『 秋の日の ― (1) ― 』
サ −−−−−−− ・・・・・・ ! カサカサカサ 〜〜〜
ちょっぴり冷たい風が 落ち葉を巻き上げ吹き抜けてゆく。
「 あ もう〜〜〜〜 せっかく掃いたのにさあ 〜〜〜 」
庭箒を持ったまま ジョーは色とりどりの葉っぱを追いかける。
「 ちぇ〜〜 また集め直しかあ ・・・ 焼き芋できるくらい集めたのになあ 」
ぶつぶつ言いつつ 彼はまた箒を使う。
「 ふ〜〜〜〜 ・・・・ ここの庭は広くて楽しいけど ・・・
掃除や手入れは大変だよ〜〜 皆 好き勝手にぼんぼんいろんな樹を植えちゃったけど
あとは世話はどうしろっていうんだよぉ〜〜〜 」
ぼやきつつも 彼は落ち葉をこんもりと集め終わった。
「 よっし。 あ〜また飛んでっちゃったらヤだなあ〜
え〜〜と? そうだ そうだ この新聞紙をかけて
石を重しにしておけばいっか ・・・ 」
脇に置いてあった朝刊を 捏ねた落ち葉の上にかけた。
「 いっかな〜〜 イモ! イモ、もってこなくちゃ!
・・・野菜室にあったかなあ・・・? 張大人〜〜〜〜〜 」
箒を放りだし、彼は一目散に勝手口に駆けていった。
「 ― いも やて? 」
湯気のあがる鍋の向こうで 現在この屋敷の料理長は眉をぴくり、と上げた。
「 そ! できればサツマイモがいいだけど ・・・ なかったらジャガイモでもいいや。
あ サトイモとか そうだな〜〜 コーンとかでもいいかも。 」
「 朝食にお芋さん、食べたいんか?
」
「 朝ご飯・・・ってか そのう〜〜 今 庭掃除してて〜〜 」
「 庭掃除 は あんさんの受け持ちやさかい当然やろ 」
「 そうなんだけど 〜〜〜 落ち葉がい〜〜っぱい集まったからさあ〜
焚火して焼き芋でも って思って 」
「 たきび?? あんさん、 そんなコトしたらお上に咎められまっせ?
知らへんのんか? ここいらは外で火ぃ 焚くのんは原則禁止やで 」
「 ・・・ うん でも 焚火くらいなら 」
「 あかん。 ワテら 目立ったらあかん。 あんさん 忘れたんか?
ワテら さいぼ〜ぐ なんやで? 」
「 ・・・ それは ・・・ わかってるけど ・・・ 」
「 ほんならとっとと 庭掃除、やりなはれ。 じきに朝ご飯やで 」
「 あの ・・・ 」
「 はよしなはれ。 」
「 ― わかったよ ・・・ 」
ジョーは すごすご・・・ 勝手口から退散した。
「 ちぇ〜〜 キビシイなああ〜〜 ま いいや。
朝ご飯の後で ジェットと一緒に焚火しよ☆
下の八百屋でイモ、買ってもいいし〜 」
彼は箒を片すべく 庭に回った ― のだが。
「 おい ジョー。 」
捏ねた落ち葉の前には 銀髪のドイツ人が腕組みをし立って居た。
手には 朝刊を持っている。
「 あ アルベルト〜〜 おはよう 」
「 ああ お早う。 おい ゴミの上に朝刊を置いたのはお前か ジョー。 」
「 え? ・・ ああ。 でも ゴミじゃないよ? 庭の落ち葉さ。
掃いて集めたんだ。 それを 」
「 それじゃ ゴミ じゃないか。 お前な〜〜〜 今朝の新聞を、
まだ読んでない新聞を ゴミの上に置いたりするな 」
「 ・・・ 置いたんじゃなくて その〜〜 風で落ち葉が飛ばないよ〜に
新聞を広げて ・・・・ 」
「 そんなことに今朝の朝刊を使うな ! 古新聞でたくさんだ!
いいか? まだ読まれていない朝刊は重要なんだぞ。 」
「 ・・・ そ う ・・・ ? 」
「 そうなのだ! 朝の食卓には 熱い珈琲とまだ広げていない朝刊が必須だ。 」
「 あ ・・・ そ ・・・ 」
「 わかったか! じゃ はやくそのゴミを捨て手を洗ってこい!
朝食の時間だ 」
「 わかったよ ( お〜〜 コワ ・・・ ) 」
ジョーは ため息を呑みこみ、落ち葉をかき集め庭用塵箱に押しこんだ。
ま いっか。 ここに突っ込んどいてあとで・・・
「 ジョーは〜〜〜ん 朝ご飯でっせ〜〜 」
まるまっちい料理長が テラスから呼んでいる。
「 あ ・・は〜〜い ・・・ なんか 施設にいる頃みたい ・・・ 」
「 なんや? なに言うたネ? 」
「 え ・・・ あ いえ なんでも ・・・ 手 洗ってきまあす 」
ジョーは声を張り上げ バス・ルームに消えた。
現在 この屋敷に滞在する仲間たち、全員で和やかに朝食を取った。
シェフは 中華を専門とするが この万能料理番は あらゆる種類のメニュウに
対応することができる。
― その日は 典型的な < 現代日本の朝ご飯 > ・・・ つまり。
ご飯に味噌汁、干物と卵焼きと漬物 ・・・ではなく。
トーストにハムエッグ、レタスときゅうりとトマトのサラダ、 チーズとジャム、
バターがテーブルに並び 各自好みの飲み物をとる、という < 平成の朝ご飯 >
スタイルだった。
談笑しつつ穏やかに朝食タイムは進み ― 語るのはもっぱらイギリス紳士と
常に気配りをするピュンマ、 そして 案外話好きなギルモア博士 ・・
そして 時折 地元民の茶髪少年がおどおどと口を挟んでいた。
会話に加わらない者たちも 特に不機嫌、というわけではない。
彼らは 仲間のおしゃべりに耳を傾けつつ 美味しい朝食に舌鼓を打っていた。
「 今朝のハムエッグ うめ〜〜〜〜 お代わり! 」
「 ほっほ〜〜 地元の新鮮卵 つこうとるんやで 」
「 まあ そうなの? 今度は是非 オムレツ、作って? 」
「 ええよ〜〜 まかせとき。 」
「 嬉しい! あ・・・ ねえ チーズはこれしかないの? 」
「 え ・・・ チーズって他にもあるの??? 」
「 あら ジョー 知らないの? 」
「 ウン。 ぼく チーズってこれしかないって思ってたよ?
ピザとかには とろけるチーズ が使ってあるのは知ってたけど 」
地元少年は 固形のチーズをおいしそうに齧っている。
「 まあ〜〜 チーズはねえ ものすごくたくさん種類があるの。
味や香り、固さとか熟成度とか皆違ってて・・・ もう数えられないわ 」
「 ・・・ この国にはチーズ屋はないな 」
「 あら アルベルト、調べたの? 」
「 少なくともここいら近辺には見当たらない。 ヨコハマとかギンザには
あるかもしれんが 」
「 あ〜〜 それなら元町とか六本木とかにはあるかも ・・・ 」
「 ほう? 今度案内してくれないか 」
「 いいよ〜〜 あ・・・ ふ フランも ・・・ ゆく? 」
「 あら いいの? じゃあ 三人で行きましょ♪ 」
「 うわ ♪ 」
地元少年は 赤くなった顔を前髪の下に隠した。
「 オレ様なら ひとっ飛びだぜ 」
「 おい。 真昼間に空なんか飛ぶな。 」
「 ・・・ っかってるって。 言ってみただけさ 」
カシャン。 フォークを置くと、赤毛ののっぽは席を立っていった。
「 ! なんだ 行儀の悪いヤツだな。 」
「 ほっほ ま ええがな〜〜 アレがあの子ぉの流儀やで。
ギルモアせんせ、召し上がりはりましたか? 」
「 うむ うむ 美味しく頂いたぞ 」
博士は 満足そうに食後の日本茶を啜っている。
「 ほな みなはんで < ごちそうさまでした > 」
ごちそうさまでした ― と皆で唱和し 朝食は終わった。
いただきます、 ごちそうさま。 いってきます ただいま おかえり
この家ではそんな現地語のやりとりが < 公式 > となり・・・
それぞれが多分に面白がって使っている。
食後は 各々好きに過ごす。
特にメンテナンスを必要とする者もなく 今のところは平穏である。
「 う〜〜〜ん ・・・ 庭掃除はしたし〜〜〜 洗濯モノは乾したし〜〜
あ 花壇の水やりでもしてこよっかな 」
ジョーは 庭用のサンダルをつっかけるとテラスに出た。
木製のテラスの外れに 逞しい背が見えた。
シュ シュ シュ ・・・
ジェロニモ Jr. の大きな手から細かい木屑が飛び散ってゆく。
「 なに作ってるの ? 」
「 ・・・ 」
褐色の巨人は 少し目をうごかしたが、なにも応えない。
「 あ ごめ ・・・ 邪魔しちゃった・・・ 」
ジョーは慌てて退散しようとした。
「 邪魔じゃない。 これはこの家の護りだ。 」
ぼそり とした声がジョーを引き留めた。
「 え ・・・ まもり? あ〜〜 御守りみたいなものかな 」
「 そうだ 」
「 ふうん ・・・ この木はどこからもってきたの?
あ 下の海岸に流れついてたのかなあ 」
「 いや。 裏山の朽ちた大木だ。 」
「 裏山の? へえ〜〜〜 あそこの雑木林のなかにそんな大木があるんだ? 」
「 あった、ということだ。 大地に祈ってから、もらってきた。 」
「 へえ〜〜〜 それを御守りにするんだ 」
「 そうだ。 」
それだけ言うと ジェロニモ Jr. は 再び自身の手元に集中した。
シュ シュ シュ ・・・
かつて山を護っていた樹が 褐色の手によって姿を変え、この家を護るというのだ。
「 ・・・ ありがと ・・・ 出来たら見せてね〜〜 」
「 ・・・・ 」
今度こそ邪魔しないように、と ジョーはそそくさ〜〜と立ち去った。
「 ひえ〜〜〜 相変わらずってか ・・・ なんかめっちゃパワーを感じるよなあ ・・・
あのお護りがあれば スカールも退散だよ〜〜 うん。 」
南側のテラスには 籐椅子とテーブルが置いてある。
ライムを浮かべたグラスを前に 銀髪のドイツ人が本を広げて居た。
「 あ・・・ アルベルト ・・・ え〜〜 それ お酒? 」
「 ― なんだ? ! 炭酸水だ! 」
薄い色の瞳が ジョーを見つめる。
「 ! ご ごめん なんでもないんだ〜 邪魔してごめん ・・・ 」
「 別にいいぞ 」
「 そ そう? ・・・ 本 好きなんだね 」
「 お前はキライか? 」
「 嫌いじゃないけど ・・・ 何 読んでいいかわからないから 」
「 は?? 好きなモノを読めばいいだろうが
」
「 う〜〜ん なにが好きなのかな〜 ぼくは 」
「 おまえ ・・・ それもわからんのか??? はあ ・・・ 」
「 えへ ・・・ ごめん 」
「 別に謝る必要はないが。 ・・・ まあ それなら漫画でも読め。
日本の漫画は十分読書に匹敵すると思うぞ。 」
「 あ〜〜〜 うん ・・・ 漫画かあ ・・・ 」
「 好きな漫画もないのか!? 」
「 う〜〜ん ・・・ 特に ・・・ 」
「 は! それじゃ・・・ 興味の持てるモノをまず探すんだな 」
「 うん そうするね〜〜 ありがと、 アルベルト 」
「 ・・・・・ 」
ドイツ人は肩を竦めると グラスを持ち上げ飲み乾した。
茶髪少年は とっとと退散し庭にでることにした。
「 ふう〜〜〜 天気いいしなあ〜〜〜 外は気持ちいいもん。
興味のあるもの ・・・って ・・・ そうだなあ・・・・? なんだろう?
・・・ わお ! 」
テラスから庭に降りようとした時 思わぬ場所に仲間が座っていた。
「 わわ ・・ ごめ ・・・ ピュンマ? 」
「 あ〜 ジョー ? 」
庭に足を伸ばし一番下のステップによりかかり ピュンマが彼もやはり本のページを
めくっていたのだ。
「 ごめん! 邪魔しちゃったね 」
「 あ・・・ こんなトコに座っている僕が悪いんだから 気にするなよ 」
「 あ ありがと ・・・ ここ 好きなの? 」
「 うん? 別に・・・ でもさ〜 なんか土に触れていると気持ちいいんだ。
この国は気候が温暖だねえ・・・ 長時間お日様に直接当たっていても平気だもの。」
「 今は秋だし ・・・ あ〜〜〜 君の国は暑いのかあ 」
「 ウン。 長時間直射日光にさらされる、なんてことは子供でもやらないよ。 」
「 ふうん ・・・ あ ピュンマもやっぱり読書? 」
「 これ? うん 博士の書斎から借りてきたんだ。
あのヒトの書斎は凄いよ〜〜 雑多なジャンルの本があってさ。
ジョー 君もなにか借りてくればいいよ 」
「 あ うん ・・・ 」
「 そうだ! 今度大きな本屋に行きたいんだけど付き合ってくれる?
できればヨコハマまで出たいんだ 」
「 あ いいよ〜〜 もちろん。 」
「 ありがとう。 PC関係の本 最新版が読みたいんだ。 」
「 最新版? スマホ検索すれば? 」
「 う〜〜ん ・・・ じっくり読みたいからね。 読書はやはり紙媒体の方が
僕にはいいな 」
「 ふうん ・・ あ いつでも言ってね〜〜 」
「 サンキュ。 」
ピュンマは に・・・っと笑うとまた本に没頭した。
「 ・・・ オジャマさま ・・・ 」
彼の脇をすり抜け ジョーはさっさと庭に出た。
「 ふう〜〜〜〜 ・・・・ あ〜 お日様 気持ちいいなあ〜〜〜 」
う〜〜〜ん ・・・! と庭で伸びをする。
朝食前に掃除したけれど またまた色とりどりの葉が落ちている。
「 あは ・・・ キレイだなあ ・・・
少しは < 庭 > らしくなってきたかもなあ ・・・
ぼくとしては登れるくらいな樹がほしいんだけど 〜〜 ま 裏山に行けば
いっか・・・ あ そうだよ〜〜 朝ごはんの後に焚火しよう〜〜って
思ってたんだっけ ・・・・ 」
彼は先ほど落ち葉を押し込んだゴミ箱のところにやってきた。
「 う〜〜ん ・・・ いいけど ここで火、点けたら ・・・
皆に怒られそうだなあ ・・・ 焼き芋は今回はあきらめるかあ〜〜 」
海に近い台地に建つこの屋敷 ― 建物はセキュリティ抜群、ちょっとした要塞並、
なのだが 外見は少々年季の入った洋館、に見える。
庭は こちらは本当に急ごしらえ、垣根代わりに植えた樹はなんとか枯れずに立って居る
といった感じ。
屋敷側には 一応花壇がず〜〜っと設えてあるが急遽 鉢植えをそのまま下ろした菊は
あまり元気がない。
「 ふうん ・・・ フランソワーズが花壇に球根を植える とか 花の種をまく とか
言ってたけど ・・・ ちゅ〜りっぷ とか あさがお なのかな 」
ジョーが知っている < 球根 > とは チューリップ だけであり
かつて種を蒔いたことがあるのは小学生時代の アサガオ のみ なのだ。
「 裏庭には 大人の野菜畑とジェロニモ Jr.の温室があるけど ・・・
うん ! そうだよ、 やっぱり庭には登れる樹が必要さ。
決めた! 商店街の植木屋にいって柿の樹、買ってこよう〜〜 」
ぱたぱたぱた ・・・ 彼は庭サンダルを鳴らし庭から戻ってきた。
カラカラカラ ― サッシを開けてリビングに入る。
カタカタカタ 〜〜〜〜〜
「 ? なんの音? あ グレート ・・・? 」
リビングのテーブルでは グレートがなにやらすごい勢いでキーボードを打っている。
「 あ〜〜 キーボードを打つ音かあ 速っ ・・・!
指に加速装置、ついているみたい ・・・ 」
彼は足音をころし そ〜〜っとテーブルの側に寄った。
「 ・・・ あ 声かけていい? ね〜 なに してるの? 」
「 〜〜〜〜〜 はん? ああ ボーイ。 何かね 」
「 だからその〜 なにしてるの〜〜 」
「 ? 見ればわかるだろうが。 」
「 あ うん あの ・・・ なにを書いてるんですか 」
「 ん〜〜 不朽の名作 だ。 」
「 『 ふきゅうのめいさく 』 ってタイトル? 」
「 おい? 若いの? オジサンをおちょくっているのかい? 」
「 え そ そんな ・・・ あのぅ〜〜〜 だからなにを 」
「 ふふん ちょいと閃いたのでな スクリプトを書いているのだ
」
「 すくりぷと??? 」
「 〜〜〜 脚本だっ 」
「 あ そか! グレートは俳優さんだもんね〜〜 」
「 ふふん ・・・ アーティストと言ってくれたまえ。
吾輩は 役者も演出も脚本も手掛けるのだ
」
「 ふうん ・・・ ねえ どんな話 ? 」
「 一口には言えん。 今回は社会派の作品でな
現代社会に巣食う、人々の心の闇を だな 〜〜〜 」
「 あ〜〜 わかったわかった〜〜 がんばってね
」
「 おい 続きを聞かんのか? 」
「 あは ぼく アクション物とか アニメのが得意。 オジャマさま〜〜 」
茶髪少年は そそくさ〜〜〜と去ってゆく。
「 ふん ! 現代青少年は尻が軽くていかんな。
そうだ! ああいう現代っ子を出演させるのもスパイスになるな 」
カタカタカタ〜〜〜 キーボードの音はますます勢いを増してゆく。
「 は ・・・ あぶね〜〜〜 堅苦しいハナシは苦手だよぉ〜〜〜
あれ? フラン ・・・どこにいるだろ? 」
今度は裏庭を覗いてみた。
裏山にも続く裏庭は かなり広いのだが 温室があったり野菜畑にネギが乱立していたり
洗濯モノ干し場があったり・・・ ごたごたしている。
「 う〜〜ん? いないなあ ・・・ あれ? 」
赤毛ののっぽが 温室の柵に腰かけ ぼ〜〜〜っと空を眺めている。
「 ・・・ 飛びて〜な〜〜〜 ・・・ 」
彼は所在なさそうに スマホ をいじくっているが 画面に集中はしていない。
視線は ぼんやり青い空に向いている方が多い。
「 ね〜〜 ジェットぉ 」
「 なんだ〜 」
かったるそ〜な声がかえってきた。
「 あ あの ・・・ ずっとここにいるの? 」
「 いちゃ 悪いか 」
「 あ ううん ううん そうじゃなくて そのぅ〜〜〜 フラン 知ってる? 」
「 あ〜〜? フラン? 知るわけね〜だろ〜〜 」
「 そ そうだねよ ありがと 」
「 な〜〜んだよ〜〜 フランになんの用だってんだよ 」
「 あ べつに その ・・・ 」
「 じゃ なんでだよ〜
」
「 だから その ・・・ あ! そう 洗濯! 洗濯モノのことで 」
「 は! オレは知らないぜ 」
ひょいと肩を竦めると 赤毛はぷい、と横を向いてしまった。
「 ごめんね ・・・ 」
ジョーは 首を縮め裏庭から離れた。
「 ふう ・・・ 危ない 危ない ・・・ でも フラン どこだろ?
買い物にでも行ったのかなあ ・・・ いや 門を出たヒト、いないよ?
じゃ やっぱウチの中かも 」
勝手口を開ければ キッチンには誰も居ず、既にきちんと片付いていた。
「 わ〜〜 どこもかしこもぴっかぴかだあ〜〜 」
水でも飲もう、とシンクの前に立てば
「 うわ! 顔が映る〜〜〜 ・・・・ん〜〜 んま〜〜〜 」
グラスを洗い キッチンを通過、廊下に出た。
「 キッチンにもいないし・・・ あ 自分の部屋かなあ。 あれ ? 」
〜〜〜〜 ♪ ♪♪ ♪ 〜〜
微かに音楽が聞こえる。
「 ? どこから ・・・ え 地下 ・・・? 」
彼は廊下の隅にある階段から下を覗いた。
「 下はロフトだけ だよなあ ・・・ 誰かいるのかな 」
地下への階段を ジョーは静かに降りていった。
洋館の最深部はドルフィン号の格納庫に通じているが それは秘密の通路を
使わなければ行けない。
階段の下のロフトは 普通の < 物置 > で、 不要のモノやら
余分な資材などがごたごた突っ込んであるはずだ。
「 あれ ・・・ 明かり ・・? 音楽も ・・・」
彼は奥のロフトのドアが開いているのを発見した。
「 ・・・ ? 誰かいるのかな ・・・ 泥棒? まさかな ・・・
でも ・・・ ウチのヒトは皆 上にいるはずだし ・・・ 」
コツン。 彼のスリッパが床に引っ掛かってしまった。
「 ! だれ ?? 」
ロフトから声が飛んできた。
バタン ! ドアが大きく開いた。
「 わ ・・ ! 」
「 ! きゃ ・・・! 」
その中には ― 彼女が いた。 ・・・ 水着みたいな恰好で。
ジョーは まさに < 目が点 > になってしまった。
「 あ ごめん〜〜〜 」
「 ジョー ??? 」
「 あ うん ごめん! 覗いたわけじゃ いや 覗いたんだけど・・・
そのう〜〜 音楽が聞こえたんで 誰かいるのかって ごめん ! 」
「 ・・・ 勝手に使ってい方が悪いのよ アナタが謝る必要 ないわ。 」
フランソワーズは 静かにカーディガンを羽織った。
「 ここ 使ってたんだろ? ジャマしてごめん ・・・ あの ? 」
「 なにしてたのかって聞きたいんでしょ? 」
「 べつに ・・・ あ うん ・・・ 」
「 いいのよ、聞いて。 悪いコトしてたんじゃないもの。
あのね レッスン、してたの。 」
「 れっすん? ・・・練習って なんの?? 」
「 わたし。 また踊りたいの。 もう一度踊りたいのよ。 」
「 ・・・ おどる ・・・ そうなんだ ? 」
「 ええ。 」
彼女は 金色の髪をきゅっと結いあげ 細い首を胸元まで露わにし、す・・・っと
立っている。
! ・・・ きれいだなあ 〜〜〜
ジョーは 頬を少し染めた彼女をつくづくと見つめるのだった。
Last updated : 11,14,2017.
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*********** 途中ですが
なんてコトない 彼らの秋の日のスケッチ?
原作でも平ゼロでもOK ・・・ まあ 旧ゼロや新ゼロじゃ
ないかな〜〜 RE や コゼロでもないよね(^.^)