『 まぼろしの沼 ― (2) ― 』

 

 

 

 

   パリ パリ  もぐもぐ ・・・ ごくん。

 

「 ・・・ おいしい わ  このキュウリ 」

 

フランソワーズは手に残った半分を 改めて眺めた。

かなり無理矢理に口に押し込んだサンドイッチだったけれど

採れたてのキュウリとチーズの取り合わせは 絶妙だった。

 

 

おじいさん農家さんから貰った、取り立てのキュウリとトマト。

カタチはイビツだったけど めちゃくちゃ美味しいのだ。

早速 厚切りとトマトとハム  厚切り胡瓜とチーズ でサンドイッチを作った。

 

「 おいし〜〜〜♪  これならジョーも好きよね〜〜

 博士にも差し入れして・・・  うふふ ジョーとランチするわ♪ 」

 

もう〜〜 最高に るんるん気分 で張り切ってサンドイッチを作った。

涼しい中 論文執筆に邁進しているギルモア博士に届けてから

着替えをした  ―  もってきた服を全部並べ、あれこれまよったけれど

オール・お気に入りで すっきりまとめてみた。

 

      うふふ〜〜ん ♪

      避暑地の午後〜〜〜  ランチをご一緒に

 

      きゃ♪

 

 そして 勇んで発掘現場に出かけたのだ   が。

 

 

 

      ふうん ・・・

      こんな美味しいの 初めて かも

 

      キュウリも トマトも

      ・・・ 後で買いに行こっかな

 

「 ふう〜〜〜 ・・・・ 」

残りのサンドイッチを平らげ 気持ちも少し、晴れてきた。

「 ・・・ あれ ・・・ ここ ・・・ どこ?

 別荘の近くかしらね ・・・ あら キレイな池・・・ 」

改めて 周囲を見回してみた。

気がつけば 見知らぬ池の側の岩に座って

ぼんやりランチの包を開けサンドイッチを 口に運んでいたのだ。

「 やあね わたしったら ・・・ 」

 

    ふう〜〜〜    もう一度だけ 溜息を吐く。

 

「 ・・・ サンドイッチは美味しいし ここはキレイな景色だし

 風は涼しくて気持ちいいのに  ・・・・  」

 

  カサリ ―  

 

フレア・スカートの裾をちょこっと整える。

お気に入りのサンダル そして ストッキングも履いて・・・

大好きな日傘ももってきた。

 

  パチン。  その日傘、お日様に向かって広げて見る。

 

「 やっぱりこの色、最高ね! お日様の光に映えるわあ〜〜

 日傘もちょっと傾けて   あ ほら 光がきれい ・・・ 」

ランチの包を横におき、自分自身の装いを点検し ―

最初に漏らした満足の吐息は だんだんとブルーになってゆく。

 

       ・・・ 皆 上手くいったのに。

       スカートもサンダルも 日傘も・・・

       完璧に素敵な  避暑地の午後 に

       なると思ってたの  に ・・・

 

       それなのに ・・・ 

 

「 ・・・  もう〜〜  ・・・ ジョーの ばかぁ 」

 

 スン ・・・ 涙が滲んできてしまった。

「 やだ ・・・ もう〜〜 」

ゴシゴシ ―  レエスのハンカチは 涙を拭うには全く向いていない と

妙に納得してしまった。

「 ―  帰ろっか ・・・ ここに居ても仕方ないわ 」

ランチの包を纏めて 立ち上がろうとした。

 

 

       その きゅうり  ― たべたいなあ

 

 

突然 足元から声が聞こえた。

「 ・・?????  え  え??? な なに ・・・ 」

フランソワーズは 咄嗟に 003の眼と耳 にスイッチon しそうになった 

 が  なんとか ブレーキが間に合った。

 

「 ?  なに  だあれ ・・? 」

 

      だから さ  きゅうり 一口おくれ〜〜

 

「 ・・・ だ れ ・・・? 」

 

      ワタシさあ 〜〜〜

 

どんどんどろろ〜〜〜〜  と 白煙は ・・・でなかったが。

気付けば 足元に ちっこい緑色のイキモノが座っていた。

 

         え?   もしかして ―  カエル ? 

 

「 きゅうり・・・?  カエルがキュウリ たべるの? 

「 食ったらわるいか? 」

「 い いえ・・・ カエルって 虫 とかたべるって思ってて 」

「 キュウリを食べるカエルだって いるんだ 」

「 ― あのう・・ これ、キュウリって 毒にならない? 

 そのう ・・・ カエル いえ アナタにとって 」

「 わざわざ毒を所望するほど ヌケサクではないぞ 」

「 ・・・ わかったわ   はい どうぞ 」

フランソワーズは 包に残っていたキュウリの端っこを差し出した。

   ぱし。  カエルはかなり器用に受け取った。

 

    もぐもぐ・・・

 

「 ・・・ あの ・・・ おいしい?  

「 ああ? 」

「 そのキュウリ おいしいかしら 」

「 ん〜〜  まあまあ だな  あ ありがとサン 」

カエルは キュウリを齧りつつ ― きょろり と目を向けた。

「 俺さ ―   ホントは ニンゲンなんだ 」

「 え〜〜〜〜〜〜 

「 ワルい魔法使いに カエルにされた  王子サマ なんだぜ 

「 ・・・ ま まほうつかい??  」

「 そんでもってぇ  若い娘にキスしてもらうと 

 魔法が解けるのさ 」

 

      ・・・ うっそぉ〜〜〜〜〜

 

こんなに涼しい日なのに フランソワーズはなんだかアタマが

クラクラしてきた。

 

 

 

 

 ― ほんの数十分前 のこと ・・・ 

 

「 えっと・・・?  発掘現場の作業小屋はこっちね 」

フランソワーズは 軽やかな足取りで < 現場 > に戻ってきた。

手にしたバスケットには サンドイッチ・ランチ。

あの今朝取れの野菜を使った自信作だ。

「 ふっふっふ〜〜  ホントに美味しかったのよ♪

 ジョーの好きな卵サンド も作ったわ・・

 一緒に頂きましょ?   食休みには お散歩よ 」

 

 ふんふんふん ♪ ・・・・ ご機嫌ちゃんで作業小屋までやってきた。

 

     あはは  そうなんですか〜  うふふ そうですよぉ

 

小屋の中からは 楽しそうな声が流れてくる。

燥いでいる というカンジではないが 気の合う仲間たちといった雰囲気だ。

「 あ らあ  なんだかとても賑やかねえ  」

邪魔するのに気が引けて 彼女はしばらく佇んでいた。

 

ジョーは 現場で学生さんの助手さんたちと盛り上がっている様子だ。

フランが来るのが遅かったので 昼ご飯には皆からお握りなんかを

分けてもらってらしい。

楽し気な彼の声が聞こえてくる。

 

       ・・・ あら。

       なんか すごい陽気ね 

        < 島村クン > ?

 

「 ごめんね〜 なんか古めかしいお弁当で 」

「 そ〜そ〜 漬け物なんか嫌いでしょ 食べられる? 」

「 え〜〜 そんなこと ないっすよぉ 浅漬けって美味しいし〜

 ぼく おにぎり 大好きなんです!

 なんか ウチはパンが多いけど ・・・ ぼく ゴハン派 」

「 あは よかったあ〜〜 ただの梅干しお握りだけど 」

「 うっは・・・ 梅干し 大歓迎っす〜

 なんか久しぶりだなあ〜  ・・・ うまあ〜 」

 

       ゴハン派 ですって?

 

       !  なら そう言ってよね!

       炊飯器くらい わたしだって使ってますよ?

 

「 ―  やだ 立ち聞きなんかしたくないわ 」

 

   とんとん とん ・・・   失礼します?  

 

ドアは半分開いているけど 一応 ノックした。

 ― 急に 室内の声はぴたり、と聞こえなくなった。

 

「 ・・・ はい? どちらさまでしょうか 」

 

硬い声が返ってきた。

「 あのう ・・・ こちらに 島村さん 来てますよね? 」

フランソワーズは 少し迷い かなり <余所行き> の声で訊いた。

「 あ ・・・ は はい。 お呼びしますが

 失礼ですが どちらさまで・・・? 」

「 あ ぼくです〜〜  大丈夫ですよ 」

後ろから 聞き慣れた声が近づいてきて ―

 

  ガタ ―  ドアが全開、茶髪の笑顔が現れた。

 

「 やあ フラン。 博士から なにか・・・? 」

彼は ランチを頼んだことを完全に忘れているとみえる。

「 これ ・・・ 」

 

   ずい。  バスケットごとサンドイッチの箱を差し出した。

 

「 あ 弁当! フラン ありがと〜〜  

 わるい そこの棚に置いてくれるかな 」

「 ・・・え   ここ? 」

「 そう 」

「 ・・・ 」

「 ごめん〜〜 今 ぼく 手が汚れてて  ・・・ あ 」

ジョーの言葉を全部聞かないうちに 彼女は作業小屋から

離れて行ってしまった。

 

「 あ ・・・ 」

 

「 島村さん! ・・・あのぅ お姉さん ですか 」

「 え あ まあ ・・・ 」

「 うわあ〜〜 キレイな方!  ウチの男性陣がいたら大騒ぎですよぉ 」

「 え  ・・ あ そのう・・・ 」

「 ねえ ねえ お弁当をわざわざ届けくださったんですか??

 うわ〜〜〜 親切ぅ〜〜〜 

「 いや そのう ・・・ あ 皆でたべませんか 

 さっき ぼく お握り、頂いちゃったし・・・ さ どうぞ! 」

ジョ―は 手を丁寧に拭いてからバスケットからランチ・ボックスを取り出し

皆の前に置いた。

「 え〜〜〜〜 いいんですかあ 」

「 うわ うわ 美味しそう〜〜 」

「 あは ホントだ ・・・ ウチのサンドイッチ、美味いですよ 

 どうぞ〜〜 」

「 きゃ〜〜 」  「 わあ〜〜 すてき! 」

小屋の中はたちまち歓声でいっぱいになった ・・・

この歓声を受けるべき人物は ―  とっくに離れていってしまっている。

 

 

 

    ぼこ ぼこぼこ ・・・ 

 

泥の道に お気に入りのサンダルのヒールがめり込んでしまう。

「 ・・・ あ ん ・・・ もう〜〜 」

 

 ぼんやり歩いていたら  ― 気が付いたら キレイな池の側にいた。

「 ・・・あら ここ キレイね・・・

 いいわ ここでお昼ご飯にするから ―  ふん ! 」

 

   カサカサ。  トート・バッグの中から包をとりだした。

 

 ― そして。 あの カエルさん と出会ったので ある。

 

 

      もぐもぐもぐ  カエルは美味そうにキュウリを食べている。

 

「 ねえ カエルさん。  ニンゲンに、いえ 王子サマに戻りたい の? 」

「 あ〜 ?  べつにどっちでも・・・

 カエル生活も なかなかいいもんで さ 」

「 へ え・・・ 普通はなんとかしてニンゲンに戻りたい〜

 とか思うんじゃないの? 」

「 俺は 普通 じゃないらしいよ 」

「 カエルさんは 普通のカエルさん じゃ  ないの? 」

 

   う〜ん??  カエルはちょっと考えている風だった。

 

「 そうさなあ〜〜  う〜〜ん ・・・

 あ  以前にやっぱりふら〜っと来たオンナノコがいてさ。 」

「 ― へえ 

「 そのコ わざわざ魔法使いをやっつけちまってさ。

 ヤツの魔法を解いたんだ 」

「 え。  だってさっきアナタは魔法使いにカエルにされたって

 言ってましたよね 」

「 あ〜 やられたのは先代の魔法使い。  すぐに二代目が来た・・

 ま そんで一時は み〜〜〜んな呪いの魔法は解けて 

 どいつもこいつも ニンゲンに戻ったんだ ・・・ けど。

  ― ま〜〜 ひどい騒ぎ さ。 」

「  ・・・ 騒ぎ ・・・ ? 」

「 ん。 略奪やら暴行やら ―  動物でいた方が全然平和さ 

「 ・・・・ 」

「 あ?  あのコ アンタにちょっと似てるかも?

 な〜んか奇妙なキンキラキンの赤い服 着てたけど ・・・

 親戚かい ? 」

「 さ さあ ・・・ し 知らない けど ( どき )」

「 ふうん   ま いいけど。 

 あ〜 なあ キレイな娘さん  まだキュウリ ある? 」

「 ・・・ サンドイッチならあるわ  たべる? 」

「 おう。 くれる? サンキュ〜〜〜 」

カエルは キュウリとチーズのサンドイッチを嬉々として

頬張りはじめた。

 

      このカエルさん ・・・

      え あの夢の中の カエル王子??

 

      ウソでしょう〜〜〜

 

「 ね え ・・・? カエルさん。

 そのう ・・・ 一緒に踊ったり き キスしたり しなくて いいの 」

「 はああ? キスしたいのか 俺と 」

「 え ・・・ ううん ううん 

フランソワーズは かなり真剣に首を振った。

「 なら そんなこと、言わんほうがいいぞ 」

「 そ うね ・・・ 

 でも でもね。  本当に人間に戻りたくはないの? 」

「 あ〜〜 ・・・ まあ なあ  このカエル姿、結構気に入ってるし。

 それに ―  この方が平和なのさ 」

「 あ ・・・ さっきの話? 」

「 そ。  国の大臣やら高官たち 多くの国民たち も

 み〜〜んな フナやら ミズスマシなんかになってるけど

 いい感じに生きてる。  平和でいいよ〜 」

「 ・・・ こ この池 で? 」

「 あ〜。  あ〜〜 ほら メダカいるだろ ? 」

カエルは サンドイッチを持ったまま水面を見ている。

「 え・・・ あ ほんとう! 列になって泳いでるわ かわいい 」

「 国防軍の軍人たち さ。 あれで楽しんでる 

「 ・・・ へ え ・・・ 」

「 ん〜〜〜まかった♪  なあ このサンドイッチ、娘さん、あんたが

 作ったのかい 」

「 そうよ。  この村の美味しいお野菜を頂いたから 

「 ふ〜ん ・・・ ありがと。 

 なあ  よかったら ― 池の中 案内しようか 」

「 え??  こ この中 ?? 」

「 ふふん 見た目よかず〜〜〜っと深くて広いんだぜ?

 あ 勿論 カエルの姿になってもいいなら だけど。 」

「 ・・・・  いい! カエルになっても いいわ。

 でも そのままず〜〜っとカエルのままってのはちょっと・・・ 」

「 当ったり前。 ちゃんと今のアンタにもどるよ。

 なあに ちょっとばかりこの池を案内したくなっただけさ。

 なにせ 美味いキュウリをご馳走になったからな 」

「 ・・・ ん わかったわ。

 わたしも このキレイな池の中、 見てみたい。 」

「 おっけ〜〜  そんじゃ ・・・ ちょっと目を閉じて? 」

「  ・・・ ん ・・・  あの キスしても いいわよ? 」

「 しないってば。 安心しな〜  ほい! 」

 

     ぽん。  顔の側でなにか小さな音が聞こえ ・・・

 

「 さあ〜〜 案内するよ 飛び込め〜〜 」

「 え  え〜〜〜〜 」

 

     ぱしゃ〜〜ん ・・・ !

 

気がつけば 透明でひんやりした水の中にいた。

「 ??  うわ〜〜〜  ?? 」

「 ほい 付いておいで〜〜  娘さん 

「 え? あ 待って〜〜〜 」

 

    すい〜〜〜〜  ぷくぷくぷく・・・・

 

フランソワーズは 目の前をゆく緑色の姿を追った。

「 わあ〜〜 キモチいい〜〜〜  すごいキレイな水ね 

 え  あの池ってこ〜〜んなに広いんだ?? 

「 お〜い 娘さ〜ん  大丈夫かい 

先に行ったカエル王子は 立ち泳ぎ?で待っていてくれる。

「 はあ〜い  ねえ すっごく気持ちいいんですけど 」

「 はは  なかなか上手に泳ぐねえ  カエルの素質 あるぜ 」

   ほい、と出してくれた吸盤付きの緑の肢に 差し伸べる肢も緑色で。

 

      うわあ〜お〜〜〜

      マジ カエルなんだ〜〜 わたし?

 

      へえ へえ へえ〜〜〜・・・

      カエルの後ろ肢ってすごく強いのね??

      きゃ〜〜 ばっちりアンディオールで すごい♪

 

      最高にキレイな二番のグラン・プリエ〜〜〜

      ジャンプだって 男子に負けないかも〜〜

 

      みてみて〜〜 わたしの ぐら〜〜ん・ジュッテ♪

 

「 うふふ うふふ これは王子様〜〜 ごきげんよう 」

フランソワーズは カエル王子にレヴェランス〜〜

水中で よくよく見れば このカエルさん、なかなかハンサム?? で

カッコイイのだ。

なにより力強い脚で 華麗に水をけってゆく。

「 ぼんじゅ〜る ムスメさん  さあ 泳ごうぜぇ〜〜 」

「 きゃ いいですね〜〜 」

二匹のカエルは 先にり後になり時に交差したり並走したり・・・

池の中を縦横無尽に泳ぎ回る。

「 うふふ うふふ〜〜  ああ キモチいい〜〜

 すご〜く息の合うパートナーと踊っている気分だわ 

 ・・・ なんか ステキよ、カエルさん 」

そう ― カエル王子 は 池の中では、なかなかカッコイイ。

 

      あらあ〜〜 

      これは素敵な パ・ド・ドウかも ♪

 

      夢なら醒めないで ・・・!

      さあ 踊りましょう

 

「 お? なかなか上手いじゃんか〜〜 」

「 ふふふ  メルシ〜〜〜 ムッシュウ〜 

 

    す〜いすいすいすい〜〜〜  

    ぱしゃ・・・ す〜〜い ・・・

 

戯れているカエルたちの下を 黒い真鯉と緋鯉がゆっくりと泳いでゆき

湖底では カメがのんびり首を伸ばす。

 

   ツイ −−−−  アメンボが水面を滑って行った。

 

 全て世は異もなし ―  平和で穏やかな世界 の昼下がり・・・

 

 

 

     カタカタ  ゴトン。

 

椅子とテーブルの配置を戻し 午後の作業への準備を始めた。

「 あ それ ぼくが運びますよ〜〜〜 重いから 」

「 ありがと! うわ〜 助かるわあ〜 」

「 えへへ・・・ チカラしか取り柄、ないっすから〜 」

「 あら そんなこと、ないわよ?

 ねえ 将来考古学、専攻してみない? 興味、あるのでしょう 」

「 え・・・ あ そうなんですけど・・・ 」

「 ね〜〜 先輩?  皆 待ってますよね 」

学生さんが 午後の作業をチェックしていた助手さんに声をかけた。

「 ん? そうね〜 とても丁寧に作業してくれて 助かるわ 

「 いやあ・・・ 土の中からいろいろなものが出てくるって

 すごいなあ〜〜 って 」

「 そうでしょ?? それが考古学の魅力よぉ〜〜 」

「 そうかあ・・・ そうなんですねえ 

 

  ガタガタ ・・・  

 

土塊山盛りの箱が運び込む。 午後はこれを洗浄するのだ。

「 わあ  なにが出てくるかなあ・・・

 考古学の魅力 かあ 〜   そうなんだなあ 」

わくわくする思いで ジョーは土塊を眺めた。

全体を確認している助手さんが何気なくジョーに話しかけた。

「 島村クン。 ランチ、ご馳走様。 本当に美味しかったわ 」

「 あ いやあ〜〜〜  ぼくこそ 皆さんにお弁当、

 分けてもらって・・・ すいません〜 」

「 ね。 聞いてくれる? 」

「 ・・・ はい? 」

「 あの方  彼女さん でしょ。 届けて下さった金髪さん。

 お姉さんじゃないわよね。 」

「 ・・・ あ は はい ・・・ そのう〜〜 」

「 ね  ちゃんと言わなくちゃ ダメだよ 

 彼女の気持ち 考えてあげなくちゃ 」

「 ― え ・・・ あの ・・・ 」

「 とっても丁寧に作ったサンドイッチだった ・・・

 彼女さん きっと島村くんと一緒に食べたかったのよ 」

「 ・・・ え ・・・ 」

「 ウチに帰って ちゃんと謝って。

 そしてね こんどはちゃんと紹介するのよ?

 姉じゃないですって。  大切なヒトです って。」

「 ・・・ あの  なんか洞察力 すごいですね 

「 あらあ 想像力って言って?

 付け加えるとね 考古学って 想像力 が必須。

 だって こんな石ッころから むか〜〜しのヒトの生活を

 < 想像する > のですもの。 」

「 そ そうですねえ 」

「 だ〜からわかっちゃう。 島村くんだって あの彼女が

 と〜〜っても大切 でしょ? 

 だから バスケット、汚したくなかったのよね 」

「 え あ・・・  なんか 参ったなぁ 」

「 それにね。 言っとくけど。

 あんなに素敵なヒト ・・・ 放っておいたら 取られるよ? 」

「 ― え 」

「 学部でも院でも  どこででも! 」

「 ・・・ そ そっか ・・・ ( がび〜〜ん ) 」

ジョーは 真実顔色が変わっている。

「 うふふ・・・ 年上女子を甘く見ちゃ だめだよ〜〜

 ヤキモチ妬きの 島村く〜〜〜ん?  

「 う 〜〜  なんか ぐさっと来たデス 」

「 うふふふ  健闘を祈る!  さあ 午後の作業 開始しましょ 」

「「 はい〜〜〜 」」

ジョーも 学生さん達に混じって 土塊 との格闘を開始した。

 

     ・・・ フラン〜〜〜

     ごめん ・・・!

 

     ホント ごめん!

 

     きみは ぼくの一番大切なヒトだよ

     うん、 もう皆に宣言する !

 

 ふうん そりゃよかったねえ   頑張れよ〜〜 

 ちゃんと言うのよ?  しっかり捕まえとかなくちゃね

 

土塊の中から いろんな声が応援してくれている と

ジョーは確信していた。

 

   ― 避暑地の 穏やかな午後が始まった。

 

 

 

 

「 え。  王子サマに出会った?? 」

 

その日の夕方 ―  別荘のキッチンにて。

 

ジョーは ジャガイモの皮を剥いていたが 思わず声を上げてしまった。

人参を切っていたフランソワーズは すこしヘンな顔をした。

 

「 ― え?  そうよ。 幻の池 でね 」

「 そ そいつって!  か カエルかなんかの姿に 変えられて とか?

 ワルイ魔法使いに さ  」

「 へえ よく知ってるわね 」

「 だいたいそういうコトになってるから ・・・

 あ! で そいつと そのカエルと  き キスすると 

 魔法が解ける とか??? 」

「 あ〜 なんかそんなこと、言ってたわねえ  カエルさん ・・・ 」

「 そ それで ・・・? 」

「 それでって ・・・ 湖の畔でお話をしていただけよ 」

「 オハナシ ・・・ ?? 

 は!  も もしかして その王子サマと あ〜〜 なんだったっけか

 あ  < ぱ ど どう > を踊った・・・? 」

「 はああ??  わたし達 ランチを食べながら

 お話をしていたの。   それだけ よ 

「 ! それだけ・・・って。 そんなはず ない ・・・ 」

「 そんなはず?  どんなはずならあるって言いたいの? 」

「 あ い いや ・・・ そのう ・・・ 

 あ ほ ほら 美女と野獣 みたいに さ ・・・ しんじつの愛〜 」

「 はあああ??  妙に勘ぐるの、やめて頂きたいわ。 」

「 べ べつに勘ぐっている訳では ・・・ ないけど ・・・ 」

「 それにね  どこでだれと過ごそうが わたしの自由でしょ。

 < お姉さん > なんでしょ わたし。 」

「 ・・・ あう〜〜〜 ( 聞こえてた ・・・  ああ 彼女は 003 ・・・ ) 」

「 すてきなカエルさんでした。  ええ 素敵な王子さまです。

 わたし達 とても素晴らしいひと時を過ごしたの 」

「 う ・・・ ( がび〜〜ん ) 」

「 最高の思い出になったわ。 避暑地のひと時の思い出(^^♪ 」

 

   ひとときの 恋  ― なぜかジョーの耳にはそう聞こえた!

 

「 え!!!  そ そのカエル どこだ?? どこにいる?

 け ・・・ けっとうだ! 

「 ?? カエルとなにをするって?? 

「 だ  だから ― 決闘。

 だって きみは ・・・ あ〜〜 ぼくの 」

「 は? 」

「 ぼ  ぼくの! 大切なヒトだから! 

 か カエルには  渡さないよ〜〜〜〜 」

「 ・・・ まあ ・・・ 」

「 ちょっと ― その池 探してくる〜〜〜 すぐ戻る! 」

ジョーは ジャガイモと包丁を置くと

勝手口から 駆けだしていった。

「 あ らあ 〜〜〜 」

 

  クスクスクス ・・・

 

       ねえ カエルさん?

       こんな結末も あり、だわねえ

 

そうなのだ。

 ― 池から上がると ・・・ いつもの姿に戻っていた。

 

「 ムスメさん キモチよかったかな? 」

カエル王子は ぴょん、とフランソワーズの掌に跳んできた。

「 ええ と〜〜〜っても・・・ !

 この池の中って 神秘的でステキね 

 あ ・・・ カエルさん あなたも♪ 」

「 ふへへへ ・・・ まあ な

 またいつでもおいで。 ひと泳ぎすると すっきり だろ 」

「 ええ  最高〜〜 だったわ ・・・

 ありがとう・・・ カエルの王子様♪ 

フランソワーズは 手に乗っているカエルに そ・・・っと唇を ―

 

「 おわ?? お〜〜っと 美女のキス はご遠慮だなあ

 すごく残念だけど・・・ 」

「 え・・・ 」

「 だってさあ ニンゲンに戻っちまったら いろいろ・・・ 大変だもんな 」

「 ― あ 」 

「 俺さ このカエルの姿 か〜なり気に入ってるんだ。

 ムスメさん あんたも だろ? 」

「 え ええ そうね そうね  

 すごく楽にたか〜〜く跳べたし プリエはばっちりだし 」

「 ・・・ そこかい? ・・・

 ま いっか。  なあ たまにはガツン と一言 言ってやんな

 その 鈍感度100%のヤツに さ 

「 え・・ あははは そうね そうね  」

「 な? そうやって笑ってる顔、さいこ〜だよぉ〜〜 」

 

  じゃ な〜〜   ぽ〜〜〜〜ん ・・・・ !

 

緑の小カエルは見事な放物線を描き 池の中に消えた。

 

 

「 うふふふ  ああ 最高に素敵な避暑地の午後 だったわあ 」

 

人参を切りながら フランソワーズは楽し気に笑い続けていた。

 

 

 

  はっ はっ はっ  ・・・ あのう すいませ〜〜ん !

 

「 この辺に まぼろしの沼 って ありますか!? 

 

かなり真剣な顔で走ってきた青年の問いかけに 

地元の爺様たちはからから〜〜〜 と笑った。

 

「 まぼろしの沼あ?  そんなん あるかね? 」

「 はあん?  ああ アレかあ ・・・

 ガキ共は けろけろ沼 なんていってるぞ 」

「 そうそう 梅雨時にはカエル共がウルサイほど鳴いてるな 」

「 だな〜〜 普段は湿地で 雨がだ〜〜〜っと降ると 池になる 

 ま 池ってか水溜りの親分の 沼 ってとこかなあ 」

「 日照りの年には消えちまうしな〜〜

 ま たしかに < 幻の沼 > だけどよ。

 あの沼が残る年は まあまあの豊作っていうな 」

「 そ〜そ〜  沼でカエルが鳴く夏は 実りの秋がやってくる ってさ 

「 カエルに悪さしちゃなんねえぞ  兄ちゃん。

 池の水神様のバチが当たるからなあ 」

「 あっはっは・・・ んだんだ 」

漬け物、食うかい? と 爺様方はジョーに鉢を回してくれた。

 

      はあ ・・・いただきマス   ポリリ。 

 

キュウリの浅漬けは抜群に美味しかった。

 

 

   ―  避暑地の午後は  ゆっくりとおだやかに過ぎてゆく

 

 

*************************       Fin.       ************************

Last updated : 04.05.2022.              back        /       index

 

***********    ひと言   **********

避暑地の午後・・・・ってことで ・・・・

くだらないハナシですみません <m(__)m>

カエル王子 は きっとすごく素敵なんだと思いますにゃ☆