『 はつゆき  − (2) − 』

 

 

 

 

 

空が明るくなっても村全体を覆っている不気味な沈黙の帳はそのままだ。

重い曇り空の下、点々と民家の広がる<やどり木の村>は ますます陰鬱に黙り込んでいた。

 

   ・・・ なんて・・・重い空気・・・

 

フランソワ−ズは窓辺でそっと溜息をついた。

アタマが重い。 昨夜からまだ 頭痛は続いている。

ジョ−達は朝を待ち、散歩と称して村中に散っていった。 

「 わたしも行くわ。 」

「 だめだ。 きみはここで待っていろ。」

「 どうして? 全員で調べたほうが早いし、わたしの眼と耳で・・・  あ・・? 」

ジョ−の大きな手が ぴたり、とフランソワ−ズの額に当てられた。

「 ・・・ホラ。 やっぱりまだ少し熱いよ。 休んでいた方がいい。 」

「 ・・・ ジョ− ・・・ 

「 ぼく達は村中に散るから。 きみはこの宿で皆からの報告を繋いでくれ。 」

「 わかったわ。 」

「 それで もう頭痛は治まったのかい。 」

「 え、ええ。 もうなんともないわ。 ちょっと・・・寝不足なだけ。 だって・・・昨夜誰かさんが〜 」

「 ・・・・え〜っと。 それじゃ行って来る。 ジェロニモにボディ・ガ−ドを頼んだから

 安心して休んでいたまえ。 」

「 ありがとう。 ジョ−こそ ・・・ 気をつけてね! 」

「 ああ。 それじゃ。 」

二人は軽く唇を合わせた。  

ほんの軽いキス。 挨拶代わりのキス。 コドモのキス・・・

しかし ほんの一瞬でも彼女の芳しい香りを感じジョ−はぶるり、と身をふるわせた。

「 ・・・ じゃ。 」

「 ・・・・・・ 」

手を振り合って 二人は外と中に別れたのだ。

 

 

 

「 フランソワ−ズ。 大丈夫か。 辛かったら横になっていろ。 」

「 あ・・・ ありがとう、ジェロニモ。  大丈夫、起きていられるわ。 」

巨漢の穏やかな言葉に、フランソワ−ズも静かに微笑みを返した。

病人を寝かせた部屋にも 薄日がぼんやりと差し込んできていた。

「 そうか。 オレ。 水を替えてくる。 」

「 まあ、ありがとう! ここって水は井戸なのよね・・・ 助かるわ。 」

「 うむ。 ・・・ 彼、熱が下がらない。 冷やしたほうがいい。 」

「 え? 」

ジェロニモは男のベッドに視線を送ってから、大きな水差しを二つも下げ出て行った。

 

「 ・・・ あら、本当 ・・・ 昨夜のクスリでは効かなかったかしら。 なにか悪い病気なの・・・ 」

フランソワ−ズは男の額からそっとタオルを取り除けた。

「 皆が帰ってきたら相談しなくちゃ。 このヒト・・・早くちゃんとした病院につれてゆかないと。 」

「 ・・・・ う ・・・・ ん ・・・・ 

男はかすかに身じろぎをした。

「 あ・・・。  あの? わかりますか? あなた、お名前は? 

「 ・・・ フ ・・・ レイヤ ・・・ 逃げろ・・・ 逃げるんだ・・・・  」

「 フレイヤ? それはどなた? あなたのお友達ですか? 」

フランソワ−ズは懸命に声をかけたが、男は再び唸り声を上げただけで再び枕にアタマを沈めてしまった。

「 ふう・・・ どうしたらいいの・・・  あら? 」

カリリ・・・と窓の鎧戸が微かに鳴った。

「 ・・・・ ! 」

フランソワ−ズはス−パ−ガンを抜くと足音を忍ばせ窓辺に近づいた。

 

カリ・・・カリリ ・・・ トントン ・・・!

 

窓の外になにかが、いや、誰かが息を殺して蹲っているらしい。

003は銃を構えたまま、静かに眼と耳の感度をアップした。

 

   ・・・・ ? ・・・ あ! 村人・・・!

 

「 誰!? そこにいるのは・・・ 誰!? 」

「 ・・・シ ・・・〜〜〜 」

低い声ともに外から鎧戸があき、鉄錆色の髪をした若者が姿を現した。

「 ・・・ すみません、おどかして。 」

とん、と軽い音をたて彼は窓際から部屋の中に着地した。

「 あなた、誰ですか。 この村のヒト? 」

「 すみません、こんなトコロから・・・ はい、僕はこの村の樵でヴァルド−ルといいます。 

 あの、旅のお方がロキの宿に入られた・・・って聞いて。  」

「 ヴァルド−ル・・? ねえ、それなら、このヒトのことわかる?

 途中で出会ったヒト達はみんな知らないって言ったわ。 この宿の主人も・・・ 」

フランソワ−ズはベッドに仰臥する男性を示した。

「 ・・・・ ? 」

若者は足音を忍ばせ、部屋を横切ってきた。 ギシリ・・・! 旧い床が鳴った。 

「 あ・・・! やっぱり。 義兄さん! 姉さんはどこだ!? フレイヤ姉さんは!! 」

「 ・・・ フレイヤ姉さん?? あなたはいったい誰ですか? 

 この方もあなたのお姉さんも ・・・ そしてあなたも 何から逃げているの? 」

「 この・・・ 村から、なのです。 」

「 ・・・ 村から・・・? 」

「 はい。 この村での最大のタブ−は村から外に出ることなのです。 掟が禁じています。 」

「 まあ・・・ どうして?? 」

「 言えない、僕の口からは・・・とても。

 掟を破ればたちどころに罰が下ります。 ・・・ そう、この・・・義兄のように・・・ 」

「 お兄さん? この方はあなたのお兄様なのですか。 」

「 いえ ・・・ 姉の連れ合いです。 太陽の光を司る・・・役目なのです。 」

「 ・・・ 太陽の光・・・? 」

「 はい。 彼が居なければこの世はいつまでたっても闇が続いてしまいます。

 ああ・・・ こんなに弱って・・・ 義兄さん! 姉さんとあの子達はどこにいるんだい。 」

ヴァルド−ルと名乗った若者は がくり、とベッドの脇に膝を突いた。

「 ねえ・・・あなた。 なにか深い事情がありそうね。 よかったら・・・ 話してくださらない? 」

「 ・・・ それは・・・ あなた方にも迷惑がかかってしまう・・・

 天罰は周りのモノも巻き込むでしょう。 そんなことは・・・ 」

「 お願い、わたし達を信じて。 ねえ、そのオキテとやらこの村のこと・・・・

 話してください! 今・・・居残っている仲間を呼んできますね。 」

「 ・・・・ すみません、ありがとう・・・! 」

「 ちょっと お義兄さまを看ていてあげてください。 お願いね。 」

「 はい。 」

フランソワ−ズはそっと宿を抜け出した。

朝になり霧は晴れたが 空は重く灰色に垂れ込めたままだ。

裏手の井戸端で ジェロニモが水を汲んでいた。

「 ジェロニモ ! 

「 ・・・ フランソワ−ズ。 どうした。 」

「 今ね、あのヒトの義弟というヒトが来て・・・ ねえ、009たちは? 」

「 手分けしてこの村を調べているはずだ。 」

「 そう! それなら脳波通信が届く範囲内ね。 皆を呼ぶわ。 」

「 ・・・ やめておけ。 

ジェロニモの大きな手が ふわり、とフランソワ−ズの肩に置かれた。

「 え? どうして。 」

「 この村は妙だ。 ・・・ オレの問いかけにだれも応えない。 」

ジェロニモは ふっと空を仰いだ。

「 応えないって、どういうこと? 」

「 これだけ自然があるのに。 樹も草も水も ・・・ みな、黙っている。

 そう ・・・ 風すら息を潜めている。 これはヘンだ。 」

「 なにか・・・あるのね! 」

「 わからない。 ただ ・・・ 強引ななにかのチカラが自然の精霊たちを封じている。

 彼らはただじっと見つめているだけだ。 」

「 まあ ・・・ 」

「 その <なにか> に聞かれるかもしれない。 やめておけ。 」

「 わかったわ。 」

「 そんなに遠出はしていない。 探しに行こう。 」

「 ええ。 あ。 その前にこの水をあのヒトに・・・ ちょっと待っていてね。 」

「 一緒に行く。 ・・・ なにか よくない予感がする。 」

ジェロニモは水差しを持ち上げると 宿に入っていった。

 

 

「 ・・・ヴァルド−ル? あら? いないわ・・・ 」

彼らの部屋のドアはきちんと閉まっていたが、中には病人が荒い息をしているだけだった。

 

  キィ・・・キィィ・・・・

 

微かな音をたて窓の鎧戸が揺れている。

「 あ・・・ ここから? 出て行ってしまったわ・・・ 」

「 フランソワ−ズ。 行こう、皆に知らせる。 」

「 ええ。 ・・・ あ ・・・・ ! 」

「 どうした。 」

「 ・・・・ な、なんでもないわ、床のくぼみに突っかかっただけ。 ・・・さ、行きましょう。 」

「 むう。 」

 

   ・・・ 大丈夫。 ちょっと寝不足なだけよね。

   昨夜は ・・・ あんまりよく眠れなかったし。 それに  あの・・・・ 音・・・ !

 

身体の奥に まだほんのり残る埋火の感覚にこっそりと頬を染め・・・

フランソワ−ズは ぷるん!とアタマを振ると005の後に付いていった。

 

 

 

「 ― ったく! なんなんだ、この村は! 」

アルベルトは右手を引き呟いた。

眼の前には 銃創だらけの木々は砕けた岩の破片が散乱している。

村道を歩いていると、全身を金属で覆ったオトコが現れた。

すれ違い様に不敵な笑いを浮かべたソイツは マシンガンの攻撃を難なくかわしてしまった。

反撃に身構えたアルベルトを 横目に眺めうすい笑いを残し、樹木を伝って逃げていった。

「 ・・・ ち。 」

高く舌打ちをすると、アルベルトは丁寧に手袋をはめた。

「 あれは確か・・・ ト−ルとかいう雷 ( いかづち ) の神じゃねえか。 

 おっと・・・・ 定時報告だったな。 

道端の巨木の陰にまわると アルベルトは脳波通信を飛ばした。

 

仲間達は村中でどうやら散々だったらしい。

取り合えず、宿にもどると返事をしたものがほとんどだった。

< ・・・ よし。 オレは予定通り村を一周してから戻る。

 すこし追ってみる必要があるヤツに出くわした。 >

< 了解 アルベルト。 こちらも酷い目にあったよ。 たかがドラゴンって甘くみてたらね。

    ・・・・ もう 海の中を引き摺りまわされてしまった・・・ >

< ピュンマ! お主もか! わが輩達もさんざんさ。 動物どもまでが襲ってきた!

 この村は モンスタ−の集合みたいだ! >

< ったくよ〜〜〜 こんなヤバげなとこ、早く脱出しようぜ! 空気まで気色わりィ ! >

< ジョ−! どうするアルね? >

< よし。 一旦宿に戻ろう。 あの病人も気になるしね。 >

< 了解〜〜〜!! ほっほ、今日は 美味しい食事 ヨ! ワテが腕を振るうアルね! >

< ぼくはもう少し回って フランソワ−ズと落ち合うよ。 >

< 了解〜〜 >

四方八方から それでも元気な通信が送られて来ていた。

 

 

 

「 ・・・・ ジョ−、見つけた。 」

「 え? どこどこ??  ・・・ あ  ・・・ ごめんなさい。 」

フランソワ−ズはそわそわと周りを見回したが、すぐに真っ赤になってしまった。

「 いい。 フランソワ−ズ、ジョ−と合流したら わし、宿に戻る。 」

「 いいけど・・・ 疲れちゃった? 」

「 いや。 どうも暗い予感ばかりが飛んでくる。 あの病人、 心配だ。 」

「 そう・・・ ジェロニモも気をつけて! 」

「 ああ。 」

005は大きく頷くと はるか前方に見えてきた赤い防護服に合図を送った。

 

「 ・・・ ジョ−! 」

「 フランソワ−ズ。 起き出して大丈夫かい。 」

「 ええ。 あのね、皆が出かけた後、あの病人の義弟だっていうヒトが来たのよ。 」

「 義弟?? 」

「 ええ。 フレイヤの弟で ヴァルド−ル というの。 」

「 ふうん・・・ それで、ソイツはどうしたんだ、宿に残っているのかい。 」

「 ごめんなさい、ジェロニモを呼びにいった間にまた・・・消えてしまったの。  」

「 ・・・ どうも なんだか胡散臭いなあ。 この村は、村人は不自然なところだらけだよ。 」

「 ジェロニモも同じことを言っていたわ。  自然の精霊の声だすこしも聞こえない、って。 」

「 やはり、ね。 聞こえるといえば・・・フランソワ−ズ、どうだ、あの<音> はまだ聞こえるかい。 」

「 ・・・・ええ。 この村に入ってから・・・ずっと。 時々弱くなるけど決して途切れないの。 」

「 そうか・・・ 」

ジョ−は横を歩くフランソワ−ズに ちらり、と視線を投げた。

白い頬が、蒼白いほど引き締まり時にこめかみに うっすらと血管が浮き上がる。

 

   ・・・・ 大丈夫、なんて言っているけど。 

   音が途切れないってことは 頭痛も続いているってことだよな。 

 

ジョ−はそっと彼女の手を握った。

「 帰ろう。 もう ・・・ 見回りはいいよ。 宿に戻ってきみは休んだほうがいい。 」

「 な、なに言っているのよ! 見回りは慎重にしなくちゃ。 」

「 フラン。 辛いときにはちゃんとぼくにそう言ってくれ。  いいな。 」

「 ・・・ わかったわ。  ・・・・ あ! ジョ−・・・ あれっ! 」

村はずれと思しき一軒家を回った瞬間、 フランソワ−ズが声を上げた。

差された指の先には きらきら光るリボンが、 いや 小川が一筋ながれていた。

「 うん? 小川にしては結構川幅があるな。 」

「 ジョ−! 大変よ、あの・・・川の向こう岸に大きな樹が見える? 」

「 ああ、ここの樹は巨木が多いね。 」

「 その根方に! 彼がいるわ。 ・・・怪我してる、なんだかぼろぼろよ? 」

「 彼? だれだ、それは。 」

「 彼よ、彼! ほら〜〜 今朝訪ねてきた・・・ヴァルド−ル! 」

「 なんだって! ・・・あ、見えてきた!  うむ・・・ 」

カチリと小さな音と、独特の空気の音を残し009は消えた。

 

「 加速したのね。  あ、 雨・・・? 」

 

   ・・・ ド −−−−−− ン ッ  ・・・・・!!

 

とうとう降り始めた空の彼方で 雷が不気味にくぐもった音を立てた。

カッ!!!

遠い雷鳴とともに一瞬辺りが稲光に照らし出された。

「 ・・・あ!!  ジョ−! 今 援護に行くわ! 」

フランソワ−ズは雨を突っ切って駆け出した。

 

 

ジョ−が川岸で加速を解いたとき、大樹の元で一人の青年が固まっていた。

彼のすぐ前方には 全身金属で覆われなぜか古めかしい頭巾をかぶったモノが立っている。

その手には 筒状のものを持ち狙いを定めているようだ。

「 危ないっ! 」

カチリ。

次の瞬間に筒状の武器は宙に跳ね飛んだ。

しかし、それと一緒に全身を金属で覆ったソイツも高く樹上に飛びあがった。

「 コイツ ・・・ ロボットか?? 」

「 クククク・・・・ お前達こそ、ニンゲンではないな。 クククク・・・・ 」

「 あ、待てッ! 」

不気味な冷笑を残し、ソイツはふ・・・っと宙に消えてしまった。

「 ・・・ 消えた? そんなバカな・・・・ いや、ヤツも加速・・・?  」

「 ジョ−! 宿へ行って、早く! 」

「 どうしたんだ、フランソワ−ズ。 彼は大丈夫かい。 」

フランソワ−ズは大樹の元にへたり込んでいた青年を助け起こした。

「 ・・・ ヴァルド−ルといいます。 義兄 ( あに ) がやられる!

 さっきト−ルが手下に命令していました。 ロキの宿へ行くように、と。 」

「 仲間達が先に戻っているから大丈夫だと思うけど。 君こそ大丈夫かい。 」

ヴァルド−ルはキズだらけだった。 しこたま痛めつけられたらしい。

「 酷い怪我よ、どうしてこんな・・・ 」

「 ・・・ アナタ達を訪ねていったことがバレました。 外モノと付き合うことは許されていない。

 義兄も この村から脱出しようとして ・・・多分 ・・・ 」

「 まあ・・・ そうなの・・・ 」

「 早く! そして姉の行方を捜してください。 」

「 あ・・・ フレイヤさん、ね。 あの・・・ 」

「 フランソワ−ズ。 その話は後だ、とりあえずぼくは宿に戻ってみるから。

 きみは彼とここにいるんだ。 いいな、絶対に動くなよ。 」

「 え、ええ・・・ わかったわ。 ジョ− ・・・ 気をつけて・・・! 」

再び小さな音とともにジョ−の姿は消えた。

 

「 ・・・ あなた方も 神 なのですか。 」

「 え? どうして。 」

「 皆さん 不思議な力を持っている。 今の彼も不意に消えてしまったし・・・ 」

「 わたし達はね、人間よ。 ただ・・・ いろいろなメカニズムを身体の中に埋め込んで

 機能をアップしているだけなの。 」

「 ・・・ 機械・・・?  」

「 ええ、そうよ。 ヴァルド−ル、アナタ達こそ ・・・ 神 って? 」

「 はい、 僕達は皆、族長テック以下全員がオ−ディンに作られた神なのです。 」

「 オ−ディン ・・・? ねえ、この村の、そしてアナタ達のこと、話してちょうだい。 」

「 ・・・ わかりました。 この村は ・・・ グッ・・・! 」

「 ヴァルド−ル? どうしたの ・・・・ アッ!! 」

青年の身体がぐらり、と傾ぐと そのまま彼はどっと前につんのめり倒れこんだ。

「 ヴァルド−ル!  ・・・・ ! 」

フランソワ−ズは彼を抱き起こし、息を呑んだ。

彼はすでに息をしていなかった。 ・・・ 額の中央を撃ち貫かれて。

「 ・・・ なんてことを! いったい誰が? 」

 

「 ふふふ・・・・ ソヤツは村の掟を破った。 オ−ディンの怒りが下ったのだ。 」

「 ・・・ だれっ!? 」

振り向いた川辺には 誰の姿も見えない。

フランソワ−ズは能力のレンジを最大限に引き上げ 周囲をサ−チした。

「 ふふふ・・・ そうか、お前達はサイボ−グなのだな。 ほれほれ、どこを探っている? ここだ! 」

 

    カッ −−−−−− !!

 

篠突く雨を割って、稲光が炸裂した。

その瞬間  ― 中空に一人のオトコの姿が浮かびあがった。

長くロ−ブを引き、杖を手にしている。 一見老人風なのだが・・・

 

「 あ・・・!? だ、誰?? 」

フランソワ−ズは後退りしつつもしっかりとス−パ−ガンを構えた。

雷鳴が次々と響きわたり、辺りはその度に明るく照らしだされる。

フランソワ−ズの亜麻色の髪が 稲光をうけて煌きゆれる。

 

「 ほう・・・見事な髪だな。 ちょうどよい、お前は フレイヤ として生まれ変わるのだ! 」

ば・・・!っとそのオトコは杖をフランソワ−ズに向けた。

「 な・・・ きゃあ・・・・!! 

空中から見えない衝撃を受け 彼女の身体は吹っ飛んでしまった。

「 族長テック。 その娘をとねりこの中に運べ。 ・・・翼を与えよう。 」

「 はい、オ−ディンさま。 しかし、もともとのフレイヤとその夫は如何いたしましょう。 」

どこからか老婆が現れ老人の前に畏まった。

「 あやつらは の名に不適格なので処分した。 フレイヤの名はこのモノに相応しい。

  ワシは神々の長・オーディンとして人間どもの上に君臨するのだ!

「 は・・・。」

老婆はフランソワ−ズを抱え上げるとオ−ディンと共に宙に姿を消してしまった。

 

ガラガラガラ −−−−− !! ドーーーーーン !!

 

幕引きのごとく、激しい雷鳴が誰もいない川辺に響きわたった。

 

 

 

「 あの青年はどうした?! あッ !!  」

ジョ−はロキの宿に着き加速を解いたが 眼の前では乱闘の真っ最中だった。

鉄の槌を振り回す大オトコと005が闘っている。

大男はどうやらバカ力専門らしく、005は鉄槌を巧みにかわしつつ攻撃の手を緩めない。

ジョ−は病人を寝かせた部屋へ飛び込んだ。

「 わ! ジェット! なんだ、それ? 」

「 知るかよッ いきなりこの・・・ コウモリの化け物が飛び込んできやがって・・・ こいつっ!! 」

赤毛の鉄拳が唸り、羽の生えた醜悪な生き物は床にころがった。

「 あの青年は? 病人はどうした。 

「 ふん! 手古摺らせやがって。 コイツ、病人を襲いやがってよ。 

 ああ、おい? あんた、大丈夫かい。 」

「 ・・・・・・ ジェット。 その青年は・・・ 」

ベッドに近づくなり、 ジョ−ははっと顔を曇らせた。

ずっと熱に浮かされていた青年の顔はすでに 冷たく固まっていた。

「 !? ・・・・チッ! なんてこった・・! 」

 

みゅう ・・・  みゅうみゅ・・・・

 

にゃあ〜〜ん にゃあ ・・・

 

「 ? おい、ジョ−? お前 ネコ、連れて来たのか? 」

「 えええ??? まさか! 」

「 だってよ、今声が ・・・ あ、あそこ! 」

「 え? あ、本当だ! ・・・あ、ああ? 

白いほっそりとした仔猫だった。

音もなくベッドに飛び乗ると、冷たくなった青年をじっとみつめるとそのほほをそっと舐めた。

 

  みゃう ・・・・・

 

その青い瞳をジョ−達に向けるとひそやかに鳴き声をあげた。

「 おまえ ・・・ 彼のネコなのかい。  」

「 んなわけ、ねぇじゃん。 オレら、コイツとずっと一緒だったけどネコなんていなかったぜ。 

「 ああ。 でも ・・・ 」

 

  みゅう みゅ〜〜〜

 

「 おいで。 ミルクでも探して・・・ あ? 」

ジョ−が手を差し伸べた瞬間、 仔猫はひらり、と窓から逃げてしまった。

 

 

「 おおい、009? 戻ったのか。 」

「 007? どうだ、首尾は。 ああ、みんな戻ってきたのかい。 」

「 どうもこうも・・・ この村はモンスタ−の巣窟だぞ。 

 この村の連中は 我輩たちに明らかに敵意をもっているな。 」

「 彼らの正体は何なのかな。 モンスタ−って言っても・・・ ホンモノなのかなあ。

「 ピュンマ? 」

「 うん、僕は海の中で妙な海蛇だか竜だかと格闘したんだけど。

 自然の生き物で あんなモノ、いるかな。 」

「 ・・・ ツクリモノ、 ロボットかサイボ−グかもしれないってことかい。 」

「 いや、それは断定できないな。 フランソワ−ズがいれば一発でサ−チしてくれると思うけど。 」

「 彼女は別に何にも言ってなかったぞ? 」

「 そうなんだけど。 あまりに不自然だと思わないかい。 この現代に竜だの大海蛇だの。 」

「 しかし 彼らは <武器> を持っていないよ。 素手・・・・というか、力で槌を振り回したりするのが

 関の山だろう? 」

「 あ! 火や! あの火ィを吹く馬はどないやねん。 」

「 ・・・ それもそうだけど。 この古びた村・・・ えらく時代がかったこの寒村に

 近代兵器があるとは思えないんだ。 」

 

「 あれはレイガンだったぞ。 」

 

ぼそり、とドアの向こうか声が聞こえた。

「 アルベルト?! どこまで行ってたのかい。 あ! 」

「 ふん。 深追いしてな。 一発喰らっちまった。 」

平然とした足取りでアルベルトが入ってきた。

「 遅いので心配していたんだ。 あれ・・・ どうしたんだい、焼け焦げてるよ? 」

ピュンマがアルベルトの防護服の肩を指した。

「 ほんまや。 あんさんも火ィ吹く怪物に遭いはったんか 」

「 いや。 全身を鉄で覆ったヤツさ。 オレのマシンガンを跳ね返したので

 こっそり後を追ったんだ。 そうしたら崖っぷちで返り討ちにあった。 ヤツの武器はレイガンだ。 」

「 その武器って こんな・・・筒状のヤツかい。 」

ジョ−は手で大きさを示す。

「 ああ、そんなものだ。 えらく敏捷なヤツでな、多分ヤツにも加速装置がついているな。 」

「 それじゃ完全にサイボ−グかロボットだな。  ついさっきぼくも川辺で逃げられた。 

 フレイヤの弟という青年を殺そうとしていたよ。 フランソワ−ズと一緒になんとか守ったけど。 」

「 それでフランソワ−ズは? 」

「 うん、その青年と川岸にある樹のところにいる。 」

「「 ジョ−、フランソワ−ズを一人にしては危ない! 」」

ピュンマとアルベルトがほとんど同時に叫んだ。

「 行け! すぐにオレ達も追いつくから。 川辺の大樹のところだな。 」

「 この村のヤツラ、全員が俺たちに敵意を持っている。 一人にしたら格好の標的だぞ! 」

「 ・・・! 

「 ジョ−、早く行け! 

「 ・・・ ありがとうッ! 

シュ・・・ッ!! 

ジョ−の姿はたちまち消えた。

「 ふうん・・・ 我輩らを翻弄したあのモンスタ−どもは皆 ツクリモノかい。 

 こりゃ厄介だな。 簡単には退治できんぞ。 」

「 神話どころか ・・・ 違った意味での<モンスタ−>揃いだってわけか。 ヤツらの狙いはなんだ? 」

「 ふん。 とにかくロクなヤツラではない。 行くぞ。 」

「 おう! 」

サイボ−グ達は降りしきる雨の中に飛び出していった。

 

 

 

「 ・・・おい!? フランソワ−ズは、フランソワ−ズは何処だッ!?! 」

ジョ−が 再び川岸に戻ってきた時、 大地を篠つく雨が打ち付けていた。

急に川幅がひろがった流れには あの男・ヴァルド−ルが転げ落ち、すでに息はなかった。

「 ヴァルド−ル?!  ・・・ む ・・・ ! 」

川から引き上げた彼の額は みごとにど真ん中を撃ち抜かれていた。

 

   ガラガラガラ ・・・・!  ド −−−−−ン ッ!!! 

 

雷がとうとう頭上で鳴り始めた。

< フランソワ−ズッ!! 003!! 応えろ、現在位置はどこだ〜〜!! >

ジョ−は懸命に脳波通信を四方に飛ばした。

 

   くそゥ ・・・! 一緒に宿に連れて帰ればよかった・・・! 

   うん? あれはなんだ? 

 

水浸しになった岸の川辺を洗う草に なにか明るい色彩のものがからまっている。

ジョ−は慎重に足場を選び、手を伸ばした。

 

   ・・・ フランソワ−ズのだ! そうさ、 ここのキズに見覚えが・・・

   くそ〜〜〜 なんだって一緒に連れて行かなかったんだ・・・!

 

赤いカチュ−シャを手に歯噛みをし、ジョ−が再び周囲を見回したとき。

 

   バ −−−−−−−− !!!

 

一条のレ−ザ−にも似た衝撃が ジョ−の頬を掠めた。

「 ?! 誰だッ!! 」

ジョ−はス−パ−ガンを構え油断なく周囲を見回した。

カ・・・・ッ ! と稲妻が中天を上下に割った。

 

「 ほほほ・・・ よく避けたわね。 さすがサイボ−グ、なかなか凄いわ。 」

 

稲妻が消えたとき、 東の空に人影が浮かびあがった。

白いロ−ブの裾を引き、亜麻色の髪を靡かせ ・・・ その背には軽やかな翼が広がっている。

 

「 ・・・・ フランソワ−ズ !! 」

「 誰のこと? わたくしは フレイヤ。 愛と闘いの神 ・・・ ! 」

青い瞳が ひた、とジョ−を見据える。

「 この村から出てお行き! ここは神々の住まうところ。

 お前達、ニンゲンの来るところではないわ。  」

「 神々だって?? 」

「 そうよ。 わたくし達は この北の大地を、空を、海を支配し統べる神。

 古の時からニンゲンどもの世界に君臨してきたわ。 さあ、ヨソモノはお帰り! 」

「 フランソワ−ズ! しっかりするんだ、ぼくだ、ジョ−だよ! 」

「 ふん ・・・ ああ、お前たちはニンゲンではないのね。

 その身体には機械がぎっしり詰まっているわ。 ふふふ 哀れな半機械ニンゲンなのね。 」

「 な、なんだって! 

「 フレイヤ 」

「 ! はい、族長さま。 」

女神の後ろから ずい、と黒衣の老婆があらわれた。

「 オ−ディンさまからのお達しです。 わらわ達の世界を毒するあの・・・ヨソモノどもを

 排除しろ、とのことです。 闘いの女神としてのお前の役目を全うしなさい。 」

「 かしこまりました。 

フランソワ−ズは膝を折り優雅にお辞儀をすると 再びジョ−を見下ろした。

 

「 そこのお前。 覚悟おし。 」

「 な、なにを・・・! 」

す・・・っとフランソワ−ズは右腕を上げ そしてぴたりとジョ−に指を向けた。

 

   バ −−−− !!

 

彼女の指先から発した光線がまっすぐにジョ−を狙う。

「 わ・・・! 」

ジョ−は瞬間、 加速して彼女の攻撃を避けた。

「 く・・・! ちょこまかとこしゃくな。 ああ、加速装置がついているのね。 それならば。 」

 

  ヒュン ・・・・・・! 

 

白い翼が優雅に羽ばたいた、と思った瞬間彼女の姿が消えた。

「 なんだ? ・・・くそ、もしかしたら! 」

ジョ−は苦い思いと共に奥歯のスイッチを噛み締めた。

 

「 ・・・ ほほほ ・・・ さすがね、見破ったわけ。 」

「 フランソワ−ズ! だめだ、だめだ〜〜 きみの身体は長時間の加速状態になんか

 耐えられるわけ、ないんだ! すぐに加速を解くんだ! 」

「 ふん、わたくしはフレイヤ。 闘いの女神に不可能はないわ。

 この翼があるかぎり、どこまでもお前を追ってゆける! 

 

   バババーーーーー!!

 

再びフランソワ−ズの指先から光線が飛び出した。

「 やめろ! やめるんだ、フランソワ−ズ ! 」

ジョ−はス−パ−ガンを構えてはいるが どうしてもトリガ−を引けない。

せめて加速で彼女に負担をかけまい、とジョ−はやむなく彼自身の加速装置を解除した。

 

「 おやどうしたというの。 まあ、いいわ。

 北のこの大地をお前達の墓場にしてやる。 ほほほ・・・お前の仲間達もおっつけ

 葬り去られることだろう。 

「 なんだって! フランソワ−ズ! きみは誰に操られているんだ! 」

 

  パ −−−− !

 

ジョ−は仕方なく応戦した。 しかしどんな状態であれ、彼女を撃つことなどできるわけはない。

取り合えず、足元を狙うのだが・・・

「 あら、どうしたの? わたくしを見縊っているのかしら。 それなら・・・! 

 

 バババ −−−−!!

 

フランソワ−ズの攻撃は容赦なく的確にジョ−を狙っている。

「 くっ ・・・・ ! う ・・・ ゥゥゥ ・・・ 

かわせるとおもっていた一撃が ジョ−の肩先を掠めた。

「 ふん。 次は避けさせないわ! 

 

「 フレイヤ・・・  」

「 はい、オ−ディン様・・・・ 」

二人の頭上に 白髭を流した老人の姿が現れた。

「 なにを愚図愚図しているのか。  闘いの女神が サイボ−グごときを相手に手古摺るとは。 」

「 申し訳ありません、 すぐに ・・・! 」

「 ふん。 あまりに遅いのであれば神々の名にそぐわない。 不適格としてそなたを処分する。 」

「 ・・・ お許しを・・! オ−ディンさま 」

「 その翼にかけても ソヤツを仕留めるのじゃ。 」

「 はい! 」

ふわり・・と白い翼がはためき彼女の姿が 中空に浮いた。

「 ・・・ 覚悟 ! 」

「 フラン、フランソワ−ズ! 眼を覚ませてくれ。  ぼくを 撃っていいから・・・! 」

 

   バ −−−− !

 

「 くぅ ! フラン ・・・ ソワズ ・・・! 」

彼女の発する光線が ジョ−の右肩を打ち抜いた。

 

< ジョ−! 009! 無事か!? >

突然ジョ−のアタマの中に仲間の声が飛び込んできた。

< ・・・ アルベルト ・・・? >

< この村のモンスタ−どもは みんなサイボ−グだぞ。 >

< な、なんだって・・・?! >

< 倒したヤツを調べたんだ。 でもロボットに近いね、命令どおりに動くだけのようだよ。 >

< ふん、どうやらな、オーディンと名乗るやつが総元締めらしい。 >

< オ−ディン? ソイツが全ての元凶なのか・・・ >

< ジョ−? どうかしたのかい。 こっちはなんとかカタがついた。

  例の <とねりこ> がヤツらの基地らしいよ。 今から叩きにゆく! >

< ・・・ ピュンマ ・・・ 頼む ・・・ >

 

 

ジョ−は肩をおさえ、地面を転げて <フレイヤ> の攻撃をかわし続けた。

「 さあ、次はどこを狙おうかしら? 」

白い頬に 冷ややかな笑みすら浮かべ、フランソワ−ズはジョ−を睨みすえる。

「 フラン! フランソワ-ズ・・・ その翼を ・・・ 」

ジョ−は両手でス−パ−ガンを握り彼女の翼を狙うのだが 右肩の損傷の影響で銃口がブレてしまう。

「 ほほほ・・・ どこに撃っているの? では 次は左ね、一発で済ませてあげる。 」

「 フ ・・・ フランソワ・・・・ズ ・・・  あ ・・・!! 」

 

 

   ド −−−− ン −−−− !!!

 

 

突然 大地を揺るがし豪雨をも震わせて大音響が伝わってきた。

「 な・・・ なんだ?? 」 

一瞬、ジョ−もフレイヤも そして オ-ディンも動きを止めた。

< 009! やったぜえ! こっちは上首尾だ! でっけえの、やったぜ! >

< おい、009? わかったぞ! あの巨木、丘の上のとねりこが基地だ。 

 神だのなんだの、全部 オ−ディンとやらのでっちあげだ。 ただの機械仕掛けだぞ! >

< ジョ−? 僕達で完全にこっちを叩く。 君はフランソワ−ズを守れ! >

仲間達の 声 が一斉にジョ−のアタマの中に響いてきた。

 

「 ・・・ オ−ライ。 よぉし。 この身をかけてフランソワ−ズを護るぞ・・・! 」

ジョ−は右肩をきつくマフラ−で縛ると ニ・・・ッと笑った。

「 オ−ディン !  ・・・ 覚悟しろよ。 」

「 う、う〜む・・・! 」 

オ−ディンは白髭を揺らし 手にした杖で攻撃を仕掛けてきた。

「 し、死ね! ワシの邪魔をするものは 全て死ぬのだーーーー! 

 くくくく ・・・・ その女も道連れにしてやる! 

 

   バシュ −−−− !

 

杖から発したレ−ザ−は 真っ直ぐにフレイヤを狙っていた。

「 くそッ ・・・ ! 」

瞬間、ジョ−の姿は消えた。 そして。

 

「 きゃあ  −−−− ! 」

 

一瞬の後、 フレイヤは悲鳴を上げて倒れた。 そして同時に 

・・・・ バサ ・・・・ 

彼女の背から白い翼が 力なく落ちた。  

 ―  その下には。

赤い服をぼろぼろにした青年が 打ち伏していた。

「 ・・・・ フラン ・・・ ソワ− ・・・ ズ ! フラン  ・・・・ くそっ!! 」

 

  バシュ −−− !

 

ジョ−は両手でス−パ−ガンを握ると渾身の力をこめてトリガ−を引いた。

「 ・・・・ グ ・・・ ゥ ・・・・ !! 」

くぐもった呻き声をもらし、老人が崩折れた。

「 フランソワ−ズ ・・・ フラン ・・・!? 」

ス−パ−ガンも放り出し、ジョ−は眼の前に倒れている愛しい女性 ( ひと ) ににじり寄る。

「 ・・・ フラン ・・・ フラン・・・ ぼくだ、ジョ− ・・・・だ・・・ 」

「 ・・・ う ・・・・ 」

<フレイヤ> は ぼんやりと瞳を開いた。

「 ぼくだよ、 ジョ− だ ・・・ ぼくの フランソワ−ズ・・・! 」

「 ・・・・・・ 」

ジョ−は力を振り絞り、彼女を抱くと全身全霊をこめて その唇に熱く口付けをした。

 

「 ・・・・! ・・・・ ジョ ・・・ − ・・・? 」

「 ・・・ フランソワ−ズ!! 」

穏やかな光を湛えた青い瞳が しっかりとジョ−を見つめた。

「 ジョ− ・・・ わたし・・・・? 」

「 フラン! ああ、フランソワ−ズ・・・! 愛しているよッ !! 」

「 あ・・・ ジョ− ・・・きゃ ・・・ 」

ジョ−はもう一度 きゅううう・・・・っと彼の恋人抱き締めた。

 

「 おお〜〜い ! 大丈夫か〜 」

「 <とねりこ> は完全に爆破したぞ〜〜 」

 

仲間達の声が近づいてきた。

どうやら 雷鳴は豪雨とともに通りすぎたようだ。

 

 

 

 

 

「 ジョ− ・・・ 大丈夫? 」

「 うん。 これしき、なんともないよ。 それよりきみ、もう頭痛はいいのかい。 」

ジョ−はジェロニモに支えてもらいつつ ゆっくりと振り返った。

昨夜の雨は きれいさっぱりと上がった。

村一帯を覆っていた霧は晴れたが上空の雲は重く 空気はしんしんと冷えてきている。

サイボ−グ達は ゆっくりとやどり木の村を後にした。

「 ええ。 もうミツバチの羽音は聞こえないわ。 きっと <とねりこ> の中の機械音だったのね。 」

「 多分な。 どうしても外に漏れてしまったのだろうね。 」

「 ジョ−・・・ 本当に大丈夫? ここではほんの応急手当しかできなくて・・・ 」

「 うん、平気さ。 きみこそ・・・・その・・・ 背中、痛くないかい。 」

「 背中? いいえ、どうして。 

「 いや ・・・ さっきひどく爆風に飛ばされていたから心配になって ・・・ 」

「 わたしは大丈夫よ。 ジョ−がしっかり庇ってくれたから。

 それにしても・・・・ あなたをこんなに追い詰めて相手はどうしたのかしら。 」

「 うん・・・ アイツ、あのオ−ディンと一緒に 巨木の爆発に巻き込まれたよ。 」

「 ・・・ そう ・・・ 」

 

< おい! いいのかよ? お前をしこたまやっつけたのはフラン本人じゃん! >

< あの射撃は ・・・ 凄かったね。 僕、感心しちゃったんだ〜 >

< お主よりも数段 腕は達者だな。 >

彼を中心に 周りを歩む仲間達から次々に横槍が入ってきた。

< し! 絶対に言うなよ! 言ったら〜〜>

< わ、わかってるって! しかしよ・・・ 彼女の腕にはマジ、かなわねぇな >

< それはぼくが一番身にしみたよ。 正直、もうだめだと思ったもの。 >

< ははは・・・ お前、完全に尻に敷かれるぜ!>

< し、しィ 〜〜〜 ! >

 

「 ジョ−? 大丈夫・・・・? あ、話すの、つらいかしら。 

青い瞳が心配そうにジョ−を覗き込む。

フランソワ−ズは音声会話から離れていたジョ−を 気分が悪いのでは、と気にしているのだ。

 

  ・・・ ごめん! でもホントのことを言ったらきみはもっと落ち込むだろ・・・

 

ジョ−はこころの中で精一杯あやまった。

「 オーディンって。 なんだったのかしらね・・・ 」

「 うん  ・・・ 邪なこころは いつでも何処にでも・・・ 絶えることがないな・・・ 」

「 ・・・・ もっと ・・・ あの知識を皆の幸せのために使えば どんなにか ・・・ 」

「 ・・・・・・・・・ 」

フランソワ−ズのつぶやきに 仲間たちはみな 黙って頷いた。

「 さあ。 帰ろう。 ・・・ 俺達の 家へ ・・・ 」

 

「 こんなに ・・・ こんなに綺麗な自然の中なのに ・・・ 

フランソワ−ズは歩みを止め、来た道を振り返った。

小高い丘陵から ひろく緑の大地が見渡せる。

村外れにあった巨木は跡形もなく吹っ飛んでしまったが、村そのものの佇まいは変わりがない。

冷たい風が 住むひとの絶えた村を吹き抜けてゆく。

 

「 わたし達・・・ ただ・・・・ <面白いコト> をみつけに来ただけだったのに・・・ 」

ぽと・・・

フランソワ−ズの足許に 涙が一滴おちた。

 

  ・・・ ありがとう ・・・

 

「 ・・・ え? 

 

  ありがとう、あなた。 ヨコシマな心を砕いてくれて・・・

 

細い澄んだ声がフランソワ−ズに囁きかける。

「 誰?? ・・・どこから語りかけているの? 」

 

  ここよ。 あなたの、ほら、すぐそば。

 

「 ??? ・・・・ あ? 」

 

  みゅう ・・・。

 

真っ白な仔猫が フランソワ−ズの足元より少し離れて座っていた。

 

  私、フレイヤ夫婦の<子供>になってずっと側にいました。

  私たちのことを 

  おろかなニンゲンの欲望の手段に 使われたくなかったのです・・・

 

「 ・・・え?! あなたは・・・? 」

 

  ありがとう。 わたしは 愛と美と ・・・ 闘いの女神・フレイヤ・・・

 

「 あ・・・ 」

ざ・・・っと一陣の風が吹きつけた。 

風が収まったとき 道端には、いや、どこにも仔猫の姿はみえなかった。

 

  ・・・ フレイヤ ・・・ 本当の ・・・ フレイヤ・・・??

 

 

雪が ・・・ 降り始めた。

ひとひら ひとひら   醜いものを浄め 哀しみを癒し すべてを白く塗りつぶしてゆく

その年、はじめての雪がしずかにしずかに大地に舞い落ちてくる。   

 

   はつゆき ・・・ そう、ね・・・

 

フランソワ−ズは ひっそりと仲間達の後を追った。

 

 

 

 

 

 

*******   ♪♪♪ おまけ ♪♪♪ ********

 

その日 ギルモア博士の機嫌はすこぶる悪かった。

北欧旅行からサイボ−グ達が戻ってきたのだが・・・

「 お前逹休暇に  面白いコト  を探しに行ったのではなかったのかね!

 揃いも揃ってこんなにボロボロになってきおって! 」

「 痛て! 博士 〜〜〜 あの、もうちょっとお手柔らかに・・・ 」

グレ−トが腰をさすり渋面している。

「 ふん・・・! だったら怪我なんぞしてくるな! 

 特にジョー! アイツは完全にリカバーするまで外出禁止じゃぞ! 」

「 博士、大丈夫ですよ。 フランソワ−ズがしっかり看てますから。 」

「 ・・・うむ。 しかしなあ・・・ フランソワ−ズの射撃の腕は凄いのぉ

 ジョ−の急所スレスレに攻撃しておる。 」

「 シ・・・・ッ! そのコトは本人にはナイショなんですぜ。 」

「 おお、いかんいかん・・・  しかし撃たれたのが右でよかったわい。 」

博士はふか〜い溜息を吐いた。

「 いやあ。 ジョ−のヤツは左胸も撃たれてますさ。 それもど真ん中! 」

「 なに!?  また撃たれたのか?? 」

「 博士。 奴はとっくにマドモアゼルに撃ち抜かれてますぜ、 彼の ハ−ト をね♪ 」

 

 

 

 

*****************     Fin     ****************

 

Last updated :  06,24,2008.                    back           /         index

 

 

********  ひと言  ********

ふは〜〜〜★  やっと終わりました・・・

原作よりか随分とあっさりした <背景> になってしまいました。

新ゼロは 謎〜〜? で終っているし・・・ 事件モノとしては全然未消化で申し訳ありません<(_ _)>

よ〜するに♪ 二人はいつだってらぶらぶ♪ なんだよ〜〜ん(^_^;)  ってコトと

ジョ−君を攻撃する? 強い・かっこいい・フランちゃんが書きたかったのでした♪

はい、このオハナシのラストの後でも、 二人はいちゃいちゃ・らぶらぶやっていることでしょう。

ま、こ〜んなのもアリかなあ〜〜って 寛大にお目こぼしくださいませ。

あ、猫のことですが、にゃんこはフレイヤのお気に入りの動物で

な〜んと! <愛と多産の象徴> なんですって! へえ〜〜〜 (#^.^#)