『 屋根より 高く ! ― (2) ― 』
ヒュ ヒュ ヒュ ・・・・!!!!
石礫が小さな音をたてて空を切ってとんでゆく。
そして ― ピシ ピシ ッ! ギャア 〜〜〜!!
小気味よく命中し、黒い侵略者どもは ほうほうの態で逃げていった。
「 すご ・・・ ! おかあさん ・・・すご〜〜い〜〜〜 !! 」
すぴかはお口をぽか〜〜んと開けて見ていたけれど すぐに母に飛びついた。
「 すごい〜〜 すごいね、おかあさんってば! 」
「 ふ ・・・ こんなの、朝飯前よ すぴか。 あら もう朝御飯 食べちゃったわねえ。 」
「 すご〜〜 おかあさん 超〜〜〜かっこいい〜〜 」
「 ふふん ・・・たいしたコトじゃないわ。
ああ すぴか。 あなたのお友達 ・・・ ち〜 だっけ? 」
「 うん! ち〜だよ。 呼んでみるね〜 ち〜!! ちゅんちゅん〜〜 」
すぴかは空に向かって呼びかける。 するとすぐになにかがさ・・っと空を横切り ・・・
ち ・・・ち チチチ ・・・!
スズメが一羽 すぐに母子の側に降りてきた。
「 ほら おかあさん! ち〜 だよ。 ち〜? これ、すぴかのおあかさん〜 」
ちゅん? ・・・茶色のスズメが 小首をかしげて母子をみている。
「 まあ〜 すごいわねえ すぴか・・・ ねえ? ち〜 にね、教えてあげて。
裏庭の方が安全だからあっちにおいで、って。 」
「 あ ・・・ うん! おかあさん。 」
「 カラス、裏庭にはあんまり来ないし・・・ 裏には隠れる場所も多いでしょ? 」
「 そうだね! うん、こんどから裏庭でゴハン あげる。 」
「 そのゴハンだけど ・・・ すぴかの給食はすぴかが食べていいの。
ち〜 にはおかあさんが固くなったパンをあげます。 」
「 わ♪ ありがと〜〜〜 おかあさん♪
ち〜〜〜 ・・・・! いっぱいゴハン あげるよ〜〜 ともだち、つれてきてもいいよ〜〜 」
すぴかはぶんぶんスズメに手を振っている。
「 じゃ ほら。 一緒に裏に回りましょう。 お勝手口からパンをとってきてあげるから。 」
「 うん! ち〜〜 ? ほら こっち こっち来て〜〜 」
すぴかが手を振り振り歩くと スズメもちょっと距離を開けてついてくる。
・・・ へえ? なかなか・・ じゃない?
弟は金魚で 姉はスズメ か・・・ なんか地味ねえ
ふふふ・・・ウチらしくていいかもしれないわ ・・・
フランソワーズはちょこっと唇に笑みを浮かべつつ、裏庭からキッチンに戻った。
そして ・・・
「 ― ほら すぴか。 これ 上げてもいいわ。 」
「 ・・・ これ ? パン? 」
「 そうよ〜 余ったパン、 パン粉にしようと思って冷凍してあるの。 」
「 ・・・ いいの。 」
「 こんなにいらないもの。 さあ これ、 ち〜 にあげていいわ。 」
「 うわ・・・ ち〜 よろこぶよ〜 あのね、お友だちもいるみたいなんだけど・・・ 」
「 いっしょにどうぞ・・・って言って。 仲良く食べてね〜って。
それにこっちの庭ならカラスが来ても隠れるところ、いっぱいあるから逃げられるわ。 」
「 そだね〜 カラスが来たら アタシ、おかあさんみたく びし!ってやっつける! 」
「 ふふふ ・・・ 頑張ってね。 じゃ ち〜 にごはん あげたらお家にはいりましょ。 」
「 うん! ち〜〜 ・・? あ きた・・・ ほら ごはん ごはんだよ〜 」
フランソワーズは スズメにパンをやっている娘をちら・・っと見ていたが ・・・
あ ・・・? もしかして ・・・ すぴかも 金魚が飼いたかったのかしら・・・
そうよねえ・・・ き〜すけ はすばるが独占してたし。
・・・ う〜ん ・・・ すぴかは金魚には興味はないのかな〜って思ってたけど
ペット とか欲しかったのかも・・・
「 ・・・ すぴか ・・・? 」
「 おかあさ〜ん、 ち〜にごはん あげたよ〜 」
「 そう? ・・・ ねえ すぴかさん。 すぴかも金魚 ・・・ 欲しかった? 」
「 き〜すけ は すばるの金魚でしょ。 」
「 そうだけど・・・ でも すぴかも飼いたかった? 」
「 ・・・ う ううん ・・・ だって き〜すけ がいたもん 」
「 そうね。 それですぴかも金魚のお世話、したかった? 」
「 ・・・ ふたつ はダメでしょ。 おかあさん、いつもいうじゃん。 」
「 ええ ・・・ でも 本当は欲しかった? お母さんだけに教えて・・・ 」
「 ・・・ アタシ ・・・ お おねえさん だもん ・・・ だから ・・・ がまん できるもん・・・ 」
ほろり、とすぴかの瞳から涙がこぼれた。
「 そう ・・・ そうだったのね。 すぴか・・・ 」
「 ・・・ アタシ・・・ き〜すけ はすばるのだから・・・ アタシ ・・・
きんぎょ じゃなくて ち〜 とおともだちになって ・・・ それで ・・・ 」
「 まあ そうなの・・・ 偉いわ、本当にさすがお姉さんね、すぴか。 」
「 ・・・ それで ・・・ ち〜のごはん、ないから ・・・ きゅう食のパン・・・ 」
「 ええ ええ わかったわ。 これからはね、さっきみたいにお母さんがち〜のごはん、
用意するからね。 すぴかはそれを ち〜 や ち〜 のお友達にあげてね。 」
「 うん! おかあさん 」
「 すぴかさん じゃあ お家に入りましょ。 ・・・ ごめんね。 」
「 なに? ごめんね・・・って? 」
「 え ・・・ うん。 あのね、なんでも二つづつ買ってあげられらなくて・・・ 」
すぴかとすばる、学用品や生活必需品はそれぞれ買ってもらっているが、それ以外のものは
< 二人でひとつ > な場合が多い。
なんでもかんでも ×2 では家計はたまったものではない。 それに ・・・
「 二人で一緒に使えばいいのよ。 双子なんだもの。 」
「 う ・・・ ん ・・・ でも ・・・やっぱ一人づつ買ってやりたいなあ・・・ ぼくは 」
「 いいの。 贅沢をしたら限りがないわ。 わたしも兄と共有していたもの、多いのよ。 」
「 ・・・ そう か・・・ それなら・・・ 」
「 そうです。 」
甘い父を母が押し切り、オモチャなどは < 替わりばんこ > が多かった。
もっとも、この姉弟は性格が甚だしく違うのでオモチャの好みも異なり結構、上手く行っていた。
「 え〜〜 いいよう、べつに。 ずかん とか じてん はすばるといっしょにつかうもん。 」
「 ・・・ いいこね、すぴかさん。 」
「 えへ・・・ そ そっかな〜♪ あ! おかあさん! 石なげるの、おしえて! 」
「 石? 」
「 うん! ほら さっき。 からすにびゅん!ってなげたでしょ。 」
「 う〜ん ・・・ あのねえ、石は危ないからお母さんがやるわ。
すぴかはね、ち〜 に安全な場所を教えてあげてくれる? 」
「 ・・・いいけど・・・・でも もしまたカラス、きたら ・・・ 」
「 ああ そうね。 ねえ? おかあさん、いいこと、思いついたわ。 」
「 なになに〜〜 」
「 あのね、 おじいちゃまにお願いしてカラスを追っ払う <そうち> 作って頂きましょうよ? 」
「 え ・・・ できる? 」
「 大丈夫。 おじいちゃまならきっと。 」
「 あさめしまえ? 」
「 うふふふ ・・・ そうね そうね。 そしたら ち〜 も安心できるでしょ。 」
「 うん♪ 」
「 さ ・・・それじゃ 中に入りましょ。 すばるだってもう泣き止んでいるでしょ。 」
「 そだね〜〜 ねえねえ おかあさん、むぎちゃ〜〜 」
「 はいはい。 あ! おじいちゃまにお茶〜〜 」
「 おかあさん。 ねえ あれ・・・ 」
「 え? 」
すぴかはさっきお母さんと物置から引っ張り出した包みをつんつん・・・と足で突いた。
「 あ! そうよ〜〜 おかあさん、ソレを出すのが目的だったのよね〜
うん お父さんにお願いして 支柱を立ててもらいましょ。 」
「 うわ〜〜い♪ こいのぼり〜〜〜 こいのぼり〜〜
い〜〜ら〜〜か〜 のな〜〜み〜〜〜 ♪ 」
すぴかはご機嫌チャンで こいのぼり を歌い始めた。
「 ふふふ ・・・ さあ ひとまずお家に入りましょ。 すぴかも麦茶、でしょ。 」
「 うん♪ おかあさん。 」
めずらしく娘が ぴと・・・っとくっ付いてきた。
まあ ・・・ ふふふ やっぱり女の子なのよね・・・
ジョーの言うとおりね、 ちゃんと 〜らしい ところ、あるじゃない?
「 ねえ ねえ おかあさん、 こいのぼり、かざる? 」
「 そうねえ お父さん次第ね。 鯉幟は 飾る じゃなくて・・・ 揚げる かなあ。 」
「 ・・・ あげる? 」
「 ええ。 ほら お空に泳ぐように高いところにつるすでしょ。 」
「 ふうん ・・・ あの黒くてでっかいのはアタシ で 赤いのがすばる なんだよね〜 」
「 え。 あ ・・・ ウチはそ そうなの? 」
「 ウン。 こいのぼり のお歌はムカシのことなんだって。
だからね〜 ウチの こいのぼり は アタシとすばる なの。 」
「 ふふ・・・じゃあはやく すぴか達を空の泳がせてあげないとね。
すぴかからもお父さんにお願いしてね。 」
「 うん♪ おと〜〜さ〜〜ん!! 」
すぴかはお母さんの手をしっかり握ったまま ずんずんお勝手口からお家に入っていった。
「 ほら おハナ ち〜ん、しろ。 」
「 う うん ・・・ ち〜〜〜ん ・・・! 」
「 よし。 もう泣きべそはお終いだぞ。 いいな、すばる。 」
「 う うん ・・・・ 」
リビングでは すばるとお父さんが まだ<話し合い>をしていた。
「 おとうさ〜ん! こいのぼり〜! こいのぼり 〜〜 あげて ! 」
大声と一緒に すぴかが駆け込んできた。
「 やあ すぴか。 ・・・こいのぼり? あ〜 もうそんな時期だねえ 」
「 ね! おにわにさ〜 こいのぼり!! おと〜さん! 」
「 ジョー ・・・ 鯉幟と吹流しは物置から出してきたの。
ちょっと面倒だけど ・・・ 支柱の方、お願いね。 」
「 ・・・ わかりました、奥さん 」
「 こ こいのぼり? 」
すばるはやっと涙を拭いて顔をあげた。
「 そうさ、すばる。 五月五日は端午の節句だからな。
鯉幟を揚げてお祝いするんだ。 去年もやったの、覚えてるだろ? 」
「 うん。 おっきなおさかな でしょ。 」
「 こいのぼり だってば〜〜 ほら ほら〜〜 おとうさんといっしょにさ、つくろうよ〜 」
すぴかがぐいぐい弟の腕をひっぱる。
「 え ・・・ つくるの? 」
「 はいはい、すぴか姫。 それじゃ ・・・ 支柱を建てにゆくか。 」
「 うわ〜〜〜い♪ アタシ〜〜おてつだい するね! 」
「 ありがとう すぴか。 それじゃ ・・・ 」
ジョーは内心 やれやれ・・・と思っていたが 娘の笑顔には勝てるわけもなく・・・
「 ちょっと待って? すばるはまず朝ゴハン。 すぴかも麦茶、飲むのでしょう? 」
「 あ ・・・ うん、 ちょうだい、おかあさん。 」
「 僕ぅ〜〜 ゴハン ・・・ いい ・・・ 」
「 ダメです、ちゃんと食べなさい。 すぴかさんも麦茶飲んで お帽子被った方がいいわ。
ジョー、その間に準備 お願いします。 」
「 ・・・ 了解です、奥さん。 」
・・・ やれやれ ・・・ 彼女には敵わないよなあ ・・・
あ は。 やっぱぼくにぴったりな女性 ( ひと ) なのかも
ジョーは内心 首を竦めつつ、ようやっと立ち上がった。
「 あ! おじいちゃま おじいちゃま〜〜 」
今度はすぴかが博士のひざに飛びついた。
「 うん? どうしたね、 すぴかや。 」
「 あのね! おじいちゃま〜〜 おねがいがあるの。 あのね、つくってほしいの。 」
「 おや なにかな。 」
「 うん。 あの ね。 カラスを あっちいけ〜 しっ! ってやる そうち、 つくって。
ち〜 のこと、いじめるんだ〜〜 」
「 ち〜 ??? 」
「 あ スズメなんですよ、すぴか のお友達ですって。
最近 この辺りでもカラスがゴミを散らしたりしてますから・・・
博士、なにか撃退装置を考えてくださいませんか。 」
「 ほう〜〜 カラスか。 うむ・・・ すぴかの友達を苛めるのは許せんな。
うん、そういえばこの辺りの畑にもカラスの被害が甚大、と町内会長サンから聞いたぞ。
よしよし・・・ うん ちょっと考えてみよう。 」
「 わあい〜〜 おじいちゃま〜〜 おねがい〜〜 」
「 ほい、任せておくれ。 こいのぼり はお父さんにおねがいしなさい。」
「 はあ〜い♪ おとうさん〜〜 こいのぼり、 おねがい〜〜
あ ! すばる! はやく ゴハンたべてきて 」
「 う ・・・ うん ・・・ 」
「 すぴか〜 お父さんさ、先に車のお掃除をしてからでもいいかな。 」
「 え〜〜〜 だって こどもの日、 もうすぐだよ〜〜〜 」
「 ちゃんと今日中に支柱をたてるよ、約束。 だからその前に大急ぎでお掃除してくる。 」
「 う〜ん ・・・ あ! それじゃアタシもお手伝い する! 」
「 お。 そうかい? それじゃ・・・ すぴかには窓拭きを頼もうか。 」
「 うん♪♪ おとうさん〜〜 それじゃ 早く〜〜 はやくおそうじ しよ! 」
すぴかはもうぐいぐい ・・・ 父の手を引っ張っている。
「 すぴか。 麦茶 飲むんだろう? ちゃんと飲んできなさい。 」
「 は〜い。 おか〜さ〜ん アタシのむぎ茶〜〜 」
「 キッチンに置いてありますよ。 じゃ お父さんのお手伝い、お願いね。 」
「 うん! 」
すぴかは金色のお下げを跳ね飛ばし、駆けていった。
「 ・・・ 元気だなあ・・・ 」
「 ふふふ ・・・ すぴかは元気のカタマリみたいよね。
ジョー、それじゃ 車のお掃除の後はコイノボリの支柱、お願いします。 」
「 ― はい ・・・ 」
ジョーはちょっとばかり派手に溜息をついてみせた。
「 ・・・ ぼくでもさあ ・・・ アレ、立てるの、結構大変なんだ ・・・ 」
「 あら・・・ 009に出来ないことがあるの? 」
「 ・・・ わかりました。 娘に手伝ってもらいます。 」
「 はい。 そのうち貴方の息子も参加するでしょう。 」
「 ・・・ 期待しています。 やれやれ・・・ 」
「 おと〜〜〜さん! ガレージ、行こうよ〜〜 」
キッチンからすぴかがまた駆け出してきて、ジョーの腕にぶら下がった。
「 お。 了解〜〜 じゃ 掃除隊〜〜〜 出発♪ 」
「 わぁ〜〜い♪ 」
父と娘はだんごになりつつ・・・ リビングを出ていった。
「 やれやれ ・・・ やっとオミコシを上げてくれたわ・・・・
さあ〜て! 邪魔モノたちがいない間に リビング大掃除です!! 」
一家の主婦はきりり、とエプロンの紐を締めなおし腕まくりをした。
じゃばじゃばじゃば ・・・・ ホースから勢いよく水が流れ出る。
すぴかはホースをしっかり持ち直した。
「 すぴか・・・ 大丈夫か。 」
「 う うん ・・・ お水 ながすんだよね 」
「 ああ。 最後にガレージの床をながす。 それで掃除 完了だ。 」
「 うん! 」
両脚をうん!と踏ん張って すぴかはホースを両手で握っている。
「 よ〜し ・・・ お手伝い、 ありがとう、 すぴか。 窓を磨くの、上手だね〜 」
「 え えへへへへ ・・・ ぴかぴかだね、お父さん♪ 」
「 うん。 よ〜し いいぞ〜。 さあ 次はこいのぼり だよ すぴか。 」
ジョーは水道をきゅっと止めた。
「 すぴか、 靴下とか濡れてないかな。 お洋服は? 」
「 う〜ん ・・・ちょこっとだけ だからだいじょうぶ! 」
「 そうか? あれ ・・・ すばる、来なかったね。 」
「 うん。 あ〜 きっとさあ、 おかあさ〜ん・・・ってあまえているのかも・・・ 」
「 あはは・・・ 甘ったれだからなあ・・・ じゃ 庭に行こう。 」
「 は〜〜い♪ 」
すぴかがお父さんの側に飛んでゆくと お父さんはぽ〜ん・・・と抱き上げて肩車してくれた。
「 え? ・・・ わぁ〜〜 きゃお〜〜♪ 」
「 ほ〜〜ら すぴか ・・・ ち〜 にちょっとは近い高さになったぞ〜〜 」
「 あははは・・・ ち〜 もいっしょにかたぐるま〜ってとんでくるかも〜〜 」
2人は笑い声をあげて一緒に 庭に出ていった。
「 おと〜さん! おと〜さん、 おじいちゃま ね〜 」
庭に戻ると すばるが玄関から駆けてきた。
「 お すばる ・・・ どうした? 」
「 おと〜さん! ・・・あ〜〜 かたぐるま ・・・ いいな〜 すぴか 」
「 へへへ〜〜ん♪ すばる、かたぐるま、こわいんじゃん? 」
「 ・・・こ こわくなんか〜〜〜 ・・・ ない やい・・・ 」
「 え〜〜 そう? そんなら ここまでおいで〜〜 だ♪ 」
「 ぅ・・・・ おとうさ〜〜ん ・・・ 」
「 すばる。 おじいちゃまがどうしたんだ? 」
「 あ、 おとうさん〜〜 おじいちゃまがね、おでかけなんだって おおいそぎ ・・・ 」
「 え そうなのかい? 」
「 ウン。 コズミせんせいのおしごと、なんだって。 びょういんにもってくんだって。 」
小学生の息子の話では 仔細は不明だけれど、博士が急いでいることだけは判断できた。
「 そうか〜 それじゃ 車でおじいちゃまをお送りしよう。 」
「 うん! おとうさん。 きれいにしたもんね〜〜 」
すぴかは父の肩の上でにこにこしている。
「 よし ・・・ 走るぞ〜 すぴか、しっかりつかまってろ〜〜 」
「 うん!! 」
ジョーはすぴかを肩にのっけたまま 玄関に急いだ。
「 ― 博士? 」
「 ・・・ お ジョー ・・・! 」
勢いよくあけた玄関には 博士がかなりあわてて靴を履いていた。
後ろにはフランソワーズが鞄を手に心配顔で立っている。
「 まあ ジョー・・・ すぴかも ・・・ あのね 博士がお急ぎのご用事で ・・・ 」
「 うむ ・・・ コズミ君から要請があってな・・・・
例の ・・・ 人工関節のパーツモデルと資料を病院まで届けるんじゃ。 」
博士は BGで培ったサイボーグ技術をコズミ博士を通して形成外科医療に提供している。
勿論 純粋に医学用に用いることができる部分だけだ。
それでも 革新的な治療法だ、と現場からは感歎と感謝の声で歓迎されていた。
「 今からですか。 」
「 うむ ・・・ なにやら大きな事故があったらしい・・・ 早く持ってゆかんと・・・ 」
「 メールではダメなのですか。 」
「 現物を持っていったほうが早い。 市民病院までなんじゃが・・・
ああ ・・・ 急がんとバスの時間じゃ ・・・ 」
博士はせかせかと立ち上がると フランソワーズから鞄を受け取った。
「 博士。 車でお送りしますよ。 その方が早いです。 」
「 ・・・ 頼めるかの ジョー。 」
「 どうぞどうぞ。 さ すぴか・・・降ろすぞ〜 」
ジョーは屈んで娘を降ろした。
「 おじいちゃま。 アタシ、 おカバン、 もってく! 」
「 ・・・ぼ 僕 も ・・・ 僕も いく〜〜〜! 」
やっと追いついてきたすばるが 走ってきてはあはあ言っている。
「 博士、そうなさいませ。 ジョー、車を回して。 」
「 ああ。 じゃ ・・・ お前たち、博士のお供ができるかい。 」
「「 できる! 」」
「 それじゃ・・・ 門のところでおじいちゃまと待っていなさい。
お父さんは大急ぎで着替えてから車をだすよ。 」
「 ジョー 今すぐに着替え 持ってくるわ! だからここでちょっと待っててね!
博士、 そのお鞄、壊れモノでなければ子供たちにお任せくださいな。 」
博士は普通の鞄の他にブリーフケースも抱えていたのだ。
「 よし ・・・ すぴか に すばる や。 お願いしようかの。 」
「「 はい、 おじいちゃま!! 」」
フランソワーズはぱたぱたと二階へ駆け上がってゆき、博士は子供たちと一緒に玄関を出た。
― キ ・・・。
ジョーの車は 病院の研究棟の前で止まった。
「 博士 ・・・ どうもここの駐車場が満杯で すみませんが・・・そこで降りて院内へ!
ぼくは他を探します。 すぴか、すばる。 鞄をもっておじいちゃまのお供をしなさい。 」
「「 はい おとうさん! 」」
すばるがしっかりと鞄を抱き締め すぴかが博士の手を引っ張り車を降りた。
「 すぴか! お父さん、 駐車したらこっちにくるから。
おじいちゃまと一緒にいるんだよ。 すばる? 鞄 頼んだぞ。 」
「「 はい おとうさん! 」」
「 ジョー ・・・すまんのう ・・・ 」
「 なに仰るんですか 博士。 チビ達をしっかり使ってください。 鞄持ちくらいできますよ。 」
「 うむ ・・・ ありがとうよ、お前たち。 」
「 おじいちゃま〜〜〜 こっちでしょ? 行こ〜〜! すばる、 いい? 」
「 ・・・う うん。 おカバン、 もった! 」
「 じゃ〜 しゅっぱつ〜〜 」
すぴかは入り口めざして 博士と歩きだした。
頼むぞ〜〜 チビ達 え〜と・・・外の駐車場しかないか・・・
ジョーは一行が建物の中に入るのを確認してから 車を動かした。
― 十数分後 ・・・
「 本当にありがとうございました!! 本当に ・・ 」
「 いやいや・・・ お役に立てれば嬉しいですぞ。 じゃ ワシはこれで ・・・ 」
病院の研究棟、その一室から博士が子供達と一緒に出てきた。
「 あ! お送りします 今 ・・・ 」
「 ああ よいですよ。 この子達の親父が車を回してくれていますから ・・・ 」
「「 さよ〜なら ・・・ 」」
すぴかとすばるは 並んでお行儀よくご挨拶をした。
「 はい、さようなら。 おじいちゃまのお供、ご苦労さまでした。 」
医局の先生は笑って子供たちに挨拶を返してくれた。
「 騒がないでいい子だね 2人とも。 ・・・どうだい、 おもしろかったかな。 」
「 うん!! すごく〜〜〜 」
「 ・・・・ 」
すぴかは興奮の面持ちで、 すばるもまん丸な目のまま こくこく頷いている。
2人は生まれて初めて、<おじいちゃまのおしごと> を垣間見た。
博士は 成形外科の研究室に人工関節の新しいパーツのモデルを提供したのだ。
「 ねえ アレが びょうきやけがしたひとを歩けるようにするの? 」
「 そうなんだよ。 皆 すごく喜んでいるよ。 」
「 そうなんだ〜〜 すごい すごいね〜〜 おじいちゃま〜〜 」
「 ・・・・・・ 」
「 それじゃ ワシらはこれで ・・・ さあ 帰ろうな、すぴか すばる。 」
「 うん!! おとうさん、どうしたかな〜 」
「 外で待っていてくれるのじゃろ。 ・・・ おい、すばるや、帰るよ。 」
「 ・・・あ ・・・う うん! 」
すばるは戸口に立っていつまでもじ〜〜っと研究室の中をながめている。
「 ほら・・・ 邪魔をしてはいかんよ。 帰ろうな・・・ 」
「 ん ・・・ おじいちゃま・・・ 」
「 うん? どうしたな、すばる。 初めて見るもので < お腹いっぱい > かい。 」
「 ・・・ ん ・・・・ 」
すばるは相変わらずまん丸な目でだまってこくこく頷くばかり。
「 おお そうか そうか ・・・それはよかったな。 じゃ 行こう。 」
「 すばる〜〜 かえろ! 」
すぴかがきゅ・・・っとすばるの手を引いた。
「 ・・・ ん ・・・ 僕 ・・・ 」
すばるはもう一度だけ 研究室を振り返ってから歩き出した。
― この日の体験は深くすばるの心の中に沈みこんだ ・・・ とても深く そして 鮮明に。
後年、彼の職業の選択を考えると、 この日が原点だったのかもしれない。
大切にしていたペットの死、初めて向き合った身近な 死 ・・・ そしてほんの少しだけ垣間見た
医療に携わる人々の姿 ・・・
すばるはちっこい身体全体で この新しい体験 を受け止めていた。
彼の心は満杯で まさしく何も言えない状態だったらしい。
「 ね〜え おじいちゃま。 おじいちゃまのおしごと、すごいね〜 」
「 そうかい? ワシはな、ほんの一部分のお手伝いだけじゃよ。
後はここの先生達が皆で協力する。 そして患者さん達を治すのさ。 」
「 ・・・ふうん ・・・ みんな すごいね・・・ 」
「 ・・・ みんな ・・・ 」
「 お前たちにはちょっと難しかったかの? 荷物持ち、ありがとうよ、すばる。
すぴか 手を引いてくれてありがとう。 」
「 え えへへへ ・・・ おじいちゃま〜〜 」
「 ・・・ おじいちゃま・・・僕 ・・・ 」
博士は両手に可愛い孫たちをつれて 玄関ロビーまでやってきた。
「 ― 博士 お待ちしていました。 」
す・・っとドアの側からジョーが立ち上がった。
「 あ〜〜 おとうさん !! 」
「 おと〜さん ・・・ 」
「 おお ・・・ ジョー。 待っていてくれたのかい。 」
「 はい、 なんとか車を置いてきました。 すぴか すばる ちゃんとお手伝い、できたか〜 」
「 ふふふ ・・・ 大層大人しくてな、いい子じゃったぞ、2人とも。 」
「 そうですか よかった・・・ さあ それじゃこっちに車を回しますから。 」
「 ねえ おとうさん おとうさん。 あのねえ すごいの〜〜
先生たちがね〜〜 おじいちゃまのおしごとをね〜 」
すぴかが目をキラキラさせて父親に報告を始めた。
「 うん うん ・・・ 帰り道に話してくれ。 それでお家に帰ったら〜〜
こ い の ぼ り、 支柱を立てるぞ〜〜 」
「 わ〜〜〜わ〜〜〜 おとうさん すご〜〜い〜〜〜♪ 」
「 約束だからね。 それにお前たちがいい子でおじいちゃまのお手伝いしてくれたし。
さ〜〜あ 今年もウチのでっかいコイノボリ、 泳がせよう〜〜 」
「 うん!! 」
すぴかもすばるも すきっぷ すきっぷ でお父さんの後を追い駆けていった。
「 よ〜〜〜し ・・・・ コイノボリの包みを開けてくれ〜〜 」
ジョーは えいや!と支柱の根元を踏み固めた。
「 は〜〜〜い ! おとうさん〜〜〜 うわっぷ・・・! 」
「 うわあ ・・・ ほこりだらけ・・・ 」
子供たちが きゃわきゃわいいつつ、 埃っぽい包みを開く。
帰宅してガレージから戻ったその脚で ジョーは裏庭で支柱建てを開始した。
「 ジョー 〜〜 お帰りなさい〜〜 」
「 フランソワーズ ・・・ただいま! 」
裏庭に支柱用の穴を掘っていると 勝手口からフランソワーズが駆け出してきた。
「 一休みしてからでもいいのに・・・ はい アイス・コーヒー♪ 」
「 うほ♪ ありがとう〜〜 うん、さすが奥さん〜〜 」
ジョーは差し入れの 大きなタンブラーに嬉しそうに口をつけた。
「 ・・・・ ぁ 〜〜〜 うま〜〜〜♪ さ〜て あと一息がんばるぞ〜 」
「 すてき・・・♪ ね、ジョー、晩御飯は すこっち・えっぐ にしました。 」
「 うわ〜〜お♪♪ こりゃ ますます張り切っちゃうなあ〜〜
おい、すぴか すばる〜〜 コイノボリ、広げておいてくれよ。 」
「「 はあ〜い ・・・ うわ ・・・ で でっか ・・・ 」」
子供たちは埃っぽい布と格闘しているが なにせ相手が大きすぎる。
「 あらら・・・ ちょっと、ほら。 こっちを持ってて すぴか。 」
フランソワーズは笑いつつ子供たちに手を貸した。
「 う うん ・・・ おかあさん 」
「 すばる? すばるはこっち。 いい? しっかり持っててよ、二人とも・・・ 」
「「 うん! 」」
お母さんの手を借りて、でっかい 黒いコイノボリ と 赤いコイノボリ を取り出すことができた。
「 おとうさん ・・・! コイノボリ! 」
「 こいのぼり ・・・! 」
「 よ〜し それじゃ ・・・ え〜と このヒモをここに結んで ・・と
さあ〜〜 コイノボリ、 あげるぞ〜〜 ちょっと離れていなさい。 」
「 「 はあ〜い ・・・ わあ〜〜〜 わあ〜〜〜〜 」 」
― カラカラカラ ・・・・ カラカラ ・・・・
ぶぁさ ・・・ 大空に真鯉と緋鯉が 背鰭をゆらし優雅に泳ぎはじめた。
「 わあ〜〜〜 わあ〜〜〜すご 〜〜〜 」
「 ・・・ う〜ん ・・・ なかなか凄いスケールだな ・・・ 」
「 いいわねえ〜〜 壮大で。 気分がすっきり♪ 気持ちいいわ。 」
フランソワーズも 子供たちと一緒になってコイノボリを見上げている。
「 わ〜い ・・・・ やねよ〜り〜〜 た〜か〜〜〜い〜〜〜♪ 」
「 〜〜〜 おっきな〜〜 まごい〜〜は ♪ 」
すぴかとすばるはご機嫌で こいのぼり の歌をうたっている。
「 ・・・ふふふ ・・・ ねえ、ジョー。 ウチのはね、 あの黒くて大きいお魚がすぴかなんですって。
赤いのがすばる だそうよ。 」
「 え ・・・ だって大きなのは <おとうさん> で小さいのは <こどもたち> だよ? 」
「 あの歌は ムカシの話 なんですって。 すぴかの発言です。 」
「 ・・・ ふ〜〜ん ・・・ ま 確かにウチはそうかもなあ・・・ 」
「 おとうさん〜〜 あれ き〜すけ だよね! 」
すばるがつんつん・・・とジョーのシャツの裾を引っ張る。
「 え ・・・・ あ ああ そうだねえ。 き〜すけは今ごろ悠々と大空を飛んでるよ 」
「 でしょ? お〜〜い き〜すけェ〜〜〜 」
すばるは赤いコイノボリへぶんぶん手を振っている。
「 おとうさん。 」
今度は すぴかがシャツをつんつん引っ張っている。
「 うん? なんだい。 」
「 おとうさん。 アタシ ・・・ 決めた。 」
「 ?? 」
「 アタシ、 こいのぼり になる! それでね、空よりたかく ・・・ およぐよっ! 」
「 そ そうか〜 すごいなあ すぴか・・ 」
「 うん! 」
ぐ・・・っと頷き、両脚をしっかと踏ん張り。 ジョーの小さな娘は大きな真鯉を見つめている。
・・・ なにを決心したのかな ・・・
ふふふ ・・・ なんかフランに似てるなあ・・・
あ ・・・ フランのやつ、また 女の子らしくない、とか悩むかなあ ・・・
亜麻色のお下げを跳ね飛ばして駆け回る娘が ジョーは可愛いくてならない。
お転婆でも勇ましくても いいじゃないか・・・と思っている。
「 ・・・ ジョー ・・・ 」
「 うん? なに フラン。 」
「 すぴか ・・・ あれでいいのかも ね。 」
「 へ? 女の子らしくない・・・って ・・・ 」
「 うふふふ ・・・ あのね、 この国のふる〜〜い本にあったのだけど・・・
その家の長女には 一族を護る霊力があるのですって。 」
「 ふうん ・・・ ま アイツはあれでいいよな ・・・
なにか決心したらしいけど ・・・ まあがんばれ、ってとこだな。 」
「 そうね・・・ 頼もしい < 大姫さん > だわ。 」
「 ははは ・・・ ああ こいのぼり かあ ・・・
こんなにいい気分で眺めることができるって感動的だよ。 」
「 あら どうして? 」
うん ・・・ とジョーは生返事をして 相変わらずコイノボリを見上げている。
・・・ ジョー ・・・?
「 こいのぼり、か ・・・ ぼく一人のがほしかったよ・・・ 小さいのでもいいから・・・ってな。
自分だけのもの、なんてほとんどなにもなかったから ・・・
大きなコイノボリはあったけど、それは施設のでぼくだけのものじゃなかったしね。 」
「 ・・・ ジョー。 今はね この家族がみ〜〜んな・・全部ジョーだけのものよ? 」
「 ・・・ ウン ・・・ そうだ、そうだね 」
「 そうでしょ。 」
「 うん ・・・ おわ?? な なんだ〜〜お前たち 」
すぴかとすばるが ど〜〜ん・・・とお父さんに飛びついてきた。
「 おとうさ〜〜ん またかたぐるま して〜〜 」
「 ・・・ぼ 僕 ・・・ も ・・・ 」
「 よ〜〜し。 すぴか、ほ〜〜ら・・・! 」
「 きゃ〜〜〜い♪ うわあ〜〜 たか〜〜い・・・! 」
「 それじゃ すばるは よいせ・・! 」
「 う・・・ わあ〜〜♪ 」
娘を肩車し 息子を片腕で抱き上げ ― 側には妻がにこにこ寄り添う ・・・
ジョーは 悠々とコイノボリを見上げた。
うん ・・・ ぼくも屋根よりも高く・・・コイツらを護る存在でありたい な
五月の空は突き抜けるみたいに高く青く でっかい鯉が薫風に泳いでいた。
「 え。 ケーキ? ・・・ すぴか が作るの? 」
「 すばる と一緒につくる。 」
「 あ そう? ( ・・・それなら・・・ なんとか なる、かな・・・ )
でも どうして? 毎年、お父さんのお誕生日・ケーキは おかあさんが作るのを
2人して手伝ってくれているでしょ? 」
「 ウン。 でもね ことしはアタシ達でつくりたい〜〜 」
「 そうなのね それじゃ ― お願いします。 」
「 はい♪ うわ〜〜い・・・♪ 」
鯉幟も再び物置に収まって ― 五月も半ばとなると 島村さんち では重要なイベントがある。
五月十六日 ・・・ そう、お父さんのお誕生日なのだ♪
「 ね、お母さんに土台のスポンジだけは焼かせてくれる? いいかしら・・・ 」
フランソワーズは上手に助け舟を出す。
すばるはなかなか <お料理・少年> で 簡単なカップ・ケーキなどは器用に作る。
でもねえ ・・・ 大きなケーキの台は無理よね ・・・
すぴかは 手伝いにはならないし・・・
「 うん! いいよ〜 おかあさん。 」
「 ありがと。 ねえ どんなケーキにするの? 丸いの? それとも四角? 」
「 あのね ・・・・ うふふふ ね〜〜すばる? 」
「 うん! ね〜〜 すぴか♪ 」
子供たちはくつくつ笑って突っつきっこをしている。
「 まぁ なんなの? お母さんも仲間に入れてよ? 」
「 ふふふ あのね〜〜 ながしかく にして! 」
「 ・・・ ながしかく ??? 」
「 そ! こういうかたち! 」
すぴかは指で形をつくってみせた。
「 ああ! 長方形、ね。 ( ・・・ 長四角、か! ) 」
「 そ! そんでもってね、 ちょこ・くり〜む でかざるの♪ 」
「 え。 でもね お父さん、 苺のショート・ケーキが好きなのよ? 」
「 でもね〜〜 お父さんのけーき なんだもん。 」
「 お父さんのけーき?? 」
「 そ♪ 歌にもあるもん♪ 」
「 歌??? 」
フランソワーズはますます判らなくなってきた。
「 おとうさん さ、 自分だけの、ほしかった・・・って言ってたよね〜〜 」
「 ????? 」
「 そ〜 あのね〜 僕たちね〜〜 ・・・すぴか、言ってもいい? 」
「 いっせ〜〜のせ! で言おう? 」
「 うん♪ 「「 いっせ〜の〜〜〜 ・・・
「 こいのぼり け〜き つくる !! 」
「「「 おとうさん おたんじょうび おめでと〜〜〜♪♪ 」」」
「 わあ 〜 ありがとう! フランソワーズ、 すぴか すばる〜〜 」
五月十六日、 島村さんち のテーブルには どでん、とケーキが乗っていた。
「「 これ・・・ アタシ・僕 達がつくりました 」」
「 ・・・すご〜〜い・・・ 2人で作ってくれたんだ〜〜 」
「「 うん♪ 」」
「 ・・・ え〜と ・・・・ 」
・・・ これ ・・・ ナンだ?? いや、ケーキはケーキだけど・・・・
チョコクリームがこてこてに塗ってあって ・・・ 長方形で端が窄まってるぞ?
「 おお ジョーや ・・・ これはすごいケーキじゃないか!
すごいぞ〜〜 すぴかにすばる 。 」
博士もにこにこ・・・孫たちを抱き寄せて ケーキを見つめている。
え ・・・ 博士も判ったのか ・・・?
え〜〜 え〜〜〜 ・・・ フラン〜〜〜助けてくれェ〜〜
「 ・・・あ〜〜〜 え〜〜 ( ・・・え? ) 」
♪♪♪〜〜〜 ♪♪ 〜〜〜♪ 〜〜〜
困惑の極致にいるジョーの耳に かすかに懐かしいメロディが聞こえてきた!
チラ・・・っと細君を見れば 彼女は密かに口笛を鳴らしてくれている。
「 ( あ!! ああ そうか!! やねよ〜り・・・ だな! )
・・・・ えっと。 おっほん♪
すぴか すばる。 こいのぼり・ケーキ ありがとう!! 」
「「 わあ〜〜〜 おとうさん〜〜〜 ♪ 」」
「 さあさ ・・・ 皆で こいのぼり を美味しく頂きましょうね。 」
「「 うわ〜〜い♪♪ 」」
あは ・・・ コイツらがいつも後ろに居てくれるから ― 頑張れるんだな
ジョーは チョコ・クリームてんこ盛りのケーキを頬張りつつ幸せの溜息をついた。
― そう ・・・ 後ろに護るべき大切な存在があるとき、人は一番強くなる。
****************************** Fin. ********************************
Last updated : 05,22,2012. back / index
********* ひと言 **********
結局 な〜〜んにも起きないのでした。
すばるクンの将来については 以前のお誕生日話 を
探してみてください 〜〜