『 ちょこ・ラプソディー ― (1) ―  』

 

 

 

 

 

 

  ガサゴソ ガサゴソ ・・・

 

ジョーは ぱんぱんのレジ袋を自転車の荷台から降ろした。

彼としては とて〜〜〜も慎重な手つきで丁寧に。

 

「 ・・・ あ 壊れてない な・・・

 よ〜かった ・・・ これ買うの大変だったんだもんね 」

件の袋を そ・・・っと持ち上げる。

「 ふっふっふ〜〜  作り方はネットでばっちりだし。 

 今日の午後は ぼく一人だし ・・・ やるぞ! 

 

彼は ミルクにありついたにゃんこみたいな顔で

玄関を通りすぎ 裏庭の勝手口に回った。

「 こっちからのほうが速いもんね。  よ・・・っと 

かなり旧式なキイで 勝手口のドアを開けた。

「 まずは〜〜 っと。  あ 生クリームと卵は冷蔵庫 っと。

 おっと 手洗いウガイを忘れずに ・・・ 」

レジ袋をキッチンの上が框に置くと 彼はぱたぱたバスルームに

駆けて行った。

「 がんばる!  今年はばっちり☆ 」

 

   うん。 よし!   ジョーは 花模様のエプロンをきりりと身に着けた。

 

「 ま〜ずは   あ 道具を出さなくちゃ。 」

キイ パタン ガタン ・・・

棚のドアをあけたり引き出しを覗きこんだりして

彼は 調理器具をあれこれ・・・ 出してきた。

 

「 ふっふっふ♪ では〜〜 

ガサゴソ。 袋の中から 板チョコ を数枚取りだした

 

 

    そうなのだ。 明日は   あの日    なのである。

    そうして 今、彼は ちょこれえと作り に邁進している。 

 

 

「 フランにチョコ 贈るんだ!

 グレートやアルベルトが言ってたんだ。

 ヨーロッパやアメリカでは 恋人同士でプレゼントを贈りあう って!

 だから ぼくも !  やるぞ! 」

彼の決心は確固たるもの ・・・らしい。

 

 

 

 

  ― じつは。

 

数日前 寝しなにカレンダーを眺め、ふいに決心したのである。

 

 ふぁあ〜〜〜  あ もうこんな時間かあ  ・・・

 そ〜ろそろ 寝よっかなあ 

 

特大の欠伸をし ジョーは読み止しの雑誌をベッドの脇においた。

「 ・・・ もう一杯 コーヒー飲みたいけど ・・・ 

 キッチンまでゆくの、めんど〜くさ・・・ ま いっか  」

パジャマの上にひっかけていたトレーナーを脱ぎすて

 

   ゴソゴソ ゴソ ・・・ ベッドに潜りこむ。

 

「 ん〜〜〜  あ 電気 ・・・  」

スイッチに手を伸ばし ―  壁のカレンダーに目が行った。

 

   ・・・ もう二月だもんなあ ・・・

  

      あ   14日 !  

 

   もうすぐ じゃないか !

 

   ・・・ フランのチョコ 貰えるかなあ

   彼女 去年は み〜〜んなに配ってけど・・・

   海岸通り商店街の八百屋や魚屋のオッサン達にまで

   配ってたっけ

 

   フラン〜〜〜  ぼくだけのちょこ・・・

 

   ・・・ だめ ??

 

 

彼はずっと  あの日のチョコ とは無縁だった。

勿論! モテないなんてことじゃない。

「 ごめん。 お返しとかできないから 受け取れないんだ 」

小学校の高学年から始まって 中・高 と あの日 には

そう言い続けた。

彼の生活していた環境から それは仕方のないことだったのだ。

そして その結果 ― ギリ も 本命 も 来なくなっていた。

 

  と  こ  ろ  が。

 

とんでもない運命に翻弄され 全く異なる人生を歩むこととなり・・・

金髪のパリジェンヌと巡り逢った。

 

     ―  好き なんだ!

     うん 最初に出会ったあの時から。

 

     だから ・・・

     今は 本当に 本当に 欲しいんだあ

     くれるかな 貰えるかな

 

     ギリ じゃなくて 本命チョコ !

 

今年、 ジョーは密かに、そして か〜なりナーヴァスに

その日 を見つめていた ・・・ のである が。

 

  バサリ。  雑誌を放り投げベッドにひっくり返る。

 

「 ふ 〜〜〜 ・・・ 

 そりゃね ギリ は貰えるさ。

 フラン、今年もみ〜〜〜〜んなに配るだろうから さ。 」

けど。 と ジョーはかなり本気だ。

「 でもさ ・・・ 一つ屋根の下 に暮らしてるんだぜ?

 笑顔で おはよう や おやすみ を言ってるんだよ?

 ・・・ 一緒にゴハン食べてるし 

 そりゃ さ  付き合ってクダサイ とか 好きデス とか

 コクってないけど ・・・ 」

 

う〜ん ・・・ 彼は伸び〜をする。

 

「 フラン モテるからなあ ・・・

 可愛いし美人だし 皆にあの笑顔、だもん。

 めちゃくちゃ優しいし でも いざって時には強いし☆ 

 うん モテて当たり前だよなあ

 パリの頃も  今でも モテモテだよ きっと。

 ・・・ でもでもでも〜〜 ぼくだって好き なんだぜ  

 

天下の?009、最新最強のサイボーグ戦士は 

ベッド転がって巷の女子中学生みたいに悶々としているのだった。 

 

「 あ〜あ ・・・  ん?

 あれ ・・・ あの音・・・ リビングの < 太郎 > かも 」

カバ!  彼は跳ね起き、部屋を飛び出し階下へ駆け下りた。

 

< 太郎 > とは 博士とイワンが改良した一種の すかい〇 で

仲間達の連絡手段として リビングに設置してある。

 

「 は〜いはいはい 今 でま〜〜す ! 」

どたどた どた ・・・ ジョーはリビングに飛び込み

件のメカの前に座った。

 

「 はい もしもし〜〜〜 ジョーです〜〜 」

「 ・・・ 待たせるな〜〜 」

onにした途端、モニターには アルベルトの仏頂面が現れた。

「 ご ごめん ・・・ でもさ〜 今 何時だと 

「 ふん。 009がなにを言うか。

 博士はもう休んでいられるか 」

「 あ うん。 もう寝室だよ 

「 そうか。 それなら伝言をたのむ 」

「 いいよ。 でも 明日、いい時間に直接話したたら? 」

「 いや。 必須事項はメール済みだ。 追加に説明したいことが

 ある。  ちゃんと聞け。 」

「 え〜〜 そんなら 博士、起こしてくるよ 

「 おい! ご年配に無茶するな。

 今から言うから ジョー、お前 暗記しろ 」

「 え え 待ってよ〜〜 あ 声、記録しとくからさ 」

「 いいから 覚えろ。 お前にもアタマの片隅にいれて

 おいてほしいコトなんだから 」

「 うえ・・・ 

「 いいか? まず エンジンの ・・・ 」

「 ひぇ ・・・ 」

アルベルトは ドルフィン号搭載のエンジンについて 滔々と

話し始めた。

「 う  え ・・・  あ ? あ〜〜  うん うん 」

最初は 目を白黒〜〜必死で話の内容を覚えようとしていたが

 途中から 彼の表情が変わった。

エンジン系の事項だったので ジョーは興味を持ったのだ。

「 ・・・うん うん ・・・ わかった。 

 あ それでそこも変更するんだ? ・・・ あ 変換するだけ?

 うん うん ・・・ そうか。 了解。 

最初とは打って変わって ジョーは充実した表情になっていた。

 

「 頼むぞ。 お前の意見も入れていい。

 俺たち 使用時の意見として 博士に伝えてくれ。 」

「 うん 了解。 」

 

    そっか ・・・ そういうつもりだったんだ?

    ぼくがここで聞けば ぼくも理解できるもんな

 

    ふ〜〜ん ・・・

    さすがだな〜〜 能率と効率の鬼!

 

「 なんだ?? なんの鬼 だって?? 」

「 あ ううん なんでもない〜〜〜 

 博士にちゃんと伝えるからさ 安心してよ 」

「 おう。  時にジョー、まだ寝てなかったのか 」

「 あ うん もう寝よって思ってたとこ。 」

「 ふん 青少年はいろいろあるから ・・・・

 ベッドで悶々〜〜 というトコか 」

「 ・・・ ま ね 」

「 フランと上手くいってるか 」

「 ! な  なんにもないってば。 ぼく達はそんな ・・・

 チョコだってもらえるかどうかわかんないのに 」

「 は あ・・? チョコ?? 」

「 あ ・・・ うん。 あのう 2月14日 だから さ 」

「 ??  ・・・ あ〜〜〜 あの。

 お前の国の チョコレート騒ぎ か 」

「 騒ぎかもしんないけど ・・・

 あのね 好きなコにチョコ 貰えるかどうかって

 一番の重要事項なんだもん。 

「 はあん?  なんだ お前。 自分がもらうことばかり

 考えているな!  

「 だってさ この日に貰えるかどうか・・・は

 男子にとってマジ 大切なことなんだってば! 

 ギリか 本命か って問題もあるし〜〜  」

「 お前は? 」

「 へ?? 」

「 お前はフランになにを贈るつもりか 」

「 フランに? ・・・ ああ ホワイト・デーには

 ばっちりお返しするつもりだけど? 

「 なんだ その ほわいと何とか は。 

 そうじゃなくて。 お前さんはその日 なにを贈るのか と

 聞いてるんだ ! 」

「 へ?? だって 2月の14日 だよ?? 

 オトコがチョコを貰う日 じゃん 」

「 お前の国 東の果ての島国では な。 」

「 ・・・ だからなんなのさ 」

「 ジョー、お前さんの想い人は 今現在日本に住んではいるが。

 生まれも育ちもヨーロッパなんだ。 

 わかっているのか 」

「 知ってるよ、もちろん!

 フランは パリ生まれのパリ育ち、ぱりじぇんぬ だろ 」

「 まったくわかってない な。

 パリ、いや ヨーロッパや多分アメリカでも 

 あの日は恋人同士だけではない 親しい友人同士 やら

 家族でも 日頃世話になっているヒトにも

 プレゼントを贈り合うんだ。 」

「 え チョコ を? 」

「 チョコもある。 スウィーツやら花束なんぞも贈るぞ。

 彼女は そんな習慣の中で育ってきたんだ。

 − わかってる な!? 」

「 は はいっ!! 」

ジョーは思わず 背筋を伸ばし返事をしてしまった。

じゃあな、と アルベルトは素っ気なく通信を切った。

 

   ・・・ う 〜〜〜 ん ・・・

   

   フランってば なにが好きなのかなあ・・?

 

彼女のことをいろいろ 考えてみる。

 

「 フランのこと、なんで好きかって ・・・

 そりゃ 可愛いし美人だし? ちょっこし気が強いけど

 そこも好きだな〜〜 

 優しいし 頑張りやだし。

 なにより ぼくのこと、よ〜くわかってくれてるもんな〜 

 

    !    けど。    ぼく は・・?

 

   彼女のこと  なんにも知らない かも・・・

   フランのこと 全然わかってない よ ぼく。

 

    < 貰うコト > ばっか考えてるじゃんか!

 

ジョーは ヒーターも切れ、冷え冷えしてきたリビングで

考え込んでしまった。

 

 

翌朝。

 

  トントン。

 

ギルモア博士は 寝室のドアのノックの音で目が覚めた。

「 ・・・ う  ん・・・? なんじゃ ・・・

 ・・・ まだこんな時間じゃないか 

通常、博士はかなり早起きなのだ。

しかし 寝ぼけマナコで確かめた目覚まし時計は まだ夜明け前の

時間と示していた。

「 ・・・ なにごとか ・・・ ちょっと待っておくれ 」

もぞもぞ起き上がり ガウンをひっかける。

「 ・・・ったく ・・・こんな時間に ・・・

 どこか電気でも切れたのかね ・・・ ジョーに頼め ジョーに・・・

 ああ アイツが起きるわけ ないか  」

 

  トントン。  控えめなノックはまだ続く。

 

「 いま でる。  ・・・ ジョーはどうした 」

ぶつくさ言いつつ ドアを開ければ ―

「 ・・・ なんだね? ジョーは? 」

 

博士の目の前には そのジョーがにこやかな顔で立っていた。

「 !? じょ ジョー ??? 」

「 博士〜〜〜 おはようございます! 」

彼は ぺこん、とアタマを下げた。

しっかり着替えている。

「 あ ・・ああ おはよう ・・・ 」

「 あの! 昨夜 アルベルトから連絡がありました!

 仔細はメールしたそうですが 伝言があります 」

「 あ? ・・・ ああ そうかい。 」

「 はい! お伝えします 」

「 あ ああ ・・・ 

「 はい。 ドルフィン号のエンジンの改良の件で ・・・ 」

ジョーは 数字の羅列も含め滔々と話し始めた。

「 ・・・・ 」

博士は 黙って彼の顔をじ〜〜〜〜〜っと見つめていた。

「 〜〜〜  で 以上です。 」

「 了解した。  それで 君は彼の報告について

 どう思うか。 ジョーの意見を聞きたい。 」

「 ・・・ はい?? 」

「 君がアルベルトから聞いた報告への君の論評を言いたまえ。 」

「 ・・・ あ あのう〜〜 」

「 なんだ 」

「 アルベルトの報告って ・・・? 」

「 !? 今 君がべらべら喋ったではないか。

 昨夜 聞いたのだろう? 」

「 ・・・ ぼく 丸暗記しただけ なんで ・・・ 」

「 ! ・・・ お前なあ〜〜 」

「 はい? 」

ジョーの表情は 底抜けに明るい。

「 いや ・・・ なんでもない。  ごくろうさん 」

はあ 〜〜〜 博士は大きくため息を吐いた。

 

    スマホ世代 ってことか ・・・

 

「 お伝えしましたので〜〜  じゃ ぼく ちょっと出かけます。

「 ?? ああ 朝のジョギングか 」

「 え?? いえ。 買い物に行ってきます 」

「 この時間にか?? 」

「 あ? ・・・ あ そっか〜 まだどこも開いてませんよねえ〜

 あははは 明るくなったな〜〜 と思ってすぐ報告に来ちゃいました 」

「 ・・・ そうかい それは ・・ ご苦労 ・・・

 あのな ジョー 

「 はい? 

「 行動する前に 時計くらい見ろ。 」

「 はあ 

「 ・・・ 」

博士は ふか〜〜〜いため息と共に ドアを閉めた。

「 ?? 博士、 徹夜でもしたのかな〜〜 眠そうだったけど・・・

 ま いいか。 アルベルトの伝言は確かに伝えたし。

 うん 買い物リストをもう一回確認しておこっと 」

ジョーは ものすご〜〜く軽い足取りでキッチンに降りていった。

 

 

  そして − ジョーは ・・・

 

ごく普通の時間に  ごく普通の笑顔で ごく普通の朝食を

博士とフランソワーズと一緒に摂った。

その後、 各人はそれぞれの日常の行動に移った。

 つまり ジョーはアルバイトに フランソワーズはレッスンに 出掛け

博士は研究室に閉じこもった。

ギルモア邸では ごく普通の一日が始まった ・・・ のである が。

 

 

その日の午後 ―

 

 タタタタタ ・・・  

ジョーは 駐輪場から出て 人混みを巧みにすり抜ける。

駅向こうの大型ショッピングモールは かなりざわざわしていた。

 

   午後は混むんだよなあ 〜〜〜 

   急がなくちゃ!

 

彼は 一目散に目的の売り場に飛び込んだ。

ほわ〜〜ん ・・・なんだか甘い香りが流れくる。

集まっているのは − この時間、ほとんどがオンナノコ、

所謂 女子中学生やら女子高校生 ・・・

いつものジョーなら こそ・・・っと避けて通る。

 

  しかし 本日、彼は目的の売り場の棚しか目に入っていない。

 

「 ・・・ うわ〜〜〜 いっぱいあるなあ ・・・

 えっと 必要な物は ・・・ 」

買い物リストをひっぱりだし、熱心に売り場を巡り始めた。

 

 ざわざわ  ざわ ・・・   女子達は目敏いのだ。

売り場の棚に集っていたカノジョらは すぐに気が付いた。

「 ・・・え。  ちょっと あのヒト・・・? 」

「 わ! え??  彼 チョコ 作るのかあ・・・ 」

「 ・・・ 誰に? 」

「 そりゃ・・・ 彼氏? 」

「 か 彼氏ぃ?? 」

「 ! あ〜〜 多様性の時代だから さ。 ほら 」

「 あ そか・・・ 彼に彼氏がいたって 」

「 いい んだよ ね・・・ 祝福してあげなくちゃ 」

「 う ・・・ そ そだね ・・・ ( 涙 ) 」

 

   「「 彼氏に チョコ、頑張ってね〜〜  」」

 

ジョーは 見ず知らずのオンナノコ達にエールを送られてしまった。

 

         は ・・??

 

そんなわけで? ジョーは買い物袋を大事そう〜〜〜に抱え

にこにこと 岬の家に帰ってきたのだ。

 

   とにかく!  チョコ、作る!

   そんでもって 贈るんだ。  フランに ・・・!

 

( で 冒頭のシーンに戻る、なのであります )

 

 

 

          ***********

 

 

 

 ゴソゴソ カチャン。  ゴソゴソゴソ ・・・

 

キッチン中に 甘い香りが漂っている。

「 えっと ・・・ トリフに フルーツボンボンに ・・・っと。

 ふふふ〜〜 いろんな材料、買ってきちゃった♪ 」

フランソワーズは ご機嫌ちゃんだ。

「 ラッピング材料まで一緒に売ってるんですものね〜〜

 助かっちゃう♪  ホント、盛んなのねえ 」

 

キッチンのテーブルに材料を並べてみた。

 

「 いっぱい買ったし、お友達 皆にチョコを贈りたいわ。

 バレエ団の友達や先輩にも。 事務所の方にも贈るの。  

 あと・・・ コズミ先生でしょう、 博士でしょ。

 あ 大人とグレートにも! 

 ・・・ ふふふ〜〜 ジョーの分は 特別♪ 」

 

ふんふんふ〜〜ん♪  ハナウタ混じにキッチンを行ったり来たり。

チョコ作りに必要な道具を引き出しやら棚から取りだした。

 

「 さあて と。 今日の午後は誰もいないから・・・

 ばっちりチョコ作り、集中できるわぁ 

 あ エプロン エプロン〜〜っと 」

 

お気に入りのブルーの小花模様のエプロンをすれば

ウキウキ度はますます上昇〜〜 チョコも溶け出す情熱かも・・・

 

 

この国にきて その日のこの国での意味 を知った。

最初はどうして女子だけが盛り上がっているのか 不思議に思えた。

コンビニでも スーパーでも 地元の地味なお菓子屋さんでも

 そして 和菓子屋さんでさえ チョコレートがならんでいる。

「 な なに??  チョコ祭でもあるの?? 」

不思議に思ってよ〜〜く見れば ・・・

小奇麗に包まれた小さなチョコが 山と積んであり

同じコーナーで チョコ作りの材料がならんでいる。

 そして 常時客がうろうろしていた ― 全年齢の女子が。

 

「 この国は 皆 チョコが好きなのかしら・・・? 」

首を捻っているうちに TVなどでもチョコレート売り場が

話題となってきた。

 

「 ??  え?  ばれん たいん で〜 ・・・? 

 ああ! あのヴァレンタインデ― のことなんだ ・・

 でもどうしてチョコと関係があるのかしら?? 

 

    女子が 想う相手に告白しつつチョコを贈る ( 本命 )

    日頃 一緒に働く同僚にちょこっと贈る  ( ギリ )

    頑張った自分への美味しいご褒美   ( 最近増加中 )

 

以上三種について知ったには その年のその日になってから だった。

 

  ふうん ・・・ そうなんだ?

  わたしもチョコ、作りたいけど ・・・ もう間に合わないし。

  しょうがないわね  ま いっか。

  う〜〜ん そうだわ。  

  今年は あのちっちゃいチョコさんをいっぱい買って

  配るわ!

 

フランソワーズは 小粒のチョコを山ほど買って 5〜6粒づつ

セロファンで包み リボンを結んだ。

それを ―  周りの人たち み〜〜〜〜んなに配ったのだ。

バレエ・スタジオの皆や 地元の商店街のお店にまで。

 

  うふふ・・・ 結構喜んでもらえたかも♪

  ええ そうよ! これは おまつり なのよね

  わたしも 来年は御祭にのっかって楽しんじゃお!

  レシピもいっぱい仕入れておくわ

 

フランソワーズは わくわくしつつ翌年の < その日 > を

待っていた。

 

 

クリスマスが過ぎ、年が改まり。

節分 という豆を投げる変わった行事が終わると 

スーパーやコンビニに どどど〜〜〜っとチョコが並んだ。

 

そして 本日、張り切って買い出しに行ってきたのだ。

 

  でた〜〜〜〜 ♪

  チョコ満載〜〜〜 うふふ 待ってたのよ〜

 

  お友達も先輩も み〜〜んなにチョコよ♪

  ・・ギリ っていうのでしょう?

  皆さんに作りたいの 皆で楽しみたいわ

 

  え  本命・・・?  それは・・・ うふ♪

 

  あ。  ジョー ・・・ 

  わたしなんかのチョコ  受け取ってくれるかしら

 

  彼 ず〜〜っとモテモテだったでしょうし・・・

 

  ・・・ 年上のわたしから なんか ・・・

 

すこしばかりしょぼん、としてしまったけれど。

甘い香りが慰めてくれる気がした。

 

「 いいの。 作るだけでも楽しいもの。

 ・・・あら?  お砂糖がかなり減ってるわね?

 なあに これ。  スライス・アーモンド??? 

 わたし、買ったかしら??  レーズン??  ヘンねえ・・・ 」

しばらく周りを見回していたが ― 使い慣れたキッチンには

小さな 異変?  が見つかった。

 

    あれえ ・・・ 誰かキッチン、使った??

    博士が お料理でもなさったかしら・・・

  

    ううん だってやたら減ってるのはお砂糖だけ よ?

    ジョー ・・・?  まさか ね。

    彼が自信をもって作るのは かっぷめん だけだもの。

    じゃ 誰が ・・・? 

 

    ・・・ 気のせい かしら。

 

    ま いいわ。 

    さあ たくさん作りますよぉ〜〜〜

 

    あ  本命 は 別です♪

    じっくりオイシイの、作るつもり☆

 

フランソワーズは 腕まくりをし調理台の前に立った。

 

「 ふんふんふ〜〜〜ん♪

 とにかく 御祭 ですから〜〜 楽しく がコンセプトよ。

 でもね 本命さん には ココロを込めて ・・・

 うふふふ ・・・ あ い し て る ♪ 」

 

   ちゅ。  最高の笑みとキスを 宙に投げる。

 

 

「 ! へ〜〜〜〜〜っくしょ !!! 」

その頃。  島村クンは 盛大なくしゃみを連発していたそうな・・・

「 ・・・ 花粉症かなあ ・・・ へっくしょ ! 

 へへへ  フランへのチョコ、出来たよ〜〜〜ん 

 

最新型最強の万能型・サイボーグは 思いっ切りにまにま〜していた。

 

 

Last updated : 02,11,2020.                index      /     next

 

************   途中ですが

毎年 繰り返す チョコ騒動〜〜〜

ジョーも フランソワーズも しっかり巻き込まれ

でもね 二人とも 本命 はとてもとても真剣 (^◇^)