光に映える夜桜の名所 幻想の世界へいざなう

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 今年も楽しみな桜の季節。ライトや提灯(ちょうちん)の明かりに照らされて闇に浮かび上がる夜桜は、昼間とは違った独特な味わいがある。光に映える夜桜を堪能できる場所を専門家に選んでもらった。

 他を圧倒する得票で1位に輝いたのは青森の弘前公園。11人の専門家のうち5人がトップにあげた。約50ヘクタールの敷地に天守閣や堀、橋などライトアップを引き立てる様々な見所を備えているのが特徴だ。

 「天守閣や堀の周りが桜色に染まった幻想的な風景は絶品」(清水亮一さん)。野呂さんは「桜の手入れが行き届いているので公園全体どこを見てもすばらしいが、特に西濠(ぼり)の桜のトンネルは圧巻」と語る。夜間ライトアップされる「弘前さくらまつり」には例年、約200万人が訪れる。

 2位の長野の高遠城址(じょうし)公園に植えられた約1500本の桜は、すべて同地でしか楽しめない「タカトオコヒガンザクラ」。他のコヒガンザクラと比べ、花がやや小ぶりで色が濃いのが特徴だ。庄子さんは「ソメイヨシノよりも濃い桜色に出合える。ライトアップされると、より花びらの色が濃く感じられる」と話す。中央部にある「桜雲橋」は1番の名所で「橋の下にも降りられる。橋を見上げる桜もいい」。

 3位に入ったのは秋田の桧木内(ひのきない)川堤と武家屋敷通り。桧木内川堤では約400本のソメイヨシノの桜並木が電飾で浮かび上がる。一方、武家屋敷通りでは各屋敷に植わった枝垂れ桜がライトアップされる。

 高山さんは「桧木内川堤は2キロにわたる桜のトンネルとなり、夜桜も見事」と解説。宮嶋さんは「武家屋敷を巡る夜桜見物は、闇と桜のコントラストを楽しめる」と語る。歩いて5分程度の距離にあるので、一度に表情の異なる夜桜風景を眺められるのも魅力だ。

 新潟の高田公園が4位。約300メートル続く桜のトンネル「さくらロード」が人気だ。「歩くだけで極上の幽玄の世界へと誘われる」(丸々さん)との評価も。高岡さんは別の楽しみ方として「ライトアップされた天守閣を遠くから眺めるのもいいし、その天守に登って園内を見渡すのも面白い」とアドバイスする。

 千鳥ケ淵緑道が5位に。金富さんは「お堀と桜の代表的な風景で、ビル群を背景に浮かび上がる桜が見事」と東京都心部ならではの魅力を説明する。

 6位の清水寺は「三重塔や清水の舞台と桜の競演がいい。現代的なライトアップも面白い」(清水洋志さん)との声があがった。庄子さんは「古都の夜空に向けた巨大な青いサーチライトがバックの山から放たれると、荘厳かつ幽玄な雰囲気」と表現した。

 7位の東京・六義園と8位の京都・円山公園は、ライトアップで一本の枝垂れ桜が闇夜に浮かび上がる光景が人々を魅了する。六義園は「枝垂れ桜が庭園、池に映えて美しい」(宮崎さん)。円山公園のシンボルといえる通称「祇園枝垂桜」のライトアップも「芸術的で一見の価値あり」(清水亮一さん)という。

遠景・昼間の鑑賞も楽しんで

 夜桜観賞を楽しむ際のコツとしてどんなものがあるのか。金富さんは「桜の間近だけでなく、遠景で浮かび上がる景色もすてき」と語る。時間に余裕があれば「昼間にも見て、桜本来の花の色や形、群れて咲く景色も楽しんで」とも。時間帯で異なる表情が楽しめるのに加え「初めて訪れた場所での夜桜鑑賞だと、歩くだけで精いっぱいになりがちで、余裕をもって夜桜を楽しめない」(野呂さん)。

 満月の下で満開の桜を楽しむことを薦めるのは庄子さん。「なかなか満開の時期と満月が重ならないため、たやすいことではないが、平安の昔から夜桜を愛(め)でるのは月明かりの下だった」(庄子さん)。ちなみに今年は4月20日が満月となる。

 防寒対策も大切。「夜はまだまだ冷え込むので、風を通しにくい上着は必須。薄手のマフラーや手袋があるといい」とは高岡さん。使い捨てカイロも重宝する。冷えるのでトイレの場所も事前にチェックしておこう。


弘前公園(青森県弘前市)  808
「弘前さくらまつり」の期間中、約2600本の桜が夜空に浮かぶ。4月23日―5月5日(日没から午後11時)
高遠城址公園(長野県伊那市)  441
同所の固有種「タカトオコヒガンザクラ」が約1500本。4月中旬以降2週間程度(日没から午後10時)
桧木内川堤・武家屋敷通り(秋田県仙北市)  375
2つの異なる情緒。4月中旬―5月上旬(川堤は日没から午前零時、武家屋敷は午後6時半から午後10時半)
高田公園(新潟県上越市)  330
「高田城百万人観桜会」の期間中、公園内がライトアップされる。4月4―20日(日没から午後11時)
千鳥ケ淵緑道(東京都千代田区)  231
皇居のお堀沿いの約260本の桜並木が水面(みなも)を彩る。3月28日―4月6日(日没から午後10時)
清水寺(京都市東山区)  209
本堂から夜桜と市内の夜景をともに。「夜の特別拝観」は3月29日―4月10日(午後6時半から午後9時半)
六義園(東京都文京区)  143
樹齢70年、幅17mの滝のような枝垂れ桜の幻想的な姿が楽しめる。3月20―30日(日没から午後8時半)
円山公園(京都市東山区)  132
樹齢約80年の通称「祇園枝垂桜」が美しく浮かび上がる。3月10日―4月15日(日没から翌午前1時)
三井寺(大津市)  122
桜がライトアップされる時間帯は入山料が無料になる。4月1―17日(午後6時半から午後9時半)
10 浜離宮恩賜庭園(東京都中央区)  110
高層ビルを背景に湖面に映る約80本の夜桜。八重桜のライトアップは4月12―20日(日没から午後8時半)