だが、オーブの力を持ってしても、敵を全滅させることは不可能だった。
一度は倒れたガルガスタン兵たちは首を振りながらすぐに立ち上がってきた。かなりの体力は奪っただろうが一人も命を落としていない。

「生け捕りはもういい。枢機卿には何とでも言える。殺せ!」
隊長が叫びながら剣を振り上げて襲ってきた。今までと違って全員が殺気を帯びている。2人はそれをかわしながら離れた。

「寒さにやられて相当頭にきてるぜ…」
ヴァイスがデニムの方を見ながら言った。
「まずいな…」
「体力は多分俺たちに分がある。思いっきり走るぜ、デニム。」
「ああ…」
デニムは手にした松明を彼らに投げつけた。それが合図になって2人は同時に来た道を走り出した。

「待てー!!」

「待つか、バカ」
相変わらず減らず口の絶えないヴァイスだったが次の瞬間、言葉を失った。
前方から新たにガルガスタン兵が数名援軍に来たのである。

前方にガルガスタン、後方にもガルガスタン。死にかけの後ろに向かって方向転換をすると2人は強行突破を試みた。手にしたタワーシールドを真正面に向けて敵を押しのける。衝撃で倒れた男の手から剣をもぎ取り、デニムに渡す。デニムはその剣を使って敵を倒していった。オーブのダメージから抜けきっていない彼らは簡単に倒されていった。ヴァイスも倒れた敵から剣を取り上げる。

その時、うっとデニムが唸った。ヴァイスがデニムを見ると肩に弓矢が突き刺さっている。ガルガスタン兵がショートボウを構え、弓矢を射掛けてきたのだ。





緊張の糸が…途切れた。





ヴァイスは目をつぶる。デニムは神に祈る。
2人の時間が無彩色になって止まろうとしたその時。





空からひゅんと弓矢が降ってきて敵が一人倒れた。
カノープスだった。デニムたちと離れ離れになった彼らもまたアルモリカを目指して逃亡をしていたのだが、森の中に炎が上がったのを見てカノープスが飛んできたのだ。

「デニム!大丈夫か?」
カノープスはヴァイスには目もくれず、デニムの横におりたった。

ヴァイスはその時自分の顔が険しくなるのに気がついただろうか…。

「ん…、大丈夫だよ。みんなは?」
「この先にいる。とりあえずここから逃げるのが先だ。」
近づいてきたヴァイスにカノープスは言った。
「よう、悪運は相変わらずだな。」
「ふん、もっと早くきやがれ。」
「デニムだけならオレが抱いて飛べるんだが…、荷物があるとなると…」
荷物は当然、ヴァイスだったのだが。
「勿体ないがこいつを使うか…」

カノープスは腰につけている袋から風のオーブを取り出した…。






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