 」
「 どこぉ〜〜〜 」
すぴかは母の手を振り切って 門の内側に入ってしまった。
え。 うそ・・・ すばる??
「 ふんふん〜〜 あ おか〜さ〜ん 」
すぴかを追って駆けてきた母の足元では 大地色の瞳がに〜〜っこり・・
彼女を見上げていた。
「 す すばる ・・・ ここに いたの? 」
「 あ? うん あのね ありさん〜〜〜 」
「 どこどこ〜〜 すばる〜〜 」
すぴかが 母を押しのけすばるの側にしゃがみ込む。
「 ここ〜〜 ほらあ ありさんのおうち、 あるみたい 」
「 え どこどこ あ ほんとだあ〜〜 」
「 ね! ありさん いっぱいくるよ〜〜 」
「 うわ すご〜 ・・・ 」
どうやら すばるは ずっと門の内側で蟻の巣を観察していたらしい。
「 ・・・ すばる ・・・ 」
「 なあに〜〜 おか〜さん 」
「 ・・・ ああ よかった ・・・ ! 」
母は思わず小さなムスコを抱き上げ ほおずりしてしまった。
「 あ アタシも〜〜〜 ね〜〜〜 」
「 はいはい 」
跳び付いてきたムスメも一緒に抱っこして フランソワーズは
二つのまあるいほっぺに キス キス キス♪
「 えへへへ〜〜〜 おか〜さ〜〜ん 」
「 うふふふ おか〜さ〜ん 」
「 ね? いいこと? 二人とも。 ひとりでご門から出ては
いけません。 いい? 」
「 おか〜さ〜〜ん すばるとなら いい? 」
「 だめ。 おとなと一緒のときだけ。
そして いい? 二人で一緒にいること。 いいですか 」
「「 ・・・ はあい ・・・ 」」
「 ― それじゃ お家にもどってオヤツにしましょ 」
「「 わあい 」」
はあ ・・・ ああ やれやれ ・・・
おか〜さんは 内心、大息を吐いていた・・・
ようするに ―
双子があんよするようになると ― 現場は混乱の日々! なのだった。
むぐむぐむぐ ごっくん ぺちゃぺちゃ ばりばり
オヤツの時間は かなり賑やか ・・・
というか マナー違反が横行しているのだが ― ここは目を瞑って。
いっぱい食べて・・・
そして 少しづつお行儀を覚えてね〜〜
フランソワーズは 柔らかいビスケットとお煎餅をお皿に追加する。
「 むぐ〜〜〜 えへへ 」
「 すぴか。 おせんべい すきねえ 」
「 うん! アタシ おせんべ すき! 」
すぴかは歯ごたえのあるものを好み 小さいけど丈夫な歯で
ばりばり食べる。 煎餅でも野菜ステイックでも豪快に齧るのだ。
「 ねえ すぴか。 すぴかは走るの すき? 」
「 うん! すき! 」
「 じゃ おか〜さんにおしえて? 」
「 あ? 」
「 どうやったら はやく走れるの? 」
「 ん・・・・ ?? はしるっておもうの 」
「 そう ・・・ 」
フランソワーズは 屈託なく笑う顔にキスをして自分と同じ色の髪を
静かに撫でた。
実際、すぴかはめちゃくちゃに俊足だった。
あんよを始めるとほぼ同時に た〜〜〜〜っと走り始めた。
― そう。神様は 009の娘に天然の加速装置を搭載なさったのだ。
ほ・・・っんとうに速いのよねえ・・・
母は もうため息吐息である。
この娘の父が加速する時は <あの音> が003には聞きとれるので
すぐに判別できる。
しか〜〜し。
彼女の娘はなんの前触れもなく! 突如 トップ・ギアで疾走し始めるのだ。
・・・ 凄いわよねえ ・・・
すぴかに比べたら ・・・
ジョーってば かなりアナログよねえ?
だあって 今時 タッチ・パネルでもなく
いちいち スイッチ 押してるんですものねえ
ウチの最新式 は すぴか かも・・・
母は ちょいと複雑なため息をついたりも する。
さらに ―
すばるもすぴかも 滅茶苦茶に耳がよかった。
もちろん チビ達は100%生身で特別な聴覚強化装置をつけている訳もない。
で あるけれど・・ とにかく なんでも聞こえちゃうのだ。
ジョーは 「 あいつら 地獄耳 だなあ 」 なんて言っている。
「 あ〜〜 オヤツ、 むしぱん 〜〜 すき♪ 」
ほんのちょっと母が呟いた独り言を ちゃ〜〜んと拾ってしまう。
「 のみすぎ ってなに〜〜 じゅ〜す いっぱいのむの?? 」
父のボヤキまで 彼らの耳に入ってしまうらしい。
「 ね〜〜 すずめさん おはよ〜〜って 」
「 ざば〜〜ん がいっぱいだよ? たいふうってなに? 」
自然界の音にも とても敏感なのだ。
父と母は そっと肩を竦める。
「 ― うっかり独り言 言えないなあ 」
「 ホントよねえ ・・・ どうしてなの?? 」
「 さあ ・・・ ここの環境のせいかな 」
「 環境?? ウチの? 」
「 ウン。 田舎で 自然や鳥たちの声がいっぱいだし・・・
感性が磨かれた のかな 」
「 そう ねえ・・・ でもね 赤ちゃんの頃から音に興味があったみたいよ?
窓を開けておくと ご機嫌だったもの、二人とも 」
「 あ〜 そうだなあ 都会の騒音に聴覚がダメージを受けてない とか 」
「 そっか ・・・ ( 003の超聴覚は とっくに負けてるわね ) 」
「 なに? 元気ないじゃん 」
「 ・・・ ううん 別になんでも ・・・ 」
それにしても。
いつだって最強で最新なのは ニンゲン ね
最新型 なんていっても ツクリモノは
どんどん時代遅れのお古になってゆくんだわ・・・
― それで いいのよね きっと
フランソワーズは なんだかとても複雑な気分になってしまう。
嬉しいような でも <お古> になり果てるのも辛い。
そんなブルーな気分を癒してくれるのは ― 子供達の笑顔 なのだ。
そうよね!
この笑顔をず〜〜っと護るの。
それが ジョーとわたしの 使命。
・・・ このヒトと結婚してよかったわ!
ジョー ・・・
チビ達を ありがとう !!!
「 な なんだよ〜〜 なにかついてる? ぼくの顔 ・・・ 」
じ〜〜〜っと見つめてくる細君に ジョーは思わず自分の頬を撫でた。
「 あ ・・・ ううん〜〜 なんにも 」
「 そっかあ?
だってやけに見てるから さ 」
「 うふふ ・・・ パルドン。 すぴかに似てるわ って 」
「 え・・・ そうか? すぴかはきみ寄りだと思うけど・・・ 」
「 それは外見でしょ。 中身はねえ あのコはお父さん似よ 」
「 そうか な ・・・ えへへ なんか嬉しい〜〜 」
「 ふふふ ・・・ あ 一緒に海にゆく〜〜って待ってたわ 」
「 そっか〜〜 この前 約束したんだけど・・・
すぴか〜 ごめんな〜〜 帰りが遅くて・・・
日曜日は きっと! 」
「 ふふふ そうそう、すばるがねえ ダンゴ虫競争する〜って
待ってるわよ 」
「 お〜〜〜 よしよし・・・ 」
「 ありがと、ジョー。 お願いね〜〜 」
「 了解〜〜 あ〜〜〜 早く週末になんないかなあ〜〜 」
― そんな風に ジョーは休日はずっとチビ達の相手で過ごす。
ぶんぶん ぶ〜〜〜〜ん ・・・ !
ジョーはぐるぐる〜〜腕を回しつつ リビングに降りてきた。
「 おっはよ〜〜〜〜 」
「 あら おはよう ジョー 」
「 あら? ってなに 」
食卓の脇から フランソワーズは笑顔で夫を迎える。
「 え だって・・・ 平日は な〜かなか起きれないじゃない? 」
「 ・・・ すんません ・・・ ご迷惑をおかけいたします〜 」
「 ま いいわ。 では そろそろ台風達が起きますよ〜 」
「 ― 了解! 週末は任せて!
あ フラン、 レッスンとかショッピングとか行きなね。
食事? あ〜 なんとかするさあ チビ達とね♪ 」
「 あ お弁当を ・・・ 」
「 いい いい。 きみ 自分のために週末、使えよな 」
「 ・・・ ありがとう ジョー 」
「 ぼくこそ〜〜 チビ達を任せてくれてありがと!
あ〜〜〜 嬉しくてスキップしちゃうぜ(^^♪ 」
彼は 本当に芯からチビ達と一緒にいるのが楽しいのだ。
その姿勢は 子供達が赤ちゃん時代から全然変わっていない。
「 ごめんなさい せっかくのお休みなのに ・・・ 」
「 え〜〜〜 だからチビ達と遊ぶんだ♪ 待ちに待った週末だよぉ 」
「 ・・・ お仕事、大変なのに ・・・ 疲れてるでしょ? 」
「 おいおい〜〜 それって誰に向かって言ってるのさ?
只今の発言は〜〜 009への侮辱だよ? 」
「 あら それは失礼しました
・・・ あ すぴかが起きたわ 」
ほんの一瞬 視線を二階に向けてから 003はにっこりした。
「 お。 そんじゃ〜 ちゃんとおっきできるか 見てくるね
003の聴覚はさすがだね〜〜 」
「 うふふん お願いしまあす 」
― 島村さんちの休日は 賑やかに始まるのである。
ぼすん。 ジョーは ソファに座り込んだ。
平日の夜中・・・ 家族は皆寝静まっている。
ちょっとお茶が飲みたくて リビングに降りてきたのだ。
壁に掛かっているカレンダーを ぼんやり眺めていた・・・
「 ふっふっふ〜〜〜 は〜やく来い来い 週末サンっとぉ 」
ジョーは カレンダーの青い字と赤い字 を にこにこ眺めている。
「 そうだ 今週は チビ達も一緒にガレージ掃除 すっかな〜
すぴかもすばるも 手伝ってくれるよな へへへ・・・
邪魔ばっかかもしれないけどさ〜〜
あ 庭でごはん 食べてもいいよなあ〜〜 おにぎり つくってさ♪
あ〜〜〜 はやく週末になんないかなあ ・・・ 」
ジョーはあれこれ計画をたて 一人でにこにこしていた ・・・
― あれ。
この気分 ・・・ 前にも知ってるよな ぼく。
めっちゃ週末が楽しみで
めっちゃ待ってたんだよ うん
・・・ いつだったっけ?
「 ジョーくん きたよ〜〜 さあ なにして遊ぶ? 」
「 宿題 やったかな? ジョーくん 」
おに〜さん や おね〜さん が にこにこ笑顔でやって来る。
「 わあ〜〜〜 あのね あのね さっか〜〜 やろ! 」
「 しゅくだい やったよ! みる? 」
ジョーは もうあっちこっちに笑顔を振りまいて もう大変・・・
ジョーだけじゃない。
同じ施設のコドモ達は み〜〜んな おに〜さん やら おね〜さんに
相手をしてもらって 顔を真っ赤にして喜んでいた。
あ そうだ そうだ・・・!
教会の施設にいる頃 だよなあ
・・・ まだ小学生も低学年かなあ
マモルお兄ちゃん ユキコお姉ちゃん
・・・ ああ 思い出した!
そうだよ〜〜〜
ジョーは 湯呑みを置いて、手を叩いた。
「 うん・・・ 週末はいつも大きなお兄さんや お姉さんが
来てくれてたんだ・・・ 」
彼のいたのは教会付属の施設 ― 当時 カトリック系の大学から
ボランティアの学生たちが 多数来てくれていた。
彼らは 子供たちの相手をしたり 勉強をみてくれたり・・・
楽しい時間を週末ごとに一緒に過ごしていたのだ。
「 あ〜 すごく楽しみにしてたんだよなあ・・・
あれは大学のサークルだったのかなあ 皆 優しくて熱心だったよ。
ああ 懐かしい ・・・ 」
珍しく 彼は幼少時代を温かい気持ちで振りかえっていた が。
つきん ・・・ !
突然 ものすごく淋しい ものすごく悲しい キモチが蘇った。
・・ いっちゃった ・・・
また おいてきぼり
そんな言葉が 心の中から浮き上がって来、ジョーを慌てさせた。
「 な なんだ??? え・・・ ??? 」
マモルお兄ちゃん ユキコお姉ちゃん
おかあさん〜〜〜!!!
どうして ぼくを おいてゆくの??
Last updated : 03.15.2022.
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******** 途中ですが
ほんわか話 ちょっと切ない方向かな〜〜
チビ時代のコトって ある日突然 鮮やかに
思い出したり します ・・・