『 時の過ぎ行くままに ― As time goes by ― (1) 』
『 珈琲滞夢 』 ― そんな名前のカフェがいつからか静かに人気を集めていた。
この地域は温暖な気候で 人々はのんびりと暮らし穏やかな顔で行き来している。
最寄の駅はローカル線で急行は止まらず、地元には大きな工業地帯も学園都市もなく
鄙びた様相だ。 半農半漁 ・・・ 一昔前にはそんな風に言われた地域らしい。
古くから住んでいる住民がほとんどだが、のんびりした環境を好み移り住む人々も
最近はぽつぽつ増えてきているようだ。
少しは賑やかな駅前広場から一筋離れた場所に その店はあった。
見かけはごく地味 ・・・ というより素人っぽい造りで 注意していなければ気づかずに
通り過ぎてしまうかもしれない。
そんな時 ふ・・・っと脚を止めることがあるとすれば ― それは芳しいコーヒーの香り
あれ こんな所にカフェがあるのか ・・・・
気をひかれ旧い木製のドアを押した客が多い。
― そして多くは 店の常連さんになっていった。
その日は からりと晴れた上天気、人も街もなんとなくうきうきしていた。
海が近いので 空気までも陽気に踊っていたのかもしれない。
ふうん ・・・ 少し歩いてみるか ・・・
ローカル線の駅を出て、駅前ロータリーにたったとき、 アルベルトは何気なく方向を変えた。
いつもなら ロータリーの端で迎えの車を待つか時には循環バスに乗ったりするのだが・・
「 ・・・ ああ かまわんよ。 こっちは特に急ぐこともないからな。
のんびりバスで行く。 ・・・ 気にするな。 ああ ああ じゃ・・・ 」
駅舎を出る前に 迎えに行けない、との連絡を受けていたので、今回はバスで行くか・・・
と思っていた。
しかし ― この町の明るい陽射しに誘われたのかもしれない。
彼は 小さな鞄を持ち直すとのんびりと歩きはじめた。
あまりこの辺りは詳しくないが ・・・ なかなかいい雰囲気じゃないか・・・
内陸の街に暮す身、海に近い雰囲気はなんとなくもの珍しく、辺りを眺めてみる。
今回は急ぎのメンテナンスでもなく、ちょっとした休暇のつもりでやってきた。
岬の突端の洋館 ― ギルモア邸には仲間と <姪っこ と 甥っこ> が住んでいるのだ。
彼らと過すのは やはり楽しい。 時にはこんな訪問もいいものだ。
アルベルトは なんとなく軽い足取りで歩いていた。 そして ― ふわり ・・・
「 ・・・ ん ・・・? お ・・・ いい香りだな。 コーヒー店でも あるのか? 」
珈琲滞夢 ・・・ こーひーたいむ
木製の看板が 目に入った。
「 ふうん? ・・・チェーン店じゃねえのか。 今時珍しいな・・・ この国では・・・
ちょっと 寄ってみるか 」
古びた、でもしっかりと磨きこまれた木製のドアを押してみた。
カランン ン −−−−−− ・・・・
「 ・・・ いらっしゃい ・・・ 」
ほどほどの明るさの中から ドアベルと一緒にのんびりした声が聞こえてきた。
観葉植物が 程よく置かれ気持ちのよい影を醸し出している。
カウンター席の他にもいくつかテーブルがあり 店の奥にはアップライトのピアノが見えた。
客はちらほら店内に散っていて それぞれ静かにコーヒーを楽しんでいる。
本やタブレットを置いたりする人がほとんどで 話し声は低く少なめだった。
ふん ・・・ 静かな雰囲気を楽しむ店 ってことか ・・・ 悪くないな
「 ・・・・・・・ 」
「 どうぞ お好きな席に ・・・ 」
マスターとおぼしき中年の男性が気さくに笑いかける。
「 ありがとう ・・・ 」
彼は店内をみまわし カウンター席を選んだ。
さり気無く メニューが差し出る。
日本語でいいのかな・・・ そんな雰囲気が流れてきたので すぐに答えた。
「 ・・・ あ ・・・ ブレンドをお願いします。 」
「 はい 」
アルベルトが店内の装飾を眺めているうちに よい香りが強くなり目の前にカップが置かれた。
「 ― どうぞ。 本日のブレンドです。 」
「 ・・・・・・・ 」
彼は静かに カップを取り上げた。
― カチリ。
カップが静かにソーサーに戻り小さく音をたてたが すぐに満足の吐息がその音を消した。
「 こんな晴れた日に飲みたい味だな。 」
「 ・・・ 雨の日には合いませんか。 」
「 それはまた別の味じゃないですかね。
今日のこの味は 今日の天気に相応しいと思いました。 美味かった! 」
「 ありがとうございます! 」
マスターは心から嬉しそうに破顔した。
「 今度は雨の日にいらしてください。 雨に合うブレンドをご用意します。 」
「 あは ・・・ そうしたいが ・・・ あまり頻繁にこちらには来ないんでね・・・
まあ今日は晴れの味を堪能してゆきますよ。 」
「 たっぷりどうぞ。 ああ お国はどちらです? 」
「 ― ドイツです。 」
「 そんな気がしていましたよ。 こちらへは・・・ 観光ですか。 」
「 いや 遠縁の者がこっちに住んでいるんで そこへ ・・・ もっともうんと街外れですが。 」
「 ― え ? 」
「 海岸通りのうんとはずれで 岬の方で ・・・ 」
「 あの! もしかしたら。 すばるクンのお家ですか!?? 」
「 ― え?? 」
アルベルトにしては大変珍しいことなのだが 心底驚いてマスターの顔をしげしげと見つめてしまった。
― 数分後。 この新参の客は常連さんとなりマスターは旧知の仲な顔をしていた。
「 いやあ〜〜 ウチの坊主がね、チビの頃からもうあの御宅には入り浸り・・・ってヤツで
もうお世話になりっぱなしなんで・・・ 」
「 < しんゆう > 君のことは すばるからよ〜〜く聞いてますよ。
アイツの手紙には必ず <しんゆう>君とど〜した こ〜した・・・と書いてあるし。
アイツ、末っ子のミソッカスだが しんゆう君 のおかげで助かっているようですな。 」
「 ウチのこそね〜 一人っ子で甘やかしてしまうところでしたけど・・・
あの御宅で兄弟ケンカしたり みっしりお説教されたりして、少しは逞しくなりました。 」
「 ははは ・・・ まあ お互い様ですな。
ところで ずっとココでこの店をやっておられるのですか? すばるの親父から聞いたことがないのですが 」
「 ・・・ いやあ ・・・ 脱サラしてやっと持てた念願の店なんで・・・新米店主です。
まだまだこれから ってとこなんです。 」
「 ほう ・・・ しかしこの雰囲気はいいですな。 ・・・あのピアノは? 」
アルベルトは店の奥に視線を向けた。
そこにはすこし古びた型のアップライト・ピアノが おそらく装飾品としてだろう、置いてある。
手編みのレースがかかり、 年代モノのジュモーがちょこんと座っていた。
「 ああ ・・・ ウチのヤツのなんですが。 とんと弾く機会もないのでここに 」
「 あの。 もしよければ ・・・ 弾いてもいいですか。 」
「 え? ・・・ え ええ どうぞ。 」
「 この店に合ったのを弾きますから ・・・ 」
アルベルトは静かに店を横切り奥まで歩いていった ― そしてゆっくりとピアノの蓋をあけた。
「 ・・・・・・・ 」
〜 ・・・・ 〜〜〜〜〜〜 ・・・・
静かな音色が 低く 密やかに 流れはじめた。
・・・ 始め店の他の客たちは気がつかなかったらしい。
え ・・・? あれ。 ・・・ なに? ピアノ ・・?
怪訝な面持ちで顔をあげ始めた客たちはすぐに ああ ・・・と頷くのだった。
リ ラィリ ラィリ ライ ・・ リ ラィリ ラィリ ライ ・・・
それは 旧い映画で有名になった曲 ・・・ 一緒に口ずさむ年配の客もいた。
静かな音は始まった時と同じに すうっと空気に溶け込み消えていった。
「 ・・・ おさわがせしてすまんです 弾かせてくれてありがとう。 」
席に戻り アルベルトはマスターにアタマを下げた。
「 ・・・ え ・・・ え! い いえいえ〜〜 とんでもない!!
ウチの店にぴったりな演奏をありがとうございました。
ほら 他のお客さんたちも ・・・・ 」
「 ? 」
パチパチパチ ・・・
店内は穏やかな拍手が響いた。
「 ね? いやあ ・・・ いいですなあ〜 ピアニストさんなのですか? 」
「 ・・・を目指していたこともあったが 今はただの趣味ですよ。 」
「 え もったいないですねえ。
あの! こちらにいらした時にはいつでもどうぞ! 」
「 いやいや ・・・ この店は静かにコーヒーを楽しむ処でしょう。 」
「 それはそうですけれど たまには・・・ 音を楽しむのもいいと思いますのでね。
お気が向かれたらいつでもどうぞ。 」
「 ― ありがとう ああ 冷えても美味いな。 」
アルベルトは カップに残ったコーヒーをゆっくりと飲み干した。
・・・ リ ラィリ ラィリ ライ 〜 ♪
マスターは知らず知らずに 先ほどのメロディを口ずさんでいた。
「「 わ〜〜〜 アルベルト伯父様〜〜 いらっしゃ〜い!! 」」
― どうん ・・・!
中学生になり ひょろり、と背が高くなった双子が2人一緒くたに抱きついてきた。
「 お〜っと・・・! こらこら・・・ でっかい図体で飛びつくのは勘弁してくれ・・・」
慌てて受け止めつつ 彼はしかめっ面をしてみせた。
「 俺はもうトシなんだからな! 」
「 きゃ〜〜 うふふふ う ・ そ! 伯父様はいつだって強いもん! 」
「 僕 また背が伸びたんだ! 」
「 そうか〜 さあさあ ちょっと離れてくれよ。
お土産はちゃんとあるぞ〜 すぴかにはチーズ、すばるにはチョコレートだ。
おっと ・・・ これはワイン、お前たちの親父とオフクロさんに渡せ。 」
「「 うわ〜い ありがとう !! 」」
双子はやっと離れた。
「 いらっしゃい アルベルト! お迎えにゆけなくてごめんなさい! 」
「 やあ フラン ・・・ 元気そうだな。 」
銀髪の仲間は フランソワーズと軽く抱擁をかわす。
「 バス ・・・ 来なかったの? 」
「 あ・・・ いや。 ちょいと寄道してきたのさ。 ・・・ いい街だな。 」
「 ふふふ ・・・ 田舎すぎてびっくり、でしょ。 」
「 その田舎を味わいにきたのさ。 ジョーは ? 」
「 あら まだ仕事よ。 最近ねえ、本当に忙しくて ・・・ ああでも今日は早めに帰るはずよ。 」
「 そうか。 あ 博士は 」
「 お部屋に。 顔、みせてあげて? 今回はメンテじゃないのでしょ? 」
「 ああ たまには俺にも骨休め させてくれ。 」
「 うふふふ ・・・ ウチはウルサイからちょっと難しいかもね〜 」
「 ・・・ 俺にとっては雑音じゃないさ。 博士のところに行ってくる。 」
「 お願いね、 楽しみにしていらっしゃるから。 」
「 具合 ・・・ 思わしくないのか。 」
「 お歳だから ・・・ でも今朝は調子よいみたいなの。 楽しい話を聞かせてさしあげて・・・ 」
「 わかった。 これ 土産なんだけど 」
「 あら・・・ パイプタバコね? お好きだから 側に置いておくだけでもいいかも ・・・ 」
「 ・・・・・・・ 」
アルベルトは以前のように 口の片端をねじ上げに・・・っと笑った。
ギルモア博士は寄る年波には抗うことはできず、近年少しづつ弱ってきていた。
頭脳明晰は少しも変わりはないが肉体の衰えは如何ともしがたく、寝たり起きたりの日々だ。
「 おじいちゃま! ねえ すこしお散歩しましょ〜よ! アタシにつかまって! 」
「 碁会所まで送るよ、おじいちゃま。 自転車だけどゆっくり行くからね〜 」
孫たちがなにかと外へ連れ出してはくれているが やはり衰えは避けらない。
ジョー達は遠からずやってくる <その日> への覚悟を決めざるをえない・・・
「 すばる〜〜 ちょっとキッチン、手伝ってちょうだい。 」
フランソワーズはリビングに向かって声をかけた。
「 ・・・ キッチンにいるよ。 」
「 あ? そう・・・ すぴか〜〜 お買い物、お願い! 」
「 リスト、ちょうだい。 自転車 出しとく〜 」
「 あ あら・・・ありがとう。 まあま 2人とも今日は手回しがいいのねえ。 」
丁度やっかいな年頃の子供たち、 母の言いつけには日頃はなにかとぶつぶつ言うのだが・・・
「 アルベルト伯父さん 来てるんだもん。 」
「 そ〜よね〜 すぴかは伯父さんのこと、大好きだもんね。 」
「 うん。 ・・・ おか〜さんみたくきんきんうるさいこと、言わないから。 」
「 もう・・・ このコは! まあいいわ、すぐにリスト書くから ちょっと待ってね。 」
「 おっけ。 はやくね〜 」
「 はいはい・・・ もう〜〜 普段とは大違いだわね!
あ! ・・・ すばる? あのねえ、ジャガイモをね・・・ 」
フランソワーズはパタパタとキッチンに駆け込んだ。
「 ねえ 野菜室にあるジャガイモ 〜 」
「 もう洗ったよ。 これくらいでいいんだろ? 」
シンクの横で 彼女の息子が熱心に包丁を動かしている ― 手元にはジャガイモの山・・・
「 まあ〜〜 ありがとう! 珍しく気が効くわねえ〜 すばる・・・ ふうん〜〜
あら。 ちょっと多すぎない? 」
「 アルベルト伯父さんだよ? 多すぎるってこと、ないさ。
母さんはロースト・ポテト やって。 僕、 スープ、作るから。 」
「 あ・・・そ そう? あのねえ 献立は ・・・ 」
「 このスープはなんにだって合うよ。 それにおじいちゃまも好きだし。 」
「 ・・・ そう? それじゃ ・・・ お願いシマス ・・・ 」
「 ん〜〜 」
カシカシカシ ・・・・ 最近めっきり無口になって扱い難くなった息子が
今日は素直に手伝ってくれている。
もっとも 彼は台所仕事は比較的気軽に手伝ってくれるが・・ 但し ぶっちょう面付き・・・
今のムスコにはかつての いつもにこにこすばるクン の面影はない。
ふう ・・・ ついこの前までわたしのスカートにしがみ付いていたクセに・・・
偉そうな顔、するんじゃないわよ!
すぴかだってね! ランドセル背負ったまま、おかあさん おかあさん・・・って
ぴ〜ぴ〜 <きょうのほうこく> をしていたのに・・!
それに なによ なによ なによ〜〜〜 !
最近は何を聞いても べつに〜 とか ウン ・・・ しか言わないのに!
アルベルトとはペラペラおしゃべりして〜〜
日頃 思春期の息子と娘の連合軍相手に孤軍奮戦している母は か〜なり面白くない。
「 ふん! アルベルトが来たからって 他所行き面するんだから〜〜 」
― どごん! まな板の上で人参がまっぷたつになった。
「 ? ・・・ そんな風に切ると 火が通りにくいよ。 」
「 ・・・ わかりました。 ( ・・・ うるさ〜〜〜い・・・!!! ) じゃがいも、まだ? 」
「 もうとっくに全部剥いたよ。 これはタマネギさ、スープに使う。 メインは何にするつもり? 」
「 え〜と ・・・ ( あら やだ。 この言い方、ジョーにそっくり ・・・ )
冷凍ビーフを解凍して使おうかな〜って思ってるの。 アルベルト、好きでしょ? 」
「 それより 地元の 」
「 おか〜〜〜さんッ!!! リスト、まだ〜〜〜〜!? 」
玄関で娘がきんきん声を目一杯張り上げている。
「 あ! はいはい〜〜 今 行くわ! え〜っと・・? 」
「 おい! すぴか〜〜〜 魚だ〜〜 新鮮なやつ、なんでもいい! 」
「 りょうか〜〜い!! あとは?? 」
「 ・・・ キャベツ! ああ 人参もいるな〜 誰かさんが真っ二つにしちまったからな〜 」
「 わかった! じゃね〜〜 」
― バンッ !! 玄関のドアが派手な音をたて閉った。
「 ふ〜んふん ・・・ 大根でもおろしておくかな〜 ふんふん♪ 」
すばるはハナウタまじりに野菜庫を開けている。
「 ま まあ・・・・ なんなの〜〜 あんた達ってば! 」
完全に無視された母は やっと口を挟むことができた。
「 え? なに。 なんか言った? 」
「 言いました!!! 今夜はビーフを使うつもりだったのに ・・・
お野菜だってレタスが足りないのよ? それをすばる、あんたってば勝手に〜 」
「 母さん。 アルベルト伯父さんには冷凍ビーフなんかよりもね、
地元の新鮮な魚料理の方が いいよ。
それにレタスは高いからね、皆の分はキャベツで十分、代用できるよ。
さあ 急がないと・・・ 父さんも今晩は早く帰るんだろ。 」
「 え ええ ・・・ そう言っていらしたわ。 」
「 ふん ・・・ あ じい様は煮魚とかがいいよな〜 ふんふん〜〜♪
あ 母さん、 その人参な〜 しょうがないから千切りにして。 」
「 わかったわよ。 ( ・・・ しょうがないからってなによ!? ) 」
「 そうだ、デザートだけど。 庭のイチゴ、 まだ残ってるよな? 」
「 ・・・ たぶん。 アンタ達がつまみ食いしてなければ ね。 」
「 んなこと、するわけないだろ。 ガキじゃあるまいし ・・・
じゃ これにとってきて。 後は僕がやるから。 」
息子はぽん、と母にボウルを渡すと、ガス台に向かった。
「 やるから・・・・って アンタは勉強があるでしょ、 ゴハンの仕度はお母さんが 」
「 いいから。 ほら 苺、はやく。 デザートはフローズン・ヨーグルト・苺にするから。 」
「 ・・・・ わかりました。 ( なによ なによ〜〜偉そうに! ) 」
フランソワーズは ボウル一つ持って勝手口から外に出た。
ふん!! なんなのよ〜〜
いっつも ゴハンよ!!って何回も 何回も呼ばせるくせに・・・
あ〜 とか う〜 とかしか返事しないくせに!
カッ カッ カッ ! 庭用サンダルが派手な音をたてる。
彼女は怒りに任せて温室に急いだ。
ガタン ・・・! かなり乱暴に温室のドアを開ける。
「 ・・・ あら ・・・ 苺、キレイ ・・・ ああ ミニ・トマトもいいわね〜〜 」
緑の野菜類と白い苺の花や黄色のトマトの花に ほっとした。
「 ま いいわ。 ゴハンの仕度はすばるにやらせちゃう。
わたしはの〜んびり苺摘みしますから ね。 ・・・ふふ〜 ひとつだけ ・・・ 」
真っ赤に熟れたのを口に含めば 甘酸っぱい味が広がる。
「 ・・・ 春の名残の味、かしら・・・ いいなあ ・・・
どうせすばるが全部仕切りたいのでしょ、 わたしは今日は休業するわ 〜 」
フランソワーズはボウルを抱えたまま、温室の隅に座り込んだ。
背中にはうらうらと午後の陽射し、 温室内の空気はほんわりと温かく甘い香りでいっぱい・・
ふぁあ〜〜・・・・・ 思わず大欠伸・・・ それも連発で。
「 ・・・あ・・・ああ ・・・ 昨夜 客用寝室の用意とかして遅かったから・・・ ねむ ・・・ 」
こっくり こっくり ― かっくん ・・・ 岬の家の女主人は春の夢にのってしまった。
ひゅん ・・・ すぴかは坂でイッキに自転車を加速した。
「 よ〜し ・・・ ! まずは海岸通りの商店街に出て・・・ んん? 」
お〜い すぴか! 待ってくれ!
「 え?? アルベルト伯父さま?? 」
キ キキキ ィ −−−− ・・・!!! すぴかはプレーキを思いっきり握った。
「 ― すぴか! 俺も買出しに付き合うぞ! 」
シュ ・・・ 銀髪の男性が自転車で追いついてきた。
「 すばるのを借りてきた。 荷物持ち、してやるよ。 」
「 うわ〜〜い サンキュ 伯父様〜♪ こっちよ、国道に沿ってゆくの。 」
「 おう。 ・・・ う〜ん いい気分だな、海風ってのは ・・・ 」
「 そう? べたべたしてあんまし好きじゃいんだけどな〜 」
「 ははは そんなもんかな。 さあ まずはどこへ行くんだ? 」
「 えっとねえ・・・ 魚屋さんは最後にするからね〜 まずは八百屋ね〜 こっちよ。 」
二台の自転車は 勢いよく商店街に入っていった。
キ キ キ ・・・ ザク ザク ザク ・・・
「 よ・・・いしょ・・・っと ・・・ 」
「 おい すぴか。 重たいもの、よこせ。 俺が運んでやるぞ。 」
20分後 二台の自転車は今度はゆっくりと坂道を登っていた。
「 だ〜いじょうぶよ、 伯父様。 これでもね〜 毎朝夕ここを上り下りしてるんだもん。
ウチはさ、 坂道登れなくなったらアウトだわさ。 」
「 ははは ・・・ しかしこんな大荷物じゃないだろ。 」
「 まあ〜ね。 でもさ 今日のは美味しい荷物だからさ〜 」
「 そうだな。 」
「 いいカレイがあったし♪ すばるが唐揚にでもするよ きっと。 」
「 へえ・・・ お前んとこじゃ弟が飯作りするのか? 」
「 時ったま、ね。 アイツ、基本、料理好きだから・・・ 」
「 ほう、面白いな。 」
「 ウン ・・・ ねえ 伯父様。 ちょっと ・・・ 意見、聞いてもいい。 」
「 おう なんだ。 」
「 ウン ・・・ あの さ。 ― アタシ ・・・ お母さんの国に行きたいんだけど どう思う? 」
「 あ? いいじゃないか、どんどん行けよ。 夏休みにバッグ・パッカーで来い。
ついでだ、ドイツまで足を伸ばせ。 」
「 そうじゃなくて ・・・ 勉強したいの。 お母さんの国で ・・・ 」
「 留学ってことか。 」
「 ・・・ ウン。 アタシさ、半分はフランス人じゃん? けど フランスのこと・・・
お母さんの国のこと、 何にも知らない ・・・ ことばもわかんない。
アタシが知ってるフランス語ってさ お祈り と 」
すぴかはちょっと言葉を切ったが ― 突如 母の国の言葉を言い始めた。
「 Il etait une fois une
prencesse 〜〜〜〜 ・・・・・・ 」
「 おいおい・・・・ なんだ そりゃ? 」
延々と続きそうなので アルベルトは慌てて遮った。
「 〜〜 え? おとぎ話だよ。 『 カエルとお姫さま 』 」
「 ちゃんとフランス語、しゃべってるじゃないか〜 発音だってお前の親父よか
よっぽど本格的だぞ? 」
「 ・・・ チビの頃さ〜 お母さんが読んでくれたのを丸覚えしてただけ。
ストーリーは知ってるよ、でも 言葉の意味は全然不明 ! 」
「 あ・・・ は ま ・・・ コドモは丸覚えの天才だからな。 」
「 でもね! お母さんは! 大人になってから日本に来たのでしょ??
なのに お母さん ってばさ ・・・ アタシよかよっぽど 日本人 じゃん! 」
「 そりゃ・・・ お前の母さんの方がお前よりも長くこの国に住んでるからなあ。 」
「 そうだけど・・・ でも ・・・ アタシ ・・・ 」
すぴかは言葉に詰まって じっとアルベルトを見た。
「 すぴか。 お前の言いたい事くらいちゃんとわかってるって。 やってみろよ。」
「 い いいかな?? でも ・・・ ウチさ、そんなに余裕、ないじゃん?
アタシら 双子だから ・・・ 何かと その・・・費用がさあ 」
「 大丈夫、交換留学とか奨学金が出るケースもあるはずだぞ。 」
「 え そ そう?? それなら ・・・ 行ける ・・・ かも・・・ 」
「 ただし試験つき、だけどな。 」
「 ― がんばる! アタシ。 」
「 おし、その意気だ! すぴか、まずは親父さんとオフクロさんにきちんと話せ。
俺も援護射撃してやるぞ。 」
「 え ほんと? 」
「 ああ。 頑張って自分の力で飛んでこい。 若モノの特権だぞ。 」
「 うん!!! ・・・ ねえ 伯父さん、お母さんってさ 凄いヒトだよねえ・・・ 」
「 あっは。 お前 今頃気がついたのか?
俺たちの中で ― お前の親父も含めて、だ ・・・ 最強はフランソワーズ、ってな。
これはもうお前たちが生まれるず〜〜っと前から決まっていたのさ。 」
「 あ ・・・ は そうなんだ〜〜 」
「 ああ。 すぴか、 お前はそんなヒトの娘なんだぞ?
― 思いっ切り 翔んでこい。 」
「 ― ん。 」
すぴかは力強く頷くと キ ィ ・・・ 門を開けた。
「 ・・・ おじいちゃま? お茶 ・・・ 新しいの、淹れたよ。 」
すばるは形ばかりのノックをし、博士の私室に入った。
「 ・・・ うん? おお すばる か ・・・ 」
博士は背凭れから少しだけ身体を動かし、 すばるの方に顔を向けた。
「 アルベルト伯父さん、 元気そうだよね。 あれ・・・ いい匂い・・・なに? 」
「 ・・・ ああ パイプ用のタバコじゃよ。 アルベルトの土産でな ・・・ この中さ。
ははは ・・・青少年にはよくないかのう ・・・ 」
「 え 匂いくらい平気だよ。 へえ ・・・ これもタバコなのか・・・ 」
すばるは博士の手元にある凝った細工の箱を眺めた。
「 うむ ・・・ 普通のタバコとはちょいと違ってな 香りだけを楽しむのもいいものじゃよ。 」
「 ふうん ・・・ あ おじいちゃまってば よくパイプ、咥えてたよねえ 」
「 ふふ 昔、な。 お前たちが生まれてからは遠ざかったがな。
こうして 時々香りを楽しむくらいは いいじゃろ・・・ 」
「 ・・・・・・ 」
すばるは黙って博士のひざ掛けやらクッションの具合を直した。
「 ・・・ああ 美味いな ・・・ このお茶は ・・・ すばるが淹れてくれたのかい。 」
「 ウン ・・・ 」
「 お前 ・・・ 調理とか好きなのかい。 」
「 あ〜 まあ 趣味ってとこかな。 ― おじいちゃま。 僕 ・・・
あの ・・・ 話 してもいいかな。 」
「 なんじゃな。 ワシでよかったら何でも聞くぞ。 」
「 ・・・・ん ・・・ 僕 進路のことなんだけど 」
「 うん うん ・・・ すばるはずっと工学部志望じゃったな 」
「 ウン ・・・ 工学部、電子工学専攻して ・・・ おじいちゃまの後、継ぐって・・・
ず〜〜っとそう決めてた ・・・ んだけど ・・・ 」
「 続けなさい、 思ってること全部言ってごらん。 」
「 ・・・ ウン ・・・ ごめん おじいちゃま ・・・ 僕 ・・・ 他にやりたいコトみつけたかも・・・ 」
「 ほう?? なにかな。 」
「 ウン ・・・ 具体的にはさ まだ固まってないんだけど・・・
僕 ・・・ あの。 うん ・・・ 人間に関わること、なんだ。 生きてゆくって 大変だよね? 」
「 人間? 生きてゆく? ほう ・・・ それはヒトの命、ということかい。 」
「 ・・・ そ うかも・・・ すごい・・・! おじいちゃま、どうしてわかるの??
僕 だれにも話したこと、ないのに・・・ 」
「 ふふふ ・・・ 小さな時からすばるをみておるからのう ・・・
お前は優しい子じゃ ・・・ そして粘り強い。 それを活かせるといいな。 」
「 無理かもしれない けど。 ・・・ 医療とか ・・・そっちの方に進んでみたいんだ。
僕にも ・・・ なにかできること、ある かもしれないって思って ・・・ 」
すばるはぼそぼそと話す。 ひょろり、と背は伸びたけど、まだまだ首の細い少年だ。
おお おお ・・・ あの泣き虫坊主がのう ・・・
生命を守る仕事を目指してくれるのか
博士はぐ・・・っと熱いものが込み上げてきた。
「 そうか ・・・ うん うん ・・・ まだ決め付ける必要はないがな。
お前の望む道を行きなさい。 ワシは いつでもすばるの味方じゃよ。
いつでも な ・・・ この世から消えても ・・・ 」
「 ! おじいちゃま!!! そ そんなコト、イヤだよっ!! 」
すばるは博士の膝にかじりついた。
「 これこれ ・・・ まあ まだ少しはお前たちとの一緒に居られるじゃろうが な
すばるや ・・・ ヒトは皆 いつか ・・・ 死ぬ。 」
「 だ だけども! おじいちゃまには! 僕やすぴかが大人になってそんでもって 」
「 大丈夫じゃよ すばる。 ワシはな いつだってお前たちのことを見守っておるよ・・・
この肉体は消えてもな。 そんな顔はおよし。 」
「 だ だって〜〜 お おじいちゃまが ヘンなこと言うから〜〜 」
すばるは 昔の <泣き虫すばる> にもどったみたいにぐしぐし泣いている。
「 ほ〜ら ・・・そんな顔しとるとま〜たアネキにいじめられるぞ? ん? 」
博士はハンカチをだして孫息子の顔を拭う。
「 ・・・ な 泣いてなんか い ・・ いないやい! 」
「 ほらほら・・・ハナ かめ。 いったいいくつになったんじゃ、お前は・・・ 」
「 ぐし・・・だ だって ・・・ 」
「 いいか。 お前の選ぼうとしておる道は 生半可なことじゃ進めんぞ。
時間もかかる。 上手くゆく保証なんかどこにもない。
今 慌てて決める必要はないぞ、ゆっくり考えてからにしなさい。 」
「 ウン ・・・ あ はい、おじいちゃま。 」
「 お前の将来じゃ。 お前自身で決めなさい。 ワシはそれで満足じゃよ。 」
「 ・・・ はい。 もう少し考えてみるね。 」
「 よしよし ・・・ すばるはいい子じゃのう ・・・ 」
博士はゆるゆるとすばるのクセッ毛アタマを撫でてくれた。
あは ・・・ な んか 懐かしいな・・・
え へへへ ・・・
・・・ よくアネキに苛められてじい様に慰めてもらったっけ・・・
思春期まっただなかの仏頂面中学生も 祖父の前では素直で可愛いすばるくん に戻っていた。
「 す〜〜ばる〜〜〜 ねえ ねえ 仕上げ してよ〜〜 」
すぴかの大声が下から響いてきた。
「 うん? おい、すばる。 アネキが呼んでるぞ? 」
「 ・・・ あ ! いっけね〜〜 晩御飯の仕度、 まだ途中 ・・・ 」
「 ほらほら はやく行かんとまた言われるぞ〜 」
「 うん・・・ あ おじいちゃま ・・・ あの ・・・ 」
「 わかっとる。 お前の心がしっかり決まるまで他言はせん。 」
「 ありがとう! まずは さ。 高校入試だな〜 県立翠ヶ丘 ・・・ やるよ、僕。 」
「 しっかりおやり。 」
「 ん。 あ おじいちゃま、 今晩はね〜 御馳走だよ! 楽しみにしてて。 」
「 ああ お前の料理とアルベルトの話をたんと味わうことにしよう。 」
「 うん! もうちょっと待っていてね。 」
「 わかったよ。 ああ ちょっとその引き出しにあるノートを取っておくれ・・・ そう、 それじゃ 」
「 はい、ここでいい? おじいちゃま。 」
「 ありがとうよ。 」
「 じゃ ・・・ すぐに呼びにくるからね! すぴか〜〜 今 行くよッ! 」
すばるはばたばたと博士の私室から出ていった。
「 ・・・ ふふふ ・・・ 相変わらずじゃのう ・・・ 形 ( なり ) はでかくなっても
中身はぴいぴい泣いてた頃と大してかわらん ・・・ か ・・・ 」
博士は革張り表紙つきのノートを広げると ゆっくりとペンを動かし始めた。
「 お前たちの夢を 護ってやるぞ・・・ それがワシの出来るせめてものことじゃ・・・ 」
「 すばる〜〜 遅い!! ねえねえ あとは? 」
キッチンに駆け込むと すぴかがサラダ用の野菜を前にわいわい言っている。
「 え〜と ・・・ ああ 後はソレをささ・・・っとまぜて ・・・ ドレッシングだな〜
いま つくるよ。 あとはデザート・・・ 苺は〜・・・ お母さ〜ん! 苺〜〜 」
すばるはキャベツの葉をはがし さ・・・っとゆでている。
「 ― ただいま 〜〜 」
リビングから ジョーがのっそりと入ってきた。
「「 あ!! お父さん 〜 おかえりなさいッ !! 」」
「 おう ジョー。 元気か〜 」
「 うん ただいま。 アルベルト! いらっしゃい!
・・・ なんだ 皆でキッチンに溜まって・・・ フランソワーズは? 買い物かい。 」
「「 ・・・ え?? 」」
父に聞かれて すぴかとすばるは顔を見合わせてしまった。
「 だ〜れも玄関に出てきてくれなかったんだ ・・・ 」
ジョーは本気でかな〜り拗ねた雰囲気だ。
あれ〜 ・・・・ お母さんと ただいま〜って ちゅ〜〜って してないんだ?
あは。 母さんにフラれたのかよ〜〜
双子は内心可笑しかったけど、澄ました顔をしていた。
「 え? お母さん? ・・・あれ・・・ どこ、行ったんだろ?
すぴか〜〜〜 お母さん 知ってる? 」
「 え〜〜 ? 知らないよ〜う アタシ、 アルベルト伯父さんと買い物、だもん。 」
「 だよな〜 あ 寝室じゃないの? 」
「 だから居ないんだよ! 靴はちゃんとあるし ・・・ 庭かな 」
「 さあ・・・ あ!! そうだ そうだ 苺、頼んだんだ〜〜 」
「 ― いちご? 」
「 ウン デザート用にって。 温室の苺 ・・・ それっきりだよ、まだ帰ってこない ・・・」
「 ― フラン〜〜〜 ! 」
ジョーは勝手口から飛び出していった。
「 うほ・・・ 本気で飛んでいっちまったぞ? 」
「 あ〜あ ・・・ すばる、こりゃ晩御飯 遅くなるかも〜だよ? 」
「 だね。 いいさ、 おじいちゃまとアルベルト伯父さんとで先に食べちまおうぜ。 」
「 あは そうだね〜 あ これでいい? 」
「 あ〜 ・・・ うん。 じゃ これでさっくり混ぜて 出来上がり♪ 」
「 うわお〜〜 美味しそう〜〜 」
「 おい、 そのポテト、一口味見させてくれ〜 」
「 あはは ダメだよ〜〜 アルベルト伯父さん〜 」
「 うふふふ・・・ あ アタシ、 おじいちゃま、呼んでくるね? 」
「 任せた〜〜 」
島村さんち の晩御飯はほとんど出来上がった。
・・・ カッ カッ カッ ― ガタン!
ジョーはつっかけを鳴らして 温室に飛び込んだ。
「 おい! フラン〜〜 いるのか!!? 」
温室の中は もわ〜ん・・・と温かいけれど電気が消えている。
「 フラン!? フランソワーズ? おい 返事しろ〜 」
ジョーはかなり本気になって叫びつつ 大股で ぷちトマトの畝を回った。
― ガサ ガサ ・・・ ゴソ ・・・!
隅っこの莚が重ねてある所で 何かが動いた。
「 ?? ふ フラン ・・? 」
「 ・・・う ・・・ ん ・・・? あら?? 真っ暗 ・・・ 今 ・・・ 何時? 」
「 フラン〜〜 !! なんだってこんなトコで寝てるんだ?? 」
ジョーは慌てて電気を点けに戻った。
「 ・・・ きゃ・・・ まぶしい〜〜 ・・・ 」
「 フラン! おい 大丈夫かい? 」
「 ジョー ・・・ え もう帰ってきたの? 随分早いのねえ。 」
フランソワーズはまだ寝ぼけているのか ぼんやり彼の顔を眺めている。
「 おいおい・・・ もうすぐ晩御飯タイムだよ? 」
「 え?! ・・・ ヤダ・・・ わたし 苺 ・・・ 苺を摘みにきてちょっと休もうかな、って思って。
隅っこが気持ちいいな〜 甘い香りがいいな〜・・って座ったのよ。 」
「 ・・・ なんだ ・・・ 疲れていたんだよ、きっと。 」
「 え ええ ・・・ あ!!! 晩御飯!!! まだ 出来てない〜〜〜 」
「 ― それは大丈夫。 きみの息子が得々として作ってたさ。 」
「 あ ああ・・・そうだったわ・・・ そうよ! すばるったらね! 生意気でね! 」
「 わかった わかった・・・ ともかく苺、摘もうよ。 デザートに使うって言ってたぞ。 」
「 ・・・ そう ね。 あら〜〜 見て ジョー! こんなにたくさん ・・・ 」
2人はやっと苺の畝の前に陣取った。
「 やあ 本当だ。 ・・・ ほら ・・・ あ〜ん ♪ 」
「 うふふ あ〜〜ん ・・・・ きゃ♪ 美味しい〜〜 じゃあ ジョーも♪ あ〜ん・・・ 」
「 ・・・ ぼくはきみからもらうよ ・・・ んんん 」
「 きゃ! ・・・・ んんんん 〜〜 ・・・・ 」
「 お帰りなさい のキス ・・・ なかったから さ 」
「 ただいまのキス ・・・ 美味しかったわ♪ 」
ふ ふふふ 苺を真ん中に2人はたちまち熱い視線を絡ませ ・・・
「 おと〜〜さんっ !!! おか〜〜さんッ !!! ご は ん !!!! 」
島村さんちのご令嬢のきんきん声が2人の甘い時間を無残にも打ち破った。
Last updated
: 06,05,2012. index / next
********* 途中ですが
一応 【 島村さんち 】 シリーズです、少々サイド・ストーリーっぽいですが・・・
タイトルは 映画 『 カサブランカ 』 の 劇中歌より。
この映画、未見の方〜〜 ググってみてくださいね〜〜
・・・で 続きます・・・!