『 夏への とびら ― (2) ― 』
ゴゴゴゴ −−−−− ・・・・ ギュウ〜〜ン !
ドルフィン号は やっと水平飛行に入りようやく機体の揺れが収まった。
ふうう ・・・ ああ ・・・
コクピットには全員の声にならない安堵の吐息でいっぱいになった。
「 機体損傷 ・・・ 大きなモノなし。 チェック完了したよ 」
ピュンマの落ち着いた声が さらに皆をほっとさせた。
「 ― 後方からの追跡 認められず。 前方も 安全。 」
さらにフランソワーズの報告が 空気を軽くした。
「 お〜〜し。 そんじゃちょいと息抜き〜〜〜 」
ジェットが ぱっとサブ・パイロット席から立ち上がった。
「 ! おい ! 」
「 へ ちゃ〜んと 自動操縦にしてるって〜〜 オッサン
」
「 そうじゃない。 休憩の前にミーティングだ。 」
「 ちぇ〜〜〜 」
「 ほっほ〜〜 ちょいとコーヒー 淹れますさかい〜〜 グレートはん
てつどうてや 」
「 ほいほい 」
二人が 厨房に飛んでゆく。
緊急のミッションは なんとか・・・ 解決、脱出できた。
難民たちを ともかく安全な場所まで案内し 黒幕勢力の基地を叩いた。
残党も もう追ってこないところをみると壊滅できたと判断できた。
「 ふう ・・・ 」
ジョーは 全計器のチェックを終えるとそっと息をついた。
よかった ・・・ なんとか なった ・・・
「 え ・・っと。 異常 ナシ。 只今より自動操縦に切り替えます。 」
「 おう 了解。 」
にゃん ♪ ジョーの足元で 仔猫の声が聞こえた。
「 え ??? 」
「 なんだ? どうした ジョー 」
「 あ ・・・ い いや なんでも ・・・・ 」
ジョーは さりげなく操縦席の下をチェックしたが ― 勿論
そこには なにもいなかった。
・・・? 空耳 ・・・?
緊張しすぎた ・・ かなあ・・・
「 ミーティングだ。 手短に済ませよう。 」
アルベルトが全員を見回した。
こくこく と 皆のアタマが縦に揺れる。
誰もが緊張状態から 早く完全に開放されたいに決まっている。
「 現在 ドルフィンは異常ナシ だ。 これは 」
「 ああ AI、計器、エンジン関連は僕が再検証し確認したよ。 」
「 お〜〜し。 ほんじゃ 一休みしてよ、ちょいと戻って
トドメ刺しにゆくか! 」
「 そうね。 確実にしておいた方がいいと思うわ。 」
「 うむ 今後のこともあるから な 」
「 左様 左様。 」
「 博士はどう思われますか。 」
アルベルトは 博士に確認する意味を含め、尋ねた。
「 ― う〜む ・・・ 懸念の材料もないでは ないが ・・・ 」
博士の言葉はなんとなく歯切れが悪い。
しかし メンバー達は あまり注意を払わなかった。
「 そうですか。 それでは ― 」
「 あ あの 」
うん?? 意外な声に皆 ― 一様に驚いた。
「 ― なにか意見があるのか 」
「 あ ・・・ うん 」
にゃ。 ( がんばれ じょ〜 )
― ちょんちょん。 白いもふもふの手がジョーを促す
「 なんだ? 」
「 うん。 ぼくは ― 退くべきだと思うよ。」
え??? 全員が 009を振り向いた。
「 退く とは ・・・ このまま放置してゆく、ということか 」
「 んなこと〜〜 できるかよ? 」
「 わたし 反対。 完璧をきするべきよ。 」
「 ボーイ、 なぜ そう思うのかね? 」
「 まさか 逃げたいっていうわけ? そんなことはないよね? 」
全員が口を開いた。
見つめられた本人は 一瞬ぐっと口を引き結び目を伏せた。
が。 彼は すぐに顔をあげ まっすぐに全員を見回す。
「 引き際だよ。 逃げるって思われても仕方ないけど 」
「 なんでだよ〜〜〜 」
「 理由は? きっちり説明してくれるかな 」
「 その根拠を知りたい。 」
「 必要なら逃げてもいいと思うわ。 でも 今はその時? 」
またも全員が反論してきた。
ジョーは 再びほんの一瞬俯いたが すぐに明るい表情で顔をあげた。
「 皆の意見、わかった。 ぼくの意見の根拠は ―
まず 博士の疲労度が激しい。
ドルフィンに大きな損傷はないけど 再度の戦闘には不確定要素がある。
そして 今回のミッションの目的はすでに完遂できたよ。 」
わしは・・・! と 博士がすぐに声をあげ立ち上がったが ―
「 お ・・・ 危ないですぜ? 」
足元がよろめき グレートが咄嗟に支えた。
「 う ・・・ す すまん ・・・ 」
「 ? なんか熱 あるんじゃないですか? 」
「 い いや・・・ 」
「 グレートはん、 ワテ 先に準備しときますさかいメディカル・ルームに
ご案内したって〜〜 」
大人 が立ち上がると転がり出ていった。
「 ・・ す すまん ・・・ 」
「 そんなこと おっしゃらないで。 冷たいお水 どうぞ? 」
「 ・・・ 」
博士は グレートとフランソワーズに付き添われ移動し始めた。
「 いつ 気付いた? 」
コクピットを後にする博士を見送りつつ アルベルトが尋ねた。
「 え? あ ・・・ うん ・・・ 」
「 ミッション中に か? 」
「 ・・・ うん。 後半から少し博士の声のトーンが下がったな〜
って感じて。 時々 見てたんだけど どんどん辛そうになって
」
「 ジョー ・・ よく 気がつくのね 」
「 いや・・・ なんとなく感じただけだよ。
それより ドルフィンのエンジン音が ちょっと・・・ 」
「 ?? データは正常だよ? 」
「 ウン それは そうなんだけど ・・・ ちょっといつもと
違うように感じるんだ。 違和感がする。 」
「 え?? そ そうかなあ〜〜
検証レベルを最大にアップしてみるよ。 」
ピュンマが あわてて自席に戻り データの再検証を始めた。
「 ・・・・ ん〜〜〜 と ・・・? あ。 」
「 どうだ? 」
「 うん これは ・・・ 通常航行は大丈夫だけど ・・・
できればメンテだな〜〜 」
「 ほう。 ― 帰還だ 今からすぐに。 」
おう。 今度は全員が頷いた。
一旦 決定すれば 全員がすぐにその方向を目指す。
四の五の言うのは ― 後で十分だ。
一分後 ドルフィン号はステルス状態に擬態すると 一路帰国の途についた。
「 おめ〜さ 気配りなヤツな 」
「 え? あ〜〜 ジェット 舷側 たのむ 」
「 お〜 」
ジョーは パイロット席でひたすた操縦に集中している。
・・・ ありがと、 チビ。
一緒 だね?
チビのぱわ〜 しっかり受け取ったよ!
にゃ。 − ぱふん。 もふもふの手をジョーは膝に感じた。
ゴゴゴゴ −−−−− ウィ −−−−− ン ・・・
ドルフィン号は 微動しつつ快調に航行を続けていった。
シュ −−−−−
閉めきっていた家屋に 乾いた風が吹き抜ける。
「 あ〜〜〜 いい気持ち 」
フランソワーズは 庭に面したサッシを大きく開けは放った。
「 やっぱりウチが いいわ・・・ ふ〜〜ん
えっと ・・・ エアコンの送風を強くして・・・っと。 」
ドルフィン号は 仲間たちをそれぞれの居住地へ送り届け
昨夜無事に ギルモア邸の地下格納庫に帰還した。
彼らはやっと < 日常 > に 復帰したのだ。
一晩の穏やかな睡眠は 十分な活力となった。
翌日は すっきりとした晴れあがった。
「 ふう・・・ 建物は無事だったけど ・・・
やっぱり閉めきっているとねえ 〜 ふう〜〜〜 」
「 二階〜〜 全部 窓開けてきたよ 」
ジョーが ひょい、とリビングのドアから顔をだした。
「 ありがと〜 ジョー。 一階もね 全開よ。 送風 してるとこ。 」
「 あ いいね。 二階もかけようか ・・・ 」
「 二階は もともと風通し ばつぐんだからいいんじゃない? 」
「 そうだね〜 あ 博士はどう? 」
「 ええ ゆっくりお休みしていただいているわ。
顔色も よくなったし・・・ お家が一番 ってことね 」
「 あは そうだね。 あ 今から食糧 買いだしにいってくるね。
リスト 作ってくれる? 」
「 ええ いいわ。 ・・・ あ あのう チビちゃん ・・・? 」
フランソワーズの声のトーンが 落ちた。
「 ・・・ うん ・・・ やっぱり いない。
出掛ける前にあちこちに置いていったドライ・フードも
ほとんど減っていなかったよ 」
「 それじゃ ・・・ 逃げちゃったの ・・・? 」
「 わからない どこかで無事にいてくれれば って思う ・・・ 」
「 そ そうね。 ほら あの子・・・突然 茂みの中で
鳴いてたから ・・・ 」
「 うん ・・・ 買い物にゆく途中も 探してみる。 」
「 お願いします。 どうか見つかりますように ・・・ 」
「 ウン ・・・ 」
「 あ 今 すぐに買い物リスト 作るわね! 」
「 うん ・・・ 」
ジョーは リビングの片隅に置き忘れていた < オモチャ >
チビ用の猫じゃらし を手にとった。
チビ・・・? どこにいる?
ずっと一緒 じゃなかったのかい
・・・ 君もまた
ぼくを置いていってしまった のかい ・・・
「 ジョー ! 出来たわ! ちょっとたくさんになっちゃったから
配達を頼んでも ・・・ 」
「 あっは? ぼくを誰だと思っているんだい? 」
ジョーは 見た目は細めな腕を ぎゅん、と曲げてみせた。
「 あ〜ら 失礼いたしました〜〜 じゃ 持って帰ってきてね〜
卵とかあるから 気をつけてくださいな 」
「 了解〜〜 じゃ 自転車で行ってくるね〜〜 」
「 はい お願いね〜 」
「 うん♪ 」
お〜〜い クビクロ〜〜〜 チビも〜〜
買い物 行くよ〜〜〜
ワ ワン ワンワン〜〜〜〜♪
にゃ にゃああ〜〜〜ん
「 ・・・え? 」
フランソワーズは 思わず彼の後ろ姿に目を凝らしてしまったが。
自転車の前に 後ろになる茶色毛の犬の姿と
前籠の中で 風に髭をゆらす白い仔猫の姿 が ちらり と
見えた。
「 ・・・・? わたし 目が ヘン・・・? 」
ぱち ぱち・・・瞬きを繰り返す。
「 ・・・・ 」
視線の先には 自転車を飛ばしてゆく茶髪の青年の姿が 映るだけだった。
・・・?? まぼろし??
でも 声も聞こえた けど・・・ 空耳 ???
「 ジョー・・って なんか不思議なヒト ね・・・ 」
でも でも 好き♪
わたし 知りたいわ。
ねえ わたしのこと、どう思ってる?
ええ 好きじゃなくてもいいの。
ただ このまま はイヤ。 はっきりしたいわ。
ジョー ・・・ !
フランソワーズは 小さくなってゆく後ろ姿に全身で呼びかけていた。
やはり 白い仔猫は見つからなかった。
「 そう ・・・ 」
「 ウン。 商店街でさ〜〜 あの煙草屋のおじいさん、
いっつも店番してるだろ。 だから 聞いてみたんだ。 」
「 あ〜 あのお店ならバス停に近いわね。
チビがいたのも あの辺りだわ。 」
「 ね? ず〜〜っと外、見てるから ・・・ 知ってるかな〜って。
そしたら さ ・・・ 」
「 ? 」
ジョーは ふ・・・っと目を伏せた。
「 あの辺には 猫はいないって。
猫を飼っている家は結構あるけど皆 首輪とかしてるし
最近は外に出すことはほとんどないって。 」
「 え〜〜 それじゃ チビはどこから来たっていうの?
」
「 ウン ・・・ もしかしたら ・・・ 捨てられて・・・
車とかで捨ててくヤツもいるって 」
「 まあ!! そんなの 許せないわっ
チビは ウチのコよ? ・・・ どこ いっちゃったのかしら・・・
ああ ちゃんとケージに入れて連れてゆけばよかった・・・ 」
「 それは 無理だよ。 時間的にも無理だった。
きみもよくわかっているだろう? 」
「 ・・・ ええ ・・・ でも でも ね・・・ 」
フランソワーズはだんだんと涙声になってきた。
「 誰のせいでもないよ。 泣かないで フラン 」
「 ・・・ チビちゃん 〜〜 ごめんなさい〜〜〜 」
「 きみのせいじゃないって。
ぼくが悪いんだ ・・・
ぼくが 好きになったから
「 ・・・え なに? 」
「 ? きみのせいじゃないって言ったんだ。 」
「 ええ その後 なんか言った? 」
「 いいや ね 迷子猫 探してます、 のポスター 作ろうよ 」
「 あ いいわね! 商店街に貼ってもらいましょう 」
「 そうだね。 」
ごめんね チビ ・・・
ぼくが チビのこと、好きになったからいけないんだ
ぼくが 好きになったモノは 皆 先に消えちゃう
いっつも一緒にいてくれたのに・・・
そうなんだ クビクロだって
子供の頃の 茶色わんこ だって。
ニンゲンだってそうだよ。
おかあさん 神父さま ・・・
皆 ・・・ 先に逝ってしまった
「 ・・・ あ ジョー そういうの キライ? 」
ふ・・っと黙ってしまった彼に フランソワーズは少し驚いた。
「 ・・・え? 」
「 ポスター 商店街とかに貼ってもらうってこと。
あの イヤなら言ってね? ちがう方法を考えるから 」
「 え・・・ イヤなんかじゃないよう
ぼくだってチビの行方 気になるもん。 ふわふわ〜 チビ・・・ 」
「 そう? 」
「 うん。 なんで? 」
「 だって ・・・ 突然 黙っちゃうから ・・・ 」
「 あ ごめん ・・・ ちょっと考えごと してて 」
「 ねえ なに 考えてたの? 」
「 ・・・ 別に大したことじゃないんだ。
ごめんね〜〜 気を使わせて・・・ ぼくって ヘン だよね 」
ジョーは またいつものあの淡い微笑を浮かべる。
フランソワ―ズはきゅっと表情を引き締め その微笑をみつめた。
「 ジョー。 やめて。 」
「 へ?? 」
「 あのね わたし。 知りたいの。 」
「 ・・・? な なにを ・・・? 」
「 ジョー、わたし アナタがとても優しいってこと、よ〜〜く
知ってるわ。 いつだって周りのこと 気にしてるでしょ 」
「 え ・・・ あ そう かな〜 」
「 そうよ。 アナタはいっつも そう。
自分のことより 他の、周りの人を優先しているわ。 」
「 そ そんなこと ・・・ ない よ? 」
「 ううん。 そうなのよ。
そして いつだってその・・・曖昧な微笑を浮かべているわ 」
「 曖昧な ・・・? 」
「 ええ。 自分自身じゃ気が付いてない? 」
「 ・・・ あ〜 ・・・ 」
と ・・ ん。
彼女は 立ち上がり彼の真ん前に立つ。
そして 彼を見つめる。
「 ― 聞いても いい。 」
「 ・・・ うん? なに 」
「 あの ね。 ジョー あなた、わたしのこと、好き? 」
「 え ・・? 」
「 わたし はっきり言うわ。
わたし ジョーが 好きよ。 これわたしの気持ち。
だから ジョーの気持ち、 知りたいの。 はっきり教えて。 」
「 え ・・・ 」
「 教えてください。 わたしのこと ・・・ どう思ってる?
ええ 好きじゃない ならそれでもいいの。
今のままじゃ ― わたし いや。 いやなの。 」
「 ・・・ フランソワーズ ・・・ 」
ジョーは ぐ・・っと息を呑んで立ち上がった。
にゃあ〜〜〜ん ・・・
彼の耳の奥で チビ猫の鳴き声がきこえる。
にゃん にゃ〜〜ん
がんばれって ― 白いもふもふの手がちょんちょん、とジョーを突いた。
うん わかった ・・・ ありがとう !
「 ぼく は ― 」
彼は 一呼吸すると ゆっくり、そして はっきりした口調で話し始めた。
「 きみのこと キライなんかじゃない。
きみは ぼくにとってとても とても 大切な存在なんだ 」
フランソワーズの顔が ぱあ〜っと明るくなった。
でも。 と 彼はさらに続ける。
「 ― ごめん。 好き にはならないんだ。 」
え・・・? 途端に彼女は泣きそうな顔になる。
「 じゃ やっぱり嫌いなのね。 」
「 ちがうんだ ちがう〜〜〜 きみのこと 好きには
・・・ なれない、 なっちゃいけないんだ 」
「 ・・・ どういうこと? 」
「 ぼくは ・・・ いや ぼくが 」
ジョーは独り言みたいにとつとつと呟きだした。
ぼくが 好きになったヒトは 皆 先に消えていった
ぼくを 置いていった ・・・
だから ぼくは 好きになったりは しないんだ ・・・ !
どんなに 好き でも。 好き っていわない。
そうすれば ― いなくなった時 辛くない から
・・・ だから フラン。
きみのこと、 好きになってはいけないんだ !
きみが ― ぼくはきみが世界一 大切だから。
「 ジョー ! そ んなの ! 間違ってるわっ 」
「 ・・・ え 」
「 そんなの ちがう! ちがうわっ 」
「 ちがう・・? でも 本当にぼくが好きだったヒトたちは 」
「 皆 いつかは ― 消えるわ。
でも それはジョーが好きになったから じゃない。
そんな風に思うのは 思うのは やめて ・・・ 」
フランソワーズの瞳から ぽろぽろ・・・涙を零れおちる。
「 そんなの そんなの 淋しすぎるわ 哀しすぎる ・・・ 」
「 フラン ・・・ 」
「 先に逝ってしまったひと達は ちゃ〜〜んとジョーのココロの中に
いるでしょう?? 」
「 え ・・・ 」
「 わ わたしだって わたしだって ・・・
どうしても どうしても辛いときは お兄ちゃんに縋るわ
お兄ちゃん 助けて・・って。 」
「 ・・・ お兄さん ・・・? でも 」
「 ええ わかってる。 でも お兄ちゃんは ちゃ〜〜んと
わたしの中で生きてる。 パパも ママンも 生きてるわ
」
「 フラン ・・・ 」
「 ジョー ・・・ クビクロだって ジョーの側にいるわ 」
「 え・・・? 」
「 気が付いてないのかもしれないけど ・・・
ジョーってば ミッションで厳しい状況の時 とか ・・・
すごく緊張する時 くびくろ・・って呼んでるの。 」
「 え・・・ き 聞こえた? 」
「 ウウン 口元を見て居て気が付いたの。
最初は なにをぶつぶつ言ってるのかなあ〜 って思ったけど ・・・ 」
「 ・・・ あ は ・・・ ぼく 頼ってるのかも 」
「 いいんじゃない?
ね? 知ってる? 想っているってことは ちゃんと一緒にいる
ってことなの。 」
「 そ そうなの? 」
「 そう よ。
今回のミッションでも 時々 白い仔猫が見えたの。 」
「 え?! き きみにも?? 」
「 ・・・ 多分 見えた気がした、だけだと思うけど・・・
でも 見えた ってことは あのチビちゃんは
わたし達と一緒なのよ。 」
「 そう ・・・ か ・・・ 」
「 そうよ。 きっとそうなのよ。
ね ミーティングなんかで 何も言わないのは どうして? 」
「 え?? だって ぼく、ラスト・メンバー なんだし・・
経験も少ないし・・・ 」
「 え〜〜〜 やだァ〜〜〜 ジョーってば〜 おっかし〜〜 」
フランソワーズは 声をあげて笑った。
「 ・・・? 」
「 ねえ わたし達、9人いて ゼロゼロ・ナンバーズ でしょ? 」
「 う うん ・・・ そ ・・っか ・・・ 」
「 それに ― 覚えておいてくれる? 」
「 え な なにを ・・・? 」
「 わたし が ジョーを好き ってこと。 」
「 ・・・ ほ ホントに?? 」
「 ええ。 そして ね。
わたし 絶対ジョーのこと、置いていったり しない。
もし ・・・先に逝くことになっても それはカタチだけよ。
ず〜〜〜っと ジョーの側にいるわ。
・・・ だから ジョーも 心の中に住まわせて・・・ わたしを 」
「 !!! 」
彼は もうなにも言えずに 腕を伸ばし ―
わん わわん! にゃ〜〜 ジョー 頑張れ〜〜
・・・ 援軍たちが 彼の背を押したにちがいない
― 彼の愛しい女性 ( ひと ) を しっかり抱きしめた。
わん! にゃ〜 じょー? 自分を解放してごらん?
に〜 く〜ん ボクは いつも じょー の側にいるよ
に〜〜 わわん 誰もね もう じょー を 置いてはゆかないよ
わんわん に〜〜 ほら とびきりの笑顔が あるじゃないか
ほうら 扉をあけて 外にでてこいにゃ〜〜
もう 夏だにゃ〜〜〜 元気いっぱいの季節 !
そうだよ 夏へのとびら を 開けて。
― ちょこっとオマケ
数日後の 午後のこと・・・
「 こんにちは〜〜〜 コズミせんせ〜〜〜い
」
コズミ家の昔風の引き戸の前で ジョーは声を張り上げた。
「 コズミせんせ〜〜い ジョーですぅ〜〜 」
「 ・・・ お留守かしら ・・・ 」
彼と一緒に フランソワーズも引き戸の向うに耳を澄ます。
布巾をかけたザルを捧げもっているので ぎこちない恰好だ。
にゃあ〜〜〜〜ん にゃん にゃん 〜〜
玄関の中から 仔猫の声が聞こえてきた。
「「 え?? チビ ?? 」」
二人が顔を見合わせていると・・・
「 あ〜〜 はいはい ・・・ 今 開けるぞ〜〜
すまんなあ〜〜 縁側におって気がつかんで・・・・ 」
いつもののんびりした声が聞こえてきた。
ガラガラガラ −−−−
玄関の引き戸が開いて ・・・
にゃああ〜〜〜ん !
チビ ・・・!
「 やあやあ〜〜 よう来てくれたなあ〜〜 」
「 こ コズミ先生 ! あの このコ ・・・」
「 あ あのう〜〜 この猫さん・・・ センセイのおウチのコですか? 」
「 ほや? ああ おいで〜〜 シロ 」
「 シロ ・・・ ? 」
にゃあ〜〜
とん ・・・ 。 仔猫はすんなりコズミ博士の腕の中に収まった。
「 よしよし・・・ ああ このコはなあ 不思議なんだが・・・
ウチの玄関の前に座っておったのじゃよ 」
「 えっ い いつ ですか 」
「 ・・・ あ〜 そうじゃ そうじゃ〜〜
君達が その・・・ 旅に出た、と知らせを受けた朝じゃったよ 」
「「 やっぱり ・・・ !! 」」
「 うん? 君達もこのコを知っておるのかい?
ふふふ ・・・ 今はしっかりワシの監視役じゃよ〜〜 」
「 コズミ先生 どうか可愛がってあげてください!
あ ぼく 猫缶とかトイレ砂 差し入れますから 」
「 爪とぎ とか ベッド も。 もってきますね 」
「 おお ありがとう 助かるよ 」
「 わたし達も シロちゃんと遊びたいです ね ジョー? 」
「 うん! シロ〜〜 いいウチを見つけたね
( ここなら 安全だもんね ・・・ ぼく達は ちょっと淋しいけど ) 」
「 そうね そうね ・・・
あ! いっけない〜 これ お持ちしたんです。 」
フランソワーズは 手にしていたザルを持ち上げた。
「 茹でたてのトウモロコシです!
ウチの温室で わさわさ〜〜伸びてたんです。 」
「 美味しいですよ〜〜 」
「 おお おお ありがとう こりゃ 夏の風物じゃな 」
にゃああ〜〜〜ん ・・・ シロの髭が風に揺れていた。
*********************** Fin. **********************
Last updated : 07,23,2019.
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************* ひと言 **********
いつも側にいてくれてる・・・・ と思いたいですにゃ (;O;)
ペット・ロス は 当分続きそう・・・ ((+_+))
タイトル拝借の 『 夏への扉 』 は
猫好きさん必読!の SF ですにゃ (*^^)v