『  夏休みの思い出   島村すぴか・島村すばる  そのA   』

 

 

 

 

 

 

 

 

キャンプ隊は無事に朝を迎えた。

「 おっはよ〜 お父さんッ 」

ジョーが起き出して寝袋を畳んでいると、すぴかがごそごそテントから這い出してきた。

「 おはよう、すぴか。  早いなあ〜 」

「 うん! お日さま出てくるの、見たかったんだけど〜 負けちゃった。 」

「 さっき出てきたばっかりだよ。 お日様も起きたばっかりさ。 」

「 そっか〜〜 出来立てのお日さまだね。 」

 

    おはよ〜〜〜 お日さまぁ〜〜〜〜

 

すぴかは両手をぶんぶん振ってお日さまに御挨拶をした。

朝の空気はとってもキレイで 澄んだお水みたいだった。

ぷは 〜〜〜〜 ・・・・ !

すぴかはお日さまに向かっておっきく深呼吸をした。

「 お父さ〜ん 空気の味がちがうねっ ! しゅわしゅわしゅわ〜〜ってお口で溶けるよ〜 

「 しゅわしゅわ〜か。  ふう〜〜〜ん、 すぴかは面白いこと、言うんだなあ。 

 うん ・・・・ 本当だね   ・・・ うん 美味しい・・・ 」

ジョーは娘と一緒になって深呼吸した。

 

  夜明けの空気を こんなにのんびりと味わうのは ― もしかしたら初めてかもしれない。

不寝番をして迎えた朝、  日の出を合図に出撃を待つ朝、そんな緊迫した朝は

数限りなく経験したけれど 純粋に夜明けを喜ぶ朝は今だかつてなかった。

( ・・・普段はぎりぎりまで寝坊してることが多いし・・・ )

 

     チビ達にとって朝は いつもこんな存在であって欲しいな・・・

 

ジョーは すぴか曰くのしゅわしゅわしゅわ〜〜っとした空気を心ゆくまで味わっていた。

 

「 さ〜あ  朝御飯の準備だぞ。  すぴか、鍋に水を入れてくれ。 

 お父さんはパンを切るからね 〜 」

「 は〜い!  ・・・あれ。 お父さんってば パン、持ってきたの?

 昨日のにもつに入っていたっけかなあ・・・  」

「 え  え〜〜とォ ・・・ そ そうなんだ、リュックに詰め込んでもってきたんだ。 」

「 ふうん ・・・  すごいね〜〜   はい、お水、いれました。 

「 よ よ〜し・・・  それじゃ・・・これを沸かして紅茶、淹れるぞ。 

 あれ?  すばるは? 

「 ・・・え〜?   あ  まだベッド・・・じゃなくて寝袋の中だあ〜〜

 アタシ、起こしてくるね!   すばる〜〜〜 起きろォ〜〜〜 ! 」

すぴかは テントの入り口をばさ・・っと開けて中にむかって声を張りげた。

「 ・・・ ちゃんと起きてるってば  すぴか。 」

テントの中では  すばるが寝袋の上に ぼ〜〜〜っと座っていた。

「 起きろってば ・・・ あ れ? な〜んだあ 」

「 僕 さ。  昨夜 ・・・ 見たんだ・・・ 」

「 え。 なに〜〜  

「 昨夜 ・・・ 虫さんの声とかJRの音、聞いてて。 次に目が覚めたら ・・・

 お父さんの上に いたんだ  ・・・ 見たんだ 僕。 

「 だから〜〜 なにを見たのさ? 

「 ウン ・・・ あれは夜の女神さま だと思う。

 だってね ・・・ 長い髪がね お月様みたくきらきら光っててね 」

「 よるのめがみさま?? 」

「 うん! すっご〜〜〜〜くキレイなヒトだった!  ふわ〜ん・・・・って・・・ 」

「 ・・・どこで見たの。 」

「 ここ!  セミさんの羽みたいな服でね!  お父さんの上にとまっててね 」

「 止まった・・・って チョウチョじゃないよね。 」

「 ちがうよお〜〜 あれは絶対に 夜の〜 」

「 え〜〜と? すばる君? 起きたのかな〜〜〜

 うォっほ〜〜ん! お喋りは後にして朝御飯の準備を手伝ってくれるかな〜 

 野菜はどうやってたべるかい。 

すぴかの後ろから お父さんがなんだか顔を赤くして割り込んできた。

「 あ〜〜 お父さん おはよ!  うん! 僕 さらだ、作れる〜〜 」

すばるはわたわた着替えると テントから飛び出してきた。

「 そ  そっか〜? それじゃ・・・サラダはすばるに頼もう。 すぴか、手伝って。

 お父さんはお湯を沸かすからね〜 」

「「 は〜〜い〜〜〜!  」」

子供たちは ママゴトじみた <朝ゴハンの準備> に夢中になっている。

 

    ― よ 夜の女神さま・・・ か ・・・

    あは ・・・・ 参ったなあ ・・・・

    すばるのヤツ、 起きてたのか・・  ヤバ〜〜

    寝ぼけててくれて・・・ よかった・・・!

 

ジョーは固形燃料に火をつけつつ そっと冷や汗とぬぐった。

 

  ―  昨夜。

子供たちを寝かしつけたあと、 ジョーはまだ眠る気になれずに寝袋の上に寝転んで空を眺めていた。

 

    月が きれいだな ・・・  

 

「 ・・・・ ジョー ・・・・ 」

ふわり・・・と白っぽい影が 側に寄り添った。  はらり、と零れる髪が月明かりに煌く。

「 ・・!?   」

ジョーは一瞬ぎょっとしたが  ― すぐに馴染んだ香りが鼻腔を衝いた ・・・

「 ・・・あ  ああ ・・・・ きみか ・・・・ 」

「 ふふふ ・・・ 見飽きた顔でがっかりした? 」

「 いいえ 奥様。   でも今晩は一人でゆっく〜〜〜りベッド占領して寝る! 予定だったろ? 」

「 うふん ・・・ 予定は未定、です。 ― ねえ わたしも参加したいの。 」

「 へ?? 」

「 夜くらい・・・・ キャンプ隊に合流させてよ ・・・ 」

「 ・・・ ・・・ 」

ジョーは笑って ・・・ そのまま彼女を引き寄せた。

だまって顔を見合わせて 二人はどちらからともなく腕を絡めあい 唇を求め ― 

二人の世界に没入した。  たちまち熱い吐息が夜の空気に混じり立ち昇ってゆく。

 

    「  ・・・ キレイなお月さま ・・・・ 」

 

やがて彼女は彼の腕の中、月の光とともにやわやわと彼に覆いかぶさった ・・・ 

梳き流した髪がきらきら・・月明かりに輝いてとても神秘的だった。 で ますます燃えたのだけど・・・

  ― そのシーンをムスコはぼや〜〜っと見ていたわけだ。

 

    やっべ〜〜・・・・ フランにバレたら大変だよ・・・

    自重 自重〜〜っと。   

    ま ・・・ 夜の女神様の御降臨・・・ってことにしておこう・・!

 

ジョーはそっと冷や汗と拭った。

「 さ〜〜あ ・・・ 紅茶が出来たぞ〜 お砂糖はいれるかい。 」

「 アタシ〜〜 ミルク・ティー ・・・できる? 」

「 僕も!  でもう〜〜んとお砂糖もいれて。 」

「 よし。  ほれ、ミルクと砂糖だ。  」

ジョーはスティック状のシュガーとミルクを取り出し子供たちのカップに入れた。

二人は妙〜〜な顔で ちろり・・・と紅茶を舐めた。

「 ・・・・いつもとちがう味だね? 

「 牛乳って粉になるんだ〜 」

「 そうだよ。  これは携帯用ミルクさ。 」

「 ふうん ・・・・ ちょっとちがう紅茶だね? 」

微妙〜な顔で味わっている子供たちに ジョーは別の話題を振った。

「 あ それじゃ キャンプの記念撮影しよう〜〜〜 さあ 並んで。 」

「「 は〜〜 い 」」

二人はテントの前に にこにこ顔を並べ父の被写体になった。

ジョーは上手く背景をいれたので とても裏庭キャンプ にはみえない。

「 よし・・・っと。 さ  それじゃ。 」

 「「「 いっただっきま〜〜〜す♪ 」」」

キャンプ隊はにぎやかに朝ゴハンを食べ始めた。

 

「 お父さん、僕ね 昨夜ね ・・・いろんな音、聞いたんだ。 」

「 いろんな音?  あ 虫の声だろ〜 お父さんも聞いたぞ。 」

すばるはもごもご・・・パンでお口がいっぱいらしい。

「 む ・・・・  む ・・・・むぐ〜〜   っとね あとね JRの音も! 」

「 え〜〜〜 JRなんて遠いじゃ〜ん 聞こえないよ〜〜 」

「 聞こえたよ。  ちっさ〜〜な音だったけど。 僕、ちゃんと聞いたもん。 」

え〜〜〜 そお おお??? 夜中に電車、 通る?  」

「 ・・・だって聞こえたもん! 」

「 ああ うん・・・ 夜中はねえ、静かだから音も伝わり易いんだ。 

 それにね 普通の電車が通らない時間には貨物列車が通るんだよ。 」

「「 ふう〜〜〜ん 」」

姉弟は色違いの瞳をまん丸にした。

そっか、夜間 外に出る、なんてことはないものなあ・・・とジョーは妙な風に感心していた。

 

    あ ・・・ そうだ。  すばるのヤツ、JRの写真、とか言ってたなあ・・・・

    すぴかは ・・・ 遠泳かあ・・・・ う〜ん ・・・?

 

「 あ〜〜 こげちゃったぁ〜〜 」

「 あははは・・・ すぴか 超・とーすと だね〜 」

子供たちはパンを火で焙って喜んでいる。

ジョーは ソーセージを焼くついでに焼き・とまと だの 焼き・キュウリ だのを作って

チビ達に上手く食べさせた。

マヨネーズなんかなくても 二人とも大喜びで食べた ― 野菜な苦手なすばるもキレイに平らげた。

子供はいつだって珍しいモノ好きなのだ。  

そして ・・・

寝袋とテントをたたみぜ〜〜んぶを背負って裏山の泉にゆき食器を洗い  ―  キャンプ隊は帰還した。

 

 

 

 

帰還の夜、キャンプの報告会 は大盛況のうちに終了した。

  ― もっとも聴衆はお母さん一人だったけれど。

 

すぴかは夜明けの空の色とか出来立てのお日さまの様子や、空気の味のことも報告した。

「 でね でね! と〜〜〜っても美味しかったの! しゅわしゅわしゅわ〜〜って! 」

「 まあ ステキね!  お母さん味わってみたかったな・・・ 」

すばるはゆっくりと御飯が煮えるところとか まっくらでもまっくらじゃない夜、とかのお話をした。

「 とぉ〜〜〜くからね JRの音が聞こえたんだ!  たたたーーーん たたたーーーんって。 」

「 まあ そうなの?  お母さんも聞いてみたかったわ・・・ 」

「 さあさあ  二人ともいっぱい報告できただろう?  そろそろ寝る時間だよ。 」

「 報告 ありがとう!  ああ お母さんもいっしょに行きたかったな。 」

「「 おかあさ〜〜ん 」」

「 さ ・・・ じゃあもうお休み。  キャンプのことは旅行記になるかな。 」

「 アタシ 書くね! 」

「 ・・・ 僕も。  夜の女神様のことも。 」

「 夜の女神様??  なあに、それ。  すばるが見たの? 」

「 ウン!  あのね ふわ〜〜〜・・・って ・・・お父さんの上にとまっててね・・・

 お月様よかきらきら光る髪でね〜〜 」

「 ・・・ え ・・・ 」

「 あ す すばる・・・ それは あの〜〜 夢かもしれないからさ・・・ 

 さあ 二人とも  お休みなさい だよ。 」

「「 は〜い  お休みなさ〜い お父さん お母さん 」」

二人はものすご〜〜くご機嫌ちゃんでリビングを出ていった。

 

   ―  カラン ・・・

 

グラスの中で氷が触れ合って涼し気な音をたてた。

「 どうぞ?  チューハイだけどロックにしてみたわ。 」

「 ああ ・・・ ありがとう ・・・・  うん ウマイな・・・・ 」

「 ふふふ ・・・  キャンプ監督、 お疲れ様でした。 ・・・大変だったでしょう? 」

「 まあな ・・・ でも久々に飯盒炊爨なんて楽しかったよ。 メダカ御飯は避けられたし。 」

「 ?? メダカ御飯??? 」

「 いや・・・ 別になんでもない。 ま・・・チビ達もそれなりに楽しんだし。 」

「 そうね。 すぴかもすばるも報告しててすごく嬉しそうだったわ。 」

「 うん ・・・ あ  あのさ。 きみにお願いがあるんだ。 」

「 はい? 」

「 うん・・・ ちょこっと その・・・ 耳と目 をつかって欲しいんだ。 」

「 ・・・ 耳と目  ?! 」

「 うん。 すばるが言ってただろ、 夜のJRの音が聞こえた・・・って。 」

「 ええ ・・・  それが なにか? 」

「 その 音  なんだけど。 ちょっと聞いて光景をみてくれるかな。 JRの踏み切りの方だ。

 アイツの夏休みの夢って 海のJRが見たいって言ってたろ? 」

「 そうだったわね。  ・・・ ちょっと待ってね ・・・ 」

フランソワーズは ソファで姿勢を正すと意識を集中した。

 

「  ・・・・・・・・・   あ   きたわ  ・・・・ 長い ・・・! 」

 

ジョーは思わず身を乗り出した。

「 ・・・ これは貨物列車ね。 いろいろな車両が沢山連なっているわ ・・・  

 タタン ・・・タタン ・・・・って ・・・・ あら これはすばるが好きそう・・・ 」

「 ああ やっぱり・・・ それ すばるに見せてやりたいなあ。 

 そっかあ  ・・・ ありがとう、フラン。 」

フランソワーズは 一度 目を瞑り、通常の視覚・聴覚に戻した。

「 ― 連れていってやるか。  」

「 そうね! きっと すごく喜ぶわ。  

 あ ・・・ すぴかは ・・・ お父さんと遠泳したい・・って ・・・ 」

「 う〜〜ん ・・・・ ウチの前の海、じゃあ代わり映えしないよなあ・・・ 

「 それにここの海は 近深で子供には危ないわ。  」

「 そうなんだよな ・・・ 」

「 ・・・ あ そうだわ!  ねえ、ジョー、博士が星見会っておっしゃったのでしょ? 」

「 うん、退院したらみんなで・・・って 」

「 それをね、博士の快気祝いにして。 すぴかの遠泳なんだけど・・・ 」

「 え ・・・ なんだい? 」

フランソワーズはジョーにぴた・・・っと寄り添って耳打ちした。

「 な ・・・なんだい?  二人だけなのにわざわざ・・・・  え  ふんふん・・・・ 」

若夫婦は 二人っきりのリビングでこしょこしょ・・・ナイショ話を楽しんでいた。

 

 

 

 

  キャンプ隊が <帰還> した次の週末、 博士は無事に退院をした。

「 さあさあ ・・・・ お疲れになったでしょう? ソファへどうぞ。 クッションを換えましたから・・・・ 」

「 あ それよりお部屋で横になりますか? 」

「 おじいちゃま〜〜〜 はい、冷たいおしぼり!  」

「 むぎちゃ!  ・・・氷とおさとう、入れたよ、僕! 」

「 ああ  ああ  ありがとうよ。  もう大丈夫、心配かけたなあ・・・ 」

博士はリビングのソファに収まり 血色のよくなった頬を綻ばしている。

「 本当に ・・・ もう決して無理はなさらないでくださいね。 」

「 すまんすまん ・・・  チビさんたち、本当に悪かったなあ・・・

 せっかくのお出掛けじゃったのに・・・ 

「 ううん〜〜 おじいちゃま、アタシたち〜〜 きゃんぷ に行ったの〜 」

「 うん! ぶつぶつ〜〜ってゴハンがいってね、夜の女神さまが来たんだ〜 」

双子は目をきらきらさせて てんでに報告を始めた。

「 こらこら・・・ 二人とも、 おじいちゃまはお疲れだよ。 

「 ・・・ おとうさん  」

「 いやいや 大丈夫じゃよ。  キャンプか〜〜 それは凄かったのお 」

「「 うん!! 」」

「 よかったよかった ・・・・ 旅行記 が書けるかな? 」

「 うん! ・・・あ  でも ・・・ お写真・・・ ちょっとだけ かも ・・・ 」

「 僕  ・・・JR の写真 ・・・ うつしたかった・・・ 」

二人は 言葉が詰まってしまいモジモジしている。

「 博士、大丈夫 ちゃんと書けますよ。  あなた達 テントの中のこととか

 晩御飯のこととか書けるでしょう? 」

「 ・・ う  うん ・・・・ 」

「 ふふ〜ん・・・ お父さんから聞いたのじゃがな、ワシに提案があるんじゃが・・・ 

 ちょいと待っておくれ。 」

「 ・・・ 博士・・・ どうぞご無理をなさらないで下さいな・・・ 」

「 いやいや ・・・ワシにはな、 こういう楽しみを考えるのが一番の薬なんじゃよ。

 ジョー ・・・ 次の週末は出勤かい? 」

「 いえ・・・ 夏の間はちゃんと普通に休日ですよ。 」

「 お そうか? じゃあ ちょいと頼もうかな。 おっとその前に検索をして、と。

 ああ そうじゃ そうじゃ・・・ すばる、ほら お前の<しんゆう>も 呼んでおいで。 」

「 わたなべ君?  うん! 」

「 あらあら・・・ 博士 ・・・ 本当にどうか・・・・ 」

「 フラン?  博士にお任せしようよ?  

 元気回復には 楽しいことを考えるほうがいいんだ。 横になったりしているよりもな。 」

「 ああ ・・・ そうねえ・・・ 」

ジョーとフランソワーズは 孫たちに纏わられつつもPCでなにやら熱心に検索してる博士を見て

ほっとする思いだった。

 

 

  次の週末 ― 

双子はしっかりお昼寝をした。  そして晩御飯をしっかり食べた。 お風呂にも入った。  

 

    ポーーーン ・・・・  お玄関の時計が鳴った。

 

いつもだったら < お休みなさい > をする時間なのだが。

お父さんは腕時計を見てたちあがった。

「 さて・・・ じゃ 出かけよう。  すぴか すばる、 仕度はできたかい。 」

「「 うん! おとうさん 」」

「 よ〜し それじゃ出発だ。 国道の四つ角でわたなべ君がお父さんと待っているからね。 」

「「 うん!   」」

「 おじいちゃまとお母さんに いってきます、 をして・・・ 」

「「 いってきま〜〜す!! 」」

「 おう、楽しんでおいで。  ジョーも、な。 」

「 え・・・? 」

「 お前も オトコノコ だろ。 いい写真が撮れるといいな。 」

「 あ ・・・ へへへ ・・・ はい。 」

「 ジョー。 子供達をお願いね。 」

「 了解 ( ラジャ ) ! 」

ジョーは009の顔で 003に返答した。

色違いのアタマは元気にご挨拶をして きゃわきゃわお玄関を出ていった。

やがて すぴかとすばるはお父さんの車でお家の前の坂道を下っていった。

満天の星空が静かに見送ってくれた。

 

 

 

「 よ〜し。 夜間見学隊の諸君! 準備はいいかな。 」

「「「 は〜い 」」」

ジョーの側に小さな影がみっつ、きっちり並んで立っている。

「 よろしい。 それじゃ見学開始の前に・・・よく聞きなさい。 」

「「「 は〜い 」」」

「 いいか。 絶対に一人で駆け出したりしない。 これは約束じゃない、命令だ。 」

「「「  はい! 」」」

暗闇の中から 元気なお返事がみっつ聞こえた。

「 で。  これは宇宙飛行士の命綱だ。 離すなよ! 離したら・・・帰還できないぞ! 」

「「「 了解! 」」」

ジョーは自分の腰につけた三本の洗濯ロープをちょいと引っ張った。 

先っちょは三人の子供たちのお腹をきっちり一周している。

「 よし。  それじゃ ・・・ 各自待機。 」

「 おとうさん ・・・あと どのくらい? 」

すぴかがわくわく顔で父のパーカーの裾を引いた。

 

   ほぼ真夜中。  岬の家からは少し離れたところの線路際に ―

 

車が一台停まっていて、オトナ一人とチビっこ三人の姿が闇の中にもぞもぞしていた。

うすぼんやりと車の室内ライトが 辛うじて辺りを照らしている。

オトナの男性は腰にロープ状のものを結びつけその先には子供の姿が三つ、認められた。

  そう。  ジョーは すぴか、すばると すばるのしんゆう・わたなべ だいち君をつれて

線路際で待機 ―  夜間の貨物列車通過 を見学に来たのだ。

ジョーの思いつきを 博士が詳しく検索して企画をして <夜間見学隊> が発足した。

 

「 あと・・・ 4分30秒だよ、すぴかちゃん 。 」

だいち君が懸命に腕時計をみつめて教えてくれた。

「 あ だいち君 ありがと〜  え その時計、だいち君の? わ〜明りがつくんだ? 」

「 ううん。 お父さんの。 とくべつに借してもらったんだ〜 

「 そうなんだ〜 すごいね 〜  あ だいち君、 山に行ったんでしょ? 」

「 ウン ・・・ でもね ず〜〜〜っとお天気 悪くて。 どっこも行けなかった・・・・

 山のJRの写真も撮れなかったんだ・・・つまんなかった・・・ 」

「 ふうん ・・・ じゃ、これから一緒に見よ? 」

「 うん! 

「 しーーーーーーー !  あと2分でつうかです! 」

お父さんの横から すばるが真剣な顔で <アナウンス> した。

「 録音中はせいしゅくにねがいます〜 

「「 は〜い ・・・ 」」

「 ― よ〜し  そろそろ来るぞ〜  いいかい、命綱、しっかり握る! 」

「 アタシ、お腹に巻いてるもん。 」

「 あ 僕も、すばる君のお父さん。 」

「 僕だって!  ―  来ます ・・・! 

 

   ガタンガタンがタン  ピー −−−−−−− !!   

 

真っ暗な中をライトが夜を切り裂き 貨物列車がやってきた。

 

 

 

 

 「 ・・・・ ぷ はあ 〜〜〜〜〜〜 」

「  すげ ・・・・・  〜〜〜〜 

「 うう〜〜ん ・・・・・  」

 

    ガタターーーン  ガタタターーンン ・・・・・

 

もうとっくにテール・ランプは見えない。

でも三人の耳の底には  あの線路の音がちいっちゃ〜〜〜く聞こえていた。

「 ふぅ ・・・・・  ああ 三人とも どうだった? 」

「 ・・・・・・・・・ 」

すばるもだいち君も そして すぴかも ― はあ〜〜〜って溜息をつくだけだった。

「 夜間撮影用カメラで 何枚か撮ったから。 あとで皆にあげるよ。

 今晩のことも  旅行記 になるかな・・・・ 」

「「「  なる!!!!  」」」

「 さ もうちょっと待つと上りの列車が通るけど・・・ 見てゆくかい。 

 それとも眠いなら帰るよ? 」

「「「  みてく!!!  」」」

「 オッケー。   じゃ写真を一緒に撮ってみようか。 」

「 わあ〜〜〜 いいのぉ??? 」

子供たちはもう興奮しっぱなし・・・ 眠い、なんて誰も言わなかった。

「 お父さん!  ねえねえ〜〜 あの電車 ぎんがてつどう?? お空に飛んでゆくの?? 」

「 ぶ〜〜〜!! アレは貨物列車です。 空は飛びません。 」

「 今のは下りだから ・・・ あ、 東京から大阪かもっと西の方にゆくのかも。 」

「 えっと ・・・ この時間なら ・・・ 」

さすが男の子、 わたなべ君とすばるは鉄道に詳しい。 

もって来た時刻表を懐中電灯の下で広げている。

いつも現実的なすぴかの方が うっとりとテール・ランプの消えた方向をみつめていたりする。

 

    へえ ・・・ 面白いなあ ・・・

 

ジョーは意外な発見をし、彼もこの <夜間見学隊> を楽しんでいた。

 

 

 

  ―  カタン  ・・・・

 

表の門が閉った。

フランソワーズは読み止しの本を置いて 静かに立ち上がり玄関に行った。

ジョーの足音、すこしばかりゆっくりと近づいてくる。

 

 ・・・カチャ ・・・

 

チャイムが鳴る前に フランソワーズはドアを開けた。

玄関のポーチに 両手に双子を抱いた夫が立っていた。

「 お帰りなさい。 お疲れさま・・・ 」

「 ただいま ・・・ みごとに沈没だ。 」

「 あらら・・・ すぴか、引き取るわ。  ・・よいしょ・・・・ あら わたなべ君は? 」

「 うん お父さんがね、迎えに来てくれた。  彼ももうぐっすり、だったよ。 」

「 まあ そうなの・・・ 今晩ウチにお泊りしてもよかったのに・・・ 」

「 ぼくもそう言ったんだけど ・・・ ははは 一人じゃだめ、なんだそうだよ。 」

「 まあ そうなの・・・ そうねえウチだって一人づつだったらどうだか・・・ 」

「 まあな。  ともかくこいつら、寝かせて来よう。 いや〜〜二人だとさすがに重い! 」

「 もう四年生ですものね・・・ よいしょ・・・! 」

夫婦は子供たちを抱き上げ寝室へ連れていった。

 

 

深夜も過ぎそうな時間、リビングで二人はお茶タイムとなった。

「 改めて・・・ ご苦労さまでした。  はい、お茶・・・ 」

「 ありがとう  ・・・ ふふふ ・・・ 結構、いや かなり面白かったよ。 」

「 そうなの? ・・・ オトコノコは幾つになっても電車がすき、ね。 」

「 ・・・電車 ねえ・・・  」

「 ねえ? 

「 ・・・ うん?  きみも徹夜させちゃったかな・・・ 」

「 いいの ・・・ ねえ?  」

「 ? 

「 ・・・ いつか わたしも・・・ 連れていって? 

「 え。  貨物列車を見たいのかい?! 

「 ち が〜うわよ ・・・ 夜のドライブ・・・♪ 」

「 あ ・・・ な〜んだ・・・  ふふふ はい、畏まりました、 夜の女神さま♪ 」

「 ? なあに、 それ。  あ すばるがなんか言っていたわね・・?? 」

「 いやいや・・・ こっちのことで・・・ そうだねえ、一緒に月夜にドライブしようか。 」

「 ええ♪   あ  そうだわ、すぴかの遠泳はどうするの? 

「 うん ・・・ あのさ、 きみの提案におんぶにだっこしてもいい? 」

「 おっけ〜♪ それじゃ・・・ 遠泳はパッチワーク方式で行きましょう。 」

「 お願いシマス。  で さ  星見会は皆で楽しもうよ。 ほら 博士も乗ってくださったから さ。 」

「 そうね。 それじゃ・・・わたなべ君のお父さんとお母さんもお誘いするわ。 」

「 いいねえ・・・ にぎやかな 星見会 して博士の快気祝いにしようよ。 」

「 あら いいアイディアね。   ・・・ ねえ ジョー? 」

「 うん? 

「 楽しいことって ・・・ 捜せばちゃんとあるのね。 」

「 え ・・・? 」

「 有名なテーマ・パークに行ったり、南の島や避暑地に旅行しなくても ・・・

 ウチの近くに知らないトコロがいっぱいあるわよね。 」

「 あは ・・・ そうだねえ。  ぼくは子供の頃、旅行なんかできなかったから

 身近でいろいろ捜したのさ。 」

「 ・・・ ジョーって本当にステキなお父さんだわ♪ 」

「 恐れ入ります、奥さん。  それじゃ・・・ ぼく達のお嬢さんのご希望について

 協議しますか。 」

「 はいはい ・・・ パッチワークね。  というよりリレーかな。 」

「 リレー? 」

「 そうよ。  すばるやわたなべ君や ・・・ 他のお友達もみんな一緒だといいわあ。 」

「 ・・・ あ そうか!  皆で合計すれば・・・ 」

「 ぴんぽ〜ん♪  ここから・・・ ほら、向こうに見える島までの往復くらいにはなるわ。 」

「 向こうに見える島??  ・・・ ちょっとそれって見えるのはきみだけ。 」

「 あ ・・・あら。 ごめんなさいね。 でも 島まで・・・って目標があると楽しいし。 」

「 了解〜〜♪  よ〜し・・・じゃ <あの島>までの地図を検索して・・・っと 」

ジョーは早速PCに向かおうとした。

「 ジョー・・・ 今晩はもうお休みなさいな。  もうじき朝だけど・・・ 」

「 あ そうだねえ。  ふふふ・・・明日、いや もう今日だけど。 朝になったら

 またチビたちは大騒ぎだろうしね。 」

「 ええ。  ・・・ うふふ・・・なんだかわたし達も楽しんでない? 」

「 あ〜 そうだねえ。  ・・・ うん、皆で楽しんじゃおうよ。  夏休みなんだから。 」

「 そうね。   さ ・・・ 休みましょう。  ふふふ・・・今日はお行儀よく ね。 」

「 ふふん、当たり前さ。  こんな短い夜じゃ・・・ 物足りないよ、奥さん♪ 」

ジョーはフランソワーズに軽くキスをしてから 一緒に立ち上がった。

夏の短い夜はもう終わりに近く そろそろ東の空が白み始めている。

 

 

 

「 ただいまッ !! アタシ! 今日はね〜〜 25メートルを5本! 

すぴかが大声で報告しつつ リビングに入ってきた。

「 ねえねえ おかあさん! アタシね〜〜 」

「 はい おかえりなさい、すぴかさん。  ― ただいま は。 」

「 だから今日はね〜〜 」

「 ただいま は。 」

「 あ   う うん ・・・ < ただいま お母さん > 」

「 はい、お帰りなさい。 それで今日の成果はいかがでしたか。 」

「 はい。  あの! 25メートルを5本! クロール、バック、平泳ぎ。  そんでもって

 もういっかいクロールしてから ばったふら〜〜〜い♪ 。

「 まあまあ そんなにいっぺんに泳いで大丈夫? 」

「 へっちゃら〜〜〜♪  あ そだ、ゆみちゃんもねえ 島まで泳ごう!  に参加したいんだって。 」

「 そうなの? ウチはおっけーだけど・・・ いいのかしら。 」

「 うん。 ゆみちゃんとこね〜 おうち、お店屋さんなんだ。 だから長いお休みもないし

 家族でおでかけできないんだって。 」

「 お店屋さん?  どの辺りなの。 」

「 うん、商店街の〜 魚屋さんだよ。 」

「 あら・・・ あの魚屋さんね!   それじゃね、すぴか。 

 こんど一緒におやつ食べよ!ってゆみちゃんを連れていらっしゃい。 」

「 うん いいよ。  嬉しいなあ〜 ゆみちゃん、泳ぐの速いんだ〜〜

 すばるとわたなべ君ってば ちっとも泳がないからさ〜〜 ゆみちゃんが一緒してくれれば

 ずっと速く島まで行けそう〜〜 」

「 よかったわねえ。  それじゃ・・・ゆみちゃんにも好きな色を選んでもらってね。」

「 うん!  ・・・ う〜ん・・・ きっとぴんくだな〜〜 

 あ お母さん〜〜 アタシ、今日の分 塗ってもいい? 」

「 はい どうぞ。  すぴかはブルーなんでしょ。  」

「 うん♪  え〜〜〜っとぉ〜〜♪ 」

すぴかはプール・バッグを放りだして、リビングの壁に向かった。

そこには 大きな模造紙が張ってあり、一番上にはでっかい島の写真がある。

そしてそのずずずず 〜〜〜〜 っと下の方から色とりどりの支柱が伸びていた。

「 25メートルを 5本っと・・・  あれ〜 すばるってばちゃんとプール、行ってるのかなあ 」

「 今日は一緒じゃなかったの? 」

「 知らな〜い。 アタシはゆみちゃんやまりちゃんと 人魚姫ごっこ やってたし。

 すばるの色ってば、 全然塗ってないよね?  お母さん 

「 そうねえ ・・・ こっちの緑色はわたなべ君でしょ? 」

「 そ。  わたなべ君さあ、速くないけどず〜〜〜っと泳いでいられるんだよ。 

 フォームが一番キレイだって 体育の佐藤先生が言ってた。 」

「 まあ そうなの?  お母さん、 皆が泳いでいるの。見たいなあ・・・ 」

「 あ お母さんも参加する?  <島まで泳ごう!> にさ。 え〜〜と・・・・これでいっかな〜 」

すぴかはこしょこしょこしょ〜〜と青いパステルを使っている。

 

つまり ― 作戦参加者の泳いだ距離分だけ支柱を塗ってゆき そして最終目標は

フランソワーズいわく 近くに見えるあの島  なのだ。

「 ふんふんふ〜ん♪  ゆみちゃんが加わればもっと距離が伸びるな〜〜 」

すぴかはご機嫌で 壁の模造紙を眺めている。

「 すぴかさん ・・・ 来年は本当に遠泳しようね、ってお父さんが言ってたわよ。 」

「 ふ〜ん  アタシ この えんえい もすご〜く気に入ってるよ? 」

「 ・・・ すぴか 」

「 これでさあ 進級テストにも合格できそうだし〜〜 

 あ これも 旅行記 に書けるよね、 お母さん、 これも旅行だよねえ? 」

「 そうね。  さあ どんな風に書くのかな〜 すぴかさんは。 」

「 うふふふ ・・・ ナイショ♪  あ ねえねえ オヤツ〜〜〜 」

「 ちょっと待ってね、きっともうすぐすばるが帰ってくるから。 」

「 え〜〜 そうかな〜〜 」

 

「 ・・・・・ただいまぁ〜〜〜 

 

「 あ! すばるだあ〜 」

「 すばる?  すぴかもよ、お使いに行くわよ〜〜〜 商店街まで! 」

「 え〜〜〜 オヤツぅ〜〜〜  」

「 僕ぅ〜〜 疲れた〜〜 」

「 もうちょっと待って。  商店街でガリガ〇君、食べましょ。 」

「「 うわ〜〜〜い♪ 行く 行く〜〜〜  

口を尖らせていた子供たちはたちまちご機嫌ちゃんになり、母は二人を引き連れて地元、商店街まで 

 ― 正確には  魚屋さん までダッシュして行った。

 

  

    ― そうして。  とんとんと〜〜〜ん ・・・ と話が転がって。

 

次の週の日曜の朝はやく ―

 

「 うわあ〜〜〜〜   すっご〜〜〜〜い〜〜〜 」

「 ・・・ つ つめたくない? すぴか・・・ 」

「 へっちゃらだよぉ〜〜 すばる君〜〜  わたなべ君も〜〜 」

「「 う うん ・・・・ 」」

「 すぴかちゃん!  じゃ  一緒にゆこ! 」

「 う うん ! ゆみちゃん ・・・ 」

「「  いっ  せ〜〜の〜〜〜せっ !!!!  」」

 

     じゃっぼ〜〜〜〜〜〜ん ・・・・・!!!

 

少女が二人、 手を繋いで目の前の海に飛び込んだ。

「 ・・・ うわ ・・・ すご・・・ すぴか・・・ 」

「 うん ・・・すぴかちゃんも ゆみちゃんも ・・・  ゆうきあるなあ〜〜 」

船の上では少年が二人 船端で固まっていた。

「 なあ〜〜んだい、坊主達。  オンナに負けてんのか〜〜 」

後ろから野太い声がかかり わっはっは・・・と笑われてしまった。

「 ・・・ ゆみちゃんのお父さん ・・・ 」

「 ほれほれ〜〜  お前たちも飛び込めェ〜〜〜 そうれっ! 

 

     じゃっぼ〜〜〜〜〜ん ・・・・!!!

 

「「 うわあああ  〜〜〜〜 !! 」」

少年達、 すばるとわたなべ君は腰に縄をつけて海へ放り込まれた。

「 わああ〜〜 皆 来たね〜〜〜 」

「 ゆ  ゆみちゃん ・・・・ 」

「 皆 縄がついてるから大丈夫だよ〜〜  ここで皆で泳いでさ〜 <島まで泳ごう> に

 色 塗ろうよ〜〜〜 」

「「「 うん!!!   」」」

 

「 お〜〜〜い  ガキんこども〜〜 命綱、外すなよ! 

「「「「  了解〜〜〜   」」」」

 

   ここは 海岸通りの前の海からず〜〜〜〜っと沖へ行った海の真ん中。

ゆみちゃんのお父さん、つまり魚屋さんのオジサンが 皆を船にのっけてくれたのだ。

すぴかとすばるのお母さんから < 島まで泳ごう > の話を聞いたオジサンは

ものすご〜〜〜く感心して ・・・

 

「 いや〜〜すごいやね〜〜〜 !  すげ〜アイディアだね〜〜 奥さん。

 ・・・よし! 俺もちょっとは協力しますぜ! 

「 え ・・・ 協力って? 」

「 知り合いの漁師から船、借りてちょいと沖で海水浴〜〜 としゃれ込もう・・・ってね。

 遠出は無理だけど、ちょっとはかまってやんないとね。 」

「 あらあ〜〜 ありがとうございます〜〜  あ そのカマスの干物、くださいな。 」

「 ・・・ え。  これですかい。 これ・・・干物ですよ? 奥さん・・ 」

「 ええ わたし、カマスの一塩の干物って大好きなのですの。 

「 ・・・ 変わったガイジンさんだねえ ・・・ 」

 

  ―  なんてやりとりがあり、 子供たちの沖での海水浴が決定したのである。

 

この前の <夜間見学隊> の時と同じく、子供達はがっちり命綱を巻いてもらって

生まれて初めて ふか〜〜〜い沖合いの海で泳いだ。

 

 

 

「 ・・・・ 見えるかい。 」

「 ええ。  うわあ〜〜〜 楽しそうねえ ・・・ 

「 ふうん・・・ いいなあ。  ぼくも一緒に行きたかったなあ 」

邸の下の海岸で ジョーとフランソワーズは海を眺めていた。

ビーチ・パラソルの下を 海風が通り抜けてゆく。

「 ふふふ ・・・ 今回はゆみちゃんのお父さんにお任せしましょ。 」

「 そうだね。  ・・・ でも さ。  ほんと、ステキなことってすぐ側にもあるんだよなあ。 」

「 なあに、捜すのがお得意なのは ジョーでしょう? 

「 ・・・ うん。  ほら ここに一番ステキなこと、みつけた〜〜♪ 」 

「 ・・・ きゃ ・・・ んんんん   ・・・・ 」

ジョーは 細君を抱き締めると遠慮なく唇を奪った ・・・

 

 

 

 

「 こんばんは〜〜  」

「 今晩は、お邪魔します。 」

「 さあさあ  ・・・ どうぞ こちらへ。  」

「 テラスへどうぞ。   ・・・ まあ ありがとうございます、じゃ さっそく。 」

 ― 夏休みも最後の週末の夜、 岬の突端の邸には お客さんがやってきた。

 

だいち君のお父さんとお母さん、ゆみちゃんのお父さんとお母さん、そしてもちろん、だいち君とゆみちゃんも。  

皆 ちょっとづつ美味しそうなモノをもってきてくれた・・・

  そう ・・・ 夏休み最後のイベント、博士の < 星見会 >に参加するためだ。

 

テラスに椅子をやらカウチをもちだして 子供達はレジャー・シートにクッションを敷いて

皆で星見会  ― お父さん達はちょっぴり飲み会っぽかったけど ・・・ が始まった。

博士がやっぱりカウチの上で マイクを手にゆっくりと語り始めた。

  今晩 ・・・ 満天の星空が皆の上に広がっている。

 

「  うぉっほん・・・ あ〜・・・それでは 始めますかな。 

 ―  無限に広がる大宇宙 ・・・ 」

 

オトナも子供も 皆で星の海へと漕ぎ出した。  

 

    

< 今年の夏休みは すっご〜く すっごく楽しかったです。 島村すぴか 島村すばる >

 

 

 

 

********************************      Fin.     ***************************

 

 

Last updated : 08,16,2011.                        back         /         index

 

 

 

*****************    ひと言   *****************

なんにも起きない平凡な夏休みでしたけど ・・・・

ふたごちゃんたちはそれなりに楽しんだ模様です。 

ラストの博士の語りは ・・・ 判る方には判る?はず (^.^)