春の風が優しく恋の始まりを告げる(あの人編))

フォルカスがハイム旧市街の市で出会った人物は・・・




「困った友達ね・・・・」
そう掛けられた声に違和感を感じて、屈んで荷物を集めていたフォルカスが見上げるとそこにはきれいに化粧をした女性がいた。

「はい、これも落ちていたわよ。」と言って、彼にオペロンの涙が入った袋をわたす。

「・・・・・・・・・。」

「どうしたの? あたしの顔に何かついてるかしら?」

目を何回かぱちぱちとさせたフォルカスは首を横にふりながら
「あっ、いえ・・・・・、何でもないです。ありがとうございました。」
そう言って立ち上がり彼女から袋を受け取った。

フォルカスは14歳の少年にしては背は高いほうだ。もうすぐ170になる。が、女は顔はフォルカスの目線より高い位置にあった。


「10年ぶりに上に出てきたら・・・、好みの坊やだわ・・・。」
女は妖艶な笑みを浮かべてフォルカスに言った。
「坊や、暇?」
ねっとりとした感じにフォルカスが固まった。・・・・免疫は全くといっていいほど無い。


「おーい!フォルカス。何やってんだ?」
いつまでやって来ない彼を呼びに戻って来たのだろう、仲間たちが駆け寄ってきた。

「何、女の人と立ち話してるんだよ!ずるいぞ。一人だけ!」
「あらあ、お仲間が来たわ・・・・・」
ちらりと彼らの方を一瞥すると女はフォルカスを振り返り
「残念・・・。彼らは坊やほどイイオトコじゃないわ。じゃあね、坊や。」
と、フォルカスのあごをきれいに手入れされた指先で触りながら彼らとは反対の方に歩いて行った。

ぞわわ〜〜と背筋が寒くなった気がした。

「おまえ、何ぼーっとしてんだよ?」
「さては一目ぼれ?すっごい美人だったな。畜生・・・!」
「何、話したんだ?名前聞いたか?住んでる所は?」

わいわい騒ぎながら、美人の情報を引き出そうとする。
フォルカスに押し付けた荷物をまたみんなで分けて立ち上がった。

「なあ、女の人にあれあったけ?」
フォルカスがぼそっと呟いた。
「あれって・・・?」
「のど仏・・・・・・・・。」

「ば〜か!あったら男だろーが。」

「・・・・・!!」
その瞬間、フォルカスはさっきから彼女に感じていた違和感の正体を理解したのだった。












「久しぶりに地下から若い男の精気を吸いに来たら・・・・・、好みの坊やだったわ・・・」
くすくすと笑いながらベルゼビュートは獲物を物色して市を歩く。
永遠の若さを維持するために。



エクスタシー島の巨大な地下宮殿の地下50階で、フォルカスが彼女(?)と再会するのはずっと後のことである。


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