『 夏への とびら ― (1) ― 』
「 ただいま〜〜〜 雨 上がったよぉ 」
玄関からきこえる声が こころなしか弾んでいる。
「 お帰りなさ〜〜い ジョー。 あら 本当・・・
空がすこし明るくなってきたわね 」
フランソワーズは 彼の声につられて窓の外を眺めた。
「 嬉しいわ 梅雨あけかしらね〜〜 」
「 どうかなあ ・・・ まだ ちょっと無理かもなあ 」
玄関に出てきた彼女の笑顔に ジョーも笑顔で応えた。
「 あ 買い物、してきたよ。 桃! 桃があったんだ〜〜 ほら 」
ジョーは 袋の一番上からそう・・っと取りだした。
「 もも? ・・・ わあ〜〜〜 キレイねえ ・・・
うふふ ・・・ これ 産毛みたいね 」
フランソワーズは 果実を目の高さに持ち上げにこにこ 眺めていている。
「 ほわほわしてるね? 冷やしといて今晩たべようよ 」
「 そうね そうね ・・・ あら? 」
に ・・・・ ぃ ・・・
ジョーの足元で 小さな声がした。
「 猫 ・・・? 」
「 え?? 」
「 ジョ― 猫さん 連れてきたの? 」
「 ねこ? ・・・ あ さっきさ、商店街の外れで
白い猫がいたんだ。 でっかい猫でさ〜 悠然と昼寝してたから
えへへ・・・ お昼のお握り、鮭のとこあげたんだ。 」
「 まあ ・・・ 野良ネコさんかしら 」
「 う〜〜ん どうかなあ けっこうふくふくしてたから
あの辺でエサもらってるのかもな〜 」
「 ふうん ・・・ でも 今さっき 仔猫さんの声がしたわ? 」
「 そう??? ・・・ いない よ? 」
「 そう よねえ ・・・ 」
彼女は 玄関をぐるりと見回した。
すみっこまで スニーカーの陰までみたけれど 勿論 仔猫はいなかった。
「 空耳かしら ・・・? 」
「 ・・・ さあ ・・・ あ 今度さ〜〜
あのでっかい猫、 見にゆこうか 」
「 そうね そうね。 ・・・ ウチに猫さん いてもいいわねえ 」
「 あは ・・・ 」
ジョーは すこし微妙な笑顔をみせたが、別に否定はしなかった。
・・・ あ また この笑顔 ・・・
フランソワーズは フクザツな思いで彼を見つめていた。
― そう ・・・ ジョーは いつも微笑を浮かべている。
それはとても淡い笑みで でも 彼が決して不機嫌ではない、と周囲に
教えるのには 十分だった。
ふうん ・・・ 穏やかで柔和な性格なの ね?
最初 彼女はそんな印象を持っていた。
柔和ではあるが 優柔不断 とかではない。
ひとたび ミッションとなれば 彼は きっちり、自分の役割を果たす。
きゅっと口を引き結び きっちり、しっかり最後の最後まで
彼は自分自身の < 仕事 > を果たすのだ。
いつしか ジョーに殿 ( しんがり ) を任せれば大丈夫 ・・・
とメンバーの誰もがそう思うようになっている。
しかし。
作戦中などのミーティングの時、 ジョーは発言しない。
「 〜〜となる。 それじゃ 意見を聞く 」
「 おう オレは〜 」
「 それはヘンだわ! データをよく見て! 」
「 そうだね〜 僕は〜 」
個性豊かなメンバー達は 口々に主張する。
上手く 交通整理 しないと 何も進まないほどだ。
そんな喧騒に近い中で 彼は 口を噤んでいる。
「 う〜〜ん どうしたら ・・・ あ ジョー。
君はどう考える? 君の意見は? 」
隣のピュンマにつつかれ 彼はやっと口を開く。
「 あ ・・・ 皆の意見に賛成だよ ぼくは。 」
「 ! 皆 って誰だよ〜 」
「 全員の意見に賛成 ってことか? 」
「 ・・・ えっと そのう ・・・
皆できめたことに 賛成 ってこと かな ・・・ 」
聞いていない のではない。 しっかりミーティングに参加し
仲間たちの話に きちんと耳を傾けている。 理解力も抜群だ。
だけど。 島村ジョー は 009は。
自分の主張をしない。 というか 自身の意見を言わない。
なんなの?? 自己主張しないって信じられないんだけど。
・・・ええ 嫌いじゃないわ いいヒトよね?
お兄ちゃんと ちょっと見た感じが似てるのね
・・・ ついつい目で 追い掛けてしまう
― ええ そうよ。
わたし 彼のことが気になるの !
彼は ・・・ どう? わたしのこと、どう思ってる?
フランソワーズは ずっと気になっていた。
そして じっと見つめれば ―
彼は 淡い微笑を浮かべ す・・・っと視線を逸らせてしまう。
嫌われているのかな? と思ったが 話かければごく普通に答えるし
そして 彼はいつもとても優しいのだ。
あら。 わたしのこと 気に入ってくれてる?
ねえ わたし もっともっとアナタのこと、知りたい。
もっともっとおしゃべり しましょうよ?
ねえ ジョー ・・・?
彼はいっつも微笑を浮かべている だけど それ以上の接近はないのだ。
・・・ わたしのこと、 キライ?
やはり同じ国のヒトがいいのかなあ ・・・
ねえ どっちなの??
― 彼は微笑んでいるばかり。
ジョーは 明確な意思表示をしないヒト と仲間たちに思われている。
そして 日本で、この邸で暮らすようになっても 変わってはいない。
そのコト以外では 彼はとても穏やかで 一つ屋根の下で暮らすには
気持ちのいい同居人で安心できるヒト だった。
「 ねえ ・・・ やっぱり犬の方が いい? 」
「 え? 」
その夜、 晩ご飯を終えてまった〜〜りしている時
フランソワーズが 何気なく聞いてきた。
「 昼間の話よ。 あの ・・・ 飼うのだったら
やっぱりワンちゃんの方が 好きかしら ジョーは 」
「 そんなこと ない けど ・・・ 」
「 ここは敷地もひろいし ― 犬でも猫でも飼ってよいよ?
犬じゃったら 自由に庭で遊べて喜ぶのじゃないか 」
博士は のんびりお茶を飲んでいる。
「 博士、 どちらがお好きですか 」
「 ワシか? あ〜〜 子供の頃 家にはシェーパードがいたよ。
結構遊んだなあ ・・・ 祖母の家には猫がいて ・・・
遊びにゆくと よく触って楽しんでいたぞ。
どちらか ・・・って どちらも 好きかな 」
「 まあ そうですか わたしね〜〜 ず〜〜〜っと
動物と一緒の生活って憧れていたの。
パリにいたころは アパルトマン暮らしでペットはいなかったし・・・
窓辺にくる小鳥さんに エサをあげていたくらい 」
「 ・・・ ぼくも ・・・ 飼えなかったな ・・・
施設暮らしだったから ・・・ 」
「 ね? それなら ― どちらか 一緒に暮らしましょうよ?
ワンちゃん でも にゃんこさんでも いいわ。 」
「 ああ お前たちで好きな方を選んでよいよ。 」
「 ありがとうございます。 うふふ ・・・ 実はね〜〜
稽古場の近くにペット・ショップがあって ・・・
わたし よく 張り付いてみてるの 」
「 あ・・・ あのう〜〜 」
「 ? 」
「 飼うのなら ・・・ そのう ・・
そういう店じゃなくて ・・・ 保護犬 とか 保護猫 が ・・・ 」
「 ほごねこ? それ なあに。 猫の種類? 」
「 ちがうんだ。 あのさ 日本にはね ・・・ 」
ジョーは この国の ペット事情? をざっと説明した。
「 ! そんな ・・・ 。 」
フランソワーズは きゅっと唇を引き結んだ。
「 あ あの ・・? 」
「 わかりました。 明日 ほけんじょ に行ってきます。 」
「 ふ フラン ・・・ あのう ・・・? 」
「 ああ ワシも一緒に行くよ フランソワーズ。
― その方がいろいろ ・・・ よいだろう? 」
「 まあ 博士。 ありがとうございます。
ジョー 明日 新しい家族をウチに迎えましょう。 」
「 え ・・・ 」
「 帰りに いろいろ・・・買ってこないと ・・・
ほら ゴハン用の器とか トイレ用品とか。 ベッドもね〜〜
あ 一番大事なのは ご飯 ! 」
「 あ そっちはぼくがそろえるよ。 」
「 ありがとう〜〜 うふふ 楽しみ〜〜〜 」
「 おいおい・・・ 犬か猫か どちらにするつもりなのかな? 」
博士は少々呆れ顔だ。
「 あ ・・・ やだ〜〜 肝心なこと、決めてなかったわね 」
「 ぼくは ・・・ どっちも好きだから どっちでもいいや
フラン 決めてよ 」
「 え そうなの? う〜〜〜〜ん ・・・・?
そうねえ ・・・・ 猫さんにしても いい? 」
「 いいよ どんな猫でもいいよ、皆かわいいもん 」
「 へえ〜 ジョーって猫好きなの? 」
「 ・・・ ぼくは ・・・ 皆 好きなんだ。 猫も 犬も ね 」
「 ふうん 」
「 ・・・ 」
ジョーは それきり口を噤んでしまった。
不機嫌な様子ではなかったので フランソワーズも気にとめなかった。
ああ また いつもの ジョー なのねえ
犬にも猫にも あまり関心はないよってことなのかも
いいわ 博士と一緒に決めちゃおうっと。
うふふ〜〜〜 茶色のわんちゃん も いいし
しましまの猫さんも いいなあ〜
そうよ チビちゃんじゃなくてもいいわ。
オトナのわんさんや 猫さん も 魅力的だもの
フランソワーズは ウキウキしていた。
だから ジョーの微妙〜〜に淋しそうな陰には 気が回らなかった。
はっきり好みを主張しないのは いつものことだ。
そうよ 犬でも 猫でも どっちでも〜 なのよね
ジョーって はっきりした好みってないヒトよ
明日 巡りあえるかもしれない新しい家族について あれこれ想いをめぐらし
フランソワーズはすっかりご機嫌ちゃんだった。
「 ・・・ ふわふわ で 温か だったよなあ 」
ぼくのチビ。 ・・・ 鼻シロの茶色の仔犬・・・
その夜 ジョーはベッドの中で 少しだけ記憶の糸を手繰った。
< そのこと > については今まで極力、思い出すのを避けていたのだけれど。
ああ そうだよ ・・・ あの頃 ・・・
くんくん〜〜って 濡れた鼻づらを押し付けてきて
短い茶色の毛が 艶々してたよなあ
きゅ〜〜ん ・・・・ って鳴くんだよ
ゴハン 食べながらね
こっそり物置で飼っていた仔犬。 町はずれからついてきた仔犬。
多分 捨てられたのだろう。
でも ― 神父様にみつかって・・・
「 ・・・ ごめんなさい 神父様 」
「 ここで こっそり飼うのは 可哀想ですよ 」
「 え? 」
「 ちゃんと散歩したり 遊んだりしてあげなくてはね 」
「 ・・・ ぼく達 散歩してあげれます 」
「 エサはどうしますか? 」
「 ・・・・ 」
「 このワンさんのためにも ちゃんとした飼い主が必要でしょう? 」
「 ・・・ 」
「 教会に来る信者さんに声をかけて 里親になっていただきましょう 」
「 ・・・ 」
「 それが このワンさんのシアワセなんですよ。 わかるね、ジョー 」
「 ・・・ 」
ジョーは だまってまっすぐ前を見つめていた。
だって ― なにか言ったら 下を向いたら 涙がぼたぼた落ちてしまうから。
「 ・・・ さよなら ・・・ シアワセになれよ 」
薄茶色の仔犬は 振り返り振り返りしつつ引き取られていった。
「 ジョー 大丈夫ですよ。 スズキさんは動物好きな方です。
うんと可愛がってもらえます。 あのワンさんにはお家ができたのです。 」
「 ・・・・・ 」
神父さまは そっとジョーの肩に手を置いてくれたけど
ジョーは 身体を固くして仔犬が連れられていった後を見つめていた。
・・・ わんこ には お家 ができたんだ・・・
迎えにきてくれる人が いたんだ ・・・
― ぼく は ・・・?
・・・ 誰も ・・・ いない ・・・
ぼくを必要としてくれる人は いないんだ
それ以来 ジョーはペットとは距離を置くようになっていた。
飼うことは勿論 できなかったし、近所にいる犬やら猫にも
関心を示さなかった。
・・・ どうせ 皆 どこかに行ってしまうんだろう ・・・?
自分自身で 塀 をつくり 彼は固く閉じこもった。
いつも浮かべている淡い微笑 は その塀を護るためでもあったのだ。
やがて ―
とんでもない運命に巻き込まれた後も 彼はいつも一人だった。
特殊な運命で結ばれた貴重な仲間たちとも 心底から親しくはしない。
拒絶するわけではないが 一歩踏み込んだ付き合いは しないのだ。
そして ― あの鼻黒の仔犬と出会ってしまった。
・・・ !
ああ 今でもはっきりおぼえてる
お前の 手触り お前の 声
お前の 冷たい鼻先 お前の 匂い
く び く ろ
運命の出会い をして そして 哀し過ぎる永訣を体験してしまったのだ。
「 ・・・ 犬 でも 猫 でも 好きさ。
動物は いいよなあ〜〜 皆まっすぐにぼくを見るもの。
でも ・・・
ぼくのトモダチは ・・・ アイツだけ だ 」
彼は 夜空をみあげ深いため息をついた。
― 翌日の午後 それも遅い時間。
「 ただいまあ〜〜 買い物 してきたよぉ 」
ジョーは 玄関に入ると どさり、と重い荷物を置いた。
「 ・・・? あ 二人とも出掛けてるのかな ・・・ 」
スニーカー を脱ぐと嵩張る袋を持ち直した。
「 え・・・っと ・・・? 猫君用のグッズはどこに置けば
いいのかなあ 」
トトトト ・・・・ 微かな ごく 微かな音がして
「 にゃああ〜〜〜〜〜〜ん 」
真っ白な毛皮のカタマリが 飛び出してきた。
「 ?! お ・・・?? 」
「 ・・・・ 」
白毛のカタマリは 空色の瞳でジョーを見上げると に・・・っと笑った。
「 やあ ・・・ ぼく ジョー。 」
「 にゃん 」
仔猫は ちょっとだけ首を傾げていたが ― ぴょん。
「 おわ?? 」
ジョーに向かってかる〜〜くジャンプしてきた。
「 にゃん? 」
「 あは ・・・ ふわふわだねえ〜〜 」
仔猫は 難なくジョーの腕の中に収まったのだ。
「 チビ〜〜〜〜 そっちへ出ちゃ だめよ〜〜う 」
フランソワーズが リビングへのドアから飛び出してきた。
「 ジョー 〜〜〜〜 チビは?? 外にださないで〜〜 」
「 ちび? 」
「 猫さんよ〜〜 もう元気すぎて走り回ってばかり・・・
チビ? どこにいったの?? 」
「 にゃあ〜〜ん 」
「 どこ? 」
「 ここにいるよ 」
「 え? ・・・ あらあ〜〜〜 もう仲良しなの? 」
「 いきなり ここに着地さ 」
「 うふふふ〜〜〜 相性がいいのね?
あ ジョー。 今日からウチの家族です。 ちびちゃん 」
「 そっか〜〜 よろしく〜〜 チビ君。 」
「 あら どうしてわかったの? むっしゅう だって 」
「 うん? なんとなく・・・ このイタズラ坊主みたいな目で ね 」
「 そうなの〜〜 それでねえ ちびちゃん です。
もうねえ 運命的な出会いだったの〜〜 」
「 保健所から引き取ったんだろ? 」
「 うう〜〜ん 全然その前。 」
「 ?? 」
「 博士とね 下のバス停で待ってたら ・・・ 」
いらっしゃい と彼女は仔猫に手を差し出したが
< 彼 > は そのままジョーの腕の中で く〜く〜 ・・・
眠り始めた。
「 あら かわいい〜〜 」
「 このコ どこで ? 」
「 ああ あのね 下のバス停でね 」
「 うん ・・・ 」
ジョーは 腕の中の温かいカタマリをそうっと そうっと撫で撫でしつつ
フランソワーズの話に 耳を傾けて始めた。
「 おや 次のバスまで15分も あるぞ? 」
バスの時刻表を覗きこみ 博士は嘆息した。
「 あらら のんびり待ちましょうよ 急ぐ用事でもないし 」
「 そうじゃな ・・・うん ? 」
「 はい? ・・・ あら 」
み ・・・・ みぃ〜〜〜〜
二人のすぐ後ろからか細い声が聞こえてきた。
「 え? ・・・ なんか声が ・・・ 」
「 こりゃ 仔猫 か? 」
「 え〜〜〜 どこ? 」
フランソワーズは 咄嗟に < 眼 > を使っていた。
「 ・・・ あ 仔猫! その薮の中に 〜〜
」
「 どこじゃ? おお見つけたぞ 」
博士は ひょい、と薮の前に屈みこみ 手を突っ込みかけ
「 ! 博士〜〜 危ないです、引っ掛かれますよ 」
「 ああ? 」
「 わたしが捕まえます! ・・・ ぱーかーで腕を包めば・・・
猫さ〜〜ん おいで〜〜〜 」
がさ ごそ。 うにゃあ〜〜?
「 ん〜〜〜 ほら おいで〜〜 きゃ・・・
こらあ〜〜 ひっかかないでよぉ〜〜〜 」
「 お お ・・・ いやあ 白い仔猫だな 」
「 暴れない〜〜 あらら ・・・ アナタは白さん なの?
ネズミ色なのかと思ったわ 」
「 洗ってやろうなあ。 なあ このコ を 」
「 はい! さあ お前のおウチに帰るのよ〜〜 」
「 フランソワーズ バッグはワシがもってゆくから ・・・
そのコをしっかりつかんでいってくれ。 」
「 はい。 こらあ〜〜 噛みつかない〜〜
本気で噛んだら キミの歯が欠けてしまうわよ? 」
「 ははは ・・・ 帰ったら 即 風呂 だな。 」
「 ええ ええ。 あら? このチビさん たら
案外大人しい? 」
「 うん? ああ ほっとしたのかもしれんなあ 」
「 そう ですねえ 」
拾ったばかりの子猫は パーカーに包まれじ〜〜っと二人を見つめていた。
「 洗ってあげて ゴハンとミルクと 」
「 ああ その前にペット・クリニックじゃな。
一応 健康診断、そしてワクチン接種じゃ 」
「 まあ そうなんですか お詳しいんですねえ 」
「 子供のころ、 犬も猫も飼っておったからな ・・・
ああ 君は初めてかい 」
「 ええ そうなです。 うふふ ふわふわ〜〜 」
「 ジョーが戻ったら 相談して名前をきめておやり。
ふふふ ・・・ 可愛いのう 」
「 ね? チビシロさん♪ 」
みゃあ〜〜ん 仔猫は可愛い声を上げた。
「 ・・・ という訳なの。
きっとね〜〜 このコは わたし達を待っていたのよ。 」
「 そっか ・・・ 」
「 あの茂みでず〜っと待ってたのね 」
「 ・・・ 捨てられたのかなあ 迷いネコかなあ 」
「 あの辺りに お家はないし ・・・ 首輪をしていた形跡も
ないわよ 」
「 でもね 完全な野良ネコ なんていないよ?
・・・ ウチのコになるかい。 」
「 ね〜〜 うふふ なんて名前にする? 」
「 別に ・・・ フラン、きみが好きな名前にしていいよ 」
「 あら 一緒に考えましょ? ウチの家族になるんですもの 」
「 ・・・ うん ・・・ そうなんだけど 」
「 そうそう ペット・クリニックにも行ってきたの。
ウィルス・チェック は オッケーですって。
ちゃんとワクチン注射もしてきたのよ 」
「 そっか ・・・ よかったな お前 ・・・ 」
「 だから 〜〜 名前〜 」
「 さっき チビ って呼んでたろ? それでいいんじゃないか 」
「 え ・・・ 」
「 なあ チビ? 」
ジョーは そっと腕の中の毛皮のカタマリに話かけていた。
ジョー ・・・?
猫さんに関心があるのかなあ ・・・
それとも ・・・ 好きじゃないのかしら。
やっぱり 仔犬さんの方がよかった・・・?
フランソワーズは少しばかり複雑な気持ちで ジョーと仔猫を
眺めていた。
翌日から ギルモア邸はこのチビの新参者に振り回されっぱなしとなる。
に〜〜 に〜〜〜 にゃあん〜〜〜
「 ? チビ〜〜〜〜 ? どこ? 」
「 ん? リビングにおらんのかい 」
「 ええ ・・・ 朝ご飯 食べてたはずなのですけど
チビ〜〜 ?? 」
にゃあ〜〜ん ・・・・
「 お返事は聞こえるけど〜〜 ちび〜〜〜 」
フランソワーズは キッチンを探し、リビングをもう一回見回した。
「 あれえ ・・・ ちび どこぉ? 」
にゃあん。 ・・・ ここだよ。
「 え?? ・・・ああ ジョーね。 びっくりしたあ〜
チビがしゃべったのかと 思ったわ・・・ ジョー どこ? 」
「 ここだよ。 テラス。 」
「 え? 」
カラリ と 網戸を繰れば テラスに置いてあるデッキ・チェアに
ジョーが座っていて 膝の上には。
「 あらあ〜〜 チビったら〜〜 いつの間に外にでたの? 」
「 わかんないよ〜 ぼくが庭掃除してたらじゃれついてきたんだ。 」
「 え ・・・ 網戸、自分で開けたのかしら 」
「 さあ ? 脱走されちゃ困るから 抱き上げたら ―
そのまま さ。 」
「 あ〜らら チビちゃん、お家にはいりましょ?
ブラッシングしてあげるからね〜〜〜 」
「 ああ たのむね。 ほら
」
にゃ にゃあ。 仔猫はジョーにしがみつく。
「 ほら〜〜 ウチの中に入るだけだよ? 」
「 おいで チビちゃん 」
にゃ。 仔猫は断固! ジョーの側を離れない。
「 ・・・ しようがないわねえ〜〜
ジョー しばらく遊んでやってくれる? 」
「 ああ いいよ。 庭の外には出さないから 」
「 ええ お願い。 」
にゃ にゃ にゃあ〜〜 ん 仔猫はご機嫌ちゃんだ。
仔猫は いつもジョーの側にひっついてたがった。
ご飯をくれるのは フランソワーズ ブラッシングしてくれるのは 博士、
と 役割は決まっているのだが・・・
それ以外の時 ジョーがいれば必ず彼の側でチビは遊んだり眠っていたり
するのだ。
夜も 自分のベッドで丸くなるよりも ジョーのベッドに潜りこむ。
「 う〜〜ん ねえ チビちゃん? たまにはわたしと一緒に
寝ない? 」
にゃあ ?? にゃ。 仔猫はす・・っとジョーの足元に座る。
「 あ〜あ ・・・ 振られちゃったあ 〜〜 」
「 あは ・・・ ぼく きっと同類だと思われてるんだよ 」
「 ええ? う〜〜ん きっとね、男同士、気が合うのでしょ。
ま いいわ。 昼間はわたしと一緒だもんね〜〜 」
「 ワシの膝でも よく昼寝してゆくぞ 」
仔猫を囲んで 笑い合いおしゃべりしあい ・・・ 少しづつ
< 家族 > の雰囲気が出来上がっていった。
そんな頃 ・・・
― 突発的に ミッションへ赴くことになった。
博士を含め この邸を空けなければならない。
他のメンバー達とは現地で合流するので 出発の時間が迫っていた。
「 チビ ・・・ どうする? 」
「 コズミ先生のとこに お願いしてくるわ ! 」
「 そうだね ここには置いておけない。 」
「 ええ もちろんよ。
・・・えっと キャリー・ケース は ・・・ 」
「 ぼく ご飯とトイレ砂、用意するね! 」
「 お願い! ああ 玄関の納戸にしまったんだったわ 」
緊迫した空気の中 二人は仔猫のために奔走し始めた ・・・ のだが。
ちび〜〜〜 ちび?? どこにいるのぉ〜〜〜
ちび? お〜〜い 出ておいで〜〜〜
白い仔猫の姿は 消えていた。
Last updated : 07,16,2019.
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********** 途中ですが
この二人は 平ゼロ か 原作 ですね〜〜
実は 只今 酷いペット・ロス でして ・・・
こんなお話になりました ・・・・ (:_;)
タイトル〜〜 例の某有名SFから拝借です☆