神話伝承


■ティナリアート

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■ティナリアート  □リアスターグ創造  □古代魔法文明と魔道大戦  □現在の秩序へ

 世界は"虚無"に包まれていた。
 やがて力が集まり"存在"が生まれた。
 それは力を持ち"神"と呼ばれる存在となった。
 生まれた神々は自らの意思を持ち、世界を見回した。

 最も力強きもの ティトス
 最も優しきもの ティナリア
 最も静かなもの ゼムール
 最も心賢きもの リグナーデ

 神々の周りには さらに多くの"存在"が集まり、
 あまたの"生命"となった。
 "生命"の数は増えていき、世界は混沌の相を見せ始めた。
 神々は"生命"が生きていく場が必要と感じ、動き始めた。

 ティトスは、世界を 空と地と海に切り分けた。
 ティナリアは、生命を それに相応しい場に配置した。
 ゼムールは、時の流れと秩序をもたらした。
 リグナーデは、言葉を紡ぎ 意思を伝える方法を設けた。

 ティトスは、天の高みから世界を見守った。
 ティナリアは、"生命"とともに世界で過ごした。
 ゼムールは、姿を隠し、時の流れを治めた。
 リグナーデは、姿を隠し、"生命"の流れを治めた。

 今と違い、病も死も存在しない世界。
 老衰とも無縁の その世界で生命は栄えた。
 争いはティナリアとリグナーデによって取り成され、
 世界は平穏な日々を謳歌していた。

 "生命"とともに過ごしたティナリアは 母と慕われ
 世界は いつしか"ティナリアート"と呼ばれた。
 ゼムールとリグナーデは、望んで姿を隠した。
 ティトスは、空の高みにいるゆえ 世界から忘れられ始めた。

 世界から忘れられかけたティトスは、力を求め始めた。
 そして新たな力を見出した。
 変幻自在の力を手にしたティトスは、
 世界のために この力を用いるようになった。

 ティトスはティナリアとともに、世界を守るものとなった。
 しかし、ティトスの様子に大きな変化が起こった。
 ある時は ティナリアのように慈悲深い性格。
 ある時は 誰も見たことの無い激情的な性格。

 世界はティトスの性格の変化に戸惑った
 ティトスは自分の変化に驚き、天の宮殿に戻った。
 何が起こったのか分からないまま、幾日かが過ぎた。
 ティトスは天の宮殿から 外に出る事が無くなった。

 突然、天の宮殿が 大きな竜巻に包まれた。
 その竜巻は激しさを増し、次第に大きくなっていった。
 中で何が起こっているのか、他の神々にも分からなかった。
 竜巻はどんどん大きくなっていった。

 大きくなった竜巻は、みるみる世界を呑み込んで行った。
 それを止めるべく神々は力をあわせた。
 しかし、その竜巻を止めることは出来なかった。
 悲痛な叫びとともに犠牲になるものが みるみる増えていった。

 遂に世界全土が竜巻に包まれ、阿鼻叫喚の様相となった。
 神々も自らの力を弱めるだけだった。
 ようやく竜巻が収まった。
 だが、世界は破壊され、元に戻すことは不可能だった・・。

 竜巻が収まったとき、その中心にティトスはいなかった。
 しかし、ティトスは確かにそこに存在した。
 だが他の神々の知るティトスは 確かに そこにはいなかった。
 何が起きたのか、すぐに理解できるものはいなかった。

 この事態を憂い、全力で何かをしようとする誰か。
 この事態を見て、新たな世界を模索しようとする誰か。
 両者の間に入り、その仲裁を使用する誰か。
 ティトスの代わりに 三つの"誰か"が言い争っていた。

伝え聞かれる神話伝承によると
現在、我々が生活している世界の前に
今の慈母神ティナリアが庇護する世界があった
・・・とされています。

もっとも最初からティナリアが主導していた
というよりも、結果としてそうなった
・・・ということのようですね。

時間神ゼムールや魂導神リグナーデの役割は
基本的に、現在と変わりません。
ただ、ティナリアートは死のない世界でしたので
リグナーデの役割は 生まれ出る"生命"に魂を与える
・・・というのみだったと、私は推測しています。

死という概念がないだけでなく、
ティナリアートに生きていたものの姿そのものも
私たちとは大きく異なっていた・・と言われています。
どうやら様々な姿形があったようですが、残念ながら
それを正確に伝え残す記録は どこにもありません。

ティナリアートは 豊富に"魔晶(マナ)"が存在したようです。
このため、今でいう魔法を人々は普通に使っていました。
ですが、当時使われていた魔法を再現することはできません。
記録が何もない・・というのが 返す返すも残念ですね。


ティナリアート神話が伝えることで興味深いのは
現在の至高三神と呼ばれる存在が 元は一つの神であった
・・ということでしょうか。
そして 分裂する前の神ティトスが見つけた力は
現在では"神泉"と呼ばれるものなのです。

ただ、なぜ神が分裂するようなことになったのかは
残念ながら、もう理由は分かりません。
"神泉"の力が 本当に原因なのか?もね・・。
それでも、この後 神々が"神泉"の力を
使わなくなったのは、事実です。


ところで、ティナリアートの存在を疑問視する学者もいます。
彼らの言い分には、それなりの説得力がありますが、
私は中庸神タナルスの教団が残す歴史書の中に
ティナリアートに言及する記述があることから、
まあ存在はしていたであろう・・と考えています。

暗黒魔道師たる私が、神の記述を信じるのはおかしいですか?
まあ、彼らの主張をすべて受け入れるのは御免ですが、
だからといって全てを否定する必要はないのです。
向こうは私を即座に否定するでしょうけどね、ふふふ。

真摯に知識と記録を残そうとする姿勢は、
暗黒神ダスタムの自由さの次ぐらいには共感できます。
光明神ラノスの厳格さは・・・遠巻きに眺めるのみですね。


■リアスターグ創造

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□ティナリアート  ■リアスターグ創造  □古代魔法文明と魔道大戦  □現在の秩序へ

 ティトスは自ら見出した力で三つに引き裂かれた。
 そのときに溢れた力が世界を引き裂いた。
 再び世界は"虚無"に包まれ始めた。
 神々の力も これを止める事が出来なかった。

 崩壊したティナリアート。
 それを防ごうとして、全力を使った神々は 往年の力を失い
 ティナリアートに生きていた"生命"は 行き場を失った。
 "虚無"に食われる"生命"も増え始めた。

 力を失い、"虚無"に浮かぶしかない神々。
 だが、ティナリアの力が、少しずつ回復し始めた。
 ティナリアートに生きていた"生命"が助けを求めた時
 その助け求める心が、ティナリアの力となった。

 ゼムールとリグナーデの力も、徐々に戻って行った。
 時と生命の秩序を守ってきたことが、
 ティナリアートに生きていた"生命"の記憶にも残っており
 それを求める心が、ゼムールやリグナーデの力となった。

 分裂したティトスは力を弱らせたままだった。
 ティナリアートを崩壊させたことが、
 ティナリアートに生きていた"生命"の記憶にも残っており
 それを怒る心が、引き裂かれたティトスに力を与えなかった。

 ティナリアとゼムールとリグナーデは秩序を求めた。
 崩壊したティナリアートに生きていた"生命"を
 呼び集め、彼らが住む場を もう一度作った。
 彼らは"妖精"として、新たな姿を与えられた。

 ティトスの分裂を引き起こした力については
 それを守護し管理する"生命"を新たに作った。
 この"生命"は"竜"と呼ばれ、
 "神泉"と呼ばれる力を司るものとなった。

 力を取り戻せない三神を見て、
 ティナリア・ゼムール・リグナーデは憂えた。
 最も力の強かった兄弟を救う方法を 神々は求めた。
 そして求める心こそが、力の源であることに気づいた。

 ティナリア・ゼムール・リグナーデは決めた。
 ティトスを救うため、彼らを求める"生命"を作り上げよう。
 こうして"人間"が形作られ、生きる世界が与えられた。
 世界の自然を司るため"精霊"という"生命"も作られた。

 人間は庇護を求め、神を祈り求めた。
 その祈りは分裂した三神に届いた。
 三神は少しずつ力を取り戻してきた。
 人間を守るため、三神は全力を尽くすことを誓った。

 人間には、神に助けを求める心が植えつけられていた。
 しかし、それは分裂した三神が力を取り戻すまで、
 と定められていた。それが成った時、人間は自らの意思で
 信じる者・仕える者を決められることになっていた。

 時は満ち、その時が訪れた。
 人間の心に課されていた枷は外された。
 三神は人たちの前に 至高三神として姿を現し、
 自らの意思で、人間たちの心を得ることにした。

 光明神ラノスは、光をまとい 平和の尊さを説いた。
 中庸神タナルスは、銀をまとい 知識の尊さを説いた。
 暗黒神ダスタムは、闇を纏い 自由の尊さを説いた。
 神々を信じる者、自らの道を選ぶ者・・様々だった。

 ゼムールは、時を守る立場を自任していた。
 リグナーデは、魂を守る立場を自任していた。
 ティナリアは、庇護を求めた"生命"を守り抜くため、
 妖精の住む場に身を置き、彼らと時を過ごすことにしていた。

 人間たちは 自らの世界をリアスターグと呼んだ
 表からは至高三神と精霊と竜に守護されて、
 裏からは時間神ゼムールと魂導神リグナーデに守護されて、
 人間たちは繁栄の時を迎えようとしていた。

リアスターグが創造されるまでの話を
現在では"ティナリアート神話"と呼んでいます。

この神話は、神々の力の源に関する記述も興味深い。
つまり、信じるものがいなくなったとき、神の力も失われる
ということだからです。

なるほど、教団が必死になって、信者を確保するわけです。
神官は神の力を使えますので、それを見て信者となる人々が
後を絶ちません。そういう意味では安心でしょうね。
人というのは現金なもので、力を見せられているうちは
その力を信じる事が出来てしまうものなのですから。

もっとも至高三神以外は、教団のような組織を持ちません。
それでも、世界の根幹を司る力をお持ちの方々ばかりなので
世界に根ざし、そこで生きるものがいる限り、
その力を信じる者が いなくなることはないのでしょう。


まあ、それはさておき、人間が作られた当初は、
神を信じるように強制されていた・・というのも
今 考えると随分なものですね。
そこまでして いわば兄弟を救おうとした
ティナリア・ゼムール・リグナーデもお人よしです。
世界が滅びる原因だった者を蘇らせたのですから。

ところで、このとき創造された人間は、
崩壊前のティナリアートに生きたものと同様
死の概念を持っていませんでした。
ですから、リグナーデの役割も、ティナリアートの時と同様
新たに生まれ出る人間に魂を吹き込むことのみだった
と、やはり私は推測しています。

それから、エルフやドワーフなどの亜人間は
この当時、どこにも存在しませんでした。
彼らが現れるようになるには、もう少し時間が必要になります。


あとは・・竜が司ることとなった"神泉"の力。
これは実にありがたいことに、神々と精霊双方の力を使える
という不思議な魔法体系となっています。

竜は 神泉の力を"神紋(ルーン)"と呼ばれる文字に封じ、
それを知るものであれば 誰でも使えるようにまとめました。
おかげで神と敵対する(らしいです)私のような者でも、
治癒の魔法が使えるようになったのです。
この力を最初に見つけたティトスには感謝したいですね。

竜が炎や氷など様々な息を吐けるのも、
神泉により、精霊たちの力を取り込んでいる為です。
いまや竜は神々と同じレベルの強き存在になっています。


崩壊したティナリアートから生き残ったものは、
ティナリアとともに妖精として新たに生きることになりました。
ティナリアは人間たちの住む世界リアスターグのことを
至高三神に委ね、自分は妖精を庇護するものとして、
妖精とともに時を過ごすことにしたのです。

ティナリアは魔道大戦が起きるまで
人間たちの前に姿を現しませんでした。
もしかしたら、ティナリアートのときのように、
至高三神に焦りを与えるようなことはしたくなかった
のかもしれません。もちろん私の推測に過ぎませんが。


■古代魔法文明と魔道大戦

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□ティナリアート  □リアスターグ創造  ■古代魔法文明と魔道大戦  □現在の秩序へ

 繁栄を極めていく人間たち。
 その中でも特に発達したのは、"魔晶(マナ)"を用いる技術。
 今よりも豊富に存在した魔晶は、人々の生活を潤わせた。
 こうして魔法文明が大きく栄えることとなった。

 魔晶を操るために、独自の言葉が発達した。
 しだいに それは日常でも用いられる言葉となった。
 人々の生活の中には、魔法がありふれるようになった。
 ティナリアートでも そうであったように。

 "神泉"の力は、竜によってまとめあげられていた。
 竜に教えを請う者も現れ、次第に使い手が増えていった。
 精霊たちと言葉を交わす者も現れた。
 精霊とともに自然を守る者も増えていった。

 また、全く新たに生命と物質の成り立ちを調べ
 独自の力を持つようになった者も現れた。
 それは錬金術と呼ばれ、大きく発達した。
 しかし神々の理に触れるため、人々には伝わらなかった。

 そして、ここに新たな力を見つけた者がいた。
 見つかったのは、大きな力を帯びた書物。
 そこに書かれた力は、驚くべきものだった。
 しかし、それは世界に混乱と破壊を招く扉だった。

 書物には、力を持った存在のことが書かれていた。
 それを呼び出し、力を借りる方法についても
 そこには はっきりと書かれていた。
 しかし、それは あまりに禍々しい行為だった。

 既に、人としての心を失い、力だけを求めた者がいた。
 彼らは、禍々しい行為とされたそれを、
 躊躇いつつも 遂には成し遂げてしまった。
 ここに人間は、初めて魔族と出会うことになった。

 魔族は人間に力を与えた。
 その代償として、魂を求めた。
 こうして魔族に魂を捧げるため、
 残忍で凄惨な事件が急増した。

 魂が捧げられることで、魔族は力を増した。
 魔族の目的は、まさに その力だった。
 さらに魔族は、自らの世界と 人間の世界を
 つなぎ合わせることを、代償として求めた。

 力を増した魔族。
 その力の代償として協力した人間。
 これが揃った時、魔界への扉が開かれた。
 魔族は 勢いづいて、人間界への侵略を開始した。

 神々は敢然と魔族に立ち向かった。
 竜も精霊も、自らの力で 魔族に戦いを挑んだ。
 発達した魔法文明も 魔族への攻撃を開始した。
 これが、後に"魔道大戦"と呼ばれることになる。

 魔族の力は強大だった。
 既に世界は魔界と繋げられていた為、
 魔界からの有害な瘴気が世界を汚していった。
 これにより人間たちは みるみる力を奪われていった。

 信じる者が減少し、至高三神の力も弱まった。
 ゼムールやリグナーデも力を貸し与えたが、
 ティナリアート崩壊を髣髴とさせる危険が迫った
 このとき、ティナリアが再び立ち上がった。

 ティナリアは妖精たちとともに、
 魔族との戦いに身を投じた。
 この助けに希望を見出した世界は、
 最後の力を振り絞り、魔族に戦いを挑んだ。

 最後の戦いにより、魔族から来た2人の魔王のうち
 神々の力を結集して魔王の1人は撤退した。
 精霊の力を結集して魔王の1人は封印された。
 こうして、大きな爪跡を残しつつも、魔道大戦は終わった。

いよいよ、魔法文明の登場です。
ここで発達した魔法の言葉は"古代語"と呼ばれ
今も魔晶(マナ)を扱う基本的な方法として用いられます。

また、魔法文明の遺跡が、この世界には多数存在しますが、
その探索をする者も、古代語を知っていなければ、
とても仕事になりません。

古代語を用いる魔法は、魔晶を直接操るため、
自らがイメージすることで、様々な呪を編成できるのが
非常に特徴的です。
そのほかの魔法は たいてい呪の効果が特定されますから。


神泉や精霊の力も、重要な魔法の力です。
これらは、術者の力さえあれば、誰でも使えるのがポイントです。
自然と世界を守護するという精霊ですら、
力ある術者には従わざるを得ないのです。
たとえ、そのものが魔族に力を貸していたとしてもね、ふふふ。


錬金術についても、少々 語っておきましょう。
ただ新たな生命を生み出すこと、新たの物質を作り出すこと
というのは神々の御業とされております。
それを人が行うことは許されない・・というのが、
至高三神の教団の統一された見解だったりします。

ですから、表立って錬金術を学んでいると称すると、
至高三神の教団の手のものに目を付けられてしまいます。
こうなると、面倒な事が多いものですから、
錬金術師が世の中で目立つことは、まずありません。


いずれにせよ、現代にも伝えられている魔法の多くは
古代魔法文明の中で発達し、今に繋がっています。
そういう意味で魔法を使う者は、古代魔法文明に対し
一定の敬意を払っています。

結果として、古代魔法文明は自滅しましたけどね。
魔晶は無尽蔵のものではない、ということに気づいた時は
もうすでに手遅れだったのですから・・。


魔道大戦。それは、魔族による初めての侵略でした。
あまりに強大な存在である魔族は、
そう簡単に人間界に自ら赴くことは出来ません。
そこで、魔族は 自らの力を切り取り"魔書"を作り出し
これを人間界に送り込み、それが開かれるのを待ちます。

魔書には、魔族を召喚する方法が記述されています。
基本的には魂を犠牲として捧げる必要があります。
しかも処女の魂でなければ駄目、といったように
魔族にも好みがあるため、なかなか簡単ではありません。

いずれにせよ中から協力してくれる者さえいれば、
魔族は 人間界へ力を及ぼしやすくなります。
こうして、召喚したものと契約を結び、力を貸し与えます。
もちろん契約ですから、その代償も求めます。

最終的な魔族の目標は、魂が多く存在する別の世界と
魔界をつなぎ合わせ、結果として魔界へ吸収することです。
自分と契約を交わした者に、力を与えるとともに、
最終的に魔界への扉を作らせようとするわけです。

私は・・といいますと、不真面目ですので
まだそこまでするつもりはありません。
この世界は、まだ滅ぼすには惜しいことで一杯ですからね。
まあ、その分だけ 代償は多めに捧げてますがね、ふふふ。

魔道大戦のときは、こうしたことを誰も知らなかったため
比較的簡単に魔界への扉が開かれてしまったようですね。
それゆえ、魔王と呼ばれる強き存在の侵入を許してしまい
世界存亡の危機にまで達してしまいました。


■現在の秩序へ

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□ティナリアート  □リアスターグ創造  □古代魔法文明と魔道大戦  ■現在の秩序へ

 魔王の力が削がれたことで、魔族の侵略は止められた。
 世界には平穏が戻った。
 だが、人は死ぬ存在となり、多くの魔晶が消耗された。
 古代魔法文明は 自らを支えきれず滅びていった。

 だが、人間は確かに まだ生きており、
 崩壊しかけた世界を復興させなければならなかった。
 ティナリアと妖精たちは、戦いの後もとどまり、
 人間とともに世界を復興させるべく働いた。

 そんな妖精と人間が心を通じ合わせたとき、
 妖精とも人間とも言えぬ 新たな"生命"が生まれた。
 神々は、最初その存在を認めようとしなかった。
 しかしティナリアは自らの子らとして、彼らを祝福した。

 こうして、大空に根ざし、背に翼を持ちし者が生まれた。
 大地に根ざし、物を作り出す小人が生まれた。
 大地に根ざし、子供のように生きる小人が生まれた。
 彼らは人間とともに暮らす道を選んだ。

 美しい姿を持ち、永遠に等しい時を生きる者が生まれた。
 背中に羽を持ち、永遠に等しい時を生きる者が生まれた。
 彼らは 長い時を生きる宿命ゆえに、
 人間とは離れて暮らす道を選んだ。

 人間とともに戦った至高三神とその教団は
 世界を救う砦となったことを人々に認められ、
 さらにその力を増していった。
 栄えた文明が滅び、人々には拠り所が必要だった。

 人間と その子らが生活できるだけの秩序を取り戻した時
 ティナリアと妖精たちは 自らの世界に戻った。
 だが、ティナリアは 今度は人間たちをも守ることにした。
 このため、空に大きく輝く月を 自らの宮殿とした。

 こうして世界は、平穏に覆われていった。
 だが、人間は死する存在となってしまった。
 死したとき、生命から流れ出る魂・・。
 これを受け入れるため、リグナーデが立ち上がった。

 リグナーデは、生まれ出でた命に"魂"を与えるだけでなく
 死した生命から流れた"魂"をも導くようになった。
 魂は冥界に帰り、冥界から旅立って新たな命とされた。
 リグナーデは、魂の流れを司る女神となった。

 ゼムールは、変わらず時を司るものとなった。
 竜と精霊たちも、本来の役割に戻っていった。
 こうして、魔族によって崩壊しかけていた秩序は、
 再び取り戻されていった。

 魔道大戦の後、リアスターグはゆっくりと復興した。
 それが大きく揺らいだのは、魔道大戦から300年ほど
 経過したときのことだった。
 魔道大戦で魔王を封じた結界が弱まったからだった。

 魔王を封じた結界は、その結界ごと世界の中心部を
 大きく削り取っていた。だが、結界が弱まることで
 元のように行き来が可能になった。
 と同時に、封じられていた魔王も目覚めた。

 魔王とともに封じられていた地域をガーランドと呼ぶ。
 このため、この戦いはガーランド戦役と後に言われる。
 魔族との戦いの記憶を受け継いできた至高三神の教団を
 中心として、世界は一丸となって魔王と戦った。

 神々に鍛えられた"御神の槍"を授かった
 戦士ティトス・巫女シェリアナ・道士アーリ・
 森の妖精ディシェット・老竜シュミファイアにより
 封じられていた魔王を打ち倒すことで、戦役は終わった。

 結界は不要となり、リアスターグ全土に平和が戻った。
 ティトスは、その後 人々に請われて、
 全土を統一し、帝国の皇帝として即位した。
 その後も、人々と魔族との戦いは続いている。

魔道大戦が残した爪跡は大変なものでした。
その中でも最も痛手となったのは"死"がもたらされたことでしょう。

人間は、魔族に侵略されたとき、初めて 死を経験しました。
死を迎えたとき、生命から"魂"が抜けます。
魔族は それを吸収して自らの力とします。

また、魔界の瘴気を浴びることで、
人間は老衰するようになってしまいました。
瘴気は、人間の生命としての力をも奪ってしまったのです。

いずれにせよ、人間は老いて死ぬ存在となりました。
神々も、それを回復させる方法を見つけ出せず、
死して生命から離れた魂を導く・・という新たな役割を、
リグナーデが自任することしか出来ませんでした。


妖精と人間との間で子が生まれたというのも
非常に興味深いですね。
人間とは異なる種が このとき誕生しました。
それこそが亜人間というわけです。

恐らく現在知られている種族以外にも、
多くの種族が最初は混然としていたのではないか?
と私は想像しています。

自然の力を取り込んだ獣人という存在も、
このときに生まれた、というのが定説です。
やはり、最初は妖精と人間の子だったのだと思います。
もっとも獣人は 錬金術の落とし子だ、と主張する方もいます。
あり得ないとは申しませんが、ちょっと興が無いですね。


魔道大戦は、人々の記憶から消えることは無く、
年代の数え方も「魔道大戦から何年目」という風に
誰というでもなく言い始め、それが定着しました。
今は単に「〜年」と記録される事が多いですけどね。

ちなみに私たちは、今 魔道大戦から500年ほど
経過した世界に住んでいます。
エルフやピクシーといった種族の最高齢の方の年齢も、
ちょうど500歳ほどということになりますね。
彼らの中で寿命で死んだ者は、まだ いません。


魔道大戦以降も、魔族の侵略は続きますが、
その中で最も大きいのがガーランド戦役です。
魔王を封じるために、それは大きな結界を作り、
それによって結界内の地方は 周囲から隔絶されましたが
300年の時が流れて、結界も弱まったのでしょう。

よく思い起こしてみれば、このときの戦いには
私も参加していました。
魔族と契約を結ぶ前の 駆け出しの魔道士でした。
随分と長い時が流れたのですね、ふふふ。

この戦いを収束に導いたティトス殿は、
その後 帝国の皇帝に祭り上げられてしまいました。
そんな柄ではなかったのですが、仕方ありません。

いずれにせよ、全土を一時的にですが
一つの国が治めていたという事実があるために、
リアスターグでは言葉・貨幣・単位といったものが、
統一されており、今でも どこでも共通になっています。
言葉は、地方により方言がありますが、
普通に会話をする分には、特に困りません。

なお、帝国による全土支配は 50年ほどで終結し、
その後 帝国は東方のみを自領とし、
その他の地方は そこに住む者に任せました。
まあ、それはそれで色々と混乱をもたらしましたが、
ティトス殿自身が いつまでも全土支配をしないように
・・と言い残していたからのようです。


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