『 卒業写真 ― (1) ― 』
**** はじめに ****
これは 拙作 『 ことだま ( 言霊 ) 』 の続編になります。
もしお時間ありましたら ↑ に目を通してくださると嬉しいです
ガタガタ −−−−
この校舎は古い ― いや 伝統のある?建物なので
風が強いと 窓枠が鳴るのだ。
「 ひえ〜〜 ここすきま風、入ってくる〜〜
」
「 ヒーター 効いてね〜んでないの〜 」
「 ・・・ 温度設定 どこでやるんだろ?? 」
ガランとした教室の中 少年達は自然と真ん中に固まっている。
風貌はそれぞれだが 似たような年代、似たような雰囲気だ。
「 ここさ〜 超難関大学なのに 校舎ボロいな〜 」
「 あは 都心の大学ってでっかいビルだと思ってた 」
「 な〜〜 このイス〜〜 信じらんね〜 昭和かよ〜〜
俺が通ってた中学だって もっと新品だったぜ 」
ふわ ・・・ ん ・・・
なにやら食欲をそそる匂いが流れてきた。
「 ?? おい おま、ポテト、もってる? 」
「 俺じゃね〜よ ・・・ あ でもそのニオイ 」
「 ん〜〜〜 腹ヘったぁ〜〜 」
ガラ。 古ぼけた木製のドアが 勢いよく開いた。
「 あろ〜〜 ぎゃるそん〜〜 ヴォアラ〜 」
大きな盆をもって 年配の紳士が入ってきた。
「 あ せんせ〜〜? え 」
「 ああ?? 」
「 うっわ〜〜 」
「 ミナサン オヤツですよ〜 パンのミミ・フライです 」
うっわ〜〜〜〜〜〜〜 ♪♪♪
少年たちの歓声があがった。
***********
俺 さ。 ― 高校中退 なんだ。
「 ! 俺も ! 」
「 !!! うん! 」
一人の ちょっと重い発言は 三人の少年達の距離をイッキに縮めた。
彼らはなんとな〜くよそよそしく ― 別に仲が悪いわけではない が・・・
単なる 同じ講座の出席者 を装っていた のだが。
その言葉で 少年たちは即! < 同級生 > になった。
ここは都心にある有名大学 ― その一番古い校舎の一室。
島村ジョーは ここで開講されている一般向けの語学講座 に
通っている。
初級・フランス語。 基礎から始めます。
パンフレットにはそんなフレーズで紹介されていて
先生は この大学で教鞭をとるフランス人の年配の神父様だった。
「 こんにちは。 ワタシが このクラスの先生デス。
デュポンせんせい と呼んでください。
では ギャルソン。 君達は 今日から〜〜 」
錆色の薄くなった髪を揺らし デュポン先生は黒板の前から離れ
少年達に近寄ってきた。
およ・・・・?
突然の ガイジン先生の接近に彼らは一様にドン引きした が。
デュポン先生は 全く意に介さない。
先生は 半分金髪 刈り込み短髪 そして ハーフ茶髪 の
少年たちのひとり一人の真ん前に立ち じっと見つめて
きみは ルイ。 きみは パスカル。 そして きみは ジャック。
このクラスでは この名前で呼びます はい 決まり。
な な なん ・・??
― 突然の発言に
少年たちは 目を白黒・・・ まんまとデュポン先生のペースに
巻き込まれた。
「 ぼん。 で〜は 挨拶 を覚えましょう。
Bonjour ? はいっ くりかえして
」
「 ぼ ぼん じゅ ・・・ 」
「 ・・ じゅ〜 」
「 ぼん・・・ る ・・・ 」
「 はい ゲンキよく encore ( おんこ! : もう一度 の意味 ) 」
「「「 ぼ ぼ ぼんじゅ〜〜る ! 」」」
デュポン先生はほとんどテキストを使わず
少年達に向き合って 大口をあけ大声をあげ 発音を教えた。
ひえ〜〜〜〜??
・・・どわ? なに これ
うっそ〜〜〜
三人の生徒達、最初は戸惑っていたけれど
直に 先生の後に続き始めた。
気になる異性の目 がないのだ、女子の前でカッコつける必要な ない。
少年たちは 大口をあけ大声をあげ ― 繰り返す。
「 はい 動詞 あヴぉあ〜る の活用デス! はいっ 」
じぇ とぅあ いるあ えるあ。
ぬ ざぼん ぶ ざヴぇ いるそん えるそん
「 ぼん! とれびあ〜〜ん め ぞんふぉん〜〜 ぼん! 」
ちょっとでも進歩すれば 先生は大袈裟に褒めてくれる。
うひ・・・? なんか でへへ・・・
とれびあん だってよ〜
うっわ ホメてもらったあ
少年達は単純に舞いあがり 週に二回、熱心に通ってくるようになった。
短い休み時間には コンビニパン やら お握りを詰め込み
なんとな〜く打ち明け話なんかも ぽつぽつし始め ・・・
「 ・・あ〜〜 腹 減ったなあ 」
「 ルイとこ、ビストロだろ。 まかない あるんだろ 」
「 足りね〜〜 もん ジャックは 昼 弁当? 」
「 ん〜 そんでもこの時間は 腹 減る 」
「 だよな〜〜 」
ぼそぼそ語りあっているところに ― デュポン先生は
スペシャル・オヤツ を持ってきてくれたのだ。
「 食堂のオバチャンが アマリモノで作ってくれまシタ。
がーりっく と しゅがー 振ってマス。
いっぱいたべて ふらんす語 勉強しまショ 」
「「「 うぃ〜〜〜 むっしゅう〜 」」」
少年たちは揃って声を上げると 揚げ・パンのミミ に集中した。
― サイボーグ。
彼らゼロゼロ・ナンバーサイボーグ 9人の戦士たちは
全て違う国籍を持つ。
もちろん 使用言語も異なるが 自動翻訳機 という
夢みたな装置のおかげで 全く問題はない。
激しい戦闘中も 自由自在に意思疎通が可能なのだ。
しかし。
平和なごく当たり前の日々 を得た時
009 いや 島村ジョー君は とんでもない問題にぶち当たった。
彼は ギルモア博士 そして 001、003 と共に
故郷にほどちかい地で 一つ屋根の下に暮らすことになった。
うっひゃあ ・・・ らっき〜〜〜♪
カノジョも一緒じゃん〜〜〜
ガイジンさんかあ ・・・
言葉 うまく通じるかな
ぼく以外 み〜んなガイジンじゃんか
え〜〜〜 ヤバすぎね?
・・・ やめよっかな ・・・
あ。
サイボーグ なんだよ〜 なあ 009!
あの超〜〜便利な装置があるじゃん
何語だってへっちゃらさあ♪
えっへっへ〜〜
カノジョとオトモダチになる!
うっひゃあ ホント、綺麗なヒトだなあ〜
彼は内心 ほくほくしていた のであるが。
「 ジョー? お買い物 お願いできる? 」
「 おっけ〜〜 なに買ってくるのかな 」
「 あ メモ 書いたから ・・・ これで 」
「 はいよ ・・・ ??? 」
彼女が渡してくれたメモには 理解不能なアルファベットが並んでいた・・・
「 ・・・ あ あのう 」
「 はい? 」
「 そのう〜〜 これなんだけどぉ 」
「 ?? メモがどうかした? 」
「 ・・・ あの これ え、英語? 」
「 え? いいえ。 わたしの母国語よ。 フランス語 」
「 ふらんすご?? ま〜ったくわかんね〜〜よ〜〜 」
「 あ ・・・ それじゃね 読み上げるから。 よく聞いて 」
「 ・・・ う〜〜 」
わかるワケね〜じゃん・・・と スネオになっていたのだが。
「 えっと 卵 1ダース ミルク 1リットル 二本
キャベツ 1個 ニンジン タマネギ じゃがいも 1キロづつ 」
カノジョの口からは 彼が唯一理解可能、と自認しているコトバ―
つまり 日本語が聞こえるのだ。
「 ?? あ あのう〜〜 」
「 チキン 1キロ ・・・ え なあに 」
「 あのう きみ、日本語 しゃべれるんだ? すっげ上手 」
「 ? ・・・ あ〜 ジョー。
自動翻訳機 が on になっているでしょ?
わたし メモに書いたフランス語を読んでいるのよ 」
「 ・・・ あ ・・・ 」
ジョーは ようやく自身の自動翻訳機のスイッチが入っていることに
( 自動稼働らしい ) に気づいた ・・・
! そっか〜〜〜〜・・・・
これってば 戦闘中は便利だけど!
実生活では てんで中途半端じゃんか!
「 あ そっか ・・・ うん 買ってくるもの、わかりマシタ。 」
「 ごめんなさいね わたし 日本語 書けなくて・・・ 」
「 ぼく だってさ! 読み書きできる唯一のコトバってさ
日本語 だけなんだ 」
「 あら 英語は。 あの島では 公用語は英語 ・・・
あ そうだったわね ・・・ ジョー あなたは 」
「 ウン あそこにはさ ほんの数時間いた って意識しかないんだ ・・・
ぼく 学校でも英語 苦手でさ・・・
自動翻訳機なかったら ・・・ な〜んもわからないよ。 」
だけど さ。
コレって 万能 じゃねえんだ??
つっかえね〜〜 !!
ジョーは心の中で 密かに毒づいた。
つ〜まり。
自動翻訳機は 聞く 話す には万能だけれど
読む 書く には ま〜〜〜ったくからっきし 無能 だったのだ!
う〜〜〜〜 む 〜〜〜〜
「 あ れ・・・?
きみ 普段は 日本語 しゃべってる・・・?
そのう・・・ アレ なしで ・・・? 」
「 そうなの・・・ ふふふ ヘタでしょう? 」
「 ぜ ぜんぜん〜〜〜〜 ぼく そのう・・・
ミッション中と同じだと 思ってて・・・ 」
「 この国で暮らすんだもの。 日本語 話せなくちゃって。
博士にテキストを頂いて勉強しているの。
ねえ ・・・ わたしの日本語 あ〜〜 ヘンじゃない? 」
「 !!!! 」
ジョーは ぶんぶん首を横に振った。
「 そう? うれしい! ね いろいろわからないコトバ あるの。
辞書には載ってないけど 普通に皆がしゃべってる言葉
たくさんあるじゃない? 」
「 あ あ〜 そう かも ・・・ 」
「 意味 教えてください。 」
「 きみって ・・・ すごい・・・ な
ぼく 尊敬しちゃうよ 」
「 え やだあ〜 尊敬 だなんて 」
「 ぼく さ。 自動翻訳機って 超〜〜〜便利♪ って
ほくほくしてたんだ ・・・ ずっと ね。
その ・・・ きみともしゃべれたし 」
「 そう ね。 わたしも日本語わからなかったけど
ジョーとお話 できたわね。 」
「 だろ? ― だけど アレって ダメだよ。
めっちゃ < 使えねえ > だ。 」
「 ・・・ ジョーも そう思う? 」
「 ん。 だってさ 読んだり 」
「 よかったわ。 わたしもそう思っているの。
だから わたし この国で暮らすって決めた時から
アレをoffにしているの。 」
「 ・・・ え? ええええ そのう ・・・ ずっと? 」
「 はい。 だってわたし フランソワーズ・アルヌール だもの。 」
彼女は ちょっと胸をはってゆっくりと発音した。
「 ・・・ そう だけど。 その ・・・ずっと だよね? 」
「 そうよ! わたしはフランソワーズ。 003じゃない。 」
「 え・・・? 」
「 サイボーグだっていう現実は ちゃんと認識してるし
受け止めているわ。
・・・ 泣いたって喚いたって 変えることは ― できない。 」
「 ・・・・ 」
「 それでも 」
わたし。 わたし達 機械の奴隷じゃないわ。
機械を使い 支配するの。
わたし 人間よ!
彼女は 高らかに謳うみたいに言った。
「 ですから。 いろいろとチャンレンジします。
人間として ね 」
「 ・・・・ 」
彼は 言葉もなく じっとその美しい横顔を見つめていた。
・・・ すご ・・・
このヒト ・・・ すごい ・・・
ぼくは ― 彼女の足元にも 及ばない よ・・・
・・・ ぼくは。
いや。 自虐して縮まってる場合じゃない。
― そうさ ぼくだって。
「 ・・・・ 」
沈黙の中で ジョーはなにかをと見つけた のかもしれない。
それから 程遠くない、ある日。
ジョーは思いつめた表情で、博士の部屋を訪れた。
「 あのう ・・・ ぼく ちゃんと学習したいんです
そのう・・・ フランス語を 」
「 ?? 自動翻訳機が故障したのか?? 」
「 あ そうじゃなくて。 そのう〜〜 ぼく・・
読んだり書いたり が 全然 なんで ・・ 」
「 ・・・ おお そうかあ 」
「 アレだと ・・・ わかんないですよね?
読む とか 書く は 」
ジョーはなにかとても言い難そうにしている。
「 まあ そうだが。 」
博士は素知らぬ顔で 素っ気なく返事をしたが ・・・
ほう? カノジョに らぶれた〜 書きたいのかね?
よいよい・・・・
青春の悩み じゃのう〜
コイツも年頃の悩みを堪能すべし、だな
なにやら微笑ましい気分に浸っていた。
「 あの ― バイト先でも 少しは読んだりできないと ・・・
ぼく 英語とか苦手だったんで・・・ 」
「 ほう? この国では義務教育から英語を学ぶ、と聞いたが 」
「 はあ ・・・ でも ぼく あんま勉強しなくて ・・・ 」
「 ふうん それなら今からやればよい。
勉学に年齢は関係ないぞ。 」
「 はあ ・・・ あのう・・・聞いてもいいですか 」
「 なんじゃね 」
「 あのう ・・・ 博士はふつ〜にぼく達と会話してますよね?
そのう〜〜 装置とかナシで・・・ 」
「 あは ワシか? ワシらは所謂多言語地域で生まれたからのう・・・
コドモのころからいろいろな言語に接しておるのさ 」
「 それでも・・・ すご・・・」
「 ジョー。 ワシが一番苦労したのは 日本語 だ。
大学でコズミ君と知りあってなあ 彼の優秀さに舌を巻き・・・
彼と母国語でしゃべりたいと思い 必死で習得したよ 」
「 ・・・ そう なんですか ・・・ 」
「 どんな動機でもよい。 学ぶ ということは 素晴らしいよ 」
「 ・・・ そっか・・・ でも 今から学校・・って 」
「 方法はいくらでもある。 そうじゃ お前 今のバイト先は都心だろう?
その近辺で 探してみたらどうかな 」
「 え 学校・・・? 」
「 語学講座は いろいろなところにあるぞ 」
「 あ はい 」
「 バイト先の上司に聞いてごらん。 地域情報として
詳しいのではないかな 」
「 はい。 ありがとうございます。 」
・・・ はあ このヒトって。
マジ マルチ天才 なんだなあ・・・
ジョーは ずっと親しみを感じているこの老科学者をしげしげと
眺めるのだった。
― ホンモノの才能は 万能である ということかもしれない。
「 語学講座? あ 〜 それなら ほら・・・
駅の向うの J大でやってるわな。 語学で有名なトコだから
いろいろあるはずだよ 」
ジョーの質問に バイト先の編集部、チーフを務めるアンドウ女史は
すぐに教えてくれた。
「 J大? ・・・って無理っすよ〜〜 超難関大・・・ 」
「 いや 夜間の講座は申し込めばだれでもおっけ〜 のはずだよん。 」
「 え そ そうなんですか 」
「 ん〜 パンフとかもらってくれば?
え・・・っとねえ たしか ・・・ 正門入ってすぐ横の建物が 学務部。
そこに並んでるはず 」
「 あ ハイ。 ありがとうございます! 」
「 島ちゃ〜〜ん 熱心だね〜 いいね〜〜 」
「 え いえ ・・・ ぼく そのう 全然ちゃんと勉強してこなくて 」
「 フランス語ってのが シブいなあ〜 ふつ〜に英語じゃなくてさ。
あ もしかして カノジョ?? 」
「 え!? ち ち 違いますよ〜〜〜 」
ジョーは 耳の付け根まで真っ赤っ赤になり < ちがいません > と
公式に発信してしまった。
「 へっへ〜〜 ま いいじゃん。
動機は楽しい方がいいもんね〜〜 ま 頑張れぇ〜〜 」
「 ・・・ は ひ・・・ 」
そして ジョーは
デュポン先生の初級・フランス語 をみつけたのだ。
タタタタ ・・・ ガラ。
がらん・・・とした教室に ひとり また 一人 少年がやってくる。
「 よ。 ・・・ 腹減ったあ〜 」
「 お〜 おま そればっか。 」
「 だってさ〜 あ 宿題 やったか 」
「 なんとか・・・ パスカルは 」
「 ・・・ へっへ〜〜 俺 ちょっち書いたぜ! 」
「 え〜〜〜 マジ? 」
「 あのな あのな〜 店に来たガイジンさんのお客サンとしゃべった!
そのこと 書いた! 」
「 ほえ・・・ ふ ふらんす語 で? 」
「 ぴんぽ〜〜〜ん ・・・っても挨拶とちょびっとだけど
通じちゃったんだぜ〜〜〜〜 」
「 すっげ〜〜〜 パスカルってば〜〜 」
「 やたな〜〜 」
「 へ へへへ・・・ それ 書いたんだけどさ
でも 単語 わかんないから短いんだ 」
「 俺もさ〜 」
「 ぼく スペル わかんないの、カタカナで書いた 」
いろいろ問題アリ でも 彼らはなんとか宿題をやってくる。
なぜって ― デュポン先生が ものすごく褒めてくれるからだ。
「 お〜〜〜 とれびや〜〜ん め・ぞんふぉん♪
スバラシ〜〜〜〜 」
先生は もうありったけの笑顔で大絶賛してくれたあとで
きちんと宿題を直してくれ アドバイスをしてくれる。
「 わからない単語は辞書! スマホ辞書もいいデス。
ちっぽけな辞書 いつも持ってると便利。 」
デュポン先生は 掌サイズに近い辞書を見せてくれた。
「 へ え・・・ 俺 辞書ってあんまつかったことないっス 」
「 使いマショ。 たとえば〜〜 」
ぱらぱらと辞書をめくり 使い方をやってみせてくれた。
「 それでもわからなければ カタカナ いいです。
ワタシが教えます。 まず 書いてみる、 だこ〜? 」
「 「「 うぃ むっしゅ〜〜! 」」」
皆 同じレベル、できね〜〜よ という引っ込み気分よりも
やってやろ〜じゃん♪ の チャレンジ精神がずいっと前に出た。
「 せんせ〜〜 俺 あ ・・・ 僕。 ウチの大将と話したっす!
おっかね〜〜フランス人のシェフ なんだけど
」
「 お〜〜〜 ルイ! とれびや〜〜ん! 」
「 そんで! ウチの大将も るい って名 だったんす! 」
「 ほお〜〜〜 それは ぐうぜん ですねえ 」
「 そうなんス! 俺 いっつも厨房イチバンでいって
シンクとか床 磨いてんですけどぉ〜
ルイ は見習いをしているビストロの話を始めた。
彼のおしゃべりは おそらく全く無意識だろうけれど
ところどころフランス語が混じっていた。
デュポン先生は にこにこ・・・
「 ぼん! ルイ〜〜 ぼん! 」
同級生たちは
! あ 俺にもわかるじゃん! え・・?
ルイ〜〜 すげ〜〜 わかるよぉ ぼくにも〜〜
めっちゃくちゃに熱心に 耳を傾けていた。
ルイのおしゃべり *****
「 ぶなべ たんぷっ てぃ なび〜げ ♪ 」
少年は今日も大声で歌いつつ シンクを磨く。
「 じゃ じゃ じゃめなびげ〜〜〜♪♪ 」
おぇ おぇ〜〜〜〜 ♪
野太い声がその童謡の続きを歌った。
「 !? あ ぼ ぼんじゅ〜る むっしゅう〜〜 」
振り向けば 厨房の入口に 鬼の?シェフが立っていた。
「 ぼんじゅ〜る ・・・ ける のむ? ( なまえは? ) 」
でっかいシェフは 相変わらずぶっきらぼうに言う。
「 あ あ 〜〜 じゅまべ〜る るい! ( るい デス ) 」
「 ルイ? ― もあ おっすぃ ( 俺もさ ) 」
シェフは に・・・ っと笑いを返してくれた。
「 プチ・るい。 ( チビ・るい ) ぼん! 」
さあ 仕事だ! と シェフは厳しい顔に戻り厨房の真ん中にたった。
うっぴゃあ〜〜〜〜〜〜♪
ルイは隅っこのシンクの前で 掃除用のスポンジを握りしめていた。
「 で さ。 その日から俺 ジャガイモ剥き になった! 」
「 じゃがいもむき? ・・・ず〜〜っとイモの皮 剥く? 」
「 あ 野菜の下ごしらえ ってことかな〜
ジャガイモがメインだから そういう名前なんだけどさ 」
「 ふ〜〜ん やったな〜〜 ルイ 」
「 ルイ! やろ〜ぜ オレもまっけね〜〜 」
あはははは 少年達は 屈託なく笑う。
「 ぼん ぼん とれびや〜〜ん め・ぞんふぉん〜〜
ぼとる てーむ そん とれびあ〜〜〜ん ! 」
デュポン先生は一人一人の宿題 ( 短い作文 ) を
丁寧に添削し 文法の説明をする。
三人の作文を三人の前で 学習の題材にするのだ。
え ・・・ やだな〜〜
最初は引いていた彼らだったが ― すぐにその感覚は消えた。
だって < 仲間 > だから。
そして 合い間には不動詞の活用を皆で大声で唱える。
「 おし。 覚えたぜ 」
「 ・・・明日 しゃべる! 」
「 そっか そうなるんだ? 」
ジョーは いや ジョーとその同級生は 勉強の仕方 を学んだのだ。
ある日 ― デュポン先生は いつもの如く笑顔満載で現れた。
「 ぼんじゅ〜る め ぞんふぉん♪
今日は〜〜 写真 とりまショ 」
「 「「 へ ??? 」」」
少年たちは ぽかん、としている。
「 カメラ 借りてきまシタ。 クラスの記念デス。
さ ならんで〜 ルイ パスカル ジャック〜〜 」
え え〜〜 なん?? ちょっとぉ
三人がうろうろしている間に デュポン先生はちょいと古めかしい
カメラ! ( スマホじゃなく ) をセットした。
「 はい る・ふろま〜〜〜じゅ! ( ち〜ず ) 」
カシャ。
やろ〜が三人 なんとかぎこちない笑顔で並んでしまった・・・
「 ぼん! それでは〜〜
元気だして〜 あヴぉあ〜る の活用! 」
いつもの授業が始まった。
「 お〜るぼわ〜る め ぞんふぉん。 」
「「「 お〜るぼわ〜る ムッシュウ。 あ じゅ〜でぃ 」」」
( さよなら せんせ〜 木曜に )
クラスが終われば 三人でぶらぶら・・・最寄りの駅まで歩く。
「 はあ〜 腹 へったあ〜 」
「 おま そればっか〜 」
「 へへへ〜〜 」
「 あ 次の木曜 ぼく 休み 」
「 え〜〜〜 ジャック 休みかよ バイト? 」
「 ん〜 ちょっと野暮用 あ 後でノート 見せてくれよ 」
「 だこ〜〜 ( おっけ〜 ) じゃ な〜 」
「 じゃな〜〜 」
ジョーは 語学講座の < 同級生 >たちとゆるゆる交流していた。
― だけど やはりこの世は平和でにこにこ・・・ だけではないのだ。
突発的にミッションは発生した。
局地的なもので 少人数、短時間で解決はできたけれど
やはり 彼らはあの赤い特殊な服を纏い <闘い> の場に
その身を投じるのだ。 それが彼らの宿命 ・・・ かもしれない。
ヒューーーー ドドド ドーーー ン ッ !!
背後では轟音が響き 目的の建物がグズグズと崩壊していった。
僻地の荒地の中 気付くものも とばっちりを喰う動植物も ない。
BGの末端の末端・・・ケチな組織だったが 見逃すわけには行かない。
大きくなる前に 悪い芽は削除するだけだ。
シュ −−− タタタ −−−−
赤い服の数人が 密かに駆け去ってゆく。
あとは速やかに撤退、ドルフィン号でこの地を去る。
≪ ? あれ 009が遅れてるよ ≫
最初に気付いたのは008だった。
≪ え? ・・・ 009! そこを左! ≫
殿( しんがり ) を護っていた003が 振り向いて
ダイレクトで通信と飛ばした。
≪ ・・・・ 〜〜〜 ず〜〜〜 ≫
≪ ? なに どうしたの?? 009 返答して! ≫
≪ ぷ〜〜〜 ぴ〜〜〜が〜〜〜 ≫
≪ なにか不具合か?? ≫
― 009以外の全員が 停止 した。
Last updated : 03,23,2021.
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********** 途中ですが
ジョーくんの青春記? かな・・・・
平ジョー君なんですけど フランちゃんに
憧れて 憧れている頃 から始まります。