ナイトメア・・・悪夢








神の都




















その夜、姉が消えた。

一人であれこれ、ない脳みそで考えても埒があかないことに気がついたオズは姉がいる部屋を訪ねた。
姉の言葉の真意を確かめるために。
最悪の場合の覚悟もした。

大きく息を吸って姉の部屋に入る。だが、明かりもないそこに人の気配はなかった。
「姉さん・・・?」
手にした蝋燭の火をかざす。姉はやはりいなかった。

緊張していた身体から力が抜けた。覚悟はしたとはいえ、姉の不在は最悪の宣告が延びたということだ。ちょっとだけ安堵する。
テーブルの上の燭台に火をつけ、椅子に座って姉の帰りを待つことにした。

燭台の炎と窓からの月明かり、
何気に部屋をぐるりと見渡していたオズの視線がある所で止まった。顔色がさっと変わる。

そこに・・・・・・、
あるはずの姉の新しい鎧がなかった。
オズのだけがおいてあった。

昼戦った時、姉はあの村で借りて着た服のままだったし、自分もガナンの鎧は外した。

姉の鎧だけないということは―――。

「畜生!」
オズは脱兎の如く駆け出して砦門に向かった。恐ろしい勢いで近づいてきた新しいコマンドに見張りの騎士が思わず後退りした。
オズが怒鳴った。
「おいっ!姉さんはどこだ!?」
オズに気圧されて返事が出来ない騎士に焦れたオズが彼の胸倉を掴みあげた。
「出て行ったのか!?」
騎士がこくこくと頷いた。
「いつ!?」
「・・・くっ・・・、苦・・・し・・・・・・。」
騎士が話せなのに気づいたオズが彼を放す。暗黒騎士はげほげほと咳をしながら二時間ほど前だと答えた。
「何故、オレに黙っていた!?」
「オズマ様がオズ様には伝えぬようにと言い残されましたので。」
「・・・・・・!!」

空を見上げ月の位置を確認した。
追いかけて間に合うか・・・!?

「オレの馬を用意しろ。」
「あ・・・、いえ、でも・・・・・・・」
「聞こえなかったのか、オレの馬だ。」
「オズマ様が・・・・・・。」
「姉さんが何だ!?」
要を得ない騎士に苛ついたオズが声を荒げた。
騎士は申し訳なさそうに小さな声で言った。
「その・・・、もしも自分がここを発ったことをオズ様に知られた時は・・・・・・。」
「知られた時は?」
「決して自分を追いかけてくるなとオズ様に必ず言うようにと・・・・・・。」

オズは目の前の騎士を殴りたくなる衝動を必死に堪えると無言で砦の中に帰っていった。

姉の部屋に戻る。

残された自分の暗黒の鎧の前でオズはじっとそれを睨んでいた・・・・・・。









 →

戻る