『 ちょこ・ラプソディー ― (2) ―  』

 

 

 

 

 

   カサ  コトン。

 

ジョーは その小箱を そ〜〜〜っとそ〜〜〜〜っと

多分 人生のウチで最大に気を使って 大事に 大事に 机の上に置いた。

 

「 ・・・ えへ ・・・ 」

しゃがみこみ視線を箱に合わせさらに沈みこむ。

「 あ なんかいい匂い するかも〜〜〜 」

クンクン・・・ ハナを鳴らしてから またうっとりと見つめる。

 

 < あの日 >  は明日だ。

 

「 ふふふ〜〜〜ん♪  自分で言うのもなんだけど。

 えっへへ〜〜〜 カッコイイの、出来たよなあ〜 

ジョーは もう最高に満足気に目先の小箱をながめる。

 

  金とブルーのストライプのラッピングだ。

 

「 これさ〜 フランのイメージなんだ。

 こんなのにする!って決めてたから ・・・ 

 このペーパーもすごく探したんだ〜〜〜

 リボンもブルー。 フランの瞳のイメージさ。 」

 

  はあ〜〜〜〜〜  ・・・  

 

満足と緊張が混じった不思議なため息が出てしまう。

明日 を前に 彼はもうめちゃくちゃに緊張している。

 

   これを! 明日渡すんだ。 

   そんでもって・・・ コクる!

 

   フラン・・・  好き です。

   あ のう  付き合ってください

 

   うっぴゃ〜〜〜 ちゃんと言えるかなあ 〜〜

 

自作のチョコの箱を前に そわそわ・・・ リハーサルに余念がない。

立ち方 しゃべり方 もいろいろ変えて練習している。

普段はほとんど見ない姿見の中の自分を 熱心に観察する。

 

「 う〜〜ん ・・・ もっとしゃっきりした方がいいかな?

 堂々と〜〜 えっと。

 

    フランソワーズさん。 好きです。

    付き合っていただけますか

 

 〜〜〜 なんちゃって〜〜〜   いいかも??  あは〜 」

 

ジョーは夢中になっているので 部屋のドアが半分開いているのに

ま〜〜〜ったく気づいていない。

 

 

「 ? あら。 ジョー もう帰っているのかしら? 

 ・・・でも 玄関にスニーカー なかったわよね ・・・ 」

フランソワーズは 二階に上がってきてから あれ、と思った。

「 ドア 開けっぱなしなのかなあ ・・・ 」

彼女は取り込んだ洗濯モノを 両手に抱えている。

ジョーの分を届けにきたのだ。

とにかくドアを閉めよう、 と近寄ったら ―

 

    ん?  あ  ら ・・・ 

    ・・・ ジョー  いるの ・・???

 

― で。 彼女は見てしまったのだ ・・・ 彼のにまにま姿 を。

 

    ! ・・・ あの包み ・・・ チョコ??

    ・・・ オンナノコから もらった・・・?

 

    そうよねえ 綺麗な包み紙だしリボンも ・・

    ああ 丁寧に包んであるわ 

 

    きっと中身は 手作り ね ・・・

    ココロを込めて作って

    丁寧に 丁寧にラッピングしたんだわ・・・

 

 

「 ・・・ ジョー ・・・ 誰に貰った の・・・?

 すごく嬉しそう きっとジョーもそのヒトのこと、好きなのね 」

 

彼のあんな笑顔を見たことはなかった。

いつも控えめで 優しい微笑をたたえているけれど

イマイチよくわからない処がある 彼 ― なのだが。

 

「 ・・・ わたしだって 好き なのに ・・・

 ああでも。 わたしのチョコより美味しそう ( に見える ) 

 でもでも! 前日に渡す なんてフライングだわ ・・・ ! 」

 

フランソワーズは ドアの前で悶々としていたのだが 

気配が伝わったのかもしれない。

 

「 ?  あ〜 誰? ど〜ぞぉ 開いてるよぉ〜 」

気楽な声が中から聞こえてきてしまった。

 

    わ ・・・ マズったわ ・・・

 

一瞬 首を縮めたが すぐに彼女は < いつもの笑顔 > 

となり ドアを盛大にノックした。

「 ジョー ぉ? いますか〜〜〜

 洗濯モノ ぱりぱりに乾いたわよぉ〜〜 」

「 あ フラン〜〜〜   わお〜〜〜 ありがとう 

< いつもの笑顔 > の前に これまたいつもの穏やかで

暢気な笑顔 が現れた。

「 サンキュ 」

「 どういたしまして。  ・・・ あのう ・・・

 もう帰ってきてたのね 」

「 あ?  ・・・ ああ ウン・・・ 」

「 あ  あのう・・・ 熱いカフェ・オ・レ 淹れるわ。

 オヤツにしない? 」

「 あ いいね〜〜〜  ぼくね 甘いモノとかいろいろ買ってきたんだ!

 それ 食べようよ 」

「 あ あら そうなの? 嬉しいわ 」

「 えへ ・・・ あ? フラン〜〜 いい匂い〜〜 」

「 ・・え?? 

彼は ふんふん・・・わんこみたいにハナを鳴らし

彼女の金色の髪の周りを嗅ぎまわる。

「 あ そ そう??  わたしもお菓子売り場、覗いたから

 かしら 

「 ふうん? すっげ混んでたろ? 」

「 ええ ・・・ 」

「 そうだ お煎餅も買ったんだ、食べよう 食べよう 」

「 え ええ・・・ あ あの。 わたしもクッキーとか

 買ってきたの。 博士もお呼びしてオヤツにしましょ 」

「 ウン!  さ 行こうよ 」

「 ええ 」

ジョーは ぽん、と彼女の肩に手を当てて にっこり笑う。

 

   〜〜〜〜 !  この笑顔〜〜〜

   ああ 弱いのよねぇ〜〜

  

   なんて幸せそうに笑うのかしら

   ・・・いいこと あったの?

 

   ! チョコ もらったから ・・・?

   ああ きっと可愛い女の子に貰ったのね 

 

   ・・・ジョー ・・・ 

   そのヒトのこと ・・・ 好き?

 

「 〜〜〜 だよねえ フラン? 」

不意に 茶色の瞳が覗きこんできた。

「 ・・・え 」

「 きみもそう思うよね〜〜  うん うん〜 」

「 え ・・・そ そうね 

ご機嫌ちゃんの彼に なにも聞いていなかった、なんて

言えない。 言えるはずなんか ない。

「 えっと 〜〜 あ ジョーはカフェ・オ・レ より

 コークとかの方がいい ? 」

「 あ? う〜〜ん ・・・ コーク、好きだけど

 きみのコーヒー、美味しいから〜〜 熱いの、飲みたい!  」

「 あら 気に入ってくれた? 」 

「 うん!  チェーン店のよりか美味しいよ〜〜

 ぼく、ウチのお茶がイチバンさ。 」

「 ありがと♪  じゃあ 張り切ってオイシイの、淹れるわね 」

「 おねがいしま〜す。  

 あ ぼく、博士 呼んでくるね 」

「 はい。 お茶の用意しま〜す 」

 

    キッチン、片づけなくちゃ。

 

    チョコ作りの材料とか お鍋とか

    仕舞っておこう!

 

フランソワーズは キッチンに駆けこんだ。

一応 片づけておいたが まだ甘い香りが残っている。

 

「 ああ だから・・・わたしの髪に香がついていたのね 

窓を開け 空気を入れ替えた。

冷たいけれど すっきりした冬の風が舞いこんできた。

 

    ・・・ 寒 ・・・

    あ でも 気持ちいい 

 

    ふう〜〜 

    やだ わたしったらのぼせていたのかしら

 

きりりとした空気に 気分も落ち着いた。

フランソワーズは 手早くコーヒーの準備を始めた。 

 

今年は 手作りトリフチョコを 

日頃お世話になっている人々み〜〜〜んなに配る予定だ。

所謂  ぎりちょこ なのだが 気合いが籠っている。

先ほど、なんとか完了し今は冷蔵庫に入っていた。

 

 ― そして < 本命 >には 

オレンジ ピールにチョコをかけ ジョー・らぶ と

チョコ・ペンで 描いてみた。

 

    か〜なりの出来だと思うの。

    オレンジ・ピールはね ジョーの大好物なのよ。

 

    こんなの、食べたことない! 最高〜 って

    一袋 食べちゃったこともあるんだもの。

    きっと喜んでくれる ・・・

 

    あ。  あのカノジョのチョコの方が

    ・・・ いい の かも ・・・

 

またまた 少し落ち込んできてしまった。

 

「 ん。 美味しいお茶 淹れるのよ! 」

 

   カチン。 

 

気を取り直し お気に入りのケトルをガス台においた。

「 お茶はね ちゃんと沸かしたお湯、使わないとだめよ って

 ママンが言ってたもの。 ねえ ママン 」

湯気の向うに 懐かしい母の笑顔が浮かぶ。

 

  ファン。 哀しい時には 熱いオ・レよ。

  気持ちが落ち込んだ時や 淋しい時も ね

  沸かしたお湯で美味しいのを淹れるの

 

  ゆっくり飲めば お腹が温まれば

  また 笑えるのよ。

 

そんな母の言葉が ココロの中に聞こえる。

 

「 ええ ママン。 あつ〜〜いお湯でまずはカフェを淹れるわ。

 これはね この前ジョーが買ってきてくれたの。

 淹れ方は パパや兄さんに習ってたから大丈夫。

 ・・・ それでねえ ミルクは も〜も〜ミルク っていってね

 ここの地域のと〜〜っても美味しいミルクなの。 」

 

  カチャ カチャ カチャ ・・・

 

     ほわ〜〜〜〜ん  ほわほわ 

 

いい香がキッチン中に流れ始めた。

「 ほう 〜〜 これは美味しそうな匂いじゃな 

博士が にこにこ顔で入ってきた。

「 わ! いいにおい〜〜〜  あ ・・・ ねえ フラン 

 あのう 〜〜 お砂糖 ・・・ 」

「 はい わかってるわ 三杯、でしょ? 」

「 えへ ありがと 」

「 ワシはまず このまま味わわせてもらうよ 」

「 うふ・・・ わたしも頂きます 」

「 〜〜〜〜〜 おいし〜〜〜〜 フランの カフェ・オ・レ 最高! 」

 

 三人で ほっこり・・・ ティータイムとなった。

 

「 あ〜〜 オヤツ! 食べようよ 」

ジョーは 席を立ち戸棚を開けゴソゴソやっている。

「 そうね  ジョー なにがあるの? 」

「 ぼく さっき煎餅とチョコ、買ってきたんだ〜  

「 ちょ チョコ? 」

「 ん ・・・・」

「 ジョー・・・ チョコ売り場 そのう ・・・混んでたでしょ? 」

「 ・・・ あ あった! え? 売り場?

 ああ でもちゃんとね、目的のは見つかったよん 

「 そ そう ・・・ 」

 

   え。 目的の・・・?

   ジョー が・・・ チョコ 買うの?

 

フランソワーズは 思わず彼をまじまじと見つめた。

「 ? なに ? 」

「 あ ううん  美味しそうだな〜〜 って 

「 美味しいよ! さあ 食べようよ〜 」

 

   お煎餅 に チョコ菓子。 小さな和菓子。

 

カフェ・オ・レ には少々不似合いだけど 庶民的なお菓子が並んだ。

「 ほう 日本の菓子か おいしそうだな 

博士はもの珍し気に ひとつひとつ眺めている。

「 あは 博士〜 これは皆 駄菓子 っていって・・・

 チビの頃に食べる感じなんで〜〜  」

「 だがし?  へえ ・・・わたしも初めて見るわ?

 あら これ ボンボン? 」

「 あ それ  あんず飴さ。 縁日なんかで売ってるよ。

 下の商店街で売ってたんで なんか懐かしくて買ってきました 」

「 へえ ・・・ 可愛い 

「 ワシは このミニサイズの団子をもらおうかな 」

「 あ それは黄な粉でできてますよ 

「 きなこ? ・・・ ああ 大豆の粉じゃな 」

「 へえ そうなんですか?? 知らなかったぁ〜〜

 あ これは砂糖入ってるから甘いですよ 」

「 うむ ・・・ うむ  ・・・  これはブラック・コーヒーか

 そうじゃ 煎茶とかに合う味じゃな 」

博士は 黄な粉の駄菓子が気に入ったとみえる。

「 あ じゃあ ぼく、日本茶 淹れてきます。 」

「 あ  わたしが ・・・ 」

「 いいよ そのくらいはぼくがやる。

 日本茶の淹れ方は しっかり施設ならったんだ。

 お湯 沸かしてくるね  

ジョーは にこにこキッチンへ駆けこんでいった。

「 あらら ・・ 日本茶って苦い〜〜って思ってたんですけど

 なんか違うんですねえ 」

「 そうじゃの。  上等のお茶は馥郁たる香と甘さがある、と

 いうぞ 

「 そうなんですか あ そうだ ・・・ 」

フランソワーズは 膝に置いていた袋を取り上げた。

 

  カサコソ。  濃い茶色の艶やかな包みが出てきた。

 

「 あ これ。 あのう〜〜 一日早いけど 

 博士〜〜  はっぴ〜 ばれんたいん ♪ 」

「 ほ?  あ ああ ああ ・・・ ありがとうよ 」

博士は一瞬 妙な顔をしたが すぐにこの国のチョコ騒動を

思い出したらしい。 笑顔で包を受け取った。

「 綺麗な包じゃのう・・・ あ アイツには? 」

「 え あの〜〜 まだ ・・・ 」

「 ヤツはきっと心待ちにしておるよ。 」

「 ・・・ そんなこと ・・・ 」

「 いやいや。 地元民じゃもの、男子たるもの

 明日は ナーバスになる日、らしいよ 」

「 博士 よくご存じですのね 

「 あっはっは・・・ コズミ君の所で学生諸君に聞いたのさ。

 コズミ君も笑っておった 

「 そうなですか ・・・ 

「 ま 明日 渡しておやり 

「 ・・・え  ええ ・・・ 

 ジョーってば 明日は山ほど貰ってくるのでしょうねえ ・・・ 」

「 あ? なんだね? 」

「 い いえ なんでも ・・・ 」

「 お茶〜〜〜 美味しいの、いれましたァ〜 」

ジョーが お盆をささげそろそろ〜〜した足取りでもどってきた。

 

   か たん ・・・

 

「 お〜っとっと  ・・・  熱いお茶 淹れてきたよ〜 」

「 あ ジョー 持つわ! 

「 あ ありがと フラン ・・・ テーブルの上、空けてくれる 

「 はい。   ほら ここに置いて 

「 うん ・・・ っと あちっ 」

彼は少々危なっかしいてつきで 湯呑みを置いた。

 ほわほわ〜〜の湯気が立ち上る。

「 ・・・ ほう〜〜 いい香じゃない  コーヒーとは

 また違って ・・・ ほっとするなあ  

「 ほんとうに・・・ なにか 草原みたいね? 」

「 え〜〜 草原?  ああ そうかあ〜〜 」

ジョーは  改めて自分の湯呑み茶碗を くんくん・・・やっている。

「 ぼくら 普通に思ってるからなあ 

「 あら とてもいい香だわ  リラックスするの 」

「 そうじゃな 自然の野の匂い か・・・

 日本茶とは 不思議なものだな 」

博士は 日頃から日本茶を愛飲しているので

湯気のたつ煎茶を とても美味しそうに啜っている。

「 ・・・ 熱いから ちょっとづつ ・・・  ふう〜〜 

 ん〜〜  あ さっぱりしてて 美味しい! 」

フランソワーズも 気に入ったらしい。

「 へへ ・・・ よかったぁ〜〜 」

「 お茶にも 民族性が出るのかもしれんなあ ・・・

 お前の国の人々は 表には出さず、剛さ 内に秘める  」

「 内に? 」

「 うむ。 あからさまに出すことを避ける というか 

 秘すれば花 そんな言葉がある。 」

「 ひすれば はな? 

「 ひゃ〜〜 そんなこと、考えてないけど ・・・

 この駄菓子、お茶とばっちり! 美味しいですよねえ 

ジョーは 屈託なくにこにこ・・・駄菓子を食べていた。

 

    ふうん ・・・

    ジョーの国のヒト って そうなの?

 

    ・・・ じゃ ジョーも?

 

確かに彼ははっきりと自己主張などをしない。

ミーティングなどで 皆が激しく意見をぶつけあう時でも

ジョーは 黙って聞いている。

 

    無関心とかじゃないんだけど

    ・・・ そう ねえ・・・

 

    じゃあ こそ・・・っとチョコ、

    届けた方がいいのかしら・・・

 

    あ。 でも ・・・

    あの包、とても嬉しそうに眺めてた・・

 

フランソワーズは アタマを抱えこみたい気分だったが

一生懸命 笑顔を保っていた。

 

 

 

 ― そして。  ついに! 14日、当日。

 

フランソワーズは チョコの小さな包を山ほど袋に詰め

早めに家を出た。

 

「 皆さんに感謝 なんですもの。

 わたし、本当に嬉しいの、踊れるって最高に幸せ♪ 」

バレエ団の先生方、 団員たち、先輩も同僚も後輩も

そして 事務所のヒトたちにも 手作りチョコを 配った。

「 え まあ〜〜 可愛い! 」

「 お ありがとう〜〜 」

「 あらあら さすがフランスの方 ・・・ 」

小さなチョコの包だったけれど 皆笑顔で受けとってくれた。

 

   うふ ・・・ よかったぁ〜〜

   ギリって 楽しいわね!

 

   ・・・ < 本命 > が問題よ。

   ジョー ・・・受け取ってくれる かしら

 

   ううん、多分 受け取ってはくれるでしょう

   彼 優しいもの ・・・

   でも。  あの箱のチョコの方が 嬉しいかも・・・

 

   ! ううん いいの。

   わたし ジョーが好き なんだもの。

   好きってこと、 伝えたい。

 

   わたしの気持ち、伝えなきゃ。

 

   グリーン・ティ みたいに優しくて

   強さを秘めてる ジョーが 好き!

 

 

 ぷるん。 フランソワーズは アタマを振った。

「 わたし は。  ジョー・シマムラ が 好き です。

 心を込めて作りました、 受け取ってください。 

 ええ そう言うの。 はっきり ね 」

 

空の袋を抱え 彼女は滅茶苦茶に元気な足取りで帰路についた。

メトロと電車を乗り継ぎ さらにバスに乗る。

崖上の我が家は もうすぐだ。

フランソワーズは 空を見上げる。

 

    ふ〜〜〜〜 ・・・ ああ キレイな青・・・

    冬なのに お日様いっぱいって 最高ね!

 

    お日様! わたしを応援してね!

 

カチャン。 低い門を開け 小路を通り玄関へ。

 

「 ジョー まだ帰ってない時間よね。 

 博士は多分書斎に籠っていらっしゃるはず・・・ 」

玄関は 自分でセキュリティを外した。

「 ただいま帰りましたァ・・・  」

誰も出てこないはず と思っていたので声は小さい。

 

 ― と。

 

「 ! お帰り フラン。 あの これ! 」

 

突如 彼女の目の前に小さな包みが現れた。

 

「 わ・・・っ  な なあに?? 」

ホントに少し飛び下がり フランソワーズは一瞬身構えていた。

「 あ ご ごめん〜〜 びっくりさせちゃった? 」

「 ???  え ・・・ あ  ジョー ・・・ 」

見慣れた茶色の瞳が 心配している。

「 ごめん!  あの そのう〜〜 」

「 あ ああ ・・・ ジョー もう帰ってたのね 

「 ウン。 きみのこと、待ってた 」

「 ? なにか御用? あ アイロンかけかしら 」

「 ち が〜〜〜うよぉ〜〜 」

あの これ! −  と 彼は改めて包を差し出した。

「 ?? 

「 ぼくの気持ち ・・・ あ あのう

 フランソワーズ、きみが す 好きです! 

 受け取ってください !  

「 え ・・・?  これ ・・・ ジョーが貰ったのでしょう? 」

「 違うよぉ ぼく 作ったんだ。

 だって あの ・・・ きみ達の国じゃ恋人や友人同士で

 贈りあうって。 スウィーツとか 花とか 」

「 あ ええ そうね  」

「 だ だから ぼく。 あの これ 受け取ってください 」

「 ・・・ ジョー ・・・ あ ありがと ・・・ 」

「 え えへ ・・・ 」

「 あ! あのね これ! 

フランソワーズは もうなにも言えず、慌てて取りだした包を

そのまま ジョーに押し付けた。

「 わ !  え ぼ ぼくに?? 」

「 ・・・ 」

彼女は こっくり頷いた。

「 わたし。 ジョー が 好き ・・・ あの ・・・ 」

「 ありがと〜〜〜〜 うわああ〜〜〜 うわあ〜〜〜 」

彼は その包を抱きしめ ぴょんぴょん飛び跳ねている

「 やだ〜〜 ジョーったら 」

「 え? だって 嬉しいんだもん〜〜 うわあ〜〜〜お♪ 」

「 うふふ  わたしも すご〜〜〜く嬉しい♪

 これ ・・・ わたしに、だったのね 

「 うん! これね きみのイメージなんだ 」

ジョーは ちょん・・と包のリボンと包装紙を突いた。

「 え〜〜 これ すごくキレイよねえ 

 ふふ わたし こんなに綺麗じゃないわよ 」

「 キレイだよ〜〜〜 めっちゃキレイさ! 

 えへ ・・・ これ 飾っとこ。 」

 

   「「 なんか すご〜〜く 勇気でちゃった 」」

 

二人とも チョコの包を抱きしめ 見つめ合い

半分泣きベソみたいな顔で 笑いあっている。

 

 ― おやおや ・・・

   ま 我が家のチョコ騒動は 一件落着 のようだのぉ

 

奥の書斎から 博士がこそ・・・っと眺めていた。

 

 

*************************     Fin.     ***********************

Last updated : 02,18,2020.                  back    /    index

 

 

****************    ひと言   **************

今更〜〜〜  中坊のカップルみたいですけど・・・・

 ま こんな時期もあったのじゃないかな〜 ってことで☆

ジョーのチョコ、 どんなのかな〜〜〜〜 (>_<)