『  人気の無い公園  − いつもふたりで − 』  

 

 

 

初めてここに足を踏み入れたのは いつだったか・・・・。

そうだ、今のアルバイトに通いだした時からなんとなく 気にかかってたんだっけ。

 

僕は 相変わらずちょっとためらってからゲ−ト代わりの低い茂みの間を通る。

 

今日も。 だれも いない、な。

 

だいたい、通りかかるのが街灯が燈りだすころだから

子供の姿がみられなくて当り前なんだろうけれど、

この時間に限らず、 ここ − ちいさな、というより貧相なこの公園に 

いつも 人影はほとんど見られない。

 

ぼやけた灯に照らされた そのせまい空間がなぜか気にかかって。

僕は 用もないのになんとなく その公園に寄り道をする。

 

 

誰かを 待ってるみたいだな・・・。 来るアテなんかない、誰かを。

 

 

別に何をするわけでもなく あまり使われていないらしくぎいぎいと妙な音を立てる

ブランコに座って 今日のノ−トを読み返してみたり。

暗闇を幸い 子供用の低いジャングルジムに登って 天辺でしばし夜空を仰いでみたり。

内緒だけれど 深々と煙草を燻らす時もある・・・・・。

 

膝をかかえて ちぢこまって。 きゅっと口を結んで 押し黙って。

でも ほんとは 大声でさけびたかった。

 

だれか。 だれか いませんか。 僕は ここにいます。

 

そんな声が自分のこころにこだまする。

 

 

別に 特に一人になりたいわけでもない。

いや、むしろひとりは もう十分味わい尽くしたはずだ。

今の自分には 帰るところがあるし 自分の居場所もそれなりに見つけたつもりさ。

 

だけど。 いや だから、こそ。

この、ちいさな ・ さむざむとした 空間が気になって。

 

 

 

「 ず ・ る ・ い 〜 」

「 ・・・ ! ・・・ 」

不意に聞きなれた声に 驚いて振り向けば。

マフラ−をぐるぐる巻きにしてファ−つきのオ−バ−を着込んだ 白兎みたいなきみが笑ってた。

 

「 一人だけで楽しんでたのね? ここは・・・ジョ−のヒミツの花園? 」

「 え・・・・。 こんな・・・さびれた場所が・・? 」

「 そうよ、なんか・・・素適じゃない? 自分だけの隠れ家みたい♪ 」

「 隠れ家・・・? 」

「 う〜ん、ナイショの秘密基地、かしら? こぢんまりしてて、可愛いいわ。 」

 

ね? これからここで待ち合わせしない? それで、いっしょに帰りましょ。

 

きみは イタズラを考え付いた子供みたいに 目を輝かせて

くるり、とその場でまわってみせた。

 

ぼんやりした街灯の光のもとでも きみの髪はきらきらと揺れて。

どんな時にでも 僕の目印になってくれるんだ・・・

 

 − そうだね。

この公園には。 きみと僕が くる。

僕たちを待っている場所。  僕たちがやってくる場所。

 

もう ここは 淋しい場所じゃない。

 

 

 ・・・・ そうだね。  

僕には。 きみが いる。

僕を 待っている人。  僕が 待つ人。

 

もう 僕は  ひとりぼっちの子供じゃない

 

 

「 さあ。 帰りましょ? 」

差し出された手は 手袋ごしにも冷たくて。

僕は あわててその華奢な手を握り返した。 

 

うんと うんと・・・・ 暖まるように

うんと うんと・・・・ 温めてくれるように

 

 

 ( 了 )    top                          Last updated:01,25,2004.

     

    ******  ひとこと ******

  イメ−ジにぴったりの華麗・絵を頂戴しました♪