『  幻影の聖夜  ― (2) ―  』

 

 

 

 

 

 

§ 旧ゼロ93   『 クリスマスの冒険  』

 

 

 

    ****  旧ゼロですので007はあのチビっこです。 ****

 

 

 

 その街は 港街 といよりも国際都市といった趣の強い景観をみせている。

人々は闊達に広い舗道を行き交い 肌の色や眼の色の違いに頓着する様子はまるでない。

皆それぞれが 自分の町 を歩いている風だった。

 

    まあ ・・・ なんとなく ・・・マルセイユみたい・・・

    そうね、港街なら 似ているのかもしれないわ。

 

003は ゆっくりと辺りを見回した。

メトロの駅から地上に出ると  ―  そこには普通の都会が広がっていた。

「 え〜〜〜 ?? ここが ミナト・ヨコハマ? ほんとうかなあ 」

先にどんどん階段を駆け登っていったセブンが甲高い声を上げた。

「 ねえねえ 003? ほんとうにここでいいのかい。 」

「 え 〜と ・・?  ああ そうよ、ほら。  あちらがモトマチですって。 」

「 どれ?  ああ  ふ〜ん ・・・じゃあ港は、海はどこなのさ? 」

セブンは案内標識をみてもまだ疑り深い面持ちで きょろきょろしている。

彼女も一緒に周囲の様子を注意深く眺めた。

 

    本当に ・・・ 普通の街並みねえ ・・・

    あら あっちはずっとお店が続いているのね 賑やかだわ

 

「  ― あ こっちよ、セブン。 港はこっちの方角だわ。 」

「 え〜 ? わあ〜さすがに003だね! なんでも見えるんだもんな。 」

「 あら <能力 ( ちから ) > は使っていません?

 ねえ ・・・ ほら眼をつぶってみて?  風が吹いてくるでしょう? 海に香りのする風・・ 」

「 ・・・ あ〜〜   うん ・・・ ホントだ! 

 わあ〜〜 こっちが海だね、 行こうよ、003 ! 」

歓声をあげると セブンは彼女を置いて駆け出した。

「 あ  もう〜〜 せっかちなんだから・・・ 待って、待ってちょうだい 」

フランソワーズも 声をあげると、早足でセブンを追った。

  じきに 眼の前には緑の多い公園がみえ、その合間から港が ― 船と海が見えてきた。

 

 

 

「 ― え ・・・ お仕事なの? 」

ツリーのモールを直していた手がとまった。

 ― それは 

待降節のろうそくも最後の一本を灯した週のこと。 研究所のリビングはクリスマス・モード満載だ。

ツリーにリース、そしてクルミやオレンジ、心をこめたプレゼントに御馳走。

 ・・・ 003は心を込めて聖なる日を迎える準備をしていた。

「 003〜〜  ねえ これはどこに飾るの〜 」

セブンがクリスマス・リースを入れた籠を抱えてきた。

「 ええと・・・ お玄関のドアにはとっくに飾ってあるし・・・ 

 そうだわ、ほら、おうちの中のドアにも 飾ってみない? とってもキレイになるわ。」

「 あ 〜 そうだね。  へへへ・・・003、ご機嫌だね〜 」

「 え・・・ だってもうすぐクリスマスなんですもの。

 セブンだって嬉しいでしょう? 」

「 あは、オイラはァ サンタさんとケーキが楽しみ♪

 003はァ〜〜 009のアニキとのおデートだろ〜〜〜 イブの夜にさ〜 」

「 ま・・・ セブンったらオマセさんね!  デートなんかじゃ ・・・ ないわ。

 009が その・・・たまには外で食事しようかって誘ってくれたのよ。 」

「 だ〜から♪ それがおデートだってば〜   

 よかったね〜〜 003。 楽しんでおいでよ。 」

「 うふ・・・ありがと、セブン。  ね、 お土産はなにがいい? ヨコハマまで行くの。 」

「 ふう〜ん?   あ それじゃ シウマイ弁当! あれがいいや。 」

「 まあ〜 お弁当?  わかったわ、飛び切り美味しそうなの、選んでくるわね。 」

「 うん、 頼むね♪  うわ〜い は〜やく来い来い くりすます〜 ♪ 」

「 あらあら それはお正月、でしょう? うふふふ・・・ セブンもご機嫌じゃない? 」

二人して にこにこ、クリスマスを迎える準備に精を出したのだった。

  ― そのおかげで  クリスマス・イブを明日に控えギルモア研究所は用意万端整っていた。

 

 

  しかし ―  クリスマス・イブの前日、009は、島村ジョーは研究所に来るなり言ったのだ。

明日の外出は キャンセルしてほしい、と。

 

「 うん・・・ すまん、どうしても断れなくて。 

 レースの大切なスポンサー企業のパーティーに招待されてね。 」

「 ・・・ そう ・・・ 」

「 ごめん! せっかくクリスマス・ディナーの約束をしたのに・・・ ごめん、003。 」

「 ・・・ い  いいのよ  お仕事なら仕方ないですもの。 」

フランソワーズはずっとツリーを見つめて 動かない。

「 009のアニキ! そりゃ ないよ〜〜 003はさ すご〜く楽しみにしていたんだぜ? 」

「 ・・・セブン  いや 本当に申し訳ないと思うんだけど・・・ 」

「 申し訳ない、 じゃないよ! 003がかわいそうじゃないかァ〜〜 」

「 ・・・ セブン ・・・ 」

007は 半泣きになって009に喰ってかかっている。

さすがの009も子供相手に 往生してしまった。

「 いいのよ、セブン。  ジョー、ごめんなさいね。 

 お仕事、しっかりしていらして?  ヨコハマにはセブンと行ってきます。 」

フランソワーズはやわらかくセブンの肩に手をかけ、そしてジョーに微笑んだ。

「 ・・・ 003 ・・・ すまないな。 」

「 003〜〜〜 それでいいのかよ〜〜  だってあんなに 」

「 いいの。 セブン、ジョーはお仕事なのよ。 」

「 ・・・ う  うん ・・・ 」

「 ジョー。 心配しないで。 わたしとセブン、ヨコハマの街を楽しんできますわ。 」

「 ありがとう、 003。  ・・・・と? なんだ セブン 」

ちょいちょい、とセブンが009の脇を突いている。

「 アニキ!  003 じゃないだろ〜〜 な ま え! 

 ちゃんと名前 呼んであげなくちゃ !! 」

「 あ  ああ そうだな。  ふ フランソワーズ ・・・ありがとう! 」

ジョーは さ・・・っと彼女の頬にキスをした。

「 ・・・・ ま  ・・・ ジョーったら ・・・ 」

「 この埋め合わせはきっとするから。  それじゃ セブン、彼女を宜しく頼んだぞ。 」

「 う うん! 任せとけって。 009のアニキ。 」

「 おう、頼もしいな。  じゃ ・・・ すまん、 忙しくてな。 」

ちょ・・っと手を揚げ挨拶すると 009はそそくさと帰ってしまった。

「 ちぇ ・・・  003? それじゃ明日はオイラがえすこ〜と するよ! 」

「 まあ ・・・ありがとう。 どうぞ よろしく セブン、じゃなくて ミスタ・ブリテン? 」

気取って胸を張ったセブンに フランソワーズは軽く会釈をしてみせた。

 

     ・・・ ジョー ・・・・ 仕方ないわ ・・・ね ・・・

     とっても楽しみにしていたんだけど・・・

 

     メリー・クリスマス  くらい言ってほしかったわ ・・・

 

フランソワーズはそっと溜息を飲み込み、リビングを整頓し始めた。

 

 

 

ミナト・ヨコハマ は華やいだ空気で満ちていた。

名高い帆船がイベント用に帆を張っていたり、 電飾華やかな船もたくさん見られた。

人々はしゃべったり笑ったり。  美味しそうな匂いも漂ってきてみんなウキウキしている。

歳の離れた姉弟か 若い叔母と甥・・・にも見える二人連れが広い通りを抜けてゆく。

     ―  トン ・・・!

雑踏の中でフランソワーズは自分から 転んだ。

飛び出して来た子供を避けた途端に すれ違うヒトにぶつかりそうになったのだ。

「 あ  大丈夫? 」

「 ・・・ ごめんなさい  」

「 いや こっちこそ・・・ あっぶねェガキだなあ〜 」

相手は彼女を助け起こしてくれた。

「 あ・・・ ほら これも君のかな。 このバッグ? 」

「 ありがとうございます すみません ・・・ 」

「 003! どうしたんだい。 こんなトコで転ぶなんてさあ 」

「 し・・・ セブン。  あのヒトとぶつかりそうになったから先に転んだだけよ。 」

「 そっか・・・ さすが003〜〜  ねえねえこっちでいいのかな。

 え〜と ・・? アニキが予約したレストランって ・・・ 」

「 あのね ・・・ こっちみたいよ? ほら この番地と地図 。 」

フランソワーズは先ほど 落としたバッグからメモ用紙を取り出した。

「 う〜ん ・・・ 」

二人は人混みに揉まれつつ、歩き回った。 その足取りは次第に港付近から離れてゆく。

「 あ こっちだ・・・ 003、ほらこの坂の上の方みたいだぜ。 」

「 そうね。  ― まあ  きれい ・・・ 」

「 え?  わあ〜〜 ホントだ! 港にいる船がよくみえるね〜〜

 あ あのおっきな船 ・・・ すげ〜〜 」

「 あら  豪華客船ね。  世界一周とかするのでしょうね。 」

「 世界一周〜〜 すげ〜〜 」

セブンも感心し、二人は足を止め光溢れる大型客船を眺めた。

 

     あの船 ・・・ きっと遠くまでゆくのでしょうね ・・・

 

     あの船 ・・・ あれに乗って ・・・ 帰りたい・・・

     わたしの国へ わたしの生まれ育った街へ・・・!

   

     だ 誰か 助けて ・・・

     お兄さん お兄さん ・・・ 助けて ・・・

     ここは 知らない国 知らない街なの 知らない人ばかり 

 

     ・・・ お兄さん ・・・!  

 

ぱたり  ― ぱた  ぱた  ぱた ・・・・

彼女の足元に 大粒の水滴が落ちてゆく。

「 ・・・ 003? 

「 あ ・・・ ご ごめんなさい、セブン。 ちょっと ・・・眼にゴミが ね・・・

 はい、もう大丈夫よ。  さ お食事に行きましょう。 」

「 う うん ・・・ あのさ、こっちみたいなんだ。 

「 そう? ありがとう。  ああそうね、この通りにお店があるわ。 」

「 さ 行こうよ。  えっと?  どうぞ、まどもあぜる? 」

セブンは気取って フランソワーズに腕を差し出した。

「 ま。 ・・・ふふふ  ありがとう。 」

フランソワーズも彼に腕を預け、笑みを浮かべて歩いてゆく。

 

 

 

   ここ ・・・ かなあ ・・・・

 

   そう みたい ね ・・・ たぶん ・・・

 

二人が呟きあいつつ、眺めていたのは  ―  古風な洋館を改築したレストランだ。

外壁に這う蔦の葉が まだ半分以上散り残り彩りを添えている。

そこは細い曲がりくねった路地の奥、 目的の店はぽっかり空いた土地に建っていた。

門からはかなり引っ込んでいて戸口まで小路が続いている。

「 ふうん ・・・ 入ろうよ、003。 」

「 ええ ・・・ なんだか懐かしいような館ね ・・・ 」

アイアン・レースの門は静かに開き、訪問者を招きいれた。

館の窓には焔色の暖かい灯が点っている。

気がつけば 夕闇がしだい濃くなり付近をつつみ始めていた。

「 あら・・・ そうよね、もうこんな時間ですものね。 」

「 うん ・・・ でもなんか急に暗くなったよね? 」

「 そう? そんな風には感じなかったけれど・・・ あ やっぱりここだわ。 」

フランソワーズは ドアの上のプレートに店の名を読もうと戸口に近づいた。

「 え ・・・と ・・・・ あ? 」

 

    「 いらっしゃいませ。  ようこそ ・・・ マドモアゼル  」

 

彼女がドアの間近に立った時、 マホガニー製のドアが静かに引かれ ―

黒いスーツに蝶ネクタイの男性が慇懃にアタマをさげた。

「 ご予約頂きました方から諸事承っております。 

 さ・・・ 奥の席へ。  ようこそお出掛けくださいました。 」

「 ・・・・・・ 」

二人は 半ば紗の帳がさがる席に案内された。

 

 

「 ・・・ ふう ・・・ このワイン、ほんとうに美味しいわ ・・・ チキンはどう? 」

「 うん、なかなか美味しいよ〜〜  あれ 003 食べてないのかい。 」

「 うふふ・・・なんだか胸が一杯で ・・・ ワインとオードブルで十分。 」

「 だめだよ〜 せっかく009のアニキが予約してくれたんだもん。 食べなくちゃ。 」

「 え ええ そうね ・・・ 

イブの夜のメニュウはどの料理も素晴しく セブンは夢中になって食べた。

フランソワーズもワインのグラスを傾け 微笑んでいたのだが・・・

「 ここの内装 ・・・ 本当に素敵。  ねえ、このランプ ホンモノのヴェネチア・グラスよ? 」

「 ふ〜ん ・・・ あ〜〜このサラダもおいしい! 」

「 食器もいいわね。 セーブルだわ・・・いいわねえ。  趣味のいいお店だわ・・・

 あそこの絵は  ドガね。  ふふふ・・・ジョーにしては上出来の選択ね。 」

「 ふ〜ん  あ これはエビだね〜 うま〜〜〜♪ 」

セブンはもっぱら食べることに集中し フランソワーズは店の雰囲気に心を奪われていた。

「 失礼します ・・・ デザートです。 アルコール分が多いのでこちらの方には別のものを・・・ 」

「 あら わざわざありがとうございます。  」

ウェイターは ブランディ・グラスに盛り付けてあるデザートをテーブルに置いた。

「 セブン、 別のデザートが来ます、って。 」

「 ふ〜ん ・・・ あ あの〜〜 003  あの  さ・・・・ 」

「 まあ なあに?  え・・・? 」

セブンは身を乗り出しテーブル越しにフランソワーズにぼしょぼしょ耳打ちをした。

「 ・・・ あの さぁ ・・・ おトイレ・・・ 

「 ・・・ まあ〜  ・・・でも仕方ないわね、そっと行ってらっしゃい。 」

「 う うん ・・・ ゴメン ・・・ 」

セブンは そそ・・・っと席を立った。

 

 

「 お客さま 今晩の献立は如何でしたか。 」

ウェイターが密やかに近づいてきた。

「 あら ・・・・ ええ とても素晴しかったわ。 お料理だけじゃなくて・・・

 内装やあの絵や・・・食器も ・・・ 懐かしいです。 」

「 失礼ですがお客さまは ・・・ この国の方では 」

「 ええ ・・・ 仏蘭西から ・・・ 」

「 やはりそうですか   では こちらを。 」

「 ? 」

ウェイターは銀盆の上にワインを一本 寝かせていた。

「 このワインをどうぞ。  お国の逸品です。 懐かしいお味ですよ・・・ 」

   ・・・ トポトポと深紅色の液体が 透明なグラスに満ちてゆく。

どうぞ、と促がされ フランソワーズはおずおずと口をつけた。

 

    ・・・ ああ ・・・・ この味 ・・・・

    懐かしい ・・・味 ・・・・  ああ  帰りたい ・・・

 

「 いかがです?  ヴィンテージ・イヤーものです。 」

「 あの ・・・ そんな高価なものはとても・・・ 」

「 いえ これはお客様へのプレゼントです。  ようこそ、わたくし共の店へ。

 ここは  ― 還りたい場所への 入り口です。 」

「 え ・・?   か かえりたい ばしょ ・・?   」

グラスから顔を上げた瞬間  くらり、と彼女の身体が揺れ そのままテーブルに伏してしまった。

 

 

 

豪勢なホテルの宴会場のすみっこで 島村ジョーは窓の外を見ている ― 風な様子だ。

実は ・・・ 彼は窓枠の下をじっと見つめているのだ。

「 それでさ! オイラは003の様子を見張っていたんだよ! 」

彼の足元では白ネズミが 髭を振りたて喋りまくっている。

009は 手をふってネズミのお喋りを遮った。 

「 わかった、わかったから・・・ もうネズミはやめろ。 」

「 え? あ〜 忘れてた〜〜    ・・・ えい! 」

 

  ポン ・・・  小さな炸裂音と共につるつるアタマの小僧が現れた。

 

「 やあ アニキ。  じゃ さっそくあのレストランへ行こう! 」

「 しかしな、本当なのかい。 その店が怪しいってのは。 」

「 うん! 003は素晴しいとか懐かしい・・・ってうっとりしているけど。

 オイラ 聞いたんだ!  トイレにたってそっとドアの隙間から聞こえたんだ!

 ナカマダ・・・・ ナカマニスルノダ ・・・トラエロ  ヒキコメ 」

「 わかった! セブン、 ぼくを連れていってくれ! 」

「 合点だい〜〜   アニキ〜〜 ほらよ! 

 

     バサッ −−−−− !     ガタン ・・・!

 

なにか大きな鳥の羽音がきこえ 次の瞬間、風が宴会場に吹き込んだ。

「 きゃ・・・  あら?  へんだねえ? 窓は閉まっているのに・・・ 

 あれまあ・・・散らけてまあ まあ ・・・ 」

宴会係のおばちゃんが 首をひねりつつ床に落ちたゲスト用の名札を拾い上げた。

「 う〜ん?  島村ジョー ・・・ おやぁ〜〜 あのイケメン・レーサー君か〜

 あとで渡してやろう。 握手しちゃうぞ〜〜 ふふふ〜ん ♪ 」

しかしオバチャンの野望は 叶えられなかった・・・

 

 

   シュ ・・・・!  バサ  −−−

 

白い旋風が赤いマフラーを曳いて大鷲から地上に飛び降りた。 

「 ここだな!?  セブン、行くぞ 」

「 りょ〜かい! ・・・ アニキ! ヘンだよ、客が一人もいない? 」

「 ふん・・・そりゃ好都合だ。  003はどうしている? 」

「 う〜ん ・・・ ここにはいない・・・  あ! 」

「 どうした?! 」

「 み 見つけた〜〜 でもなんかヘンだよ・・・ふらふらしてる・・・

 ああ! 黒服のオトコたちが 003を連れ出そうとしてるッ  」

「 ―  突入するぞ! 」

 

     ガターーン ・・・!!! 

 

「 やめろッ 彼女に手を出すなッ!! 」

009は 赤いマフラーを翻し薄暗い店内に飛び込んだ。

 

 

 

  ズ ズズズ ・・・・ ズズズズ ・・・・・・ ズズズ ・・・・・ ・・・・ ・・・ ・・ ・ ・  ・   ・

 

サイボーグたちの目の前で 古い洋館は崩れつつ地面にめり込んでゆく。

数分の活劇の後、 黒服のオトコ達は建物と一緒に地中に飲み込まれて行った。

009は しっかりと003を腕に抱き、油断なくスーパーガンを構える。

「 コレって なんなんだよ〜〜 アニキ〜〜 」

「 セブン、気をつけろ!   なんという仕掛けなんだ・・・!

 形勢不利とみれば味方も一緒に巻き込んで 消滅してしまった。 」

「 へえ〜〜 性質の悪い自爆だよね〜 」

「 まったくだ。   ・・・・ん?  003?  気がついたかい・・・ 」

「 ・・・ ジョー・・・?  わたし・・・どうしたのかしら・・・ 」

「 003〜〜  あの店でさ、 倒れてたんだ。 ヘンなワイン飲んじゃってさ〜 」

「 セブン ・・・ そう・・ あのワイン ・・・ 」

「 大丈夫かい? まだ動かないほうがいいぞ。 

 それにしても・・・ 君たち、どうしてこんな店に入ったのかい。 」

「 え〜〜 だって009のアニキが予約した店だろ?  ほら・・・ 」

セブンはくしゃくしゃになったメモをポケットから引っ張りだした。

「 ?? ・・・ おい、ちがうぞ。 これは僕の書いたものじゃない。 」

「 ええ? なんだって??  」

「 あ ・・・ そういえば、人混みで私、バッグを落としたわ。 」

「 その時に これを渡されたのかも な。 」

「 え〜 じゃあみんなグルだったってのかい アニキ? 」

「 うむ・・・ 恐らく な。 ずっと僕たちをつけ狙っていたのかもしれん。 」

「 ・・・ まあ ・・・ 」

あの古風な洋館が建っていた場所は いつの間にかただの空き地になっていた。

「 ・・・あら? あそこになにか ・・・ 光ってる・・・ 」

フランソワーズは そっと脚を踏み入れる。

「 おい やめろよ。 危ないぞ! 」

「 大丈夫よ ・・・ ここにはもう なにもないわ。   ・・・ 」

彼女は瓦礫の側に屈みこみ、光るモノに手を伸ばした。

  ― それは 星型の飾りもの・・・ ツリーのトップに頂く星のオーナメント。

「 ・・・ これ。  仏蘭西製だわ ・・・ 」

 

   この星も 故郷に帰りたかったのかもしれない ・・・

 

フランソワーズは 古びた飾りを手にそう思った。

  ― 還りたい場所への入り口 ・・・

あの言葉がよみがえる。 

 

   わたし・・・ わたしの居場所は ・・・どこ ・・・

 

「 あ! 」

突然 009が大きな声で叫んだ。

「 !? な なに・・・? また 敵が? 」

「 ごめん 大切なこと、言うの忘れてた ! 」

「 まあ ・・・ なあに。 ジョー。 」

009はにこっと笑うと彼女を引き寄せ しっかりと抱いた。 そして耳元に ・・・

 

      メリー ・ クリスマス ・・・ フランソワーズ 

 

 ・・・ み つ け た  ここがわたしのホーム ね・・・・

フランソワーズはぴったりと彼の胸に頬を寄せ つぶやいた。

 

     ジョー・・・  メリー ・ クリスマス ・・・

 

 ( ふ〜〜ん・・・二人ともいいムードじゃん♪  そんじゃオイラは一足先に帰るよ! ちゅ〜 )

二人の足元から ネズミが一匹駆け出していった。

 

 

 

 

 

 

 

§ 新ゼロ93   『 聖夜 ( イブ ) に響け 愛の鐘 』

 

 

 

         *****  新ゼロですから。 アルヌールさんちの家族はお母さんと弟  ****

 

 

 

 

   コツコツコツ ・・・  カツカツカツ ・・・

 

石畳の路に小気味のよい靴音を響かせ人々が行き交う。

どんよりと鈍色 ( にびいろ ) の空、空気はつめたく人々は外套の中に深く身を沈める。

午後もまだ早いというのに、道脇の店々には灯が点り出した。

寒い寒い日 ― しかし人々は皆 なんとなく陽気で足取りも軽い。

黒い枝だけになった街路樹も この時期だけはオーナメントが華やかだ。

 

        ― そう 今日はクリスマス・イブ 

 

 

 ・・・ カツカツ ・・・  足音がひとつ、止まった。

「 ・・・ 寒くないかい。 フランソワーズ。 」

「 あら ・・・ ここは私の生まれた街よ? ジョー  これがパリの冬なの。 」

「 あ は・・・ そうだったね。  それじゃ・・・道案内は君に頼もうか。 」

「 ええ 任せて。 」

温かそうな外套に包まったカップルが肩を寄せて歩きだした。

二人は賑やかな通りをぬけると、大きな建物に沿って歩いてゆく。

 

「 ・・・・ あ ・・・・? 」

女性が脚をとめた。

「 なに。 どうか したかい。 」

「 聞こえるでしょう・・・? ほら ・・・ この音楽 ・・・ 」

「 うん ・・・?  ああ 本当だ。  ふうん ・・・ なんだかうきうきするみたいな曲だね。 」

男性も立ち止まり、一緒に耳を澄ましている。

「 あのね、 これ・・・ 『 くるみ割り人形 』 の序曲なの。

 クリスマスには必ず上演される演目なのよ。 」

「 そうか ・・・ ああ ここは ・・・ オペラ座だね。 」

「 ええ ・・・  ここで ・・・いつかここで踊ることが 夢だった ・・・わ ・・・ 」

女性は灰色の空遠くに視線を飛ばし、ぽつりと呟いた。

「 ・・・ フランソワーズ ・・・ 」

男性が彼女の肩を抱き寄せた。

「 ・・・ 大丈夫 大丈夫よ ジョー ・・・ ちょっと感傷的になっただけ・・・ 」

「 そうかい? それなら ・・・ いいんだけれど。 」

二人は寄り添って歩いてゆく。

「 ―  ねえ ジョー ・・・ 」

ずっと黙っていた女性が 口を開く。

「 うん? 」

「 ・・・ ね  わたし達、 どう見えるかしら・・・ 」

「 ― え? 」

「 こんな風に歩いているあなたと私・・・ 他人 ( ひと ) はどう思うかしら。 」

「 フランソワーズ。  恋人同志にみえるかってことかい。 」

「 ・・・ ジョー ・・・ 」

「 ふふふ・・・・ 誰だってそう思うさ。  

 さあ せっかくのクリスマス・イブなんだ、どこへでもお供するよ。 」

男性は蕩ける笑みをうかべ 彼女の腰に手を回した。

「 ・・・ ありがとう ジョー ・・・  でも ね 」

「 うん? 

彼女はさり気なく 彼の腕をほどき身を離した。

「 あの ね。 この街 ・・・ 私の故郷の街を歩きたいの。   一人で ・・・ 」

「 え? 」

「 もう これで最後にするわ。  だから ・・・ お願い ジョー。 今日だけ・・・ 

「 フランソワーズ ・・・  きみが  望むなら 僕は 」

「 ごめんなさい・・・ 勝手なことばかり言って ・・・

 今回も単独行動を認めてもらえただけでも 感謝しなくちゃいけないのに・・・ 」

「 なにを言うんだ、フランソワーズ ・・・

 故郷のすぐ近くまで来たのなら 立ち寄りたいと思うのは当たり前だろう。

 ましてきみには・・・ 家族が いるんだろう? 」

「 ・・・ え ええ ・・・ でも 会えない ・・・ いえ 会わないわ。

 私はもう ・・・ いないのよ、ここに居るのは ・・・ 本当のフランソワーズじゃないの。 」

「 ・・・・・・・・ 」

男性は黙って彼女の手を握った。

「 じゃあ 行ってくるわね。  ・・・ 大丈夫、約束の時間までには帰るわ。

 あの教会で待ち褪せましょう。 」

「 うん。 気をつけて。  Bonnes  vacances  (  よい休暇を ) ・・・ 」

「 Merci ・・・・ 」

彼女は するり、と手を引きぬくと もう一度男性の顔をみつめた。

あえかな笑みが彼女の頬に滲む。

「 ・・・・・・・ 」

そのまま彼女は踵をかえすと 街の雑踏にたちまち飲み込まれていった。

 

 

 

   ・・・・ ふう ・・・・・

 

男性はテーブルの下で長い脚を組み換え 溜息を吐いた。

白い吐息が 灰色の空に昇ってゆく・・・

この季節に 普段はオープン・カフェは閑散としているものだが ・・・ 今日は ・・・

なるべく端のテーブルを選んだつもりだったが 前後左右・・・カップルで満杯だ。

 

    あは ・・・ 熱い二人ばっかり、か。

    ま・・・イブだもの、当たり前かもしれないなあ・・・

 

彼は周囲をちらっと眺め、肩を竦めたが すぐにまた手元の本に目を落とした。

ショッピングをする気にもならず、待ち合わせの時間にはほど遠い。

今は とりあえずここに座り真冬のパリを眺めることにした。

厚い雲の空はそのままぼんやりした夕暮れ時に移ってゆく。

 

   ・・・  カツン。

 

彼の側でひとつの靴音がとまった。 

 ― うん? と彼が本から顔をあげると ほぼ同時に若い女性の声が振ってきた。

「 ・・・ あの〜〜〜  フランソワーズの・・・ お お友達 ですよね? 」

「 ―  は ぁ ・・・? 」

顔をあげた彼の前には濃い金髪の女性が立っていた。

フランソワーズと同じ年頃 にみえる。  

シンプルなコートにぐるぐる巻きのマフラーに埋もれ でも頬を紅潮させている。

「 あの! よくフランから聞いてました!  え・・・っと ジョーさん ですよね? 」

たちんぼのまま 目をまん丸にして彼をみている。

「 え  ああ そうだけど。  君は? 彼女の友達ですか。  」

「 はい! ず〜〜っと・・・バレエ学校で一緒です、 同級生よ、小さな頃から 」

「 そうですか。 えっと・・? 」

「 あ! 私、ナタリーです。 ジョーさん・・・ ジョー・シマムラさん そうでしょ? 」

「 あ ああ ・・・マドモアゼル・ナタリー。 どうぞよろしく。  」

彼は 少し躊躇ったが本を閉じ彼女に手を差し出した。  

「 よろしく!  ナタリー、で結構です。

 あ ジョーさんが居るってことはフランも帰ってきているってことですよね?

 彼女は?  待ち合わせ中 ですか。 」

「 ああ まあ ・・・  君は彼女と連絡を取っていないのですか。 」

「 連絡・・・って手紙とかはしょっちゅう。 ふふふ・・・フランからの手紙にはね、

 ジョーさん あなたのことば〜っかり よ? 」

「 あ そ そうですか。  どうぞ座ってください。」

「 はい!  あ でもね〜 彼女、幸せってことよね〜  今日はイブ・デートですかあ? 」

「 いや ・・・ フランはちょっと用事があって・・・ 遅くなるんだ。

 待ち合わせの時間はまだまだだから僕はここで時間を潰していたところ。 」

「 え ・・・ まあ〜〜  もったいない ・・・・ 

 こんな男子、独りで放っておくなんて・・・! しかもイブよ〜 

「 え? なに。 」

「 う ううん!  なんでもないわ。 

 ねえ・・・ お暇なら パリの街をご案内しますよ?

 今日のイブにはねえ、日没後花火大会が始まるの。  」

「 ふうん 賑やかなんだな。 」

「 ええ とっても ・・・  ね、花火がよ〜くみえる丘があるの。

 御案内します、一緒に行きませんか? 」

「 あ ・・・でも フランが戻ってきたら 」

「 大丈夫。 そんなに遅くなりません、それにここからすぐよ 」

「 そうか ・・・じゃあ ・・・ 折角だから御案内願おうかな。 」

「 わいい♪  」

ナタリーと名乗った娘は ぱん、と手を打ち大喜びで立ちあがった。

「 嬉しい〜〜 フランには悪いけど、素敵な彼氏をちょっと借ります〜〜

 ねえねえ。 その丘はね、夕方から日没がとても綺麗なのよ。 」

「 ふうん・・・ 」

男性は 仕方ないな・・・といった顔で立ち上がった。

「 それじゃ ・・・ お願いするかなあ・・・ 」

「 はい! どうぞ こっちよ。  」

ナタリーはするり、と男性の腕に手を回した。

 

 

 

 

  ・・・ この路 だったはずだけど・・・

 

女性の歩みは次第にゆっくりになってゆき、ついに舗道の端で止まった。

午後も遅くなってきて付近の外灯はほとんど灯っている。

「 ・・・ ここ ・・・ アパルトマンがあったわ。  わたしのお家 ・・・ 」

目の前は  ―  工事現場だった。  クリスマス休暇で人影は見えない。

「 壊して 立て替えるのかしら。   でも ・・・ 皆は?  ママン ・・・ シリル ・・・ 」

イブの夕方、ぼんやり路の端に立っているヒトなど 彼女以外にはいない。

「 ・・・ 誰か事情を知っているヒト ・・・ いないのかしら ・・・ 」

「 ・・・ !  pardon ! ( 失礼 ! ) 」

背中に軽くヒトの手が当たり、すぐに詫びの言葉が飛んできた。

「 あ いえ ・・・ あ あの!  すみません・・・ 」

「 ・・・? 」

振り返った目の前には リセに通ってくるくらいの少年がいた。

 

    ・・・ 弟と同じくらい かしら・・・

 

「 はい、なんですか マドモアゼル ? 」

「 あ あの ごめんなさい、呼び止めて。  

 あの ・・・ 教えてください、ここのアパルトマンは ・・・? 」

「 え  ああ この一画は古くなった建物を壊して大きなビルにするそうですよ。 」

「 ・・・・え  ・・・・ビルに ・・・ 」

「 ええ。 新しい商業ビルになるって 」

「 そ そう ですか。  それで 以前住んでいた人々は ・・・? 」

「 さあ〜〜 知りません。 」

「 ・・・ ありがとう、ごめんなさいね。  Joyeux Noel ・・・ 」

「 Merci   Mademoiselle,   Joyeux Noel ! 」

少年は爽やかに笑うと 手を振って駆けていった。

「 ・・・・ メリー・クリスマス  ・・・・  ああ わたしの還るところは もうないのね ・・・ 」

彼女はもう一度だけ辺りを見回してから 顔を伏せ足早にその地を去った。

「 ・・・さようなら 私の街 mon Paris ・・・ もう ・・・ 来ない ・・・ 」

 

   カーーン  カーーン  ・・・・・

 

夕方のミサをしらせる鐘が微かに聞こえてきた。

もうすっかり辺りは夕闇が立ち込めていた。   イブの夜がはじまる ・・・

 

 

賑やかな街の中心から少し離れた道を 一組のカップルが歩いていた。

ずっと坂の石畳の路、二人は次第に無口になってゆく。

  ― カツ ・・・

男性の脚が止まった。

「 君がさっき言っていた教会って・・・ この上かい。 」

「 ええ そうです。 」

「 ・・・ふうん・・・  あ あれそうかな。 」

石段をのぼりきり、二人の目の前に年代モノの ・・・崩れかけた教会が現れた。

「 ああ 教会、か   ここかい? 」

「 そうよ  」

 

  ―  カッ ・・・!

 

今まで男性と並んで歩いていた彼女が突然 跳び下がった。

「 ? どうしたんだい、すべったのかい。 」

「 ―  ふふふふ  はははは ・・・ 

「 ・・・・!? 」

彼女は不気味な笑いを漏らしつつ 身構えている。  全体の印象がまるで変わっていた。

「 ― お前は  誰だ。 」

「 ははは・・・・・ そうさ ここは教会の跡 貴様の墓地になる場所さ

 待ち人も もうすぐ もうすぐやってくるさ ・・・

 そしたら まとめて始末してやる  ふふふふ ふふふ 」

「 なんだって!? 」

「 ははは・・・ 休暇で油断したのが命取りになったな。 

 イブの夜が お前たちゼロゼロ・ナンバー・サイボーグの最後の夜となるのだ! 」

声や容姿は確かに先ほどの ナタリー と名乗った女性なのだ。

 

     なんだ・・・?  いや 彼女は生身の人間だ・・・

     この変化は ・・・ そうか 外部からの操作 だな

     なにが彼女を操っているのか  見つけろ ジョー ・・・!

 

男性が 地を蹴って大きく飛び下がる。

「 ふん! いかにサイボーグとはいえ、丸腰では   ・・・・ ?! 」

彼は空中でくるり と一回転し そして ―

「 ―  お前のミスだな。  フランの友達を名乗ったのは上出来だが 」

地上に降り立つと同時に 赤い特殊な服を纏いスーパーガンを構えた。

「 フランは故郷と連絡はしていない。  

 それに フランは他人 ( ひと ) にプライベートをべらべら喋るような娘じゃない! 」

「 く ・・・ くそ 〜〜 ! 」

 

   ババババ −−−−− !!     バシューーーー !

 

夜闇せまる廃れた教会跡に レーザーが交差する。

ナタリーは女性とは思えない機敏な身のこなしで 巧みにジョーの攻撃をかわす。

 

     ふうん?  なかなかの腕前だけど ・・・

     しかし 元々は <ナタリー> なんだ、持久戦にもちこめば ・・・

     そして彼女を操っているモノを見つけるんだ!

 

ジョーは慎重に彼女を狙う。  撃ち斃すわけには行かない。

  シュ ・・・・!     ガガガガ −−−−−− !!   

真っ暗な中で 小石が飛び時に壊れた塀が崩れた。

 

     くそ ・・・ なかなかしぶといな !

     ―  うん?  なんだ・・・・

 

     あ!  だめだ、来てはダメだ・・・! 

 

「 フランソワーズ!  来るな !!! 」

ジョーは 敷地へ通じる石段の方に向かって怒鳴った。

「 !?   ジョー ・・・?? 

鋭い叫びと共に 白いコート姿が現れた。  

 バ −−−−!  ナタリーが宙に跳んだ ― 彼女を狙っている!

「 ジョー!   ・・・  く ・・・ コレが敵ね! 」

「 フランソワーズ !! 」

 

      バシュ −−−−−−−!

 

フランソワーズは躊躇わずにスーパーガンのトリガーを引く。

< ナタリー > は 大きく跳ね飛ばされる。

「 む ・・・・ マズイ ・・・! 」

  カチ・・・!  小さな機械音と共にジョーの姿が消えた ― しかし次の瞬間には 

ジョーは ぐったりした < ナタリー > を抱いて立っていた。

「 え ・・・ ナ ナタリー ・・・? 

「 フラン・・・大丈夫か 」

「 ええ 私は・・・ で でも 私 ナタリーを・・・撃って・・・・ 」

「 いや ・・・ 大丈夫。  首を掠めたけど コレに当たった。 」

「 ・・・えええ?? 」

ジョーは 彼女を地に下ろすと、掌を開き小さなメカをみせた。  

「 な ・・・ なに これ。  これがナタリーの首についていたの? 」

「 恐らく な。 コレで彼女を操っていたのだろう。 」

「 で でも ・・・誰が?  ・・・ NBG ・・? 」

「 わからない。   ああ お家の方は元気だったかい。 」

「 ・・・ どこでどうしているか わからないの。

 でも いいわ・・・ これで もう 諦められる ・・・ 」

「 フランソワーズ ・・・ その ・・・ぼ 僕と一緒に 」

「 ―  え?     あ! ナタリーが ・・・ 」

ジョーが助けた女性は ゆっくりと身じろぎし目を開けた。

「 ・・・・ う〜ん ・・・・ ここは ・・・あ!! フランソワーズ!! フランソワーズなの?! 」

「 ・・・ ナタリー ・・・ 」

「 私 ・・・ ど どうして?? 」

 

   ポ −−−− ン !!  パパパ パ −−− ン !!!

 

陽気な音が響き渡り 空には華やかな火の花がつぎつぎに広がってゆく。

 

「 あ・・・ イブの花火 ・・・・ 」

「 ・・・散々なクリスマス・イブになったね。  」

「  ―  メリ − クリスマス ・・・  ともかく皆無事でよかった ・・・ 」

 

三人は呆然と冬の花火を 見上げていた。

 

           天には御栄 ( みさかえ )  地には平和を   

 

愛の鐘 はまたもや鳴り損ねてしまったらしい。

 

 

 

 

 

*******    こめんと    平ゼロ93  ********

 

「 旧ゼロってセブンがヒーローなのかなあ〜〜 」

「 うふふふ・・・でも可愛いじゃない? 

 わたし 旧ゼロ・ジョーさん、好きよ。 シックで大人だもの。 」

「 ふ ふ〜〜んだ。  ・・・ ぼくはちゃんと加速装置、搭載だよ! 」

「 ふ〜ん・・・やっぱり新ゼロさんって・・・ 」

「 キザだよね〜〜 」

「 あら そう? 素敵じゃない? <恋人同志に見えるかって? > なんて♪ 」

「 ふ ふん! ぼくとフランはぁ〜〜   ちゅば♪♪ 」

「 きゃ ・・・ もう〜〜〜  ジョーってばあ♪♪ 」

 

 

 

**************************       Fin.     ***************************

 

Last updated : 12,27,2011.                      index        /        back

 

 

*************    ひと言  *************

はい、これでおしまい〜〜 ♪  

遅れましたけれど 皆様 〜〜  Merry Christmas 〜〜〜〜〜 ♪♪