『 Darling
― (1) ― 』
ぱた ぱた ぱた ぱた ・・・・
金髪を振り乱し ― 都心の大通りを走る乙女がひとり。
でっかいバッグを抱え もうかなり必死の形相だ。
「 うわ〜〜〜〜 遅刻 遅刻〜〜〜〜 」
あまりの必死さに 行き合う人々はそっと道を空けてくれた。
「 す すいません〜〜〜 」
彼女はちゃんとアタマを下げると 二つ目の角を曲がり ― さらにスピードを
上げた。
「 ううう かそくそ〜〜ち! って できたらいいのにィ〜〜〜〜
ああ 博士 ! なんで わたしにも加速装置 搭載してくれなかったのぉ〜〜 」
ぱた ぱた ぱた・・!
裏通りの中ほど、瀟洒なアイアン・レースの門を開け 階段を駆け下り
「 お おはよう〜〜〜 ございます 〜〜〜〜 」
彼女は建物の中に飛び込んだ。
「 お早うございます〜〜 フランソワーズさん、 急げ〜〜 」
「 は はい〜〜〜 」
入口横の事務室の中から笑い声が飛んできた。
それを後ろに聞きつつ 彼女はそのまま廊下を駆けてゆく。
「 おはよ〜〜 ございますう〜〜〜 」
突きあたりのドアを開け 靴を脱ぎ飛ばし〜〜 室内へ駆け上がる。
「 おはよ〜〜 ああ もうそんな時間? 」
「 おはよ〜 わ 急がなくちゃね〜〜 」
鏡に向かって髪を結ったり ちょいと針仕事などをしていた女性たちが
一斉に 立ちあがる。
フランソワーズが来たら クラス始まる5分前
・・・ が このバレエ団の < 時計代わり > になっている。
もちろんご本人はぜ〜〜んぜん知らない、というか気が付く余裕もない。
「 わ〜〜〜 えっと ゴムとピン??? あれれ?? アタマ・せっと
どこに入れてかな〜〜〜 」
フランソワーズは 床に大きなバックの中身を広げあたふたしている。
「 フランソワーズ きたのぉ??? 」
入口から 丸顔の女性がひょい、と顔を覗かせた。
「 あ みちよ おはよ〜〜 アタマ・セット・・・どこにいれたっけ?? 」
「 やだ〜〜〜 はやく着替えなよ? え なに? 」
「 あたま セット〜〜 入れたはずなんだけどぉ〜〜 」
金髪の女性はもう半ベソで まだバッグを掻き回している。
「 アタマ・セット? ・・・ ほら〜〜 これつかって 」
丸顔は つかつか入ってくると 棚に置いたバッグから小さなポーチを取りだした。
「 ゴムとピン、 バレッタも入ってるよ 」
「 え いいの?? ありがと〜〜〜 みちよ〜〜〜 」
「 いいから 早く着替えな? マダム もう来るよ 」
「 う うん ・・・ 」
かそくそ〜〜ち・・・!
金髪さんは口の中でこっそりもう一度、唱えると猛然と着替え始めた。
ぱたぱた ・・・ ぱたん。
「 はあ ・・・ なんとか 間に合ったぁ〜〜〜 」
最後に ― ピアニストさんより後に フランソワーズはスタジオに滑り込んだ。
「 あは 間に合ったね 」
「 ううう なんとか ・・・
」
「 どしたの 寝坊? 」
「 ・・・ ううん。 すばるがね 牛乳のコップ、ひっくり返して ・・・
その始末してて 〜〜 放っておいたら臭くなっちゃうでしょ 」
「 あ は〜〜 おかあさん は大変だねえ 」
「 も〜〜〜 出かける間際って必ずナンカ あるのよねえ 」
「 まあ はやくポアント 履きなよ 」
「 う うん ・・・ あ〜〜ん こんな時に限ってはいらない〜 」
どんどん がんがん ばんっ!!
すみっこで半分血相を変えて? ポアントを履いている彼女を スタジオの仲間たちは
慣れた目で眺めていた。
ここは都心にほど近いところにある中堅どころのバレエ・カンパニーのスタジオ。
フランソワーズは 数年前からここに通い今はメンバーの一人になっている。
地獄の日々からなんとか抜け出した時 ― そこには思いがけない日々が待っていた。
003 は 極東の地で フランソワーズ として生きることができた。
そして この地で生まれ育った青年と結ばれなんと双子の子供達まで授かったのだ。
そんな多忙な中 彼女は踊り続けた。 だってそのために生き延びてきたのだから。
ええ もう忙しくてた〜いへん ・・・ !
でもね 大丈夫。 だって レッスンできるんですもの
わたし 踊れるんですもの〜〜〜♪
オクサンになり おかあさんになっても フランソワーズは踊りの世界に身を置いていた。
「 はい お疲れさまね〜 」
「 ありがとうございました 」
ピアノの音が止み ダンサーたちは優雅にレヴェランスをし、拍手でクラスを終えた。
「 ・・・ はあ 〜〜〜 おわったぁ 」
「 ふうう ・・・あ〜〜〜 あ 」
フランソワーズはスタジオの隅っこに ぽすん、と腰を落とし大きくため息をついた。
仲良しのみちよは タオルをぽ〜〜んと宙に放った。
「 あああ・・・ ポアント、潰れたかも〜〜 めんど〜くさいよ〜〜う 」
「 うふふ・・・ そうねえ わたしもそろそろアウトかな
今晩 リボンつけだわあ 」
「 ミシンでさあ まとめてだだだ・・ってやったことあんだけど
糸の始末とかでかえって面倒だった〜 」
「 そっか ・・・ そうよねえ ・・・ やっぱ 地味〜〜に糸・針でって
ことなのねえ 」
「 う〜〜〜〜 めんどくさ〜〜〜 」
「 まあ 仕方ないわよ 」
「 あ〜あ・・・ あれ? 」
「 なあに? 」
「 ほら ・・・ 」
「 ? あ ・・・ 」
スタジオの入口から 今さっき出ていった主宰者のマダムがこちらにむかって
手招きをしている。
「 フランソワーズ、 呼ばれてるよ? 」
「 え ・・・ あ みちよも って 」
「 え〜〜〜 聞こえるのぉ?? 」
「 あ ・・・ ううん あの〜〜 ほら口の動きってか 」
まさか < 聞こえた > などとはいえない。
003の耳 を使わなくても、彼女は通常の聴覚もかなりアップされている。
つぶやき声だって聞きわけることができる。
「 へ〜〜 すごい特技だね〜 フランソワーズ 」
「 ね 早く行きましょ 」
「 あ そだね なんだろ? 」
二人はばたばた・・・出入り口まで駆けていった。
マダムのハナシは ―
「 今度の公演ね マチネ だけど 『 ジゼル 』 の芯 やって 」
「 え ・・・? 誰が ですか 」
「 ?? あなたですよ フランソワーズ 」
「 へ?? 」
「 へ じゃないわよ あなたなら どう踊るかしら 楽しみだわ 」
「 は ・・・ い・・・・? 」
「 そしてね みちよ。 あなた ソワレで ペザント やって。 」
「 え そ ソワレで ?? 」
「 そう。 覚悟きめて挑戦しなさい。 いい 二人とも 」
「「 は は はい ・・・ 」」
じゃあね とマダムはウィンクをひとつ残し、私室へ引き上げていった。
「 ・・・・・ 」
「 ・・・・・ 」
金髪と黒髪の凸凹コンビは しばらく固まったままだった。
「 ・・・ あ あの 今 さ マダムが さ 」
みちよが 絞りだすみたいに声をだす。
「 え? あ ええ そう ねえ 」
「 アタシ ・・・ ソワレ ( 夜公演 ) で ペザント って 」
フランソワーズが ふわふわした声でつぶやく。
「 マチネ ( 昼公演 ) で しん って つまり まんなか ? 」
うっそ〜〜〜〜〜〜〜 ・・・ !!
・・・ スタジオには もう誰も残っていなかったのが幸いというところ。
二人の絶叫? が響いた。
「 スケジュール もらった? 」
「 え ええ・・・ 音は ・・・ 」
「 明日 事務所でって。 あ パリ・オぺ版だから フランソワーズは
踊ったこと あるんじゃない? 」
「 ううん ううん! 向うで 『 ジゼル 』全幕 踊ってたら
わたし、今 ここにいないと思う・・・ 」
「 あ は そうだよねえ 」
「 みちよ、 ペザントは得意じゃない。 」
「 好きだよ? けど ・・・ 本公演のソワレで なんて初めてだもん〜〜 」
「 そう よねえ ・・・ 」
「 フランソワーズだって スクール・パフォ で 『 ジゼル 』 の芯、やったじゃん 」
「 ・・・ 今度は 本公演 よ? 」
「 だ ね ・・・ 」
「 が がんばるっきゃない か ・・・ 」
「 みちよ パートナーは ? 」
「 う〜〜ん 多分 ふかやクンかな〜 」
「 あ 彼、 最近活躍ですものね みちよとも何回か組んでるし 」
「 でも ・・・ 彼も真剣勝負だよ フランソワーズは? 」
「 うん・・・誰かしら。 」
「 タクヤくんかな〜 」
「 あ〜〜 彼、ギリで帰国のはずだから 多分無理だと思うわ 」
「 そっか〜〜 」
はあ 〜〜〜〜〜 ・・・
二人はでっか〜〜い 溜息 ― 嬉しいんだか怖いんだかよくわからない溜息をつき
ちょっとばかりよれよれしつつ 帰り道を歩いていった。
「 アタシ これからバイト ・・・ あ フランソワーズはこれから教え? 」
「 ううん 今日はわたしじゃないの。 でもチビたちが早く帰ってくるから・・ 」
「 あは いそがしいね〜 」
「 みちよもでしょ。 ね〜〜 またお茶しましょ 」
「 うん!!! じゃ ね〜〜 」
バイバイ ・・・ 手を振って二人は駅で別れた。
ガタン ・・・ ゴトン ・・・
午後の下り電車、乗客も多くなくのんびりとした雰囲気だ。
フランソワーズはメトロから乗り換えると 隅に空席をみつけることができた。
「 うふ やった〜〜〜 帰ったら大忙しだから助かるわあ〜〜〜 」
でっかいバッグを抱えて ほっこり・・・
「 『 ジゼル 』 かあ ・・・ パ・ド・ドゥ は何回かやったわね〜
タクヤとも何回か踊ったわねえ。 ・・・ むかし 全幕の練習、
してたっけ ・・・ あの頃のとは振りもちょっと違うけど。
でも ・・・ 『 ジゼル 』 ・・・ 踊れるのね! わたし ・・・ 」
はあ ・・・ 今度はちょっと切ないけどうれしいため息だ。
「 ジゼル 好きなのよね。 そりゃずっと憧れてたけど ・・・
でも 一幕も二幕も全部好き! コールドだって大喜びだったわ。
それを・・・ 全幕踊れるなんて・・・ !
ああ ああ ・・・ バレエ やめなくてよかった ・・・ 」
ハナの奥がちょっぴり つ〜〜ん としてきた。
「 うふ ・・・ 神様 感謝します・・・ ! 」
こそ・・っと十字を切ったりもした。
あなたなら どう踊るかしら。 楽しみだわ
不意にマダムの一言が心の中から聞こえてきた。
― え わたし なら??
う〜〜ん ・・・ 彼女は昼の電車の中で考えこむ。
「 前半は 恋する乙女 ですものね。 うふふ ・・・ それは得意かも♪
うふふ〜〜 わたしのカレシは 〜〜〜 とっても素敵なの
世界一よ〜〜〜 うふふ 世界一の夫で世界一の父親なの。
それにね〜〜 最高に強いって・・・ こんなカレシをもってる女って
わたしだけよね〜〜〜 うふふふ・・・
ねえ ジゼル? あなたの恋人よりも わたしのカレシの方が素敵よ?
え? 貴族じゃないって? ええ そうよ、ウチはたしかに裕福じゃないわ
でも! 家族が一緒に楽しく暮らしているんですもの、最高に幸せなの。」
にこにこ・・・を通り越し にやにや〜 なにやら一人お惚気状態 ―
・・・・ま どうぞお幸せに・・・という雰囲気。
「 後半 ・・・ 問題は後半だわ ・・・
わたしなら。 わたし ― アルブレヒトのこと 許せるかしら
裏切った恋人を ・・・ 心から許せる かなあ ・・・ 」
『 ジゼル 』 には多くの見せ場がある。 テクニック的にも
そして 表現の面でも。
特に 二幕。
本気で恋したヒトは 身分を偽り彼女をも裏切っていた。 彼にはフィアンセがいた。
ジゼルは心労と落胆のために ・・・ 死んでしまったのだ。
恋する乙女 は その恋を成就することもできずにこの世を去った。
そして ウィリとなり夜の墓場で踊り狂う。
そんな中 傷心の様子で墓にやってきたカレシを ― 許すことが いや
身を挺して護り、許し そして どうぞ 力強く生きて と 言えるだろうか。
う〜〜〜ん ・・・??
今までにこにこ〜〜シアワセ状態だった金髪女性は 突如ムズカシイ顔となった。
「 ジョーが 裏切ったら。 ・・・ そんな事 あるわけないけど。
でも もしも ・・・ 他の女性 ( ひと ) がいたら ・・・ 」
う〜〜〜ん ・・・
○○〜〜〜〜 まもなく ドア 閉まります〜〜
でっかい車内アナウンスが いきなり耳に入ってきた。
「 わ!!? いっけない〜〜〜 」
彼女は大きなバッグを抱えこみ あたふた〜〜〜 電車から駆けだした。
「 ふう ・・・・ 下りられた・・・ 」
ぽすん。 ホームで思わずバッグを足元に落としてしまった。
「 はあ・・・ ぼんやりしちゃった・・・・
あ! いっけない〜〜〜 今日は チビたち 学童クラブから早く帰ってくるのよね
オヤツの用意! と 今晩は・・・っと 」
ぎゅっとバッグを持ち直すと フランソワーズはしっかり主婦の顔になった。
「 え〜と・・・ あ 今日はお野菜特売の日よね〜〜
さあ 海岸通り商店街に急がなくちゃ。 そろそろアスパラが出るかしら。
あ あと ジョーの好きなエダマメ、いっぱい茹でておきたいのね〜〜 」
たたたた。 今までも ぽや〜〜〜ん・・・とした表情はどこへやら・・
彼女は 荷物を抱えきびきびした足取りで駅前ロータリーを抜けバス停へと急いだ。
「 ち〜ふ〜〜 お先にシツレイしま〜す〜〜〜 」
ポニーテイルの女性が 戸口でにっこりしている。
「 あ〜 アサダさん お疲れ〜〜〜 」
「 シマムラちーふもお疲れサマでぇ〜〜す 」
「 はいはい ・・・・ 」
シマムラ氏も チラっと にっこり を返しつつひらひら手を振った ―
もっとも視線と関心はすぐに目の前のモニター画面に集中したけれど。
ここは都心のとある雑居ビルにあるオフィス・・・・
とある出版社の雑誌部の編集部が入っている。
定時はとうにすぎて若手の部員達は帰宅済み、今は編集部長以下
中間管理職たちがせっせと仕事を続けている。
「 島ちゃ〜〜ん もうあがったら? 昨日も遅かったでしょ? 」
課長席から中年の女性が 声をかけてきた。
「 アンドウ課長 ・・・ あともう少しですから 」
「 だめだめ。 たまには早く帰ってオクサンやあの可愛いチビちゃんズと
ほんわかしなよ 」
「 あ は ・・・ 」
「 あ〜〜 今から帰ってもチビちゃんズはもうおねむ〜〜かな 」
「 いいんです、休日にはたっぷり相手してますから 」
「 いやいや 今日はこれまでだ。 アンドウ課長もゴ帰宅だよ 」
「「 あ スズキ部長 〜〜 」」
奥の個室のドアが開き のっそり熊さん ― いや 恰幅のいい男性が顔を出した。
「 ま〜 まだ前半だからね、 たまには早仕舞しよう 」
「 そ〜しますか 島ちゃん、先に帰りなよ。 あたしが戸締りしとくから 」
「 あ〜〜 すんません、それじゃお言葉にあまえて・・・ 」
シマムラち〜ふ は デスク前から立ち上がり、ぺこんとアタマを下げた。
「「 おつかれ〜〜〜 島ちゃん 」」
部長と課長の声に送られ シマムラ氏は編集部を出た。
は ・・・ あ ・・・ まだこんな時間なんだ?
彼はう〜〜ん! と伸びをすると駅までの夜道を軽い足取りで歩いていった。
ほんのバイト・・・ のつもりで入った雑誌編集部だった。 が。
ジョーはいつの間にか どっぷりとこの世界に浸っていた。
見習いのバイトから正社員へ そして今は編集チーム2 の チーフを務める。
若い部員たちを纏め 編集部の舵取りの一部を担っている。
あは ・・・ もしかして。 これって 天職かも な・・・
島村ジョーは 今やノリノリ〜〜な編集人となり活き活きと仕事をしている。
そして 心から愛する女性 ( ひと ) とやっと結婚し 可愛いカワイイ
コドモ達を授かることができた。
愛する家族を持った時 ― 島村ジョーは 正真正銘、強くなった。
009 としてではない。
ニンゲン・島村ジョー として 彼は最強無比の存在となったのだ。
ふふふ〜〜〜 チビたち、もうネンネしてるだろうなあ〜
寝顔でもいいんだ、ゆ〜〜〜っくり眺めよっと♪
フラン〜〜〜 たまには一緒にゆっくり晩御飯 たべようよ?
きみとゆっくり〜〜 おしゃべりしたいよ・・・
チビたちの毎日のこと いろいろ話してほしいな
世の男性陣とはちょっとばかり違い、ジョーは家庭的な雑事をなによりも
楽しみにしている。
愛されることを渇望し 愛されなかった過去に傷ついていた彼は
愛する存在を得たとき ― 目が開いた。
― 愛されることだけが 全てではないのだ。
ぼくが みんなを護る。
家族を愛することが ぼくの生きがいなんだ。
家族のためなら ― ぼくはなんだってやる。 鬼にも蛇にもなれる!
さあ〜〜〜 はやく か え ろっと♪
ふんふんふ〜〜〜ん♪ こそっとハナウタなんか歌いつつ 彼はご機嫌ちゃんで家路を辿った。
― この時期に GBが鳴りを潜めていたのはまことに賢明なことだろう。
009は最強モードに突入していたし 003に至ってはまさの < 子連れのメスには
要注意 > の時期だったから ・・・・
カチン。 すぴかの茶碗を静かに食器棚にしまった。
「 ふう ・・・ すっかり片付いたわね〜〜 今夜はチビ達もちゃんとねんねしたし・・
あ 博士に熱いお茶をお持ちしておこうかしら
」
フランソワーズはキッチンで ほ・・・・っと息を吐く。
「 やれやれ 今日も無事に終わったわね〜〜 あ〜 わたしも熱いお茶、飲みたいな
そうそう・・新茶を頂いたんだっけ。 オイシイの、淹れましょ 」
彼女はいそいそ湯呑み茶碗を並べ始めた。
コトン。 キッチンのドアが開いた。
「 ・・・ すまんが お茶を一杯 ・・・ 」
「 あら 博士。 今 お持ちしようと思ってましたの。 新茶、淹れてます。 」
「 お〜〜それはいいな ・・・ おお いい香りだなあ 」
「 ほんとう ・・・ はい どうぞ。 ・・・ ん〜〜〜 美味しい・・・ ! 」
「 ・・・ うむ うむ ・・ ・ふう〜 チビさん達は眠ったかな? 」
「 ええ すぴかはもうベッドに入れば パタン ですから。
すばるも 今晩はお話ひとつだけで眠りました。
」
「 それはよかった ・・・ 時にジョーは今夜も遅いのかね 」
「 あ もうすぐ着く・・・って。 さっきメールが 」
「 おお おお よかったのう。 たまには二人でゆっくりできんとなあ ・・・
どれ・・・ チビさん達の寝顔を眺めてくるよ。 お休み、フランソワーズ。 」
「 お休みなさい 博士。 」
・・・ 博士は静かに二階へ上がっていった。
ふう ・・・ 静かな夜 ね・・・
キッチンのスツールに腰を下ろし 彼女はしばらく静けさを楽しんでいた。
ふと。 『 ジゼル 』 のことがアタマに浮かんだ。
「 ― 心から愛したヒトに 裏切られたら ・・・ どうする、フランソワーズ 」
両手に顎を預け 彼女の心は『 ジゼル 』 の世界に飛んでゆく。
― しばらくして。 ぴんぽ〜〜〜ん 玄関のチャイムが鳴った。
ご機嫌ちゃんで帰宅した島村氏を出迎えたのは ― 涙目の怒り顔の細君だった。
「 ― ジョー !! どうして !?!?? 」
「 ただい ・・・ は あ ???? 」
Last updated : 05,23,2017.
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*************** 途中ですが
お馴染み 【 島村さんち 】 シリーズですが
双子ちゃん達は ほとんど登場しない かも・・・
フランお母さんの 職業話?