天空に輝く青き星、女神アルテナの慈しむ大地。寒さの厳しい北の国の、一時の春。
かって英雄の生まれた寒村、ブルグ。
英雄に憧れ、そして世界に目を向ける少年、アレス。
ベタベタといえばベタベタ。
しかし、窪岡さんの絵で彩られる、その大地は、僕にとって間違いのない新世界だったんだ。
それを生んだのはゲームアーツ。異常なまでのテクスチャー。そしてドットの絵のこだわり、
見事に表現された牧歌的な少年の冒険世界。
そして重馬さんの形作る、神話的世界。そして偏執的なまでに豊富なテキストと、納得の
出来る単純化された物語構造は、いいよね。
まね、大概の人たちにとって、このゲームで僕が感じた衝撃が伝わらないのも無理はないんだ。
ほかの人たちにはドラクエがあり、FFがあったからね。
だからこそ君たちの目は曇ってしまっていて、このゲームの良さが分からなかったんだと、
僕はあえて声を大にして、言うよ。
発売がのびにのびたせいもあって、世界観の厚みは、ほかのゲームからは群を抜いていたし、
雑誌での持ち上げもすごかった。もちろん贔屓目もある。そういう想い出も含めて、ルナ1
というのは僕にとって、今までの人生の中でのベストゲームに限りなく近い存在なんだ。
このゲームは、「僕」のゲームなんだ。「分かる人には分かる、それだけでいいゲーム」
田舎から出てきた少年が、勇者に憧れ、旅に出発し、強くなり、仲間を得、そしていつしか
巨大な陰謀に巻き込まれ、「幼なじみの少女を救うため」につよくなり、そして世界を救う。
何億万回語られ続けた、物語の1パターン。
世の中はどうかは知らないけど、僕にとってのRPGと言うものは、全然納得のいく世界では
なかったんだよ、それまではさ。だってメガドライブしかゲーム機持ってないんだもん。しょうが
ないでしょ? エニックスとスクエアをのぞいたら、RPGなんてさ、 ねぇ。
テーブルトークの方が100億万倍面白いし、物語を読み、感じるなら小説の方が断然いいしねぇ。
フラグを一つずつ解いていき、世界を小出しに「絵」としてみせられる。フィールド、ダンジョン、
一枚絵のキャラクター達、そして会話を中心としたイベント。ゲームならではの文法というモノに
はじめて触れたような感じがしたんだ。
偶然の友人の誘いにより、はじめての出発。伝説の竜との出会い。本当の冒険のための、
友達との別れ。才能の発掘による、世界の魔法の中心への挑戦。英雄達との邂逅。
やっぱりこの流れをここまで気持ちよく語ったストーリーのゲーム、俺やったことねーわ。
今思ってもさ。すごく良質なアニメのテレビシリーズ見てるみたいだよ。
んでシステム作った人達が、噂によると、「夢幻の心臓2」作った人らしいんだよね。
まぁ、ウルティマとこっちどっちが先かは知らないんだけどさ、両方ともストーリーの根幹が、
マイケル・ムアコックの「エターナル・チャンピオン・シリーズ」のパクリなのよ。
これは僕には非常にキたのね。しかもものすごく斬新で遊びやすいシステムだったんだ。
ルナにはどこか、その香りがするんだよ。イースも作った人達だって噂も聞いたけど、
そっちはよく分からない。でもね、戦闘のバランスもきつくないわりには、パズル的な戦闘
やらされたり、初期アイテムの「お弁当」とかせっけんとか何か小道具も凄く斬新で好きだったのよ。
まず不快感のないきちんとしたシステムという土台があって、そこから小技でぴりっと
効かせてるところが感じられるんだ。
そして僕の中で一番かけがえのないのが、故郷、「ブルグ村」に関するイベントだよ。
アレスは間違いなくその村から出ていった少年なんだ。故郷には彼を送り出す両親がいて、
彼を知る優しくて強い開拓民のみんながいる。いつかは出ていこうとするアレスを、見守って
くれていた、そして見送ってくれた、人達なんだ。旅先でアレスはそれを思い出し、かすかに
振り返る。そう、まさにそんな人達の会話が溢れてくれるスタート地点だったんだよ。
そして彼らに襲いかかる突然の災厄。それを救うのは、勇者となったアレスなんだ。若者が、
夢を抱いて故郷を出、成長し、そして村人に力を示す。これって、ある意味夢じゃない?
すごく低俗な部分を持っているのは決して否定しないんだ。でも僕はやっぱり、周囲の
人間を見返したい、自分の実力を身近な人に見せつけたい、という夢もある。故郷を救う
というわりと普遍的で一見崇高な感じがあるけど、故郷に錦を飾るって感じの凄く泥臭いけど、
共感する部分は強く感じたのよ。
「王様」がいないのも俺凄く好きだなぁ。こうなんか、世界を救う!
ってのは懇願されたからじゃなくて、好きな女の子を救いたい。憧れの人に追いつきたい。
という理由でアレスは冒険を進めて行くんだよね。
何か最近ゲームって、ゲームを進めるためにやってて、主人公の進んでいく理由に共感できる
ゲームが少なく感じちゃうの、多くない?
そこらへん、世界を見て回りたい、偉大な英雄と同じ道を歩いてみたい。大好きな女の子を
救い出したいって、凄くわかりやすい道を示してるの、俺好きだなぁ。
中学生が剣渡されて、世界救えっていわれたら、俺だったら、困難にあった瞬間そんなん放り
出して、誰彼となく「しらねーよ、俺を家に帰してくれ!」って泣きわめいちゃうし
(古い喩えだね、たはは)<攻略本見なきゃ、次の村の位置分からないような、それでいて
シナリオはそれを求めてるようなゲーム、ちょっとやだなぁ。まあ、ルナはそれを完璧にやってたか
って言うと、そうではないけどね、でもこう紙に書けるほどに目的が単純化して、正当化できるよね。
ドラクエがあったからこそ出来た、丁寧な作りの、オマージュの一つなんだろうね、「ゲーム史」
というひいた視点から見ればさ。でも、だからこそ、「僕」にとっては「特別」な、ゲームなんだよ。
現在、リメイクなどという偽りの看板で、全ての良いところを外された、憤死必至の超駄作の
同じ名前のゲームが出てしまったせいで、不当に汚され、貶められて、凡百のゲームとして消され
ようとしている(詳しくはこちら)からこそ、失われた時代を懐かしむジジイの気持ちも大いに
あるけど、やっぱり僕にとって、メガCDの「ルナ」特に僕にとっては、1は我が人生最大級の
ゲームだったよ。
ちなみに僕にとっての、最大級のゲームとは後は、
・ ザ・マン・アイラブ
・ ソーサリアン
かな。人生最高のゲーム3本の中の一つなんだね。僕にとって、メガCD版のルナ1はさ。
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