オクシオーヌが4匹のバハムートたちを連れて
コリタニ城から出て行く

冬のこの地方には珍しく青い空とぽかぽか陽気

運動不足のドラゴンたちとピクニック気分で出て行った

バスクの服を着た竜使いの娘が笑顔を浮かべて
きらきら輝くバハムートと一緒に

春まではまだまだ遠いけど





ストロマトライト
〜石のベッド〜

第3夜





 城の尖塔にいたジュヌーンはオクシオーヌが彼女のドラゴンと城から出て行くのを見ていた。行き先はわかっていた。





あれから熱の下がったオクシオーヌはまるで断頭台に上る囚人のような顔をして雲水たちに会いにいった。ブレス攻撃をされても、逃げないで心の底から彼らに謝ろうと決めていた。大切な友達を自分の欲のために傷つけたのだ。覚悟を決めて竜舎に行ったら、雲水たちはオクシオーヌの姿を見るなり巨体をゆらして嬉しそうに近づいてきた。

「・・・?」

てっきり牙をむかれると思い込んでいた彼女は身体の緊張を解きドラゴン達に戸惑う。それでも言わねばならない言葉を口にした。

「…ごめんなさい、おまえたちに酷い事をしたわ・・・。本当に悪かったと思う。もうしないから・・・約束するわ・・・。ゴメン・・・」

「今度、お天気のいい日にお城を出て散歩に行こう?」
オクシオーヌは思う。ジャンヌたちがまだ近くにいるのなら会いに行きたい。きっとびっくりする。彼女ずい分雲水たちを気に入っていたから・・・。

 バハムートの背を優しく撫でるくしゃくしゃ髪のバスクの少女。竜舎でいつもの光景が久しぶりに見られた。







 城を出て行くオクシオーヌたちを見ているジュヌーンの耳に階段を上る足音が聞こえてきた。微かにするいい香りが心地よく鼻をくすぐる。振り返るまでもなく誰かわかった。

「オクシオーヌはすっかり元気になったようね。」
彼女だ。オクシオーヌが城を飛び出した直接の原因の。
「ドラゴンたちとも仲直り出来たみたいで良かったわね。」
「彼女は不思議がっていた。何故あっさり彼らが許してくれたか・・・」
「言ってないの?意地が悪いわね」
「言えるわけないだろう? 香水が臭くて攻撃態勢に入ったと」
「そうね・・・」
くすくすと笑う。春のような笑顔だと思う。

 彼女は外を見ながらぽつんと呟いた。
「ライムに帰る前に…、オクシオーヌとお友達になりたかったわ・・・」
「?」
ジュヌーンの正面に向き直ると彼女ははっきりと言った。
「ライムに帰ることにしたの」
「……そう、か・・・」

ああ、やっぱりあなたは引き止めてくれないのね・・・・・・
「いつ?」
「これから・・・、だからオクシオーヌとは会えないわ、わたしのかわりによろしく言っておいて欲しいの。それと彼女にいろいろ言ったけど悪いと思っているって。わたしが謝っていたって・・・。」
「エレオノラ・・・」
「あなたに失恋したからじゃないのよ。父の体調が良くなくて仕事を手伝うことになったの・・・」
「……」

本当はわかったから・・・
あなたのの気持ちが・・・

「きれいにならなくていい!
わたしは君に香水もドレスも似合って欲しくない!」
そう叫んだあなた

その時わたしは確信したわ

あなたはオクシオーヌが大人になるのを恐れているのよ・・・
ジュヌーン・・・

「わたしはね、ジュヌーン・・・。あなたがオクシオーヌが大人になるのを待っているのだとばかり思っていたわ・・・。」
「……」
「オクシオーヌはきれいになるわ、きっと・・・。あなたもそう思うでしょう?」
「……」

あなたのためにきっと内面から輝くわ・・・
ゆっくりと、けれど突然に

「その時のあなたの様子が見れないのが残念だけど」

ジュヌーンは静かな口調で言った。まるで、自分に言い聞かすように…
「・・・オクシオーヌのことは家族だと思っている。」
「今はそうでもこれからはわからないわ。」
そう言って笑った。
花が咲きこぼれるような…、オクシオーヌが憧れた笑顔だった。

そう思い込もうとしてるだけよ、きっと・・・
大人になったオクシオーヌを愛してしまうと恐れているから
家族としての愛情にすりかえているだけよ・・・

まだあなたも気がついていない
本当の気持ち・・・

オクシオーヌへの愛があなたの中で眠っているわ・・・





遠い・・・ずっと遠い異国の海に不思議な岩石があるという
日に日に成長していく生きてる岩
ゆっくりと気が遠くなる年月をかけて・・・

透明な海の中
光を反射して
生まれたばかりの酸素がゆらゆらと上昇していくのだ・・・



それがいつか…
ゆらゆらと…
ゆっくり…
光を反射して…
(2003.1.27)
<後書き>
彼女の名前はエレオノラ・ライムってことにしました。どうせもう出てこないから…
タイトルのつっこみはなしということに…。実際よくわからないのです、わたし。他に思いつかなくて…。
これからはジュヌーンの鉄の自制心物語になるのかな?オクシオーヌの行動如何ではね。


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