『 薔薇に降る雨 ― (4) ― 』
ガラガラ 〜〜〜〜〜 ・・・・・!
錆びつき寸前の派手な音が響きわたり ― でこぼこしたガレージのこれまたでこぼこした
隅っこに、 見慣れないクルマが置いてあった。
「 うわあ ・・・ 」
「 さ 入ってくれたまえ。 そしてこれを〜〜 これをみて欲しい。 」
コズミ博士は もうもう〜〜相好を崩しっぱなしだ。
「 え あ はい お邪魔します 〜〜 」
ジョーは 律儀にぺこり、と頭を垂れた。
「 ふぁふぉふぉ〜〜〜いや〜〜 ジョー君や、ありがとうな〜
いやあ〜〜〜 ほんになあ これを頼めるのは君だけじゃからなあ〜〜 」
「 はい? ・・・ あのぉ〜〜〜〜 今日はなんのご用事ですか。 」
「 フフフ・・・ ジョーよ。 きみにはテスト走行を頼もうと思ってなあ〜 」
ギルモア博士も上機嫌でジョーを隅っこまで引っ張っていった。
「 ああ テスト走行ですか。 いいですよ〜 それで どんな新車ですか? 」
「「 これじゃよ〜〜〜 」」
二人の老博士は 声を揃え、ワカモノみたいにわはわは笑っている。
「 コレ・・・って ・・・ 」
「 そうじゃ。 コレじゃよ。 うん、 あのオメガの暴挙に立ち向かうために な!
コズミ君と開発 ・ 改良したのが この車だ。 」
「 ・・・ は あ ・・・ 」
ジョーは 返す言葉に詰まり、呆然と < この車 > を眺めている。
ソレは 昭和が色濃く匂う ・ かなり年季の入ったモノだった。
「 特殊装備についてはおいおい説明する。 まずはこの車に慣れて欲しい。 」
「 そうじゃとも。 いかいに優れたマシンであっても、だな。
その目的と使用方法を誤っておったら 存在する価値はない。 」
「 ま そりゃそ〜ですけど ・・・ 」
「 では これからテスト走行に出発してくれたまえ。 行き先は ・・・ え〜と
おお そうじゃ 海岸線をぐる〜〜っと回ってきて欲しい。 」
「 え ・・・ ぐる〜〜〜っと ですか。 」
「 まあ 風景でも楽しみながら〜〜 試験運行を頼む! 」
「 わかりました ・・・ けど。 その新規開発システムはどこにあるのですか?
どこでどうやって操作するのかな〜 」
ジョーは半身をつっこんで 古めかしい、いや 由緒あり気な運転席をあれこれ眺めている。
「 え あ ・・・ ああ 〜〜〜 」
「 ほっほ・・・ それもそうだなあ〜〜 」
「 じゃから それはそのうちに 〜〜 」
「 うむ ・・・ 公道では なあ? 」
「 うむ ・・・ 我々は平和を愛するよき市民 じゃからなあ〜 」
ご老人二人は わざとソッポを向いたり、咳払いをしたりしている。
「 でもそれじゃ いざって時に使えないですよ! 」
「 いやいや。 その必要はないよ。 まあ ・・・ 君が適正に運転していれば
自ずと使用できる。 」
「 そうじゃよ。 ワシら、二人を信頼してほしい。」
「 そりゃ・・・信頼はしてますけど ― テストは ? 」
「 そんなヒマ あるか! ・・・ まあ ともかく足慣らしをしておいで。
ここいらの海岸線ならば交通量もほとんどないからの〜 安心して・・・ 」
「 そしてな、 初稼働の感想をな 是非。 」
「 はあ ・・・・ 」
ほら 乗った乗った〜〜 と ジョーは二人の老人に 運転席に押し込められた。
「 行っておいで。 Bonne Voyage ! 」
「 ジョー。 これで ・・・ 護れる な? 彼女を・・・ 」
「 ! はい! 」
ガッタン ゴットン ・・・ ヴァ〜〜〜〜〜・・・・
爽やかな返事を残し、一見中古車 ― その実 魔改造車 は発進していった。
「 ふぉふぉふぉ ・・・ 最強の改造車じゃな〜〜 」
「 ふふふ ・・・ 009に相応しいクルマじゃよ〜〜 」
「 うむ うむ ・・・ stranger号 と名付けたいのじゃがのう〜〜 」
「 お いいじゃないか。 アイツも喜ぶじゃろうて 」
老人たちは上機嫌で見送っていた。
カラリ ・・・・ テラスへのフレンチ・ドアが開いた。
「 ほら こっちがね、一応お庭なの。 裏はまだ石ころとか瓦礫とかが積んであって
全然お庭になっていないのよ。 」
「 まあ 花壇がいっぱい ・・・ 矢車草が綺麗ですね。 フランソワーズさんの瞳みたい 」
「 えへへ ・・・ あれはちょっと自慢なの。 」
お茶タイムもそこそこに娘達は庭に出た。
華やいだ声をひびかせ、二人はギルモア邸の表庭を回ってゆく。
「 ここは本当に荒地だし・・・海が近いからお花とか育てるのは難しいかなあ〜って
思って当初は諦めていたのだけれど ・・・ なんにもないのはやっぱり淋しいでしょ。 」
「 ああ それで塀替わりに樹がたくさん植えてあるのですね。 」
「 まあ 気付かれました? 」
「 とてもいいなあ・・・って思って。 生垣だと同じ種類の木をずっと植えるけど
ここのお庭の塀は いろいろな樹が植わっているわ。 皆が護っているのね。
柿の木 とかあって楽しいわ。 」
「 嬉しいわ〜〜 それで ね、 ほら こっち ― 薔薇のアーチを作りたくて 」
「 ・・・ まあ ・・・ このアーチ ・・・ 凄いわ〜〜 もしかして手作りかしら。
あ フランソワーズさん、お作りになったの? 」
「 うふふ これねえ、仲間 ・・・というか、知り合いの人が作ってくれたの。
ネイティブ・アメリカンの人でね、とても器用なの。 」
「 素晴らしいわ・・・ 木でできたアーチって きっと花も喜んでいますわ。 」
「 そうだといいだけど ・・・ そうだわ、頂いた < 舞姫 > を アーチの
反対側に植えてみようかしら。 」
「 まあ それは素敵なアイディアね! こちら側の赤い花は カクテル ね。 」
みつこは まだひよひよとした蔓を伸ばす薔薇にそっと触れた。
「 カクテル? この花の名前なの? 」
「 ええ ・・・ 舞姫とカクテルが絡み合って きっととても綺麗になるわ。 」
「 ほんとう? そうなればうれしいわ。 ここはちょっと殺風景で淋しいし・・・ 」
フランソワーズは まだまだ荒地が目立つ庭を見回した。
そこは みつこの家の薔薇園から見れば まるで不毛の地みたいだった。
「 ね、 フランソワーズさんは ここにご家族でいらっしゃるの? 」
「 ううん ・・・・ わたしの両親はもう亡くなってしまっていて ・・・
今はね 後見人の方と ・・・ その助手をしている人と一緒に住んでいるの。 」
「 あ …その助手さんが 一緒に薔薇を植えたりする方、ね? 」
「 ええ 穴掘り専科っぽい・・・ 花オンチの人よ。 」
うふふふ ・・・ クスクス ・・・ 娘たちは声を上げて笑う。
「 いい方なのね ・・・ フランソワーズさんの想いが届きますように ・・・ 」
みつこは 咲き始めていた赤い蔓バラにそっとキスをした。
「 うふ ・・・ そう なればいいなあ ・・・って ・・・ 」
「 きっと。 二人で薔薇を育てて ・・・ 私達の代わりに 」
「 みつこさん・・・ 」
「 私も彼と ・・・ 大半を庭で過ごしましたわ。 一日中ほとんど一緒だったけど
でも薔薇の話ばっかり。 それでも楽しかったわ 嬉しかったわ 」
「 ええ ええ ・・・ そうよね ・・・ 」
「 うふふ ・・・ 彼も薔薇に夢中だったの。せっかくおしゃべりできても薔薇のことばかり。
庭師を目指していたから当然かもしれないけど・・・
私、ちょっぴり薔薇にヤキモチを 焼いたこともあったわ ・・・ 」
「 ええ ええ ・・・ わかるわ 〜〜〜 」
「 あ ごめんなさい ・・・自分のことばかりしゃべって ・・・ 」
「 いいの ・・・ 薔薇たちが聞いているだけですもの。」
「 そう ね ・・・ あのね もう一つだけ、聞いてくださる? 」
「 なんでも・・・ 」
「 うふ ミッチィ って。 彼は 彼だけが そんな風に私のことを呼びました。 」
「 それがきっと アイシテル って意味だったのね。 」
「 ・・・ わからないわ もう ・・・ 今は ・・・ 」
「 ミツコ という薔薇を作ろうとしていたのでしょう? 」
「 ええ ・・・ それが彼の夢でした 」
「 じゃ 確実ね。 お庭の薔薇たちはちゃんと知っているわ。 」
「 そう かしら ・・・ それならうれしいわ ・・・
ふふふ ・・・ ほら この花たちも ・・・ フランソワ―ズさんの想いを聞いて
くれていますわ。 」
「 カクテル に 舞姫 さんたち ・・・ ! わたしの気持ちを 伝えて・・・ 」
サワサワサワ ・・・・ 風がゆるゆると アーチに絡まる葉を震わせていた。
ガタクリ ガタクリ 〜〜〜
古めかしい、というか ただ単にガタガタの車がへ〜へ〜 青息・吐息で走っている。
「 ひゃああ〜〜〜・ 結構なんとか動くもんなんだよなあ ・・・ 」
運転席でジョーはひたすら感心の連続であった。
「 へえ〜〜〜 これってなんだか 自動車の化石 みたいだなあ ・・・ 」
通常であれば面白がって寄ってくる群衆たちも こんな辺鄙な場所には現れなかった。
「 ふうん ・・・ いやしかし ― これは凄いクルマかも・・・
マニュアル操作が多いってことは ・・・ ぼくだけの運転ができる よな?
え ・・・ あ これでその操作をインプットしておけば・・・ 」
ジョーは次第に運転を楽しみだしていた が ・・・
突然 ・・・ 操作が滑らかになりオンボロ車が驀進を始めた。
シュ −−−− ・・・・
昭和のユーズド・カーは いつの間にか ジョーの、ジョーだけの車になり始めていた。
「 ・・・ すげ〜〜〜☆ あは ・・・ ギルモア博士もコズミ博士も〜〜
ほっんとヒトが悪い・・・ いや! すごいよ〜〜〜 」
もうジョーは夢中になっている。
「 う〜〜ん ・・・ こんなクルマ、初めてだ〜〜
・・・ あ。 そうか。 これであの サイボーグX と対峙せよってことなんだ。 」
ジョーは ぐっとハンドルを握りしめた。
「 やるぞ! お前をぼくの最大のパートナーとして育てるから。
うん、時間があんまりないんだ。 この帰り道でもぼくの運転をしっかり記憶してくれ。
そして ― < その時 > には ぼくの手足となって欲しいな。」
ギュウウ 〜〜〜 ン ・・・!
中古車は いや ジョーの愛車は勢いよく走行し海岸沿いの急カーブを軽々と自在に
こなしてゆくのだった。
・・・ よし ! お前がいれば ― 宜しく頼むぞ、相棒。
キュ ッ ! ごく普通の中古車は こうして 009の愛車、ストレンジャー号として生まれ変わっていった。
シュンッ ・・・ シュヴァヴァヴァヴァ 〜〜〜〜 ・・・!
円盤が海上すれすれを飛行してゆく。 滑らかにそしてぎりぎりの低高度を保ちつつ
波の上を滑空してゆくようだ。
「 ・・・ 009。 お前にはなんの恨みもないが な。
お前たちゼロゼロ・ナンバー サイボーグ達には負けない。
そして破壊する。 そして僕は ・・・ あの悪魔から逃れるんだ ! 」
Xの人口眼球に じわ・・・ っと暖かい涙が湧き上がってきた。
「 そして ― 確かめる! ミッチィ ・・・!
あの事故で君が無事だったとは ・・・ もう一度だけ君の笑顔を見たい ・・・ 」
つ ・・・ 一筋 涙がXのメットに隠れた頬を伝った。
「 は! やっぱりどこか故障しているのか 僕は!
サイボーグなのに 涙なんかが流れてきたぞ? ふん あの老いぼれの作品だからな!
どこかからのオイル漏れだろう さ 」
ぐっと前を見つめると Xの円盤はさらに速度を上げた。
サ ・・・・・ 如雨露から零れる霧雨が 苗の根本をじんわりと濡らしてゆく。
「 わあ〜〜〜 水やりだけでも 全然ちがうのね、すごい〜〜 」
フランソワーズは目を丸くして みちこの傾ける如雨露を見つめている。
「 これは慣れです。 ただ・・・如雨露を満杯にしないのがコツなんです。
「 え ・・・ いっぱいにお水を入れてはだめなの? 」
「 そうすると重くなって上手く如雨露を使えませんでしょ。 ぐらり、と傾けてしまって
・・・ 思いのほか大量の水がかかってしまったり・・・ 」
「 ! そうですねえ 〜〜 ・・ う〜〜ん なるほど〜〜 」
感心の面持ちのパリジェンヌに みつこは暖かい微笑を向ける。
「 薔薇は 本当に 肥料喰い と言われるほどなんです。 」
「 ひりょうくい・・・! 」
「 ええ でもね、 この「 舞姫 」 はとても丈夫で元気な品種ですから・・・
普通にきちんと水やりと定期的な追肥で ・・・ きっと美しい花をつけるわ。 」
「 わあ〜〜〜 わたし、頑張るわ〜〜 ここにね、ぜひぜひ薔薇のアーチを作りたいの。
できればたくさん! 薔薇のアーチをくぐってここにやってくるのよ。 」
「 綺麗でしょうねえ・・・・ うふふ そこを彼氏を腕を組んで駆け抜けてゆくのね ・・・
最高のウェディングになるわね。 」
「 あ あの ・・・わたし、まだ・・・ あのぅ〜〜 」
「 ふふふ 大丈夫。 一緒に薔薇や花や木の世話をしているうちに 自然に
そしてしっかりと解り合えるようになれれば ・・・ いいわね・・
私達の分まで しあわせになって 」
「 みつこさん。 それは貴女も同じことだわ。 貴女には誰にも負けない、
大きな愛がある・・・ そんなふうに感じますわ。 」
「 ・・・・・ 」
みつこはだまって静かに ただ ただ 静かに微笑んでいた。
かあ〜〜〜〜 かあ〜〜〜〜
上空で カラスが一羽なんとも間が抜けた声で鳴いている。
「 ・・・ カラス? なにかヘンな鳴き方ね? 」
みつこの視線を追ってフランソワーズも空を見上げた。
「 え ? ・・・ ! あの〜〜〜 カラス!! 」
003の目は カラスのデベソをきっちりとらえていた。
「 まあ あのカラスをご存じなの? 」
「 え? あ いえ ・・・ ええ〜と ・・・ そう! あれはねえ この地域で
有名なイタズラカラスなの〜〜 ゴミを突くし花壇に種をまくとすぐに掘り返したり ね。」
「 まあ ・・・ 」
かあ〜〜〜〜〜? か か かぁ〜〜〜
カラスはわざと二人の頭上スレスレで輪を描いて飛んでいる。
「 きゃ・・・ 」
「 ちょっと追い払ってくるわね。 」
フランソワーズはカラスを庭の陰へと追っていった。
≪ ・・・ ちょっと!? 007〜〜〜 ?? なんなの? ≫
≪ わっしょい〜〜〜 ≫
≪ 降りていらっしゃいよ、 カラスさん! みつこさんがびっくりしていたわ ≫
≪ ははは そりゃ申し訳ない〜〜 いや ちょいと警報だ。≫
≪ 警報?? ≫
≪ 左様。 009からの緊急通信だ。 ≫
≪ まあ ジョーからの? あ ・・・ でも都心にいるんじゃ・・・? ≫
≪ いや ヤツはこの近辺の海岸線でなんでもテスト走行をしているらしい。
で ・・・ スキャン不可能な飛行物体がこちらに向かっている と。 ≫
≪ ! ・・・・ X かしら ≫
≪ わからんが その可能性は大だな。 とりあえず吾輩がこの姿で急行した。
009もすぐ戻るそうだ。 それまでマドモアゼル、 あのお客人を守れ。 ≫
≪ 了解。 ミスタ・ブリテン? もう少しりりしい鳥になったら?
鷹とか鷲とか ・・ ≫
≪ ふふん! この付近で鷹なんぞが飛んだらそれこそ目立ってしまうじゃないか。
一番ポピュラーで誰もが気にしないのが コレなのさ。 ≫
≪ はいはい・・・ じゃ わたしはみつこさんと中に入るわ。 ≫
≪ はいよ。 吾輩も何気なく訪ねるから ・・・ 上手くハナシを合わせてくれよ。 ≫
≪ りょ〜〜〜かい ≫
かあ〜〜〜〜〜〜 ・・・ カラスはばさばさと裏山に逃げていった。
「 みつこさ〜〜ん・・・ あのね、夏ミカンのジュレが冷えたころだわ・・・
少し休憩しません? 」
「 まあ 夏ミカンの? 」
「 ええ ウチの裏庭にね、大きな夏ミカンの樹があって ・・・ たくさん実がなるの。
そのままではとても酸っぱいのでジュレにしたりマーマレードにしたりしています。 」
「 すてき・・・ フランソワーズさんはお菓子作りがお上手ね。 」
「 母がよく作ってくれたので・・・ その通りにやっているのだけど・・・
お味見してくださいな〜〜 」
「 ありがとうございます 」
娘たちは 泥だらけの手を庭の水道で洗いテラスからリビングへ戻っていった。
― その頃 ・・・
行き交うクルマもほとんどない海岸線に沿った道を 中古車が全速力で飛ばしていた。
「 ・・・ マズイな! あの機影はXに違いない。 」
ジョーはナヴィをチラっと見てから またアクセルを踏み込んだ。
「 なるべく人家がないところに誘いこむか ・・・ 研究所の方にひっぱるか?
このオンボロでなんとか ― んん? 」
ヴォ −−−− ・・・!
ジョーのオンボロ車、いや 009のストレンジャー号は加速装置! 顔負けのスピードに
アップし始めた。
「 お? ・・・ そうか! よし。 これでヤツを迎え撃つぞ! 」
009は 周囲を警戒しつつさらに愛車を驀進させていった。
シュババババ −−−−− ・・・!
円盤は海面すれすれに飛行していきた。
洋上では超高度を保っていたが < 混雑 > するこの国近辺にはいり ぐっと高度を
落としたのだ。
都市部の灯がきらきらと見え始め やがて海岸線がはっきりしてきた。
よし ・・・ この先だったな。 アイツらの本拠地は ・・・
ふん、根こそぎ破壊しても周囲に被害は及ばないし ― 都合いいぜ。
Xは低く呟くと 海岸の崖っ縁に建つ洋館を目指して飛行して行った。
「 まあ ・・・ イギリスの方ですか? 」
「 左様 左様〜〜 魅惑的な瞳の ミス ・・・ 吾輩は生まれも育ちも霧の都・倫敦。 」
グレートは みつこの手をとりす・・・っと軽くキスをすると大仰にお辞儀をした。
「 うふふ びっくりしないでね、グレートは俳優さんなの。 」
「 え ・・・ すごいですねえ・・・ なんだか王子様みたい・・・ 」
「 いやあ〜〜 これは忝い〜〜 吾輩、 グレート・ブリテン と申しまして・・・
役者の他に戯曲家、演出家、さらに 中華飯店の出前持ち をやっております。 」
「 ??? なんかよくわからないけど ・・・ 楽しくてステキな方ですね。
あ それじゃ この紅茶も? 」
みつこは テーブルの上でよい香を漂わせているカップを指した。
庭いじりに興じていた二人は 邸の中に戻り、折から < 訪ねてきた > グレートと
和気藹々のテイー・タイム を始めていた。
≪ フラン! 今 そっちに急行しているから ! ≫
突然 ジョーの声がアタマの中に響いた。
「 え ・・・・? ≪ ・・・ ジョー! 了解。 グレートも居てくれるわ ≫
≪ よかった! ぼくが着くまで頼む! ≫
≪ 了解。 任せて! 目も耳も 最高レベルでオンにしてあるわ。 ≫
≪ さすが003〜〜 頼んだよっ! ≫
フランソワーズは にっこりほほ笑むと香高いお茶ポッドを運んでいった。
「 さあ レディ、 美しい花と美味しいティーと ・・・ あとは音楽でも如何かな? 」
グレートはごく自然に、そして巧に みつこを部屋の奥のソファへと誘った。
「 まあ ありがとうございます。 このお茶・・・ 美味しい・・・!
母が生きていたころ、淹れてくれた味です。 懐かしいわ ・・・ 」
「 ほう〜〜 それはよかった。 母上の味は我らが偉大なる大英帝国の味ですからな。 」
「 うふふ ・・・ 私は行ったこともないのですけれど 」
「 なに これからいくらでもチャンスはありますな。 フランソワーズから聞きましたが
父上の造られた薔薇をもって訪ねてゆかれるもよし・・・
「 それができれば ・・・ 亡くなった母も喜ぶでしょう。 」
「 そうよね! ロンドンには薔薇園もあるのでしょう? 」
「 むろん! 薔薇は我が英吉利の国花ですからな。 」
≪ ! 来るわっ!! 窓!! ≫
≪ 合点承知の助〜〜 ! ≫
ガシャ −−−−−−−− ン ッ !!!
突如 なにかがリビングのテラスから突っ込んできた。
「 ― 危ないっ!!! 」
ヴィ 〜〜〜〜 ・・・ 咄嗟にグレートが防護シャッターを下ろしたが
一部は間に合わず レーザー光線が数本、強化ガラスを突き破った。
ガタガタ −−−− ンッ !!! ドン ・・・!
フランソワーズはみつこを抱き その二人をグレートが突き飛ばし、攻撃から遠ざけようとした。
「 きゃあ 〜〜〜〜 ・・・ ! 」
「 だ 大丈夫?? みつこさん !? 」
「 ・・・ う ・・・ え ええ ・・・ アナタは フランソワ―ズさん? 」
「 わたしは大丈夫。 ああ 血が ・・・ 脚になにかが当たってしまったのね!
ちょっと ・・・ これで我慢していてくださいね。 」
フランソワーズはハンカチでみつこの脚の傷を縛ると 彼女をソファの後ろに押し入れた。
「 ここに避難していてね! 大丈夫、すぐに助けに来ますから! 」
「 え ええ ・・・ でも いったいなにが ・・・ 」
「 心配なさらないで。 ごめんなさいね、恐い思いをさせて。
さ ・・・ このソファは特別製で実弾やレーザーから護ってくれます。
窮屈でしょうけど ・・・ 後ろに入っていてね。 」
「 で でも 貴女は!? フランソワーズさん! 」
「 わたしは 大丈夫。 じゃあ 」
「 あ ・・・ 」
ぐ・・・っとみつこのアタマをソファの後ろに押し込むと フランソワーズは駆け戻った。
「 グレート! 」
「 おう マドモアゼル。 頼むぞ〜 」
「 任せて! 」
二人は 油断なく身構えスーパーガンを抜いた。
ははは ははは ・・・ そんなモノでXの攻撃から逃げられるとでも思っているのかい?
ゼロゼロ・ナンバーサイボーグども! 勝負だっ !
防護シャッター の向こうから大きな声が聞こえてきた。
ガタガタガタ 〜〜〜 シュバ 〜〜〜
同時にシャッターが激しく揺れ始めた。
「 ・・・ マズイな。 アレが破られるのは時間の問題だな。 」
グレートは渋面しつつ、隙間からスーパーガンで応戦する。
「 グレート。 シャッターが破られたらその瞬間に二人で一斉照射よ ! 」
「 おう〜〜 しかし ・・・ ジョーはまだかね 」
「 ともかく! できる限りやっつけるのよっ!! 」
「 アイアイサー〜〜〜 」
ヴィ 〜〜〜〜〜 ・・・! ヴィヴィヴィヴィ〜〜〜 !!!
防護シャッターは 次第に破られレーザー光線が何本も突き通って来始めた。
「 〜〜〜っとお〜〜 ふん ・・・ マドモアゼル? あの嬢さんを連れて
地下に避難した方がいいな。 」
「 今 ジョークで遊んでいる暇はないのよ、 ミスタ・グレート 」
すい・・・っとスーパガンを取り出すとフランソワーズはにっこり笑った。
「 ふふふ ・・・ 防護シャッターが降りていても わたしには < みえる > のね。
それじゃ ― ! !!! !!! 」
彼女がごく無造作にトリガーを引く。 … と 間髪を入れずに爆発音が連続して聞こえた。
「 ふん。 わたしだって 003 なんですから。 」
「 わかった わかった ・・・ !? 危ないっ !!! 」
グレートは瞬時に 黒豹となり フランソワーズを抱えて部屋の奥に跳んだ。
ヴァヴァヴァヴァヴァ −−−−− ・・・!
猛烈なレーザーシャワー が降ってきて みしみしと防護シャッターが揺れ始めた。
「 ちょいとこれは ― マズいかもなあ ・・・ 」
「 だからわたしが 」
「 マドモアゼル? 姫になにかあったら吾輩はジョーに殺されるぞ? 」
「 でも ! 」
ガシャ −−− ン ! シャッターの一部が壊れた。
「 あ あぶないなあ〜〜 器物破損もいいとこだ。 」
「 ちょっと! ― 行くわよっ!! グレート!? 」
「 あいあいサ 〜〜〜 ・・・ 」
二人は 油断なく反撃の銃口を構えトリガーにかけた指に力を籠めた ― その時 。
「 ― 来い! ぼくが 相手だっ !!! 」
爽やかな声が 響き渡った。
「「 009 〜〜〜〜 !!! 」」
歓声がすぐに追いついた。
「 ふふん ・・・ ようやっとお出ましかい。 」
「 く・・ ! くらえっ !!! 」
シュババババ 〜〜〜 ・・・・ !!!
ガシャ −−− ン ドーン ・・・ !
次第に建物の被害が広がってゆく。 ぐらり、と邸全体が揺れる。
「 ?! ・・・ フランソワーズさん? ミスタ・グレート? 」
みつこが そう・・・っとソファの後ろから顔をのぞかせた。
防護シャッタ― は ほとんど壊れてしまい、リビングからは外が見通せた。
「 ・・・ こんなこと・・・ いったい誰が ・・・? 」
みつこはおそるおそる瓦礫だらけのリビングを横切り 窓際へと出てきた。
ヴァヴァヴァ −−− !! シュバ −−−− !
「 ! あ あれは ・・・ ナック ・・・! 」
みつこは 見覚えのある円盤をみつけ 息を呑んだ。
う ・・ そ ・・・? どうして・・・どうして彼が??
なぜ このお家を そして ここのヒト達と戦っているの?
みつこの悲痛な眼差しに映るのは信じられない光景ばかりだった・・・
「 いや・・・ こんなの ・・・ いや ・・・ やめて お願い やめて〜〜 」
彼女に出来ることはひたすら祈ることだけだ。
ヴァ――――― ・・・! きゃあ 〜〜〜〜 !!!
「 !?!? 」
機械音が響く中に 細い悲鳴が聞こえた。
「 だ だれかが ・・・ まさかフランソワ―ズさん ・・・? 」
みつこはいつの間にかテラスまで出てきていた。
シュッ ・・・! 突如 壊れたリビングの真ん中に赤い服の青年が現れた。
腕に中には ― ぐったりとしたやはり赤い服の女性が いる。
「 博士〜〜〜〜!!! 003が! フランソワーズが !! 」
「 うん? どれ ・・・ こちらにつれきなさい。 」
部屋の奥から白髪の老人がさっと駆け寄ってきた。
「 ふむ ・・・ 大丈夫じゃ。 じゃが すぐに緊急メンテを行う。 」
「 ジョー。 ここは ― 頼むぞ。 」
「 ― はい。 博士 フランを 」
「 任せておけ。 グレート、準備を 」
「 アイアイサー。 ジョー、心配無用だぞ。 」
博士はてきぱきと指示をし、 グレートを伴って地下のメンテナンス・ルームに降りて行った。
「 ! ふ フランソワ―ズさん は・・・ 」
みつこはサイボーグ達のやりとりを呆然と眺めていた。
「 ? ああ フランのお友達ですね? ごめんね、脅かしてしまったね。 」
「 え ・・ い いえ ・・・わたしこそ邪魔になって ・・・ 」
「 そこは危ないよ、もっと中に入って! 」
「 あの ・・・ 」
「 うん ぼく達を付け狙っているヤツがまた攻撃してきて・・・
ごめん、無関係の君を巻き込んでしまったね。 」
「 い いえ ・・・ あの ・・・ わ 私、以前にも あの・・円盤の ・・・ 」
「 ああ ・・・ フランが言ってたっけ・・・
そうか〜 君もあのサイボーグXを見たんだったね。 」
「 X ・・・・え ええ ・・・ でも あのなぜ ・・・? 」
「 理由はわからないけど、Xはぼく達を破壊する、と挑んできたんだ。 」
「 ― 破壊する? 」
「 うん。 ゼロゼロ・ナンバーサイボーグを破壊せよ、と命じられたらしい。 」
ジョーの言葉に みつこの顔色がさっと変わった。
「 あ ・・・ あなた方が ・・・ ゼロゼロナンバー・サイボーグ?! 」
「 うん そうなんだ。 」
「 あ あの ・・・ フランソワーズさんも? 」
「 左様。 斯く言うこの吾輩もゼロゼロ・ナンバーサイボーグの一員でありますぞ。」
メンテ・ルームから駆け戻ってきたグレートが 胸を張って答えた。
「 ・・・ そ そんな ・・・ 」
みつこはソファの上で絶句している。
「 Xもサイボーグなんだから、仲間だと思うんだけど ・・・ なぜなんだ??
闘う理由なんてあるはずないのに。 」
「 左様。 吾輩たちはれっきとした人間であって機械ではないよ。 」
「 ・・・ 人間 ・・・ そう ですよね ・・・ 」
「 攻撃が一旦、止んだようだね。 この間に作戦を立て直ししよう。 」
「 よかろう。 ヤツの攻撃パターンは ・・・ 」
ジョーとグレートは モニターに地図やら記録を写しつつ話し合っている。
・・・? これ ・・・ 銃 ・・・?
ぼんやりと彼らを眺めていたみつこの視線が あるモノに止まった。
サイド・テーブルの上に フランソワ―ズのスーパーガンが置いてある。
こ これで ・・・ ここから撃てば。
このヒト達が倒れれば ナックが戻ってくる ・・・ かも ・・・!
す ・・・。 白い手がスーパーガンを掴む。 両手でしっかりと支え ― ジョーを狙った。
ご ごめんなさい! でも わたし ・・・!
トリガーを引こうとした時・・・
カタン ― 半分壊れたドアが開き、ギルモア博士が入ってきた。
「 あ 博士 〜〜 フラン は 」
「 うむ 大事ない。 緊急メンテは終わったよ、少し休ませている。 」
「 よかった〜〜〜 会えますか?? 」
「 こらこら・・・しばらく休ませておやり。 」
「 ・・・ はい 」
「 ほれほれ〜〜 そんな顔を見せたらマドモアゼルが心配するだろうが〜〜 」
「 う うん ・・・ あ そうだ! この花、枕元に飾ろう 」
ジョーはなんとか破壊から免れた片隅にあった花瓶に手を伸ばした。
ああ このヒトがフランソワーズさんの ・・・ 花オンチさん ね・・
カツーーン ! スーパーガンがみつこの手から滑り落ちた。
その硬い音に 全員が振り向いた。
「 !?? 君 ・・・ なにを・・・? 」
「 ・・・で できないわ ・・・ そんなこと・・・
なぜ??? なぜ ・・・ 闘わなければならないの??? 」
「 君・・・ 」
「 お話します。 いえ ・・・ 聞いてください! 」
みつこは しゃんと背筋を伸ばすと三人の前に進み出た。
「 ナックは ― 私の恋人でした。 ある日 二人でドライブに行って事故に遭い・・・
彼は行方不明、遺体すらみつからず ・・・ 私は大怪我をしました。 」
「 行方不明 とな ・・・ 」
「 はい。 そして次に出合った時 ― 彼は サイボーグX になっていました。 」
「 ふむ ・・・ 」
重苦しい雰囲気が 破壊されかけたリビングに漂う。
ヴィ −−−−−− ・・・・!
再び レーザー光線が襲ってきた。
「 ははは 怖気づいたか!? ゼロゼロ・ナンバーサイボーグ!! 」
「 X! やめろ! やめるんだっ ! 」
ジョーはスーパーガンを構えると 飛び出して行った。
「 お〜〜い 吾輩もゆくぞ〜〜〜 」
「 待って! 待って〜〜〜 ナック! みなさん 〜〜〜 」
みつこは脚を引きずりつつも 彼らを追ってゆく。
「 ・・・ ま 待って ・・・ ああ ・・・! 」
やっとテラスから這い出してみると ― 空中で闘いが繰り広げられていた。
009は加速装置を駆使し Xの円盤からの攻撃を避けている。
円盤からのレーザーシャワーは 破壊力抜群だが、小回りが効かない。
ヴィ −−−− ・・・!
・・・ ババババ −−−− !
次第に円盤は 009を追い詰めて行った。
ふふふ ふふふ ・・・ 009! 勝負あったな!
Xは009の動きを完全に捉えレーザーシャワーの照準を合わせ ―
ヴィ −−−−− ・・・・・ !!!!!!
「 ・・・ もう やめて! やめてちょうだい 〜〜〜 ! 」
ぱ〜〜〜ん ・・・・! 走り込んできた白い小鳥、いや 少女の身体が
空中に弾け跳んだ。
「 !!!! ミッチィ −−−−− !! 」
「 ・・・ ナック ・・・ 私の ナック ・・・ 」
みつこは愛する恋人・ナックの腕の中でこと切れた ― 微笑みを浮かべたまま。
ウィ −−−− ン ・・・・
円盤が静かにホバリングしている。
半壊したギルモア邸の前で サイボーグXはこの家の住人達に詫びた。
そして ・・・
「 僕は ― 僕をサイボーグとして蘇らせたオトコを ・・・ 始末します。 」
「 ! 君がそんなことをせんでもよい! 」
ギルモア博士が珍しく強い調子で言った。
「 いえ。 僕の責任において ・・・ 」
「 君は! 彼の所業とは無関係じゃ! 君じゃとて ― 被害者ではないか! 」
「 博士 ・・・ 」
さすがにジョーがそっと博士をたしなめた。
「 いや。 ワシだからこそ、言うのだ。 ワシはワシが行った所業については
全て責任がある。 ジョー・・・ 君たちは被害者じゃ。 加害者はワシだ。 」
「 博士! もうそんなこと誰も思っていませんよ! 」
「 左様 左様〜〜 博士。 これは皆の応えですぞ。 」
「 ・・・ 諸君 ・・・ 」
ギルモア博士は言葉を途切らせ 目を瞬いている。
「 ・・・ いいね。 君たちが羨ましいや ・・・ 」
サイボーグXは 今までとはうって変って、穏やかに話しだした。
「 ・・・ X、 いや ナック君 といったね?
オメガ博士はワシが説得する。 君は ― 生きてゆかねばならん。」
「 いえ これが僕の 僕にしかできない仕事なんだ。
・・・ さようなら。 ミッチィ に優しくしてくれて ・・・ ありがとう ・・・ 」
シュ ・・・ ! ナックは恋人の遺骸を抱いたまま円盤の上部と閉じた。
「 おい!? ナック!! どうするつもりなんだ? 」
「 だから 僕が始末しにゆくよ。 アイツと・・・ついでにこの機械の身体も ね。 」
「 !! ば バカなことはよせ〜〜〜 」
「 ― さよなら。 君達に会えて ・・・ よかった。 」
シュバババババ −−−− ・・・・ !
円盤は あっという間に見えなくなってしまった。
再び超上空を飛び、サイボーグXはオメガ博士の根城ともいえる島の上空に戻ってきた。
「 ― 愛しているよ ミッチィ。 大きな声で言えるよ!
ああ また一緒に薔薇を育てよう ・・・ 愛してる! 」
ナックは 物言わぬ恋人の身体をしっかりと抱きしめ ― そのまま急降下して行った。
ズガ −−−−−− ン ・・・ !!!!
遥か東北東の洋上で 無人島と思われている岩石だらけの島が忽然と爆発し ―
その姿は完全に消え去った。
季節はゆっくりと廻り 雨が多い日々がやってきた。
コツコツ コツ ・・・ カツン カツン カツン・・・
人少ない小雨の日、 二人の靴音が湿りがちに聞こえる。
ジョーとフランソワーズは あの薔薇園を訪ねに来ていた。
「 ・・・ あ ここだわ・・・ 」
フランソワーズは見覚えのある角をみつけ 曲がった。
「 このブロックの先にね ・・・ 広いお庭のおうちがあって ・・・ あ。 」
「 ・・・ 立ち入り禁止、 か。 」
目の前には ― 広い庭 ・・・ しかしそこはすでに丈の高い草が生い茂り始めていた。
住まう人のいない山の手の薔薇園は立ち入ることもできなくなり 荒れ放題だ。
幻の白い薔薇 < もの想い > は そして 彼が情熱を傾けていた恋人の名をもつはずの
紅薔薇は ― 今は雑草の海に飲みこまれてしまった・・・
「 ・・・ きっと天国で育てているわね ・・・ 二人で ・・・ 」
「 うん。 仲良く ね。 」
「 ・・・ そう ね ・・・ きっと ・・・ 」
「 うん。 ― フラン、 アイシテル よ 」
「 ・・・ え ? 」
サ −−− ・・・ また 雨が少し強く降り始めた。
雨が降る ・・・ あの日も 雨だった
雨が降る ・・・ 恋人たちの花を 濡らしてゆく
薔薇に 雨が降る ・・・ 二人の愛を つつむみたいに
************************* Fin. ************************
Last updated : 27,05,2014.
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*********** ひと言 ***********
あは ・・・ やっと終わりました〜〜〜
敢えてオイシイ台詞は削りました ( そのかわり 不味いよ? とか ・・・ )
旧ゼロ、どれもこれも面白いですよ〜〜 是非是非 ご一覧を!