『 幻 ― まぼろし ― (1) 』
非日常の始まりは いつだってごく普通の顔をしてやってくる。
それゆえ、 ヒトは気を許し、時には全く気がつかず見過ごしてしまう。
そして ソレがどうしようもない程大きくなってしまってから 驚愕し嘆くのだ。
どうしてもっと早く 気が付かなかったのだろう・・・! と。
あの時も ソレはごく日常の姿でやってきた。
「 え〜と ・・・ あとは玄関をお掃除して・・・っと。 ああ そうね、ついでだから
門の方も掃除しておきましょう。 ポストの中も見なくちゃね〜 」
ふんふんふん〜〜 と機嫌よくハナウタなんぞも歌いつつ フランソワーズは玄関をでた。
外用のホウキとちりとり、そして紙袋をもち、門までぷらぷら歩いてゆく。
海の端の辺鄙な地域に ギルモア邸は広大な敷地を有していた。
家屋敷自体、かなり大きな建物だが、その周囲に広い庭を持っている。
しがって玄関から門までは 少々道程があるのだ。
「 ああ いい風・・・ あら金魚草がきれいに咲いてるわね〜
まあ今年もストックがいい花をつけそう ・・・ 種を取っておくのを忘れないようにしなくちゃ。 」
垣根がわりの低木類もやっとしっかりと根を張ってきている。
しょぼしょぼと花をつけているのは 儚い一年草が多いのだけれど それでも嬉しい。
日頃から丹精している庭をながめつつ、 彼女は門までやってきた。
実は鉄壁のセキュリティを誇る門扉だが ぱっと見には素人の手作りみたいに見えなくも ない。
「 ふんふん ・・・ あら ・・・随分汚れているわねえ・・・ ペンキもはげてるところが・・・
週末、ジョーに塗り替えてもらおうかしら ・・・ 」
門を出て 周囲をささ・・・っと掃き始めた。
海風が強い場所だから 普段からゴミはあまり溜まらない。
門や垣根の隅にたまっているのはほとんどが落ち葉や小枝、飛んできた小石の類だった。
パパ 〜〜〜・・・ ! 聞き覚えのあるクラクションと共にバイクが急坂を登ってきた。
「 ギルモアさ〜〜ん ! 郵便で〜〜す ・・・! 」
この地域担当のお馴染み・配達人氏が にこにこ ・・・ バイクから降りてきた。
「 あら ありがとうございます。 ご苦労さま。 」
「 え〜〜と ・・・ これと これと。 あ ・・・ そうそう、これも。
う〜ん ・・・ 多分これ、御宅宛だと思います。 住所は合っていますから。 」
配達人氏は どさり、と郵便物の束を彼女に渡した。
「 まあ すみません。 ・・・ あ はい、これはウチ宛ですね。 」
「 よかった! これで全部ですよ。 」
「 ご苦労さまでした。 」
「 いえいえ ・・・ じゃあ また。 」
「 はい あ ・・・ 帰り、気をつけて・・・ 」
「 ― ありがとう〜〜 ! 」
美人の人妻 ( と 思われている ) と話ができてにこにこ顔の配達人氏は
ご機嫌で急坂を下っていった。
フランソワーズはホウキを門に立てかけて受け取ったばかりの郵便物を眺めた。
「 博士宛の学会の月報 ・・・ あ この雑誌、待ってたのよね〜〜♪
こっちは請求書に領収書類、 これはジョーの車の雑誌ね。 」
どれもこれも見慣れた封筒で 待っていたものがほとんどだ。
「 あら・・・これはグレート宛ね。 ロンドンに送ってあげなくちゃ ・・・ 」
グレートは最近では本業の俳優業にも忙しく、月の半分は故郷で暮している。
来日すれば 時に 中華飯店・張々湖 のウェイターなんぞもこなす。
「 まあ ・・・ 忙しいでしょう? 劇団の活動もあるのにお店の仕事を手伝っては ・・・ 」
「 うん? 市井の人々の暮らしに埋もれることはな、演技の幅を広げる最大の方法なのだよ。
俳優が 別世界のヒト になってしまったらオシマイさ。 」
「 ふうん ・・・ 」
「 ま、これも俳優修行のひとつ、であるな。 いやあ〜 実に面白い。 」
「 え ・・・ ウェイターが? 」
「 左様。 この世に人間観察ほど興味深いコトはないぞ。
マドモアゼルもまずは身近な人々をよ〜〜く観察してみることだな。
ふふふ ・・・ 恋しい誰かさんの意外な面を発見できるやもしれぬぞ? 」
「 え! ・・・だ 誰かって ・・・ 誰よ ・・・ 」
「 ははは ・・・ まあ いいさ。 しかしな、いかに恋人とはいえ たまには冷静な目で
観察するのも必要だろうさ。 」
「 そ そう ・・・? 」
「 そうさ。 そうしてあの朴念仁・ボーイには オヌシは勿体無いと気がつく か
ますます熱く燃えあがるか ― はてさて 人生、それが問題だ。 」
「 グレートぉ〜〜 ! 」
真っ赤になって拳を揮う紅一点に 仲間達 ( ジョー以外! )が笑う。
「 もう〜〜 皆して〜〜 」
口先では怒ってみたものの、 なるほどな ・・・ と密かに頷いていたりする。
そっか ・・・ そうよね。
ジョーって ― どんなヒトなのか 案外知らないかも・・・
彼女はその日以来 折にふれて人間観察に精を出している。
その観察対象は 現在不在。 南半球へ取材旅行に出ている。
「 ふ〜ん ・・・ メールくれるからいいけど。 ・・・でも たまには手紙とか・・・
絵葉書でもいいわ、送ってくれればいいのに ・・・ 」
郵便物の束を眺めつつ ふと ・・・ そんなコトを思ってしまう。
案外律儀な彼からは ほぼ毎日メールが届く。 しかしその内容は ―
無事 到着しました。 ジョー
夏に向かう季節、皆陽気です ジョー
明日から現場に詰めます ジョー
「 ・・・ いいけど。 これじゃツイッターだわねえ ・・・ 」
マメなメールはほんの1〜2行、愛している、なんて言葉は欠片も見つからない。
「 まあ ね。 そんなこと、書けるヒトじゃないけど ・・・ 」
わかっていても恋愛女子としては やっぱり甘い言葉のひとつも欲しい。
殊に 彼女はフランス人なのであるし ・・・
「 ・・・ しょうがない か・・・ そういうヒトなんだもの。
あ でもキライっていうんじゃないのよ? 冷たいってことじゃないもの。 」
一人で溜息ついてみて、一人で訂正して、一人で納得して ― 恋する乙女はなかなか忙しい。
「 さ! お掃除 お掃除〜〜〜っと ・・・・ あら。 」
ダイレクト・メールに紛れて 封筒がひとつ。 今時のエア・メールで宛名部分が擦れている。
「 ?? ・・・ あ そうだわ。 郵便屋さんが言ってたヤツね。
う〜〜ん ・・・ 住所は間違いなくうちねえ・・・ これ ・・・ 」
彼女は宛名の箇所をためつ眇めつ ・・・ して見る。 水滴でも落ちたのだろうか。
宛名の部分だけひどく汚れていて判読は難しい。
「 ・・・名前の最初は ・・・ J いえ I ・・? ってことは博士宛かもしれないけど
う〜〜ん ・・ Joe Shimamura か Isac Gilmore か わからなわねえ・・・
差出人は誰よ? 」
FREEDKIN ― 知らない名だった。
「 ともかく博士に伺ってみましょう。 ご存知の方なら博士宛でしょうし・・・
多分 そうよね。 ジョーの友達がわざわざエア・メールなんて出さないわよね。 」
ともかく掃除をすませなくちゃ・・・と彼女は郵便物を一旦まとめて持ってきた紙袋に押し込んだ。
「 あら・・・ なんだか空が・・・雲が増えてきたわねえ・・・
天気予報で雨が降るって言ってたかしら。 とにかくさっさと掃除 しちゃお・・・ 」
集めていたゴミをざざざ、とちりとりに入れた。
ヒュルン ・・・・! 次の季節を運ぶ風が 吹きだしていた。
「 FREEDKIN ・・・だと? アヤツ、生きておったのか?! 」
フランソワーズが差し出した封筒を見て ギルモア博士は驚愕した。
ティー・テーブルを囲んだ一時に 彼女は例の封筒を見せたのだ。
「 博士 ・・・ ご存知なのですか その方 ・・・ 」
「 ああ。 接触したのは 1〜2回だがな。 」
「 あの ・・・ BG ・・・で? 」
「 いいや、ヤツは無関係じゃったはずだ。
まあ、会った、といっても専門が違うので直接の面識はない。 メディアを通じて
意見交換したことがある、と言った程度じゃがな。 」
「 まあ ・・・ じゃあ このお手紙は博士宛 ではないのでしょうか。 」
「 う〜ん? こりゃまた随分汚れているなあ。 」
「 ねえ? これじゃ宛名が読めませんわよね。 博士宛じゃないとすると・・・
これ ジョー宛なのかしら。 これは Joe Shimamura のつもり? 」
「 わからんなあ ・・・ しかしアヤツ・・・生きておったとはなあ・・・ 」
「 この方のご専門は やはり サイボーグ工学 ・・・?」
「 いや。 ヤツは人工臓器開発に絡むクローン技術が専門じゃった。 」
「 クローン ・・・ ですか ・・・ 」
「 うむ。 いろいろと・・・高度なクローン技術を培っておったが どうもその目的がなあ・・・
純粋な医学目的ではなくてのう ・・・ 」
「 どういうことですの? 」
「 端的に言えば金儲け目当て、じゃった。 禁止すれすれのクローン胚実験を繰り返して
生命論理委員会から目をつけられておった。
最後は禁止項目の人工クローンの培養に手を染めて ・・・ 学会を追放されたよ。 」
「 ・・・ そうなんですか ・・・ 」
「 うん ・・・ だからなあ この手紙がジョー宛、という可能性は低い な。 」
「 それじゃ 博士へのお手紙ですね? 」
「 わからんが ― 開けてみるか? 」
「 ええ そうですわね。 見た目は普通のお手紙っぽいし ・・・ ああ 中にはカミソリも
爆弾物も入っておりませんわ。 」
フランソワーズはさっくり < 見て > 笑っている。
「 おお ありがとうよ ・・・ よし 開けるぞ。 」
「 はい。 」
博士は慎重にペーパーナイフを使ったが ― 中はごく普通のレター・ペーパーだった。
「 ふん ・・・? どれ ・・・ 」
博士は眼鏡を取り出すと、 ゆっくりとペーパーを広げた。
フランソワーズはお茶のおかわりの用意をしていた。
「 ・・・ ! なんじゃと !? 」
「 ― 博士 ? 」
バサ。 博士は読み止しの手紙を手荒くテーブルに放り投げた。
「 ジョーに連絡はつくか? まだ南だったな。 」
「 はい。 スケジュール通りならまだメルボルンにいるはずですけれど ・・・ 」
「 呼び出せるかの? 」
「 すぐには難しいかも ・・・ 取材に出ているかもしれませんし。
レースが終ったら今度は違う取材で砂漠地域にも足を伸ばす予定、と言ってました。
あの ・・・ なんの手紙だったのですか? 」
「 ― 挑戦状 じゃよ。 」
「 えええ? 挑戦状 ・・・ ですか?? 」
「 うむ。 読んでごらん。 」
博士は眉を顰め テーブルの上の手紙を顎でしゃくった。
「 ・・・・・・・・ 」
彼女はそっと摘まみ上げ 折り目を伸ばしてから読み始めた。
「 ― すぐに連絡とります。 あの ・・・ 皆 呼びますか。 」
読み終わった時、彼女の顔から笑みが消えた。 そして声からも感情が消えた。
「 そうじゃな。 待機してもらったほうがいい。 」
「 はい。 じゃ 早速。 」
「 頼む。 ワシは可能な限りの準備を進める。 」
「 お願いします。 」
かっきり頷くとフランソワーズは席を立った。
「 ・・・ Freedkin か。 蛇のように執念深いヤツじゃった ・・・ 」
お茶の残りを飲み干すと 博士も固い表情のまま研究室へむかった。
― ジョーとは直接には連絡がつかなかった。
レースの取材後、別の取材に出た 数日は留守するという伝言が残っていた。
とりあえず彼がメルボルンで泊まっていたホテルに伝言メールを依頼した。
しかし 彼が読むのは少なくとも今日・明日ではない。
少し奥地にまで足を伸ばす ・・・ と言っていただけで具体的な地名はわかっていない。
おそらく ジョー自身もはっきりとは決めていなかったに違いない。
「 ・・・ 困ったわ・・・ 脳波通信は範囲外だし・・・携帯もだめだわ。 」
研究所の高出力な通信機でも少し距離がありすぎる。
「 この分だと ― 見切り発車ってことかしら。 南半球まで迎えに行く余裕はないわ。
それに ・・・ 全員が集合するのも日数がかかるし。
このヒトが指定してきた日には間に合いそうもないわね。 」
パシ・・・っと例の手紙を弾く。
「 ・・・ 5年前 ・・・・ そんな事件があったかしら。 ・・・ 覚えていないわ。 」
彼女は改めて補助脳の記憶をめぐらせてみたが 該当はない。
念のために研究所のデータ・バンクも検索してみた。
「 やっぱり ないわ。 ドルフィンの出動記録もなし。 」
全員が出撃する大きな事件は当然記録が保存されているがその中に Freedkin の名は
見つからない。 人工クローン で検索しても結果は同じだった。
「 ふうん? ということは ジョーの単独行動だった、ということ?
でも 出かけたのなら、誰かが知っているはずよねえ ・・・ 5年前 ― あ。 」
つらつら個人的な記憶を辿っていて 彼女は思わず声をあげた。
「 ・・・ あの時? わたしがパリに戻っていた年 ・・・ 遊びにくる、っていって ・・・
そうよ! 急な仕事が・・・ってその日に電話が来たっけ・・・ 」
彼がシャルル・ドゴール空港に到着したのは予定を一日過ぎてからだった。
「 ジョー!! ここよ! 」
「 ・・・あ フラン ・・・ 」
フランソワーズは二日越しで空港通いをしたので 搭乗口からの人々の中に彼の姿を
見つけたときには声を上げて呼んでしまった。
そんな彼女に ジョーは軽く手をあげて、はにかんだみたいな笑みを見せたが・・・
・・・ あら? なにか あったのかしら
いつものジョー と ちょっとちがう ・・・?
ああ 急な仕事で疲れているのかも・・・
ちら、っとそんなことも思ったが彼に会えた喜びがすぐにその思いを消してしまった。
「 いらっしゃい! 遠路はるばる・・お疲れさま♪ 」
「 うふ ・・・ ああ やっぱりフランスは遠いなあ 」
するり、と抱きついてきた彼女に ジョーは遠慮がちにキスをしてくれた。
ふふふ ・・・ ま〜た <日本人> に戻っちゃってるんだから〜〜
ま いいわ。 ちゃんと恋人のキス してくれたもの
「 急なお仕事ってもういいの? 」
「 あ? ああ うん ・・・ ごめんね、急に予定を変えて ・・・ 」
「 ううん いいの。 お仕事優先してちょうだい。 忙しいのは有能な証拠でしょ。 」
「 あ は ・・・ まあ ね。 さ〜〜あ もう仕事もなんもかんも忘れる!
忘れて〜〜 きみとのバカンスを楽しむぞぉ〜〜 」
彼はひょい、と彼女を抱き上げた。
「 きゃ ・・・ うふふふ ・・・うれしいわ〜〜 ねえ お兄ちゃんにも会ってね?
ちょうど休暇で帰っているから。 」
「 ・・・ え。 また・・・殴られない・・・よね? 」
「 だ〜いじょうぶよ 多分。 」
「 た 多分〜〜〜??? 」
「 ええ。 よ〜〜く言ってあるけど。 多分。 」
「 ・・・ 心構えはしておくよ。 」
「 よろしく〜〜♪ さ 行きましょ♪ 今晩はねえ、ジョーの好きな <日本風・煮込み> 」
「 わお〜〜♪ 」
恋人たちは互いの腰に腕を回し 思いっきりいちゃいちゃしつつ空港を後にした。
・・・ とても楽しい休暇だった ・・・
「 そ・・・うか。 ジョーのあの時の < 急な仕事 > って ・・・
このヒトとの事件だったのね。 彼、この島へ行ってたんだわ。 」
彼女は改めて文面を読み直す。
博士は < 挑戦状 > と言ったが、それはまさに一方的な通告であり、
脅迫めいた呼び出しでもあった。 常軌を逸した行為だ。
差出人は 復讐のため、と明記しているのだが ・・・
「 ― 指定してきた日時に わたしが行くわ。 」
手紙を畳み、メールを閉じると 彼女は静かに立ち上がった。
「 指定の日時に遅れて怖気づいたなんて思われたくないもの。
009はそんなオトコじゃない。 それにこんな陰謀を放ってはおけないわ。 」
カチン ・・・ 彼女はお茶のテーブルを片付けキッチンへと洗い物に行った。
いつもとなにも変わらない動作、そして穏やかな顔 ― その内に固い決心を秘めて。
009 島村ジョーよ
復讐の準備は完了だ。
〇月〇日 例の島まで来い。
5年前の恨みを忘れてはいない。
待っているぞ。
A.フリードキン
ヴァ −−−− ・・・・ 乾いた風が砂を巻き上げて吹き込んでくる。
「 おっと ・・・ いけね。 」
ジョーは慌てて部屋の窓を閉めた。 つい習慣で全開にしていたのだが ・・・
「 ふう ・・・ しっかしおおまかというか荒い天候だなあ・・・
これじゃ今日はちょっと厳しいかも・・・ 服装も考えなくちゃな。 」
ホテルの一室で取材用の機器を点検しつつ、彼は窓の外を眺め溜息をついた。
GPレースの取材で この地に来て3日。 天気の荒さにいささか閉口気味である。
「 う〜〜ん ・・・ こんな時に防護服ってのは便利なだけどさ。
まさかあんなの、着るわけにはいかないし〜・・・ あ ・・? 」
rrrrrrr ・・・・ rrrrr ・・・ !
客室備え付けの電話が鳴った。
「 ・・・・ はい? 903号室ですが。 ― は? 」
受話器を取り彼は怪訝な顔をしている。
「 ・・・ ぼくに、ですか。 いや ・・・ そんなヒトは知りませんが。
メデイア関係ですか? ・・・ わかりました、とりあえず今 ・・・ 降りてゆきます。 」
彼は静かに電話を切った。
「 ― マリサ・フリーデル? 記憶にないぞ。 」
ジョーは首を捻りつつ、身だしなみを整えてから部屋を出た。
ロビーに降りると フロントがそっと目顔で教えてくれた。
その視線の先には見事な黒髪の女性が 姿勢をただしてソファに掛けている。
「 ・・・ あ〜 ・・・ミズ・フリーデル? シマムラですが・・・ 」
「 ・・・・・・ 」
ゆっくりと彼女は立ち上がる。 淡い笑みを浮かべつつ、かっきりとジョーを見据えて・・・・
「 マリサです。 ミスタ・シマムラ Nice to meet you. 」
「 初めまして・・・ すみません、以前にどこかでお目にかかりましたか?
それとも メディア関係の方 ですか? 」
「 メディアって言えるかしら・・・ 小さな地域誌の記者をしています。 」
彼女はネーム・カードを出して ジョーに渡した。
「 ・・・ はあ ・・・ 」
ジョーは 当惑しつつそのカードに視線を落とす。
確かに聞いたこともない雑誌社の名前が印刷してあるが、そもそもこの地には
全く不案内なので、なんとも答え様もない。
「 あの ・・・ それでぼくに なにか。 」
ジョーが顔を上げた時 目の前にいる女性の印象が豹変していた。
いや、見掛けはほんの数秒前とまったく変わらない が。 彼女は全く違う人格に見えた。
「 え! あの! 私もモータースポーツ・ファンで。 ミスタ・シマムラのお書きになる記事、
ず〜っと追っかけているんです〜〜 ファンなんです〜 」
先ほどとは打って変わって ― やたら高いトーンの声が響く。
「 はあ ・・・ 」
「 ほら 去年の〇〇GPの時とか 2010年の〇〇GPの予想とか〜〜
ああ あんな記事が書けたらなあ〜って。 ズッと憧れてたんですゥ〜 」
「 あ いや ・・・ そんな ・・・ 」
「 それで。 今度のGP〜〜 きっと取材にいらっしゃるだろうあ〜〜って楽しみにしてたんです!」
「 へえ・・・・ 」
「 それで! GPの取材が終ったらこっちへいらっしゃるって聞いたものですから。
えへ ・・・ 私の地元、 この町なんです! 」
「 え ・・・ どうして知ったのですか? 」
「 あ あの。 ちょっとだけ・・・ズルして。 同業者ネットで ・・・ ね? 」
彼女は うふ♪ っと笑って見せた。
冗談じゃあないよ ・・・ これって一種のストーカーじゃないか!
こっちの旅行は半分はプライベートなんだぞ
ジョーは内心少しイライラしていたがなんとか笑顔を保っていた。
「 かなわないなあ・・・ でもこれからの取材は自然の風景とかだから ・・・
レースとは全然 無関係なんです。 きっと若いお嬢さんには面白くないですよ。 」
「 あら! そんなこと、ありませんわ。
ねえ 有名スポットとかご案内しますわ! なにせ ここは私の地元ですもの。 」
「 いや そんな。 ご迷惑では・・・ ( ぼくがご迷惑なの! ) 」
「 いいえ いいえ 全然! それにねえ この町の郊外に、 ほら 砂漠がもうすぐ
近くに見える辺りにね、 ちょっとした人気スポットがあるんです! 」
彼女が一歩近寄ると ジョーはじりじりと後ずさる。
「 あ ・・・ ぼくの今回の写真は、 観光スポット対象じゃあないので・・・ 」
「 もっちろん わかってますよ〜 ミスタ・シマムラのもうひとつの顔! もちゃんと
知ってますもん。 知られざる秘境をたずねて! でしょう? 」
「 いや ・・・ 秘境ってほどのことじゃ ・・・ 」
「 でもでもね 砂漠の始まり ってステキですよ〜
もっとも最近じゃ 砂漠が侵攻してきてて ・・・ ちょっと怖いんですけど。
ヒミツの人気スポットはねェ〜 その中にあるんです〜〜
あ の ね♪ 恋人たちへのパワー・スポットで。 二人で行けば必ず幸せにゴールイン♪って 」
「 砂漠が侵攻してくるって どういうことですか? 」
あえて恋愛スポット云々〜 については無視をして尋ねる。
「 え? ・・・ ああ 砂漠? あ〜 なんかねえ、砂がどんどん市街地の方へ動いているんです。」
「 ふうん ・・? やはり気象の変化によるものなのですか? 」
ジョーは 娘のお喋りに、初めて少しだけ関心を示した。
「 多分 ・・・ 町はいつか砂漠に飲み込まれてしまうかも、なんて言う年寄りもいます。
一応ね〜 これでも土地のジャーナリストの端くれですから〜 情報は集めてますヨ 」
「 ・・・ ふうん ・・・? その場所って取材できますか? 」
「 ええ ええ! あ 立ち入り禁止区域もあるけど ・・・ 私、取材許可、とれます! 」
「 そう ですか? 本当にご迷惑では・・・? 」
「 ぜ〜〜んぜん! ねえ 今からでもよかったら。 ご案内しますゥ〜 」
「 それでは ― お言葉に甘えて・・・ お願いします。 」
「 うわ〜〜〜 やった♪♪ ね ね じゃあ これから〜 」
「 ああ すみません、着替えてカメラを持ってきます。
砂漠なのでしょう、アナタはその恰好で大丈夫なのですか? 」
「 平気 平気〜〜 地元ですもん♪ うふん・・・ これお気に入りなんですぅ〜 」
彼女はしな〜っと身体をくねらせ、スカートをひらひらさせている。
「 ・・・ それじゃ。 すみませんが 5分、待っていてください。 」
「 はぁ〜い♪ どうぞごゆっくり〜〜 ますますイケメンになってきてください〜 」
「 ・・・・・・・ 」
やれやれ・・・と思ったけれど < 砂漠に飲み込まれる町 > の佇まいへの
興味の方が勝っていた。
ジョーは会釈をすると 足早に部屋へとって返した。
急いで服装を整え、機材を持った。
そして電話を一本。
「 ・・・ はい はい。 ああ確かにそういう女性記者さんはいるのですね。
ありがとうございます。 お手間を取らせました。 」
ジョーは静かに受話器を置いた。 マリサ・フリーデルは確かに地元誌の編集部に在籍していた。
うん ・・・ 後ろ暗いヤツじゃないんだな
ちょっとうるさいけど よかった ・・・
少し ・・・ ほっとした気分だ。
「 ・・・ と ・・ よし。 あ ・・・ メールチェックしてない か。 」
再び部屋を出る間際に ジョーはちらっとPCへ視線をやったが ―
「 まあ いいか。 どうせすぐに戻るし ・・・ 」
ジョーは足早にロビーへと降りて行った。
ビュウ −−−− ・・・・ !
砂漠の町、に相応しい風が吹きぬけてゆく。
「 え〜と ・・・? それでお勧めの場所までどのくらいですか? 」
「 ちょっと奥まで入るんです。 私の車でご案内します〜 」
「 は はあ ・・・ 」
彼女はホテルをでると先に立ってすたすたと歩き始めた。
ジョーは自分のレンタカーを使うつもりだったので 少々拍子抜けしたが大人しく付いていった。
・・・ 私の車 って。 大丈夫かな・・・
普通車で砂漠の中まで行けるのかなあ
あ 案外 観光スポットとかで道が付いているのかも
後ろ姿はどうみてもごく普通の若い女性 ― 一応ジャケットを羽織っていけれど ふわふわした
スカートにレースやフリル ― ジョーにとってはただの ひらひら にしか見えない ―
装飾の多いブラウスを着ている。
背に梳いた黒髪は結んでもいない。
「 え ・・・と? こっちにパーキング、ありましたっけ? 」
「 ええ。 地元の人が使う場所なんです。 あ ほら ・・・ 」
「 ・・・・・ 」
町外れに近い場所に屋根のないパーキングがあった。 砂があちこちに溜まっている。
ピンヒールなのに彼女は身軽に砂溜まりを越えてゆく。
「 よ・・・っと。 ― ああ コレですわ。 」
マリサが指差した場所には 使い込んだ四駆が停めてあった。
「 ・・・ へえ・・・? 」
ジョーは思わず驚きの声を上げてしまった。
「 え? なにか? 」
「 あ・・・い いや ・・・・ そのう・・・ 君にはあんまり似つかわしくない車だなって思って 」
「 そうですか? この町じゃね、こういうのじゃないと生活できないんです。
一応〜 地元誌の記者ですから〜〜 取材とかもするし。 」
「 そ そうでしたよね すみません、くだらないことを言って。 」
「 いいえェ〜〜 ねえねえ ミスタ・シマムラ ・・ あ ジョーさんって呼んでもいいですか。 」
「 え ・・・ どうぞ。 」
「 きゃい♪ あのね、 ジョーさん。 それじゃ私に似会うクルマってどんなのです〜〜う?
私のイメージって・・・ やっぱ日本車とかが合いますゥ? 」
「 え ・・・あ さ さあ・・・ あ ぼくが運転しますよ。 」
「 まあああ 〜〜 嬉しい♪ あ でも大丈夫かな・・・ 砂漠を走るのって慣れてないと
大変なんですゥ 〜〜 」
「 ほとんどの悪路ならクリアできますよ。 それよりも貴女はナヴィをしくれませんか。 」
「 はぁ〜い♪ よろこんで〜〜 」
彼女は大喜びで四駆の助手席に収まり ぴった〜〜りドライバーにしなだれかかった。
「 ・・・・ ( うわ ・・・ ) あのゥ〜 ミス・フリーデル? 」
「 なぁ〜にィ ・・・ あなた♪ 」
「 ちょ! そんな誤解を招く言い方は止めてください。 」
「 あらぁ〜 ギャラリー なんかだれもいませんもん♪ さ〜あ 出発〜 出発〜♪ 」
「 ・・・・ ( やれやれ ・・・ ) 」
ジョーは派手に溜息をつき ― えいや!っとあまり手入れが行き届いていない四駆を発車させた。
ザリザリザリザリ 〜〜〜〜 ・・・・・!
ジョーが運転する車は派手に砂を撒き散らし 町外れのパーキングから出てゆくのだった。
町外れの砂防城壁を越えると ― 完全に砂の海 ・・・ うねる砂の波が一面に横たわっていた。
「 ― ! お〜っと ・・・ 危ない! 」
ガクン ・・・・! 大きく車が揺れた。
「 大丈夫ですか? 」
「 え ええ ・・・ この辺りの砂はまだ緩いのですって。
だから車輪を取られてたりするんです。 」
「 ふう ・・・ すいませんね。 こんな砂漠を走るのは初めてなんでね。 」
「 あらぁ〜 上手ですよお〜 さすが元レーサーですね〜 」
「 ・・・ いや ・・・ それでその人気スポットとやらはこのままの方角でいいのですか? 」
「 え〜と・・・ ちょっと待ってね、カーナビつけますから・・・ 」
「 ― 暑くなりそうだな ・・・ どうですか? 」
「 え〜とね ・・・ 直進してくださいね〜 でェ ちょっと目立つ岩があるんで〜 そこをね・・・
きゃあ♪ 揺れたぁ〜〜 うふふふ・・・ 」
「 ・・・・・・・ 」
いいけど さ。 このコ、なんだっていちいちぼくにくっつくんだ?
暑いし 砂っぽいから あんまりべたべたするな〜〜
「 あ〜 あそこ! ほら岩山みたいなトコがあるでしょ? あそこ! 」
「 ? ああ ・・・ 」
かなり前方に岩山に近い影が見えた。 緑もあるらしく、所謂オアシスに近いのだろう。
「 昔はねえ この辺りはまだ砂漠じゃなかったらしいんです。
あそこ ・・・ ちょっとオアシスみたいでしょ? 洞窟や泉とかもあるし。 」
「 そうですね ・・・ 昔は山だったんじゃないかな。 」
かなり大きな岩山が前方にはっきりと姿を現してきたので、ジョーはスピードを落とした。
「 ねえ お話した恋愛のパワー・スポットはねえ あの中なんです。
車 降りて入りましょうよう〜〜 」
「 ぼくはいいけど ・・・ マリサさん ・・・ その恰好で大丈夫ですか? 」
「 平気 平気 〜〜 さあ 降りましょ♪ 」
「 ・・・・・・ 」
ジョーは車を停めて 外に出た。
「 ・・・・・ ! 」
ぐわ・・・・っと熱風が一度に襲ってきた。 砂も混じっていて顔が痛い。
「 マリサさん? 大丈夫ですか ! 」
「 はい〜〜 ジョーさんこそ? 」
「 ええ ぼくは ・・・ うわ? 」
マリサが車を回ってきたが 彼女はすっぽりポンチョ風なコートを見に付けていた。
「 これはねェ 砂避けなんです。 熱さもけっこうカットできますし〜
さあ こっち! 恋人たちのスポットなんですゥ〜 」
彼女はどんどんその岩屋みたいな中に入ってゆく。
「 ・・・ ああ 待って下さい。 すこし写真も撮りたい。 」
「 あらぁ〜 中の方がいい場所がありますよ〜 こっち こっち 」
「 ・・・・・・ 」
ジョーはカメラの道具を持って 仕方なく彼女を追った。
「 マリサさん? 」
「 ジョーさ〜ん こっち〜 そこの岩をくぐって ・・・ 入れますゥ? 」
「 え ええ ・・・ うわ ・・・ なんだ、随分狭いんだな〜 マリサさん? どこです? 」
「 こっちよ〜 そのまま進んで〜 曲がってください〜 」
岩屋の中に入ると 思いの他ひんやりとしていた。
かつてはグリーンも多く大々的なオアシスだったのだろう。
岩の間から光が差し込んで来ているので 結構明るい。
ふうん ・・・? なるほど ね。
恋愛パワー・スポット には相応しいかも な
お。 あの辺りも雰囲気 出るな
ジョーは周囲を眺めつつ写真の撮影場所を考えつつ進んだ。
「 ここですぅ〜〜 ジョーさん〜〜 」
マリサは岩屋の一番奥らしき場所に立っていた。
「 マリサさん ・・・ すみません、お待たせしました。 」
「 私こそごめんなさい。 ― ちょっとウソを言いましたわ。 」
「 ? ウソ ・・・? 」
「 私。 マリサ・フリードキン といいます。 」
「 ・・・・ フリードキン だって? ! 」
ジョーの表情が途端に変わった。 瞬間、彼は彼女から距離を取った。
同時に娘の表情も ― いや 彼女の印象全体が突如変化した。
それまでの浮ついた陽気なカルさが すっと影を潜めた。
ほんの一瞬、俯いて。 上げた顔は ほとんど別人に近い。
「 ・・・! 」
「 ふうん ・・・ この名前には覚えがあるらしいわね。 ― 009。 」
「 きみは ― なにが言いたい? 」
「 別に なにも。 ただ御挨拶をしたいと思っただけ。 二人だけでね。 」
「 ! そのためにわざわざ ・・・ こんなトコロまで呼び出したのか。 」
「 あら。 アナタとデートがしたかったのも本当よ? 」
「 きみは 誰だ? フリードキンの名を名乗るなら ・・・ 」
「 お察しの通り。 さすがね 009。
私は プロフェッサー・A フリードキンの ― あなたが殺した男の 娘よ。」
「 な なんだって! 」
「 だから 私がここに居る訳を言ったの。 アナタが尋ねたから。 」
「 そうか。 ただし、これははっきりしておく。 ぼくは ― 彼を殺してはいない。 」
「 ふん ・・・ ええ 直接、はね。
でも 父はあなたに研究施設も資料も ・・・ なにもかもを破壊されて失意のうちに
亡くなったわ。 あなたが殺したのと同じよ! 」
「 しかし 彼は ― あなたのお父さんの研究は、許されるものではなかったんだ。 」
「 それでも 父はあなたに殺されたのよ。 」
「 ちがう! 」
「 私にとっては同じことだわ。 だから ― これは復讐なの。 」
「 なんだって ?! 」
「 ふふふ ・・・ 今ごろねえ アナタの仲間たちはあの島に集結して ・・・
同士討ちでもしていることでしょうよ。 くくくく ・・・・ 」
「同士討ち? そんなことは有り得ない ! 」
「 さあ どうかしらね? ふふふ ・・・ もっともアナタにはそれを確かめる日はこないけど。
ここが ― この砂漠の岩屋に閉じ込められてね。 」
マリサの手には銃が握られていた。 ポンチョ風のコートの下に隠し持っていたのだろう。
レーザーガンであることがジョーにはすぐに判った。
「 ゼロゼロ・ナンバーサイボーグ! お前たちを始末するには戦力を分散させるのが一番。
そのくらいは私にだってわかるわ。 」
「 く・・・そ・・・! 」
「 一人で眠るのは淋しいでしょうけど。 ここがお前の墓場になるのよッ ! 」
ズサ ・・・ ! ジョーは踏み出そうとしたが足元が ぐにゃり、と陥没した。
「 う ・・・ ! 」
彼は辛うじて踏みとどまったが大きく姿勢を崩してしまった。
「 ― くそッ 」
「 お〜〜っと。 加速装置は使わせないわ。
ねえ 009。 くふふふ ・・・ この狭い岩屋で加速すればどうなるかしら?
岩は崩れて私は下敷きになるわね。 お前はフリードキンの娘まで殺したことになるの。
父も娘も その手にかけたことになるのよ。 それが ― 正義の戦士?
ふふふ ・・・ さぁ 加速してみる? 」
「 ・・・・・ ! 」
ジョーはマリサを正面から見据えつつ 懸命に周囲をさぐった。
フランソワーズほどではないけれど、彼の偏光グラス・アイにもサーチ機能がある。
・・・・ ! ったく袋小路みたいな場所だな。
確かに加速したら この岩山全体が崩れ落ちるかもしれない・・・
少なくともこの洞窟は危険際なりない場所なんだ
ジリ ・・・ ジョーは少しづつ姿勢を調えるのだが 足元は砂と岩に水が染み出てきていて
ひどくぬかるんでいた。
「 悪あがきはやめたら? 私 自分の命が行動上、有効なら投げ出すことなんか平気よ。」
「 そんなバカなことはやめるんだ。 命は ・・・ どんな命であっても捨ててはいけない! 」
「 ― ふん ・・・ 」
薄ら笑いを浮かべ ― マリサは手を前に突き出し、小さなリモコンのスイッチを押した。
「 ・・・ やっと父のカタキが 討てる ・・・わ ・・・! 」
「 待て! 早まるな〜〜 ! 」
ゴゴゴゴ ・・・・ ゴウン ・・・〜〜〜〜 ズザ −−−− !Q
大音響ともに岩屋は 爆発した。 その音を気に留めたヒトはほとんどいなかった。
半日後。 ホテルのフロント前には < マリサ・フリーデル > の姿があった。
「 はい、ミスタ・シマムラからの依頼です。 急ぎの仕事で急遽帰国することになりました。
支払いと荷物の受け取りに ・・・ はい、こちらが委任状です 」
「 やあ これはどうも。 」
「 荷物は恐らくほとんどないと思いますが・・・ 」
「 ええ ほんの少しですよ。 お渡しします。 お客様もメルボルンへお帰りですか? 」
「 そのつもりです。 南半球は初めてなので いろいろ・・・見物したくて ・・・ 」
「 そりゃいいですねえ〜 これからがこちらのハイ・シーズンですよ〜 」
「 ステキ♪ 仕事は落ち着いたら是非〜〜 また来たいですわ〜 」
「 お待ちしております。 はい、これがミスタ・シマムラのルーム・キィです。 」
「 ありがとう ・・・ それじゃ ・・・ 」
< マリサ・フリーデル> は Joe Shimamura の泊まっていた部屋へ向かった。
ドドドド ・・・・ ザザザ ・・・
木造の渡し舟にちかい船舶が 波を蹴立て進んでゆく ―
その舳先に立つは 赤い防護服に黄色のマフラー そして 陽に輝く金の髪!
「 来たわ ・・・! 」
Last updated
: 10,16,2012. index / next
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原作・あのオハナシ で フランちゃん活躍編??
RE: ・・・ じゃないですよ、これはやっぱり原作のジョー君ですな。
フランちゃんは 平フランちゃんっぽいけど ・・・
あと一回 続きます〜〜〜 <(_ _)>