『 相棒 ― (4) ― 』
ぴんぽ〜ん
ギルモア邸の玄関チャイムが鳴った。
玄関ドアは 一見古風な樫の木の扉にみえるが ― その実は鉄壁のセキュリティ、
外からぶち破ることは重機を使っても不可能だ。
ロックも内側からでなければ 解除することはできない。
普段は ごく普通に ― ぴんぽん の音で家人がごく当たり前に鍵を
開く ・・・風にみえる。
「 は〜い 今 開けるわ 」
フランソワーズが ぱたぱたと玄関に駆けてきた。
「 くぅ〜〜ん 」
「 ・・・ みにゃ 」
隅のベッドからクビクロが むくり、と起き上がり一緒にニュクスも声をあげた。
「 あらら・・・ ごめんね〜〜 寝てたのに・・・
でも うふふ〜〜 クビクロ? もうわかっているのでしょ?
ジョーが 帰ってきたのよ 」
「 わん♪ 」
「 ちょっとまってね〜〜 」
カチ カチ カチャン ・・・
フランソワーズは壁に埋め込んだ小さなコントロール・パネルを操作し
玄関のロックを解除してゆく。
「 ・・・っと これでいいわ。 」
「 ・・・ 」
彼女の足元で ニュクスがじ〜〜っと見上げている。
片方だけの瞳だが その輝きは深い金色でどこまでも澄んでいるのだ。
「 うふ? 面白い? ボタンが光ってたりしてキレイでしょ?
これでね〜 玄関のドアをあけるの。 」
「 みにゃあ〜〜 」
「 あら 興味がある? 」
彼女はひょい、とニュクスを抱き上げた。
「 あのねえ まずこの赤いボタンを押すでしょ ナンバーが決まっているの。
つぎにこっちの長細いのを押して ・・・ さいごは一番下の緑に光っている
ところにタッチをするのよ。 」
「 ・・・ み〜〜 にゃ 」
くるり。 ニュクスは長い尻尾をくねらせた。
「 覚えたの? お利口さんね。 今度はニュクスに開けてもらおうかな〜〜
・・・ はい 開けたわ ― お帰りなさい ジョー 」
カシャ ― 木製に見えるドアがゆっくりと開いた。
「 ただいま〜〜 フラン ・・・ やあ クビクロ〜〜
起こしちゃったかい ごめんな 」
「 お帰りなさい ジョー 」
「 わんわんわん〜〜〜〜 ♪ 」
茶色毛の犬は フランソワーズの足元でさかんに尻尾を振っている。
「 ふふふ ただいま〜〜 あ ニュクスもいるね ただいま ニュクス 」
「 んにゃ〜〜〜 ぅ 」
「 あ〜〜 もふもふ〜〜〜に癒されるぅ〜〜〜 」
「 うふふ・・・ さあ 晩ご飯どうぞ? クビクロとニュクスは
お休みなさい よ 」
「 うん お休み〜〜〜 クビクロ ニュクス 」
「 くぅ〜〜ん 」
「 にゃ ・・・ 」
二匹は再び 一緒になって丸くなった。
・・・ 静かな夜の帳が ギルモア邸を包みこむのだった。
サクサク サクサクサク ・・・
茶色毛の若犬が 砂浜を颯爽と駆けてゆく。
リードはつけているが ながく伸びゆったりと弛んでいる。
「 わわ〜〜〜ん ? 」
ちょっとだけ足を緩めると 茶色犬は振り返った。
「 わ〜〜〜 速いなあ〜〜〜 ニュクス 大丈夫かい? 」
彼の後方に青いシャツのワカモノとその足元には黒い猫がすたすた歩いている。
「 みにゃあ〜〜〜 みにゃ 」
猫は長い髭を振り ぴん・・・!と尻尾を立てた。
「 ひゃあ 元気だなあ〜〜 毎朝の散歩だけど ほっんと元気だよね〜〜
でもこのあとずっと走るのはちょっと無理かも ・・・
ほら クビクロにのっけてもらいなよ 」
「 にゃあ? 」
「 平気 平気〜〜〜 クビクロは強いんだもん 」
「 にゃ にゃ! 」
「 え〜〜〜 アタシも強いのよってかい 」
「 みにゃ。 にゃにゃにゃ〜〜〜〜 」
黒猫は クビクロめざしてぱっと駆けだした。
「 あ わあ〜 まってくれぇ〜〜〜 もう・・・ 」
置いてきぼりを喰ったジョーは あわてて足を速めるのだった。
わあ〜〜〜 待ってくれえ〜〜〜
にゃお〜ん わんわんわん
人影のほとんどない海岸が ほんの少し賑やかになった。
「 まってくれよ・・・・ ふう 〜〜〜 」
やっと追いついてきたジョーを 二匹は寄り添って座り迎えてくれた。
「 くう〜〜〜ん 」
「 み〜にゃ 〜〜 」
「 ふう〜〜〜〜 いくらぼくだってね ・・・ ず〜〜〜っとずっと
砂地を走るってのは ・・ それも普通のスニーカーだし ・・・ 」
ジョーは 流木をみつけるとよいしょ・・と腰かけた。
「 ひゃあ・・・ 海風 いいなあ ・・・ 」
みにゃ〜〜〜 ニュクスがジョーの膝によじ登ってきた。
くう〜〜〜 クビクロがその膝に顎をのせる。
「 わは・・・ えへへ〜〜〜 かわいいなあ〜〜 」
もふもふもふ にじにじにじ
彼は しっとりした黒猫の毛皮 と 犬の眉間の触り心地を楽しんでいる。
「 あ そうだ そうだ ブラシ 持ってきたんだっけ 」
リュックの中から ブラシを引っぱりだした。
「 さあ こっちおいで。 ニュクスも ・・・ あ 背中に乗っててもいい? 」
「 わん♪ 」
しゅ しゅ しゅ しゅ 〜〜〜
「 くう〜〜 ん〜〜 ♪ 」
「 よしよし ・・・ 今度はニュクスさ。 そ〜っと・・
こしょ こしょ こしょ〜〜〜
「 ごろごろごろ〜〜〜 」
「 ほ〜〜んと元気だなあ お前たち・・・ えへ・・・きもちいいかい? 」
ジョー はブラシを使いつつ一緒に遊んでいる。
「 〜〜〜 みにゃ・・・?
」
ぽふ。 ニュクスの黒い手がクビクロの頬に触れた。
「 うわん? ・・・ く〜ん? 」
クビクロはアタマをあげ 仔猫がじっと見つめている方向を向いた。
「 ? ・・・く〜ん? 」
ぱさぱさ。 太いしっぽがジョーの脚にさわる。
「 なんだい? あ 水 ほしいのかい? ちゃんともってきてるよ〜 」
「 にゃ! 」
「 わん! 」
「 ちがうって・・?? え 二人ともあっち見てるなあ
なにかあるのかい。 あ ・・・ あれは 」
ジョーは 河口の側にある建物に目をやった。
「 ・・・ 最近できたって感じだなあ ・・・ 工場かな 」
す ーーー。 ジョーは視覚の精度を上げた。
「 わん?? 」
「 にゃあ? 」
右から左から 二匹がジョーに寄ってきた。
「 ・・・・ ! 」
ジョーは 視線を戻すと ― 彼の二人のトモダチの首やら背中を
もふもふ わさわさ・・・撫でた。
「 く〜〜ん 」
「 みにゃ? 」
「 うん・・・ あれかい。 あれは ・・・そのう・・・
家のない動物たちの 収容施設 さ 」
「 わん? 」
「 み〜にゃ 」
二匹は じ〜〜〜っとジョーを見つめている。
「 それだけだよ。 これ以上はお前たちはしらなくていい。
さあ ウチに帰ろうよ〜〜 オヤツにカリカリだあ〜〜〜 」
ジョーは ぱっと立ち上がるとクビクロのリードを取り上げた。
「 わ わん ? 」
「 にゃ!!
」
「 さ〜〜 帰ろうぜ! いくよ〜〜〜 」
たたたた ・・・!!
駆けだした茶髪の青年の後から 茶色毛の犬と真っ黒な猫がたちまち追いついていった。
その夜。 住宅街から離れた地で火事があった。
海沿いに近い地い建つ殺処分を主としていた動物シェルターから火が出た。
処分施設は全焼し なぜか檻の鍵はすべて解放されていて収容されていた犬猫たちは。
― 皆 すたこら逃げていった・・・
ギルモア邸の朝は いつも早い。
一番は 勿論博士で 朝刊より早く散歩に出る。
その後 ― 朝刊が配達されるころ ジョーが起き出す。
「 ・・・ ぼく 朝は苦手 ・・・ 」
この邸に住み着いた当初はぶつぶつ言っていた彼だが ― いつの間にか
早起きが習慣になってきた。
特にクビクロが来てから ジョーは早起きが楽しみになったらしい。
「 クビクロ〜〜〜 さあ 朝の散歩に行こうよ 」
「 わんわんわん♪ 」
「 みにゃ〜〜 」
「 あ ニュクスは 待っていた方がいいんじゃないかい? 」
「 にゃ!! 」
黒猫は すっとクビクロの足元に座った。
「 あ〜 それじゃ 一緒に行こうか 朝は気持ちいいよね 」
くぅ〜〜〜ん うにゃあ〜〜
一人と二匹は ならんで門をでるのだった。
「 ― ただいま〜〜〜 」
30分も経つころ < 三人 > は 再び仲良く戻ってきた。
「 さ。 お入り 」
ジョーは 門を通るとクビクロのリードを外してやる。
わんわんわん〜〜〜 みにゃ〜〜
< 二人 > は ふざけあうみたいに庭に駆けこんでゆく。
「 あ〜〜 気持ちよかったなあ ・・ えっと新聞〜〜っと 」
カタン。 彼は朝刊をポストから抜き取り 社会面を広げた。
「 ふ〜ん ・・・ あ ・・ ? 」
大きな活字に 彼の目が止まる。
「 ・・・ ! あの施設 ・・・ 放火か? 」
ジョーは拡げた紙面に目を走らせ さっと表情を歪めた。
「 ・・・ これって この前見たあの施設じゃないか ・・・
原因不明の出火 ・・・か。 ああ 怪我をしたヒトはいないんだな・・・
動物たちは ― え? 」
ジョーの手が 止まった。
彼の視線は庭に向き ― じゃれあって走り回っている < 二人 > を
見つめた。
あの施設 ・・・ じっと見てたけど ・・・
いや まさか。 初めて見るもので興味があっただけ だよ
わんわん〜〜 にゃにゃ〜〜〜
無邪気な二匹はどこにでもいる家庭の愛犬と愛猫だ。
「 ・・・ まさか ・・・? いや 夜は外には出してないし。
ドアロックは内側からしか解除できないはずだ。 でも ・・・ 」
ガタン 玄関ドアが開いた。
「 ジョー? お帰りなさい〜〜 クビクロ〜〜 ニュクス〜〜〜
つめたいお水もってきたわよ
」
わんわん〜〜 みにゃ〜〜〜
大小の影が 玄関に駆けこんでゆく。
うん 考えすぎさ。 そうに決まってるさ。
ジョーは 浮かんできた疑惑を無理矢理アタマの隅に追いやった。
「 ジョー 朝ご飯できて ・・・ どうしたの? 」
新聞を持ってゆっくり歩いてくる彼を フランソワーズは訝し気に見上げた。
「 え・・・ あ いや。 近所で火事があったって 」
「 火事? まあ 全然気が付かなかったわ。 あ また 放火? 」
「 わからない。 ただ 火の気はなかったって・・・ 」
「 どこ? 消防車の音も聞こえなかったけど 」
「 うん 近所ってか・・・ あの河口の向こう側だから ・・・ 」
「 そこで・・・ 家が燃えたの? 」
「 いや。 動物の施設さ。 一応保護施設ってなってるけど
その実は まあ 所謂最終施設ってトコ
」
「 ・・・ ? あ。 ひどい ・・・ 」
「 そういう処分ゼロ運動 とか広がってるらしいけど ね ・・・
で その施設が全焼したんだって。 不審火さ 」
「 怪我人 でたの? 」
「 いや 宿直のヒトとかは逃げ出せた。 」
「 じゃ 収容されてた動物たち ・・・ ? まさ か ・・・ 」
フランソワーズの顔色がす・・っと悪くなった。
「 あ ほら 自分で読んでみて 」
「 ・・・? 」
ジョーは 彼女の前にぱさり、 と新聞を広げた。
「 ? ・・・ あ〜〜〜 そうなの ! よかった・・・・ 」
その施設の動物達は 一匹残らず逃げだしていた。
「 よかったわ ・・・ 」
「 でもな ケージの鍵を開けたのは 誰なんだろう 」
「 職員のヒトじゃないの? 」
「 いや・・ 自分が逃げ出すので精一杯だったらしい 」
「 え・・・ それじゃ ・・・? 」
「 ウン。 丁度前の日にね ぼく達 ・・・ この施設が見えるとこまで
行ったんだ ・・・ そして ぼくは説明した < 二人 > に
」
「 え? 」
「 じっと。 じ〜〜〜っと 見てた。 クビクロもニュクスも。 」
「 ・・・ ジョー・・・ まさか そんなこと・・・ 」
わんわん〜〜 みにゃ〜〜〜
二匹は絡まりあいつつ 玄関に戻ってきた。
「 ホントに仲良しよねえ 」
「 あ〜〜〜 まだ外で遊んでいていいよ 」
ジョーは くりくり〜〜 茶色犬のアタマを撫で こしょこしょ〜 黒猫のほほを撫でた。
たたた すすす ・・・ 二匹はテラスに周り風通しのよい場所に座った。
「 ぼくもそう思う。 ちょっと気になっただけだけど・・・
そもそも 玄関からはでられないものな。 アイツら ・・・ 」
は・・・っと、フランソワーズが息を呑んだ。
「 わたし ・・・ ロックの解除をするのを ニュクスがじっと見てたわ。
わたし・・・ 解除しつつ順番を教えたの あんまり熱心に見てたから・・・
でも 猫に そんなこと 」
「 ・・・ 猫は 手 が使える。 」
「 ・・・ ! でも! 」
「 まあ そんなこと、できないとは思うけど 」
「 そう よね それに 火 なんて・・・ 」
「 ああ。 まさかな 動物に火は扱えない。 」
「 そうよ わたし達 ちょっと考えすぎだわ。
クビクロもニュクスも ウチの可愛いコ達で とってもお利口さん。
それだけよ そうでしょ? ジョー 」
「 うん ・・・ そうだよね ・・ 」
ジョーは ほんのわずか歯切れが悪かったが すぐに笑顔になった。
「 さあ〜〜 美味しい朝ご飯を食べようよ 」
「 ええ ええ 今朝はね ジョーの好きなパンケーキ、焼いたの。
あ 勿論お味噌汁だって熱々よ 」
「 わい あ 博士は? 」
「 もうとっくにお散歩から帰っていらっしゃるわ。
さあ 朝ごはんよ〜〜〜 」
「 ウン ・・・ 」
クビクロの前で あの事件のことを教えたんだよなあ ・・・
でも まさか。
あんな小さな頃のこと 覚えていないよ うん・・・
あの夜。 ほんのわずかクビクロの毛皮が 焦げ臭かったのを知っているのは
自分だけだ ・・・ と彼は思い出した。
・・・ いや 気のせい ・・・だよ うん
― でも。 なぜ だ ?
こちん。 ジョーのココロの中に重い塊が 沈んだ。
「 おはようございます 博士 」
「 うむ おはよう〜 庭の諸君も元気そうだな 」
博士も 新聞をとじて笑顔をむけた。
「 はい。 散歩してきて満足みたいです 」
「 ふふふ ・・・ そうじゃ あの事件じゃが。 クビクロの飼い主のことが
わかったぞ。 」
「 え? 」
「 知り合いからちょいと情報が入った。 」
「 情報 ってなんですか 」
「 うむ。 クビクロのもとの飼い主は ― 科学者 というか・・・
生物を遺伝子レベルから改良する研究に取り付かれていたようだ 」
「 遺伝子レベル・・・? 」
「 そうじゃ。 クビクロの両親はとても賢かった、と言っていただろう? 」
「 はい。 計算、それもかなりの高度な数式を解いていたんです。
飼い主さんが用意していた問題だけじゃなく 見物人から問題をもらって
その場で解いてみせました。 」
「 うむ ・・・ あらかじめ用意した問題ならそれは誤魔化せるからな 」
「 ええ。 でも あの時 確かにクビクロの両親は二次方程式や
微分・積分の計算問題を解いてみせました。 」
「 ふうむ。 人工頭脳を埋め込んだにしても ・・・ 普通の動物が
それを使いこなせるとは思えん 」
「 ― 専門的なことはよくわかりませんが クビクロはそんな両親の
こども ・・・ なんですね 」
「 そうじゃ。 クビクロは正真正銘100パーセント生身の当たり前の 犬だ。
しかしその真実の能力は ― わからんのだ。 」
「 ・・・ ぼく は。 クビクロの前で あの事件の犯人が
捕まったこと ・・・ 話したんです。 」
「 クビクロはどうしておった 」
「 じっと ― ただじ〜〜〜っと聞いてました。
でも いつもそうやってぼくのハナシを聞いてくれるから ・・・ だから 」
「 そうだといい、 とワシも思う。 」
「 クビクロは賢いけど それだけだと思います。
でも ― しばらくは彼を自由に外に出すのはひかえます。 」
「 それがいい。 散歩するときにはしっかりリードをつけてな 」
「 はい。 」
「 玄関のロックも ― ナンバーを変えよう。 」
「 はい。 」
「 ― 杞憂でおわることを願っておるよ。 」
「 ・・・・ はい。 」
― 数日後 例の容疑者が収容されていた施設が 燃えた。
出火直後に 犬が一匹駆け抜けていった・・・ とニュースが告げた。
「 そ んな 馬鹿な。 そうだよ、関係ないよ。
だってクビクロはここ数日ちゃんとウチの玄関で寝ているもの。 」
ジョーはTVの前で声を上げた。
「 ジョー あの ね。 」
「 フラン? 」
「 あのね ・・・ 今朝気がついたの。
クビクロの手先の毛と ヒゲの先が微かに焦げてたの ・・・ 」
「 !! で でも! 火・・・ なんか使えるわけないよ
それに玄関から出られるわけも ・・・ ロックのナンバー、変えたし
」
「 ジョー。 わたし ・・・ 昨日 玄関の鍵の解除したとき・・・
後ろにニュクスが ・・・ いた わ。 」
「 え??? 」
「 ふむ・・・ あの仔猫はちょいと神秘的だな 」
博士の声も沈んでいる。
「 神秘的 ・・? 」
「 失ったモノの代わりに なにか別の ― 特別な能力を
身につけているのかも しれん。 」
「 失った・・・て あ ・・・目 ? 」
「 わからん。 これはあくまでワシの推測にすぎんが。 クビクロも同じかもしれん」
「 ! そ そんな 」
「 仔細はわからん。 しかし ニュクスのチカラがクビクロの < 能力 >
の 引き金を引いたのじゃろうな 」
「 二人は いつも一緒にいます・・・・ 」
「 ニュクスは自分を助けてくれたクビクロに なんとしても味方したい、と
願い・・・ 彼の気持ちが理解できるだろうよ 。 」
「 そんなことって ・・・ ありえるのですか? 」
フランソワーズは 半分涙声になっている。
「 クビクロは ― ずっと自分の両親の死を 悲しんでいたわけですか・・・ 」
「 わからん。 これは全くの推測にすぎんのだよ。 」
― カタン。
しばらくの沈黙の後 ジョーは静かに立ち上がった。
「 ぼくの 責任です。 ぼくが ― 結末をつけます。 」
「 ― ジョー な なにを ・・・ クビクロもニュクスも家族なのよ! 」
「 わかっている。 でも。
どんなに辛くても ― やってはいけないことがあるんだ。
そして どんなにつらくても やらなければならないことも ね。 」
「 ・・・ ! 」
「 行ってきます。 」
ジョーは静かに部屋を出ていった。
事件の容疑者が護送される日 ― ジョーは自らの手で始末をした。
クビクロ と ニュクス。 相棒はどこまでも一緒だった・・・ずっと。
「 もしも。
003が 暴走したら。 」
「
え? 」
「 その時は 009 が 始末をしてね。 」
「 !
」
「 相棒としての義務よ。
」
「 … わかった。 さ
最後まで 一緒だ。 」
「
え? 」
「
相棒 としての義務さ。
ぼくは最後まできみの側にいる。 」
「 ジョー 」
「 ごめんね ・・・ ごめん ・・・ 二人なら淋しくない・・・かな 」
「 ええ ええ 二人なら ・・・ 」
二人は 小さな墓標の前で痛恨と哀悼の祈りをささげるのだった。
******************************** Fin.
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Last updated : 07,04,2017.
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****************** ひと言 ******************
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このお話は だ〜〜〜い好きです♪