『 カントリー ・ ライフ ― (1) ― 』
ザザザ。 車が止まった。
「 着いたよ 」
ハンドルを握っていたジョーの声が弾んでいる。
「 え ・・? ここ なの? 」
「 ウン。 さあ 外に出て〜〜 」
「 え ・・・ ええ ・・・ 」
シュ。 ドアロックが開き ゆっくりドアが開く。
「 ・・・ あ ・・・? 潮風 ・・・? 」
ふわん、と流れこんできた風には 海の匂いがすこし、した。
「 海のすぐそばですものね。 ・・・ あ でも ベタベタしていないわ 」
フランソワーズは 思い切って車から身体を外にだした。
わ あ 〜〜〜〜〜 ・・・・・
目の前には 草ぼうぼうの地面が広がっていた。
草地は奥の雑木林につながっていて 背後にはありふれた里山がみえる。
「 ・・・ こ ここ ?
」
彼女は その場に立ち尽くしてしまった。
「 わ〜〜〜 いいねえ〜〜 広くてさあ 」
「 え? 」
ジョーが運転席から出てきて 歓声を上げた。
「 そ そう? 」
「 気持ちいいよねえ 〜〜 わあ こっちの崖下は海かあ ・・・
ふうん ・・・ 下に洞窟があるね 格納庫になるか
「 ・・・ か かくのうこ? 」
「 うん。 ほら こっちきて見てよ フランソワーズ 」
彼は 道の端に駆けてゆき下をみおろしている。
「 ・・・ ・・・・ 」
「 ね? 天然の格納庫だよね ドルフィン号にぴったりかも〜〜
うん いいなあ 」
「 やっぱり・・・必要なの 」
「 え なにが 」
「 だから 格納庫 」
「 そりゃね ・・・ なにが起こるかまだわからないからね。 」
「 ・・・ そう ・・・ 」
「 お〜〜〜 思ったよりも広いなあ 」
後ろの車から 博士が降りてきた。
「 博士〜〜 ね いいですよねえ 」
「 ほう ? 広大だな 」
運転をしていた004も ゆっくりと歩きまわっている。
「 ・・・ そう 思う? アルベルト 」
「 ああ 我々の根城になるんだ。 広大な方がいいじゃないか 」
「 根城・・・って。 だってわたし達の 家 でしょう? 」
「 当然だ。 いざという時はまた全員が集合する。 」
「 いざ・・って なに。 」
「 俺の口から言えっていうのか。 」
「 ・・・ごめんなさい 」
「 疲れているのか? 機嫌悪いな。 」
「 疲れてなんかいないわ。 機嫌も悪くなんかありません。 」
「 それならいちいち突っかかるな。 」
「 突っかかる なんて。 率直な感想を述べているだけです。 」
「 それなら せめてその仏頂面はやめろよ。 」
「 ! 仏頂面 なんて ! 」
「 わかった わかった。 まずは少しでも笑えよ 」
革手袋の手が 彼女の髪をくしゃり、と撫でた。
「 ・・・ わかってます。 」
きゅ・・・っと唇を噛むと 海の方を向いてしまった。
「 ・・・ この頑固モノが ・・・ 」
アルベルトは苦笑し 博士に話かけた。
「 博士。 ここに 家を? 」
「
ああ そのつもりじゃ。 」
「 博士
ここは条件いいですね。 」
アルベルトはぐるりと見回す。
「 ふふん じゃろぅ? 」
「 こんな 辺鄙な荒れ地 が ですか? 」
フランソワーズの口調は まだ少々キツイ。
「 ああ? そうだなあ。
工事をしても目立たんし 近隣からの苦情もこん。
後ろは裏山 前は 海 天然の要塞じゃ 」
周囲を丹念に見て 博士は満足そうだ。
「 ですね どっかのおっちょこちょいが飛んできても大丈夫かな 」
「 ああ だ〜れも気づかんよ おまけに
長年の荒れ地で 二束三文じゃった。
余分な費用はかからん方がいい。 」
「 工事は? 」
「 ああ 普通の住宅としての普請は
業者に頼む。 コズミ君のツテがあっての。
地下ラボ、 格納庫、 防護システムは ― 」
「 あ〜 俺たちでやりますよ 」
ピュンマが もう張り切っている。
「 うむ イワンとワシ で 設計図をひく。
ピュンマ、検証しておくれ。 」
「 任せてくれよ〜 CAD 使えるかなあ 」
「 実際の工事は全員でやります、 勿論 003 は 別ですが 」
「
あら 仲間外れにしないで〜
わたし 食事係よ 」
「 よっしゃ ワテが包丁の使い方 安生 仕込んだるわ 」
料理人が手を打った。
「 わ ・・・ こわ・・・ 」
「 お〜〜 食生活の向上を期待〜〜〜 」
「 グレートはん あんた 仕入れ部隊やで!
あと フランソワーズはんにも使える包丁やら こうてきてや 」
「 へいへい ・・・ 食糧はこの地域は豊富そうだな 」
「 うん。 なんでもあるよ 海のモノもの 肉類もね〜〜 」
「 お さすが地元民〜〜 御指南ねがいます。 」
「 あは 安売りの店とかなら 詳しいよ ま スーパー ゆけば
たいていのモノはあるよ 」
「 そうだなあ この国には世界中のモノがある、と聞く。 」
「 う〜〜ん それは東京の中心あたりのことだと思うな〜
なんでも・・・・ってのは無理無理。
ま ふつ〜のものなら ここいらでも揃うはずだよ。 」
「 普通で結構、 いや 普通が一番であるな。 」
「 そ〜だよね〜〜 じゃ あとで買い物、行こうよ 」
「 おう 」
ジョーは楽しそうだ。
・・・ ふうん ・・・
普通のモノ なら揃うの か
パリにいた頃と 同じに暮らせるのね
黙ってオトコ達の会話を聞きつつ フランソワーズはほっとしていた。
ええ わたし、自分で決めたのよ、この国に住む って。
コズミ博士のお家も素敵だったじゃない?
この国に初めてやってきた時に 滞在したコズミ邸は
なかなか居心地がよかった。
私邸は和風だったのでパリジェンヌには異国情緒も味わえ
彼女はかなり気に入っていた。
そうよ !
トウキョウや ヨコハマは魅力的だわ
ヨコハマにはいろんな国のヒトたちが 普通に歩いていたし
・・・わたしの選択は間違ってなかったのよ
フランソワーズは 懸命に自分自身を納得させていた。
「 ほ〜い 野外っちゃナンやけど ― お茶たいむ やで〜〜〜
あっつい こぉひぃ と あっついお茶やでぇ 」
二台の車の横で 大人が手を振り回している。
「 あ 手伝うわ〜〜 」
フランソワーズは 笑顔で駆けだした。
「 おおきに〜〜 ほっほ〜〜〜 饅頭 に さんどいっち やで。
チャーシュー と レタスさんど、 こっちは たまごさんど や〜〜 」
「 わあ〜〜 美味しそうだね〜〜 あ コーヒーのいい匂い〜〜
皆 〜〜〜〜 食べようよ〜〜〜 」
「 おう 」
「 やあ いいねえ 」
青空の下 海風を感じつつ ギルモア博士とサイボーグたちは軽食のテ―ブル
を囲んだ。
「 あは 遠足みたいだね〜〜 おいし〜〜
」
ジョーはやたら楽しそうだ。
「 ふふん 外で食うと美味さ倍増だ。 」
「 コーヒー 美味しいね! え〜〜 インスタントなのかい?
ふ〜〜ん ・・・ この国のヒトの好みはこういう味なのか ・・・ 」
ピュンマは なにか思い付いたらしい。
「 ギルモア先生。 ここ、畑つくてもええやろか 」
「 大人、畑かね 」
「 そや。 オウチの裏庭になあ ハーブと野菜の畑、作ったろかおもてな
とれとれのお野菜、食卓にのぼりまっせ〜 」
「 おおそりゃいいな。 是非お願いするよ。 」
「 俺は 温室 作りたい。 博士 いいか? 」
ジェロニモJr. が 静かに問う。
「 温室か 〜〜 うむ これだけ広さがあるんじゃ 自由に
やってくれたまえ 」
「 ありがとう。 」
オヤツを食べつつ それぞれが様々の計画をたてはじめていた。
― 岬のギルモア邸は
短期間で完成した。
家ができるまで ヨコハマに近いマンションに仮住まいしていたが
ヨコハマは ステキな町だった。
街には いろいろな国の人々が行き交い 日本語以外のコトバも多く聞こえた。
フランソワーズは かなりご機嫌でモトマチまで買い物にでかけたり
一度は ジョーに頼んで一緒に東京まで 足を延ばした。
・・・ ずっとここにいても いいかも ・・・
だって なんとなくパリに似てるわ この街
ふうん ・・・ この国って住みやすいかも ・・・
新しいお家 どんな感じなのかなあ
彼女はワクワクして引っ越しの日を待った。
岬の洋館・ ギルモア邸 ― 常住するのはイワンを含め四人だが
仲間たち全員の個室がある。
フランソワーズの私室は 二階。 ジョーの部屋の隣だが
ドアの位置が反対側になっていて彼女は思わず吹きだしてしまった。
「 うふっ やだ〜〜〜 博士ったら。 寮の厳しい舎監さんみたいだわ 」
くすくす笑いつつ 彼女は自分の部屋の前に立った。
「 と ・・・ ここがわたしの部屋 ・・・ 」
カチャリ と 木目調のドアを開ければ ―
「 ・・・ わ あ ・・・ 」
正面に 広く窓がありテラスへのサッシも取ってある。
明るい光がいっぱいに満ち 凹凸のあるベージュの壁紙が温かいイメージだ。
すてき … !
カーテン 選びたいわ
こんなに広いなんて ・・・
ふふ・・・ パリのウチの居間くらいある かも・・・
よろしく。 わたしのお部屋さん。
フランソワ―ズは 新しい部屋の中央でくるり、と回り レヴェランスをした。
「 お家もお部屋も ものすごく気に入ったわ〜〜〜
ここに住むことにして よかったぁ〜〜 」
真新しいベッドに ぱふん ・・・・と腰かけ天井に向かい満面の笑みを浮かべた。
とんとん ・・・
「 ? はい どうぞ 開いてるわ〜〜
」
「 フラン ? いい? 」
ジョーがちょこっと顔をだした。
「 なあに。 あ ジョーのお部屋はどう? 」
「 うん とっても広くて明るくてさ〜〜 なんかもったいないよ 」
「 もったいない?? 」
「 うん。 ぼくなんかには広すぎるかな〜〜って 」
「 え そんなこと ないわ。 このお家は大きいし広いし 」
「 うん ・・・ ぼく、一人の部屋って初めてでさ なんか落ち着かない 」
「 まあ そうなの? ご家族と一緒に暮らしていたの? 」
「 あ ぼくね 教会の施設で育ったんだ だから 同じ年頃の男子と
同じ部屋で ごろごろ 」
「 あ ・・・ ごめんなさい ・・・ 」
「 ?? なんで謝るの? あ〜〜 それよりもさ
買い物、行くんだ。 日用品とかさ 必要なものとかあるでしょ
よかったら一緒に行ってくれないかなあ 」
「 まあ 勿論よ〜〜 ねえ この近くにマーケットとかある? 」
「 まーけっと? ・・・駅の方にでればスーパーはあるな
まあ 地元に商店街でだいたいの用事はすむとおもうんだけど
あの〜〜〜 一緒に行ってくれる? 」
「 ええ 喜んで。 あ 帽子をとってくるわね 」
「 ありがと〜〜 玄関で待ってるよ 」
「 はい 5分でゆくわ 」
「 了解。 」
ジョーは にこ・・・っと笑い 階下へ降りていった。
カラカラカラ 〜〜〜〜 買い物カートを引っぱり坂道を下る。
外は
ほっンとに 辺鄙な地だった。
潮の香がただよい 波の音も耳の底に聞こえている。
家の前の坂道は舗装はしてあったけれど 道の両側には土が顔をだし
草があちこちで 伸びはじめていた。
「 ・・・ う ・・・ わあ ・・・ 」
「 え なに?
」
「 ・・・ ううん なんでもないわ・・・
あのう ・・・ 自然がいっぱいなんだな〜〜〜って思って 」
「 あは そうだね〜〜 自然しかないけど ふふふ 」
「 そ そうね ・・・ ジョー こういうトコ 好き? 」
「 嫌いじゃないよ うん。 ぼくがそだった施設があったとこも
町外れでさ〜 似たようなもんさ 」
「 そ そう ・・・ 」
二ホンって。 人口過密で ヒトヒトヒト〜〜
車だらけで 二分おきに電車がくる・・・
・・・ って聞いたんですけど〜〜〜
ぷく・・・っと心の中で膨れっ面をし、彼女は彼の後を着いていった。
車が時たま通る道を渡り左に曲がると < 商店街 > があった。
比較的広い道の両側に ぽつり ぽつり と 店舗らしきものが見える。
入口とおぼしき道の上には 古びたアーチが掛かっているのだ。
「 か い が ん ぎ ん ざ。 これってなに? 」
「 え? 」
「 あれよ あれ。 ほら アタマの上 」
「 ? あ〜〜〜 」
彼女が指さすと ジョーはちらっと上を見ただけだった。
「 ここのさ 商店街の名前だと思うよ たぶん
」
「 ふうん ・・・ マルシェに名前があるの ・・・ 」
「 相当年代物だからね〜〜 むか〜〜しに作ったんだろ 」
「 ふうん ・・・ 」
「 え〜〜〜と。 まずは〜〜〜 釘と鍋か。 金物屋さんは〜
えっと ・・・ ああ こっちにあるか 」
「 ・・・? 」
フランソワーズは ジョーの後ろに隠れるみたいにしてついていった。
「 こんちわ〜〜〜
」
彼は 一番手前の店にどんどん入ってゆく。
「 ・・・ なにを売っているの?? 」
「 う〜んと ここはまあなんでも屋さんかな〜〜 鍋とか スポンジとか
あ〜 あっちはジョウロや植木鉢もあるし。 」
「 ・・・ 」
「 あ すいません〜〜 釘、ください〜〜 あ 長さは〜〜 」
ジョーはポケットからメモを取りだし説明している。
「 あ そです〜〜 それ 50本 ください。
あと 鍋 ください。 普通の両手鍋で 大きさは〜〜 このくらい 」
彼は手でわっかを作ってみせる。
はいはい・・・と 店の親父さんはメジャーを持ち出してきた。
「 はい 普通のアルマイトのヤツで ・・・ ほーろー? なんですか それ 」
「 まあ ステキなおなべ 」
店主が出してきた琺瑯の鍋に フランソワーズは思わず前に出た。
「 ねえ ジョー。 これにしましょう。 わたし 琺瑯のお鍋って
憧れだったのよ 」
「 ふ〜〜〜ん ・・・ ほ〜ろ〜 ・・・ ねえ
あれ ちょっと重いね いいの? 」
「 勿論。 この手応えがいいわ〜 しっかり 」
「 それじゃ これもお願いします え? 」
金物屋の親父は なにかこしょこしょジョーに言い に〜〜んまりした。
「 あは ・・・ いやあ〜〜〜 」
オヤジは知る由もないが その こしょこしょ は
ちゃ〜〜んと彼女に聞かれていた。
しかし ― BGの自動翻訳機のモジュールには含まれていない表現だった らしい。
?? しりにしかれてる ・・・ってなに??
でもいいわ このお鍋 ステキ!
なにも知らない彼女はにこにこ・・・ ジョーの後を着いていった。
「 えっと〜〜 次は 大人の注文だな 八百屋さんは〜〜 っと 」
「 やおや? ・・・ ああ 野菜売り場ね。
う〜〜んと ・・・ あ あそこじゃない? 店先にいろいろ・
・・ 野菜っぽいモノがならんでいるわよ 」
「 あ ホントだ ほんとだ〜〜 いっぱいあるね 行こうよ 」
「 ええ 」
カートを引っ張り 二人は商店街を歩いてゆく。
八百屋は 店先に広く野菜やら果物やらを並べていた。
わあ ・・・ え? これなに?
こっちのは ニンジン よね?
あっちは 青い葉っぱがいろいろ・・・
フランソワーズは目を見張っている。 見慣れないものがたくさんある。
「 ほら ここが八百屋さんだよ? 大人のリクエストもあるけど
フラン、 欲しいモノある? なに 買う? 」
「 え ・・・ いいの? 」
「 いいって そんな。 ほしいモノかってさあ 美味しいの、作って 」
「 そ そう? 大人のリクエストってなに? 」
「 え〜〜と ニンジン ジャガイモ タマネギ 長ネギ ニンニク
ぱくち〜 青梗菜 かな〜〜 フランが欲しいの なに 」
「 え ・・・ えっと セロリとコルニッションとアーチチョーク
なければ エシャロットでいいわ 」
「 ??? セロリ は これだね。 」
「 メルシ〜〜 で コルニッションは? 」
「 こる・・・? え〜〜 わかんないなあ〜〜
店のオバチャンに聞いてみるね すいません〜〜〜 」
「 らっしゃ〜〜い おや 岬の坊や また来たね。
あっら〜〜〜 美人さんと一緒で〜〜〜 ・・・ カノジョ? 」
ドタドタ出てきたオバチャンは フランソワーズを目ざとくみつけた。
「 きゃ〜〜〜 キレイさん♪ 」
「 あ こ こんにちは
」
「 ま〜〜〜〜 日本語 お上手〜〜〜 で なにを? 」
「 あ あのね こるに・・・ってあります?
」
「 こるに・・??? 」
「 コルニッション です あと アーチチョークも 」
「 ・・・ あ〜〜〜 そういう西洋野菜 は置いてないのね〜〜
ごめんね オクサン。 あ カノジョさん かね 」
「 あ い いえ ・・・ 」
「 その コル〜〜 と 似たもの あるかしらね 」
「 え ・・・・ え〜と ・・・ あ これ ? 」
「 うん? あ きゅうりのことなんだ〜〜〜 」
「 ちょっと大きいけど・・・ 」
「 あ〜〜 ウチのキュウリはおいしいよっ ! ほら 食べてっ 」
差し出されたキュウリを ジョーはぽりり・・・と齧る。
「 〜〜〜 ん ホントだ。 えっと〜〜 一山ください 」
「 はいよ 毎度〜〜 あとは? 」
「 えっと ・・・ あ トマトもお願いシマス 」
「 はいよっ これは甘いよぉ〜〜〜 どう カノジョさん? 」
オバチャンは トマトをす・・・っと切り フランソワーズに差し出した。
「 ほらあ〜〜 味見 してってぇ〜 」
「 あ あの ・・・? 」
彼女はどぎまぎし ジョーを振り返る。
「 うわ おいしそう〜〜 ぼくもいいですかあ 」
「 岬の坊や どぞ! ほら カノジョさんにもすすめて〜〜 」
「 あ は ・・・ ねえ 食べてみようよ? 」
「 あ ・・・ は はい ・・・ 」
フランソワーズは くし型の一片をおそるおそる口にいれた。
「 ・・・ ん ??? お おいし〜〜〜〜
これ ホントにトマト ・・?? 」
「 ・・・ん〜〜〜 おいし〜〜ね〜〜
じゃ トマトも一山ください 」
「 ほい まいどっ♪ 」
八百屋のオバチャンは上機嫌で あれこれ・・・ ジョーの注文に
応じてくれた。
「 〜〜っと これでいいかい。 まいど〜〜〜 」
「 は〜い ありがとうで〜す 」
「 ・・・ 」
ジョーはぺこり、とお辞儀して山盛りのカートを引き始めた。
彼女もアタマを下げると 彼の後を追った。
「 え〜〜と? 次は・・・っと。 肉屋と 〜〜 」
「 あ あのね。 ちょっとカフェとか寄りたいんだけど ・・・ 」
「 あ いいね〜〜 え〜〜と ・・・ この商店街には喫茶店ってないんだよな〜〜
ねえ ちょっと駅の方まで出てみる? 」
「 駅の方に カフェ あるの? 」
「 え〜と 多分あったはず ・・・ 駅の向こうには大型スーパー あるから
パンとかチーズとか ・・・ あるよ。 歩ける? 」
「 うふふ〜〜〜 わたしだって003なのよ?
駅までなんて平気 平気〜〜〜 ジョーこそカート 重いんじゃなあい?
大丈夫〜〜〜 ? 」
「 あ そのセリフ 009にシツレイだぞ? 」
「 あ〜ら 失礼。 行きましょ。 ああ カフェに入るなんて
ほ・・・っんと久しぶり〜〜〜 」
「 えへ ・・ フランとデートだあ〜〜♪ 」
「 え? 」
「 あはは〜〜〜 なんでもなあいっと。 じゃ 出発〜〜 」
「 出発〜〜〜 」
ガラガラガラ 〜〜〜 満杯のカートを引っ張って二人は歩き始めた。
地元の駅前は相変わらず がら〜〜〜〜ん・・・ としていた。
「 え〜〜〜と?? カフェ ・・・ カフェ ・・・と? 」
「 ・・・ ・・・? 」
ジョーにくっついて うろうろしたけれど ―
「 う〜〜〜ん ・・・ スマホ検索したんだけど ・・・
やっぱ この辺りにカフェは ないのかもなあ 」
「 ・・・・ え ・・・・ 」
駅前には ファスト フード のチェーン店があるだけだった。
うっそ。 カフェのない町 なんて あるの??
パリジェンヌは 呆気にとられている。
「 ごめん フラン。 なんか〜〜 ここしかないみたい 」
ジョーはちょっと困った顔で チェーン店の前に立った。
「 あ あの ここでもコーヒー 飲めるの? 」
「 うん。 お腹空いてる? バーガーとかポテトとか あるし 」
「 コーヒー だけでいいわ。 」
「 そっか。 あの ごめん・・・・ 」
「 まあ どうしてジョーが謝るの? ねえ 咽喉乾いたわ。
ここに入りましょ。 」
「 う うん ・・・ 」
二人は 世界中どこにでもある? チェーン店に入り ごくごく当たり前の味の
薄目のコーヒーを飲んだ。
「 ・・・ あの ・・・ 飲める? 」
ジョーが心配そうに見ている。
「 あら やだ そんな顔、しないで? 美味しいわ。
このコーヒーってアメリカンでしょ 」
「 あ ・・・ うん まあね ( レギュラーなんだけど さ ) 」
「 ジェットが淹れるコーヒーって こんな味だわ。
お砂糖とミルク たくさん入れちゃった・・・ おいし〜 」
「 ・・・ よかった 飲めて ・・・ 」
「 やだ そんなこと、言わないで?
ねえ 駅の向こうのスーパーにはパン屋さんもあるのでしょう? 」
「 ウン 焼きたてクロワッサン とか売ってるよ 」
「 まあ 楽しみ♪ ・・・・ けっこうワカモノが入るのね ここ 」
「 あ うん 手軽だからね〜〜 値段も雰囲気も ・・・
高校生とかね 学校や部活の帰りにさ 」
「 ふうん ジョーも? 」
「 あ ぼくは ・・・ 施設の仕事、手伝わなくちゃならなかったし
小遣いとか そんなになかったから こういう店には入らなかったんだ 」
「 ・・・・ ごめんなさい。 無神経ね わたしって 」
「 え〜〜 そんなこと ないってば 気にしてないよ ホント! 」
「 そ う ・・・? 」
「 うん。 ね〜〜 少し休んだらさ 駅の向こうのスーパー 行こう。 」
「 あ パン屋さんとチーズ屋さんがあるのね? 」
「 うん。 大きな店だから気に入るもの、あるかも 」
「 わあ 楽しみ〜〜 」
二人は またまた満載のカートを引っぱり 駅を越えていった。
― 大型スーパーには いろいろなものがあった。
でも ・・・・
「 え ・・・ バゲットないの? ふらんすぱん って なに? 」
「 チーズ ・・・ これだけ ・・・? 」
期待していた
焼きたてのバゲット もなく チーズは 石鹸みたいなものとピザ用、
そして 裂けるち〜ず という不思議なモノが並んでいた。
な なんなの???
「 あの ・・・ パン、 クロワッサン でもいいかなあ
チーズさあ こっちに めんたいこ・チーズ とか わさび味とかあるよ? 」
ジョーはいろいろ・・・気を使ってくれた。
「 ・・・ あ え ええ そう ね・・・
あの ジョーが好きなもの、買ってゆきましょう 」
「 フランは ? 」
「 え ? 」
「 フランが好きなパン は チーズ ある? 」
「 ・・・ あ ここには ちょっとないみたい ・・・ 」
「 そうなんだ? ごめん ・・・ 」
「 やだ 謝らないでよ ジョー。 ほら 明日の朝のパンとチーズ
買ってゆきましょ。 ジョー 選んでくれる? 」
「 う うん いいよ。 」
ジョーは ごく普通の食パンとプロセス・チーズを買った。
ガラガラガラ ・・・・
買い物カートを引きずって 二人はなんとな〜〜く重い足取りで
岬の家に 帰っていった。
Last updated : 06,26,2018.
index / next
*********** 途中ですが
え〜〜〜 一応 平ゼロ設定ですが
原作始めの頃の雰囲気 ・・・ かも。
パリジェンヌには いろいろショックだったかも?
・・・ 続きます☆