止酒(酒を止む)

(きょ)城邑(じょうゆう)(やど)るを()
逍遥(しょうよう)として(おのずか)閑止(のどか)なり。
()するは()高蔭(こういん)(もと)のみ
(あゆ)むは() 蓽門(ひつもん)(うち)のみ。
()き味は()園葵(えんき)のみ
(おお)いなる(よろこ)びは()稚子(ちし)のみ。

大意
住居は町中に住むのをやめ、ぶらぶらしてまことに呑気だ。座るはこんもりと茂った緑の木陰だけ、歩くのは柴折戸のうちだけ。舌づつみをうつのは菜園で採れる物だけ、何よりの楽しみは幼子と戯れることだけだ。
……
「今まで酒を止めたことがない。酒を止めて何の楽しみがあろうか。
しかし、日頃止めようとは思っていた。飲みすぎは承知していた。今日から
ぷっつり止めるぞ」 と続きます。
各句にすべて 「止」 の漢字をいれたおもしろい詩です。


前回は飲酒でしたが今回は「酒を止む」です。
やろうと思ってもなかなかできない。自分のことに歯がゆくてどうしょうもない時があります。そんな時スポーツで汗をかいたり、好きな趣味に打ち込んだり、ちょっと間をおくと気分が晴れます。淵明さんはそれを 「詩」で表現したのでしょう。ちょっと言い訳がましいところがありますが、ご愛嬌です。

さて 「高蔭の下」 です。
緑の木陰、だれでも何か思い出のある木陰があるんじゃないでしょうか。
運動会で家族で食べる昼食、たいがいグランドに大きな木があります。
春のサクラの花見、木陰じゃなく花の下ですね。
年齢と共におきにいりの「高蔭の下」ひとつ探してみてはいかがでしょうか。



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