丹念にアクを抜いた豚の内臓を使った沖縄の家庭料理で、一部地域では給食にも登場する。あっさりとしたカツオだしのスープで、薬味のショウガが効いている。「豚の腸と聞き敬遠する人もいるが、味はとにかくおいしいから」(28歳、女性)など、81人が1番のおすすめに選んだ。
2位は沖縄そば(写真奥左)。そば粉ではなく小麦粉を練ったうどんのような食感のめんを使う。具は豚の三枚肉や地元の野菜で苦みのあるにが菜が定番だが「店ごとに違う」(25歳、女性)。4位のソーキそばは、ほどよく脂肪がある骨付きの豚あばら肉を泡盛やしょうゆ、砂糖で煮込んだソーキを乗せたそばで「沖縄の定番が2つも合体した味をぜひ食べて」(42歳、男性)と推す声があった。3位は大豆の濃厚なゆし豆腐(写真奥右)だった。
沖縄料理の特徴はしっかりしたカツオだし。総務省の家計調査によると、2007年の1世帯あたりのカツオ節・削り節の支出(地域別)は沖縄県がトップで2539円と全国平均の3倍。カツオ節に湯を注ぎネギやみそを入れた鰹湯(カチューユ)と呼ばれる伝統食もあり、風邪を引いたり二日酔いになったりした時に飲まれるという。
食文化研究所の永山久夫さんは「沖縄の伝統食は健康を考えた高度な生活者の料理」という。例えば多用するカツオ節には、疲れやストレスを和らげるとされるアミノ酸が含まれている。塩で味付けし汁物としてとることで、亜熱帯で汗をかくことが多い沖縄の人は水分を補給すると同時に、体内のナトリウムなどのバランスを取り戻す。
5位のイナムドゥチと6位のイカ墨汁もカツオだしを使った汁物。イナムドゥチは「イノシシ(イナ)もどき(ムドゥチ)」の方言で、昔はイノシシの肉が使われた。甘口の白みそ仕立てだ。一方のイカ墨汁は真っ黒。コクがあるが「意外と繊細な味わい」(31歳、女性)という。
特産の野菜や意外な食材の料理も上位に。7位の島ラッキョウはパリパリとした食感で舌にぴりっとした辛みが後を引く。8位はヘチマのみそ煮で「ヘチマの印象が変わる」(33歳、女性)との声も。10位のパパイアイリチーも「忘れられないうまみとコクがくせになる」(34歳、女性)。
沖縄県産の刺し身 | イラブチャーなどの美しい南国の魚。身が締まってぷりぷりとした食感が楽しめる |
アシティビチ | 昆布などのだしで煮込んだ豚足。軟骨がゼリー状になり、コラーゲンがたっぷり |
ニンジンシリシリ | 甘みのある島ニンジンを千切りにし、ニラやツナといため卵でとじる家庭料理 |
海ブドウ | プチプチとした食感の海藻。通常は酢じょうゆで食べるがすしやどんぶりにすることも |
チャンプルー | ゴーヤ以外にもソーミン(そうめん)、ふ、豆腐、野菜など、様々な具材のいため物 |
抗酸化作用があるとされる成分を含む野菜や果物といった食材もさることながら、豚肉はしっかり脂抜きをし、昆布やカツオだしでしっかり味を含ませれば塩分を控えられるなど、長寿県ならではの調理法もある。市場や食堂では食材や調理法について尋ね、普段の食卓に生かそう。
1 | 中身汁(なかみじる) 1343 何度もゆでてアクを取るなどの処理をした豚の腸などを使う。豚とカツオだしのあっさりした味の吸い物 |
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2 | 沖縄そば 1209 小麦粉の沖縄そばを使い、具は泡盛で煮付けた豚の三枚肉、かまぼこなど。店により具が異なる |
3 | ゆし豆腐 1136 ぼろぼろとした、固まる前の温かい豆腐。濃厚な大豆の香りと甘みが特徴。「豆腐スープ」のイメージ |
4 | ソーキそば 1094 長時間煮込んで柔らかくした豚あばら肉(ソーキ)をのせた沖縄そばの一種。カツオだしのスープ |
5 | イナムドゥチ 887 祝い事の料理の一品。今はイノシシではなく、豚肉を使っている。カステラかまぼこを使った白みそ仕立て |
6 | イカ墨汁 839 イカの墨を使った真っ黒な汁物。カツオだしのスープで、イカのほか豚肉、にが菜などを使う |
7 | 島ラッキョウの塩漬け 745 ラッキョウの白い部分を塩漬けにし、削りガツオでいただく。天ぷらにして酒のつまみにする料理法も |
8 | ナーべーラーンブシー 737 豚肉や缶詰のポークとヘチマ、豆腐を使ったみそ煮込み。ヘチマの粘り気のある甘い汁がうまみに |
9 | ジーマーミ豆腐 684 落花生を使った、ゴマ豆腐に似た精進料理の一つ。カツオだしやしょうゆで作ったタレをかける |
10 | パパイアイリチー 680 千切りにしたパパイアとさつま揚げ、ニンジンなどの野菜のいため物。塩としょうゆで味を調える |